説明

作業車両のディスクブレーキ装置

【課題】作業車両の乾式のディスクブレーキ装置の、ディスクロータとキャリパの部分に岩石、土砂などの異物が噛込むのを防止し、ディスクブレーキの寿命延長およびブレーキ性能の低下防止ができるようにする。
【解決手段】ディスクブレーキ装置が、タイヤのリムが装着されるハブに取付けられたディスクロータと、ディスクロータを制動する、アクスルハウジングに取付けられたブレーキキャリパと、ディスクロータおよびブレーキキャリパの半径方向の外縁を周方向において部分的に覆う、アクスルハウジングに取付けられたカバーを備え、カバーが、アクスルの軸線を中心にした半径を有して軸線の方向に延び一端がリムに隣接して位置づけられた円弧板と、円弧板に一体的に接合されアクスルハウジングに取付けられた側板を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両のディスクブレーキ装置、さらに詳しくは、作業車両の乾式ディスクブレーキ装置のディスクロータとキャリパの部分に土砂などが侵入するのを防止する手段を備えたディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダ、ダンプトラックなどの作業車両の多くには、タイヤのリムと車軸であるアクスルの連結部分に、乾式のディスクブレーキ装置が備えられている(例えば、特許文献1参照)。乾式のディスクブレーキ装置は、ブレーキの発熱を冷やす冷却装置やブレーキを収容するハウジングが要らないので、構造簡単、安価、保守点検容易、などのメリットを有している。
【特許文献1】実開平7−40202号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したとおりの形態のディスクブレーキ装置を装備した、土砂、岩石の掘削現場あるいは泥濘不整地などを高速で走行する、例えばアーティキュレートダンプトラックのような作業車両においては、次のとおりの解決すべき課題がある。
【0004】
すなわち、ブレーキ装置には、車輪によって巻き上げられた岩石、土砂、雨水などの異物が降りかかるチャンスが特に多いので、これがディスクロータとブレーキキャリパのパッドとの間に挟まり、研磨材の役目をして、ディスクロータおよびブレーキパッドを早期に摩耗させ、損傷、ブレーキ性能の低下、頻繁な保守点検が必要、などの原因になっている。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、作業車両のタイヤの近くに装備されている乾式ディスクブレーキ装置の、ディスクロータとキャリパの部分に岩石、土砂などの異物が噛込むのを防止し、ディスクブレーキの寿命延長およびブレーキ性能の低下防止ができるようにした、作業車両のディスクブレーキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば上記技術的課題を解決する作業車両のディスクブレーキ装置として、タイヤのリムが装着されるハブに取付けられたディスクロータと、ディスクロータの回動を制動する、該ハブを駆動するアクスルが貫通するアクスルハウジングに取付けられたブレーキキャリパと、ディスクロータおよびブレーキキャリパの半径方向の外縁を周方向において部分的に覆う、アクスルハウジングに取付けられたカバーと、を備え、該カバーが、アクスルの軸線を中心にした半径を有して軸線の方向に延びた円弧板と、円弧板に一体的に接合されアクスルハウジングに取付けられた側板と、を備え、該円弧板の軸線方向の一端が該リムに隣接して位置づけられている、ことを特徴とする作業車両のディスクブレーキ装置が提供される。
【0007】
好適には、円弧板の上記一端の縁が、該リムの筒状の内径部に挿入されている。また、該カバーは、該軸線に対して鉛直方向上方に配設されている。さらに、該カバーは、アクスルハウジングにブレーキキャリパを取付けるボルトと共締めされ取付けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従って構成された作業車両のディスクブレーキ装置は、ディスクロータおよびブレーキキャリパの半径方向の外縁を周方向において部分的に覆う、アクスルハウジングに取付けられたカバーを備え、カバーは、アクスルの軸線を中心にした半径を有して軸線の方向に延び一端がリムに隣接した円弧板と、円弧板に一体的に接合されアクスルハウジングに取付けられた側板を備えている。
【0009】
したがって、ディスクロータおよびブレーキキャリパの外縁を部分的に覆い端部がリムに隣接したカバーによって、岩石、土砂、雨水などの異物がディスクロータとキャリパの部分に降りかかるのを防止でき、ディスクブレーキの寿命を延長でき、ブレーキ性能の低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に従って構成された作業車両のディスクブレーキ装置について、代表的な作業車両であるアーティキュレートダンプトラックにおける好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0011】
図3を参照して、アーティキュレートダンプトラックの概要について説明する。全体を番号2で示すアーティキュレートダンプトラックは、運転室4および前輪6を有した前車体8と、ダンプシリンダ10によりダンプ作動を自在に取付けられたベッセル12および2軸の後輪14,14を有した後車体16を備えている。
【0012】
前車体8と後車体16は、鉛直線Zを中心に屈折自在に連結され、操向シリンダ18によって前車体8と後車体16は相対的に屈折され操向される(左操向状態を図3(b)に二点鎖線で示す)。
【0013】
前輪6,6および2軸の後輪14,14の6輪全てに、本発明のディスクブレーキ装置が装備されている。
【0014】
図1を参照して、ディスクブレーキ装置について、右側後輪14における実施例によって説明する。後に述べるように、全6輪のディスクブレーキ装置は実質的に同一である。
【0015】
全体を番号20で示すディスクブレーキ装置は、後輪14のタイヤ15のリム18が複数個のボルト19によって装着されるハブ22に取付けられた円板状のディスクロータ24と、ディスクロータ24の回動を制動する、ハブ22を駆動するアクスル26が貫通するアクスルハウジング28に取付けられた二股状のブレーキキャリパ30と、ディスクロータ24およびブレーキキャリパ30の半径方向の外縁を周方向において部分的に覆う、アクスルハウジング28に取付けられたカバー32を備えている。
【0016】
ディスクロータ24は、ハブ22のフランジ22aに複数個のボルト23によって取付けられた周知のものである。ブレーキキャリパ30は、ディスクロータ24を挟んで制動するブレーキパッドおよびピストンを有した周知のものであり、後輪14の前進回転方向Yの後方側に位置し、ディスクロータ24に対向するアクスルハウジング28の端部のフランジ28aに、車体の中心側(図1(a)の下側)から通した上下各2本のボルト29によって取付けられている。
【0017】
カバー32について図1とともに詳細図である図2を参照して説明する。カバー32は鋼板によって形成され、外縁がアクスル26の軸線Xを中心にした半径Rを有して軸線Xの方向に延びた円弧板32aと、円弧板32aに溶接によって一体的に接合されアクスルハウジング28に取付けられた側板32bを備えている。側板32には、取付用の2個のボルト穴32cおよび、一段下がった部分にブレーキ調整用の穴32d、1個が形成されている。
【0018】
カバー32は、軸線Xに対して鉛直方向上方に配設され、軸線Xを中心にした周方向において、上方から見て(図1(a))ブレーキキャリパ30とディスクロータ24の略全体を覆う大きさに形成されている。
【0019】
円弧板32bの軸線X方向の一端の縁32eは、リム18に隣接して位置づけられ、実施の形態においては、リム18の直径Dの筒状の内径部18aに挿入されている。
【0020】
カバー32は、アクスルハウジング28にブレーキキャリパ30を取付ける上下4本のボルト29の内の、上側の2本のボルト29と共締めされ取付けられている。
【0021】
右側前輪6のカバーは、右側後輪14(2個)のカバー32と実質的に同一である。左側前輪6および左側後輪14のカバーは、カバー32と左右対称に形成される。
【0022】
上述したとおりの作業車両のディスクブレーキ装置20の作用効果について説明する。
【0023】
ディスクブレーキ装置20は、ディスクロータ24およびブレーキキャリパ30の半径方向の外縁を周方向において部分的に覆う、アクスルハウジング28に取付けられたカバー32を備え、カバー32は、アクスル26の軸線Xを中心にした半径Rを有して軸線Xの方向に延び一端32eがリム18に隣接した円弧板32aと、円弧板32aに一体的に接合されアクスルハウジング28に取付けられた側板32bを備えている。
【0024】
したがって、ディスクロータ24およびブレーキキャリパ30の外縁を部分的に覆い端部32eがリムに隣接したカバー32によって、岩石、土砂、雨水などの異物がディスクロータ24とブレーキキャリパ30の部分に降りかかるのを防止でき、ディスクブレーキの寿命を延長でき、ブレーキ性能の低下を防止できる。
【0025】
また、作業車両はブレーキを作動させる頻度が多くブレーキの発熱が多いが、カバー32はディスクロータ24およびブレーキキャリパ30の外縁を部分的に覆うように備えられているので、ブレーキの放熱性を悪化させることがない。
【0026】
また、円弧板32aの一端の縁32eは、リム18の筒状の内径部18aに挿入されているので、岩石、土砂などの異物のディスクロータ24とブレーキキャリパ30の部分への侵入を防止できる。
【0027】
さらに、カバー32は、アクスル26の軸線Xに対して鉛直方向上方に配設されているので、ディスクロータ24とブレーキキャリパ30の部分に、降りかかる岩石、土砂などの侵入を確実に防止できる。
【0028】
また、カバー32は、アクスルハウジング28にブレーキキャリパ30を取付けるボルト29と共締めされ取付けられているので、新たに取付用の手段を設けることなく、経済的にカバー32を設置できる。
【0029】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0030】
例えば、カバー32の円弧板32aの一端の縁32eは、リム18の筒状の内径部18aに挿入されているが、リムとカバーのサイズの違い、相対位置の違いなどに応じて、カバーの端をリムの側面に隣接させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に従って構成された作業車両のディスクブレーキ装置の代表例としての右後輪の(a)平面図、および(a)のA−A矢印方向に見た(b)側面図。
【図2】カバーの詳細図。
【図3】アーティキュレートダンプトラックの(a)側面図(b)平面図。
【符号の説明】
【0032】
2:アーティキュレートダンプトラック(作業車両)
6:前輪
14:後輪
15:タイヤ
18:リム
18a:内径部
20:ディスクブレーキ装置
22:ハブ
24:ディスクロータ
26:アクスル
28:アクスルハウジング
29:ボルト
30:ブレーキキャリパ
32:カバー
32a:円弧板
32b:側板
X:軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのリムが装着されるハブに取付けられたディスクロータと、
ディスクロータの回動を制動する、該ハブを駆動するアクスルが貫通するアクスルハウジングに取付けられたブレーキキャリパと、
ディスクロータおよびブレーキキャリパの半径方向の外縁を周方向において部分的に覆う、アクスルハウジングに取付けられたカバーと、を備え、
該カバーが、
アクスルの軸線を中心にした半径を有して軸線の方向に延びた円弧板と、
円弧板に一体的に接合されアクスルハウジングに取付けられた側板と、を備え、
該円弧板の軸線方向の一端が該リムに隣接して位置づけられている、
ことを特徴とする作業車両のディスクブレーキ装置。
【請求項2】
円弧板の上記一端の縁が、
該リムの筒状の内径部に挿入されている、
ことを特徴とする請求項1記載の作業車両のディスクブレーキ装置。
【請求項3】
該カバーが、
該軸線に対して鉛直方向上方に配設されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の作業車両のディスクブレーキ装置。
【請求項4】
該カバーが、
アクスルハウジングにブレーキキャリパを取付けるボルトと共締めされ取付けられている、
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の作業車両のディスクブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−222171(P2009−222171A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68820(P2008−68820)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】