説明

作業車両の照明装置

【課題】キャビン5の室内を照らす室内灯24によって、室内のみならず補助ステップ21やその近傍の地面を照らすことができる作業車両の照明装置を提供する。
【解決手段】キャビン5の室内側のドア16の上部に室内灯24を設置し、ドア16を閉じた時には室内を照明し、ドア16を開いた時には補助ステップ21やその近傍の地面を照らすようにする。また、室内灯24をキャビン5にドア16を取付ける装着プレート23を利用してドア16に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ、コンバイン、或いは建設機械等の作業車両の照明装置に関し、詳しくはキャビンを備える作業車両にあって、キャビンの室内を照らす室内灯の設置に工夫を凝らし、単一の室内灯によって室内のみならず補助ステップやその近傍の地面を照らすことができる照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キャビンのインナールーフに室内灯を設け、夜間作業においてキャビン室内、特に運転席の側方に設けるレバー配設部を照らすことが知られている。また、キャビンの前部支柱にサイドライトを設置し、前後輪間や後輪位置、前後輪間に位置する補助ステップ等を照らすことが知られている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−86211号公報
【特許文献2】特開2004−338566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、室内灯を設ける特許文献1に記載されたものでは、運転席の側方に設けるレバー配設部を室内灯の点灯によって照らすことができたとしても、補助ステップやその近傍の地面を室内灯によって十分に照らすことができないため、車両への乗り降りの際の足元の確認が困難であるという問題がある。
また、補助ステップ等を照らすサイドライトを設ける特許文献2に記載されたものでは、車両への乗り降りの際の足元の確認がサイドライトの点灯によって容易になるが、室内灯とは別にサイドライトを設けるのでコストアップになるという問題、或いはサイドライトは室外に設けているので、作業時に巻き上がった泥土や砂塵がサイドライトに付着して、その照明性能が低下するという問題がある。
そこで、本発明は係る問題点に鑑みて、キャビン内に設けた室内灯によってキャビンの室内のみならず補助ステップやその近傍の地面を照らすことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、キャビンの室内側のドアの上部に室内灯を設置することを特徴とする。
そして、請求項2に記載の発明は、キャビンにドアを取り付ける装着プレートを介して室内灯をドアに取付けることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、装着プレートをドアの取付部から室内灯の取付部に亘って屈曲させ、取付部に取付けた室内灯によって室内灯の下方側を照らすようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の作業車両によれば、キャビンの室内側のドアの上部に室内灯を設置するから、ドアを閉じた状態では、通常の室内灯と同様に運転席を中心とする周囲を室内灯によって照らすことができる。そして、ドアを開いた状態では、乗降口付近、補助ステップ、或いはその近傍の地面を中心とする周囲を室内灯によって照らすことができる。
そのため、室内灯の他にサイドライトを設けることなく、単一の室内灯によって車両への乗り降りの際に作業者の足元付近を十分に照らすことができて、安全に車両への乗り降りができると共に、作業を行う際にはドアを閉じて行うので、作業時に巻き上がった泥土や砂塵はドアに遮られて室内灯に付着することがなく、その照明性能が低下するという問題を解決することができる。
また、キャビンにドアを取り付ける装着プレートを介して室内灯をドアに取付けると、ドアに室内灯を取付けるための孔の加工等が不要となる他、室内灯を取付けるための専用部品が不要となり、安価に照明装置を提供することができる。
そして、装着プレートをドアの取付部から室内灯の取付部に亘って屈曲させ、取付部に取付けた室内灯によって室内灯の下方側を照らすようにすると、室内灯を設定した適正な方向に向けるための部材を不要として、装着プレートのみで室内灯を取付けることができるためより安価に照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】キャビンの室内の状態を示す斜視図である。
【図3】ドアを開いたキャビンの室内の状態を示す斜視図である。
【図4】室内灯の取付け状態を示す斜視図である。
【図5】室内灯の正面図である。
【図6】室内灯及びドアスイッチの取付け箇所を示す側面図である。
【図7】ドアスイッチの取付け状態を示す断面図である。
【図8】室内灯の配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように作業車両としてのトラクタ1は、車体の前部にエンジンを配置してこれをボンネット2で覆っている。また、トラクタ1は車体の前後に左右の前輪3と左右の後輪4を設けており、前輪3及び後輪4の間の車体中央部にはキャビン5を設けている。
【0009】
キャビン5内には運転席6が配置される他、運転席6前方のハンドルコラム7にはステアリングハンドル8が設けられ、その下方には主クラッチペダルやブレーキペダルが設けられている。また、運転席6の左右にはサイドパネルが設けられ、サイドパネルには走行変速を行う変速レバーやPTO変速を行う変速レバー、或いは車体後部に設ける三点リンク式の作業機連結装置を昇降させるポジションコントロールレバー、この作業機昇降装置に関連する自動制御の調整ダイヤルやスイッチ等が設けられている。
【0010】
一方、キャビン5はエンジンに直列状に連結されたクラッチハウジングケース、センターケース、デファレンシャルケースの上方に防振支持されて設置され、その床面を構成するステップ9から前部と中部と後部の支柱10、11、12が立ち上がり、各支柱の上部はクロスメンバーによって連結されている。そして、左右の前部支柱10間にはフロントガラス13が嵌めこまれ、左右の後部支柱12間には開閉可能なリヤガラス14が嵌めこまれている他、中部支柱11と後部支柱12との間には開閉可能なサイドガラス15が嵌めこまれている。尚、キャビン5の天井部には室内側のインナールーフIと室外側のアウタールーフOとの間にエアコンユニットが内蔵されている。
【0011】
また、符号16で示す左右のドアは、中部支柱11に上下のヒンジ17,17を介して装着され、前部側が開放可能になっており、ドア16は一枚の透明ガラス又はスモークガラスで構成されている。さらに、ドア16の内側には図2、図3に示すように手摺18とドア16の内外にはドアハンドル19とドアレバー20が設けてあり、作業者はドアハンドル19やドアレバー20を操作してキャビン5の内外からドア16を開閉することができる。また、ドア16の下方には若干外側に張り出して補助ステップ21が設けられており、作業者はこの補助ステップ21を利用して比較的高位置にあるキャビン5への乗り込みや、キャビン5から地上に降り立つことができる。
【0012】
ところで、ドア16は図4に示すように中部支柱11に取付けられた上下のヒンジ17,17に対して、ドア16に形成した前後の孔を貫通するボルト22,22によって取付けられ、詳しくはドア16の内側に設けた装着プレート23と外側のヒンジ17との間にドア16を挟持させた状態で、ボルト22,22を締めあげることによりドア16はヒンジ17に取付けられる。そして、左側ドア16の上側の装着プレート23はL字状に屈曲させたプレートで構成され、装着プレート23は下方側のヒンジ17の取付部23aに対して上方側は略水平な取付部23bとなっている。この取付部23bは室内灯24の取付部となり、室内灯24は取付部23bの下面に取付けられる。
【0013】
さらに、室内灯24は図5に示すように本体のケース内にランプ24aが内蔵されて、このランプランプ24aの周囲はカバー24bによって覆われている。また、ケースには室内灯24を点灯させるルームスイッチ25が設けられ、このルームスイッチ25は室内灯24を消灯させる位置(OFF)、ドア16の開放によって室内灯24を点灯させる連動位置(DOOR)、及び常時室内灯24を点灯させる位置(ON)に切替えることができるようになっている。なお、図6乃至図8に示すように左側の前部支柱10の上部寄りにはドア16の開閉状態を検出するドアスイッチ26が設けてあり、ドア16が閉じられるとドアの上部はドアスイッチ26と当接し、ドア16が開放されるとドア16の上部はドアスイッチ26と離間してドアスイッチ26が入り切りされ、前述した室内灯24のルームスイッチ25を連動位置(DOOR)に切り替えた際に、このドアスイッチ26の入り切りによって室内灯24は点灯、又は消灯することになる。
【0014】
次に、上記室内灯24の使用方法を説明する。トラクタ1は、例えば耕耘作業等を夜間に及んで行う場合があり、作業者は係る夜間作業時にPTO変速を行ったり、作業機昇降装置の自動調節を行ったりする。この場合、キャビンの室内は暗いためPTO変速レバー等の変速位置の確認や、自動調節ダイヤルの位置確認は、室内灯24を点灯して行うことになる。ここで、室内灯24のルームスイッチ25を常時点灯位置(ON)に切り替えると室内灯24は点灯し、この場合、室内灯24はキャビン5のドア16が閉じられているため、運転席6に座った作業者の左側の上部から運転席6を中心とする周囲を照らす。そのため、サイドパネルに貼付された変速位置を示すマークやダイヤル等を視認することができるようになり、適切に変速や自動調節操作を行うことができる。
【0015】
また、通常、室内灯24のルームスイッチ25は連動位置(DOOR)に切り替えておく。そのため、夜間にトラクタ1を運転すべく地上からキャビン5のドア16を開くと室内灯24は点灯する。その場合、室内灯24はドア16の開放度合いに応じて、その照らす中心位置がキャビン5のステップ9から補助ステップ21、さらに補助ステップ21外側の地面に移動する。従って、作業者は機外からキャビン5に乗り込む際に、室内灯24によって足元を照らされながら補助ステップ21に足を掛けて、安全にキャビン5に乗り込むことができる。逆に作業を終えてトラクタ1から降車する場合にも、キャビン5のドア16を開くと室内灯24が点灯する。これにより室内灯24は補助ステップ21等を十分に照らすため、キャビン5から作業者は安全に降りることができる。
【0016】
このように、室内灯24はドア16の上部に設置するものであるから、ドア16を閉じた状態では、通常の室内灯24と同様に運転席6を中心とする周囲を室内灯24によって照らすことができる。そして、ドア16を開いた状態では、乗降口付近9、補助ステップ21、或いはその近傍の地面を中心とする周囲を室内灯24によって照らすことができる。また、室内灯24はドア16のヒンジ17近くの上部に設置するものであるから、ドア16が開放されて乗降口となる前方側に対して後方側の上部となり、乗り降りの際に室内灯24が邪魔になることがないと共に、運転席6に座った作業者のドアガラス側の視界減少を最小限に押さえながら室内灯24へのハーネス24cも極力、短くすることができる。そして、室内灯24はドア16の室内側に設置してあるため、作業時に巻き上がった泥土や砂塵はドア16によって遮られて室内灯24に付着することがなく、その照明性能が低下することも防止することができる。
【0017】
さらに、室内灯24は、キャビン5にドア16を取り付ける装着プレート23に取付けるため、キャビン5にドア16を取付ける場合と同様に、ドア16のガラス面にボルト貫通孔を形成して室内灯24を取付ける場合のように別途、ドア16に貫通孔を追加して加工する必要がないと共に、室内灯24を取付けるための専用部品が不要となり安価に室内灯24をドア16に設置することができる。また、室内灯24を取付ける装着プレート23は、ドア16の取付部23aから室内灯24の取付部23bに亘って屈曲させて室内灯24の取付部23bを略水平状態になしているから、取付部23bの下面に室内灯24を取付けるだけで室内灯24の照明方向を適正なものにすることができる。なお、室内灯24の照明方向を任意に調節できるようにしたい時には、装着プレート23に別途、回動調節部材を介して室内灯24を取付ければよい。また、トラクタ1の場合には左側からキャビン5に乗り降りすることが多く、実施例では室内灯24を左側のドア16の上部にのみ設置したが、右側のドア16に同様に室内灯24を設けることもできる。
【符号の説明】
【0018】
16 ドア
21 補助ステップ
23 装着プレート
24 室内灯
25 ルームスイッチ
26 ドアスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンの室内側のドアの上部に室内灯を設置することを特徴とする作業車両の照明装置。
【請求項2】
キャビンにドアを取り付ける装着プレートを介して室内灯をドアに取付けることを特徴とする請求項1に記載の作業車両の照明装置。
【請求項3】
前記装着プレートをドアの取付部から室内灯の取付部に亘って屈曲させ、ドアの内方側から下部側を室内等によって照らすことを特徴とする請求項2に記載の作業車両の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−245951(P2011−245951A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119956(P2010−119956)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】