作業車両
【課題】本発明では、トラクタ等の作業車両に通常の作業機を装着した場合の走行速度増速率とバックホーを装着した場合の走行速度増速率をなるべく同じにして、オペレータが運転操作に戸惑わないようにすることを課題とする。
【解決手段】油圧伝動装置Aの油圧昇圧によって設定走行速度まで増速するミッションケース2を備えた作業車両において、油圧伝動装置Aの油圧昇圧率を変更する昇圧率変更手段1とバックホー43の装着を検出するバックホー装着検出手段42aを設け、該バックホー装着検出手段42aがバックホー43の装着を検出すると、前記昇圧率変更手段1を高昇圧率に変更すべくしてなる作業車両の構成とする。また、昇圧率変更手段1を高昇圧率に変更するための制御データを通常昇圧率データに対して演算した増加値を加算して制御すべくしてなる作業車両の構成とする。
【解決手段】油圧伝動装置Aの油圧昇圧によって設定走行速度まで増速するミッションケース2を備えた作業車両において、油圧伝動装置Aの油圧昇圧率を変更する昇圧率変更手段1とバックホー43の装着を検出するバックホー装着検出手段42aを設け、該バックホー装着検出手段42aがバックホー43の装着を検出すると、前記昇圧率変更手段1を高昇圧率に変更すべくしてなる作業車両の構成とする。また、昇圧率変更手段1を高昇圧率に変更するための制御データを通常昇圧率データに対して演算した増加値を加算して制御すべくしてなる作業車両の構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バックホーを着脱可能にした作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタ車体の後方にバックホーを装着して、トラクタのミッションケース後部に設けられるリフトアーム昇降用の油圧シリンダによって、バックホーを昇降させるようにしたバックホー装着車両が特開2003−129513号公報や特開2006−28935号公報及び特開2006−249882号公報で知られている。
【特許文献1】特開2003−129513号公報
【特許文献2】特開2006−28935号公報
【特許文献3】特開2006−249882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
トラクタは、機体の後部にバックホーを装着して土木作業を行ったり、ロータリ耕耘装置等の農作業機を装着して農作業を行えるようにしている。通常の農作業機はトラクタの車体重量と比較して1/3以下程度で軽いために作業機装着時と非装着時での走行速度増速率つまり設定速度に達するまでの時間の長さにあまり違いが無いが、バックホーの機体重量はトラクタの車体重量の1/2程度で、トラクタにバックホーを装着すると走行速度増速率が極端に遅くなる。
【0004】
そこで、本発明では、トラクタ等の作業車両に通常の作業機を装着した場合の走行速度増速率とバックホーを装着した場合の走行速度増速率をなるべく同じにして、オペレータが運転操作に戸惑わないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、油圧伝動装置Aの油圧昇圧によって設定走行速度まで増速するミッションケース2を備えた作業車両において、油圧伝動装置Aの油圧昇圧率を変更する昇圧率変更手段1とバックホー43の装着を検出するバックホー装着検出手段42aを設け、該バックホー装着検出手段42aがバックホー43の装着を検出すると、前記昇圧率変更手段1を高昇圧率に変更すべくしてなる作業車両とする。
【0006】
このように構成すると、バックホー43を作業車両に装着した時に昇圧率変更手段1が油圧伝動装置Aの油圧昇圧率を高昇圧率に変更して走行速度の増速がバックホー43以外の作業機を装着した時の増速感覚と同一或いは同一に近くなる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記昇圧率変更手段1を高昇圧率に変更するための制御データを通常昇圧率データに対して演算した増加値を加算して制御すべくしてなる請求項1に記載の作業車両とする。
【0008】
このように構成すると、バックホーを作業車両に装着した時に昇圧率変更手段1が入力値に基づいて演算した増加値を演算プラスして昇圧率を変更してバックホー装着時の高昇圧率を変更、即ち走行速度の増加率を変更出来る。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、バックホー43の装着をバックホー装着検出手段42aで検出して昇圧率変更手段1が油圧伝動装置Aの油圧昇圧率を高昇圧率に変更して増速感覚をバックホー43以外の作業機装着時と同じにしてオペレータが運転に戸惑うことが無くなる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、昇圧率変更手段1の高昇圧率にする制御データを容易に変更出来るようになり、装着するバックホー43の機体重量が変わってもその機体重量に合わせた走行速度の増加率を変更出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に示す如く、トラクタ車体10は、前端部のエンジンボディEB内にエンジンEを内装し、エンジンボディEBの後側にクラッチハウジング39を連結し、更にこの後側にミッションケース2を連結し、このミッションケース2の後部両側にはリヤアクスルハウジングRAを設けて、左右の後輪13を軸装する構成としている。又、エンジンE下側のフロントブラケットを支架するフロントアクスルハウジングFAの両側には、ステアリングハンドル11、及びパワステ装置を介して操向連動される前輪12を軸装する構成としている。
【0012】
又、この車体10の上側には、ステアリングポスト11a上のステアリングハンドル11や、運転者の着座するシート45、及びステップフロアS等を配置して、前記エンジンEによって前記前輪12と後輪13を駆動して走行する乗用四輪駆動走行形態に構成している。CPは足踏式のクラッチペダルである。また、FRは車体10の走行方向を前進方向と後進方向に切り換える前後進レバーである。
【0013】
このトラクタ車体10の後端部には、ロータリ耕転装置等の作業機を装着して昇降する三点リンク機構3Pや、リフトアームLA等を有する。又、この車体10の後端のヒッチ42には、バックホー43等の作業機を装着可能とし、又、車体10の前部にはフロントローダ40等の作業機を装着可能に構成している。
【0014】
想像線で示す後シート45aの位置は、前向きのシート45を回動して後向きにした状態を示しており、バックホー43を使用するときの状態である。43aはアウトリガであり、バックホー43を使用するときに下方に延出して地面に接地させ、車体10の後側を少し持ち上げて車体10を安定させるものである。43bはバックホー43を操作する運転台である。55はPTO軸であり、ロータリ等の作業機を駆動する軸であるが、バックホー43を装着しているときには駆動しない構成としている。もちろん、前記三点リンク機構3PやリフトアームLA等も使用しない。
【0015】
運転者の着座するシート45を囲んでサンバイザ60を設ける構成としている。そのサンバイザ60を支える前ピラー60aにエアコンの前送風口95を設け、後ピラー60bに後送風口96を設けている。前記サンバイザ60はキャビンではないので、シート45は閉塞空間とはなっていない。したがって、前記前送風口95と後送風口96はスポットエアコンであり、運転者に直接空調風を当てる構成である。
【0016】
また、サンバイザ60の後側に支持ステー60cを設け、該支持ステー60cに第二後送風口96aを設ける構成としている、そして、第二後送風口96aからも空調風を吹き出して後ろ向きの運転者に当てることで、運転者の作業環境が向上するようになる。
【0017】
運転者がトラクタ車体10の前側に向かって着座した場合には前送風口95から強く空調風が吹き出す構成とし、バックホー43をトラクタ車体10に取り付けて、運転者が後側に向かって着座している場合には後送風口96と第二後送風口96aから空調風が強く吹き出すように構成している。この制御は、バックホー43の着脱で制御を切換えるようにしているが、このバックホー43の装着検出はヒッチ42に設けるバックホー装着センサ(歪ゲージ)42aで行う構成としている。なお、前後送風口95,96からの空調風の吹き出しについては、所定時間ごと断続的に行う構成としてもよい。94はエアコンの操作パネルである。
【0018】
サンバイザ60のルーフに機体の前方を照射する前ワークランプ61と機体の後方を照射する後ワークランプ62を設けている。この前後ワークランプ61,62は左右に一個づつ設け、左右の方向指示器を点灯するとその点灯した側のワークランプが点灯するようにしたり、前後ワークランプ61,62の取付部に左右首振りモータを設けてステアリングハンドル11の旋回操作に伴ってその旋回方向を照射するようにしたり、ステアリングハンドル11の旋回角が一定角より大きくなるか旋回角速度が所定値より大きいと旋回側のワークランプが点灯するようにしたりしても良い。
【0019】
安全装置として、バックホー43の取付をその取付部ヒッチ42に設けるバックホー装着センサ42aで検出して、バックホー43取付時には三点リンク3Pが作動しないようにしている。これにより、三点リンク3Pがバックホー43に当接するのを防止できるようになる。なお、バックホー43の取付は、バックホー用油圧ポンプへの油圧ホースの取付をセンサで感知することで検出するようにしても良い。
【0020】
図2において、前記クラッチハウジング39を含むミッションケース2内には、エンジンEから伝動される出力軸14の軸線上にクラッチ軸15を有して、摩擦多板形態のメインクラッチ16を設ける。このメインクラッチ16は、前記足踏み式のクラッチペダルCPを踏み込むと動力が断たれる構成である。クラッチ軸15からギヤ伝動される前後進軸17には、油圧式の摩擦多板形態の前進クラッチ18Fを有した前進ギヤ19Fと、油圧式の摩擦多板形態の後進クラッチ18Rを有した後進ギヤ19Rを設けて前後進クラッチ18を構成している。前記前後進レバーFRを前進側に操作すると前進クラッチ18Fが接続し、後進側に操作すると後進クラッチ18Rが接続する構成である。
【0021】
メインクラッチ16と前後進クラッチ18は、本発明でいう油圧伝動装置Aで、摩擦多板の接触圧力を昇圧させる率つまり昇圧率を変更することで増速程度を変更出来て、後述する昇圧率変更手段(コントローラ)1で昇圧率を変更制御している。
【0022】
この前後進軸17の後側の主変速軸20上には、四段変速の主変速ギヤ21を配置している。ギヤ20a,20aの伝動が1速、ギヤ20b,20bの伝動が2速、ギヤ20c,20cの伝動が3速、ギヤ20d,20dの伝動が4速である。これらの1速から4速のいずれかに変速された動力が軸36に伝動され、この軸36の後側の走行軸22へ伝動される構成である。この走行軸22の側部に沿って設けられるPTO連動軸23周りに嵌合の副変速軸24との問に、高、低速二段変速の副変速ギヤ25,25を配置する構成としている。
【0023】
走行軸22の後端からリヤデフギヤ26に伝動して後輪軸を駆動すると共に、副変速軸24から前輪連動軸27上のクラッチギヤ28の噛合によって、前輪軸のフロントデフギヤを駆動して、四輪駆動走行可能に構成している。前記PTO連動軸23は、前端部に油圧式の摩擦多板形態のPTOクラッチ4を有し、前記出力軸14からギヤ29、29とギヤ30、30の連動によって伝動される構成である。又、このPTO連動軸23の後部には変速ギヤを有してミッションケース2の後端のPTO軸55(図1参照)を駆動する構成である。
【0024】
バックホー作業油圧ポンプは、その油圧伝動ケースをミッションケース2の外側面に取付け、出力軸14からギヤ29、30の連動によって伝動されるPTOクラッチ4を介してPTO連動軸23にスプライン勘合したポンプ用取出ギヤ(図示省略)で駆動する。
【0025】
このバックホー作業油圧ポンプは、トラクタの後方に装着のバックホー43を油圧操作するものである。トラクタ車体の後方にバックホー43を連結して、このバックホー43のブームシリンダBCや、アームシリンダAC、バケツトシリンダKC、スイングシリンダ(図示せず)、及びアウトリガシリンダ(図示せず)等の各油圧シリンダ、及び前記運転台43b内に装着され操作レバー43c操作によって圧油供給を切換える操作バルブ43d等を、該油圧伝動ケースの油圧ポンプに油圧ホースを介して連結して、この操作バルブ43d等を操作する。
【0026】
このバックホー作業油圧ポンプは、ミッションケース2の伝動機構のPTO連動軸23を介して連動されるため、このPTO連動軸23のPTOクラッチ4を入りにすることにより駆動することができ、作業停止時はこのPTOクラッチ4を切りにする。
【0027】
図3は、バックホー43の操作台65を示している。
後シート45aに座ったオペレータが前後進操作する後シャトルスイッチ68を、同時操作で出力可能の二個のメインスイッチ66とサブスイッチ67で構成すると共に、後進操向を操作する後操向スイッチ69を設けている。後シャトルスイッチ68は、メインスイッチ66とサブスイッチ67を同時に特別の操作注意しながら操作することによって前進駆動したり、後進駆動することができる。
【0028】
前記の後シャトルスイッチ68や、後操向スイッチ69等は、操作台65の右手側手元部に配置している。更に、この手元側にはメインキースイッチ80を設け、前側にはパイロットランプ81、ハザードランプ82等を配置している。又、これらの左手横側にはスロットルレバー73や、後部作業機をワンタッチ操作で昇降する昇降スイッチ78、後部作業機の作業用油圧ポンプ駆動の有無を表示するランプ付きのポンプスイッチ79、後部作業機の昇降高さを調節する高さ調節ダイヤル74、作業用ライトのスイッチ75、前記三点リンク機構3Pに装着するロータリ耕耘装置等の昇降高さを調節する調節ダイヤル76、及び、外部装着の油圧操作レバーを取付けて案内する油圧レバーガイド77等を配置している。
【0029】
次に、マイコンを使ったコントローラ1による走行速度等の自動制御について、図4の制御ブロック図以降で説明する。
図4は、コントローラ1に入力する信号とコントローラ1から出力される制御信号の流れを示す制御ブロック図である。
【0030】
バックホー装着センサ(歪ゲージ)42aでバックホー43をヒッチ42に装着するとそのオン信号が装着信号としてコントローラ1に入力し、前後進レバーFRの前進側或いは後進側へのシフトにより前後進センサ6からそのシフト位置信号がコントローラ1に入力し、操作台65に設ける後シャトルスイッチ68から前後進信号がコントローラ1に入力する。また、ステアリングハンドル11の旋回操作角度すなわち切れ角を検出する切れ角センサ8から切れ角がコントローラ1に入力し、ミッションケー一ス2内の後輪駆動軸の回転から走行速度を検出する車速センサ9から走行速度がコントローラ1に入力し、駐車ブレーキペダル或いは駐車ブレーキレバーの入を検出する駐車ブレーキスイッチ31からその入信号がコントローラ1に入力し、リフトアームLAの昇降位置とその昇降操作レバーの位置をチェックするチェックセンサ32から位置違いチェック信号がコントローラ1に入力する。
【0031】
さらに、PTOチェンジセンサ70からPTO軸55の変速信号がコントローラ1に入力し、リフトコントロールレバーセンサ58からリフト位置信号がコントローラ1に入力し、切れ角センサ8からステアリング11の旋回角度及び前回速度がコントローラ1に入力し、後シャトルスイッチ68から各スイッチの操作信号がコントローラ1に入力し、後走行右ブレーキスイッチ56と後走行左ブレーキスイッチ57からブレーキ信号がコントローラ1に入力する。
【0032】
コントローラ1から出力される制御信号は、油圧前後進クラッチ18を制御する前進ソレノイド33と後進ソレノイド34及び油圧メインクラッチ16を制御する昇圧ソレノイド35に後述する昇圧制御信号が出力され、エンジンEのアクセル制御装置50にエンジン回転制御信号が出力され、ミッションケー一ス2内の左右ブレーキを制御する左ブレーキソレノイド51と右ブレーキソレノイド52に制動信号が出力され、警報ブザー53に警報信号が出力され、三点リンク機構3Pが使用不可の場合に点滅信号が三点リンク警報ランプ54に出力され、バックホー用油圧ポンプ71に駆動信号が出力され、PTO入/切スイッチ72を作動可能にする信号が出力される。
【0033】
次に、コントローラ1で制御される各種の自動制御をフローチャートで説明する。
図5は、バックホー43をトラクタ車体10へ装着した場合に全体の重量が極端に重くなって走行速度が変速速度に達する時間すなわち増速率が低下するのを防ぐ為に、メインクラッチ16と前後進クラッチ18にクラッチ入に伴う油圧の昇圧率を変更する制御である。ステップS1でバックホー装着センサ42aがバックホー43の装着を検出すると、ステップS2で図6の高昇圧カーブHを描く高昇圧データをコントローラ1にセットし、装着を検出しない場合にはステップS3で図6の低昇圧カーブLを描く低昇圧データをコントローラ1にセットする。このことによって、バックホー43の装着時に始動或いは増速操作を行うと昇圧データを用いてメインクラッチ16と前後進クラッチ18を繋いで増速率をバックホー43の非装着時の増速率と同一或いは近似させることが出来る。
【0034】
なお、高昇圧データと低昇圧データは、実験結果によって得られたデータをコントローラ1内の記憶装置に蓄えておく方法と、図7のフローチャートに示す如く、ステップS5でバックホー43の装着を検出するとステップS6で蓄えた低昇圧データに計算式によって補正値を加えて高昇圧データを算出する方法が有り、後者の場合には計算式に入力する補正基礎値を変更して高昇圧データを適宜に変更出来、走行条件によってバックホー43装着時の増速率を変更出来るようになる。
【0035】
図8は、走行中に急旋回を検出すると速度を落とすためにエンジンEの回転数を低下させる制御で、ステップS10で車速センサ9が一定速度以上を検出し、ステップS11で切れ角センサ8が大旋回角を検出すると、ステップS12でアクセル制御装置50にエンジン回転下げ要求をセットする。
【0036】
図9は、ステアリングハンドル11を急速に旋回操作すると速度を落とすために走行速度を低下させる制御で、ステップS14で車速センサ9が一定速度以上を検出し、ステップS15で切れ角センサ8が切れ角速度が一定値を越えたことを検出すると、ステップS16で左ブレーキソレノイド51と右ブレーキソレノイド52に同時にブレーキ作動指令を出力する。
【0037】
図10は、PTO軸55の駆動とバックホー用油圧ポンプ71の駆動を同時に行わないようにする制御で、ステップS18でバックホー装着センサ42aがバックホー43の装着を検出し、ステップS19でPTOチェンジセンサ70がPTOチェンジのニュートラルを検出するとステップS20でバックホー用油圧ポンプ71の駆動を行うPTOソレノイドの出力を許可し、ステップS19でPTOチェンジがニュートラル以外であればステップS21でPTOソレノイドの出力を禁止する。
【0038】
図11の制御では、ステップS23でバックホー装着センサ42aがバックホー43の装着を検出すると、ステップS24でPTO入/切スイッチ72を入力無効にし、バックホー43の装着を検出しないとステップS25でPTO入/切スイッチ72を入力有効にしてこのスイッチ72を入れるとバックホー用油圧ポンプ71が駆動する。スイッチ72が入力無効の場合には、バックホー用油圧ポンプ71のスイッチでバックホー用油圧ポンプ71が駆動する。
【0039】
図12は、バックホーの装着時に高速走行すると危険であるので警報を発する制御である。ステップS27でバックホー装着センサ42aがバックホー43の装着を検出しステップS28で走行速度が一定速度を越えるとステップS29で警報ブザー53に警報を出力し、バックホーの装着を検出しないか走行速度が一定以下であればステップS30で警報の出力をしない。さらに、ステップS29で警報を出力した後にステップS31で左ブレーキソレノイド51と右ブレーキソレノイド52に同時にブレーキ作動指令を出力し、走行速度を減速させる。ステップS30で警報を出さない場合には、ステップS32でブレーキ作動指令を出力しない。なお、ステップS30とステップS32は省略しても良い。
【0040】
図13は、バックホーの装着時に高速走行すると警報を発し、エンジンEの回転を低下する制御である。図12の制御との違いは、ステップS38でブレーキ作動指令を出力した後にステップS39でアクセル制御装置50にアクセル閉指令を出力し減速する点である。
【0041】
図14は、オペレータが後シート45aに座って後シャトル走行中に操作する後走行右ブレーキスイッチ56と後走行左ブレーキスイッチ57を同時にオン操作した場合の制御で、ステップS43で後シャトル走行中であってステップS44で後走行右ブレーキスイッチ56と後走行左ブレーキスイッチ57を同時にオンすれば、ステップS45で左ブレーキソレノイド51と右ブレーキソレノイド52に同時にブレーキ作動指令を出力して制動する。
【0042】
図15は、駐車ブレーキを作用させている場合に後シャトルスイッチ68での走行制御を行えなくする制御で、ステップS47で駐車ブレーキスイッチ31が入を感知するとステップS51で後シャトルスイッチ68の出力を禁止するフラグをセットする。ステップS47で駐車ブレーキの入を感知しないと、ステップS48で後シャトルスイッチ68の出力を禁止するフラグの有無を判定し、ステップS49で後シャトルスイッチ68がニュートラルであるかを判定し、ニュートラルであればステップS50で後シャトルスイッチ68の出力を禁止するフラグをセットする。ステップS48とステップS49の判定がNOであれば何もしない。
【0043】
図16は、リフトアームLAの位置が昇降レバーの設定位置と違う場合に点滅させる三点リンク警報ランプ54の制御で、ステップS55でリフトアームLAの位置が昇降レバーの設定位置と違う場合に点滅させる制御であって、ステップS56でバックホー43を装着していなければ、ステップS57で三点リンク警報ランプ54を点滅させ、ステップS56でバックホー43を装着していればステップS58で三点リンク警報ランプ54を点滅しないようにする。
【0044】
図17は、バックホー43の装着時にリフトコントロールレバーが最下げ位置でなければ警報する制御で、ステップS60でバックホー装着センサ42aがバックホー43の装着を検出し、ステップS61でリフトコントロールレバーセンサ58が最下げ位置を検出しなければ、ステップS62で警報ブザー53に警報を出力し、最下げ位置であればステップS63で警報ブザー53に警報を出力しない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】ミッションケースの伝動機構部の側断面図である。
【図3】バックホーの操作台の平面図である。
【図4】制御ブロック図である。
【図5】制御フローチャート図である。
【図6】制御データのグラフである。
【図7】制御フローチャート図である。
【図8】制御フローチャート図である。
【図9】制御フローチャート図である。
【図10】制御フローチャート図である。
【図11】制御フローチャート図である。
【図12】制御フローチャート図である。
【図13】制御フローチャート図である。
【図14】制御フローチャート図である。
【図15】制御フローチャート図である。
【図16】制御フローチャート図である。
【図17】制御フローチャート図である。
【符号の説明】
【0046】
A 油圧伝動装置(メインクラッチ16,前後進クラッチ18)
1 昇圧率変更手段(コントローラ)
2 ミッションケース
43 バックホー
42a バックホー装着検出手段(センサ)
【技術分野】
【0001】
この発明は、バックホーを着脱可能にした作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタ車体の後方にバックホーを装着して、トラクタのミッションケース後部に設けられるリフトアーム昇降用の油圧シリンダによって、バックホーを昇降させるようにしたバックホー装着車両が特開2003−129513号公報や特開2006−28935号公報及び特開2006−249882号公報で知られている。
【特許文献1】特開2003−129513号公報
【特許文献2】特開2006−28935号公報
【特許文献3】特開2006−249882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
トラクタは、機体の後部にバックホーを装着して土木作業を行ったり、ロータリ耕耘装置等の農作業機を装着して農作業を行えるようにしている。通常の農作業機はトラクタの車体重量と比較して1/3以下程度で軽いために作業機装着時と非装着時での走行速度増速率つまり設定速度に達するまでの時間の長さにあまり違いが無いが、バックホーの機体重量はトラクタの車体重量の1/2程度で、トラクタにバックホーを装着すると走行速度増速率が極端に遅くなる。
【0004】
そこで、本発明では、トラクタ等の作業車両に通常の作業機を装着した場合の走行速度増速率とバックホーを装着した場合の走行速度増速率をなるべく同じにして、オペレータが運転操作に戸惑わないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、油圧伝動装置Aの油圧昇圧によって設定走行速度まで増速するミッションケース2を備えた作業車両において、油圧伝動装置Aの油圧昇圧率を変更する昇圧率変更手段1とバックホー43の装着を検出するバックホー装着検出手段42aを設け、該バックホー装着検出手段42aがバックホー43の装着を検出すると、前記昇圧率変更手段1を高昇圧率に変更すべくしてなる作業車両とする。
【0006】
このように構成すると、バックホー43を作業車両に装着した時に昇圧率変更手段1が油圧伝動装置Aの油圧昇圧率を高昇圧率に変更して走行速度の増速がバックホー43以外の作業機を装着した時の増速感覚と同一或いは同一に近くなる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記昇圧率変更手段1を高昇圧率に変更するための制御データを通常昇圧率データに対して演算した増加値を加算して制御すべくしてなる請求項1に記載の作業車両とする。
【0008】
このように構成すると、バックホーを作業車両に装着した時に昇圧率変更手段1が入力値に基づいて演算した増加値を演算プラスして昇圧率を変更してバックホー装着時の高昇圧率を変更、即ち走行速度の増加率を変更出来る。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、バックホー43の装着をバックホー装着検出手段42aで検出して昇圧率変更手段1が油圧伝動装置Aの油圧昇圧率を高昇圧率に変更して増速感覚をバックホー43以外の作業機装着時と同じにしてオペレータが運転に戸惑うことが無くなる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、昇圧率変更手段1の高昇圧率にする制御データを容易に変更出来るようになり、装着するバックホー43の機体重量が変わってもその機体重量に合わせた走行速度の増加率を変更出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に示す如く、トラクタ車体10は、前端部のエンジンボディEB内にエンジンEを内装し、エンジンボディEBの後側にクラッチハウジング39を連結し、更にこの後側にミッションケース2を連結し、このミッションケース2の後部両側にはリヤアクスルハウジングRAを設けて、左右の後輪13を軸装する構成としている。又、エンジンE下側のフロントブラケットを支架するフロントアクスルハウジングFAの両側には、ステアリングハンドル11、及びパワステ装置を介して操向連動される前輪12を軸装する構成としている。
【0012】
又、この車体10の上側には、ステアリングポスト11a上のステアリングハンドル11や、運転者の着座するシート45、及びステップフロアS等を配置して、前記エンジンEによって前記前輪12と後輪13を駆動して走行する乗用四輪駆動走行形態に構成している。CPは足踏式のクラッチペダルである。また、FRは車体10の走行方向を前進方向と後進方向に切り換える前後進レバーである。
【0013】
このトラクタ車体10の後端部には、ロータリ耕転装置等の作業機を装着して昇降する三点リンク機構3Pや、リフトアームLA等を有する。又、この車体10の後端のヒッチ42には、バックホー43等の作業機を装着可能とし、又、車体10の前部にはフロントローダ40等の作業機を装着可能に構成している。
【0014】
想像線で示す後シート45aの位置は、前向きのシート45を回動して後向きにした状態を示しており、バックホー43を使用するときの状態である。43aはアウトリガであり、バックホー43を使用するときに下方に延出して地面に接地させ、車体10の後側を少し持ち上げて車体10を安定させるものである。43bはバックホー43を操作する運転台である。55はPTO軸であり、ロータリ等の作業機を駆動する軸であるが、バックホー43を装着しているときには駆動しない構成としている。もちろん、前記三点リンク機構3PやリフトアームLA等も使用しない。
【0015】
運転者の着座するシート45を囲んでサンバイザ60を設ける構成としている。そのサンバイザ60を支える前ピラー60aにエアコンの前送風口95を設け、後ピラー60bに後送風口96を設けている。前記サンバイザ60はキャビンではないので、シート45は閉塞空間とはなっていない。したがって、前記前送風口95と後送風口96はスポットエアコンであり、運転者に直接空調風を当てる構成である。
【0016】
また、サンバイザ60の後側に支持ステー60cを設け、該支持ステー60cに第二後送風口96aを設ける構成としている、そして、第二後送風口96aからも空調風を吹き出して後ろ向きの運転者に当てることで、運転者の作業環境が向上するようになる。
【0017】
運転者がトラクタ車体10の前側に向かって着座した場合には前送風口95から強く空調風が吹き出す構成とし、バックホー43をトラクタ車体10に取り付けて、運転者が後側に向かって着座している場合には後送風口96と第二後送風口96aから空調風が強く吹き出すように構成している。この制御は、バックホー43の着脱で制御を切換えるようにしているが、このバックホー43の装着検出はヒッチ42に設けるバックホー装着センサ(歪ゲージ)42aで行う構成としている。なお、前後送風口95,96からの空調風の吹き出しについては、所定時間ごと断続的に行う構成としてもよい。94はエアコンの操作パネルである。
【0018】
サンバイザ60のルーフに機体の前方を照射する前ワークランプ61と機体の後方を照射する後ワークランプ62を設けている。この前後ワークランプ61,62は左右に一個づつ設け、左右の方向指示器を点灯するとその点灯した側のワークランプが点灯するようにしたり、前後ワークランプ61,62の取付部に左右首振りモータを設けてステアリングハンドル11の旋回操作に伴ってその旋回方向を照射するようにしたり、ステアリングハンドル11の旋回角が一定角より大きくなるか旋回角速度が所定値より大きいと旋回側のワークランプが点灯するようにしたりしても良い。
【0019】
安全装置として、バックホー43の取付をその取付部ヒッチ42に設けるバックホー装着センサ42aで検出して、バックホー43取付時には三点リンク3Pが作動しないようにしている。これにより、三点リンク3Pがバックホー43に当接するのを防止できるようになる。なお、バックホー43の取付は、バックホー用油圧ポンプへの油圧ホースの取付をセンサで感知することで検出するようにしても良い。
【0020】
図2において、前記クラッチハウジング39を含むミッションケース2内には、エンジンEから伝動される出力軸14の軸線上にクラッチ軸15を有して、摩擦多板形態のメインクラッチ16を設ける。このメインクラッチ16は、前記足踏み式のクラッチペダルCPを踏み込むと動力が断たれる構成である。クラッチ軸15からギヤ伝動される前後進軸17には、油圧式の摩擦多板形態の前進クラッチ18Fを有した前進ギヤ19Fと、油圧式の摩擦多板形態の後進クラッチ18Rを有した後進ギヤ19Rを設けて前後進クラッチ18を構成している。前記前後進レバーFRを前進側に操作すると前進クラッチ18Fが接続し、後進側に操作すると後進クラッチ18Rが接続する構成である。
【0021】
メインクラッチ16と前後進クラッチ18は、本発明でいう油圧伝動装置Aで、摩擦多板の接触圧力を昇圧させる率つまり昇圧率を変更することで増速程度を変更出来て、後述する昇圧率変更手段(コントローラ)1で昇圧率を変更制御している。
【0022】
この前後進軸17の後側の主変速軸20上には、四段変速の主変速ギヤ21を配置している。ギヤ20a,20aの伝動が1速、ギヤ20b,20bの伝動が2速、ギヤ20c,20cの伝動が3速、ギヤ20d,20dの伝動が4速である。これらの1速から4速のいずれかに変速された動力が軸36に伝動され、この軸36の後側の走行軸22へ伝動される構成である。この走行軸22の側部に沿って設けられるPTO連動軸23周りに嵌合の副変速軸24との問に、高、低速二段変速の副変速ギヤ25,25を配置する構成としている。
【0023】
走行軸22の後端からリヤデフギヤ26に伝動して後輪軸を駆動すると共に、副変速軸24から前輪連動軸27上のクラッチギヤ28の噛合によって、前輪軸のフロントデフギヤを駆動して、四輪駆動走行可能に構成している。前記PTO連動軸23は、前端部に油圧式の摩擦多板形態のPTOクラッチ4を有し、前記出力軸14からギヤ29、29とギヤ30、30の連動によって伝動される構成である。又、このPTO連動軸23の後部には変速ギヤを有してミッションケース2の後端のPTO軸55(図1参照)を駆動する構成である。
【0024】
バックホー作業油圧ポンプは、その油圧伝動ケースをミッションケース2の外側面に取付け、出力軸14からギヤ29、30の連動によって伝動されるPTOクラッチ4を介してPTO連動軸23にスプライン勘合したポンプ用取出ギヤ(図示省略)で駆動する。
【0025】
このバックホー作業油圧ポンプは、トラクタの後方に装着のバックホー43を油圧操作するものである。トラクタ車体の後方にバックホー43を連結して、このバックホー43のブームシリンダBCや、アームシリンダAC、バケツトシリンダKC、スイングシリンダ(図示せず)、及びアウトリガシリンダ(図示せず)等の各油圧シリンダ、及び前記運転台43b内に装着され操作レバー43c操作によって圧油供給を切換える操作バルブ43d等を、該油圧伝動ケースの油圧ポンプに油圧ホースを介して連結して、この操作バルブ43d等を操作する。
【0026】
このバックホー作業油圧ポンプは、ミッションケース2の伝動機構のPTO連動軸23を介して連動されるため、このPTO連動軸23のPTOクラッチ4を入りにすることにより駆動することができ、作業停止時はこのPTOクラッチ4を切りにする。
【0027】
図3は、バックホー43の操作台65を示している。
後シート45aに座ったオペレータが前後進操作する後シャトルスイッチ68を、同時操作で出力可能の二個のメインスイッチ66とサブスイッチ67で構成すると共に、後進操向を操作する後操向スイッチ69を設けている。後シャトルスイッチ68は、メインスイッチ66とサブスイッチ67を同時に特別の操作注意しながら操作することによって前進駆動したり、後進駆動することができる。
【0028】
前記の後シャトルスイッチ68や、後操向スイッチ69等は、操作台65の右手側手元部に配置している。更に、この手元側にはメインキースイッチ80を設け、前側にはパイロットランプ81、ハザードランプ82等を配置している。又、これらの左手横側にはスロットルレバー73や、後部作業機をワンタッチ操作で昇降する昇降スイッチ78、後部作業機の作業用油圧ポンプ駆動の有無を表示するランプ付きのポンプスイッチ79、後部作業機の昇降高さを調節する高さ調節ダイヤル74、作業用ライトのスイッチ75、前記三点リンク機構3Pに装着するロータリ耕耘装置等の昇降高さを調節する調節ダイヤル76、及び、外部装着の油圧操作レバーを取付けて案内する油圧レバーガイド77等を配置している。
【0029】
次に、マイコンを使ったコントローラ1による走行速度等の自動制御について、図4の制御ブロック図以降で説明する。
図4は、コントローラ1に入力する信号とコントローラ1から出力される制御信号の流れを示す制御ブロック図である。
【0030】
バックホー装着センサ(歪ゲージ)42aでバックホー43をヒッチ42に装着するとそのオン信号が装着信号としてコントローラ1に入力し、前後進レバーFRの前進側或いは後進側へのシフトにより前後進センサ6からそのシフト位置信号がコントローラ1に入力し、操作台65に設ける後シャトルスイッチ68から前後進信号がコントローラ1に入力する。また、ステアリングハンドル11の旋回操作角度すなわち切れ角を検出する切れ角センサ8から切れ角がコントローラ1に入力し、ミッションケー一ス2内の後輪駆動軸の回転から走行速度を検出する車速センサ9から走行速度がコントローラ1に入力し、駐車ブレーキペダル或いは駐車ブレーキレバーの入を検出する駐車ブレーキスイッチ31からその入信号がコントローラ1に入力し、リフトアームLAの昇降位置とその昇降操作レバーの位置をチェックするチェックセンサ32から位置違いチェック信号がコントローラ1に入力する。
【0031】
さらに、PTOチェンジセンサ70からPTO軸55の変速信号がコントローラ1に入力し、リフトコントロールレバーセンサ58からリフト位置信号がコントローラ1に入力し、切れ角センサ8からステアリング11の旋回角度及び前回速度がコントローラ1に入力し、後シャトルスイッチ68から各スイッチの操作信号がコントローラ1に入力し、後走行右ブレーキスイッチ56と後走行左ブレーキスイッチ57からブレーキ信号がコントローラ1に入力する。
【0032】
コントローラ1から出力される制御信号は、油圧前後進クラッチ18を制御する前進ソレノイド33と後進ソレノイド34及び油圧メインクラッチ16を制御する昇圧ソレノイド35に後述する昇圧制御信号が出力され、エンジンEのアクセル制御装置50にエンジン回転制御信号が出力され、ミッションケー一ス2内の左右ブレーキを制御する左ブレーキソレノイド51と右ブレーキソレノイド52に制動信号が出力され、警報ブザー53に警報信号が出力され、三点リンク機構3Pが使用不可の場合に点滅信号が三点リンク警報ランプ54に出力され、バックホー用油圧ポンプ71に駆動信号が出力され、PTO入/切スイッチ72を作動可能にする信号が出力される。
【0033】
次に、コントローラ1で制御される各種の自動制御をフローチャートで説明する。
図5は、バックホー43をトラクタ車体10へ装着した場合に全体の重量が極端に重くなって走行速度が変速速度に達する時間すなわち増速率が低下するのを防ぐ為に、メインクラッチ16と前後進クラッチ18にクラッチ入に伴う油圧の昇圧率を変更する制御である。ステップS1でバックホー装着センサ42aがバックホー43の装着を検出すると、ステップS2で図6の高昇圧カーブHを描く高昇圧データをコントローラ1にセットし、装着を検出しない場合にはステップS3で図6の低昇圧カーブLを描く低昇圧データをコントローラ1にセットする。このことによって、バックホー43の装着時に始動或いは増速操作を行うと昇圧データを用いてメインクラッチ16と前後進クラッチ18を繋いで増速率をバックホー43の非装着時の増速率と同一或いは近似させることが出来る。
【0034】
なお、高昇圧データと低昇圧データは、実験結果によって得られたデータをコントローラ1内の記憶装置に蓄えておく方法と、図7のフローチャートに示す如く、ステップS5でバックホー43の装着を検出するとステップS6で蓄えた低昇圧データに計算式によって補正値を加えて高昇圧データを算出する方法が有り、後者の場合には計算式に入力する補正基礎値を変更して高昇圧データを適宜に変更出来、走行条件によってバックホー43装着時の増速率を変更出来るようになる。
【0035】
図8は、走行中に急旋回を検出すると速度を落とすためにエンジンEの回転数を低下させる制御で、ステップS10で車速センサ9が一定速度以上を検出し、ステップS11で切れ角センサ8が大旋回角を検出すると、ステップS12でアクセル制御装置50にエンジン回転下げ要求をセットする。
【0036】
図9は、ステアリングハンドル11を急速に旋回操作すると速度を落とすために走行速度を低下させる制御で、ステップS14で車速センサ9が一定速度以上を検出し、ステップS15で切れ角センサ8が切れ角速度が一定値を越えたことを検出すると、ステップS16で左ブレーキソレノイド51と右ブレーキソレノイド52に同時にブレーキ作動指令を出力する。
【0037】
図10は、PTO軸55の駆動とバックホー用油圧ポンプ71の駆動を同時に行わないようにする制御で、ステップS18でバックホー装着センサ42aがバックホー43の装着を検出し、ステップS19でPTOチェンジセンサ70がPTOチェンジのニュートラルを検出するとステップS20でバックホー用油圧ポンプ71の駆動を行うPTOソレノイドの出力を許可し、ステップS19でPTOチェンジがニュートラル以外であればステップS21でPTOソレノイドの出力を禁止する。
【0038】
図11の制御では、ステップS23でバックホー装着センサ42aがバックホー43の装着を検出すると、ステップS24でPTO入/切スイッチ72を入力無効にし、バックホー43の装着を検出しないとステップS25でPTO入/切スイッチ72を入力有効にしてこのスイッチ72を入れるとバックホー用油圧ポンプ71が駆動する。スイッチ72が入力無効の場合には、バックホー用油圧ポンプ71のスイッチでバックホー用油圧ポンプ71が駆動する。
【0039】
図12は、バックホーの装着時に高速走行すると危険であるので警報を発する制御である。ステップS27でバックホー装着センサ42aがバックホー43の装着を検出しステップS28で走行速度が一定速度を越えるとステップS29で警報ブザー53に警報を出力し、バックホーの装着を検出しないか走行速度が一定以下であればステップS30で警報の出力をしない。さらに、ステップS29で警報を出力した後にステップS31で左ブレーキソレノイド51と右ブレーキソレノイド52に同時にブレーキ作動指令を出力し、走行速度を減速させる。ステップS30で警報を出さない場合には、ステップS32でブレーキ作動指令を出力しない。なお、ステップS30とステップS32は省略しても良い。
【0040】
図13は、バックホーの装着時に高速走行すると警報を発し、エンジンEの回転を低下する制御である。図12の制御との違いは、ステップS38でブレーキ作動指令を出力した後にステップS39でアクセル制御装置50にアクセル閉指令を出力し減速する点である。
【0041】
図14は、オペレータが後シート45aに座って後シャトル走行中に操作する後走行右ブレーキスイッチ56と後走行左ブレーキスイッチ57を同時にオン操作した場合の制御で、ステップS43で後シャトル走行中であってステップS44で後走行右ブレーキスイッチ56と後走行左ブレーキスイッチ57を同時にオンすれば、ステップS45で左ブレーキソレノイド51と右ブレーキソレノイド52に同時にブレーキ作動指令を出力して制動する。
【0042】
図15は、駐車ブレーキを作用させている場合に後シャトルスイッチ68での走行制御を行えなくする制御で、ステップS47で駐車ブレーキスイッチ31が入を感知するとステップS51で後シャトルスイッチ68の出力を禁止するフラグをセットする。ステップS47で駐車ブレーキの入を感知しないと、ステップS48で後シャトルスイッチ68の出力を禁止するフラグの有無を判定し、ステップS49で後シャトルスイッチ68がニュートラルであるかを判定し、ニュートラルであればステップS50で後シャトルスイッチ68の出力を禁止するフラグをセットする。ステップS48とステップS49の判定がNOであれば何もしない。
【0043】
図16は、リフトアームLAの位置が昇降レバーの設定位置と違う場合に点滅させる三点リンク警報ランプ54の制御で、ステップS55でリフトアームLAの位置が昇降レバーの設定位置と違う場合に点滅させる制御であって、ステップS56でバックホー43を装着していなければ、ステップS57で三点リンク警報ランプ54を点滅させ、ステップS56でバックホー43を装着していればステップS58で三点リンク警報ランプ54を点滅しないようにする。
【0044】
図17は、バックホー43の装着時にリフトコントロールレバーが最下げ位置でなければ警報する制御で、ステップS60でバックホー装着センサ42aがバックホー43の装着を検出し、ステップS61でリフトコントロールレバーセンサ58が最下げ位置を検出しなければ、ステップS62で警報ブザー53に警報を出力し、最下げ位置であればステップS63で警報ブザー53に警報を出力しない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】ミッションケースの伝動機構部の側断面図である。
【図3】バックホーの操作台の平面図である。
【図4】制御ブロック図である。
【図5】制御フローチャート図である。
【図6】制御データのグラフである。
【図7】制御フローチャート図である。
【図8】制御フローチャート図である。
【図9】制御フローチャート図である。
【図10】制御フローチャート図である。
【図11】制御フローチャート図である。
【図12】制御フローチャート図である。
【図13】制御フローチャート図である。
【図14】制御フローチャート図である。
【図15】制御フローチャート図である。
【図16】制御フローチャート図である。
【図17】制御フローチャート図である。
【符号の説明】
【0046】
A 油圧伝動装置(メインクラッチ16,前後進クラッチ18)
1 昇圧率変更手段(コントローラ)
2 ミッションケース
43 バックホー
42a バックホー装着検出手段(センサ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧伝動装置(A)の油圧昇圧によって設定走行速度まで増速するミッションケース(2)を備えた作業車両において、油圧伝動装置(A)の油圧昇圧率を変更する昇圧率変更手段(1)とバックホー(43)の装着を検出するバックホー装着検出手段(42a)を設け、該バックホー装着検出手段(42a)がバックホー(43)の装着を検出すると、前記昇圧率変更手段(1)を高昇圧率に変更すべくしてなる作業車両。
【請求項2】
前記昇圧率変更手段(1)を高昇圧率に変更するための制御データを通常昇圧率データに対して演算した増加値を加算して制御すべくしてなる請求項1に記載の作業車両。
【請求項1】
油圧伝動装置(A)の油圧昇圧によって設定走行速度まで増速するミッションケース(2)を備えた作業車両において、油圧伝動装置(A)の油圧昇圧率を変更する昇圧率変更手段(1)とバックホー(43)の装着を検出するバックホー装着検出手段(42a)を設け、該バックホー装着検出手段(42a)がバックホー(43)の装着を検出すると、前記昇圧率変更手段(1)を高昇圧率に変更すべくしてなる作業車両。
【請求項2】
前記昇圧率変更手段(1)を高昇圧率に変更するための制御データを通常昇圧率データに対して演算した増加値を加算して制御すべくしてなる請求項1に記載の作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−156000(P2009−156000A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338787(P2007−338787)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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