説明

作業車両

【課題】簡易な構造によってエンジン室内の換気を行うことができる作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両1において、エンジン室26は、エンジン14を内部に収納する。ラジエータ15は、エンジンを冷却するための装置である。送風装置は、ラジエータ15を通る空気の流れを生成する。ラジエータ室25は、ラジエータ15および送風装置16を内部に収納する。隔壁24は、エンジン室26とラジエータ室25との間を仕切り、ラジエータ15および送風装置16に対して空気の流れの下流側に位置している。また、隔壁24には、エンジン室26とラジエータ室25とを連通させる開口51〜54が設けられている。遮風部材61〜64は、ラジエータ室25側において開口51〜54に対して配置され、隔壁24に沿って流れる空気の流れの上流側を覆い且つ下流側を開くように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールローダーなどの作業車両は、エンジンと、エンジンを冷却するためのラジエータと、送風装置とを備えている。エンジンは、車両本体のエンジン室に収納されている。ラジエータおよび送風装置は、エンジン室に隣接して配置されたラジエータ室に収納されている。そして、エンジン室とラジエータ室とは隔壁によって仕切られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2では、隔壁にデフレクタが設けられた作業車両が開示されている。デフレクタはモータによって回転駆動される。また、隔壁には貫通孔が設けられており、デフレクタに対向して配置されるシュラウドや、モータを隔壁に取り付けるための支持部材などが隔壁に取り付けられている。そして、デフレクタが回転することにより、エンジン室からラジエータ室へ向かう空気の流れが生成される。
【特許文献1】特開平7−166862号公報
【特許文献2】米国特許第6302066号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作業車両では、エンジン室が隔壁によって閉じられているため、エンジン室内の空気を換気することが困難である。この場合、エンジン室内およびエンジンの温度が過度に上昇する恐れがある。
【0005】
また、特許文献2に記載の作業車両では、デフレクタが回転することによってエンジン室内の空気を換気することができる。しかし、上述したように、デフレクタ、シュラウド、支持部材などの部材が必要となり、隔壁の周囲の構造が複雑になる。
【0006】
本発明の課題は、簡易な構造によってエンジン室内の換気を行うことができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る作業車両は、エンジンと、エンジン室と、ラジエータと、送風装置と、ラジエータ室と、隔壁と、遮風部材とを備える。エンジン室は、エンジンを内部に収納する。ラジエータは、エンジンを冷却するための装置である。送風装置は、ラジエータを通る空気の流れを生成する。ラジエータ室は、ラジエータおよび送風装置を内部に収納する。隔壁は、エンジン室とラジエータ室との間を仕切り、ラジエータおよび送風装置に対して空気の流れの下流側に位置している。また、隔壁には、エンジン室とラジエータ室とを連通させる開口が設けられている。遮風部材は、ラジエータ室側において、開口に対して配置され、隔壁に沿って流れる空気の流れの上流側を覆い且つ下流側を開くように設けられる。
【0008】
この作業車両では、送風装置によって生成された空気の流れが隔壁に向かって流れる。隔壁には開口が設けられているが、開口に対して空気が流入し易い側が遮風部材によって覆われる。このため、開口からエンジン室内へ空気が流れることを抑えることができる。また、開口に対して空気が流入し難い側が開かれている。このため、遮風部材の表面に沿って空気が流れると、隔壁や遮風部材の表面に沿った空気の流れに起因して、エンジン室から開口を通りラジエータ室へ向かう空気の流れが生成される。これにより、エンジン室内の換気が行われる。このように、本発明に係る作業車両では、簡易な構造によってエンジン室内の換気を行うことができる。
【0009】
第2発明に係る作業車両は、第1発明の作業車両であって、送風装置は、回転して軸方向に送風するファンを有する。そして、遮風部材は、ファンの軸方向から見て、開口に対して、ファンの回転方向の上流側を覆い且つ下流側を開くように設けられる。
【0010】
この作業車両では、開口に対して空気が流入し易い側が遮風部材によって覆われる。このため、開口からエンジン室内へ空気が流れることを抑えることができる。また、開口に対して空気が流入し難い側は開かれている。このため、エンジン室内へ空気が逆流することを抑えながら、エンジン室内から開口を通りラジエータ室へと向かう空気の流れを促進させることができる。
【0011】
第3発明に係る作業車両は、第1発明の作業車両であって、ラジエータ室には、空気の吹出口が設けられている。そして、遮風部材は、開口に対して吹出口に遠い側を覆い且つ吹出口に近い側を開くように設けられる。
【0012】
この作業車両では、開口に対して空気が流入し易い側が遮風部材によって覆われる。このため、開口からエンジン室内へ空気が流れることを抑えることができる。また、開口に対して空気が流入し難い側は開かれている。このため、エンジン室内へ空気が逆流することを抑えながら、エンジン室内から開口を通りラジエータ室へと向かう空気の流れを促進させることができる。
【0013】
第4発明に係る作業車両は、第1発明の作業車両であって、送風装置は、回転して軸方向に送風するファンを有する。そして、開口および遮風部材の少なくとも一部は、ファンの軸方向から見てファンの回転範囲に対向するように配置される。
【0014】
この作業車両では、隔壁に沿った空気の流れが比較的安定している位置に、開口および遮風部材が設けられる。このため、エンジン室内から開口を通りラジエータ室へと向かう空気の流れを容易に生成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る作業車両では、簡易な構造によってエンジン室内の換気を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る作業車両1を図1および図2に示す。この作業車両1は、ホイールローダーであり、タイヤ4a,4bが回転駆動されることにより自走可能であると共に作業機3を用いて所望の作業を行うことができる。なお、図1は、作業車両1を斜め後方から見た外観斜視図であり、図2は、作業車両1の後部の内部構造を示す図である。
【0017】
〔外観構成〕
この作業車両1は、車両本体2、作業機3、タイヤ4a,4bを備えている。
【0018】
車両本体2の前部には、作業機3および一対のフロントタイヤ4aが取り付けられている。作業機3は、油圧ポンプ(図示せず)からの圧油によって駆動される装置であり、車両本体2の前部に装着されたリフトアーム6と、リフトアーム6の先端に取り付けられたバケット7と、これらを駆動する作業機シリンダ8とを有する。
【0019】
車両本体2の中央には運転室5が載置されている。運転室5の内部には、オペレータが着座するシートや各種の操作装置が設けられている。
【0020】
車両本体2の後部は、タンク10、エンジンフード11、背面グリル12、車体フレーム13(図2参照)などによって構成されており、後述するエンジン14、ラジエータ15、送風装置16などを収納する収納空間が内部に設けられている。
【0021】
タンク10は、運転室5の後方に配置されており、作業機3を駆動するための作動油を内部に貯留する。
【0022】
エンジンフード11は、タンク10の後方に配置されており、収納空間の上方および両側方を覆う部材である。エンジンフード11の上面からは、エアクリーナー17や排気管18が上方へ突出している。
【0023】
背面グリル12は、エンジンフード11の後方に設けられており、収納空間の後方を覆う部材である。背面グリル12には、後述するラジエータ室25の内部に連通する背面吸込口23が設けられている。なお、背面吸込口23は、格子状の部材によって複数のスリット状に区切られている。また、背面グリル12は、上端部を中心に回動可能に設けられており、ラジエータ室25を開閉することができる。
【0024】
車体フレーム13は、タンク10、エンジンフード11、背面グリル12などを支持しており、収納空間の下方を覆っている。車体フレーム13の両側方には、リアタイヤ4bがそれぞれ設けられている。
【0025】
〔内部構成〕
図2に示すように、作業車両1の収納空間は、隔壁24によって前後に仕切られており、前側にエンジン室26、後側にラジエータ室25が設けられている。
【0026】
エンジン室26にはエンジン14が収納されている。また、エンジン室26の両側面には側面吸込口28が設けられている。なお、図2においては、エンジン室26の一側面の側面吸込口28のみを図示しており、他側面の側面吸込口28は省略している。また、エンジン室26の内部においてエンジン14の上方の空間には、エンジン14に接続される配管(図示せず)が配設されている。
【0027】
ラジエータ室25には、ラジエータ15および送風装置16が収容されている。ラジエータ室25の両側面には、ラジエータ室25の内部に連通する側面吹出口21,22(図6参照)が設けられている。図6に示すように、車両本体2の右側面に設けられる側面吹出口21を以下、「第1側面吹出口21」と呼ぶ。また、車両本体2の左側面に設けられる側面吹出口22を以下、「第2側面吹出口22」と呼ぶ。
【0028】
図2に示すように、第1側面吹出口21は、側面視において、ラジエータ15と隔壁24との間に配置されている。また、第1側面吹出口21は、第1上部吹出口21aと第1下部吹出口21bとを有する。第1上部吹出口21aと第1下部吹出口21bとは上下方向に並んで配置されており、第1上部吹出口21aは第1下部吹出口21bの上方に位置している。第1上部吹出口21aと第1下部吹出口21bとは、それぞれ水平方向に延びる複数のスリット状に区切られている。
【0029】
第2側面吹出口22は、第1側面吹出口21と同様の構造であり、第2上部吹出口22aと第2下部吹出口22bとを有する(図6参照)。
【0030】
また、ラジエータ室25の上面には、ラジエータ室25の内部に連通する上面吹出口29が設けられている。上面吹出口29は、側面視において、第1側部吹出口21から隔壁24の傾斜部32(後述)までに渡って設けられている。上面吹出口29は、格子状の部材によって複数のスリット状に区切られている。
【0031】
なお、第1側面吹出口21および第2側面吹出口22の内側には、複数の案内部材33が設けられている(図6参照)。案内部材33は、空気が第1側面吹出口21および第2側面吹出口22から斜め上方へ向けて吹出されるように空気を案内する部材である。なお、図6においては、一部の案内部材33にのみ符号を付して他は省略している。
【0032】
図2に示すように、エンジン14は、エンジン室26に収納されており、隔壁24の前方に位置している。
【0033】
ラジエータ15は、冷却液を循環させることにより、エンジン14を冷却する装置である。ラジエータ15は、ラジエータ室25に収納されており、隔壁24の後方に位置している。
【0034】
また、ラジエータ15の後方にはアフタークーラ41やオイルクーラ42などの冷却用機器が配置されている。アフタークーラ41は、エンジン14の性能を向上させるために、エンジン14に対して供給された圧縮空気を冷却する。オイルクーラ42は、油圧機器に供給される作動油を冷却する。
【0035】
送風装置16は、油圧モータ38と、冷却ファン27と、シュラウド39とを有している。冷却ファン27は、軸流ファンであり、油圧モータ38によって回転駆動されることにより、軸方向に送風する。冷却ファン27の回転軸は、作業車両1の前後方向に沿って配置されている。シュラウド39は、冷却ファン27の送風性能を向上させるため、冷却ファン27の周りを取り囲むように配設されている。送風装置16は、冷却ファン27を回転駆動することにより、背面吸込口23からラジエータ室25内に吸込まれラジエータ15を通る空気の流れを生成する。送風装置16は、ラジエータ室25に収納されており、ラジエータ15とエンジン14との間に配置されている。
【0036】
隔壁24は、エンジン室26とラジエータ室25との間を仕切る部材である。隔壁24の上端はラジエータ室25の天井面に達している。また、隔壁24の下端はラジエータ室25の底面に達している。隔壁24は、送風装置16と、エンジン14との間に位置している。すなわち、隔壁24は、ラジエータ15および送風装置16に対して、送風装置16によって生成される空気の流れの下流側に位置している。図3に示すように、隔壁24は、本体部31と、傾斜部32とを有する。本体部31は、上下方向に沿って配置されている。本体部31は、上端の中央部が下方に凹んだ形状を有している。傾斜部32は、本体部31の凹部34に配置されている。傾斜部32は、上側が下側よりも前方にすなわちエンジン室26側に位置するように傾斜している。傾斜部32の下端は、本体部31の凹部の縁部と繋がっている。また、傾斜部32の右側端と本体部31とは、第1側面部35によって連結されている。また、傾斜部32の左側端と本体部31とは、第2側面部36によって連結されている。このように、傾斜部32と本体部31との間は、第1側面部35および第2側面部36によって閉じられている。
【0037】
また、隔壁24には、エンジン室26とラジエータ室25とを連通させる複数の開口51〜54が設けられている。具体的には、背面視において、本体部31の凹部34の右側方に第1開口51が設けられ、凹部34の左側方に第2開口52が設けられている。第1開口51と第2開口52とは概ね同じ形状であり、上下方向に細長い形状を有している。また、第1開口51と第2開口52とは同じ高さ位置に配置されている。第1開口51と第2開口52とは、背面視において、上述した第1上部吹出口21aおよび第2上部吹出口22aとそれぞれ同じ高さ位置に配置されている(図6参照)。また、第1開口51の下方には第3開口53が設けられており、第2開口52の下方には第4開口54が設けられている。第3開口53と第4開口54とは概ね同じ形状であり、上下方向に細長い形状を有している。また、第3開口53と第4開口54とは、第1開口51および第2開口52よりも上下方向に長い形状を有する。第3開口53と第4開口54とは同じ高さ位置に配置されており、背面視において、上述した第1下部吹出口21bおよび第2下部吹出口22bと同じ高さ位置に配置されている(図6参照)。
【0038】
なお、隔壁24に設けられている複数の孔55a〜55cには、エンジン14とラジエータ15とをつなぐ配管が通される。また、隔壁24の第1側面部35および第2側面部36に設けられている孔55d,55eには、車両本体2のフレームの一部が通される。
【0039】
隔壁24のラジエータ室25側には、各開口51〜54に対して配置される複数の遮風部材61〜64が設けられている。具体的には、第1開口51に対して第1遮風部材61が設けられている。第2開口52に対して第2遮風部材62が設けられている。第3開口53に対して第3遮風部材63が設けられている。また、第4開口54に対して第4遮風部材64が設けられている。
【0040】
図3に示すように、第1遮風部材61は、背面視において第1開口51の右側を開き、第1開口51の左側、上側、下側、後側を閉じる。すなわち、図6に示すように、第1遮風部材61は、第1開口51に対して第1上部吹出口21aに遠い側を閉じ且つ第1上部吹出口21aに近い側を開くように設けられている。第1遮風部材61は、図4および図5に示すような構造を有している。第1遮風部材61は、覆い部65と、連結部66,67と、取付部68とを有する。
【0041】
覆い部65は、第1開口51を背面側から覆う部分であり、上下方向に長い板状の形状を有する。覆い部65は、隔壁24の本体部31に対して傾斜して配置されている。覆い部65は、右端部が左端部よりも後側、すなわちラジエータ室25側に位置するように傾斜している。覆い部65の左端部は、取付部68に繋がっている。なお、図6においては、理解の容易のために覆い部65と取り付け部との接続部分を破線で示している。また、覆い部65の右端部は開放されており、取付部68との間に開口69が設けられている。この開口69は、隔壁24の第1開口51と連通している。図5に示すように、覆い部65の右端部65aは、第1開口51の右縁部51aの真後ろに位置している。従って、覆い部65は、第1開口51の後方全体を覆っている。
【0042】
連結部66,67は、覆い部65と取付部68とを連結している。連結部66,67は、覆い部65の上端と取付部68との間と、覆い部65の下端と取付部68との間とをそれぞれ閉じている。
【0043】
取付部68は、隔壁24に取り付けられる板状の部分である。取付部68は、覆い部65を囲む枠状の形状を有している。取付部68は、ボルト等の固定手段によって隔壁24に取り付けられる。
【0044】
図3に示すように、第2遮風部材62は、背面視において第2開口52の左側を開き、第2開口52の右側、上側、下側、後側を閉じる。第2遮風部材62は、第1遮風部材61と左右対称の形状を有している。
【0045】
第3遮風部材63は、背面視において第3開口53の右側を開き、第3開口53の左側、上側、下側、後側を閉じる。第3遮風部材63は、縮尺は異なるが第1遮風部材61と同様の形状を有している。また、図6に示すように、第3開口53および第3遮風部材63の一部は、背面視において冷却ファン27の回転範囲に対向するように配置される。なお、図6において、一点鎖線は、冷却ファン27の回転範囲を示している。点C1は冷却ファン27の回転中心を示している。また、破線矢印C2は、冷却ファン27の回転方向を示している。
【0046】
第4遮風部材64は、背面視において第4開口54の左側を開き、第4開口54の右側、上側、下側、後側を閉じる。具体的には、第4遮風部材64は、第3遮風部材63と左右対称の形状を有している。また、図6に示すように、第4開口54および第4遮風部材64の一部は、背面視において冷却ファン27の回転範囲に対向するように配置される。
【0047】
〔実施形態の作用、効果〕
作業車両1における空気の流れを図7に示す(二点鎖線の矢印参照)。図7は、上面視におけるエンジン室26およびラジエータ室25内での空気の流れを模式的に示している。作業車両1では、送風装置16が駆動されると、背面吸込口23からラジエータ室25へ空気が取り込まれる。ラジエータ室25に取り込まれた空気は、ラジエータ15を後方から前方へと通過する。これにより、ラジエータ15の冷却液が冷却される。ラジエータ15を通過した空気は、上面吹出口29(図6参照)および第1側面吹出口21、第2側面吹出口22から外部へ吹き出される。
【0048】
この際、ラジエータ15を通過した空気の一部は、隔壁24の表面に沿って流れ、上面吹出口29、第1側面吹出口21、第2側面吹出口22へと向かう。この場合の空気の流れを図8において二点鎖線の矢印A1〜A4で示す。上述した第1〜第4遮風部材61〜64は、第1〜第4開口51〜54に対して隔壁24に沿って流れる空気の流れの上流側を覆い且つ下流側を開くように設けられている。このため、隔壁24に沿って流れる空気は、隔壁24の第1〜第4開口51〜54を通ってエンジン室26に流入することなく、第1〜第4遮風部材61〜64を越えて第1側面吹出口21、第2側面吹出口22へと向かう。このため、隔壁24や第1〜第4遮風部材61〜64の表面に沿った空気の流れに起因して、エンジン室26内から第1〜第4開口51〜54を通りラジエータ室25へと向かう空気の流れが生成される。すなわち、隔壁24のラジエータ室25側において第1〜第4遮風部材61〜64を越える空気の流れにより、第1〜第4開口51〜54のラジエータ室25側とエンジン室26側との間に圧力差が生じる。この圧力差によりエンジン室26内の空気が第1〜第4開口51〜54を通ってラジエータ室25側に吸い出される(破線矢印B1〜B4参照)。また、外部の空気が側面吸込口28(図1および図2参照)を通りエンジン室26内に流入する。エンジン室26内からラジエータ室25側に吸い出された空気は、ラジエータ15を通過した空気と共に、上面吹出口29、第1側面吹出口21、第2側面吹出口22から外部へと排出される。
【0049】
以上のように、この作業車両1では、簡易な構成によりエンジン室26内の換気を行うことができる。
【0050】
また、隔壁24は、エンジン室26とラジエータ室25との間を塞いでいる。また、第1開口51〜第4開口54からエンジン室26への空気の逆流は、第1〜第4遮風部材61〜64によって防がれる。このため、ラジエータ15を通過することによって高温になった空気がエンジン室26内へ流れることを抑えることができる。
【0051】
〔他の実施形態)
(a)
隔壁24において開口および遮風部材が図9に示すように配置されてもよい。
【0052】
ここでは、隔壁24の凹部34の下方に第1開口71および第2開口72が設けられている。第1開口71および第2開口72は、背面視において、第1下部吹出口21bおよび第2下部吹出口22bと同じ高さ位置に配置されている。第1開口71は、背面視において、冷却ファン27の回転中心C1よりも右側に位置しており、第2開口72は、背面視において、冷却ファン27の回転中心C1よりも左側に位置している。第1開口71と第2開口72とは、背面視において、冷却ファン27の回転中心C1に対して対称に配置されている。第1開口71は第2開口72よりも僅かに上方に位置している。
【0053】
また、第1開口71に対して第1遮風部材73が設けられている。第1遮風部材73は、上述した第1〜第4遮風部材61〜64と縮尺および配置の向きは異なるが、同様の構造である。第1遮風部材73は、第1開口71の下方を開き、第1開口71の上方、両側方および後方を覆うように設けられる。従って、第1遮風部材73は、第1開口71に対して冷却ファン27の回転方向の上流側を覆い且つ下流側を開くように設けられている。また、第1開口71および第1遮風部材73の一部は、背面視において冷却ファン27の回転範囲に対向するように配置されている。
【0054】
また、第2開口72に対して第2遮風部材74が設けられている。第2遮風部材74は、第1遮風部材73と同様の構造であり、第1遮風部材73と冷却ファン27の回転中心C1に対して対照に配置されている。第2遮風部材74は、第2開口72の上方を開き、第2開口72の上方、両側方および後方を覆うように設けられる。従って、第2遮風部材74は、第2開口72に対してファンの回転方向の上流側を覆い且つ下流側を開くように設けられている。また、第2開口72および第2遮風部材74の一部は、背面視において冷却ファン27の回転範囲に対向するように配置されている。
【0055】
この隔壁24に沿って流れる空気の流れを図10において二点鎖線の矢印A5,A6で示す。第1遮風部材73、第2遮風部材74は、第1開口71、第2開口72に対して隔壁24に沿って流れる空気の流れの上流側を覆い且つ下流側を開くように設けられている。このため、隔壁24に沿って流れる空気は、第1、第2開口71,72を通ってエンジン室26に流入することなく、第1、第2遮風部材73,74を越えて第1下部吹出口21bおよび第2下部吹出口22bへと向かう。このため、上記の実施形態と同様に、エンジン室26内の空気がラジエータ室25側に吸い出され(破線矢印B5,B6参照)、エンジン室26内の換気を行うことができる。
【0056】
(b)
隔壁24に設けられる開口および遮風部材の位置および形状は上記のものに限られず、空気の流れを考慮して適宜、変更可能である。
【0057】
(c)
上記の実施形態では、遮風部材61〜64,73,74は隔壁24と別部品であるが、隔壁24と一体的に形成されてもよい。例えば、隔壁24の一部がラジエータ室25側に突出するようにプレス加工を受けることによって遮風部材が設けられてもよい。
【0058】
(d)
上記の実施形態では、冷却ファン27は、軸流ファンであるが、斜流ファンであってもよい。
【0059】
(e)
上記の実施形態では、作業車両1としてホイールローダーが例示されているが、他の作業車両に対しても本発明の適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、簡易な構造によってエンジン室内の換気を行うことができる効果を有し、作業車両として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】作業車両の外観斜視図。
【図2】作業車両の内部構成を示す側面図。
【図3】隔壁の外観斜視図。
【図4】第1開口および第1遮風部材の拡大斜視図。
【図5】図4におけるV−V断面図。
【図6】背面視における隔壁を示すラジエータ室の断面図。
【図7】空気の流れを模式的に示した上面図。
【図8】図6において空気の流れを模式的に示した図。
【図9】他の実施形態に係る背面視における隔壁を示すラジエータ室の断面図。
【図10】図9において空気の流れを模式的に示した図。
【符号の説明】
【0062】
1 作業車両
14 エンジン
15 ラジエータ
16 送風装置
21 第1側面吹出口(吹出口)
22 第2側面吹出口(吹出口)
24 隔壁
25 ラジエータ室
26 エンジン室
27 冷却ファン(ファン)
51〜54,71,72 開口
61〜64,73,74 遮風部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンを内部に収納するエンジン室と、
前記エンジンを冷却するためのラジエータと、
前記ラジエータを通る空気の流れを生成する送風装置と、
前記ラジエータおよび前記送風装置を内部に収納するラジエータ室と、
前記エンジン室と前記ラジエータ室との間を仕切り、前記ラジエータおよび前記送風装置に対して前記空気の流れの下流側に位置しており、前記エンジン室と前記ラジエータ室とを連通させる開口が設けられた隔壁と、
前記ラジエータ室側において、前記開口に対して配置され、前記隔壁に沿って流れる空気の流れの上流側を覆い且つ下流側を開くように設けられる遮風部材と、
を備える作業車両。
【請求項2】
前記送風装置は、回転して軸方向に送風するファンを有し、
前記遮風部材は、前記ファンの軸方向から見て、前記開口に対して、前記ファンの回転方向の上流側を覆い且つ下流側を開くように設けられる、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記ラジエータ室には、空気の吹出口が設けられており、
前記遮風部材は、前記開口に対して前記吹出口に遠い側を覆い且つ吹出口に近い側を開くように設けられる、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記送風装置は、回転して軸方向に送風するファンを有し、
前記開口および前記遮風部材の少なくとも一部は、前記ファンの軸方向から見て前記ファンの回転範囲に対向するように配置される、
請求項1に記載の作業車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−178178(P2011−178178A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171179(P2008−171179)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】