作業車両
【課題】左右一対の機体フレームの左右間隔を大きく構成できる作業車両を提供することを目的とする。
【解決手段】機体フレーム2・2の後部にミッションケース4が配置され、該ミッションケース4の左右両外側面にリアアクスルケース60・60が配置される作業車両1において、前記リアアクスルケース60・60の前部には、前方に延出する延出部60aが設けられ、該延出部60aに、前記機体フレーム2・2の後端部が取り付けられるものである。
【解決手段】機体フレーム2・2の後部にミッションケース4が配置され、該ミッションケース4の左右両外側面にリアアクスルケース60・60が配置される作業車両1において、前記リアアクスルケース60・60の前部には、前方に延出する延出部60aが設けられ、該延出部60aに、前記機体フレーム2・2の後端部が取り付けられるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体フレームの後部にミッションケースが配置され、該ミッションケースの左右両外側面にリアアクスルケースが配置される作業車両に関し、詳細には、機体フレーム後端部の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機体フレームの後部にミッションケースが配置され、該ミッションケースの左右両外側面にリアアクスルケースが配置される作業車両において、左右一対の機体フレームが平板状に形成され、各機体フレームの板面が略垂直に互いに対向するように車両前後方向に延設されて、該機体フレームの後端部が、ミッションケースの左右両側面に固設される作業車両は公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−178477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示す作業車両によると、左右一対の機体フレームが、ミッションケースに取り付けられるため、各機体フレームの間隔が、ミッションケースの左右幅に制限されるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、左右一対の機体フレームの左右間隔を大きく構成できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、機体フレームの後部にミッションケースが配置され、該ミッションケースの左右両外側面にリアアクスルケースが配置される作業車両において、前記リアアクスルケースの前部には、前方に延出する延出部が設けられ、該延出部に、前記機体フレームの後端部が取り付けられるものである。
【0008】
請求項2においては、前記機体フレームの後端部と、前記延出部との間には、左右幅調整用の調節部材が介設されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記機体フレームの後端部には、補強板が固定されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、左右一対の機体フレームの左右間隔を大きく構成できる。
【0012】
請求項2においては、請求項1の効果に加えて、左右一対の機体フレームの間隔は、調節部材により容易に変更可能となる。
【0013】
請求項3においては、請求項1・2の効果に加えて、機体フレームとリアアクスルケースの取付強度が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業車両1の右側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る作業車両1の機体フレーム2・2を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施形態に係る作業車両1の右側の機体フレーム2の形状を示す図。(a)右側面図。(b)平面図。(c)左側面図。(d)底面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る作業車両1の右側の機体フレーム2の形状を示す図。(a)後面図。(b)前面図。(c)図3におけるI−I線断面矢視図。(d)図3におけるII−II線断面矢視図。(e)図3におけるIII−III線断面矢視図。
【図5】左右一対の機体フレーム2・2を構成する板材100を示す図。
【図6】右側の機体フレーム2の後端部を示す右側面図。
【図7】右側の機体フレーム2の後端部を示す平面図。
【図8】(a)機体フレーム2の後端部と補強板65の取付態様を示す斜視図。(b)機体フレーム2の後端部とリアアクスルケース60の取付態様を示す斜視図。
【図9】本発明の一実施形態に係る作業車両1の右側の補強板65の形状を示す図。(a)右側面図。(b)後面図。(c)前面図。(d)平面図。(e)図9(a)におけるIV−IV線断面矢視図。
【図10】図7におけるV−V線断面矢視図。
【図11】本発明の一実施形態に係る作業車両1の機体フレーム2・2を示す平面図。
【図12】図11におけるVI−VI線切断端面図。
【図13】右側の機体フレーム2の前端部を示す右側面図。
【図14】図13におけるVII−VII線断面矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係る作業車両1の全体構成について、図1を用いて説明する。作業車両1は、本実施形態においてはトラクタとするが、本発明が適用可能な作業車両であれば特に限定するものではない。なお、以下の説明において、矢印Fを前方向、矢印Bを後方向、矢印Lを左方向、矢印Rを右方向、矢印Uを上方向、矢印Dを下方向として規定する。
【0017】
図1に示すように、作業車両1においては、左右一対の機体フレーム2・2が長手方向を前後方向とし左右方向に所定の間隔をとって配置され、その前部でフロントアクスルケース50を介して左右一対の前輪5・5に支持されるとともに、その後部でリアアクスルケース60・60を介して左右一対の後輪6・6に支持される。
【0018】
機体フレーム2・2の前部には、エンジンブラケット29・29を介してエンジン3が載置され、エンジン3の前方には、ラジエタブラケット21を介してラジエタ31が取り付けられている。ラジエタ31の下方には、フロントアクスルやフロントデフ装置を内装する前記フロントアクスルケース50が設けられる。エンジン3及びラジエタ31等は、ボンネット8によって覆われている。機体フレーム2・2の後部には、変速装置を内装するミッションケース4が設けられ、該ミッションケース4の左右外側面に、リアアクスルを内装するリアアクスルケース60・60が設けられる。
【0019】
機体フレーム2・2の前後中途部および後部には、操向ハンドル9や変速操作具や座席10等を有する運転操作部7が設けられている。操向ハンドル9は、その回動操作量に応じて左右一対の前輪5・5の操舵角を変更し、作業車両1を操向できるように構成される。変速操作具はその操作量に応じて変速装置の変速比を変更し、走行速度を調整することができるように構成される。
【0020】
ミッションケース4の後部には、作業機装着装置11が設けられる。作業機装着装置11は、主としてトップリンク12と、ロアリンク13・13と、リフトロッド14・14と、を備える。トップリンク12は、ミッションケース4の後部に回動自在に連結される。ロアリンク13・13は、ミッションケース4またはリアアクスルケース60・60に回動自在に連結される。リフトロッド14・14は、一端がロアリンク13・13の前後中途部に回動自在に連結されて、他端が油圧ケースより後方に突出したリフトアーム15・15に回動自在に連結される。トップリンク12およびロアリンク13・13の後端には、図示しないロータリ耕耘装置等の作業機が連結される。
【0021】
そして、エンジン3の動力が変速装置で変速されたあと、フロントアクスルを経て左右一対の前輪5・5に伝達可能とされるとともに、リアアクスルを経て左右一対の後輪6・6に伝達可能とされる。エンジン3の動力が伝達されることによって、左右一対の前輪5・5および左右一対の後輪6・6が回転駆動され、作業車両1の走行が行われる。さらに、エンジン3の動力が変速装置で変速されたあと、作業機にも伝達可能とされる。
【0022】
次に、図2から図5を用いて、機体フレーム2・2の形状について詳細に説明する。
図2に示すように、機体フレーム2・2は、長手方向を前後方向とし、左右方向に所定の間隔をとって配置され、左右対称に構成される。機体フレーム2・2の形状は左右対称であるため、以下の説明において、右側の機体フレーム2を中心に説明する。
【0023】
図3及び図4に示すように、機体フレーム2は、側面視において、下部が前方から後方に向けて、徐々に上下方向の長さが長くなり、面積が拡大される形状とされる。つまり、上辺が略水平に配置されて、下辺が後方ほど徐々に低くなる構成としている。機体フレーム2は、上側が所定幅で機体左右方向外側に折り曲げられ、かつ、下側が所定幅で機体左右方向内側に折り曲げられている。つまり、右側の機体フレーム2では、長手方向を前後方向とし、上下方向を板面とする平板材の上部を外側(右側)に所定幅で水平方向に折り曲げられ、かつ、下部を内側(左側)に所定幅で直角に折り曲げられて形成される。本実施形態においては、前部から後部において正面断面視でクランク状(Z状)に折り曲げられている。
【0024】
詳細には、機体フレーム2は、上下方向の面(鉛直面)であって前後方向に長い側面視略台形状の本体部2aと、本体部2aの上辺から所定幅で外側に向かって水平方向に折り曲げられて帯板状の水平面を形成する上面2bと、前記本体部2aの後側が下り傾斜となる下辺から所定幅で内側方向に折り曲げられて帯板状の傾斜面を形成する下面2cと、で構成される。上面2bは本体部2aに対して直角に折り曲げられ、下面2cは本体部2aに対して直角に折り曲げられる。
【0025】
図4(c)から(e)に示すように、機体フレーム2は、クランク状断面を有し、上側と下側が互いに逆方向に折り曲げられる形状を有する。このように形成することで、機体フレーム2の断面二次極モーメントを増大できるので、機体フレーム2・2の捻れ剛性を増大させることができる。従って、左右の機体フレーム2・2を連結する補強板やステー等を設ける必要がなく、軽量化が可能となり、また、機体フレーム2を構成する平板材の厚さを薄く構成して、従来と同等の捻れ剛性を確保しつつ、コストの低減を図ることができる。
【0026】
また、機体フレーム2は、後部の上下方向の長さに比べて前部の上下方向の長さが短い形状である。このため、機体フレーム2の前部下方にスペースを設けることができる。これにより、機体フレーム2の前部の下方に空間が形成されるので、この空間に配置される部材(例えば、フロントアクスルケース50)の設計自由度が向上する。さらに、エンジン3が設けられる機体フレーム2・2の前部が軽くなり、作業車両全体としての重量バランスが良好となる。
【0027】
また、機体フレーム2は、後部の上下方向の長さが前部の上下方向の長さに比べて長い形状である。このため、機体フレーム2の後部の強度を十分に確保できる。
【0028】
なお、図5に示すように、右側の機体フレーム2及び左側の機体フレーム2は、一つの長方形状の板材100を切断して構成される。すなわち、長方形状の板材100は、長手方向の長さを機体フレーム2の前後方向の長さをとし、短手方向の長さを機体フレーム2を折り曲げ形成する前の前端の短手方向の長さと後端の短手方向の長さを加えた長さとする。この板材100を、下面2cの傾斜に合わせ面積を二分する切断線αで傾斜状に切断することで、機体フレーム2・2の素材となる二つの平板材を得る。更に、長手方向両端部の不要部分を切断することで、最小限の端材として効率良く機体フレーム2の素材を得ることができる。
【0029】
その後、ボルト孔等の孔開け加工を施し、折り曲げ線β・γの位置で折り曲げ加工を行うことで容易に機体フレーム2を得ることができる。但し、孔開け加工や端材の切断を先に行い、切断線αで切断した後に折り曲げ加工を施してもよい。これにより、一枚の板材100より左右両側の機体フレーム2・2を一度に得ることができ、効率よく板取りができ、コストの低減を図ることができる。
【0030】
次に、図3及び図6から図11を用いて、機体フレーム2の後端部の取付構造について詳細に説明する。
【0031】
図3(a)、図6及び図8に示すように、機体フレーム2の後端部は、側面視でリアアクスルケース60の前部の形状に合わせた曲線形状とし、機体フレーム2の後部の上部に上取付孔2dが形成され、下部に下取付孔2eが形成される。上取付孔2dは機体フレーム2の後上部から後方に突出するように設けた延出部に開口され、下取付孔2eは上取付孔2dの前下方の位置に開口される。
【0032】
図6及び図8に示すように、リアアクスルケース60は、デフ出力軸およびリアアクスル62を支持するとともに、最終減速歯車を収納するものであり、リアアクスルケース60の前部外側面から前方に延出部60aが形成されている。延出部60aは、フランジ部60bより更に前方に延出したものであり、該延出部60aの上下に左右方向に貫通する固定孔60c・60cが開口されている。前記フランジ部60bは、側面視におけるリアアクスルケース60の外周に設けられて、ボルトによりミッションケース4に固定するためのものである。
【0033】
図7に示すように、延出部60aの機体左右方向内側面とミッションケース4の外側面との間には挿入空間Aが形成される。該挿入空間Aに機体フレーム2の後部と、該機体フレーム2の後部に固設された補強板65の後部と、ボス64・64と、が挿入されて、リアアクスルケース60に機体フレーム2の後部がボルト61・61により固定される構成としている。
【0034】
機体フレーム2の後端部には、補強板65が固設された上で、リアアクスルケース60に取り付けられる。
【0035】
補強板65は、機体フレーム2の後端部の、リアアクスルケース60に対する取付強度を増大させるものである。補強板65は、図6から図8に示すように、機体フレーム2の後端部の外側面に固設される。補強板65は、図8及び図9に示すように、側面視において略台形状で、上部および後部は機体フレーム2の後部形状に合わせた形状としている。つまり、補強板65は、上側および下側を左右方向外側に折り曲げて断面視「コ」字状に折り曲げ形成されている。
【0036】
詳細には、補強板65は、側面視略台形状で上下方向の面として形成される本体部65aと、本体部65aの上部から機体フレーム2の上面2bに沿うように左右方向外側へ水平方向に折り曲げられて形成される上面65bと、本体部65aの下部から外方向に折り曲げて後側が下がる面として形成される下面65cと、で構成される。なお、上面65bと下面65cの左右幅は、機体フレーム2の上面2bの左右幅よりも短く構成して上面2bからはみ出さないように構成している。
【0037】
図9(e)に示すように、補強板65は、断面視「コ」字状に形成することで、機体フレーム2の断面二次モーメントを増大できるので、補強板65の強度を増大させることができる。
【0038】
図9(a)に示すように、補強板65の後部の上部に上取付孔65dが形成され、下部に下取付孔65eが形成される。上取付孔65dは補強板65の後上部から後方に突出するように設けた延出部に開口され、下取付孔65eは上取付孔65dの前下方の位置に開口される。上取付孔65dと、下取付孔65eとは、略同径で、図8(a)に示す機体フレーム2の上取付孔2d及び下取付孔2eの位置および大きさに合わせて開口されている。これら上取付孔65d及び下取付孔65eには、ボス64・64が挿嵌固定される。
【0039】
図8及び図10に示すように、ボス64・64は、段付円筒状の部材である。ボス64は、本体部64aと、該本体部64aに対して縮径する縮径部64bと、で構成される。縮径部64bは、機体フレーム2の上取付孔2d及び下取付孔2e、補強板65の上取付孔65d及び下取付孔65eにそれぞれ挿入固定され、機体フレーム2と補強板65の剛性を更にアップしている。縮径部64bの軸孔は雌ネジに構成している。また、本体部64aの軸孔部にはスペーサ63の一端が挿入される。スペーサ63の他端は延出部60aに設けた固定孔60cに挿入される。こうして、スペーサ63により延出部60aとボス64が容易に締結でき強度もアップされる。
【0040】
こうして、図8(b)に示すように、補強板65が機体フレーム2の後端部の外側面に固設された状態で、リアアクスルケース60の延出部60aの機体左右方向内側面とミッションケース4の外側面との間の挿入空間Aに機体フレーム2の後部を配置し、固定孔60c・60cにスペーサ63・63を挿入し、ボルト61・61により機体フレーム2とリアアクスルケース60とをボス64を介して締結固定する。
【0041】
このようにして、リアアクスルケース60・60に取り付けられた左右一対の機体フレーム2・2は、図11及び図12に示すように、断面視クランク状に形成されて、左右対称に配置され、これら機体フレーム2・2の後端部の外側面に沿って、断面視「コ」字状の補強板65・65が固設される。詳細には、機体フレーム2の本体部2a及び上面2bと、補強板65の本体部65a及び上面65bと、を当接させて固設される。これにより、機体フレーム2・2の捻れ剛性を増大させつつ、機体フレーム2・2とリアアクスルケース60・60の取付強度が増大する。
【0042】
また、前記ボス64及びスペーサ63を、長さ(左右方向の長さ)が異なるボス及びスペーサに変更することにより、機体フレーム2の左右方向の取付位置を変更することが可能となる。つまり、従来ミッションケース4の側面に機体フレーム2を取付固定する構成であると、ミッションケース4の左右幅によって機体フレーム2・2の間隔が決定されていたが、前記構成によると、機体フレーム2・2を左右方向に曲げることなく、機体フレーム2・2の左右幅を容易に変更可能となり、エンジン3の大きさやトレッド等が異なる仕様に容易に変更できるようになるのである。すなわち、前記機体フレーム2の後端部と、前記延出部60a・60aとの間には、左右幅調整用の調節部材となるボス64及びスペーサ63が介設されるのである。
【0043】
また、リアアクスルケース60内のブレーキ装置やミッションケース4内のデフ装置等のメンテナンスや交換等を行う際には、ボルト61・61を外し、リアアクスルケース60を固定するボルトを外すことにより、リアアクスルケース60を外すことができる。従来では、ミッションケース4やリアアクスルケース60の外側に機体フレーム2が固設されていたために、機体フレーム2をミッションケース4およびリアアクスルケース60から取り外す必要があり、大変面倒な作業となっていたが、上記のような構成とすることにより、メンテナンス作業が容易にできるようになったのである。
【0044】
なお、図2、図6及び図11に示すように、ミッションケース4の上部には、左右方向に所定間隔を空けて、側面視略三角形状の延出部4a・4aが設けられ、該延出部4a・4aには、前記リフトアーム15・15の一端(前側)を回転可能に支持する支持部4b・4bが設けられる。支持部4b・4bは、鋳物等でミッションケース4と一体的に構成される。このように、リフトアーム15・15の一端を支持する支持部4b・4bを別部材とせず、ミッションケースに一体的に構成されるので、製造コストを低減できる。
【0045】
なお、図13に示すように、機体フレーム2・2の前端部には、フロントヒッチ20が複数のボルト37・37・・・により、脱着可能に構成される。このフロントヒッチ20に替えて、フロントウェイトを取り付けるフロントウエイトブラケットや、ローダーフロントガードブラケットが取り付け可能とされる。また、取り付けられたブラケットは、断面視略クランク状の機体フレーム2・2に沿って、位置決め可能とされる。
【0046】
図2、13及び図14に示すように、エンジン3の前下両側部は、エンジンブラケット29を含む防振機構30を介して機体フレーム2に支持される。図14に示すように、防振機構30は、エンジンブラケット29と防振部材32とで主に構成される。エンジンブラケット29は、垂直部29aと水平部29bを有し、垂直部29aがエンジン3のシリンダブロックの下部側面にボルト33・33により固設され、水平部29bが防振部材32の上面に載置され,防振部材32の下面は機体フレーム2の上面2b上に載置される。そして、ネジ棒部材34及びナット35・35によりエンジンブラケット29と防振部材32と機体フレーム2が連結固定される。防振部材32は、上板32aと下板32bの間にゴム等の弾性体32cが介装される構成としている。
【0047】
このとき、ネジ棒部材34の軸心Oと、機体フレーム2の本体部2aと、の距離Wは、可能な限り小さく構成される。これにより、エンジン3の振動が機体フレーム2に伝達し難くなり、作業車両1の乗り心地を向上させることができる。
【0048】
以上のように、本発明の一実施形態に係る作業車両1においては、機体フレーム2・2にミッションケース4及びエンジン3が設けられた作業車両1において、前記機体フレーム2・2は、上側が外側に折り曲げられ、かつ、下側が内側に折り曲げられるものである。これにより、機体フレーム2・2の捻れ剛性を向上させることができる。従って、機体フレーム2・2を構成する平板材の厚さを薄く構成して、コストを低減できる。また、作業車両1の軽量化が可能となる。
【0049】
また、前記機体フレーム2・2の下部が、前方から後方に向けて、徐々に傾斜状に広がる形状とされるものである。これにより、機体フレーム2・2前部の下方に空間が形成されるので、この空間に配置される部材の設計自由度が向上する。また、エンジン3が設けられる機体フレーム2・2の前部が軽くなり、作業車両全体としての重量バランスが良好となる。
【0050】
以上のように、本発明の一実施形態に係る作業車両1においては、機体フレーム2・2の後部にミッションケース4が配置され、該ミッションケース4の左右両外側面にリアアクスルケース60・60が配置される作業車両1において、前記リアアクスルケース60・60の前部には、前方に延出する延出部60aが設けられ、該延出部60aに、前記機体フレーム2・2の後端部が取り付けられるものである。これにより、左右一対の機体フレーム2・2の左右間隔を大きく構成できる。
【0051】
また、前記機体フレーム2・2の後端部は、前記ミッションケース4と前記延出部60a・60aとの間に配置されて、前記延出部60a・60aに取り付けられるものである。つまり、機体フレーム2・2の後端部は、延出部60aの外側側面ではなく、内側側面に取り付けられるので、ミッションケース4からリアアクスルケース60・60を取り外すことが容易となり、ミッションケース4内部に配置されるギアやブレーキ装置等のメンテナンス作業が容易にできる。
【0052】
また、前記機体フレーム2の後端部と、前記延出部60a・60aとの間には、左右幅調整用の調節部材となるボス64・64・64・64及びスペーサ63・63・63・63が介設されるものである。これにより、左右一対の機体フレームの間隔は、調節部材により容易に変更可能となる。すなわち、ボス64・64・64・64とスペーサ63・63・63・63を交換することにより容易に変更可能となる。
【0053】
また、前記機体フレーム2・2の後端部には、補強板65・65が固定されるものである。これにより、機体フレーム2・2とリアアクスルケース60・60の取付強度が増大する。
【符号の説明】
【0054】
1 作業車両
2 機体フレーム
2a 本体部
2b 上面
2c 下面
3 エンジン
4 ミッションケース
60 リアアクスルケース
60a 延出部
63 スペーサ(調節部材)
64 ボス(調節部材)
65 補強板
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体フレームの後部にミッションケースが配置され、該ミッションケースの左右両外側面にリアアクスルケースが配置される作業車両に関し、詳細には、機体フレーム後端部の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機体フレームの後部にミッションケースが配置され、該ミッションケースの左右両外側面にリアアクスルケースが配置される作業車両において、左右一対の機体フレームが平板状に形成され、各機体フレームの板面が略垂直に互いに対向するように車両前後方向に延設されて、該機体フレームの後端部が、ミッションケースの左右両側面に固設される作業車両は公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−178477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示す作業車両によると、左右一対の機体フレームが、ミッションケースに取り付けられるため、各機体フレームの間隔が、ミッションケースの左右幅に制限されるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、左右一対の機体フレームの左右間隔を大きく構成できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、機体フレームの後部にミッションケースが配置され、該ミッションケースの左右両外側面にリアアクスルケースが配置される作業車両において、前記リアアクスルケースの前部には、前方に延出する延出部が設けられ、該延出部に、前記機体フレームの後端部が取り付けられるものである。
【0008】
請求項2においては、前記機体フレームの後端部と、前記延出部との間には、左右幅調整用の調節部材が介設されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記機体フレームの後端部には、補強板が固定されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、左右一対の機体フレームの左右間隔を大きく構成できる。
【0012】
請求項2においては、請求項1の効果に加えて、左右一対の機体フレームの間隔は、調節部材により容易に変更可能となる。
【0013】
請求項3においては、請求項1・2の効果に加えて、機体フレームとリアアクスルケースの取付強度が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業車両1の右側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る作業車両1の機体フレーム2・2を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施形態に係る作業車両1の右側の機体フレーム2の形状を示す図。(a)右側面図。(b)平面図。(c)左側面図。(d)底面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る作業車両1の右側の機体フレーム2の形状を示す図。(a)後面図。(b)前面図。(c)図3におけるI−I線断面矢視図。(d)図3におけるII−II線断面矢視図。(e)図3におけるIII−III線断面矢視図。
【図5】左右一対の機体フレーム2・2を構成する板材100を示す図。
【図6】右側の機体フレーム2の後端部を示す右側面図。
【図7】右側の機体フレーム2の後端部を示す平面図。
【図8】(a)機体フレーム2の後端部と補強板65の取付態様を示す斜視図。(b)機体フレーム2の後端部とリアアクスルケース60の取付態様を示す斜視図。
【図9】本発明の一実施形態に係る作業車両1の右側の補強板65の形状を示す図。(a)右側面図。(b)後面図。(c)前面図。(d)平面図。(e)図9(a)におけるIV−IV線断面矢視図。
【図10】図7におけるV−V線断面矢視図。
【図11】本発明の一実施形態に係る作業車両1の機体フレーム2・2を示す平面図。
【図12】図11におけるVI−VI線切断端面図。
【図13】右側の機体フレーム2の前端部を示す右側面図。
【図14】図13におけるVII−VII線断面矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係る作業車両1の全体構成について、図1を用いて説明する。作業車両1は、本実施形態においてはトラクタとするが、本発明が適用可能な作業車両であれば特に限定するものではない。なお、以下の説明において、矢印Fを前方向、矢印Bを後方向、矢印Lを左方向、矢印Rを右方向、矢印Uを上方向、矢印Dを下方向として規定する。
【0017】
図1に示すように、作業車両1においては、左右一対の機体フレーム2・2が長手方向を前後方向とし左右方向に所定の間隔をとって配置され、その前部でフロントアクスルケース50を介して左右一対の前輪5・5に支持されるとともに、その後部でリアアクスルケース60・60を介して左右一対の後輪6・6に支持される。
【0018】
機体フレーム2・2の前部には、エンジンブラケット29・29を介してエンジン3が載置され、エンジン3の前方には、ラジエタブラケット21を介してラジエタ31が取り付けられている。ラジエタ31の下方には、フロントアクスルやフロントデフ装置を内装する前記フロントアクスルケース50が設けられる。エンジン3及びラジエタ31等は、ボンネット8によって覆われている。機体フレーム2・2の後部には、変速装置を内装するミッションケース4が設けられ、該ミッションケース4の左右外側面に、リアアクスルを内装するリアアクスルケース60・60が設けられる。
【0019】
機体フレーム2・2の前後中途部および後部には、操向ハンドル9や変速操作具や座席10等を有する運転操作部7が設けられている。操向ハンドル9は、その回動操作量に応じて左右一対の前輪5・5の操舵角を変更し、作業車両1を操向できるように構成される。変速操作具はその操作量に応じて変速装置の変速比を変更し、走行速度を調整することができるように構成される。
【0020】
ミッションケース4の後部には、作業機装着装置11が設けられる。作業機装着装置11は、主としてトップリンク12と、ロアリンク13・13と、リフトロッド14・14と、を備える。トップリンク12は、ミッションケース4の後部に回動自在に連結される。ロアリンク13・13は、ミッションケース4またはリアアクスルケース60・60に回動自在に連結される。リフトロッド14・14は、一端がロアリンク13・13の前後中途部に回動自在に連結されて、他端が油圧ケースより後方に突出したリフトアーム15・15に回動自在に連結される。トップリンク12およびロアリンク13・13の後端には、図示しないロータリ耕耘装置等の作業機が連結される。
【0021】
そして、エンジン3の動力が変速装置で変速されたあと、フロントアクスルを経て左右一対の前輪5・5に伝達可能とされるとともに、リアアクスルを経て左右一対の後輪6・6に伝達可能とされる。エンジン3の動力が伝達されることによって、左右一対の前輪5・5および左右一対の後輪6・6が回転駆動され、作業車両1の走行が行われる。さらに、エンジン3の動力が変速装置で変速されたあと、作業機にも伝達可能とされる。
【0022】
次に、図2から図5を用いて、機体フレーム2・2の形状について詳細に説明する。
図2に示すように、機体フレーム2・2は、長手方向を前後方向とし、左右方向に所定の間隔をとって配置され、左右対称に構成される。機体フレーム2・2の形状は左右対称であるため、以下の説明において、右側の機体フレーム2を中心に説明する。
【0023】
図3及び図4に示すように、機体フレーム2は、側面視において、下部が前方から後方に向けて、徐々に上下方向の長さが長くなり、面積が拡大される形状とされる。つまり、上辺が略水平に配置されて、下辺が後方ほど徐々に低くなる構成としている。機体フレーム2は、上側が所定幅で機体左右方向外側に折り曲げられ、かつ、下側が所定幅で機体左右方向内側に折り曲げられている。つまり、右側の機体フレーム2では、長手方向を前後方向とし、上下方向を板面とする平板材の上部を外側(右側)に所定幅で水平方向に折り曲げられ、かつ、下部を内側(左側)に所定幅で直角に折り曲げられて形成される。本実施形態においては、前部から後部において正面断面視でクランク状(Z状)に折り曲げられている。
【0024】
詳細には、機体フレーム2は、上下方向の面(鉛直面)であって前後方向に長い側面視略台形状の本体部2aと、本体部2aの上辺から所定幅で外側に向かって水平方向に折り曲げられて帯板状の水平面を形成する上面2bと、前記本体部2aの後側が下り傾斜となる下辺から所定幅で内側方向に折り曲げられて帯板状の傾斜面を形成する下面2cと、で構成される。上面2bは本体部2aに対して直角に折り曲げられ、下面2cは本体部2aに対して直角に折り曲げられる。
【0025】
図4(c)から(e)に示すように、機体フレーム2は、クランク状断面を有し、上側と下側が互いに逆方向に折り曲げられる形状を有する。このように形成することで、機体フレーム2の断面二次極モーメントを増大できるので、機体フレーム2・2の捻れ剛性を増大させることができる。従って、左右の機体フレーム2・2を連結する補強板やステー等を設ける必要がなく、軽量化が可能となり、また、機体フレーム2を構成する平板材の厚さを薄く構成して、従来と同等の捻れ剛性を確保しつつ、コストの低減を図ることができる。
【0026】
また、機体フレーム2は、後部の上下方向の長さに比べて前部の上下方向の長さが短い形状である。このため、機体フレーム2の前部下方にスペースを設けることができる。これにより、機体フレーム2の前部の下方に空間が形成されるので、この空間に配置される部材(例えば、フロントアクスルケース50)の設計自由度が向上する。さらに、エンジン3が設けられる機体フレーム2・2の前部が軽くなり、作業車両全体としての重量バランスが良好となる。
【0027】
また、機体フレーム2は、後部の上下方向の長さが前部の上下方向の長さに比べて長い形状である。このため、機体フレーム2の後部の強度を十分に確保できる。
【0028】
なお、図5に示すように、右側の機体フレーム2及び左側の機体フレーム2は、一つの長方形状の板材100を切断して構成される。すなわち、長方形状の板材100は、長手方向の長さを機体フレーム2の前後方向の長さをとし、短手方向の長さを機体フレーム2を折り曲げ形成する前の前端の短手方向の長さと後端の短手方向の長さを加えた長さとする。この板材100を、下面2cの傾斜に合わせ面積を二分する切断線αで傾斜状に切断することで、機体フレーム2・2の素材となる二つの平板材を得る。更に、長手方向両端部の不要部分を切断することで、最小限の端材として効率良く機体フレーム2の素材を得ることができる。
【0029】
その後、ボルト孔等の孔開け加工を施し、折り曲げ線β・γの位置で折り曲げ加工を行うことで容易に機体フレーム2を得ることができる。但し、孔開け加工や端材の切断を先に行い、切断線αで切断した後に折り曲げ加工を施してもよい。これにより、一枚の板材100より左右両側の機体フレーム2・2を一度に得ることができ、効率よく板取りができ、コストの低減を図ることができる。
【0030】
次に、図3及び図6から図11を用いて、機体フレーム2の後端部の取付構造について詳細に説明する。
【0031】
図3(a)、図6及び図8に示すように、機体フレーム2の後端部は、側面視でリアアクスルケース60の前部の形状に合わせた曲線形状とし、機体フレーム2の後部の上部に上取付孔2dが形成され、下部に下取付孔2eが形成される。上取付孔2dは機体フレーム2の後上部から後方に突出するように設けた延出部に開口され、下取付孔2eは上取付孔2dの前下方の位置に開口される。
【0032】
図6及び図8に示すように、リアアクスルケース60は、デフ出力軸およびリアアクスル62を支持するとともに、最終減速歯車を収納するものであり、リアアクスルケース60の前部外側面から前方に延出部60aが形成されている。延出部60aは、フランジ部60bより更に前方に延出したものであり、該延出部60aの上下に左右方向に貫通する固定孔60c・60cが開口されている。前記フランジ部60bは、側面視におけるリアアクスルケース60の外周に設けられて、ボルトによりミッションケース4に固定するためのものである。
【0033】
図7に示すように、延出部60aの機体左右方向内側面とミッションケース4の外側面との間には挿入空間Aが形成される。該挿入空間Aに機体フレーム2の後部と、該機体フレーム2の後部に固設された補強板65の後部と、ボス64・64と、が挿入されて、リアアクスルケース60に機体フレーム2の後部がボルト61・61により固定される構成としている。
【0034】
機体フレーム2の後端部には、補強板65が固設された上で、リアアクスルケース60に取り付けられる。
【0035】
補強板65は、機体フレーム2の後端部の、リアアクスルケース60に対する取付強度を増大させるものである。補強板65は、図6から図8に示すように、機体フレーム2の後端部の外側面に固設される。補強板65は、図8及び図9に示すように、側面視において略台形状で、上部および後部は機体フレーム2の後部形状に合わせた形状としている。つまり、補強板65は、上側および下側を左右方向外側に折り曲げて断面視「コ」字状に折り曲げ形成されている。
【0036】
詳細には、補強板65は、側面視略台形状で上下方向の面として形成される本体部65aと、本体部65aの上部から機体フレーム2の上面2bに沿うように左右方向外側へ水平方向に折り曲げられて形成される上面65bと、本体部65aの下部から外方向に折り曲げて後側が下がる面として形成される下面65cと、で構成される。なお、上面65bと下面65cの左右幅は、機体フレーム2の上面2bの左右幅よりも短く構成して上面2bからはみ出さないように構成している。
【0037】
図9(e)に示すように、補強板65は、断面視「コ」字状に形成することで、機体フレーム2の断面二次モーメントを増大できるので、補強板65の強度を増大させることができる。
【0038】
図9(a)に示すように、補強板65の後部の上部に上取付孔65dが形成され、下部に下取付孔65eが形成される。上取付孔65dは補強板65の後上部から後方に突出するように設けた延出部に開口され、下取付孔65eは上取付孔65dの前下方の位置に開口される。上取付孔65dと、下取付孔65eとは、略同径で、図8(a)に示す機体フレーム2の上取付孔2d及び下取付孔2eの位置および大きさに合わせて開口されている。これら上取付孔65d及び下取付孔65eには、ボス64・64が挿嵌固定される。
【0039】
図8及び図10に示すように、ボス64・64は、段付円筒状の部材である。ボス64は、本体部64aと、該本体部64aに対して縮径する縮径部64bと、で構成される。縮径部64bは、機体フレーム2の上取付孔2d及び下取付孔2e、補強板65の上取付孔65d及び下取付孔65eにそれぞれ挿入固定され、機体フレーム2と補強板65の剛性を更にアップしている。縮径部64bの軸孔は雌ネジに構成している。また、本体部64aの軸孔部にはスペーサ63の一端が挿入される。スペーサ63の他端は延出部60aに設けた固定孔60cに挿入される。こうして、スペーサ63により延出部60aとボス64が容易に締結でき強度もアップされる。
【0040】
こうして、図8(b)に示すように、補強板65が機体フレーム2の後端部の外側面に固設された状態で、リアアクスルケース60の延出部60aの機体左右方向内側面とミッションケース4の外側面との間の挿入空間Aに機体フレーム2の後部を配置し、固定孔60c・60cにスペーサ63・63を挿入し、ボルト61・61により機体フレーム2とリアアクスルケース60とをボス64を介して締結固定する。
【0041】
このようにして、リアアクスルケース60・60に取り付けられた左右一対の機体フレーム2・2は、図11及び図12に示すように、断面視クランク状に形成されて、左右対称に配置され、これら機体フレーム2・2の後端部の外側面に沿って、断面視「コ」字状の補強板65・65が固設される。詳細には、機体フレーム2の本体部2a及び上面2bと、補強板65の本体部65a及び上面65bと、を当接させて固設される。これにより、機体フレーム2・2の捻れ剛性を増大させつつ、機体フレーム2・2とリアアクスルケース60・60の取付強度が増大する。
【0042】
また、前記ボス64及びスペーサ63を、長さ(左右方向の長さ)が異なるボス及びスペーサに変更することにより、機体フレーム2の左右方向の取付位置を変更することが可能となる。つまり、従来ミッションケース4の側面に機体フレーム2を取付固定する構成であると、ミッションケース4の左右幅によって機体フレーム2・2の間隔が決定されていたが、前記構成によると、機体フレーム2・2を左右方向に曲げることなく、機体フレーム2・2の左右幅を容易に変更可能となり、エンジン3の大きさやトレッド等が異なる仕様に容易に変更できるようになるのである。すなわち、前記機体フレーム2の後端部と、前記延出部60a・60aとの間には、左右幅調整用の調節部材となるボス64及びスペーサ63が介設されるのである。
【0043】
また、リアアクスルケース60内のブレーキ装置やミッションケース4内のデフ装置等のメンテナンスや交換等を行う際には、ボルト61・61を外し、リアアクスルケース60を固定するボルトを外すことにより、リアアクスルケース60を外すことができる。従来では、ミッションケース4やリアアクスルケース60の外側に機体フレーム2が固設されていたために、機体フレーム2をミッションケース4およびリアアクスルケース60から取り外す必要があり、大変面倒な作業となっていたが、上記のような構成とすることにより、メンテナンス作業が容易にできるようになったのである。
【0044】
なお、図2、図6及び図11に示すように、ミッションケース4の上部には、左右方向に所定間隔を空けて、側面視略三角形状の延出部4a・4aが設けられ、該延出部4a・4aには、前記リフトアーム15・15の一端(前側)を回転可能に支持する支持部4b・4bが設けられる。支持部4b・4bは、鋳物等でミッションケース4と一体的に構成される。このように、リフトアーム15・15の一端を支持する支持部4b・4bを別部材とせず、ミッションケースに一体的に構成されるので、製造コストを低減できる。
【0045】
なお、図13に示すように、機体フレーム2・2の前端部には、フロントヒッチ20が複数のボルト37・37・・・により、脱着可能に構成される。このフロントヒッチ20に替えて、フロントウェイトを取り付けるフロントウエイトブラケットや、ローダーフロントガードブラケットが取り付け可能とされる。また、取り付けられたブラケットは、断面視略クランク状の機体フレーム2・2に沿って、位置決め可能とされる。
【0046】
図2、13及び図14に示すように、エンジン3の前下両側部は、エンジンブラケット29を含む防振機構30を介して機体フレーム2に支持される。図14に示すように、防振機構30は、エンジンブラケット29と防振部材32とで主に構成される。エンジンブラケット29は、垂直部29aと水平部29bを有し、垂直部29aがエンジン3のシリンダブロックの下部側面にボルト33・33により固設され、水平部29bが防振部材32の上面に載置され,防振部材32の下面は機体フレーム2の上面2b上に載置される。そして、ネジ棒部材34及びナット35・35によりエンジンブラケット29と防振部材32と機体フレーム2が連結固定される。防振部材32は、上板32aと下板32bの間にゴム等の弾性体32cが介装される構成としている。
【0047】
このとき、ネジ棒部材34の軸心Oと、機体フレーム2の本体部2aと、の距離Wは、可能な限り小さく構成される。これにより、エンジン3の振動が機体フレーム2に伝達し難くなり、作業車両1の乗り心地を向上させることができる。
【0048】
以上のように、本発明の一実施形態に係る作業車両1においては、機体フレーム2・2にミッションケース4及びエンジン3が設けられた作業車両1において、前記機体フレーム2・2は、上側が外側に折り曲げられ、かつ、下側が内側に折り曲げられるものである。これにより、機体フレーム2・2の捻れ剛性を向上させることができる。従って、機体フレーム2・2を構成する平板材の厚さを薄く構成して、コストを低減できる。また、作業車両1の軽量化が可能となる。
【0049】
また、前記機体フレーム2・2の下部が、前方から後方に向けて、徐々に傾斜状に広がる形状とされるものである。これにより、機体フレーム2・2前部の下方に空間が形成されるので、この空間に配置される部材の設計自由度が向上する。また、エンジン3が設けられる機体フレーム2・2の前部が軽くなり、作業車両全体としての重量バランスが良好となる。
【0050】
以上のように、本発明の一実施形態に係る作業車両1においては、機体フレーム2・2の後部にミッションケース4が配置され、該ミッションケース4の左右両外側面にリアアクスルケース60・60が配置される作業車両1において、前記リアアクスルケース60・60の前部には、前方に延出する延出部60aが設けられ、該延出部60aに、前記機体フレーム2・2の後端部が取り付けられるものである。これにより、左右一対の機体フレーム2・2の左右間隔を大きく構成できる。
【0051】
また、前記機体フレーム2・2の後端部は、前記ミッションケース4と前記延出部60a・60aとの間に配置されて、前記延出部60a・60aに取り付けられるものである。つまり、機体フレーム2・2の後端部は、延出部60aの外側側面ではなく、内側側面に取り付けられるので、ミッションケース4からリアアクスルケース60・60を取り外すことが容易となり、ミッションケース4内部に配置されるギアやブレーキ装置等のメンテナンス作業が容易にできる。
【0052】
また、前記機体フレーム2の後端部と、前記延出部60a・60aとの間には、左右幅調整用の調節部材となるボス64・64・64・64及びスペーサ63・63・63・63が介設されるものである。これにより、左右一対の機体フレームの間隔は、調節部材により容易に変更可能となる。すなわち、ボス64・64・64・64とスペーサ63・63・63・63を交換することにより容易に変更可能となる。
【0053】
また、前記機体フレーム2・2の後端部には、補強板65・65が固定されるものである。これにより、機体フレーム2・2とリアアクスルケース60・60の取付強度が増大する。
【符号の説明】
【0054】
1 作業車両
2 機体フレーム
2a 本体部
2b 上面
2c 下面
3 エンジン
4 ミッションケース
60 リアアクスルケース
60a 延出部
63 スペーサ(調節部材)
64 ボス(調節部材)
65 補強板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームの後部にミッションケースが配置され、該ミッションケースの左右両外側面にリアアクスルケースが配置される作業車両において、
前記リアアクスルケースの前部には、前方に延出する延出部が設けられ、該延出部に、前記機体フレームの後端部が取り付けられることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記機体フレームの後端部と、前記延出部との間には、左右幅調整用の調節部材が介設されることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記機体フレームの後端部には、補強板が固定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両。
【請求項1】
機体フレームの後部にミッションケースが配置され、該ミッションケースの左右両外側面にリアアクスルケースが配置される作業車両において、
前記リアアクスルケースの前部には、前方に延出する延出部が設けられ、該延出部に、前記機体フレームの後端部が取り付けられることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記機体フレームの後端部と、前記延出部との間には、左右幅調整用の調節部材が介設されることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記機体フレームの後端部には、補強板が固定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−126147(P2012−126147A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276460(P2010−276460)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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