作業車両
【課題】収容部及びカップホルダ部を、座席側方のカバー体に省スペースで設置し、他の部材を配置するためのスペースを十分に確保することができる作業車両を提供することを課題としている。
【解決手段】座席13の側方に配置されたカバー体23に、所定の小物を収容する収容部33と、カップホルダ部34とを、それぞれ一体的に形成し、走行機体7の左右一方寄りに給油口8及び該給油口8を開閉可能に閉塞するキャップ9を設けた作業車両において、座席13の左右両側方にそれぞれカバー体23を設け、左右のカバー体23における給油口8側のカバー体23に収容部33を設けるとともに、もう一方側のカバー体23にカップホルダ部34を設け、収容部33に前記キャップ9の少なくとも一部を収容して保持できるように該収容部33を形成した。
【解決手段】座席13の側方に配置されたカバー体23に、所定の小物を収容する収容部33と、カップホルダ部34とを、それぞれ一体的に形成し、走行機体7の左右一方寄りに給油口8及び該給油口8を開閉可能に閉塞するキャップ9を設けた作業車両において、座席13の左右両側方にそれぞれカバー体23を設け、左右のカバー体23における給油口8側のカバー体23に収容部33を設けるとともに、もう一方側のカバー体23にカップホルダ部34を設け、収容部33に前記キャップ9の少なくとも一部を収容して保持できるように該収容部33を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
座席の側方に収容部とカップホルダを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両を運転等する際には、持ち歩いていた所定の小物や、飲料水が入った缶やカップ等が邪魔になる場合があるため、この問題を解決すべく、座席の側方に配置されたカバー体に、所定の小物を収容する収容部と、カップホルダ部とを、それぞれ一体的に形成した特許文献1に示す作業車両が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4476182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献では、所定の小物及び飲料水が入った缶やカップ等を収容することができる一方で、走行機体の左右一方側のカバー体に前記収容部及びカップホルダ部を一体的に形成しているため、収容部及びカップホルダ部を設置するためにスペースを大きくとる必要があり、他の部材の設置スペースを圧迫するという問題があった。
【0005】
本発明は、収容部及びカップホルダ部を、座席側方のカバー体に省スペースで設置し、他の部材を配置するためのスペースを十分に確保することができる作業車両を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、第1に、座席13の側方に配置されたカバー体23に、所定の小物を収容する収容部33と、カップホルダ部34とを、それぞれ一体的に形成し、走行機体7の左右一方寄りに給油口8及び該給油口8を開閉可能に閉塞するキャップ9を設けた作業車両において、座席13の左右両側方にそれぞれカバー体23を設け、左右のカバー体23における給油口8側のカバー体23に収容部33を設けるとともに、もう一方側のカバー体23にカップホルダ部34を設け、収容部33に前記キャップ9の少なくとも一部を収容して保持できるように該収容部33を形成したことを特徴としている。
【0007】
第2に、座席13のカップホルダ部34側の側方に前後揺動可能に操作レバー24,26,27を設け、正面視で操作レバー24,26,27の揺動範囲よりも左右外側に、カップホルダ部34を配置したことを特徴としている。
【0008】
第3に、座席13の収容部33側の側方に前後揺動可能に操作レバー28を設け、正面視で操作レバー28の揺動範囲よりも左右外側に、収容部33を配置したことを特徴としている。
【0009】
第4に、収容部33を仕切61によって複数の収容スペース33a,33bに仕切り、複数の収容スペース33a,33bの1つに、キャップ9の少なくとも一部を収容して保持させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、一方側のカバー体に収容部を設け、他方側のカバー体にカップホルダ部を設けることにより、収容部及びカップホルダ部を省スペースで配置することができるとともに、給油作業を行うにあたり、給油口側のカバー体に設けた収容部に前記キャップを収容することができるため、利便性がより向上する。
【0011】
また、座席のカップホルダ部側の側方に前後揺動可能に操作レバーを設け、正面視で操作レバーの揺動範囲よりも左右外側に、カップホルダ部を配置し、あるいは、座席の収容部側の側方に前後揺動可能に操作レバーを設け、正面視で操作レバーの揺動範囲よりも左右外側に、収容部を配置したため、操作レバーの揺動操作に際して収容部及びカップホルダ部が操作の邪魔になることを防止することができる。
【0012】
また、収容部を仕切によって複数の収容スペースに仕切り、複数の収容スペースの1つに、キャップの少なくとも一部を収容して保持させるため、給油作業時に、前記キャップとその他の物とを収容することができ、給油作業の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの斜視図である。
【図2】座席周辺を示す斜視図である。
【図3】図2の拡大図である。
【図4】左フェンダカバーの設置状態を示す要部斜視図である。
【図5】バックルが収納された状態を示すの要部斜視図である。
【図6】左フェンダカバーの正断面図である。
【図7】バックルが収納された状態を示す左フェンダカバーの正断面図である。
【図8】右フェンダカバーの設置状態を示す要部斜視図であり
【図9】タングが収納された状態を示す要部斜視図であり
【図10】右フェンダカバーの正断面図であり
【図11】タングが収納された状態を示す右フェンダカバーの正断面図である。
【図12】収容部を使用した状態を示す要部斜視図である。
【図13】収容部を使用した状態を示す要部斜視図である。
【図14】収容部の使用状態を示す右フェンダカバーの斜視図である。
【図15】収容部の使用状態を示す右フェンダカバーの正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの斜視図であり、図2及び図3は、座席周辺を示す斜視図及び、図2の拡大図である。本トラクタでは、左右一対の前輪1及び後輪2によって支持される機体フレーム3と、該機体フレーム3の前側に設置されたエンジン(図示しない)の上面側をカバーするボンネット4と、該ボンネット4の後方に配置されてオペレータが操縦等を行う操縦部6とを備えることにより走行機体7が構成されており、該走行機体7の後方に昇降リンク(図示しない)を介してロータリ耕耘装置等の作業機(図示しない)を昇降可能に連結している。
【0015】
前記エンジンの後方側には、燃料タンク(図示しない)が設けられており、前記ボンネット4後端部の左右一方側には、該燃料タンクへの給油を行う給油口8が配置されている。ちなみに、給油口8は、図示する例では、ボンネットの進行方向右(右)寄りに位置している。該給油口8はタンクキャップ9(キャップ)により閉塞され、このタンクキャップ9(キャップ)は給油口8に係脱自在にネジ係合されるので、給油口8は開閉自在に構成されている。
【0016】
また、前記エンジン及び燃料タンクの両側方をカバーする左右一対のサイドカバー11,11の内、給油口8寄りのサイドカバー11近傍には、載置台12が配置されている。載置台12は、左右内側が開放されたU字状に曲げ形成され、左右方向の支持軸回りに回動可能に機体フレーム3側に取付支持されている。該回動構成によって、載置台12は、平面視U字状をなす載置姿勢と、正面視U字状をなすグリップ姿勢とに切換可能に構成される。載置姿勢の載置台12の上面側に図示しない給油タンクを位置決め載置することにより、給油口8を介して、給油タンクから燃料タンクへの給油作業を円滑に行うことが可能である。
【0017】
前記操縦部6は、オペレータが着座する座席13と、座席13の前方に配置された操向操作具であるステアリングハンドル14と、座席13とステアリングハンドル14の間に設けられた床面であるフロアステップ16と、座席13等を支持するように座席の後方に形成された枠体であって左右のフェンダの間に架設された操縦部側フレーム17とを備えている。
【0018】
この座席13には、基端が走行機体側(具体的には座席13の下側)に取付固定される固定端になるとともに先端が自由端となる一対のベルト53,53と、一方のベルトの先端部に取付けられたバックル43と、他方のベルトの先端部に設けられたタング56とから構成されたシートベルトが設けられている(図5及び図9参照)。オペレータの座席13への着席時に、バックル43にタング56を差込んで両者を連結固定することにより、該シートベルトはオペレータに装着され、オペレータの身体が座席13に安定的に保持せしめられる。
【0019】
前記座席13の後方側には、正面視逆U字状に屈曲形成された安全フレーム18が設置されており、この安全フレーム18は、操縦部6を跨ぐように走行機体7の左右一方側から他方側に架渡された状態で、該走行機体7に取付け固定されている。これにより、安全フレーム18は、車体の反転を防止し、車体が横転や反転した際に走行機体7と地面との間にスペースを形成してオペレータの頭部を保護する機能を有する。
【0020】
前記座席13の左右両側方には、後輪2に沿って円弧状に湾曲形成されて該後輪2の前方から上方に至る範囲を覆う金属製のフェンダ19L,19Rがそれぞれ配設されており、該左右の各フェンダ19L,19Rの上面側には、上方に山型をなすアーチ状に形成されて操縦部6への乗降りの際に把持する補助グリップであるアシストバー21と、後述する操作レバー等が配置されるサイド操作パネル22L,22Rと、合成樹脂により形成されてフェンダ19L,19Rを上方から覆うように前記アシストバー21及びサイド操作パネル22の後方側に取付けられるフェンダカバー23L,23R(カバー体)と、がそれぞれ設けられている。なお、このフェンダ19L,19R及びフェンダカバー23により、後輪2によって操縦部6側に泥水等が跳ね上げられることを効率的に防止される。
【0021】
前記サイド操作パネル22は、各種操作レバーが配置されている。具体的には、進行方向左(左)側のサイド操作パネル22Lには、変速操作を行う主変速レバー24と、副変速レバー26と、作業機への動力の入切を行うPTO変速レバー27とが設けられ、右側のサイド操作パネル22Rには、作業機の昇降位置を設定する昇降操作レバー28が設けられている。また、各操作レバーには、それぞれ前後揺動操作を案内するレバーガイドが取付けられており、所定の前後揺動操作が行われるようにガイドされる。
【0022】
左右のフェンダカバー23L,23Rは、座席13の背もたれの左右側方にそれぞれ配置されており、背もたれは、座席13の座部の後端部から、操縦部側フレーム17の前面に沿って上方斜め方向に延出されている。そして、左右一方側(図示する例では左側)のフェンダカバー23Lには、シートベルトのバックル43を保持するバックル保持部31(保持部)及び飲料水が入った缶やカップ等を収容して保持するカップホルダ部34が一体形成されるとともに、他方側のフェンダカバー23Rには、シートベルトのタング56を保持するタング保持部32(保持部)及び前記タンクキャップ9等の所定の小物を収容して保持する収容部33が一体形成されているが、詳細は後述する。
【0023】
次に、図4乃至11に基づいて前記左右のフェンダカバー23L,23Rについて共通の構成を説明する。
図4は、左フェンダカバーの設置状態を示す要部斜視図であり、図5は、バックルが収納された状態を示すの要部斜視図であり、図6は、左フェンダカバーの正断面図であり、図7は、バックルが収納された状態を示す左フェンダカバーの正断面図である。また、図8は、右フェンダカバーの設置状態を示す要部斜視図であり、図9は、タングが収納された状態を示す要部斜視図であり、図10は、右フェンダカバーの正断面図であり、図11は、タングが収納された状態を示す右フェンダカバーの正断面図である。
【0024】
これら図4乃至11に示されるように、左右のフェンダカバー23L,23Rの安全フレーム18基端側箇所には、安全フレーム18の基端部の周囲を囲繞するように上方側に盛上がったカバー部36が形成されている。該カバー部36の上面の中央側には、安全フレーム18の基端部が上下方向に挿通されるフレーム挿通部37が穿設され、該カバー部36の座席13側(左右内側)には、カバー部36上面から座席13方向(内側)に向って下側に傾斜した傾斜面38が形成されている。
【0025】
該フェンダカバー23は、該カバー部36から後方側に一体的に延設された補助カバー部39を備えている。この補助カバー部39は、上述したようにフェンダ19よりもさらに後方に延びて後輪2等によって圃場の泥水等がカバー部36側に跳ね上げられることを防止できる。
【0026】
また、該フェンダカバー23の前端部にはアシストバー側固定部41が形成されるとともに、フェンダカバー23の前記傾斜面38の後半部には、側面視逆U字状をなして操縦部側フレーム17側に突出する操縦部側固定部42が形成されている。そして、アシストバー側固定部41を、サイド操作パネル22の後端部及び前記アシストバー21の後端部とともにフェンダ19側に共締めによってボルト固定するとともに、操縦部側固定部42を、操縦部側フレーム17の上端部端側に被せるように載置した状態で、該操縦部側フレーム17にボルト固定すること等によって、フェンダカバー23が走行機体7側にガタ無く取付固定される。
【0027】
次に、図4乃至11に基づき、フェンダカバーに設けたバックル保持部及びタング保持部の構成について説明する。
上記バックル保持部31は、フェンダカバー23Lの前記傾斜面38の前半部に一体形成される一方で、上記タング保持部32は、フェンダカバー23Rの前記傾斜面38の前半部に一体形成されている。
【0028】
図4乃至7に示すように、上述のバックル保持部31は、上下が開放された平面視方形枠状に形成され、その内部にバックル43を上下方向に挿通されるの挿通部44が形成されている。このようにして、上下方向の筒状に形成されたバックル保持部31の座席13側壁部(バックル保持部31の周囲)の前後方向中央部は、上下方向全体に亘ってスリット状に開放されており、該開放部分がベルト53を挿入部から出入する出入口46となる。ちなみに、出入口46は、その左右両端の幅が下方に向って広くなるテーパ状に構成されている。
【0029】
なお、前記バックル43は扁平な直方体状に形成され、バックル43のベルト53側と反対の端部である先端部に、タング51が差込まれて連結固定される差込口(図示しない)が形成されている。ベルト53をバックル保持部31の挿通部44に挿通させ、且つバックル43をバックル保持部31の上方側に位置させた後、バックル43のベルト53側の端部である基端部側が、保持部31の挿通部44の上端から挿入されるようにして、該バックル43をバックル保持部31に挿通させる。言換えると、バックル保持部31の挿入部44の上端が、バックル43を挿入する挿入口44aとなり、バックル保持部31の開放された下端は、バックル43を挿入できる程度には開口していない。
【0030】
バックル43において、シートベルト装着時にオペレータ側を向く面(オペレータ側面)と反対側の面(非オペレータ側面)には、基端側に向って、オペレータ側面に近づくように傾斜した斜面43aが形成されている。この斜面43aは、バックル43の基端側半部に位置している。これに対応して、挿通部44を構成する左右の内壁面の内、座席13から遠い側の内壁面には、近い側の内壁面に向って下方傾斜した規制面45が形成されており、この規制面45の傾斜の程度は、上述した斜面43aと略同一に設定されている(図7参照)。
【0031】
このため、装着面を座席側(左右内側)に向けた状態で、基端側からバックル43を、バックル保持部31に挿通させると、斜面43aが規制面45に面接触し、それ以上に下方に挿通されない状態になり、該バックル43をバックル保持部31に安定的に収容保持できる。ちなみに、装着面を左右外側に向けた状態で、バックル43を、基端側から、バックル保持部31に挿入させると、バックル43の基端部が、規制面45又は規制面45近傍に引掛かり、バックル43をバックル保持部31に収容保持させることができない。
【0032】
すなわち、バックル43の基端部が下方を向くとともにバックル43のオペレータ側面が左右内側(座席側)を向いた収納姿勢の場合のみ、該バックル43を、上側から挿入口44aに挿入させることが可能なように前記バックル保持部31は構成されている。
【0033】
また、上述の通り、収納姿勢のバックル43をバックル保持部31に収容して保持させるためには、バックル基端側のベルト53の保持部に上下に挿通させる必要がある一方で、バックル43をバックル保持部31から取外す際には、該ベルト53を、バックル保持部31から取出す必要があり、このようなベルト53の出入を、スリット状に開放された出入口46を介して行う。ちなみに、上述したように、出入口46は、下方に向って左右幅を拡がるテーパ状に形成されているため、ベルト53を把持して持上げることにより、バックル保持部31からスムーズにベルト53を取出すことが可能になる。ちなみに、ベルト53を折り曲げて変形させて、ベルト幅を縮小させることにより、ベルト53の保持部からの出入作業を円滑に行う。
【0034】
図8乃至11に示すように、上述のタング保持部32は、傾斜面38に一体的に形成された一対の係止片54,54と、係止片54,54の間に位置して該傾斜面38から座席13側に膨出した規制部58とから構成されている。一対の係止片54,54は、それぞれ傾斜面38から座席13側に突出する基端側半部に対して、先端側半部が互いに向い合うようにそれぞれ屈曲され、全体として鉤状に形成されている。
【0035】
そして、係止片54と、規制部58の膨出端面との間には、タング56を差込んで挿入するスロット状の挿入スペース57が形成され、該挿入スペース57は、上述の構成によって、座席13側の一部及び上下が開放された状態になる。ちなみに、挿入スペース57の上端が、タング56を挿入する挿入口57aに設定され、該挿入口57aをより大きく開放するために、各係止片54の上端部は、傾斜面38から離間する側に湾曲形成されており、該湾曲部分は、タング56を挿入スペース57側にスムーズに案内するテーパ状のガイド部59としても機能する。
【0036】
一方、該タング保持部32に収容して保持される前記タング56は、バックル43の差込口に差込まれる金属製のタングプレート56aと、方形厚板状の取付体56bとから構成されていており、該取付体56bは、一対の長辺部の一方にベルト53の先端部が取付けられるとともに、他方にタングプレート56aの基端部が取付固定されている。ちなみにベルト53の基端部は、座席13の後方側に固定されている。
【0037】
タングプレート56aの差込み幅は、取付体56bの差込み幅よりも狭く、タングプレート56aの厚みは、取付体56bの厚みよりも薄くなるように、該タングプレート56aは成形されている。さらに具体的には、タングプレート56a及び取付体56bは、シートベルト装着時にオペレータ側を向く面(オペレータ側面)では、一体的に連接されて連続的なフラット面を形成する一方で、シートベルト装着時にオペレータ側と反対側を向く面(非オペレータ側面)では、タングプレート56aに対して取付体56bが凸状に突出している(図11参照)。
【0038】
以上により、タング56の非オペレータ面を座席側(左右内側)に向けるとともにタング56の先端部を下方に向けた収納姿勢に切換え、該収納姿勢のタング56の先端を、上方側から、挿入口57aに挿入することにより、タングプレート56aの略全体を挿入スペース57に収納させることが可能になり、該タングプレート56aの挿入スペース57への収納と、取付体56bのタング保持部32の上端部での受止めとよって、タング56がタング保持部32に安定的に保持される。
【0039】
ちなみに、挿入スペース57の厚みは、タングプレート56aの厚みよりも若干厚い又は略同一に設定されており、取付体56bよりは薄く形成されている。このため、タング56の非オペレータ側面が左右外側を向けられた状態では、取付体56bが傾斜面38に接当して、タング保持部32にタング56を挿入することができない。また、タング56を下方側かタング保持部32に挿入させた場合には、自重によって、タング56がタング保持部32から抜出して落下する。
【0040】
すなわち、タング56の先端部が下方を向くとともにタング56のオペレータ側面が左右外側を向いた収納姿勢の場合のみ、該タング56をタング保持部32に収納して保持させることが可能なように該タング保持部32を構成している。
【0041】
当該構成により、前記バックル保持部31及びタング保持部32は、それぞれ座席13の後方側近傍であって且つ設置高さが各種操作レバーの把持部よりも下方側となるように構成されているため、オペレータは着座姿勢から体勢を変えることなく、バックル43及びタング56を各保持部31,32に収容した収納状態(収納姿勢)から、オペレータがシートベルトを装着した装着状態に移行できるとともに、ベルト53を捩じるような動作を行うことなくバックル43及びタング56を収容姿勢と装着姿勢とに切換えることができるため、シートベルトの収容及び装着を容易に行うことができる。
【0042】
また、該収容状態及び装着状態の何れの状態においても、各保持部31,32、又は保持部に収容されたバックル43又はタング45が各操作レバーの前後揺動操作の邪魔にならない。
【0043】
次に、図4乃至15に基づき、フェンダカバーに設けた収容部及びカップホルダ部の構成について説明する。
図12及び図13は、収容部を使用した状態を示す要部斜視図であり、図14は、収容部の使用状態を示す右フェンダカバーの斜視図であり、図15は、収容部の使用状態を示す右フェンダカバーの正面断面図である。図示する例より、左右のフェンダカバー23L,23Rのうち、左フェンダカバー23Lに、前記カップホルダ部34を一体形成し、右フェンダカバー23Rに、前記収容部33を一体形成している。
【0044】
図12乃至15に示すように、前記収容部33は、右フェンダカバー23Rの前記アシストバー側固定部41の後方側であって且つ正面視で昇降操作レバー28が揺動操作される範囲よりも左右方向右(左右外)側に配置されている。
【0045】
また、該収容部33は、方形枠状の枠壁により形成されるとともに、前後方向の中央部に仕切部61(仕切)を設けて左右方向外側の第1収容スペース33aと、左右方向内側の第2収容スペース33bとに区切られている。該各収容スペース33a,33bは、外側の第1収容スペース33aに収容された小物が座席側から出入れし易くなるように、第1収容スペース33aを形成する外壁部及び仕切部61の高さと比較して、第2収容スペース33bを形成する外壁部の高さが低くなるように構成されている。
【0046】
前記各収容スペースのうち、外側に配置された第1収容スペース33aは、前記給油口8に回動操作によってネジ係合するタンクキャップ9の少なくとも一部を収容して保持できるように構成されている。具体的には、円柱状のタンクキャップ9の周面に、回動操作による開閉を行い易いようにグリップ部9aが複数凹設されており、該タンクキャップ9を、回動軸を横方向にした状態で第1収容スペース33aに半分程挿入することにより、前記グリップ部9aが第1収容スペース33aの前後端にそれぞれ係止され、タンクキャップ9が第1収容スペース33aに保持される。
【0047】
前記第2収容スペース33bは、燃料タンクに給油する際に使用する給油タンクの給油キャップ62を縦方向に収容可能に形成している(図12乃至15参照)。
【0048】
図4乃至9に示すように、前記カップホルダ部34は、左フェンダカバー23Lの前記アシストバー側固定部41の後方側であって且つ正面視で主変速操作レバー24と、副変速レバー26と、PTO変速レバー27とがそれぞれ揺動操作される範囲よりも左右方向左(左右外)側に、配置されている。
【0049】
また、該カップホルダ部34は、作業走行時等の振動によって収容されるカップ等が落ちないように、所定の高さに立上げた円柱状に形成されるとともに、カップホルダ部34に収容された物を取出し易くなるように、カップホルダ部34の上端部座席側に切欠部34aを形成している(図4及び図5参照)。
【0050】
当該構成により、走行機体7の右側に配置される前記載置台12を載置姿勢に切換え、該載置台12に給油タンクを載せた状態で前記給油口8にネジ係合されたタンクキャップ9を取外して燃料タンクへの給油作業を行うに際して、該タンクキャップ9と、給油タンクに取付けられていた給油キャップ62とを給油口8側と同じ走行機体7右側の右フェンダカバー23Rに一体形成された前記第1収容スペース33a及び第2収容スペース33bに保持することができるため、給油作業を効率的に行うことができる。さらに、給油作業時以外の時にも小物入れとして使用できるため、無駄がない。
【0051】
また、左右のフェンダカバー23L,23Rのうち、左フェンダカバー23Lにカップホルダ部34を設け、右フェンダカバー23Rに収容部33を設けることにより、省スペースで収容部33及びカップホルダ部34を設置することができる。
【0052】
さらに、収容部33は、座席13の右側に配置される操作レバーである昇降操作レバー28の配置位置より左右方向右側に配置され、カップホルダ部34は、座席の左側に配置される操作レバーである主変速レバー24と副変速レバー26とPTO変速レバー27の配置位置より左右方向左側に配置されるため、収容部33及びカップホルダ部34が各種操作レバーの前後揺動操作の邪魔になることがなく、仮に収容物が落下した場合においても操作レバーに接触して誤作動する等する可能性が低い構成となる。
【符号の説明】
【0053】
7 走行機体
8 給油口
9 タンクキャップ(キャップ)
13 座席
23 フェンダカバー(カバー体)
24 主変速レバー(操作レバー)
26 副変速レバー(操作レバー)
27 PTOレバー(操作レバー)
28 昇降操作レバー(操作レバー)
33 収容部
33a 第1収容スペース(収容スペース)
33b 第2収容スペース(収容スペース)
34 カップホルダ部
61 仕切部(仕切)
【技術分野】
【0001】
座席の側方に収容部とカップホルダを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両を運転等する際には、持ち歩いていた所定の小物や、飲料水が入った缶やカップ等が邪魔になる場合があるため、この問題を解決すべく、座席の側方に配置されたカバー体に、所定の小物を収容する収容部と、カップホルダ部とを、それぞれ一体的に形成した特許文献1に示す作業車両が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4476182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献では、所定の小物及び飲料水が入った缶やカップ等を収容することができる一方で、走行機体の左右一方側のカバー体に前記収容部及びカップホルダ部を一体的に形成しているため、収容部及びカップホルダ部を設置するためにスペースを大きくとる必要があり、他の部材の設置スペースを圧迫するという問題があった。
【0005】
本発明は、収容部及びカップホルダ部を、座席側方のカバー体に省スペースで設置し、他の部材を配置するためのスペースを十分に確保することができる作業車両を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、第1に、座席13の側方に配置されたカバー体23に、所定の小物を収容する収容部33と、カップホルダ部34とを、それぞれ一体的に形成し、走行機体7の左右一方寄りに給油口8及び該給油口8を開閉可能に閉塞するキャップ9を設けた作業車両において、座席13の左右両側方にそれぞれカバー体23を設け、左右のカバー体23における給油口8側のカバー体23に収容部33を設けるとともに、もう一方側のカバー体23にカップホルダ部34を設け、収容部33に前記キャップ9の少なくとも一部を収容して保持できるように該収容部33を形成したことを特徴としている。
【0007】
第2に、座席13のカップホルダ部34側の側方に前後揺動可能に操作レバー24,26,27を設け、正面視で操作レバー24,26,27の揺動範囲よりも左右外側に、カップホルダ部34を配置したことを特徴としている。
【0008】
第3に、座席13の収容部33側の側方に前後揺動可能に操作レバー28を設け、正面視で操作レバー28の揺動範囲よりも左右外側に、収容部33を配置したことを特徴としている。
【0009】
第4に、収容部33を仕切61によって複数の収容スペース33a,33bに仕切り、複数の収容スペース33a,33bの1つに、キャップ9の少なくとも一部を収容して保持させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、一方側のカバー体に収容部を設け、他方側のカバー体にカップホルダ部を設けることにより、収容部及びカップホルダ部を省スペースで配置することができるとともに、給油作業を行うにあたり、給油口側のカバー体に設けた収容部に前記キャップを収容することができるため、利便性がより向上する。
【0011】
また、座席のカップホルダ部側の側方に前後揺動可能に操作レバーを設け、正面視で操作レバーの揺動範囲よりも左右外側に、カップホルダ部を配置し、あるいは、座席の収容部側の側方に前後揺動可能に操作レバーを設け、正面視で操作レバーの揺動範囲よりも左右外側に、収容部を配置したため、操作レバーの揺動操作に際して収容部及びカップホルダ部が操作の邪魔になることを防止することができる。
【0012】
また、収容部を仕切によって複数の収容スペースに仕切り、複数の収容スペースの1つに、キャップの少なくとも一部を収容して保持させるため、給油作業時に、前記キャップとその他の物とを収容することができ、給油作業の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの斜視図である。
【図2】座席周辺を示す斜視図である。
【図3】図2の拡大図である。
【図4】左フェンダカバーの設置状態を示す要部斜視図である。
【図5】バックルが収納された状態を示すの要部斜視図である。
【図6】左フェンダカバーの正断面図である。
【図7】バックルが収納された状態を示す左フェンダカバーの正断面図である。
【図8】右フェンダカバーの設置状態を示す要部斜視図であり
【図9】タングが収納された状態を示す要部斜視図であり
【図10】右フェンダカバーの正断面図であり
【図11】タングが収納された状態を示す右フェンダカバーの正断面図である。
【図12】収容部を使用した状態を示す要部斜視図である。
【図13】収容部を使用した状態を示す要部斜視図である。
【図14】収容部の使用状態を示す右フェンダカバーの斜視図である。
【図15】収容部の使用状態を示す右フェンダカバーの正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの斜視図であり、図2及び図3は、座席周辺を示す斜視図及び、図2の拡大図である。本トラクタでは、左右一対の前輪1及び後輪2によって支持される機体フレーム3と、該機体フレーム3の前側に設置されたエンジン(図示しない)の上面側をカバーするボンネット4と、該ボンネット4の後方に配置されてオペレータが操縦等を行う操縦部6とを備えることにより走行機体7が構成されており、該走行機体7の後方に昇降リンク(図示しない)を介してロータリ耕耘装置等の作業機(図示しない)を昇降可能に連結している。
【0015】
前記エンジンの後方側には、燃料タンク(図示しない)が設けられており、前記ボンネット4後端部の左右一方側には、該燃料タンクへの給油を行う給油口8が配置されている。ちなみに、給油口8は、図示する例では、ボンネットの進行方向右(右)寄りに位置している。該給油口8はタンクキャップ9(キャップ)により閉塞され、このタンクキャップ9(キャップ)は給油口8に係脱自在にネジ係合されるので、給油口8は開閉自在に構成されている。
【0016】
また、前記エンジン及び燃料タンクの両側方をカバーする左右一対のサイドカバー11,11の内、給油口8寄りのサイドカバー11近傍には、載置台12が配置されている。載置台12は、左右内側が開放されたU字状に曲げ形成され、左右方向の支持軸回りに回動可能に機体フレーム3側に取付支持されている。該回動構成によって、載置台12は、平面視U字状をなす載置姿勢と、正面視U字状をなすグリップ姿勢とに切換可能に構成される。載置姿勢の載置台12の上面側に図示しない給油タンクを位置決め載置することにより、給油口8を介して、給油タンクから燃料タンクへの給油作業を円滑に行うことが可能である。
【0017】
前記操縦部6は、オペレータが着座する座席13と、座席13の前方に配置された操向操作具であるステアリングハンドル14と、座席13とステアリングハンドル14の間に設けられた床面であるフロアステップ16と、座席13等を支持するように座席の後方に形成された枠体であって左右のフェンダの間に架設された操縦部側フレーム17とを備えている。
【0018】
この座席13には、基端が走行機体側(具体的には座席13の下側)に取付固定される固定端になるとともに先端が自由端となる一対のベルト53,53と、一方のベルトの先端部に取付けられたバックル43と、他方のベルトの先端部に設けられたタング56とから構成されたシートベルトが設けられている(図5及び図9参照)。オペレータの座席13への着席時に、バックル43にタング56を差込んで両者を連結固定することにより、該シートベルトはオペレータに装着され、オペレータの身体が座席13に安定的に保持せしめられる。
【0019】
前記座席13の後方側には、正面視逆U字状に屈曲形成された安全フレーム18が設置されており、この安全フレーム18は、操縦部6を跨ぐように走行機体7の左右一方側から他方側に架渡された状態で、該走行機体7に取付け固定されている。これにより、安全フレーム18は、車体の反転を防止し、車体が横転や反転した際に走行機体7と地面との間にスペースを形成してオペレータの頭部を保護する機能を有する。
【0020】
前記座席13の左右両側方には、後輪2に沿って円弧状に湾曲形成されて該後輪2の前方から上方に至る範囲を覆う金属製のフェンダ19L,19Rがそれぞれ配設されており、該左右の各フェンダ19L,19Rの上面側には、上方に山型をなすアーチ状に形成されて操縦部6への乗降りの際に把持する補助グリップであるアシストバー21と、後述する操作レバー等が配置されるサイド操作パネル22L,22Rと、合成樹脂により形成されてフェンダ19L,19Rを上方から覆うように前記アシストバー21及びサイド操作パネル22の後方側に取付けられるフェンダカバー23L,23R(カバー体)と、がそれぞれ設けられている。なお、このフェンダ19L,19R及びフェンダカバー23により、後輪2によって操縦部6側に泥水等が跳ね上げられることを効率的に防止される。
【0021】
前記サイド操作パネル22は、各種操作レバーが配置されている。具体的には、進行方向左(左)側のサイド操作パネル22Lには、変速操作を行う主変速レバー24と、副変速レバー26と、作業機への動力の入切を行うPTO変速レバー27とが設けられ、右側のサイド操作パネル22Rには、作業機の昇降位置を設定する昇降操作レバー28が設けられている。また、各操作レバーには、それぞれ前後揺動操作を案内するレバーガイドが取付けられており、所定の前後揺動操作が行われるようにガイドされる。
【0022】
左右のフェンダカバー23L,23Rは、座席13の背もたれの左右側方にそれぞれ配置されており、背もたれは、座席13の座部の後端部から、操縦部側フレーム17の前面に沿って上方斜め方向に延出されている。そして、左右一方側(図示する例では左側)のフェンダカバー23Lには、シートベルトのバックル43を保持するバックル保持部31(保持部)及び飲料水が入った缶やカップ等を収容して保持するカップホルダ部34が一体形成されるとともに、他方側のフェンダカバー23Rには、シートベルトのタング56を保持するタング保持部32(保持部)及び前記タンクキャップ9等の所定の小物を収容して保持する収容部33が一体形成されているが、詳細は後述する。
【0023】
次に、図4乃至11に基づいて前記左右のフェンダカバー23L,23Rについて共通の構成を説明する。
図4は、左フェンダカバーの設置状態を示す要部斜視図であり、図5は、バックルが収納された状態を示すの要部斜視図であり、図6は、左フェンダカバーの正断面図であり、図7は、バックルが収納された状態を示す左フェンダカバーの正断面図である。また、図8は、右フェンダカバーの設置状態を示す要部斜視図であり、図9は、タングが収納された状態を示す要部斜視図であり、図10は、右フェンダカバーの正断面図であり、図11は、タングが収納された状態を示す右フェンダカバーの正断面図である。
【0024】
これら図4乃至11に示されるように、左右のフェンダカバー23L,23Rの安全フレーム18基端側箇所には、安全フレーム18の基端部の周囲を囲繞するように上方側に盛上がったカバー部36が形成されている。該カバー部36の上面の中央側には、安全フレーム18の基端部が上下方向に挿通されるフレーム挿通部37が穿設され、該カバー部36の座席13側(左右内側)には、カバー部36上面から座席13方向(内側)に向って下側に傾斜した傾斜面38が形成されている。
【0025】
該フェンダカバー23は、該カバー部36から後方側に一体的に延設された補助カバー部39を備えている。この補助カバー部39は、上述したようにフェンダ19よりもさらに後方に延びて後輪2等によって圃場の泥水等がカバー部36側に跳ね上げられることを防止できる。
【0026】
また、該フェンダカバー23の前端部にはアシストバー側固定部41が形成されるとともに、フェンダカバー23の前記傾斜面38の後半部には、側面視逆U字状をなして操縦部側フレーム17側に突出する操縦部側固定部42が形成されている。そして、アシストバー側固定部41を、サイド操作パネル22の後端部及び前記アシストバー21の後端部とともにフェンダ19側に共締めによってボルト固定するとともに、操縦部側固定部42を、操縦部側フレーム17の上端部端側に被せるように載置した状態で、該操縦部側フレーム17にボルト固定すること等によって、フェンダカバー23が走行機体7側にガタ無く取付固定される。
【0027】
次に、図4乃至11に基づき、フェンダカバーに設けたバックル保持部及びタング保持部の構成について説明する。
上記バックル保持部31は、フェンダカバー23Lの前記傾斜面38の前半部に一体形成される一方で、上記タング保持部32は、フェンダカバー23Rの前記傾斜面38の前半部に一体形成されている。
【0028】
図4乃至7に示すように、上述のバックル保持部31は、上下が開放された平面視方形枠状に形成され、その内部にバックル43を上下方向に挿通されるの挿通部44が形成されている。このようにして、上下方向の筒状に形成されたバックル保持部31の座席13側壁部(バックル保持部31の周囲)の前後方向中央部は、上下方向全体に亘ってスリット状に開放されており、該開放部分がベルト53を挿入部から出入する出入口46となる。ちなみに、出入口46は、その左右両端の幅が下方に向って広くなるテーパ状に構成されている。
【0029】
なお、前記バックル43は扁平な直方体状に形成され、バックル43のベルト53側と反対の端部である先端部に、タング51が差込まれて連結固定される差込口(図示しない)が形成されている。ベルト53をバックル保持部31の挿通部44に挿通させ、且つバックル43をバックル保持部31の上方側に位置させた後、バックル43のベルト53側の端部である基端部側が、保持部31の挿通部44の上端から挿入されるようにして、該バックル43をバックル保持部31に挿通させる。言換えると、バックル保持部31の挿入部44の上端が、バックル43を挿入する挿入口44aとなり、バックル保持部31の開放された下端は、バックル43を挿入できる程度には開口していない。
【0030】
バックル43において、シートベルト装着時にオペレータ側を向く面(オペレータ側面)と反対側の面(非オペレータ側面)には、基端側に向って、オペレータ側面に近づくように傾斜した斜面43aが形成されている。この斜面43aは、バックル43の基端側半部に位置している。これに対応して、挿通部44を構成する左右の内壁面の内、座席13から遠い側の内壁面には、近い側の内壁面に向って下方傾斜した規制面45が形成されており、この規制面45の傾斜の程度は、上述した斜面43aと略同一に設定されている(図7参照)。
【0031】
このため、装着面を座席側(左右内側)に向けた状態で、基端側からバックル43を、バックル保持部31に挿通させると、斜面43aが規制面45に面接触し、それ以上に下方に挿通されない状態になり、該バックル43をバックル保持部31に安定的に収容保持できる。ちなみに、装着面を左右外側に向けた状態で、バックル43を、基端側から、バックル保持部31に挿入させると、バックル43の基端部が、規制面45又は規制面45近傍に引掛かり、バックル43をバックル保持部31に収容保持させることができない。
【0032】
すなわち、バックル43の基端部が下方を向くとともにバックル43のオペレータ側面が左右内側(座席側)を向いた収納姿勢の場合のみ、該バックル43を、上側から挿入口44aに挿入させることが可能なように前記バックル保持部31は構成されている。
【0033】
また、上述の通り、収納姿勢のバックル43をバックル保持部31に収容して保持させるためには、バックル基端側のベルト53の保持部に上下に挿通させる必要がある一方で、バックル43をバックル保持部31から取外す際には、該ベルト53を、バックル保持部31から取出す必要があり、このようなベルト53の出入を、スリット状に開放された出入口46を介して行う。ちなみに、上述したように、出入口46は、下方に向って左右幅を拡がるテーパ状に形成されているため、ベルト53を把持して持上げることにより、バックル保持部31からスムーズにベルト53を取出すことが可能になる。ちなみに、ベルト53を折り曲げて変形させて、ベルト幅を縮小させることにより、ベルト53の保持部からの出入作業を円滑に行う。
【0034】
図8乃至11に示すように、上述のタング保持部32は、傾斜面38に一体的に形成された一対の係止片54,54と、係止片54,54の間に位置して該傾斜面38から座席13側に膨出した規制部58とから構成されている。一対の係止片54,54は、それぞれ傾斜面38から座席13側に突出する基端側半部に対して、先端側半部が互いに向い合うようにそれぞれ屈曲され、全体として鉤状に形成されている。
【0035】
そして、係止片54と、規制部58の膨出端面との間には、タング56を差込んで挿入するスロット状の挿入スペース57が形成され、該挿入スペース57は、上述の構成によって、座席13側の一部及び上下が開放された状態になる。ちなみに、挿入スペース57の上端が、タング56を挿入する挿入口57aに設定され、該挿入口57aをより大きく開放するために、各係止片54の上端部は、傾斜面38から離間する側に湾曲形成されており、該湾曲部分は、タング56を挿入スペース57側にスムーズに案内するテーパ状のガイド部59としても機能する。
【0036】
一方、該タング保持部32に収容して保持される前記タング56は、バックル43の差込口に差込まれる金属製のタングプレート56aと、方形厚板状の取付体56bとから構成されていており、該取付体56bは、一対の長辺部の一方にベルト53の先端部が取付けられるとともに、他方にタングプレート56aの基端部が取付固定されている。ちなみにベルト53の基端部は、座席13の後方側に固定されている。
【0037】
タングプレート56aの差込み幅は、取付体56bの差込み幅よりも狭く、タングプレート56aの厚みは、取付体56bの厚みよりも薄くなるように、該タングプレート56aは成形されている。さらに具体的には、タングプレート56a及び取付体56bは、シートベルト装着時にオペレータ側を向く面(オペレータ側面)では、一体的に連接されて連続的なフラット面を形成する一方で、シートベルト装着時にオペレータ側と反対側を向く面(非オペレータ側面)では、タングプレート56aに対して取付体56bが凸状に突出している(図11参照)。
【0038】
以上により、タング56の非オペレータ面を座席側(左右内側)に向けるとともにタング56の先端部を下方に向けた収納姿勢に切換え、該収納姿勢のタング56の先端を、上方側から、挿入口57aに挿入することにより、タングプレート56aの略全体を挿入スペース57に収納させることが可能になり、該タングプレート56aの挿入スペース57への収納と、取付体56bのタング保持部32の上端部での受止めとよって、タング56がタング保持部32に安定的に保持される。
【0039】
ちなみに、挿入スペース57の厚みは、タングプレート56aの厚みよりも若干厚い又は略同一に設定されており、取付体56bよりは薄く形成されている。このため、タング56の非オペレータ側面が左右外側を向けられた状態では、取付体56bが傾斜面38に接当して、タング保持部32にタング56を挿入することができない。また、タング56を下方側かタング保持部32に挿入させた場合には、自重によって、タング56がタング保持部32から抜出して落下する。
【0040】
すなわち、タング56の先端部が下方を向くとともにタング56のオペレータ側面が左右外側を向いた収納姿勢の場合のみ、該タング56をタング保持部32に収納して保持させることが可能なように該タング保持部32を構成している。
【0041】
当該構成により、前記バックル保持部31及びタング保持部32は、それぞれ座席13の後方側近傍であって且つ設置高さが各種操作レバーの把持部よりも下方側となるように構成されているため、オペレータは着座姿勢から体勢を変えることなく、バックル43及びタング56を各保持部31,32に収容した収納状態(収納姿勢)から、オペレータがシートベルトを装着した装着状態に移行できるとともに、ベルト53を捩じるような動作を行うことなくバックル43及びタング56を収容姿勢と装着姿勢とに切換えることができるため、シートベルトの収容及び装着を容易に行うことができる。
【0042】
また、該収容状態及び装着状態の何れの状態においても、各保持部31,32、又は保持部に収容されたバックル43又はタング45が各操作レバーの前後揺動操作の邪魔にならない。
【0043】
次に、図4乃至15に基づき、フェンダカバーに設けた収容部及びカップホルダ部の構成について説明する。
図12及び図13は、収容部を使用した状態を示す要部斜視図であり、図14は、収容部の使用状態を示す右フェンダカバーの斜視図であり、図15は、収容部の使用状態を示す右フェンダカバーの正面断面図である。図示する例より、左右のフェンダカバー23L,23Rのうち、左フェンダカバー23Lに、前記カップホルダ部34を一体形成し、右フェンダカバー23Rに、前記収容部33を一体形成している。
【0044】
図12乃至15に示すように、前記収容部33は、右フェンダカバー23Rの前記アシストバー側固定部41の後方側であって且つ正面視で昇降操作レバー28が揺動操作される範囲よりも左右方向右(左右外)側に配置されている。
【0045】
また、該収容部33は、方形枠状の枠壁により形成されるとともに、前後方向の中央部に仕切部61(仕切)を設けて左右方向外側の第1収容スペース33aと、左右方向内側の第2収容スペース33bとに区切られている。該各収容スペース33a,33bは、外側の第1収容スペース33aに収容された小物が座席側から出入れし易くなるように、第1収容スペース33aを形成する外壁部及び仕切部61の高さと比較して、第2収容スペース33bを形成する外壁部の高さが低くなるように構成されている。
【0046】
前記各収容スペースのうち、外側に配置された第1収容スペース33aは、前記給油口8に回動操作によってネジ係合するタンクキャップ9の少なくとも一部を収容して保持できるように構成されている。具体的には、円柱状のタンクキャップ9の周面に、回動操作による開閉を行い易いようにグリップ部9aが複数凹設されており、該タンクキャップ9を、回動軸を横方向にした状態で第1収容スペース33aに半分程挿入することにより、前記グリップ部9aが第1収容スペース33aの前後端にそれぞれ係止され、タンクキャップ9が第1収容スペース33aに保持される。
【0047】
前記第2収容スペース33bは、燃料タンクに給油する際に使用する給油タンクの給油キャップ62を縦方向に収容可能に形成している(図12乃至15参照)。
【0048】
図4乃至9に示すように、前記カップホルダ部34は、左フェンダカバー23Lの前記アシストバー側固定部41の後方側であって且つ正面視で主変速操作レバー24と、副変速レバー26と、PTO変速レバー27とがそれぞれ揺動操作される範囲よりも左右方向左(左右外)側に、配置されている。
【0049】
また、該カップホルダ部34は、作業走行時等の振動によって収容されるカップ等が落ちないように、所定の高さに立上げた円柱状に形成されるとともに、カップホルダ部34に収容された物を取出し易くなるように、カップホルダ部34の上端部座席側に切欠部34aを形成している(図4及び図5参照)。
【0050】
当該構成により、走行機体7の右側に配置される前記載置台12を載置姿勢に切換え、該載置台12に給油タンクを載せた状態で前記給油口8にネジ係合されたタンクキャップ9を取外して燃料タンクへの給油作業を行うに際して、該タンクキャップ9と、給油タンクに取付けられていた給油キャップ62とを給油口8側と同じ走行機体7右側の右フェンダカバー23Rに一体形成された前記第1収容スペース33a及び第2収容スペース33bに保持することができるため、給油作業を効率的に行うことができる。さらに、給油作業時以外の時にも小物入れとして使用できるため、無駄がない。
【0051】
また、左右のフェンダカバー23L,23Rのうち、左フェンダカバー23Lにカップホルダ部34を設け、右フェンダカバー23Rに収容部33を設けることにより、省スペースで収容部33及びカップホルダ部34を設置することができる。
【0052】
さらに、収容部33は、座席13の右側に配置される操作レバーである昇降操作レバー28の配置位置より左右方向右側に配置され、カップホルダ部34は、座席の左側に配置される操作レバーである主変速レバー24と副変速レバー26とPTO変速レバー27の配置位置より左右方向左側に配置されるため、収容部33及びカップホルダ部34が各種操作レバーの前後揺動操作の邪魔になることがなく、仮に収容物が落下した場合においても操作レバーに接触して誤作動する等する可能性が低い構成となる。
【符号の説明】
【0053】
7 走行機体
8 給油口
9 タンクキャップ(キャップ)
13 座席
23 フェンダカバー(カバー体)
24 主変速レバー(操作レバー)
26 副変速レバー(操作レバー)
27 PTOレバー(操作レバー)
28 昇降操作レバー(操作レバー)
33 収容部
33a 第1収容スペース(収容スペース)
33b 第2収容スペース(収容スペース)
34 カップホルダ部
61 仕切部(仕切)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席(13)の側方に配置されたカバー体(23)に、所定の小物を収容する収容部(33)と、カップホルダ部(34)とを、それぞれ一体的に形成し、走行機体(7)の左右一方寄りに給油口(8)及び該給油口(8)を開閉可能に閉塞するキャップ(9)を設けた作業車両において、座席(13)の左右両側方にそれぞれカバー体(23)を設け、左右のカバー体(23)における給油口(8)側のカバー体(23)に収容部(33)を設けるとともに、もう一方側のカバー体(23)にカップホルダ部(34)を設け、収容部(33)に前記キャップ(9)の少なくとも一部を収容して保持できるように該収容部(33)を形成した作業車両。
【請求項2】
座席(13)のカップホルダ部(34)側の側方に前後揺動可能に操作レバー(24,26,27)を設け、正面視で操作レバー(24,26,27)の揺動範囲よりも左右外側に、カップホルダ部(34)を配置した請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
座席(13)の収容部(33)側の側方に前後揺動可能に操作レバー(28)を設け、正面視で操作レバー(28)の揺動範囲よりも左右外側に、収容部(33)を配置した請求項1又は2の何れかに記載の作業車両。
【請求項4】
収容部(33)を仕切(61)によって複数の収容スペース(33a,33b)に仕切り、複数の収容スペース(33a,33b)の1つに、キャップ(9)の少なくとも一部を収容して保持させる請求項1乃至3の何れかに記載の作業車両。
【請求項1】
座席(13)の側方に配置されたカバー体(23)に、所定の小物を収容する収容部(33)と、カップホルダ部(34)とを、それぞれ一体的に形成し、走行機体(7)の左右一方寄りに給油口(8)及び該給油口(8)を開閉可能に閉塞するキャップ(9)を設けた作業車両において、座席(13)の左右両側方にそれぞれカバー体(23)を設け、左右のカバー体(23)における給油口(8)側のカバー体(23)に収容部(33)を設けるとともに、もう一方側のカバー体(23)にカップホルダ部(34)を設け、収容部(33)に前記キャップ(9)の少なくとも一部を収容して保持できるように該収容部(33)を形成した作業車両。
【請求項2】
座席(13)のカップホルダ部(34)側の側方に前後揺動可能に操作レバー(24,26,27)を設け、正面視で操作レバー(24,26,27)の揺動範囲よりも左右外側に、カップホルダ部(34)を配置した請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
座席(13)の収容部(33)側の側方に前後揺動可能に操作レバー(28)を設け、正面視で操作レバー(28)の揺動範囲よりも左右外側に、収容部(33)を配置した請求項1又は2の何れかに記載の作業車両。
【請求項4】
収容部(33)を仕切(61)によって複数の収容スペース(33a,33b)に仕切り、複数の収容スペース(33a,33b)の1つに、キャップ(9)の少なくとも一部を収容して保持させる請求項1乃至3の何れかに記載の作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−153178(P2012−153178A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11583(P2011−11583)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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