説明

作業車両

【課題】簡単な構成でPTO伝動経路から走行伝動経路への逆駆動を防止する作業車両を提供する。
【解決手段】エンジン201からの変速装置6においてPTO伝動経路Aと、走行伝動経路Bとに分岐すると共に、変速装置6は、走行伝動経路Bにエンジン201からの出力を無段階に変速する油圧式無段変速装置200を有している。油圧式無段変速装置200は、油圧ポンプのポート間を連通させるバイパス油路と、このバイパス油路を連通又は遮断するバイパスバルブ101とを有している。そして、バイパスバルブ101は、主クラッチ202が解放状態の場合にバイパス油路を連通させ、主クラッチ202が係合状態の場合にバイパス油路を遮断するように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機などを取り付けた状態で農作業に用いられる作業車両に係り、該作業車両の作業時における作業機側から車輪への逆駆動力の伝達を防止する防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、農作業に用いられるトラクタにおいては、エンジンからの動力を、HSTの作動により、走行するための駆動車軸に動力を伝達する走行伝動経路と、作業機を駆動するPTO軸に動力を伝達するPTO伝動経路とに分岐するようになっている。
【0003】
ここで、ロータリ耕耘装置などの作業機を、前記PTO軸に装着したトラクタにおいては、作業を停止する際に、作業機のロータリ(回転刃)が土等に食い込んで抜けなくなってしまうのを防ぐために、ロータリを停止する(即ちエンジンを停止する)前に、作業機を上昇させる必要がある。
【0004】
このとき、作業機のロータリには、土などから受けていた負荷が無くなり、ロータリの重量による慣性力が生じる。また、例えば主クラッチを切断する等により、エンジンとロータリとの間の動力伝達を切り離した場合、例えばPTO軸の変速機を変速してロータリの回転数を減少させる場合にあっても、ロータリにおいて慣性力が生じる。
【0005】
前記のように、ロータリにおいて慣性力が生じると、前記走行伝動経路とPTO伝動経路とに動力を分岐するためのトランスミッションを介して、前記ロータリの慣性力が駆動車軸に伝達され、トラクタが瞬間的に加速される、いわゆるダッシングが発生する。
【0006】
このような、ダッシングの発生を防止するため、特許文献1においては(符号は特許文献1の符号で示す)、トランスミッション(ケース3)の動力の分岐点(軸14)よりも下流側におけるPTO伝動経路中に一方向クラッチ17を配設している。
【0007】
これにより、エンジン1からの動力はPTO軸5へ伝達可能にするものでありながら、ロータリからの慣性力による回転を空転させて該慣性力に基づく逆駆動力を遮断可能に構成し、従って該一方向クラッチ17により、前記逆駆動力がトランスミッション(ケース3)を介して駆動車軸14に伝達してしまうことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭56−8954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1においては、トランスミッション(ケース3)の動力の分岐点(軸14)よりも下流側におけるPTO伝動経路中に一方向クラッチ17を配設して、ロータリからの慣性力による回転を空転させて、該慣性力の逆駆動力を遮断可能に構成しているが、前記一方向クラッチ17は高価であることから、トランスミッションの価格上昇を招く。
【0010】
また、前記一方向クラッチ17は、駆動側と被駆動側との結合に高精度を要するため組立て分解に多くの工数を要し、分解組立工数の上昇及び分解組立価格の上昇を招く。
【0011】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みてなされたもので、安価な構成により作業機側から車輪側への逆駆動力の伝達を遮断可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、エンジン(201)と、該エンジン(201)からの動力を、駆動車軸(17)に伝達する走行伝動経路(B)と作業機を駆動するPTO軸(30)に伝達するPTO伝動経路(A)とに分岐して伝達する変速装置(6)と、前記エンジン(201)と前記変速装置(6)との間の伝動経路上に配置され前記エンジン(201)から前記変速装置(6)への動力伝達を断接する主クラッチ(202)と、を備え、前記変速装置(6)の走行伝動経路(B)には、前記エンジン(201)からの動力によって駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプ(205)と、該油圧ポンプ(205)から吐出される作動油によって駆動する油圧モータ(206)と、を有し、前記エンジン(201)からの動力を無段階に変速する油圧式無段変速装置(200)を備える作業車両において、
前記油圧式無段変速装置(200)は、前進駆動時に作動油が吐出される前記油圧ポンプ(205)の第1ポート(104)と、後進駆動時に作動油が吐出される前記油圧ポンプ(205)の第2ポート(105)と、これら第1及び第2ポートを連通させるバイパス油路(115)と、該バイパス油路(115)を連通又は遮断するバイパスバルブ(101)と、を有し、
前記バイパスバルブ(101)は、前記主クラッチ(202)が解放状態の場合に前記バイパス油路(115)を連通させ、前記主クラッチ(202)が係合状態の場合に前記バイパス油路(115)を遮断する、ことを特徴とする。
【0013】
ここで、前記バイパスバルブ(101)は、ソレノイド(101a)で作動する2ポート2位置切換弁が好適である。さらに前記ソレノイド(101a)の作動を前記主クラッチ(202)に連動して開閉するクラッチセーフティスイッチ(102)を設け、該クラッチセーフティスイッチ(102)は、前記主クラッチ(202)が解放状態のときオンとなり、該ソレノイド(101a)を介してバイパスバルブ(101)を開とするように作動させると好適である。
【0014】
尚、前記括弧内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何ら影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、油圧式無断変速装置の前進駆動時に作動油が吐出される油圧ポンプの第1ポートと、後進駆動時に作動油が吐出される油圧ポンプの第2ポートとを連通させるバイパス油路を設けるとともに、このバイパス油路を連通又は遮断するバイパスバルブを設け、主クラッチが開放状態の場合は上記バイパス油路が連通するようにバイパスバルブを制御することによって、主クラッチが開放された際には油圧式無断変速装置の油圧ポンプの油圧差を無くして、駆動車軸への動力を遮断することができる。そのため、ロータリ耕耘装置の慣性力による回転などによるPTO伝動経路からの走行伝動経路への逆駆動力を防止することができ、機体のダッシングなどを防止することができる。また、高価なワンウェイクラッチなどの部品を使用せずとも、上記バイパス油路及びバイパスバルブによって、安価にPTO伝動経路からの走行伝動経路への逆駆動力の入力を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における油圧式無断変速装置を備えたトラクタの逆駆動力の防止装置の構成図である。
【図2】前記実施形態における油圧式無断変速装置の油圧回路図である。
【図3】(A)は前記実施形態におけるトランスミッションの一部縦断面図、(B)は(A)におけるターンバックル継手の拡大図である。
【図4】本発明が適用される油圧式無断変速装置を備えたトラクタの側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図に示した実施の形態を用いて詳細に説明する。図4は本発明が適用される油圧式無断変速装置(以下HSTという)を備えた作業車両としてのトラクタの側面図である。
【0018】
図4において、HST200を備えたトラクタ1は、前輪2と、後輪3と、該前輪2及び後輪3により支持された走行機体4とで構成されている。該走行機体4は、前部のボンネット5の内部に収納されたエンジン201(図1参照)と、該エンジン201の下方から後方に延びて配置されるミッションケース(固定部材)7と、駆動車軸17と、該エンジン201の後方側に配設された運転部8と、該運転部8の後方側に配設された安全フレーム16等、により構成されている。
【0019】
前記運転部8には、走行操作機器であるステアリングホイール11、座席シート12、駆動方式(4WD/2WD)切換レバー13、副変速レバー14、PTO切換レバー15などが配置されている。
【0020】
一方、走行機体4の後部には、例えばロータリ耕耘装置などの作業機(図示せず)を装着するための昇降リンク機構20と、該作業機に動力を伝達するためのPTO軸(動力取出し軸)30が備えられている。
【0021】
前記昇降リンク機構20は、1個のアッパーリンク21と左右一対のロアリンク22とを備える三点式のもので、ロータリ耕耘装置以外にも種々の作業機を選択して装着可能である。前記昇降リンク機構20のロアリンク22は、リフトロッド24を介してリフトアーム23に吊り下げ支持されている。
【0022】
該リフトアーム23は、その根元側に配置された油圧式のリフトシリンダ(図示せず)の伸長・収縮動作によって上下に回動される。従って、リフトシリンダを油圧駆動することで作業機を上昇・下降動作させることが可能である。
【0023】
本発明は、以上のような(図4に示す)構成を示すHST(油圧式無段変速装置)200を備えたトラクタ1の逆駆動防止装置に係るものである。
【0024】
図3(A)は、変速装置即ち変速装置6の一部縦断面図であり、図3(A)において、変速装置6は、ミッションケース7の内部に、エンジン201(図1参照)からの動力を、走行するために駆動車軸17(図4参照)に動力を伝達する走行伝動経路Bと、作業機を駆動するためのPTO軸30に動力を伝達するPTO伝動経路Aとに分岐する装置を備えている。
【0025】
前記変速装置6には、エンジン201から出力された動力を、エンジン201と変速装置6との間の伝動経路上に配置されエンジン201から変速装置6への動力伝達を断接する主クラッチ202などを介して伝達する入力軸34と、エンジン201からの動力を無段階に変速する前記HST200と、副変速装置42と、詳細を後述するターンバックル継手100と、PTO切換装置43とが備えられている。
【0026】
前記変速装置6は、上述のように、入力軸34からの回転をPTO伝動経路Aと走行伝動経路Bとに分岐させている。より詳しくは、入力軸34に連結されるHST200の入力軸がHST200内を貫通してPTO出力軸35となってPTO伝動経路Aに出力するようになっている。また、HST200を走行伝動経路Bに配置し、このHST200によってエンジン201からの動力を変速し、変速後の回転を走行出力ギヤ36aにより該走行伝動経路Bに出力するように構成されている。
【0027】
前記副変速装置42は、前記走行出力ギヤ36aより回転が伝達される走行伝動軸33と、該走行伝動軸33と平行に配置された走行出力軸32とを備えている。
【0028】
該走行伝動軸33には、歯数の異なるギヤが一体に固定され、該走行出力軸32には該ギヤと常時噛合うギヤが回転自在に、また該ギヤとそれぞれ選択的に係合・離脱可能な歯数の異なるギヤが一体的に形成され、走行出力軸32の軸方向に移動自在に、それぞれ配置されている。
【0029】
該走行出力軸32は、ディファレンシャルギヤ(図示せず)などを介して駆動車軸17に接続されており、これにより、上記走行出力ギヤ36aから駆動車軸17までの伝達経路が、走行伝動経路Bを構成することとなる。
【0030】
前記PTO切換装置43は、PTO出力軸35に、後述するターンバックル継手100を介して接続されたPTO伝動軸31と、該PTO伝動軸31と平行に配置されたPTO軸30とを備えている。
【0031】
該PTO伝動軸31には、PTO切換装置43を構成するギヤと選択的に係合・離脱可能なギヤが該PTO伝動軸31の軸方向に移動自在に、また該ギヤとは歯数の異なるギヤが一体に、それぞれ配置されている。
【0032】
該PTO軸30には、前記PTO切換装置43を構成するギヤとギヤとがそれぞれ回転自在に配置され、該ギヤと該ギヤとの間には、該ギヤに対して選択的に係合・離脱可能なシフト部材が、該PTO軸30の軸方向に移動自在に配置されている。これらにより、PTO出力軸35からPTO軸30までの伝達経路が、PTO伝動経路Aを構成こととなる。
【0033】
前記ターンバックル継手100は、図3(B)に示すように、エンジン201(図1参照)に接続されるPTO出力軸35の出力側と、前記PTO軸30に接続されるPTO伝動軸31の入力側との間に、配設されている。
【0034】
該ターンバックル継手100は、前記PTO出力軸35端部に左ねじを切った左ねじ部35aと、前記PTO伝動軸31端部に右ねじを切った右ねじ部31aとを、ナット101sにて連結している。該ナット101sの外周面はスパナが噛み合う六角形状に形成されている。101t、101tは、前記ナット101sの固定用のロックナットである。
【0035】
従って、前記ナット101sを、例えば右回転すれば、左ねじ部35aのPTO出力軸35と右ねじ部31aのPTO伝動軸31とが、図3(B)のY矢印のように、互いに寄せ合うようになり、反対に前記ナット101sを左回転すれば、左ねじ部35aのPTO出力軸35と右ねじ部31aのPTO伝動軸31が、図3(B)のY矢印の反対方向に、互いに離反する。
【0036】
このように、該ターンバックル継手100により、PTO出力軸35とPTO伝動軸31の軸方向位置を調整できる。
【0037】
図3の変速装置(トランスミッション)6において、エンジン201からの回転は、主クラッチ202及び入力軸34を介してHST200に入力される。該HST200に入力された回転は、ここでPTO伝動経路Aと走行伝動経路Bとに分岐され、該PTO伝動経路A側に分岐された回転は、PTO出力軸35から出力される。
【0038】
走行伝動経路Bの回転は、前記HST200、副変速装置42、走行伝動軸33から該走行伝動軸33と平行に配置された走行出力軸32に伝達される。
【0039】
PTO伝動経路Aにおいては、PTO出力軸35から出力された回転は、ターンバックル継手100を介してPTO伝動軸31に伝達され、PTO切換装置43に伝達され、さらにPTO軸30に伝達される。
【0040】
次に、図1は本発明の実施形態における油圧式無断変速装置を備えたトラクタの逆駆動力の防止装置の構成図、図2は前記実施形態における油圧式無断変速装置の油圧回路図である。
【0041】
図1及び図2において、200はHSTであり、エンジン201からの動力は、主クラッチ202及び入力軸34を介してHST200に伝達される。
【0042】
前記HST200の構成を示す図2において、HST200は、エンジン201に駆動され斜板205aを有する油圧ポンプ205と、該油圧ポンプ205からの作動油により駆動される油圧モータ206とを備えて、前記油圧ポンプ205は、前進駆動時に作動油が図2のZ1方向に吐出される前記油圧ポンプ205の前進用の第1ポート104と後進駆動時に作動油が図2のZ2方向に吐出される後進用の第2ポート105とを備えている。34は油圧ポンプ205の入力軸、35はPTO出力軸、36はHST200の出力軸である。
【0043】
そして、HST200は、前進駆動時には第1ポート104から作動油を油圧モータ206に吐出して該油圧モータ206を前進駆動し、後進駆動時には第2ポート105から作動油を油圧モータ206に吐出して該油圧モータ206を後進駆動している。
【0044】
また、HST200には、2つの高圧リリーフバルブ107、108、低圧リリーフバルブ103が設けられ、高圧リリーフバルブ107、108で第1ポート104に繋がる作動油路の上限圧力調整をし、低圧リリーフバルブ103で下限圧力調整をしている。図2のかかる構成は、従来のHST200と同様である。
【0045】
本発明は、前記HST200に、前記油圧ポンプ205の第1ポート104と、前記油圧ポンプ205の第2ポート105との間を連通させるバイパス油路115を設けている。さらに前記バイパス油路115には、これを連通あるいは遮断するバイパスバルブ101を設けている。該バイパスバルブ101は、ソレノイド101aを有する好ましくは2ポート2位置切換弁からなる。
【0046】
そして、前記バイパスバルブ101はそのソレノイド101aが、図2のように、前記主クラッチ202に電気的に接続して開閉するクラッチセーフティスイッチ102に、電気回路204aにより接続されている。
【0047】
そして、前記バイパスバルブ101のソレノイド101aは、前記クラッチセーフティスイッチ102を介して主クラッチ202に通信路202aにより電気的に接続され、前記主クラッチ202が解放状態の場合は、前記クラッチセーフティスイッチ102を介して前記バイパス油路115を連通させ、前記主クラッチ202が係合状態の場合は前記クラッチセーフティスイッチ102を介して前記バイパス油路115を遮断するように作動する。
【0048】
そして、図1,2において、前記主クラッチ202が解放となったとき、この解放信号によりクラッチセーフティスイッチ102が接してオンとなり、バッテリー204からバイパスバルブ101のソレノイド101aに繋がる電気回路204aを通してソレノイド101aの開作動により、バイパスバルブ101が開となってバイパス油路115が開放され、該バイパス油路115により、前記油圧ポンプ205の第1ポート104と前記油圧ポンプ205の第2ポート105との間が連通される。
【0049】
また、前記主クラッチ202が係合されている場合は、この係合信号によりクラッチセーフティスイッチ102がオフとなり、バッテリー204からバイパスバルブ101のソレノイド101aに繋がる電気回路204aを通してソレノイド101aが閉作動となり、バイパスバルブ101が閉となってバイパス油路115が閉鎖され、該バイパス油路115により、前記油圧ポンプ205の第1ポート104と前記油圧ポンプ205の第2ポート105との間が遮断される。
【0050】
次に、かかるHSTを備えたトラクタの逆駆動力の防止装置の作動を説明する。通常運転時には、HST200は、主クラッチ202の係合に連動して開閉するクラッチセーフティスイッチ102のオン信号により、ソレノイド101aが閉作動となってバイパスバルブ101がオフとなり、バイパス油路115が閉鎖され、油圧ポンプ205の第1ポート104と前記油圧ポンプ205の第2ポート105との間が遮断される。これにより、HST200は通常の油圧作動となる。
【0051】
次に、作業機のロータリに土などから受けていた負荷が無くなり、ロータリの重量による慣性力が生じると、前記走行伝動経路BとPTO伝動経路Aとに動力を分岐するための変速装置6を介して、前記ロータリの慣性力による回転上昇が駆動車軸17に伝達されようとする。
【0052】
このようなPTO伝動経路Aから走行伝動経路Bへの逆駆動は、車両や作業停止時に発生するため、主クラッチ202は解放(オフ)されている。そのため、かかるロータリの重量による慣性力の発生による回転上昇時には、主クラッチ202の解放信号によりクラッチセーフティスイッチ102が接してオンとなり、バッテリー204からバイパスバルブ101のソレノイド101aに繋がる電気回路204aを通して、ソレノイド101aが開作動となる。
【0053】
かかるソレノイド101aの開作動により、バイパスバルブ101が開となって連通し、かかるバイパスバルブ101によりバイパス油路115が開放され、油圧ポンプ205の第1ポート104と前記油圧ポンプ205の第2ポート105との間が連通される。
【0054】
従って、前記主クラッチ202が開放状態のときには、前記バイパスバルブ101によるバイパス油路115の連通によって、前記第1ポート104側と第2ポート105側とが連通されて、HST200の油圧差を無くす(ゼロとする)ことができる。
【0055】
これにより、エンジン201から主クラッチ202を経た動力伝達経路の、駆動車軸17側には、前記HST200内の油圧差がゼロとなっているため、主クラッチ202のオフ時におけるロータリ側からの慣性力による回転は、前記バイパス油路の連通によって前記第1ポート側と第2ポート側とが連通され前記油圧差をゼロにしているので遮断され、該慣性力による駆動車軸17側への逆駆動力を防止できる。かかる作動は、従来の一方向クラッチと同様であり、従って従来の一方向クラッチは不要となる。
【0056】
従って、前記バイパス油路115とバイパスバルブ101とを設けるという、構造が簡単且つ低コストの装置で、また分解組立工数も低減された装置により、従来の一方向クラッチと同様な機能を備えることができ、前記逆駆動力がHST200の駆動車軸側に伝達してしまうのを防止することができる。
【0057】
一方、前記バイパスバルブ101が開となって連通し、該バイパスバルブ101によりバイパス油路115が開放し、前記第1ポート104側と第2ポート105側とが、該バイパス油路115により連通する構成を備えることにより、従来の一方向クラッチに代えて、図3に示すように、PTO出力軸35の入力側と前記PTO軸30に接続されるPTO伝動軸31の出力側との間には、ターンバックル継手100を設けることが可能となる。
【0058】
従って、従来の一方向クラッチに代えて、該ターンバックル継手100を設けることにより、ターンバックル継手100は、一方向クラッチに比べて構造が簡単且つ低コストの装置であり、また分解、組立も簡単で分解組立工数を低減できる。
【0059】
また、PTO伝動軸31側とPTO出力軸35側との連結部は、前記のように、ターンバックル継手100で連結されているので、PTO伝動軸31側とPTO出力軸35側との間は、ターンバックル継手100の介在により、PTO伝動軸31側とPTO出力軸35側との軸の長手方向の調整が簡単となる。
【0060】
なお、本実施形態では、バイパスバルブ101を、バッテリー204からのソレノイド101aに繋がる電気回路204aを介して、主クラッチ202と連動させて制御しているが、当然に主クラッチ202の入切を制御部によって検知し、この制御部からの制御信号によってバイパスバルブ101のオン・オフを制御しても良い。
【0061】
また、本発明は、トラクタ以外にも、コンバイン、建設機械などの作業車両に適用してももちろん良い。
【符号の説明】
【0062】
1 トラクタ
6 変速装置
17 駆動車軸
30 PTO軸
31 PTO伝動軸
34 入力軸
35 PTO出力軸
36 走行出力ギヤ
100 ターンバックル継手
101 バイパスバルブ
101a ソレノイド
102 クラッチセーフティスイッチ
104 第1ポート
105 第2ポート
115 バイパス油路
200 HST
201 エンジン
202 主クラッチ
205 油圧ポンプ
206 油圧モータ
A PTO伝動経路
B 走行伝動経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンからの動力を、駆動車軸に伝達する走行伝動経路と作業機を駆動するPTO軸に伝達するPTO伝動経路とに分岐して伝達する変速装置と、前記エンジンと前記変速装置との間の伝動経路上に配置され前記エンジンから前記変速装置への動力伝達を断接する主クラッチと、を備え、前記変速装置の走行伝動経路には、前記エンジンからの動力によって駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプと、該油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動する油圧モータと、を有し、前記エンジンからの動力を無段階に変速する油圧式無段変速装置を備える作業車両において、
前記油圧式無段変速装置は、前進駆動時に作動油が吐出される前記油圧ポンプの第1ポートと、後進駆動時に作動油が吐出される前記油圧ポンプの第2ポートと、これら第1及び第2ポートを連通させるバイパス油路と、該バイパス油路を連通又は遮断するバイパスバルブと、を有し、
前記バイパスバルブは、前記主クラッチが解放状態の場合に前記バイパス油路を連通させ、前記主クラッチが係合状態の場合に前記バイパス油路を遮断する、
ことを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−197889(P2012−197889A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63010(P2011−63010)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】