説明

作業車輌の原動部構造

【課題】ラジエータカバーの濾過体から除去された藁屑、塵埃等がエンジンカバーの濾過体に再付着しない作業車輌の原動部構造を提供する。
【解決手段】エンジン(11)の吸気経路に接続したインタークーラ(12)よりも機体内側に配置したインタークーラ用ファン(14)と、ラジエータ(21)よりも機体内側に配置したラジエータファン(26)と、ラジエータ(21)と濾過体(24)との間に配置した排塵ファン(51)とを備え、ラジエータファン(26)の回転停止に伴い、排塵ファン(51)を逆転させると共にインタークーラ用ファン(14)を逆転させる作業車輌の原動部構造により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インタークーラおよびラジエータの外側に設置された濾過体に付着する藁屑、塵埃を除去し、エンジンのオーバヒートを防止する作業車輌の原動部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイン等の作業車輌には水冷式エンジンが使用されている。エンジンの出力を高めるため、エンジンに吸気される混合気を冷却することで燃焼ガスの膨張率を高めるインタークーラが配置され、エンジンにより温度上昇した冷却水は、ラジエータを循環することにより冷却された後、再びエンジンを循環する。
【0003】
そして、インタークーラの熱交換効率を高めるためエンジンカバーに設けられた濾過体の外側から内側に外気を吸入してインタークーラを冷却し、冷却水の冷却効率を高めるためラジエータカバーに設けられた濾過体の外側から内側に外気を吸入しラジエータを冷却している。
【0004】
しかし、作業時に発生する藁屑、塵埃等が、エンジンカバーおよびラジエータカバーの濾過体に付着し、濾過体が目詰まった場合、濾過体の外側から内側に十分な外気を吸入することができなくなり、インタークーラの熱交換効率の低下および冷却水の冷却効果が低下しエンジンがオーバヒートする恐れがある。
【0005】
上記問題を解決するため、特許文献1には、濾過体の内側に隣接する排塵ファンと、排塵ファンとラジエータとの間に開閉自在なシャッタを設け、ラジエータカバーの濾過体に付着した藁屑、塵埃等を除去する場合、濾過体の外側から内側への外気の吸入を遮断するためシャッタを閉鎖し、排塵ファンを逆転させ濾過体の内側から外側に送風を行う手段が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9―125960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ラジエータカバーの濾過体から除去された藁屑、塵埃等がエンジンカバーの濾過体に再付着し、エンジンカバーの濾過体の目詰まり発生し、インタークーラの熱交換効率が低下する恐れがある。
【0008】
また、シャッタ閉鎖時には、外気が吸入されずラジエータの温度が上昇し、冷却水の冷却効率が低下し、エンジンがオーバヒートする恐れがあることから、シャッタ開閉手段によることなくラジエータカバーの濾過体の藁屑、塵埃等の除去時に、濾過体の外側から内側への外気の吸入を遮断する新たな手段が望まれている。
【0009】
そこで、本発明の主たる目的は、ラジエータカバーの濾過体から除去された藁屑、塵埃等がエンジンカバーの濾過体に再付着しない手段を提供することにあり、次なる目的は、ラジエータカバーの濾過体の藁屑、塵埃等を除去時に、濾過体の外側から内側への外気の吸入を遮断する新たな手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
請求項1に係る発明は、エンジン(11)の吸気経路に接続したインタークーラ(12)と、前記エンジン(11)の冷却水を冷却するラジエータ(21)と、前記インタークーラ(12)よりも機体内側に配置した正逆転切換可能な外気吸入用のインタークーラ用ファン(14)と、前記ラジエータ(21)よりも機体内側に配置した正転状態と回転停止状態とに切換可能な外気吸入用のラジエータファン(26)と、前記インタークーラ(12)およびラジエータ(21)の外側に配置した外気濾過用の濾過体(16,24)と、前記ラジエータ(21)と濾過体(24)との間に配置して濾過体(24)の内側から外側に向けて送風する排塵ファン(51)とを備え、
前記ラジエータファン(26)の回転停止に伴い、排塵ファン(51)を逆転させると共にインタークーラ用ファン(14)を逆転させる構成としたことを特徴とする作業車輌の原動部構造
である。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記ラジエータファン(26)は、エンジン(11)のクランク軸(31A)から複数のプーリ(31,32,33)と複数のベルト(35,36)を介し回転駆動される回転軸(26A)に軸支され、
ラジエータファン(26)は、回転軸(41)に軸支されたテンションローラ(37)を有するアーム(42)の回動操作により、ラジエータファン(26)の回転軸(26A)に設けられたプーリ(32)に掛けられたベルト(36)の張力を変動させることで、正転状態と回転停止状態との切換が行なわれる構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車輌の原動部構造である。
請求項3に係る発明は、前記アーム(42)は、テンションローラ(37)とブレーキ板(47)を有し、
前記ラジエータファン(26)の正転状態から回転停止状態への切換時に、ブレーキ板(47)が前記ベルト(36)をプーリ(32)に押圧することで該プーリ(32)の回転を停止させ、
前記ラジエータファン(26)の回転停止状態から正転状態への切換時には、ブレーキ板(47)が前記ベルト(36)から離間する構成としたことを特徴とする請求項2記載の作業車輌の原動部構造である。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記排塵ファン(51)は、濾過体(24)を備えた開閉可能なラジエータカバー(22)に支持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記排塵ファン(51)は、前記ラジエータファン(26)が正転状態にある時に正転する構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記オイルクーラ(57,58)の外周を囲むファンガイド(55)の天面(55A)が外側の部位ほど上方に位置するように傾斜し、前記オイルクーラ(57,58)が上下一列に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、ラジエータファン(26)の回転停止に伴い、排塵ファン(51)を逆転させると共にインタークーラ用ファン(14)を逆転させる構成としたことから、ラジエータ(21)の外側に配置した濾過体(24)から除去された藁屑、塵埃等がインタークーラ(12)の外側に配置した濾過体(16)に再付着することがなく、エンジン(11)の吸気経路に接続したインタークーラ(12)の熱交換効率が高くなり、エンジンの出力を高めることができると共に、エンジンがオーバーヒートしにくくなり、作業車輌による作業能率を高めることができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、ラジエータファン(26)は、テンションローラ(37)を有するアーム(42)の回動操作により、ラジエータファン(26)の回転軸(26A)に設けられたプーリ(32)に掛けられたベルト(36)の張力を変動ることで、正転状態と回転停止状態との切換が行なわれる構成としたことから、ラジエータファン(26)を正転状態から回転停止状態または回転停止状態から正転状態に衝撃の発生を抑えながら短時間で切換ることができ、特に、排塵ファン(51)によるラジエータカバー(22)の濾過体(24)に付着した藁屑、塵埃等を効率的に除去することができる。
【0017】
すなわち、ラジエータカバー(22)の濾過体(24)に付着した藁屑、塵埃等を除去する場合、ラジエータファン(26)が短時間でスムーズに回転停止状態になるため、濾過体(24)の外側から内側への外気の吸入が短時間で遮断され、排塵ファン(51)の濾過体(24)の内側から外側に向かう送風を阻害せず、排塵ファン(51)によるラジエータカバー(22)の濾過体(24)に付着した藁屑、塵埃等を効率的に除去することができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、ラジエータファン(26)の正転状態から回転停止状態への切換時に、ブレーキ板(47)がベルト(36)をプーリ(32)に押圧することでプーリ(32)の回転を停止させることから、慣性によるラジエータファン(26)の正転状態を瞬時に停止させ、正転状態から回転停止状態への切換をより短時間で行なうことができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、排塵ファン(51)は、濾過体(24)を備えた開閉可能なラジエータカバー(22)に支持されていることから、ラジエータカバー(22)を開放しラジエータ(21)のメンテナンスが容易に行なうことができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、排塵ファン(51)は、ラジエータファン(26)が正転状態にある時に共に正転する構成としたことから、外気の吸入効率をより一層高くすることができ、エンジンがオーバーヒートしにくくなり、作業車輌の作業能率を高めることができる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、オイルクーラ(57,58)の外周を囲むファンガイド(55)の天面(55A)が外側の部位ほど上方に位置するように傾斜し、オイルクーラ(57,58)が上下一列に配置されていることから、オイルクーラ(57,58)の冷却効率が高く、ラジエータファン(26)による外気の吸入効率も高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態のコンバインの右面図である。
【図2】第1実施形態のコンバインの左面図である。
【図3】第1実施形態のコンバインの平面図である。
【図4】第1実施形態のコンバインの背面図である。
【図5】第1実施形態のラジエータ等の要部拡大正面図である。
【図6】第1実施形態のラジエータ等の要部拡大平面図である。
【図7】第1実施形態のラジエータファンの動作説明図である。
【図8】第1実施形態のラジエータ等の要部拡大断面図である。
【図9】第1実施形態のラジエータカバーの拡大図である。
【図10】第1実施形態の変形例の要部拡大平面図である。
【図11】第1実施形態の変形例の要部拡大平面図である。
【図12】第1実施形態の変形例の要部拡大平面図である。
【図13】第2実施形態のラジエータ等の要部拡大断面図である。
【図14】第2実施形態のラジエータファンと排塵ファンの動力伝達図である。
【図15】第2実施形態のラジエータファンの動作説明図である。
【図16】第2実施形態の排塵ファンの動作説明図である。
【図17】第2実施形態のコンプレッサの動作説明図である。
【図18】本実施形態のコンバインの動力図である。
【図19】本実施形態のベルト伝達構造の説明図である。
【図20】本実施形態のベルト伝達構造の要部拡大説明図である。
【図21】本実施形態のプーリ等の位置関係を示す平面図である。
【図22】従来技術のオイルクーラの位置関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の作業車輌の原動部構造の第1実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態は、作業車輌としてコンバインを例示してあるがコンバインに限定されるものではなく、トラクター、田植機等にも適用できるものである。
【0024】
以下の説明において、コンバイン1の機体内側を「内側」、機体外側を「外側」といい、操作席9に着座する操作者から見て右手側を「右側」、左手側を「左側」、上方側を「上方」、下方側を「下方」、コンバインの進行方向を「前側」と、後退方向を「後側」という。
また、「正転」とは機体外側から機体内側に向かい外気を吸入するファンの回転方向をいい、「逆転」とは機体内側から機体外側に向かい内気を送風するファンの回転方向をいい、「停止」とはファンが正転および逆転回転していないファンの状態をいうものとする。
【0025】
すなわち、後述するインタークーラ用ファン14における「正転」とは、図6,10のS1で示すとおり、エンジンカバー15の濾過体16の機体外側からインタークーラ12に向かって外気を吸入し送風するインタークーラ用ファン14の回転方向をいい、「逆転」とは、図6,10にS2で示すとおり、エンジンカバー15の濾過体16の機体内側から機体外側に向かい内気を送風するインタークーラ用ファン14の回転方向をいう。また、インタークーラ用ファン14は、コントローラ(図示省略)により正転、逆転および停止状態の切換が行なわれる。
【0026】
ラジエータファン26における「正転」とは、図6,10のS3で示すとおり、ラジエータカバー22の濾過体24の機体外側からラジエータ21に向かって外気を吸入し送風するラジエータファン26の回転方向をいい、「逆転」とは、図6,10にS4で示すとおり、ラジエータカバー22の濾過体24の機体内側から機体外側に向かい内気を送風するラジエータファン26の回転方向をいう。また、ラジエータファン26は、コントローラ(図示省略)により正転、逆転および停止状態の切換が行なわれる。
【0027】
排塵ファン27,51における「逆転」とは、図6,10にS4で示すとおり、ラジエータカバー22の濾過体24の機体内側から機体外側に向かい内気を送風する排塵ファン51の回転方向をいう。また、排塵ファン51は、コントローラ(図示省略)により逆転および停止状態の切換が行なわれる。
【0028】
図1〜図4には、本発明の原動部構造を有するコンバイン1が示されている。コンバイン1の車台2の下方には土壌面を走行するための左右一対のクローラからなる走行装置3が設けられ、車台2の上方左側には脱穀および選別をする為の脱穀装置4が設けられ、脱穀装置4の前側には穀桿引起部6が設けられ、穀桿引起部6の前側にはリール5が設けられている。
【0029】
リール5で刈り取られた刈稈は穀桿引起部6で引起され脱穀装置4に送られる。脱穀装置4で脱穀および選別された穀粒は脱穀装置4の後側に設けられたグレンタンク7に貯留され、貯留された穀粒は穀粒排出筒8により外部が搬送される。
【0030】
車台2の上方右側には操作者が搭乗する操作席9が設けられ、操作席9の下方後側にはエンジンルーム10が設けられている。
【0031】
図5〜図8に示すように、エンジンルーム10の後側にはコンバイン1の駆動源であるエンジン11設けられ、エンジン11の前側にはラジエータ21が設けられている。エンジン11の右側にはインタークーラ12が設けられ、エンジン11の吸気経路であるマニホールド13により接続されている。
【0032】
エンジン11とインタークーラ12との間には、インタークーラ用ファン14が設けられている。エンジン11の駆動時にあっては、インタークーラ11およびエンジン11を冷却するため、インタークーラ用ファン14は正転し、インタークーラ11の右側に設けられたエンジンカバー15の濾過体16を介し、コンバイン1の外側から内側に外気を吸入する。一方、後述する排塵ファン51の逆転時には、エンジンカバー15の濾過体16に付着した藁屑、塵埃等を除去するため、インタークーラ用ファン14は逆転し、コンバイン1の内側から外側に内気を送風する。
なお、インタークーラ用ファン14は、インタークーラ用モータ14Aとインタークーラ用羽根14Bとにより構成され、インタークーラ用モータ14Aはモータ支持枠(図示省略)により支持され、エンジンカバー15の内側に取付けられている。
【0033】
ラジエータ21の左側には、ラジエータ21に隣接するラジエータファン26が設けられている。ラジエータファン26は回転軸26Aの片端部に軸支され回転軸26Aと一体に正転する。回転軸26Aはエンジン11のクランク軸31Aにプーリ31,32,33とベルト35,36とを介し接続されており、回転軸26Aにはクランク軸31Aの回転が伝動される。
【0034】
すなわち、エンジン11のクランク軸31Aの回転をラジエータファン26に伝動するため、エンジン11のクランク軸31Aに軸支されクランク軸31Aと一体となって回転するプーリ31と、プーリ31に対向する位置に設けられた中間軸(図示省略)に軸支され中間軸を中心に回転するプーリ33と、プーリ31に対向する位置に設けられた回転軸26Aに軸支され回転軸26Aと一体となって回転するプーリ32には、それぞれベルト35,36がベルト掛けされている。
【0035】
ラジエータファン26を正転する場合、回転軸41に軸支され回転軸41を中心に回転するアーム42を時計方向に回転させ、アーム42の先端部に設けられたテンションローラ37をプーリ33とプーリ32にベルト掛けされたベルト36に押圧しベルト36のテンションを強める。なお、この際、アーム42の後端部に設けられているブレーキ板47は、プーリ32上のベルト36とは離間している。
【0036】
一方、ラジエータファン26を停止する場合、アーム42を反時計方向に回転させベルト36のテンションを弱め、ラジエータファン26の慣性による正転を強制的に停止するためブレーキ板47は、プーリ32上のベルト36に押圧されている。
【0037】
アーム42は、伝動モータ45で回動される円板46により直動されるコイルスプリング43、連結板44により時計方向または反時計方向に回転される。
【0038】
エンジン11の駆動時にあっては、ラジエータ21を冷却するため、ラジエータファン26は正転し、ラジエータ21の右側に設けられたラジエータカバー22の濾過体24を介し、コンバイン1の外側から内側に外気を吸入する。一方、後述する排塵ファン51の逆転時には、ラジエータファン26は停止する。
【0039】
ラジエータファン26の正転/停止状態の切換えをラジエータファン26が軸支された回転軸26Aのプーリ32と中間軸に軸支されたプーリ33とに軸架されているベルト36のテンションで行なうことから、ラジエータファン26の正転/停止状態の切換えを短時間で行なうことができる。
また、ラジエータファン26の停止時にあっては、アーム42のブレーキ板47がプーリ32上のベルト36に押圧するため、ラジエータファン26の慣性による正転を短時間にすることができる。
さらに、伝動モータ45によりアーム42の回転を制御しているため、周波数応答を高くすることができる。
【0040】
ラジエータ21とラジエータカバー22との間には、排塵ファン51が設けられている。排塵ファン51は、排塵モータ51Aと排塵羽根51Bとにより構成され、排塵モータ51Aはモータ支持枠52により支持され、ラジエータカバー22の内側に取付けられている。
【0041】
エンジン11の温度が上昇した場合、すなわち、ラジエータカバー22の濾過体24に多くの藁屑、塵埃等が付着し、ラジエータファン26による外気の吸入効率が低下下場合にあっては、ラジエータカバー22の濾過体24に付着した藁屑、塵埃等を除去するため、排塵ファン51を逆転し、コンバイン1の内側から外側に内気を送風する。また、排塵ファン51の逆転時には、インタークーラ用ファン14を逆転させ、コンバイン1の内側から外側に内気を送風する。
なお、外気の吸入効率を高めため、ラジエータファン26の正転時に、排塵ファン51を正転させることもできる。
【0042】
ラジエータファン26の停止時に、インタークーラ用ファン14と排塵ファン51とが共に逆転するため、エンジンカバー15の濾過体16に付着した藁屑、塵埃等とラジエータカバー22の濾過体24に付着した藁屑、塵埃等とを共に除去できるため、エンジンカバー15の濾過体16の目詰まりが防止され、エンジン11のオーバヒートを防止することができる。
また、排塵ファン51が開閉自在なラジエータカバー22の内側に取付けられており、ラジエータカバー22を開放し容易にラジエータ21の保守・点検を行なうことができる。
【0043】
ラジエータ21と排塵ファン51との間には、油圧機器等を冷却するオイルクーラ57が設けることができ、ラジエータ21に取付けられたファンガイド55によりオイルクーラ57の全周は取り囲まれている。
【0044】
図9に示すように、ラジエータカバー22の濾過体24は、空隙が異なり排塵ファン51と対向する濾過体24Aの空隙は小さく、排塵ファン51の上方に設けられた濾過体24B,Cの空隙は大きく形成されている。
なお、ラジエータカバー22を開閉自在にするためラジエータカバー22の側面には上下一対の取付軸23が設けられている。
【0045】
排塵ファン51が逆転している場合にあっても、ラジエータカバー22の濾過体24B,Cを介し、外気を内部に吸入することができ、ラジエータ21の温度上昇を抑制することができる。
【0046】
図10に示すように、排塵ファン51の排塵羽根51Bを排塵モータ51Aの右側に配置することができる。排塵羽根51Bとラジエータカバー22の濾過体24との離間距離が狭まり、ラジエータカバー22の濾過体24に付着した藁屑、塵埃等の除去効果をより一層高めることができる。
【0047】
図11,12に示すように、ファンガイド55の天面55Aをラジエータ21からラジエータカバー22に向かい上方に傾斜させ、複数のオイルクーラ57,58を上下に一列に配置することができる。図22に示すように、複数のオイルクーラ57,58を並列に配置する場合に比較し、相互のオイルクーラ57,58の重なり部分がないことからオイルクーラ57,58の冷却効果が高まり、ラジエータファン26の正転時の外気の吸入効率をより一層高めることができる。
【0048】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0049】
図13〜図17に示すように、第1実施形態と異なり、第2実施形態はラジエータファン26の左側に排塵ファン27が配置され、排塵ファン27はエンジン11のクランク軸31Aの回転が伝動され逆転する。
【0050】
エンジン11のクランク軸31Aの回転をラジエータファン26に伝動するため、エンジン11のクランク軸31Aに軸支されクランク軸31Aと一体となって回転するプーリ31と、プーリ31に対向する位置に設けられた中間軸(図示省略)に軸支され中間軸を中心に回転するプーリ33Cと、プーリ33Cに対向する位置に設けられた回転軸26Aに軸支され回転軸26Aと一体となって回転するプーリ62には、それぞれベルト35,72がベルト掛けされている。
【0051】
エンジン11のクランク軸31Aの回転を排塵ファン27に伝動するため、エンジン11のクランク軸31Aに軸支されクランク軸31Aと一体となって回転するプーリ31と、プーリ31に対向する位置に設けられた中間軸(図示省略)に軸支され中間軸を中心に回転するプーリ33Bと、プーリ33Bに対向する位置に設けられた第2中間軸(図示省略)に軸支され第2中間軸を中心に回転する差動プーリ64と、差動プーリ64に対向する位置に設けられた回転軸27Aに軸支され回転軸27Aと一体となって回転するプーリ63には、それぞれベルト35,71,73がベルト掛けされている。
なお、差動プーリ64は、入力側のプーリ64Aのギヤ64Cと出力側のプーリ64Bのギヤ64Dとが噛合い、例えば、入力側のプーリ64Aが時計方向に回転する場合、出力側のプーリ64Bは反時計方向に回転する。
また、回転軸27Aは、回転軸26Aの外周側に回転軸26Aと同一軸心上に設けられ、回転軸26A,27Aの一対のベアリング61により相互に回転自在である。
【0052】
ラジエータファン26を正転し、排塵ファン27を停止する場合、回転軸41に軸支され回転軸41を中心に回転するアーム42を時計方向に回転させ、アーム42の先端部に設けられたテンションローラ37をプーリ33Cとプーリ62にベルト掛けされたベルト72に押圧しベルト72のテンションを強め、エンジン11のクランク軸31Aの回転をプーリ62が軸支された回転軸26Aに伝動する。
一方、回転軸41Aに軸支され回転軸41Aを中心に回転するアーム42Aを時計方向に回転させ、アーム42Aの先端部に設けられたテンションローラ37Aをプーリ64Bとプーリ63にベルト掛けされたベルト73から離間させベルト73のテンションを弱め、エンジン11のクランク軸31Aの回転のプーリ63が軸支された回転軸27Aへの伝動を遮断する。
【0053】
ラジエータファン26を停止し、排塵ファン27を正転する場合、回転軸41に軸支され回転軸41を中心に回転するアーム42を反時計方向に回転させ、アーム42の先端部に設けられたテンションローラ37をプーリ33Cとプーリ62にベルト掛けされたベルト72から離間させベルト72のテンションを弱め、エンジン11のクランク軸31Aの回転のプーリ62が軸支された回転軸26Aへの伝動を遮断する。
一方、回転軸41Aに軸支され回転軸41Aを中心に回転するアーム42Aを反時計方向に回転させ、アーム42Aの先端部に設けられたテンションローラ37Aをプーリ64Bとプーリ63にベルト掛けされたベルト73に押圧しベルト73のテンションを強め、エンジン11のクランク軸31Aの回転をプーリ63が軸支された回転軸27Aに伝動する。
【0054】
アーム42は、クラッチ部材38を構成する伝動モータ45で回動される円板46により直動される連動リンク74により時計方向または反時計方向に回転され、アーム42Aは、アーム42を回転させる同一の伝動モータ45で回動される円板46により直動される連動リンク74Aにより時計方向または反時計方向に回転される。
なお、ラジエータファン26の慣性による正転、排塵ファン27の慣性による逆転を強制的に停止するため、アーム42,42Aにそれぞれブレーキ板47を設けることができる。
【0055】
排塵ファン27は、ラジエータファン26の左側、すなわちラジエータファン26よりも機体内側に配置されるため、ラジエータファン26の正転時にラジエータカバー22の濾過体24から外気を内部に効率的に吸入することができる。
【0056】
ラジエータファン26の正転/停止状態の切換えをラジエータファン26が軸支された回転軸26Aのプーリ62と中間軸に軸支されたプーリ33Cとに軸架されているベルト77のテンションで行なうことから、ラジエータファン26の正転/停止状態の切換えを短時間で行なうことができる。
排塵ファン27の逆転/停止状態の切換えを排塵ファン27が軸支された回転軸27Aのプーリ63と第2中間軸に軸支された差動プーリ64Bとに軸架されているベルト73のテンションで行なうことから、排塵ファン27の逆転/停止状態の切換えを短時間で行なうことができる。
また、ラジエータファン26の正転/停止状態を切換えるアーム42および排塵ファン27の逆転/停止状態の切換えるアーム42Aが一つの伝動モータ45により行なわれていることから、切換え構造を簡易にでき信頼性も高い。
【0057】
エンジン11のクランク軸31Aの回転をコンプレッサ66に伝動することもでき、エンジン11のクランク軸31Aのプーリ31と、プーリ31に対向する位置に設けられたプーリ33Bと、プーリ33Bに対向する位置に設けられたコンプレッサのプーリ67には、それぞれベルト35,71が軸架されている。
【0058】
次に、第1実施形態の伝動機構について説明する。
図18に示すように、エンジン11の動力はプーリ31,プーリ103を介しロータリィクラッチ104、ギヤボックス105、扱胴106に伝動され扱胴106を回転させる。また、ベルト109を介しコンベア111、オプションであるスプレッタ110またはセカンドモア112に伝動される。なお、スプレッタ110とセカンドモア112とはいずれか一方を選択し使用する。
【0059】
エンジン11の動力はプーリ31,プーリ33を介しラジエータファン26、コンプレッサ66に伝動され、ラジエータファン26、コンプレッサ66を稼働させる。また、プーリ33に伝動された動力は、中間軸107、ベルト108、プーリ101Aを介しランスミッション101、HST102に伝動され、さらに、中間軸107、プーリ113を介しギヤボックス114に伝動される。
【0060】
ギヤボックス114に伝動された動力は、刈取クラッチ115を介しフィーダチェン116、オーガドラム117、刈刃118、リール119に伝動され、オーガドラム117、刈刃118、リール119を回転させる。また、ギヤボックス114に伝動された動力は、ギヤボックス114に軸支された選別駆動第2軸121を介しプレファン122、塵埃ファン123、1番コンベア124、2番コンベア125、セカンドファン126に伝動され、1番コンベア124、2番コンベア125を稼働させる。
【0061】
1番コンベア124に伝動された動力は、パケット下軸131を介しレベリング軸132に伝動され、2番コンベア125に伝動された動力は、2番コンベア軸127を介し2番縦コンベア128、2番上コンベア129に伝動され、2番縦コンベア128、2番上コンベア129を稼働させる。
【0062】
図19〜20に示すように、エンジン11の動力はプーリ31、中間軸107、ベルト108を介しトランスミッション101に伝動される他、プーリ103等を介し扱胴106、ベルト109に伝動され扱胴106が回転される。また、エンジン11の動力はプーリ31を介しラジエータファン26に伝動され、ラジエータファン26を正転させる。
【0063】
また、図21には、エンジン11の動力がプーリ31からラジエータファン26に連結される回転軸26Aの一端に設置されたプーリ32、及び中間軸107及びプーリ33、113等の位置関係が示されている。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、農業用作業車輌に適用できるものである。
【符号の説明】
【0065】
1 コンバイン
2 車台(機体)
11 エンジン
12 インタークーラ
14 インタークーラ用ファン
16 濾過体
21 ラジエータ
22 ラジエータカバー
24 濾過体
26 ラジエータファン
26A 回転軸
27 排塵ファン
27A 回転軸
31 プーリ
31A クランク軸
32 プーリ
33 プーリ
35 ベルト
36 ベルト
37 テンションローラ
37A テンションローラ
41 回転軸
41A 回転軸
42 アーム
42A アーム
45 伝動モータ
47 ブレーキ板
51 排塵ファン
55 ファンガイド
55A 天面
57 オイルクーラ
58 オイルクーラ
61 ベアリング
62 プーリ
63 プーリ
64 プーリ
71 ベルト
72 ベルト
73 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(11)の吸気経路に接続したインタークーラ(12)と、前記エンジン(11)の冷却水を冷却するラジエータ(21)と、前記インタークーラ(12)よりも機体内側に配置した正逆転切換可能な外気吸入用のインタークーラ用ファン(14)と、前記ラジエータ(21)よりも機体内側に配置した正転状態と回転停止状態とに切換可能な外気吸入用のラジエータファン(26)と、前記インタークーラ(12)およびラジエータ(21)の外側に配置した外気濾過用の濾過体(16,24)と、前記ラジエータ(21)と濾過体(24)との間に配置して濾過体(24)の内側から外側に向けて送風する排塵ファン(51)とを備え、
前記ラジエータファン(26)の回転停止に伴い、排塵ファン(51)を逆転させると共にインタークーラ用ファン(14)を逆転させる構成としたことを特徴とする作業車輌の原動部構造。
【請求項2】
前記ラジエータファン(26)は、エンジン(11)のクランク軸(31A)から複数のプーリ(31,32,33)と複数のベルト(35,36)を介し回転駆動される回転軸(26A)に軸支され、
ラジエータファン(26)は、回転軸(41)に軸支されたテンションローラ(37)を有するアーム(42)の回動操作により、ラジエータファン(26)の回転軸(26A)に設けられたプーリ(32)に掛けられたベルト(36)の張力を変動させることで、正転状態と回転停止状態との切換が行なわれる構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項3】
前記アーム(42)は、テンションローラ(37)とブレーキ板(47)を有し、
前記ラジエータファン(26)の正転状態から回転停止状態への切換時に、ブレーキ板(47)が前記ベルト(36)をプーリ(32)に押圧することで該プーリ(32)の回転を停止させ、
前記ラジエータファン(26)の回転停止状態から正転状態への切換時には、ブレーキ板(47)が前記ベルト(36)から離間する構成としたことを特徴とする請求項2記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項4】
前記排塵ファン(51)は、濾過体(24)を備えた開閉可能なラジエータカバー(22)に支持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項5】
前記排塵ファン(51)は、前記ラジエータファン(26)が正転状態にある時に正転する構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項6】
前記オイルクーラ(57,58)の外周を囲むファンガイド(55)の天面(55A)が外側の部位ほど上方に位置するように傾斜し、前記オイルクーラ(57,58)が上下一列に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−6526(P2012−6526A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145508(P2010−145508)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】