作業車
【課題】 トラクタの前部にフロントローダを着脱自在に取り付けた作業車において、フロントローダを取り外した時にバケットを接地した状態でブームを支えるスタンドをトラクタの左右片側だけからの操作によって使用位置と非使用位置とに位置変更できるようにする。
【解決手段】 スタンド53は左右のブーム8に対応して設けられた左右一対のスタンド部材54を備え、左右のスタンド部材54は、ブーム8から下方側に突出して接地し該ブーム8を支える使用位置と、ブーム8に沿う非使用位置とに位置変更自在にブーム8に取り付けられており、且つ左右のスタンド部材54を連結部材55によって連結する。
【解決手段】 スタンド53は左右のブーム8に対応して設けられた左右一対のスタンド部材54を備え、左右のスタンド部材54は、ブーム8から下方側に突出して接地し該ブーム8を支える使用位置と、ブーム8に沿う非使用位置とに位置変更自在にブーム8に取り付けられており、且つ左右のスタンド部材54を連結部材55によって連結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トラクタの前部にフロントローダを着脱自在に取り付けてなるトラクタ装着式ローダ等の作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタの前部にフロントローダを着脱自在に取り付けてなるトラクタ装着式ローダがある(特許文献1参照)。
フロントローダは、左右一対のブームと、この左右ブームの前端側に取り付けられたバケットとを備え、左右各ブームの後端側はサイドフレームに枢支連結され、このサイドフレームは、トラクタに取り付けられたメインフレームに着脱自在に装着される。
また、フロントローダには、該フロントローダをトラクタから取り外した時に、バケットを接地した状態でブームを支えるスタンドが設けられている。
【0003】
このスタンドは、左右ブームに対応して左右一対設けられていると共に、前端側がブームに枢支されていて該枢支部回りに上下揺動することにより、ブームから下方側に突出して接地し該ブームを支える使用位置と、ブームに沿う非使用位置とに位置変更自在とされている。
【特許文献1】特開平10−280465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のトラクタ装着式ローダにあっては、左右各スタンドは、それぞれ独立してブームに取り付けられており、フロントローダを着脱する時において、各スタンドを各々独立して操作しなければならず、各スタンドを上げ下げするために、左側のブームの左右方向外方側(走行車輌の左側)と、右側のブームの左右方向外方側(走行車輌の右側)との両方に行かなければならず、面倒であった。
そこで、本発明は、前記問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、走行車輌に着脱自在に取り付けられた左右一対のブームと、この左右ブームの先端側に設けた作業具と、前記ブームを走行車輌から取り外した際に前記作業具を接地させた状態でブームを支えるスタンドとを備え、スタンドは左右のブームに対応して設けられた左右一対のスタンド部材を備え、左右のスタンド部材は、ブームから下方側に突出して接地し該ブームを支える使用位置と、ブームに沿う非使用位置とに位置変更自在にブームに取り付けられており、且つ左右のスタンド部材は連結部材によって連結されていることを特徴とする。
【0006】
また、左右のブームはブーム長手方向中途部でブーム連結体によって連結され、前記左右スタンド部材を連結する連結部材は、非使用位置においてこのブーム連結体に沿うように位置して該ブーム連結体に沿って設けられた油圧配管を下側から覆うように構成するのがよい。
また、左右のスタンド部材は、連結部材の前側に位置する前構成部材と、連結部材の後側に位置する後構成部材とに分割されているのがよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、走行車輌の左側又は右側からだけの操作でスタンドを使用位置と非使用位置とに位置変更できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、1は、作業車(荷役車両)として例示する、トラクタ2の前部にフロントローダ3を装着してなるトラクタ装着式ローダである。
トラクタ2は左右一対の前後輪4,5を有する2軸4輪形トラクタで、前部にエンジン、ラジエータ等を覆うボンネット6が設けられており、このボンネット6は上面等が湾曲状に形成されている。
フロントローダ3は、トラクタ2に設けられた取付フレーム7に着脱自在に取り付けられるサイドフレーム13と、このサイドフレーム13に基部側が枢支連結されたブーム8と、この左右ブーム8の先端側に取り付けられた作業具としてのバケット9とを有する。
【0009】
取付フレーム7は、図10及び図11に示すように、トラクタ2の前部の下部(ボンネット6の後端側の下方側)に、該トラクタ2から左右方向外方突出状に設けられた支持台11と、この支持台11に、該支持台11から上方突出状に設けられたメインフレーム12と、前記支持台11の左右方向内端側に固定されていてトラクタ2に取付固定された取付板10とを左右一対備えている。
図2に示すように、ブーム8及びサイドフレーム13は左右一対設けられていて、ボンネット6の左右両側に配置されており、左右のブーム8はその前部側において、円筒状のブーム連結体14によって相互に連結されており、サイドフレーム13は左右方向で同じ側にあるメインフレーム12に取り付けられる。
【0010】
左右各ブーム8は、その基端側(後端側)が左右方向で同じ側にあるサイドフレーム13の上部に枢軸36によって左右方向の軸心回りに回動自在に枢支連結されていて上下揺動自在とされている。
また、左右各ブーム8の長手方向中途部と、左右各サイドフレーム13の上下方向中途部とにわたって複動式油圧シリンダからなるブームシリンダ15が介装され、この左右ブームシリンダ15の伸縮によって左右のブーム8が上下に揺動可能とされている。
また、バケット9の背面下部には、ブラケット38が左右一対設けられ、左右方向で同じ側にあるブーム8の先端側(前端側)が枢軸37を介して枢支連結され、バケット9の背面の左右方向中央部と前記ブーム連結体14の左右方向中央部との間には、複動式油圧シリンダからなる一本のバケットシリンダ16が介装され、このバケットシリンダ16の伸縮によってバケット9が揺動可能(スクイ・ダンプ動作可能)とされている。
【0011】
前記左右各ブーム8は、図1〜図3に示すように、長手方向中央部で屈曲されて上側に凸となる山形状に形成されていると共に、前後の端部から長手方向中央部に行くに従って上下幅が漸次幅広となるように形成されている。
また、このブーム8は、長手方向中央部から前側の前ブーム構成体8Aと、長手方向中央部から後側の後ブーム構成体8Bと、これら前後のブーム構成体8A,8Bをブーム8の長手方向中央側で連結する中央連結板17と、ブーム8の長手方向中央側の左右両側に配置されたサイドプレート18とから主構成されている。
【0012】
前後のブーム構成体8A,8Bは、本体19と底板20とから構成されていると共に、前後のブーム構成体8A,8Bは同一形状に形成されていて、部材の兼用化が図られている。
本体19は、左右一対の側板21と、該左右側板21の上側縁部同志を連結する天板22とから下側に開放状の断面コ字形に形成されていると共に、上側に凸となる湾曲状に形成されている。
この前後のブーム構成体8A,8Bの本体19は、一枚の板材を折曲することで断面コ字形に形成されており、且つコ字形に曲げ加工した後に、上側に凸となる湾曲状に曲げ加工されている。
【0013】
また、この前後のブーム構成体8A,8Bの本体19の上面(天板22の上面)及び下縁(左右側板21の下側縁部21a)は一定の曲率半径の円弧面に曲げ加工されている。
これによって、ブーム8の上面は前端から後端にかけて湾曲状に形成されており、ボンネット6の湾曲形状にデザイン的にマッチした形状とされている。
また、前ブーム構成体8Aの前端側には、左右側板21に亘って貫通すると共に該側板21に溶接固定された筒体からなる前枢支部23が設けられ、この前枢支部23及びバケット9の背面に設けられたブラケット38とにわたって前記枢軸37を挿通することによりバケット9が左右軸回りに回動自在に枢支連結されている。
【0014】
また、後ブーム構成体8Bの後端側には、左右側板21に亘って貫通すると共に該側板21に溶接固定された筒体からなる後枢支部24が設けられ、この後枢支部24及びサイドフレーム13とにわたって前記枢軸36を挿通することによりブーム8がサイドフレーム13に左右軸回りに回動自在に枢支連結されている。
左右の前ブーム構成体8Aの左右方向内方側の側板21の後部側が前記ブーム連結体14によって連結されている。
底板20は、平板で構成されており、天板22の下側で且つ左右側板21間に配置され、前後のブーム構成体8A,8Bの、ブーム8の長手方向中央側の端部から前後枢支部23,24に至るように設けられており、本体19を曲げ加工した後に、該底板20の左右の側縁部を左右側板21の内面に溶接固定している。
【0015】
また、この底板20は、前後方向一端側が前後の枢支部23,24に当接し、前後方向他端側が、ブーム8の長手方向中央部の上下幅方向中途部(側板21の、ブーム8の長手方向中央側の端縁の上下方向中途部)に位置していて、底板20は、該底板20の長手方向中途部において側板21の下側の縁部に最も近接しており、該底板20中途部からブーム8の長手方向中央部に行くに従って、底板20から側板21の下側縁部21aまでの距離が、漸次大きくなるように形成されており、これによってブーム8の長手方向中央側の、底板20の下側で且つ左右側板21間に配管収容スペース25が形成されている。
【0016】
図3及び図4に示すように、左右一方側のブーム8(本実施の形態では右側)の配管収容スペース25に油圧配管26,27が収容されている。
油圧配管26,27はブームシリンダ15用の2本と、バケットシリンダ16用の2本との計4本が、底板20に沿うようにして配設されている。
各油圧配管26,27の後部側は、右側メインフレーム12等に設けられたコントロールバルブに油圧ホースを介して接続される。
ブームシリンダ15用の油圧配管26の前部側はブーム連結体14の下側を該ブーム連結体14に沿って左方に配設され、左側のブームシリンダ15に油圧ホースを介して接続されていると共に、該油圧配管26は右側前部側において、分岐部材28によって分岐されていて該分岐部材28は右側のブームシリンダ15に油圧ホースを介して接続されている。
【0017】
また、バケットシリンダ16用の油圧配管27はブーム連結体14の下側を該ブーム連結体14に沿って左方に配設され、ブーム連結体14の左右方向中央部分で油圧ホースを介してバケットシリンダ16に接続されている。
図5にも示すように、左右のブーム8を連結するブーム連結体14の下面側の左右両側には、該ブーム連結体14の下面側に沿って配設された前記油圧配管26,27を取り付けるクランプ部材39を取り付けるための取付台40が固定されている。
前述したように、ブーム8の左右方向中央側で底板20から側板21の下側縁部21aまでの距離が大きく、しかも、左右側板21間の左右幅が狭いことから、底板20を側板21に溶接するにあたって、ブーム8の長手方向中央側において側板21間に溶接トーチが入りにくく、ブーム8の長手方向中央側において側板21に対する底板20の溶接がし難い。
【0018】
そこで、前後のブーム構成体8A,8Bの本体19の、ブーム8の長手方向中央側の上部側に、切欠き部29が形成されており、ブーム8の前後の各端部側からブーム8の長手方向中途部にわたっては底板20を下側から側板21に溶接し、ブーム8の長手方向中央側では底板20を上側から側板21に溶接している。
前記切欠き部29は、天板22の、ブーム8の長手方向中央側の端部からブーム長手方向に所定範囲該天板22を切り欠くと共に該切欠部分から左右側板21の上下幅方向中途部に亘って切り欠かれている。
【0019】
前後のブーム構成体8A,8Bは、本体19に底板20を溶接固定した後、ブーム8の長手方向中央側で付き合わされて、前後の底板20同志が相互に溶接されると共に、中央連結板17及び左右のサイドプレート18をブーム構成体8A,8Bに溶接することによって連結されている。
中央連結板17は、平板を上側に凸となる湾曲状に曲げ加工することにより形成されていて、前後のブーム構成体8A,8Bの天板22にわたって設けられている。
この中央連結板17の曲率半径は、前後のブーム構成体8A,8Bの上面の曲率半径よりも小さく形成されている。
【0020】
したがって、長手方向中央側と前後両側とでブーム8上面の曲率半径の異なるブーム8を形成するのにあたって、曲率半径の異なる部材を連結することで形成することより、ブーム8の製作が容易に行える。
左右のサイドプレート18は、ブーム8の長手方向中央側で前後ブーム構成体8A,8Bの側板21にわたるように設けられ、左右各サイドプレート18の下部には、ブーム8から下側に突出するシリンダ枢支部30が設けられ、このシリンダ枢支部30に前記ブームシリンダ15が枢支連結されている。
【0021】
なお、左右方向内側のサイドプレート18は、外側のサイドプレート18よりも前方に延出されていると共に、ブーム連結体14を挿通させるための孔41が形成されている。
前ブーム構成体8Aの天板22の前端側及び後端側と、後ブーム構成体8Bの天板22の前端側及び後端側には、それぞれ前後のブーム構成体8A,8Bの本体19を曲げ加工する際の位置決め用のガイド穴42が貫通状に形成されている。
また、前枢支部23及び後枢支部24には、枢軸36,37の外周部にグリスを給脂するためのグリスニップル43が設けられ、このグリスニップル43は、図9に示すように、前ブーム構成体8Aの天板22の前端側、後ブーム構成体8Bの天板22の後端側に形成された前記ガイド穴42に対応する位置に設けられており、ガイド穴42が給脂を行う給脂口に兼用されており、このように構成することにより、前後のブーム構成体8A,8Bの天板22によってグリスニップル43が保護されている。
【0022】
特に、前ブーム構成体8Aの前端側のバケット枢支部分に設けられるグリスニップル43を、前枢支部23の、ブーム長手方向の前端側の面に設けたものにあっては、該グリスニップル43は砂利等によって破損しやすいことから、該グリスニップル43を保護するためにカバー部材が別途設けられるが、そうするとコストアップになるが、本実施の形態の構造では、コストアップにはならない。
図10〜図12に示すように、サイドフレーム13は、左右一対の側壁13aと、この左右側壁13aを連結する連結壁13bとから構成されている。
【0023】
このサイドフレーム13の下端側前部には左右方向の軸心を有する係合ピン45が設けられ、この係合ピン45はサイドフレーム13の左右の側壁13aを貫通して該側壁13aに固着されており、サイドフレーム13には、その上下方向中途部の後部側において、左右の側壁13aにわたってマウントピン46が左右方向に貫通可能とされている。
また、メインフレーム12は、厚板材によって形成されて支持台11の左右方向外端側に固定されており、上下方向中途部から上方側がサイドフレーム13の左右側壁13a間に挿入状とされており、このメインフレーム12の上部には左右方向の軸心を有する筒体47が左右方向貫通状に設けられ、上下方向中途部の前部には上方に開放状の円弧状凹溝48を有する受部材49が固着されている。
【0024】
この受部材49の凹溝48にサイドフレーム13の係合ピン45を上方から嵌合し、かつ、サイドフレーム13とメインフレーム12の筒体47とにわたってマウントピン46を挿通することにより、サイドフレーム13がメインフレーム12に取り付けられている。
サイドフレーム13の左右方向外側の側壁13a外面のマウントピン46の下方側にはプレート50が設けられ、マウントピン46の左右方向外端側にはマウントピン46よりも径小の抜止めピン51が径方向に貫通され、この抜止めピン51は、図12(a)に示すように、前記プレート50に形成された挿通孔52に挿通されており、これによってマウントピン46がサイドフレーム13及び筒体47に対して抜け止めされ、抜止めピン51を前記プレート50の挿通孔52から上方に抜脱することにより、マウントピン46がサイドフレーム13及び筒体47から抜脱できるように構成されている。
【0025】
前記プレート50に形成された挿通孔52は、マウントピン46を挿通可能な大きさの孔に形成されており、マウントピン46をサイドフレーム13及び筒体47から抜脱したときに、図12(b)に示すように、該マウントピン46をプレート50の挿通孔52に挿通することにより、マウントピン46を保持(収納)できるように構成されている。
前記フロントローダ3には、該フロントローダ3をトラクタ2から取り外したときに、図8に示すように、バケット9を接地させた状態でブーム8を支えるスタンド53を備えている。
【0026】
このスタンド53は、図1、図2、図5〜図8に示すように、左右のブーム8に対応して設けられた左右一対のスタンド部材54と、左右のスタンド部材54を連結する連結部材55とから主構成されており、左右のスタンド部材54の前端側が、左右各前ブーム構成体8Aの前部側に設けられた支軸56,57に左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支されていて、該支軸56,57回りにスタンド53を回動することにより、図8に示すように、ブーム8から下方側に突出して接地し該ブーム8を支える使用位置と、図1、図5に示すように、左右スタンド部材54がブーム8に沿う非使用位置とに位置変更自在とされている。
【0027】
左右の各スタンド部材54は、連結部材55よりも前側の前構成部材54Aと、連結部材55よりも後側の後構成部材54Bとに2分割されており、これら前構成部材54Aと後構成部材54Bとは、それぞれ厚さ方向が左右方向となる一枚の帯板材によって形成されており、前構成部材54Aの後端側が連結部材55の前面側に溶接等によって固定され、後構成部材54Bの前端側が連結部材55の後面側に溶接等によって固定されている。
左右スタンド部材54の前構成部材54Aの前端側には、それぞれ支持孔58,59が厚さ方向(左右方向)貫通状に形成され、左右スタンド部材54の後構成部材54Bの後端側には左右方向内方側に折り曲げられて形成された接地部60が設けられている。
【0028】
左側(左右一方側)のスタンド部材54の前構成部材54Aの支持孔58は円形孔に形成され、右側(左右他方側)のスタンド部材54の前構成部材54Aの支持孔59は四角形の角孔に形成されている。
左右のスタンド部材54を支持する左右の支軸56,57は、左右各前ブーム構成体8Aの前部の左右方向内方側の面に、左右方向の軸心を有し且つ同心状に配置されると共に左右方向内方側に突出状として設けられている。
左側の支軸56は円柱状のピンによって構成されている。
【0029】
右側の支軸57は、四角形の角柱の軸心方向中央側部分を略円柱状に削ってなるピンによって構成されており、軸心方向中央側の円柱状部分が右側スタンド部材54の回動を許容する回動許容部57aとされており、左右方向内端側の角柱部分が右側スタンド部材54の回動を規制する回動規制部57bとされている。
左側のスタンド部材54の支持孔58が左側の支軸56に嵌合し、且つ右側のスタンド部材54の支持孔59が右側の支軸57の回動許容部57aに嵌合した状態で、スタンド53が左右の支軸56,57を中心として回動自在となっていて、該スタンド53が前部側の枢支部分を支点として上下に揺動自在(上げ下げ自在)とされている。
【0030】
このスタンド53は左右のスタンド部材54が連結部材55によって連結されてなるので、スタンド53を使用位置と非使用位置とに位置変更させる操作は、トラクタ2の左右方向一側(右側又は左側)からだけの上げ下げ操作によって可能とされている。
また、左右のスタンド部材54は、ブーム8の左右方向内方側で回動自在とされていて、非使用時において、左右のスタンド部材54は、ブーム8の左右方向内方側に、該ブーム8と左右方向に関してオーバーラップするように位置する。
これにより、スタンド53の非使用時(収納時)において、外側方から見てスタンド部材54はブーム8によって隠されることとなり、スタンド53の非使用時における外観の向上が図られている。
【0031】
また、左側のスタンド部材54の前構成部材54Aの前部には、ピン挿通孔61が支持孔58の後方側に形成されており、左側のブーム8の左右方向内方側の面には、左側の支軸56を中心とし、左側の支軸56とピン挿通孔61との軸心間距離を半径とする円弧上に位置する係止ピン62が左右方向内方側に突出状として固定されており、これらピン挿通孔61と係止ピン62とは、図6(d)に示すように、スタンド53が使用位置にある時に左右方向において軸心が略一致し、係止ピン62に対してピン挿通孔61が嵌合可能となる。
【0032】
また、スタンド53が使用位置にあるときに、図6(b)に示すように、右側のスタンド部材54の支持孔59は右側の支軸57の回動規制部57aに嵌合可能となり、使用位置でスタンド部材54が左右移動可能となる(なお、右側の支持孔59が回動許容部57aに嵌合している状態からのスタンド53の右方への移動は、左側の支軸56に挿通されるベータピン等の抜止め部材によって規制されるように構成されている)。
したがって、スタンド53が使用位置に位置するときにおいて、右側の支持孔59が回動許容部57aに嵌合している状態から、該スタンド53を左方移動させることにより、左側のスタンド部材54のピン挿通孔61が係止ピン62に嵌合し、且つ右側のスタンド部材54の支持孔59が右側の支軸57の回動規制部57bに嵌合することにより、スタンド53の支軸56,57回りの回動が規制され、該スタンド53が使用位置に保持(ロック)される。
【0033】
この状態で、係止ピン62にベータピン等の抜止め部材を挿通することにより、スタンド53の右方への移動が規制される。
なお、右側の支軸57の左右方向外端側の角柱部57cは、スタンド53の着脱用とされており、この角柱部57cに右側のスタンド部材54の支持孔59を嵌合させるようにスタンド53を右方に移動させることにより、左側のスタンド部材54の支持孔58が左側の支軸56から外れるように構成されている。
前記連結部材55は、前壁部63と、後壁部64と、これら前後壁部63,64の下端側同志を連結する底壁部65とを有して、左右及び上側が開放状となる溝形に形成されている。
【0034】
また、連結部材55は、スタンド53を非使用位置としたときに、図5に示すように、ブーム連結体14の下側において該ブーム連結体14に沿うように位置して該ブーム連結体14に沿って設けられた油圧配管26,27、取付台40及びクランプ部材39を下側から覆うように構成され、スタンド53の非使用時において該連結部材55が油圧配管26,27等を保護するカバーとなっている。
また、連結部材55の底壁部65の左右方向略中央部にはピン挿通孔66が形成され、ブーム連結体14の下面側の左右方向略中央部には、スタンド53が非使用位置にあるときにおいて、前記ピン挿通孔66が嵌合可能な係止ピン67が下方側に突出状に固定されている。
【0035】
したがって、スタンド53を非使用位置にして係止ピン67の抜止め孔68にベータピン等の抜止めピンを挿通することにより、スタンド53を非使用位置に保持できるように構成されている。
この係止ピン67はフロントローダ3の左右方向略中央部にあるので、該係止ピン67に対して抜止めピンを挿脱するのはトラクタ2の左右どちらからでも可能である。
前記構成のフロントローダ3をトラクタ2から取り外すには、例えば、先ずバケット9の底部の先端側を接地させると共にスタンド53を非使用位置から下げて使用位置とした状態でマウントピン46をサイドフレーム13及びメインフレーム12の筒体47から抜脱する。取り外したマウントピン46はプレート50の挿通孔52に挿通して保持する。
【0036】
次に、バケットシリンダ16を収縮させていくと、ブーム8が下降してスタンド53の接地部60が接地した後、サイドフレーム13が上昇するようにスタンド53の接地部60回りにブーム8が揺動して、メインフレーム12の受部材49の凹溝48からサイドフレーム13の係合ピン45が上方に外れ、図8に示すように、フロントローダ3が、バケット9の底部が接地した状態でブーム8がスタンド53によって支えられたスタンディング状態とされる。
その後、フロントローダ3に配設された油圧配管26,27からコントロールバルブ側に接続された油圧ホースを切り離し、トラクタ2を後退させる。
【0037】
フロントローダ3をトラクタ2に取り付ける際には、前記動作と逆の動作によって行われる。
なお、このフロントローダ3の着脱方法は一例を開示したものであり、他の方法で着脱させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】作業車の側面図である。
【図2】図1の作業車のフロントローダを前斜め上方から見た図である。
【図3】ブームの側面断面図である。
【図4】図3のA−A線矢示断面図である。
【図5】(a)はブーム及び非使用時のスタンドを左右方向中央部からみた側面図、(b)はスタンドの連結部材で油圧配管を覆っている部分の拡大断面である。
【図6】(a)は右側スタンド部材の非使用位置での枢支部分の側面図、(b)は右側スタンド部材の使用位置での枢支部分の側面図、(c)左側スタンド部材の非使用位置での枢支部分の側面図は、(d)は左側スタンド部材の使用位置での枢支部分の側面図である。
【図7】(a)はスタンドの平面図、(b)は右側スタンド部材の枢支部分の一部断面拡大図、(c)は左側スタンド部材の枢支部分の一部断面拡大図である。
【図8】フロントローダを取り外した状態を示す側面図である。
【図9】(a)ブームの基部の側面断面図、(b)はブームの先端部の側面断面図である。
【図10】取付フレーム及びサイドフレームの側面図である。
【図11】取付フレーム及びサイドフレームの正面図である。
【図12】(a)はメインフレームとサイドフレームとにわたってマウントピンを挿通した状態の側面図、(b)はマウントピンをメインフレーム及びサイドフレームから抜脱してメインフレームに保持した状態の側面図である。
【符号の説明】
【0039】
2 トラクタ(走行車輌)
8 ブーム
9 バケット(作業具)
14 ブーム連結体
26 油圧配管
27 油圧配管
53 スタンド
54 スタンド部材
54A 前構成部材
54B 後構成部材
55 連結部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トラクタの前部にフロントローダを着脱自在に取り付けてなるトラクタ装着式ローダ等の作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタの前部にフロントローダを着脱自在に取り付けてなるトラクタ装着式ローダがある(特許文献1参照)。
フロントローダは、左右一対のブームと、この左右ブームの前端側に取り付けられたバケットとを備え、左右各ブームの後端側はサイドフレームに枢支連結され、このサイドフレームは、トラクタに取り付けられたメインフレームに着脱自在に装着される。
また、フロントローダには、該フロントローダをトラクタから取り外した時に、バケットを接地した状態でブームを支えるスタンドが設けられている。
【0003】
このスタンドは、左右ブームに対応して左右一対設けられていると共に、前端側がブームに枢支されていて該枢支部回りに上下揺動することにより、ブームから下方側に突出して接地し該ブームを支える使用位置と、ブームに沿う非使用位置とに位置変更自在とされている。
【特許文献1】特開平10−280465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のトラクタ装着式ローダにあっては、左右各スタンドは、それぞれ独立してブームに取り付けられており、フロントローダを着脱する時において、各スタンドを各々独立して操作しなければならず、各スタンドを上げ下げするために、左側のブームの左右方向外方側(走行車輌の左側)と、右側のブームの左右方向外方側(走行車輌の右側)との両方に行かなければならず、面倒であった。
そこで、本発明は、前記問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、走行車輌に着脱自在に取り付けられた左右一対のブームと、この左右ブームの先端側に設けた作業具と、前記ブームを走行車輌から取り外した際に前記作業具を接地させた状態でブームを支えるスタンドとを備え、スタンドは左右のブームに対応して設けられた左右一対のスタンド部材を備え、左右のスタンド部材は、ブームから下方側に突出して接地し該ブームを支える使用位置と、ブームに沿う非使用位置とに位置変更自在にブームに取り付けられており、且つ左右のスタンド部材は連結部材によって連結されていることを特徴とする。
【0006】
また、左右のブームはブーム長手方向中途部でブーム連結体によって連結され、前記左右スタンド部材を連結する連結部材は、非使用位置においてこのブーム連結体に沿うように位置して該ブーム連結体に沿って設けられた油圧配管を下側から覆うように構成するのがよい。
また、左右のスタンド部材は、連結部材の前側に位置する前構成部材と、連結部材の後側に位置する後構成部材とに分割されているのがよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、走行車輌の左側又は右側からだけの操作でスタンドを使用位置と非使用位置とに位置変更できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、1は、作業車(荷役車両)として例示する、トラクタ2の前部にフロントローダ3を装着してなるトラクタ装着式ローダである。
トラクタ2は左右一対の前後輪4,5を有する2軸4輪形トラクタで、前部にエンジン、ラジエータ等を覆うボンネット6が設けられており、このボンネット6は上面等が湾曲状に形成されている。
フロントローダ3は、トラクタ2に設けられた取付フレーム7に着脱自在に取り付けられるサイドフレーム13と、このサイドフレーム13に基部側が枢支連結されたブーム8と、この左右ブーム8の先端側に取り付けられた作業具としてのバケット9とを有する。
【0009】
取付フレーム7は、図10及び図11に示すように、トラクタ2の前部の下部(ボンネット6の後端側の下方側)に、該トラクタ2から左右方向外方突出状に設けられた支持台11と、この支持台11に、該支持台11から上方突出状に設けられたメインフレーム12と、前記支持台11の左右方向内端側に固定されていてトラクタ2に取付固定された取付板10とを左右一対備えている。
図2に示すように、ブーム8及びサイドフレーム13は左右一対設けられていて、ボンネット6の左右両側に配置されており、左右のブーム8はその前部側において、円筒状のブーム連結体14によって相互に連結されており、サイドフレーム13は左右方向で同じ側にあるメインフレーム12に取り付けられる。
【0010】
左右各ブーム8は、その基端側(後端側)が左右方向で同じ側にあるサイドフレーム13の上部に枢軸36によって左右方向の軸心回りに回動自在に枢支連結されていて上下揺動自在とされている。
また、左右各ブーム8の長手方向中途部と、左右各サイドフレーム13の上下方向中途部とにわたって複動式油圧シリンダからなるブームシリンダ15が介装され、この左右ブームシリンダ15の伸縮によって左右のブーム8が上下に揺動可能とされている。
また、バケット9の背面下部には、ブラケット38が左右一対設けられ、左右方向で同じ側にあるブーム8の先端側(前端側)が枢軸37を介して枢支連結され、バケット9の背面の左右方向中央部と前記ブーム連結体14の左右方向中央部との間には、複動式油圧シリンダからなる一本のバケットシリンダ16が介装され、このバケットシリンダ16の伸縮によってバケット9が揺動可能(スクイ・ダンプ動作可能)とされている。
【0011】
前記左右各ブーム8は、図1〜図3に示すように、長手方向中央部で屈曲されて上側に凸となる山形状に形成されていると共に、前後の端部から長手方向中央部に行くに従って上下幅が漸次幅広となるように形成されている。
また、このブーム8は、長手方向中央部から前側の前ブーム構成体8Aと、長手方向中央部から後側の後ブーム構成体8Bと、これら前後のブーム構成体8A,8Bをブーム8の長手方向中央側で連結する中央連結板17と、ブーム8の長手方向中央側の左右両側に配置されたサイドプレート18とから主構成されている。
【0012】
前後のブーム構成体8A,8Bは、本体19と底板20とから構成されていると共に、前後のブーム構成体8A,8Bは同一形状に形成されていて、部材の兼用化が図られている。
本体19は、左右一対の側板21と、該左右側板21の上側縁部同志を連結する天板22とから下側に開放状の断面コ字形に形成されていると共に、上側に凸となる湾曲状に形成されている。
この前後のブーム構成体8A,8Bの本体19は、一枚の板材を折曲することで断面コ字形に形成されており、且つコ字形に曲げ加工した後に、上側に凸となる湾曲状に曲げ加工されている。
【0013】
また、この前後のブーム構成体8A,8Bの本体19の上面(天板22の上面)及び下縁(左右側板21の下側縁部21a)は一定の曲率半径の円弧面に曲げ加工されている。
これによって、ブーム8の上面は前端から後端にかけて湾曲状に形成されており、ボンネット6の湾曲形状にデザイン的にマッチした形状とされている。
また、前ブーム構成体8Aの前端側には、左右側板21に亘って貫通すると共に該側板21に溶接固定された筒体からなる前枢支部23が設けられ、この前枢支部23及びバケット9の背面に設けられたブラケット38とにわたって前記枢軸37を挿通することによりバケット9が左右軸回りに回動自在に枢支連結されている。
【0014】
また、後ブーム構成体8Bの後端側には、左右側板21に亘って貫通すると共に該側板21に溶接固定された筒体からなる後枢支部24が設けられ、この後枢支部24及びサイドフレーム13とにわたって前記枢軸36を挿通することによりブーム8がサイドフレーム13に左右軸回りに回動自在に枢支連結されている。
左右の前ブーム構成体8Aの左右方向内方側の側板21の後部側が前記ブーム連結体14によって連結されている。
底板20は、平板で構成されており、天板22の下側で且つ左右側板21間に配置され、前後のブーム構成体8A,8Bの、ブーム8の長手方向中央側の端部から前後枢支部23,24に至るように設けられており、本体19を曲げ加工した後に、該底板20の左右の側縁部を左右側板21の内面に溶接固定している。
【0015】
また、この底板20は、前後方向一端側が前後の枢支部23,24に当接し、前後方向他端側が、ブーム8の長手方向中央部の上下幅方向中途部(側板21の、ブーム8の長手方向中央側の端縁の上下方向中途部)に位置していて、底板20は、該底板20の長手方向中途部において側板21の下側の縁部に最も近接しており、該底板20中途部からブーム8の長手方向中央部に行くに従って、底板20から側板21の下側縁部21aまでの距離が、漸次大きくなるように形成されており、これによってブーム8の長手方向中央側の、底板20の下側で且つ左右側板21間に配管収容スペース25が形成されている。
【0016】
図3及び図4に示すように、左右一方側のブーム8(本実施の形態では右側)の配管収容スペース25に油圧配管26,27が収容されている。
油圧配管26,27はブームシリンダ15用の2本と、バケットシリンダ16用の2本との計4本が、底板20に沿うようにして配設されている。
各油圧配管26,27の後部側は、右側メインフレーム12等に設けられたコントロールバルブに油圧ホースを介して接続される。
ブームシリンダ15用の油圧配管26の前部側はブーム連結体14の下側を該ブーム連結体14に沿って左方に配設され、左側のブームシリンダ15に油圧ホースを介して接続されていると共に、該油圧配管26は右側前部側において、分岐部材28によって分岐されていて該分岐部材28は右側のブームシリンダ15に油圧ホースを介して接続されている。
【0017】
また、バケットシリンダ16用の油圧配管27はブーム連結体14の下側を該ブーム連結体14に沿って左方に配設され、ブーム連結体14の左右方向中央部分で油圧ホースを介してバケットシリンダ16に接続されている。
図5にも示すように、左右のブーム8を連結するブーム連結体14の下面側の左右両側には、該ブーム連結体14の下面側に沿って配設された前記油圧配管26,27を取り付けるクランプ部材39を取り付けるための取付台40が固定されている。
前述したように、ブーム8の左右方向中央側で底板20から側板21の下側縁部21aまでの距離が大きく、しかも、左右側板21間の左右幅が狭いことから、底板20を側板21に溶接するにあたって、ブーム8の長手方向中央側において側板21間に溶接トーチが入りにくく、ブーム8の長手方向中央側において側板21に対する底板20の溶接がし難い。
【0018】
そこで、前後のブーム構成体8A,8Bの本体19の、ブーム8の長手方向中央側の上部側に、切欠き部29が形成されており、ブーム8の前後の各端部側からブーム8の長手方向中途部にわたっては底板20を下側から側板21に溶接し、ブーム8の長手方向中央側では底板20を上側から側板21に溶接している。
前記切欠き部29は、天板22の、ブーム8の長手方向中央側の端部からブーム長手方向に所定範囲該天板22を切り欠くと共に該切欠部分から左右側板21の上下幅方向中途部に亘って切り欠かれている。
【0019】
前後のブーム構成体8A,8Bは、本体19に底板20を溶接固定した後、ブーム8の長手方向中央側で付き合わされて、前後の底板20同志が相互に溶接されると共に、中央連結板17及び左右のサイドプレート18をブーム構成体8A,8Bに溶接することによって連結されている。
中央連結板17は、平板を上側に凸となる湾曲状に曲げ加工することにより形成されていて、前後のブーム構成体8A,8Bの天板22にわたって設けられている。
この中央連結板17の曲率半径は、前後のブーム構成体8A,8Bの上面の曲率半径よりも小さく形成されている。
【0020】
したがって、長手方向中央側と前後両側とでブーム8上面の曲率半径の異なるブーム8を形成するのにあたって、曲率半径の異なる部材を連結することで形成することより、ブーム8の製作が容易に行える。
左右のサイドプレート18は、ブーム8の長手方向中央側で前後ブーム構成体8A,8Bの側板21にわたるように設けられ、左右各サイドプレート18の下部には、ブーム8から下側に突出するシリンダ枢支部30が設けられ、このシリンダ枢支部30に前記ブームシリンダ15が枢支連結されている。
【0021】
なお、左右方向内側のサイドプレート18は、外側のサイドプレート18よりも前方に延出されていると共に、ブーム連結体14を挿通させるための孔41が形成されている。
前ブーム構成体8Aの天板22の前端側及び後端側と、後ブーム構成体8Bの天板22の前端側及び後端側には、それぞれ前後のブーム構成体8A,8Bの本体19を曲げ加工する際の位置決め用のガイド穴42が貫通状に形成されている。
また、前枢支部23及び後枢支部24には、枢軸36,37の外周部にグリスを給脂するためのグリスニップル43が設けられ、このグリスニップル43は、図9に示すように、前ブーム構成体8Aの天板22の前端側、後ブーム構成体8Bの天板22の後端側に形成された前記ガイド穴42に対応する位置に設けられており、ガイド穴42が給脂を行う給脂口に兼用されており、このように構成することにより、前後のブーム構成体8A,8Bの天板22によってグリスニップル43が保護されている。
【0022】
特に、前ブーム構成体8Aの前端側のバケット枢支部分に設けられるグリスニップル43を、前枢支部23の、ブーム長手方向の前端側の面に設けたものにあっては、該グリスニップル43は砂利等によって破損しやすいことから、該グリスニップル43を保護するためにカバー部材が別途設けられるが、そうするとコストアップになるが、本実施の形態の構造では、コストアップにはならない。
図10〜図12に示すように、サイドフレーム13は、左右一対の側壁13aと、この左右側壁13aを連結する連結壁13bとから構成されている。
【0023】
このサイドフレーム13の下端側前部には左右方向の軸心を有する係合ピン45が設けられ、この係合ピン45はサイドフレーム13の左右の側壁13aを貫通して該側壁13aに固着されており、サイドフレーム13には、その上下方向中途部の後部側において、左右の側壁13aにわたってマウントピン46が左右方向に貫通可能とされている。
また、メインフレーム12は、厚板材によって形成されて支持台11の左右方向外端側に固定されており、上下方向中途部から上方側がサイドフレーム13の左右側壁13a間に挿入状とされており、このメインフレーム12の上部には左右方向の軸心を有する筒体47が左右方向貫通状に設けられ、上下方向中途部の前部には上方に開放状の円弧状凹溝48を有する受部材49が固着されている。
【0024】
この受部材49の凹溝48にサイドフレーム13の係合ピン45を上方から嵌合し、かつ、サイドフレーム13とメインフレーム12の筒体47とにわたってマウントピン46を挿通することにより、サイドフレーム13がメインフレーム12に取り付けられている。
サイドフレーム13の左右方向外側の側壁13a外面のマウントピン46の下方側にはプレート50が設けられ、マウントピン46の左右方向外端側にはマウントピン46よりも径小の抜止めピン51が径方向に貫通され、この抜止めピン51は、図12(a)に示すように、前記プレート50に形成された挿通孔52に挿通されており、これによってマウントピン46がサイドフレーム13及び筒体47に対して抜け止めされ、抜止めピン51を前記プレート50の挿通孔52から上方に抜脱することにより、マウントピン46がサイドフレーム13及び筒体47から抜脱できるように構成されている。
【0025】
前記プレート50に形成された挿通孔52は、マウントピン46を挿通可能な大きさの孔に形成されており、マウントピン46をサイドフレーム13及び筒体47から抜脱したときに、図12(b)に示すように、該マウントピン46をプレート50の挿通孔52に挿通することにより、マウントピン46を保持(収納)できるように構成されている。
前記フロントローダ3には、該フロントローダ3をトラクタ2から取り外したときに、図8に示すように、バケット9を接地させた状態でブーム8を支えるスタンド53を備えている。
【0026】
このスタンド53は、図1、図2、図5〜図8に示すように、左右のブーム8に対応して設けられた左右一対のスタンド部材54と、左右のスタンド部材54を連結する連結部材55とから主構成されており、左右のスタンド部材54の前端側が、左右各前ブーム構成体8Aの前部側に設けられた支軸56,57に左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支されていて、該支軸56,57回りにスタンド53を回動することにより、図8に示すように、ブーム8から下方側に突出して接地し該ブーム8を支える使用位置と、図1、図5に示すように、左右スタンド部材54がブーム8に沿う非使用位置とに位置変更自在とされている。
【0027】
左右の各スタンド部材54は、連結部材55よりも前側の前構成部材54Aと、連結部材55よりも後側の後構成部材54Bとに2分割されており、これら前構成部材54Aと後構成部材54Bとは、それぞれ厚さ方向が左右方向となる一枚の帯板材によって形成されており、前構成部材54Aの後端側が連結部材55の前面側に溶接等によって固定され、後構成部材54Bの前端側が連結部材55の後面側に溶接等によって固定されている。
左右スタンド部材54の前構成部材54Aの前端側には、それぞれ支持孔58,59が厚さ方向(左右方向)貫通状に形成され、左右スタンド部材54の後構成部材54Bの後端側には左右方向内方側に折り曲げられて形成された接地部60が設けられている。
【0028】
左側(左右一方側)のスタンド部材54の前構成部材54Aの支持孔58は円形孔に形成され、右側(左右他方側)のスタンド部材54の前構成部材54Aの支持孔59は四角形の角孔に形成されている。
左右のスタンド部材54を支持する左右の支軸56,57は、左右各前ブーム構成体8Aの前部の左右方向内方側の面に、左右方向の軸心を有し且つ同心状に配置されると共に左右方向内方側に突出状として設けられている。
左側の支軸56は円柱状のピンによって構成されている。
【0029】
右側の支軸57は、四角形の角柱の軸心方向中央側部分を略円柱状に削ってなるピンによって構成されており、軸心方向中央側の円柱状部分が右側スタンド部材54の回動を許容する回動許容部57aとされており、左右方向内端側の角柱部分が右側スタンド部材54の回動を規制する回動規制部57bとされている。
左側のスタンド部材54の支持孔58が左側の支軸56に嵌合し、且つ右側のスタンド部材54の支持孔59が右側の支軸57の回動許容部57aに嵌合した状態で、スタンド53が左右の支軸56,57を中心として回動自在となっていて、該スタンド53が前部側の枢支部分を支点として上下に揺動自在(上げ下げ自在)とされている。
【0030】
このスタンド53は左右のスタンド部材54が連結部材55によって連結されてなるので、スタンド53を使用位置と非使用位置とに位置変更させる操作は、トラクタ2の左右方向一側(右側又は左側)からだけの上げ下げ操作によって可能とされている。
また、左右のスタンド部材54は、ブーム8の左右方向内方側で回動自在とされていて、非使用時において、左右のスタンド部材54は、ブーム8の左右方向内方側に、該ブーム8と左右方向に関してオーバーラップするように位置する。
これにより、スタンド53の非使用時(収納時)において、外側方から見てスタンド部材54はブーム8によって隠されることとなり、スタンド53の非使用時における外観の向上が図られている。
【0031】
また、左側のスタンド部材54の前構成部材54Aの前部には、ピン挿通孔61が支持孔58の後方側に形成されており、左側のブーム8の左右方向内方側の面には、左側の支軸56を中心とし、左側の支軸56とピン挿通孔61との軸心間距離を半径とする円弧上に位置する係止ピン62が左右方向内方側に突出状として固定されており、これらピン挿通孔61と係止ピン62とは、図6(d)に示すように、スタンド53が使用位置にある時に左右方向において軸心が略一致し、係止ピン62に対してピン挿通孔61が嵌合可能となる。
【0032】
また、スタンド53が使用位置にあるときに、図6(b)に示すように、右側のスタンド部材54の支持孔59は右側の支軸57の回動規制部57aに嵌合可能となり、使用位置でスタンド部材54が左右移動可能となる(なお、右側の支持孔59が回動許容部57aに嵌合している状態からのスタンド53の右方への移動は、左側の支軸56に挿通されるベータピン等の抜止め部材によって規制されるように構成されている)。
したがって、スタンド53が使用位置に位置するときにおいて、右側の支持孔59が回動許容部57aに嵌合している状態から、該スタンド53を左方移動させることにより、左側のスタンド部材54のピン挿通孔61が係止ピン62に嵌合し、且つ右側のスタンド部材54の支持孔59が右側の支軸57の回動規制部57bに嵌合することにより、スタンド53の支軸56,57回りの回動が規制され、該スタンド53が使用位置に保持(ロック)される。
【0033】
この状態で、係止ピン62にベータピン等の抜止め部材を挿通することにより、スタンド53の右方への移動が規制される。
なお、右側の支軸57の左右方向外端側の角柱部57cは、スタンド53の着脱用とされており、この角柱部57cに右側のスタンド部材54の支持孔59を嵌合させるようにスタンド53を右方に移動させることにより、左側のスタンド部材54の支持孔58が左側の支軸56から外れるように構成されている。
前記連結部材55は、前壁部63と、後壁部64と、これら前後壁部63,64の下端側同志を連結する底壁部65とを有して、左右及び上側が開放状となる溝形に形成されている。
【0034】
また、連結部材55は、スタンド53を非使用位置としたときに、図5に示すように、ブーム連結体14の下側において該ブーム連結体14に沿うように位置して該ブーム連結体14に沿って設けられた油圧配管26,27、取付台40及びクランプ部材39を下側から覆うように構成され、スタンド53の非使用時において該連結部材55が油圧配管26,27等を保護するカバーとなっている。
また、連結部材55の底壁部65の左右方向略中央部にはピン挿通孔66が形成され、ブーム連結体14の下面側の左右方向略中央部には、スタンド53が非使用位置にあるときにおいて、前記ピン挿通孔66が嵌合可能な係止ピン67が下方側に突出状に固定されている。
【0035】
したがって、スタンド53を非使用位置にして係止ピン67の抜止め孔68にベータピン等の抜止めピンを挿通することにより、スタンド53を非使用位置に保持できるように構成されている。
この係止ピン67はフロントローダ3の左右方向略中央部にあるので、該係止ピン67に対して抜止めピンを挿脱するのはトラクタ2の左右どちらからでも可能である。
前記構成のフロントローダ3をトラクタ2から取り外すには、例えば、先ずバケット9の底部の先端側を接地させると共にスタンド53を非使用位置から下げて使用位置とした状態でマウントピン46をサイドフレーム13及びメインフレーム12の筒体47から抜脱する。取り外したマウントピン46はプレート50の挿通孔52に挿通して保持する。
【0036】
次に、バケットシリンダ16を収縮させていくと、ブーム8が下降してスタンド53の接地部60が接地した後、サイドフレーム13が上昇するようにスタンド53の接地部60回りにブーム8が揺動して、メインフレーム12の受部材49の凹溝48からサイドフレーム13の係合ピン45が上方に外れ、図8に示すように、フロントローダ3が、バケット9の底部が接地した状態でブーム8がスタンド53によって支えられたスタンディング状態とされる。
その後、フロントローダ3に配設された油圧配管26,27からコントロールバルブ側に接続された油圧ホースを切り離し、トラクタ2を後退させる。
【0037】
フロントローダ3をトラクタ2に取り付ける際には、前記動作と逆の動作によって行われる。
なお、このフロントローダ3の着脱方法は一例を開示したものであり、他の方法で着脱させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】作業車の側面図である。
【図2】図1の作業車のフロントローダを前斜め上方から見た図である。
【図3】ブームの側面断面図である。
【図4】図3のA−A線矢示断面図である。
【図5】(a)はブーム及び非使用時のスタンドを左右方向中央部からみた側面図、(b)はスタンドの連結部材で油圧配管を覆っている部分の拡大断面である。
【図6】(a)は右側スタンド部材の非使用位置での枢支部分の側面図、(b)は右側スタンド部材の使用位置での枢支部分の側面図、(c)左側スタンド部材の非使用位置での枢支部分の側面図は、(d)は左側スタンド部材の使用位置での枢支部分の側面図である。
【図7】(a)はスタンドの平面図、(b)は右側スタンド部材の枢支部分の一部断面拡大図、(c)は左側スタンド部材の枢支部分の一部断面拡大図である。
【図8】フロントローダを取り外した状態を示す側面図である。
【図9】(a)ブームの基部の側面断面図、(b)はブームの先端部の側面断面図である。
【図10】取付フレーム及びサイドフレームの側面図である。
【図11】取付フレーム及びサイドフレームの正面図である。
【図12】(a)はメインフレームとサイドフレームとにわたってマウントピンを挿通した状態の側面図、(b)はマウントピンをメインフレーム及びサイドフレームから抜脱してメインフレームに保持した状態の側面図である。
【符号の説明】
【0039】
2 トラクタ(走行車輌)
8 ブーム
9 バケット(作業具)
14 ブーム連結体
26 油圧配管
27 油圧配管
53 スタンド
54 スタンド部材
54A 前構成部材
54B 後構成部材
55 連結部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車輌(2)に着脱自在に取り付けられた左右一対のブーム(8)と、この左右ブーム(8)の先端側に設けた作業具(9)と、前記ブーム(8)を走行車輌(2)から取り外した際に前記作業具(9)を接地させた状態でブーム(8)を支えるスタンド(53)とを備え、スタンド(53)は左右のブーム(8)に対応して設けられた左右一対のスタンド部材(54)を備え、左右のスタンド部材(54)は、ブーム(8)から下方側に突出して接地し該ブーム(8)を支える使用位置と、ブーム(8)に沿う非使用位置とに位置変更自在にブーム(8)に取り付けられており、且つ左右のスタンド部材(54)は連結部材(55)によって連結されていることを特徴とする作業車。
【請求項2】
左右のブーム(8)はブーム長手方向中途部でブーム連結体(14)によって連結され、前記左右スタンド部材(54)を連結する連結部材(55)は、非使用位置においてこのブーム連結体(14)に沿うように位置して該ブーム連結体(14)に沿って設けられた油圧配管(26,27)を下側から覆うことを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
左右のスタンド部材(54)は、連結部材(55)の前側に位置する前構成部材(54A)と、連結部材(55)の後側に位置する後構成部材(54B)とに分割されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車。
【請求項1】
走行車輌(2)に着脱自在に取り付けられた左右一対のブーム(8)と、この左右ブーム(8)の先端側に設けた作業具(9)と、前記ブーム(8)を走行車輌(2)から取り外した際に前記作業具(9)を接地させた状態でブーム(8)を支えるスタンド(53)とを備え、スタンド(53)は左右のブーム(8)に対応して設けられた左右一対のスタンド部材(54)を備え、左右のスタンド部材(54)は、ブーム(8)から下方側に突出して接地し該ブーム(8)を支える使用位置と、ブーム(8)に沿う非使用位置とに位置変更自在にブーム(8)に取り付けられており、且つ左右のスタンド部材(54)は連結部材(55)によって連結されていることを特徴とする作業車。
【請求項2】
左右のブーム(8)はブーム長手方向中途部でブーム連結体(14)によって連結され、前記左右スタンド部材(54)を連結する連結部材(55)は、非使用位置においてこのブーム連結体(14)に沿うように位置して該ブーム連結体(14)に沿って設けられた油圧配管(26,27)を下側から覆うことを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
左右のスタンド部材(54)は、連結部材(55)の前側に位置する前構成部材(54A)と、連結部材(55)の後側に位置する後構成部材(54B)とに分割されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−207235(P2006−207235A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20085(P2005−20085)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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