説明

作物選別機

【課題】分級処理対象である搬送物中の混入小片等による誤検出や選別区分への小片の混入を防止できる作物選別機を提供することにある。
【解決手段】作物選別機は、搬送線(R)沿って洗浄作物を後工程に供給する洗浄処理部(2)と、受けた洗浄作物をその形質区分に応じて対応する等級区分先に切替搬送する分級処理部(3)とから構成され、上記搬送線(R)に受けた洗浄作物から分級対象範囲に選別して後工程に供給する前選別処理部(1)と、その洗浄作物の外観検出により所定の適格性を判別する適否判別装置(5a)とを設け、これら前選別処理部(1)および適否判別装置(5a)を上記分級処理部(3)より搬送上手側に配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄処理部と分級処理部とを備えてニンジン等の収穫野菜を形質等級別に区分する作物選別機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2に記載された洗浄選別装置は、洗浄機で洗浄された作物が整列搬送機を経由して等級選別機に送られることにより、収穫した人参等の作物を重量や形状毎に選別区分することができる。また、選別規格外の作物は、搬送終端部に設置する回収容器に回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−087092号公報
【特許文献2】特許第4285274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、洗浄機による洗浄処理物が全て整列搬送機を経由して等級選別機に送られることから、通常の商品として取り扱われない規格外の作物も等級選別機で選別される。例えば、等級区分範囲の最小規格(2Sまたは3S)よりも小さい作物(3Sまたは4S)や折れたり割れたりした作物の破片が等級選別機に送られ、複数の搬送物が集合したまままとまって搬送移動されると、集合状態で等級判定されて対応する区分に選別されてしまい、誤選別となるのみならず、作業者が混入物を手操作により取り除かねばならないという問題がある。
そして、搬送終端部に設置する回収容器で受ける選別規格外の作物は、作物の破片が混在するため、小さな作物と破片をわける場合には、人手で分別作業を行う必要があるので、作業者の労力が増大する問題がある。
【0005】
本発明の目的は、分級処理対象である搬送物中の混入小片等による誤検出や選別区分への小片の混入を防止できる作物選別機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、搬送線(R)に沿って洗浄作物を後工程に供給する洗浄処理部(2)と、受けた洗浄作物をその形質区分に応じて対応する等級区分先に切替搬送する分級処理部(3)とからなる作物選別機において、上記搬送線(R)に受けた洗浄作物から分級対象範囲に選別して後工程に供給する前選別処理部(1)と、その洗浄作物の外観検出により所定の適格性を判別する適否判別装置(5a)とを設け、これら前選別処理部(1)および適否判別装置(5a)を上記分級処理部(3)より搬送上手側に配置したことを特徴とする。
【0007】
前選別処理部により、搬送路上の極端に小さい作物や割れた作物の破片等の分級対象範囲外のものがまとめて取り除かれ、残余の分級対象範囲のものが分級処理部に供給される。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明の構成において、前記前選別処理部(1)は、並列配置した左右の搬送ベルト(4)の両搬送面をV字溝状に対向し、溝下端を開いて落下口(4a)を形成し、この落下口(4a)に臨んで落下物を受ける回収体(4b)を設けたことを特徴とする。
並列配置の左右の搬送ベルトの搬送面を傾斜させてV字溝状の搬送路を形成することにより、搬送路の上側ほど左右の搬送ベルトの左右間隔が広くなるので、左右の搬送ベルトの下端部の落下口の開きより大きい物は搬送作物が左右の搬送ベルトの上端部から下端部までのどこかに接触して搬送支持され、また、落下口の開きより小なる物は下端部から落下する。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2の構成において、前記落下口(4a)は、搬送終端側の幅寸法を次第に広く形成したことを特徴とする。
前選別処理部の落下口を搬送終端側に向かって次第に広く形成したことにより、搬送物の大きさに応じた落下口の幅寸法位置で落下するので、落下位置が前選別処理部の搬送終端部に移動するまでの範囲に分散されて落下排出される。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項2または3の構成において、前記前選別処理部(1)は、左右の搬送ベルト(4)を夫々速度制御可能に構成し、かつ、前記適否判別装置(5a)を前選別処理部(1)の搬送始端側の俯瞰位置に配置し、この前記適否判別装置(5a)によって検出した搬送ベルト(4)上の搬送物の外形から搬送姿勢を判定し、搬送方向に長い整列形状に該当しない場合に、左右の搬送ベルト(4)の左右速度に差をつけて搬送することを特徴とする。
適否判別装置の外観検出により、搬送中の作物の搬送姿勢が適正でない場合に左右の搬送ベルトの左右の搬送速度を異ならせることにより、搬送物の姿勢が整えられる。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4の構成において、前記適否判別装置(5a)の位置から前記前選別処理部(1)の搬送終端部までの範囲内に第2の適否判別装置(5b)を配置したことを特徴とする。
前記適否判別装置よりも搬送方向下手側に第2の適否判別装置を設け、設けたことにより、一度目の姿勢修正の後に再度前選別処理部の左右の搬送速度に差をつけて再度の姿勢修正が可能となる。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項4の構成において、前記左右の搬送ベルト(4)から搬送物を引継いで左右同速搬送する第2の左右の搬送ベルト(7)を設けたことを特徴とする。
左右の搬送ベルトに直列して左右同速の搬送ベルトを配置したことから、前側の搬送ベルトの左右の搬送速度差によって搬送姿勢が修正され、この搬送物は、後側の左右同速の搬送ベルト遅滞なく搬送終端部まで案内される。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1から6の構成において、前記前選別処理部(1)は、互いに異径のプーリ(21〜23)による複数の搬送ベルト(21a〜23a)を回転軸線方向に多段に隣接して配置し、かつ、下段側のプーリが上段側より大径かつ低速周回可能にV字溝状の搬送面を形成したことを特徴とする。
駆動プーリと従動プーリを上下方向に並べることにより、プーリ軸を傾斜姿勢にすることなくV字溝状の搬送面が形成され、その下段側ほど大径で周回速度を遅く構成することにより、選別物が外径寸法に応じた速度で搬送される。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項1から7の構成において、前記前選別処理部(1)を搬送方向に上り傾斜させ、その傾斜下端側を洗浄処理部(2)の搬送終端下部に、また傾斜上端側を分級処理部(3)の搬送始端上部に配置したことを特徴とする。
前選別処理部は洗浄処理部の搬送終端下部から洗浄作物を受け、前選別処理しつつ上り傾斜で分級処理部に上方から分級対象物を供給し、また、前選別処理部の下方に広い空間部が確保される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明により、前選別処理部1が、搬送路上の極端に小さい作物や割れた作物の破片等の分級対象範囲外のものが取り除かれて分級処理部に供給されるので、分級処理部が誤検出による分級異常を起こすことが防止され、選別精度の向上によって作業者の労力が軽減され、また、前選別処理部1から等級外の作物としてまとめて回収することができるので、処分等の取扱いが容易になる。
【0016】
請求項2の発明により、請求項1の効果に加え、並列配置の左右の搬送ベルトの搬送面を傾斜させてV字溝状の搬送路を構成することにより、搬送路の上側ほど左右の搬送ベルトの左右間隔が広くなるので、搬送作物を左右の搬送ベルトの上端部から下端部までのどこかに接触させて搬送することができるので、大きな作物が前選別処理部から機外に転げ落ちて、落下の衝撃で傷付くことを防止でき、作物の商品価値が向上する。
また、左右の搬送ベルトの下端部の開きより小なる物が落下口から落下することにより、前選別処理部の搬送中に等級外の作物を取り除くことができるので、分級処理部に等級外の作物が混入して誤検知を発生させることが防止され、分級精度が向上する。
【0017】
請求項3に係る発明により、請求項2の効果に加え、前選別処理部の落下口を、搬送終端側ほど広く形成したことにより、搬送物の大きさに応じた落下口の幅寸法位置で落下するので、落下位置が前選別処理部の搬送終端部に移動するまでの範囲に分散され、一部に集中することなく確実な落下排出により選別精度が向上する。
【0018】
請求項4に係る発明により、請求項2または3の効果に加え、適否判別装置の外観検出により、搬送中の作物の搬送姿勢が適正でない場合に左右の搬送ベルトの左右で搬送速度を異ならせることにより、搬送物の姿勢を整えて後工程の作業に合わせることができるので、後工程の作業能率や選別精度が向上する。
【0019】
請求項5に係る発明により、請求項4の効果に加え、前記適否判別装置よりも搬送方向下手側に第2の適否判別装置を設けことにより、一度目の姿勢修正のあと、再び作物の搬送姿勢が乱れていた場合、再度前選別処理部の左右の搬送速度に差をつけて姿勢修正を行なうことができるので、後工程の作業能率や選別精度が向上する。
【0020】
請求項6に係る発明により、請求項4の効果に加え、前後に直列配置の搬送ベルトは、適否判別装置が作物の搬送姿勢の異常を検出すると、前側の搬送ベルトの左右の搬送速度差によって搬送姿勢が修正され、この搬送物を、後側の第2の搬送ベルトが左右同速で搬送終端部まで案内することができるので、搬送姿勢が安定すると共に、送り出される作物の停滞が無く、作業能率が向上する。
【0021】
請求項7に係る発明により、請求項1から6の効果に加え、駆動プーリと従動プーリを上下方向に並べ、下段側ほど大径で周回速度を遅く構成することにより、選別物を外径寸法に応じた速度で搬送することができるので、作物の搬送が停滞することが防止され、作業能率が向上する。
また、複数の作物が大きさ別に異なる速度で分散して搬送されるので、部分集中によって落下口が詰まる事態が防止されるため、後工程の作業に不適切な作物(規格外の小物、破片など)が確実に除去され、選別精度が向上する。
また、プーリ軸を傾斜姿勢にすることなくV字溝状の搬送面を構成することができるので、構成が簡潔になり、メンテナンス性が向上する。
【0022】
請求項8に係る発明により、請求項1から7の効果に加え、前選別処理部は洗浄処理部の搬送終端下部から洗浄作物を受け、前選別処理しつつ上り傾斜で分級処理部に上方から分級対象物を供給することから、前後の引き継ぎの際に搬送経路上から作物が脱落することが防止され、作業能率が向上すると共に、作業の自動化及び無人化が図られる。
また、前選別処理部の下方に広い空間部が確保されるため、深底で容量の大きな回収体を配置できるので、貯留された等級外の作物や作物の破片を回収する頻度が減少し、作業能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】作物選別機の要部平面図(a)および要部側面図(b)
【図2】図1の作物選別機の要部正面図
【図3】前選別処理部の別の構成例の要部拡大平面図
【図4】搬送物の投入態様(a〜d)と搬送制御
【図5】多段構成型搬送ベルトの横断面図
【図6】複列構成型搬送ベルトの横断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本件の作物選別機は、図1のレイアウトの要部平面図(a)および要部側面図(b)と図2の要部正面図に示すように、前選別処理部1を挟んでその投入側の洗浄処理部2と排出側の分級処理部3とから構成される。
【0025】
洗浄処理部2は選別対象物であるニンジン等の投入野菜を洗浄して2本の搬送線R、Rの位置の左右のドア口2a,2aから次工程の前選別処理部1に供給し、この前選別処理部1で分級範囲外の搬送物を分離除外した上で前選別処理部1の排出側から分級処理部3に供給する。分級処理部3は、2本の搬送線構成のベルト式整列装置から始まり、その下手側に続く不図示の等級検知装置の検出情報に基づいて等級区分別に動作する押出機構により搬送路を切替えることにより、分級範囲に限定された分級仕分けを行う。
【0026】
前選別処理部1について詳細に説明すると、洗浄処理部2の側の投入端から分級処理部3の側の排出端に至る2本の搬送線R、Rについて、所定寸法以上の物に限って排出端に搬送可能に構成する。例えば、それぞれの左右に並列した左右傾斜の搬送ベルト4,4で搬送面をV字溝状に構成するとともに、両者間に所定の距離を空けて下端を落下口4aとし、その落下物を受ける回収体4bを配置する。
【0027】
また、各搬送線R,Rの投入側および中央付近を俯瞰するそれぞれの位置に前後のカメラ5a,5bによる適否判別装置を設ける。このカメラによる判別のために、搬送ベルト4,4は、例えば、ニンジンの赤色との色差を大きくするようにダーク系の黒や、紺、緑などの色ベルトを使用し、カメラ5a,5bの画像信号により搬送物の長手方向による姿勢判別ができるように構成して搬送物の整列制御を行う。
【0028】
搬送物の整列制御は、前側のカメラ5aにより背景となるベルト色と搬送物の色差が搬送方向に対して横長の場合に横断姿勢と判定し、左右の搬送ベルト4,4を異なる速度で搬送して搬送物の長手方向を搬送方向に揃える。確実な整列のために、速度差が0〜2.5の速比の範囲を速度可変に構成し、縦方向に整列した時点で左右同速に戻すように搬送ベルト4,4を制御する。また後側のカメラ5bにより再チェックし、必要により再度の整列制御を行う。
【0029】
上記構成のように、洗浄処理部2と分級処理部3との間に前選別処理部1を挟んで作物選別機を構成し、前選別処理部1により搬送線R上に受けた目的物から規格外品を除外して搬送し、また、適否判別装置5aにより搬送物の外観から所定の適格性を判別することにより、搬送路上の極端に小さい作物や割れた作物の破片を取り除いてから分級処理部3で等級選別するので、分級処理部3における誤検出が防止され、選別精度の向上によって後選別対応の作業者の労力が軽減され、また、前選別処理部1から等級外の作物としてまとめて回収することができるので、処分等の取扱いが容易になる。
さらに、カメラ5a等による適否判別装置を設けたことにより、作物が選別等に適したものであるか否かを判断することができるので、後工程に不適切な作物を迅速に除去可能となる。
【0030】
また、前選別処理部1は、並列配置した左右の搬送ベルト4,4の両搬送面をV字溝状に対向し、溝下端を所定の距離に開いて落下口4aを形成したことにより、等級区分範囲内の作物は、左右の搬送ベルト4,4の上端部から下端部までのどこかに接触させて搬送することができるので、搬送中の作物が前選別処理部1から機外に転げ落ちて、落下の衝撃で傷付くことを防止でき、作物の商品価値を確保することができる。
また、左右の搬送ベルト4,4の下端部の落下口4aからその幅寸法内の小物が落下することにより、前選別処理部1の搬送中に等級外の作物を取り除くことができるので、分級処理部3に等級外の作物が混入して誤検知を発生させることが防止され、選別精度が向上する。
【0031】
この場合において、落下口4aについて、その下手側ほど左右の搬送ベルト4,4の左右間隔を広く形成し、落下物を受ける回収体4bを設けることにより、落下物は、その大きさに応じた位置で順次落下することから前選別処理部1の搬送終端部に移動する範囲に分散され、等級外の作物を確実に取り除くことができ、選別精度が向上する。
【0032】
上記カメラ5a,5b等による適否判別装置については、姿勢判定に応じて左右の搬送ベルト4,4を変速制御して姿勢整列することができる。すなわち、左右の搬送ベルト4,4夫々速度制御可能に構成し、前記適否判別装置5aを前選別処理部1の搬送始端側の俯瞰位置に配置し、検出した搬送ベルト4,4上の搬送物の外形から搬送姿勢を判定し、搬送方向に長い整列形状に該当しない場合に、搬送ベルト4,4の左右速度に差をつけて搬送するように制御する。例えば、搬送方向に長い場合は正常として左右同速のまま搬送を続け、直交方向に長い場合は横向状態のため落下漏れの可能性があり、また、広がりが所定範囲以上の場合は複数の作物の密集状態の可能性があることから、左右間の速度差により、横向きから搬送方向に揃え、また、集合体を分散させることができる。
【0033】
このように、適否判別装置の5aの外観検出により、搬送中の作物の搬送姿勢が適正でない場合に前選別処理部1の左右で搬送速度を異ならせることにより、搬送速度の差で搬送中の作物の姿勢を搬送方向に従う方向にすることができるので、後工程の作業能率や選別精度が向上する。
【0034】
(前後直列型搬送ベルト)
また、前選別処理部1の別の構成例として、図3の要部拡大平面図に示すように、前記同様の搬送ベルトを前後に直列配置する。すなわち、引き離し性をよくして搬送物の確実な姿勢整列を行うために、前側の搬送ベルト6,6と後側の搬送ベルト7,7を直列し、前側を左右で異なる搬送速度に制御し、後側をそれより高速で左右同速に構成する。
【0035】
また、別の構成例として、搬送ベルトの左右の一方のみを可変速に構成することにより、前記同様に搬送物を搬送方向に沿って整列することができる。特に、2本の搬送線R、Rの外側を可変速ベルトとすることにより、ベルト交換やメンテナンスの容易化が可能となる。
【0036】
また、2本の搬送線R、Rの外側を始端側の可変速ベルト11aと終端側の定速ベルト11bによって構成し、これら両ベルト11a,11bの直列長さ寸法の定速ベルト12によって内側を構成する。内側の定速ベルト12と外側終端側の定速ベルト11bは同速とし、可変速ベルト11は両定速ベルト12,11bに対して遅くも速くも変速可能に構成する。
【0037】
上記構成の前選別処理部1においては、図4の搬送物の投入態様(a〜d)に示すように、ニンジン等の2つの搬送物A,Bが重なって投入された場合に、外側の搬送物Aが内側の搬送物Bより後行する時(a)は、外側の可変速ベルト11aを減速制御し、逆に、外側の搬送物Aが内側の搬送物Bより先行する時(b)は、外側の可変速ベルト11aを増速制御することによりいずれも前後に分離して搬送することができる。
【0038】
また、ニンジン等の搬送物Aが斜め姿勢で投入された場合に、搬送物Aの外側端が内側端より後行する時(c)は、外側の可変速ベルト11aを減速制御し、逆に、搬送物Aの外側端が内側端より先行する時(d)は、外側の可変速ベルト11aを増速制御することによりいずれも長手方向を搬送方向に揃えることができる。
【0039】
(多段構成型搬送ベルト)
次に、前選別処理部1の左右に並列した搬送ベルトのプーリ軸を左右傾斜無しに構成する例として、図5の横断面図に示すように、左右それぞれを多段隣接の上下の複数搬送ベルトによって構成する。詳細には、互いに異径のプーリ21,22,23による複数の搬送ベルト21a,22a,23aを回転軸線方向に多段に隣接配置し、かつ、上段側のプーリがより小径で傾斜搬送面を形成し、これを両搬送線R,Rのそれぞれについて左右に配置してV字溝状の搬送面を多段構成の搬送ベルトにより構成する。
【0040】
搬送物はその径寸法に応じて上記前選別処理部1のV字溝内の深さ位置に支持されることから、V字溝の深さ位置と対応して複数の搬送ベルト21a,22a,23aの搬送速度を変えることにより、搬送物を停滞することなく、その径寸法に応じた速度で搬送することができる。
【0041】
このように、前選別処理部1は、互いに異径のプーリによる複数の搬送ベルトを回転軸線方向に多段に配置し、かつ、下段側のプーリがより大径で低速周回可能に互いに隣接して左右それぞれの搬送ベルトを構成し、駆動プーリと従動プーリを上下方向に並べ、下段側ほど大径で周回速度を遅く構成することにより、選別物を外径寸法に応じた速度で搬送することができるので、作物の搬送が停滞することが防止され、作業能率が向上する。
また、複数の作物が分散して搬送されるので、一箇所に集まって落下口4aから作物が落下しなくなることが防止されるため、後工程の作業に不適切な作物(規格外の小物、破片など)が確実に除去され、選別精度が向上する。
また、駆動プーリ及び従動プーリを傾斜姿勢にすることなく前選別処理部1を断面視V型に構成することができるので、構成が簡潔になり、メンテナンス性が向上する。
【0042】
上記構成の前選別処理部1においては、下段の搬送ベルト21aは、スポンジベルトとすることにより、下端の隙間を保ちやすく、かつ、保持力を確保することができる。また、中段の搬送ベルト22aは、下段の搬送ベルト21aの形状に連続するように、下方に広がる台形の断面形状とすることにより、搬送頻度の高い中間サイズの搬送物の保持搬送を容易にすることができる。上段の搬送ベルト23aは大きな搬送物を保持するために、一般的な台形ベルトで構成する。
【0043】
また、上段のプーリ23は、その上側に別のプーリを接続可能に構成し、数が多い小径の搬送物を速く搬送するために下段のプーリ21を特に大径に形成し、これら多段構成のプーリ21,22,23を串刺し式に一体に構成する。このように前選別処理部1を構成することにより、ニンジン等の一端が細い搬送物について細い側を高速で搬送することから、細い側を先頭とする一定姿勢に揃えて整列することができる。
【0044】
(複列型搬送ベルト)
次に、複列型搬送ベルトの例を説明すると、図6の横断面図に示すように、左右それぞれが同一傾斜面内で互いに隣接する複列配置の搬送ベルト31,31を個別変速可能に構成し、その左右の傾斜によりV字溝状の搬送面を形成することにより、左右それぞれについて溝深さ区分別の変速が可能となる。
【0045】
上記構成の前選別処理部1において、溝底側の左右の下段の搬送ベルト31,31を低速搬送制御することにより、選別対象に多くの小径物が含まれる場合でも下端開口4aから確実に落下分離することができ、一方、上段の高速の搬送ベルト31,31は、小径物の上方で大径物を高速搬送することから、大小の分離性を確保することができる。
【0046】
また、前選別処理部1と前後の洗浄処理部2、分級処理部3との接続については、漏れのない引継ぎのために、前選別処理部1を搬送方向に上り傾斜させ、その搬送始端側を洗浄処理部2の搬送終端下部に、また搬送終端側を分級処理部3の搬送始端上部に配置して作物選別機を構成する。
【0047】
このように前後連結構成することにより、前選別処理部1は洗浄処理部2の搬送終端下部から洗浄作物を受け、選別処理しつつ上り傾斜で分級処理部3にその上方から分級対象物を供給することから、前後の引き継ぎの際に搬送経路上から作物が脱落することが防止され、作業能率が向上すると共に、作業の自動化及び無人化が可能となる。
また、前選別処理部1の下方に広い空間部が確保されるため、深底で容量の大きな回収体4bを配置できるので、貯留された等級外の作物や作物の破片を回収する頻度が減少し、作業能率が向上する。
【符号の説明】
【0048】
1 前選別処理部
2 洗浄処理部
3 分級処理部
4 搬送ベルト
4a 落下口
4b 回収体
5a カメラ(適否判別装置)
5b カメラ(適否判別装置)
6 搬送ベルト
7 搬送ベルト
11 搬送ベルト
11a 搬送ベルト
11b 搬送ベルト
12 搬送ベルト
21〜23 プーリ
21a〜23a 搬送ベルト
31 搬送ベルト
A 搬送物
B 搬送物
R 搬送線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送線(R)に沿って洗浄作物を後工程に供給する洗浄処理部(2)と、受けた洗浄作物をその形質区分に応じて対応する等級区分先に切替搬送する分級処理部(3)とからなる作物選別機において、
上記搬送線(R)に受けた洗浄作物から分級対象範囲に選別して後工程に供給する前選別処理部(1)と、その洗浄作物の外観検出により所定の適格性を判別する適否判別装置(5a)とを設け、これら前選別処理部(1)および適否判別装置(5a)を上記分級処理部(3)より搬送上手側に配置したことを特徴とする作物選別機。
【請求項2】
前記前選別処理部(1)は、並列配置した左右の搬送ベルト(4)の両搬送面をV字溝状に対向し、溝下端を開いて落下口(4a)を形成し、この落下口(4a)に臨んで落下物を受ける回収体(4b)を設けたことを特徴とする請求項1記載の作物選別機。
【請求項3】
前記落下口(4a)は、搬送終端側の幅寸法を次第に広く形成したことを特徴とする請求項2記載の作物選別機。
【請求項4】
前記前選別処理部(1)は、左右の搬送ベルト(4)を夫々速度制御可能に構成し、かつ、前記適否判別装置(5a)を前選別処理部(1)の搬送始端側の俯瞰位置に配置し、この前記適否判別装置(5a)によって検出した搬送ベルト(4)上の搬送物の外形から搬送姿勢を判定し、搬送方向に長い整列形状に該当しない場合に、左右の搬送ベルト(4)の左右速度に差をつけて搬送することを特徴とする請求項2または3に記載の作物選別機。
【請求項5】
前記適否判別装置(5a)の位置から前記前選別処理部(1)の搬送終端部までの範囲内に第2の適否判別装置(5b)を配置したことを特徴とする請求項4記載の作物選別機。
【請求項6】
前記左右の搬送ベルト(4)から搬送物を引継いで左右同速搬送する第2の左右の搬送ベルト(7)を設けたことを特徴とする請求項4記載の作物選別機。
【請求項7】
前記前選別処理部(1)は、互いに異径のプーリ(21〜23)による複数の搬送ベルト(21a〜23a)を回転軸線方向に多段に隣接して配置し、かつ、下段側のプーリが上段側より大径かつ低速周回可能にV字溝状の搬送面を形成したことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の作物選別機。
【請求項8】
前記前選別処理部(1)を搬送方向に上り傾斜させ、その傾斜下端側を洗浄処理部(2)の搬送終端下部に、また傾斜上端側を分級処理部(3)の搬送始端上部に配置したことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の作物選別機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−43128(P2013−43128A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182831(P2011−182831)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】