説明

作用物質、組成物および方法

本発明は、医療における使用のための作用物質、組成物および方法に関する。具体的には、本発明は、医療における、具体的には、癌の治療および診断における使用のための、Kuタンパク質に選択的に結合することが可能な結合部分を含む作用物質に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療における使用のための作用物質、組成物および方法に関する。具体的には、本発明は、医療における、具体的には癌の治療における使用のための、Kuタンパク質に選択的に結合することが可能な結合部分を含む作用物質に関する。
【背景技術】
【0002】
治療における妥当性を有するためには、腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞の表面では発現するが、非形質転換性の細胞上では発現しないべきであるか、あるいは、または著しく低い程度にのみ発現すべきである。細胞表面受容体は、癌の抗体に基づいた治療のための重要な標的である。抗体が結合すると、標的である膜結合型抗原は、シグナル伝達、たとえば、アポトーシスの開始を細胞内に伝える(Shanら1998年; Franssonら2006年)、または、受容体介在性エンドサイトーシスにより内部移行される(Liuら2004年; Franssonら2004年)可能性がある。抗体会合後の受容体の内部移行により、抗体医薬コンジュゲート(Wu, 2005年)または抗体介在性遺伝子治療(Zhangら2002年)などの広範囲な治療介入に対する門戸が開かれることとなった。
【0003】
Kuタンパク質は、Ku70およびKu80と呼ばれる2つの緊密に関連したサブユニットのヘテロダイマーであり、通常核内に位置しており、そこでDNA二本鎖切断(DSB)を修復することを司る非相同末端結合過程に関与している。Kuは損傷DNAに結合し、DNA依存性タンパク質キナーゼ(DNA-PKC)の触媒サブユニットを動員し、最終的にはDSB修復酵素の会合を誘導する(Lieberら2003年)。したがって、Ku欠失のあるトランスジェニックマウスは、DSB修復の欠損が原因で、細胞増殖の深刻な欠損および電離放射線に対する過感受性を示す(Lees-MillerとMeek, 2003年)。
【0004】
Kuタンパク質がもっぱら核に局在化していることは、Kuが腫瘍株化細胞表面で発現することを実証する研究により再評価されてきた。形質転換細胞における細胞膜でのKuの発現(Prabhakarら1990年)が、癒着、転移および浸潤に関与している(Mullerら2005年で概説されている)と思われるために(後者の活性がKuとメタロプロテイナーゼ9間の特異的相互作用により媒介されていることは、最近明らかにされた(Monferranら2004年))、Kuは多能性であることが明らかにされている。さらに、サイトゾル中では、Ku70はアポトーシス促進性タンパク質Baxと相互作用し、そのミトコンドリア転位を妨げる。このことから、Ku70がBax媒介アポトーシスを抑制することが示唆されている(Sawada, Mら2003年)。したがって、Kuは、両方とも腫瘍進行の重要な特徴である、生存促進性ならびに浸潤促進性過程に関与していると思われ(HanahanとWeinberg, 2000年)、いくつかのヒト株化細胞に関して報告されているが、今までのところ原発性多発性骨髄腫に関してのみ報告されているだけである(Mullerら2005年; Taiら2002年)。ヒト非形質転換細胞上では、Ku70の発現は、ヒト臍帯静脈内皮細胞および単球由来マクロファージ上のみで検出されている(Ginisら1995年; Monferranら2004年)。
【特許文献1】国際公開第96/06641号
【特許文献2】米国特許第4,348,376号
【特許文献3】国際公開第94/10323号
【特許文献4】米国特許第5,180,818号
【特許文献5】米国特許第5,168,053号
【特許文献6】米国特許第5,149,796号
【特許文献7】米国特許第5,116,742号
【特許文献8】米国特許第5,093,246号
【特許文献9】米国特許第4,987,071号
【特許文献10】欧州特許第0415731号
【特許文献11】米国特許第4,440,859号
【特許文献12】米国特許第4,530,901号
【特許文献13】米国特許第4,582,800号
【特許文献14】米国特許第4,677,063号
【特許文献15】米国特許第4,678,751号
【特許文献16】米国特許第4,704,362号
【特許文献17】米国特許第4,710,463号
【特許文献18】米国特許第4,757,006号
【特許文献19】米国特許第4,766,075号
【特許文献20】米国特許第4,810,648号
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、この度、驚くべきことに、Kuタンパク質が、抗体などの細胞外作用物質に結合すると内部移行されることを発見した。本発明者らは、Kuタンパク質の受容体介在性エンドサイトーシスは、迅速であり(t1/2 12分)、効果が著しく(100分後には、受容体プールの90%が細胞内部へ)、種々の起源の腫瘍細胞への細胞傷害性部分の侵入口として利用できることを明らかにした。この驚くべき発見は、Kuタンパク質の内部移行特性を、腫瘍細胞への細胞傷害性作用物質の送達のための侵入口として、ならびに選択的薬物送達および癌の治療において利用できることを示唆している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、第1の態様では、本発明は、医療における使用のためのKuタンパク質に選択的に結合することが可能な結合部分を含む作用物質を提供する。
【0007】
「作用物質」は、1つまたは複数の分子を含むあらゆる精製されたまたは単離された天然のもしくは化学的に合成された実在物を含む。好ましくは、前記用語は、1つもしくは複数のポリヌクレオチドおよび/または1つもしくは複数のポリペプチドおよび/または1つもしくは複数の小化学分子を含み、前記ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドおよび/または小化学分子は、化学基のイオン的および/または共有的付加により改変されていても改変されていなくてもよい。
【0008】
「結合部分」は、共有的および/またはイオン的相互作用により、別の分子もしくは分子群の領域もしくは領域群と可逆的におよび/または不可逆的に会合することが可能な本発明の作用物質の領域または領域群を含む。
【0009】
「選択的に結合する」は、本明細書に記載のKuタンパク質に、別のポリペプチドよりは少なくとも10倍強く、好ましくは少なくとも50倍強く、さらに好ましくは少なくとも100倍強く結合する本発明の作用物質の能力を含む。好ましくは、前記作用物質は、生理学的条件の下で、たとえば、インビボにおいてKuタンパク質に結合する。
【0010】
ヒト細胞では、Kuタンパク質は、それぞれKu70とKu80と名付けられた70kDaおよび80kDaサブユニットを含むヘテロダイマーであり、DNA二本鎖切断(DSB)の修復を司っている。「Kuタンパク質」は、ヒトKuタンパク質モノマーならびに/またはヒトKuタンパク質の相同体および/もしくは相同分子種を1つまたは複数含む天然または合成タンパク質、ならびに/または、本明細書に記載のヒトKuタンパク質に構造的におよび/もしくは機能的に同一のタンパク質ならびに/またはその天然変異体を含む。
【0011】
好ましくは、Kuタンパク質はヒトタンパク質であるが、(好ましくは、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、イヌおよびネコを含む農業的にまたは商業的に重要な)家畜哺乳類などのあらゆる哺乳動物由来でよい。「哺乳動物タンパク質」は、哺乳動物の1つまたは複数の細胞に存在し、由来し、かつ/またはそれから単離されるあらゆるタンパク質を含む。たとえば、用語「ヒトタンパク質」はヒトの1つまたは複数の細胞に存在し、由来し、かつ/またはそれから単離されるタンパク質を含む。
【0012】
好ましくは、本発明は、Kuタンパク質がKu-70モノマーおよび/またはKu-80モノマーを含む作用物質を提供する。さらに好ましくは、Kuタンパク質はヘテロダイマーであり、都合がよいのはKu-70/80ヘテロダイマーである。
【0013】
好ましくは、本発明は、Ku70タンパク質が配列番号1のポリペプチド配列を含み、かつ/もしくは配列番号3のポリヌクレオチド配列によりコードされ、ならびに/またはKu80タンパク質が配列番号2のポリペプチド配列を含み、かつ/もしくは配列番号4のポリヌクレオチド配列にコードされている作用物質を提供する。
【0014】
「天然変異体」は、たとえば、対立遺伝子多型を含む。典型的には、これらは所与の配列とは1つまたは2つまたは3つのアミノ酸残基のみが、典型的にはわずか10または20アミノ酸残基が異なるであろう。典型的には、前記変異体は同類置換を有する。
【0015】
本明細書に記載のポリペプチドの変異体は、配列番号1;配列番号2;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;および配列番号11を含む群から選択されるアミノ酸配列に少なくとも60%同一の、好ましくは前記配列の少なくとも70%または80%または85%または90%同一の、およびさらに好ましくは前記配列の少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を含むポリペプチドを含む。
【0016】
パーセント同一性は、たとえば、パラメーターとしてグローバルアラインメントオプション(global alignment option)、スコアリングマトリックス(scoring matrix) BLOSUM62、オープニングギャップペナルティー(opening gap penalty)-14、イクステンディングギャップぺナルティー(extending gap penalty)-4を使うエクスパシーファシリティーサイト(Expasy facility site)(http://www.ch.embnet.org/software/LALIGN form.html)のLALIGNプログラム(Huang and Miller, Adv. Appl. Math. (1991年) 12:337頁〜357頁)により決定することができる。あるいは、2つのポリペプチド間のパーセント配列同一性は、適切なコンピュータプログラム、たとえば、ウィスコンシン大学ジェネティックコンピューティンググループ(the University of Wisconsin Genetic Computing Group)のGAPプログラムを使って決定してよく、パーセント同一性は、その配列を至適に整列させたポリペプチドに対して算出されることが認識されるであろう。
【0017】
好ましくは、本発明は、Kuタンパク質が細胞表面に局在する、さらに好ましくは、Kuタンパク質が癌細胞表面に局在する作用物質を提供する。
【0018】
「細胞の表面に局在する」は、Kuタンパク質の1つまたは複数の領域が細胞表面の外面に存在しているように、Kuタンパク質が細胞に会合しているという意味を含む。たとえば、Kuタンパク質は、細胞外表面に提示された1つまたは複数の領域と共に細胞原形質膜に挿入されていても(すなわち、膜貫通タンパク質として位置を定められていても)よい。あるいは、共有的および/またはイオン的相互作用により、Kuタンパク質を細胞表面の特定の領域または領域群に局在化させて、Kuタンパク質全体が細胞の外側に存在してもよい。
【0019】
したがって、「癌細胞の表面」は、癌細胞または腫瘍に由来する、またはそれに特徴的である1つまたは複数の細胞に対するような形でKuタンパク質が局在化するという意味を含む。
【0020】
好ましくは、本発明は、Kuタンパク質ならびに/または作用物質およびKuタンパク質を含む複合体の細胞内内部移行を誘導し、かつ/または増加させることが可能である作用物質を提供する。
【0021】
「細胞内内部移行」は、分子を細胞の細胞外表面から細胞の細胞内表面に移動させる過程に関連する分子的、生化学的および細胞的事象を含む。分子の細胞内内部移行を司る過程は、分子生物学および細胞生物学の分野の当業者に公知であり、細胞外分子(ホルモン、抗体、および小有機分子など)、膜結合性分子(細胞表面受容体など)、ならびに細胞外分子に結合している膜結合性分子の複合体(たとえば、膜貫通受容体に結合しているリガンドまたは膜結合性分子に結合している抗体)の内部移行を含むことができる。
【0022】
したがって、「細胞内内部移行を誘導するおよび/もしくは増加させる」は、細胞内内部移行が開始される、ならびに/または細胞内内部移行の速度および/もしくは程度が増加される事象を含む。
【0023】
好ましくは、本発明は、細胞傷害性部分をさらに含み、さらに好ましくは、前記細胞傷害性部分が直接的にかつ/または間接的に細胞傷害性である作用物質を提供する。
【0024】
「直接的に細胞傷害性である」は、前記部分がそれだけで細胞傷害性である部分であるという意味を含む。「間接的に細胞傷害性である」は、前記部分が、それ自体は細胞傷害性ではないが、たとえば、追加の分子に対するその作用によりまたは追加の分子に対する追加の作用により、細胞傷害性を誘導することができる部分であるという意味を含む。
【0025】
都合のよいことには、前記細胞傷害性部分は、細胞内にあるときには細胞傷害性であり、好ましくは細胞外にあるときには細胞傷害性ではない。
【0026】
好ましくは、本発明は、前記細胞傷害性部分が直接的細胞傷害性化学療法薬である作用物質を提供する。場合によっては、前記細胞傷害性部分は、直接的細胞傷害性ポリペプチドである。細胞傷害性化学療法薬は当技術分野では公知である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
抗癌剤などの細胞傷害性化学療法薬には、メクロメタミン(HN2)、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)およびクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;エチレンイミンおよびヘキサメチルメラミン、チオテパなどのメチルメラミン;ブスルファンなどのスルフォン酸アルキル;カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)などのニトロソ尿素;ならびにダカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミダゾール-カルボキサミド)などのトリアゼンを含むアルキル化剤;メトトレキサート(アメトプテリン)などの葉酸類似物;フルオロウラシル(5-フルオロウラシル;5-FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン;FUdR)およびシタラビン(シトシンアラビノシド)などのピリミジン類似物;ならびにメルカプトプリン(6-メルカプトプリン;6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン;TG)およびペントスタチン(2'-デオキシコホルマイシン)などのプリン類似物および関連阻害剤などを含む代謝拮抗剤がある。天然産物には、ビンブラスチン(VLB)およびビンクリスチンなどのビンカアルカロイド;エトポシドおよびテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシン(マイトマイシンC)などの抗生物質;L-アスパラギナーゼなどの酵素;ならびにインターフェロンアルフェノムなどの生物学的応答調節物質がある。種々の作用物質には、シスプラチン(cis-DDP)およびカルボプラチンなどの白金配位錯体;ミトキサントロンおよびアントラサイクリンなどのアントラセンジオン;ヒドロキシ尿素などの置換尿素;プロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH)などのメチルヒドラジン誘導体;ミトタン(o,p'-DDD)およびアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制薬;タキソールおよび類似物/誘導体;ならびにフルタミドおよびタモキシフェンなどのホルモンアゴニスト/アンタゴニストがある。
【0028】
種々のこれらの作用物質は、以前から、抗体および他の標的部位送達作用物質に結合されているので、これらの作用物質を含む本発明の作用物質は、当業者により容易に作製されうる。たとえば、カルボジイミドコンジュゲーション(Bauminger & Wilchek (1980年) Methods Enzymol. 70、151頁〜159頁;参照により本明細書に組み込まれているものとする)を使って、ドキソルビシンを含む種々の作用物質を抗体またはペプチドにコンジュゲートさせてもよい。
【0029】
カルボジイミドは、一般式R1-N=C=N-R2(R1およびR2は脂肪族でも芳香族でもよい)を有する化合物基を含み、ペプチド結合の合成に使用される。調製方法は簡単で、比較的迅速であり、穏やかな条件の下で実施される。カルボジイミド化合物はカルボン酸基を攻撃して、それを遊離アミノ基のための反応部位に変える。
【0030】
水溶性カルボジイミドである1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)は、機能性部分を結合部分にコンジュゲートするのに特に有用であり、ドキソルビシンを腫瘍ホーミングペプチドにコンジュゲートするのに使うことができる。ドキソルビシンおよび結合部分のコンジュゲーションには、ドキソルビシンにより提供されるアミノ基と、抗体またはペプチドなどの結合部分により提供されるカルボキシル基の存在が必要である。
【0031】
ペプチド結合の直接形成のためにカルボジイミドを使うのに加えて、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルなどの活性エステルを調製するのにもEDCを使うことができる。したがって、アミノ基のみに結合するNHSエステルを使って、ドキソルビシンの単一アミノ基とのアミド結合の形成を誘導することができる。EDCとNHSを組み合わせた使用は、コンジュゲート形成の収率を増加させるためにコンジュゲーションに広く使われている(BaumingerとWilchek, 上記を参照, 1980年)。
【0032】
細胞傷害性部分を結合部分にコンジュゲートするための他の方法も使うことができる。たとえば、過ヨウ素酸ナトリウム酸化とそれに続く適切な反応物の還元的アルキル化を、グルタルアルデヒド架橋の利用と同じように、利用することができる。しかし、本発明のコンジュゲートを作製する方法の選択とは無関係に、結合部分がそのターゲティング能力を維持し、機能的部分がその関連機能を維持することを判定しなければならないことが認識されている。
【0033】
本発明の一実施形態では、細胞傷害性部分は、細胞死をもたらすあらゆる部分を含む細胞傷害性ペプチドまたはポリペプチド部分である。
【0034】
細胞傷害性ペプチドおよびポリペプチド部分は当技術分野では公知であり、たとえば、リシン、アブリン、シュードモナス外毒素、組織因子などがある。細胞傷害性ペプチドおよびポリペプチド部分を抗体などのターゲティング部分に連結するための方法も、当技術分野では公知である。細胞傷害作用物質としてのリシンの使用は、Burrows & Thorpe (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90、8996〜9000頁に記載されており、参照により本明細書に組み込まれているものとし、腫瘍の局在化血液凝固および梗塞をもたらす組織因子の使用は、Ranら(1998) Cancer Res. 58、4646〜4653頁およびHuangら(1997) Science 275、547〜550頁にすでに記載されている。Tsaiら(1995) Dis. Colon Rectum 38、1067〜1074頁はモノクロナール抗体にコンジュゲートされたアブリンA鎖を記載しており、参照により本明細書に組み込まれているものとする。他のリボソーム不活化タンパク質は、国際公開第96/06641号に細胞傷害作用物質として記載されている。シュードモナス外毒素も細胞傷害性ポリペプチド部分として使用してよい(たとえば、Aielloら(1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92、10457〜10461頁を参照されたい。この文献は参照により本明細書に組み込まれているものとする)。
【0035】
TNFαおよびIL-2などのある種のサイトカインも、細胞傷害性薬物として有用でありうる。
【0036】
ある種の放射性原子も、十分な用量を送達されたら細胞傷害性となりうる。したがって、細胞傷害性部分は、使用すると、十分な量の放射能を標的部位に送達して、細胞傷害性になる放射性原子を含んでいてよい。適切な放射性原子には、リン-32、ヨウ素-125、ヨウ素-131、インジウム-111、レニウム-186、レニウム-188もしくはイットリウム-90、または隣接細胞、オルガネラ、もしくは核酸を破壊するだけのエネルギーを放出する他のあらゆる同位体がある。好ましくは、本発明の作用物質中の放射性原子の同位体および密度は、4000cGy以上の線量(好ましくは、少なくとも6000、8000または10000cGy)が標的部位に、好ましくは標的部位の細胞およびそのオルガネラ、特に核に送達される程度のものである。
【0037】
放射性原子は、既知の方法で結合部分に結合してよい。たとえば、EDTAまたは別のキレート薬を結合部分に結合させて、それを使って111Inまたは90Yを結合させてよい。チロシン残基を125Iまたは131Iで直接標識してもよい。
【0038】
細胞傷害性部分は適切な間接的細胞傷害性ポリペプチドでもよい。特に好ましい実施形態では、間接的細胞傷害性ポリペプチドは、酵素活性を有し非毒性および/または相対的に非毒性のプロドラッグを細胞傷害性薬物に変換することができるポリペプチドである。結合部分が抗体である場合、この種のシステムは多くの場合ADEPT(抗体指示型酵素プロドラッグ療法)と呼ばれている。前記システムでは、結合部分が酵素的部分を患者の体内の所望の部位に移動させ、酵素がその部位に局在する時間をとった後、酵素の基質であるプロドラッグを投与し、触媒作用の最終産物が細胞傷害性化合物であることが必要とされる。このアプローチの目的は、所望の部位で薬物の濃度を最大にし、正常組織での薬物の濃度を最小にすることである(Senter, P. D.ら(1988) "Anti-tumour effects of antibody-alkaline phosphatase conjugates in combination with etoposide phosphate" Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85、4842〜4846頁; Bagshawe(1987) Br. J. Cancer 56、531〜2頁;およびBagshawe, K.D.ら(1988) "A cytotoxic agent can be generated selectively at cancer sites" Br. J. Cancer. 58、700〜703頁)。
【0039】
明らかに、Kuタンパク質に対する特異性のあるあらゆる結合部分は、この種の指向性を有する酵素プロドラッグ療法システムにおいて抗体に代わって使ってよい。たとえば、高度な安定性を有しながら多様性を特定の位置に導入することができる骨格構造を使って、結合部分を導くことができる分子ライブラリーを作製してよい。これらの中でもっともよく特徴付けられたものは、多様性に耐えうるフィブロネクチンドメインおよび58-アミノ酸大型タンパク質Aドメインである(Nygren and Uhlen, Scaffolds for engineering novel binding sites in proteins. Curr Opin Struct Biol. 1997 Aug; 7(4):463〜9頁)。使ってもよいもう1つの骨格構造は、種々の標的分子に対する高親和性特異的結合剤を作製するために使われてきたフィブロネクチン骨格を土台とする構造物である(WengらProteomics、2001、2:48〜57頁)。ある程度の多様性をもたらしうる他の分子ホールドもある。そのような例には、主要組織適合性複合体(MHC)クラスIおよびII分子があり、最近、「デフェンシン」と呼ばれる新規な種類の分子が、基本構造は類似しているが、それでも遺伝子ファミリーメンバー間で広範囲な配列多様性を抱えていることが同定された。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明は、細胞傷害性部分が非細胞傷害性プロドラッグを細胞傷害性薬物に変換することが可能である作用物質を提供する。
【0041】
本明細書に記載の標的化した酵素を用いたシステムの酵素およびプロドラッグは、以前提案された酵素およびプロドラッグのいずれでもよい。細胞傷害性物質は、アルキル化剤などのあらゆる既存の抗癌剤;DNAの間に介入する作用物質;ジヒドロ葉酸還元酵素、チミジン合成酵素、リボヌクレオチド還元酵素、ヌクレオシドリン酸化酵素もしくはトポイソメラーゼなどのあらゆる重要な酵素を阻害する作用物質;または他のあらゆる細胞構成要素と相互作用をすることにより細胞死をもたらす作用物質とすることができる。エトポシドはトポイソメラーゼ阻害剤の一例である。
【0042】
報告されているプロドラッグシステムには、大腸菌β-グルクロニダーゼにより活性化されるフェノールマスタードプロドラッグ(Wangら、1992 and Rofflerら、1991);ヒトβ-グルクロニダーゼにより活性化されるドキソルビシンプロドラッグ(Bossletら、1994);コーヒー豆α-ガラクトシダーゼにより活性化される追加のドキソルビシンプロドラッグ(Azoulayら、1995);コーヒー豆α-D-ガラクトシダーゼにより活性化されるダウノルビシンプロドラッグ(Gessonら、1994);大腸菌β-D-ガラクトシダーゼにより活性化される5-フルオロウリジンプロドラッグ(Abrahamら、1994);およびカルボキシペプチダーゼAにより活性化されるメトトレキサートプロドラッグ(たとえば、メトトレキサートアラニン)(Kuefnerら、1990, Vitolsら、1992 and Vitolsら、1995)を含む。これらおよび他のものは以下の表Aに含まれている。
【0043】
【表1】

【0044】
表AはBagshawe (1995) Drug Dev. Res. 34、220〜230頁を改作したものであり、この文献からこれらの種々のシステムの完全な参考資料が得られ、タキソール誘導体はRodrigues, M.L.ら(1995) Chemistry & Biology 2、223頁に記載されている。
【0045】
本発明の作用物質の酵素部分の一部を形成するための適切な酵素には、カルボキシペプチダーゼG、GIおよびG2 (グルタミル化マスタードプロドラッグ用に)、カルボキシペプチダーゼAおよびB(MTX-ベースプロドラッグ用に)、ならびにアミノペプチダーゼ(2-α-アミノアシルMTCプロドラッグ用に)などのエキソペプチダーゼ;たとえば、トロンボリシン(トロンビンプロドラッグ用に)などのエンドペプチダーゼ;ホスファターゼ(たとえば、アルカリホスファターゼ)またはスルファターゼ(たとえば、アリルスルファターゼ)(リン酸化または硫酸化プロドラッグ用に)などの加水分解酵素;ペニシリンアミダーゼおよびアリールアシルアミダーゼなどのアミダーゼ;β-ラクタマーゼなどのラクタマーゼ;β-グルクロニダーゼ(β-グルクロン酸アミドアントラサイクリン用に)、α-ガラクトシダーゼ(アミグダリン用に)およびβ-ガラクトシダーゼ(β-ガラクトースアントラサイクリン)などのグリコシダーゼ;シトシンデアミナーゼ(5FC用に)などのデアミナーゼ;ウロキナーゼおよびチミジンキナーゼ(ガンシクロビル用に)などのキナーゼ;ニトロ還元酵素(CB1954および類似物用に)、アゾ還元酵素(アゾベンゼンマスタード用に)およびDT-ジアホラーゼ(CB1954用の)などの還元酵素;グルコースオキシダーゼ(グルコース用に)、キサンチンオキシダーゼ(キサンチン用に)およびラクトペルオキシダーゼなどのオキシダーゼ;DL-ラセマーゼ、触媒抗体ならびにシクロデキストリンがある。
【0046】
好ましくは、プロドラッグは細胞傷害性薬物と比較して相対的に非毒性である。典型的には、プロドラッグは、適切なインビトロ細胞傷害性試験で測定した場合、細胞傷害性薬物の毒性の10%未満であり、好ましくはその毒性の1%未満である。
【0047】
プロドラッグを細胞傷害性薬物に変換することができる部分は、本発明の作用物質の残りの部分から独立して活性を有する可能性があるが、プロドラッグは、(a)本発明の作用物質の残りの部分と組み合わさった場合、および(b)本発明の作用物質が標的細胞に結合している、隣接しているまたは内部移行された場合にのみ、活性である必要がある。
【0048】
本発明の作用物質のそれぞれの部分がポリペプチドである場合、O'Sullivanら(1979) Anal. Biochem. 100、100〜108頁に一般的に記載されている方法など、ポリペプチドを架橋する従来の方法のいずれによっても2つの部分を互いに連結させてよい。たとえば、結合部分は、チオール基を混入させ、追加の部分を、そのチオール基と反応することが可能な二官能性作用物質(たとえば、ヨウ素酢酸のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHIA)またはN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP))と反応させてよい。たとえば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを使って実現されたアミドおよびチオエーテル結合は、通常は、ジスルフィド結合よりもインビボにおいて安定している。
【0049】
あるいは、前記作用物質は、組換えDNA技術(DNAが、互いに隣接しているかまたは前記作用物質の所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により隔てられている本発明の作用物質の2つの部分をコードするそれぞれの領域を含む)により融合化合物として作製してもよい。おそらく、前記作用物質の2つの部分は完全にまたは部分的に重複していてもよい。
【0050】
細胞傷害性部分は、放射線増感剤(radiosensitizer)でもよい。放射線増感剤には、フルオロピリミジン、チミジン類似物、ヒドロキシ尿素、ゲムシタビン、フルダラビン、ニコチンアミド、ハロゲン化ピリミジン、3-アミノベンズアミド、3-アミノベンゾジアミド、エタニクサドール、ピモニダゾールおよびミソニダゾールがある(たとえば、McGinnら(1996) J. Natl. Cancer Inst. 88、1193〜11203頁; Shewach & Lawrence (1996) Invest. New Drugs 14、257〜263頁; Horsman (1995) Acta Oncol. 34、571〜587頁; Shenoy & Singh (1992) Clin. Invest. 10、533〜551頁; Mitchellら(1989) Int. J. Radiat. Biol. 56、827〜836頁; Iliakis & Kurtzman (1989) Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 16、1235〜1241頁; Brown (1989) Int. J. Radiat: Oncol. Biol. Phys. 16、987〜993頁; Brown (1985) Cancer 55、2222〜2228頁を参照されたい)。
【0051】
その上、遺伝子、たとえばp53遺伝子またはサイクリンDの細胞内への送達は、その遺伝子を放射線感作することができる(Langら(1998) J. Neurosurg. 89、125〜132頁; Coco Martinら(1999) Cancer Res. 59、1134〜1140頁)。
【0052】
追加の部分は、照射すると、細胞傷害性になる、または細胞傷害性部分を放出する部分でよい。たとえば、ホウ素-10同位体は、適切に照射すると、細胞傷害性のα粒子を放出する(たとえば、Goldenbergへの米国特許第4,348,376号;Primusら(1996) Bioconjug, Chem. 7、532〜535頁を参照されたい)。
【0053】
同様に、細胞傷害性部分は、フォトフリンなどの光線力学的療法に有用な部分でもよい(たとえば、Doughertyら(1998) J. Natl. Cancer Inst. 90、889〜905頁を参照されたい)。
【0054】
追加の部分は、直接的にまたは間接的に細胞傷害性である核酸分子を含んでいてよい。たとえば、前記核酸分子は、標的部位に局在すると、細胞に入ってその細胞死をもたらすことができるアンチセンスオリゴヌクレオチドでもよい。したがって、前記オリゴヌクレオチドは、必須の遺伝子の発現を妨げるオリゴヌクレオチド、またはアポトーシスを引き起こす遺伝子発現の変化をもたらすオリゴヌクレオチドでもよい。あるいは、細胞傷害性部分は、直接的におよび/または間接的に細胞傷害性ポリペプチドをコードしている核酸分子である。
【0055】
適切なオリゴヌクレオチドの例には、bcl-2に対するオリゴヌクレオチド(Zieglerら(1997) J. Natl. Cancer Inst. 89、1027〜1036頁)、ならびにDNAポリメラーゼαおよびトポイソメラーゼIIαに対する(Leeら(1996) Anticancer Res. 16、1805〜1811頁)がある。
【0056】
ペプチド核酸は、従来の核酸に代わって有用でありうる (Knudsen & Nielsen (1997) Anticancer Drugs 8、113〜118頁を参照されたい)。
【0057】
追加の実施形態では、結合部分は、核酸を標的に送達するための送達媒体に含まれていてもよい。前記送達媒体は、適切な送達媒体ならどれでもよい。たとえば、核酸を含有するリポソームでもよいし、核酸を送達することができるウイルスまたはウイルス様粒子でもよい。これらの場合、結合部分は典型的には送達媒体の表面に存在している。たとえば、適切な抗体断片などの結合部分はリポソームの外表面に存在していてもよく、送達される核酸はリポソームの内部に存在していてもよい。別の例として、レトロウイルスまたはアデノウイルスベクターなどのウイルスベクターは、遺伝子操作して、結合部分をウイルス粒子に結合させ、またはウイルス粒子の表面に位置させ、その結果、ウイルス粒子を所望の部位に標的させることができる。典型的には、DNAがアデノウイルスまたはアデノウイルス様粒子内に坦持されている、国際公開第94/10323号に記載された改変アデノウイルスシステムなどの標的化した送達システムも公知である。Michaelら(1995) Gene Therapy 2、660〜668頁には、細胞選択性部分を線維タンパク質に付加するアデノウイルスの改変が記載されている。標的化したレトロウイルスも、本発明で使用するために利用することが可能であり、たとえば、特異的結合親和性を与える配列を既存のウイルスenv遺伝子に遺伝子工学的に挿入してもよい(遺伝子治療のためのこのおよび他の標的化したベクターの総説はMiller & Vile (1995) Faseb J. 9、190〜199頁を参照されたい)。
【0058】
結合部分が抗体である免疫リポソーム(抗体指向性リポソーム)を使ってもよい。免疫リポソームの調製のため、Martin & Papahadjopoulos (1982) J. Biol. Chem. 257、286〜288頁の方法に従って、MPB-PE(N-[4-(p-マレイミドフェニル)-ブチリル]-ホスファチジルエタノールアミン)を合成する。MPB-PEはリポソーム二重層に組み込まれ、抗体またはその断片をリポソーム表面へ共有結合させる。たとえば、DNAまたは他の遺伝子構築物の溶液中で前記リポソームを形成させ、続いて最大0.8MPaの窒素圧の下で細孔径0.6μmおよび0.2μmのポリカーボネイトろ過膜を介した連続押し出しにより、リポソームは、便利なことに、標的細胞への送達のためにDNAまたは他の遺伝子構築物が詰め込まれる。押し出し後、詰め込まれたDNA構築物は、45分間80000×gの超遠心分離により、遊離のDNA構築物から分離する。脱酸素緩衝液中の新たに調製したMPB-PE-リポソームは、新たに調製した抗体(またはその断片)と混合させ、窒素雰囲気中4℃で一定の回転攪拌の下一晩カップリング反応を実施する。免疫リポソームは、45分間80000×gの超遠心分離により、非コンジュゲート抗体から分離する。免疫リポソームは、腹腔内にまたは直接腫瘍に注入してよい。
【0059】
標的部位に送達される核酸は、直接的にまたは間接的に細胞傷害性をもたらす適切なDNAならどれでもよい。たとえば、核酸は、細胞に細胞傷害性のあるリボザイムをコードしていてもよいし、実質的に非毒性のプロドラッグを細胞傷害性薬物に変換することができる酵素をコードしていてもよい(この後者のシステムはGDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法:Gene Directed Enzyme Prodrug Therapy)と呼ばれることもある)。
【0060】
標的に送達される核酸にコードされうるリボザイムは、Cech and Hersohlag "Site-specific cleavage of single stranded DNA" 米国特許第5,180,818号; Altmanら"Cleavage of targeted RNA by RNAse P" 米国特許第 5,168,053号、Cantinら"Ribozyme cleavage of HIV-1 RNA" 米国特許第5,149,796号; Cechら"RNA ribozyme restriction endoribonucleases and methods"、米国特許第5,116,742号; Beenら"RNA ribozyme polymerases, dephosphorylases, restriction endonucleases and methods"、米国特許第 5,093,246号;およびBeenら"RNA ribozyme polymerases, dephosphorylases, restriction endoribonucleases and methods; cleaves single-stranded RNA at specific site by transesterification"、米国特許第4,987,071号に記載されており、このすべての特許文献は参照により本明細書に組み込まれているものとする。リボザイムに対する適切な標的には、c-fosおよびc-mycなどの転写因子、ならびにbcl-2がある。Duraiら(1997) Anticancer Res. 17、3307〜3312頁には、bcl-2に対するハンマーヘッド型リボザイムが記載されている。
【0061】
欧州特許第0415731号には、GDEPTシステムが記載されている。酵素およびプロドラッグの選択に関する類似の考慮すべき点は、上記のADEPTシステムと同様にGDEPTシステムに適用される。
【0062】
標的部位に送達される核酸は直接的細胞傷害性ポリペプチドをコードしていてもよい。
【0063】
あるいは、追加の部分は、直接的にも間接的にも細胞傷害性ではないが治療効果のあるポリペプチドまたは、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでいてよい。そのようなポリペプチドの例には、抗増殖性または抗炎症性サイトカイン、および抗増殖性、免疫調節性因子または医療において、たとえば、癌の治療において有益でありうる血液凝固に影響を与える因子がある。
【0064】
追加の部分は、有用に、ペプチドアンジオスタチンまたはエンドスタチンなどの血管新生の阻害剤でもよい。追加の部分は、有用に、前駆体ポリペプチドをアンジオスタチンまたはエンドスタチンに変換する酵素でもよい。マクロファージエラスターゼ、ゼラチナーゼおよびストロメライシンなどのヒトマトリックスメタプロテアーゼは、プラスミノーゲンをアンジオスタチンに変換する(Corneliusら(1998) J. Immunol. 161、6845〜6852頁)。プラスミノーゲンはアンジオスタチンの前駆体である。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明は容易に検出可能な部分をさらに含む作用物質を提供する。
【0066】
「容易に検出可能な部分」は、前記部分が、本発明の作用物質の患者への投与後に標的部位に存在することとなった場合に、典型的には、身体および標的の部位の外側から非侵襲的に検出され得る部分であるという意味を含む。したがって、本発明のこの実施形態の作用物質は画像化および診断に有用である。
【0067】
典型的には、容易に検出可能な部分は、画像化に有用である放射性原子であるまたはそれを含む。適切な放射性原子には、シンチグラフィー研究用の99mTcおよび123Iがある。他の容易に検出可能な部分には、たとえば、再び123I、131I、111In、19F、13C、15N、17O、ガドリニウム、マンガンまたは鉄などの磁気共鳴画像法(MRI)用のスピン標識がある。明らかに、本発明の作用物質は、分子が容易に検出可能であるためには、適切な原子同位体が十分になければならない。
【0068】
放射性のまたは他の標識は、既知の方法で本発明の作用物質に組み込まれてよい。たとえば、結合部分は、それがポリペプチドの場合、生合成してもよいし、たとえば、水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を用いた化学的アミノ酸合成により合成してもよい。たとえば、99mTc、123I、186Rh、188Rhおよび111Inなどの標識を結合部分のシステイン残基を介して結合させることができる。イットリウム-90をリシン残基を介して結合させることができる。IODOGEN方法(Frakerら(1978) Biochem. Biophys. Res. Comm. 80、49〜57頁)を使って123Iを組み込むことができる。参考文献("Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy"、J-F Chatal、CRC Press、1989)には、他の方法が詳細に記載されている。
【0069】
好ましくは、容易に検出可能な部分は、たとえば、テクネチウム-99mまたはヨウ素-123などの放射性原子を含む。
【0070】
あるいは、容易に検出可能な部分は、ヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、鉄を含む群から選択してよい。
【0071】
好ましい実施形態では、本発明は直接的または間接的細胞傷害性部分に選択的に結合することが可能な部分をさらに含む作用物質を提供する。
【0072】
本発明のさらに好ましい実施形態では、追加の部分は直接的または間接的細胞傷害性部分に、または容易に検出可能な部分に選択的に結合することができる。したがって、この実施形態では、追加の部分は、細胞傷害性のまたは容易に検出可能な追加の化合物または成分に結合する部分ならどれでもよい。
【0073】
したがって、追加の部分は、前記追加の化合物または成分に選択的に結合する抗体でもよいし、ストレプトアビジンまたはビオチンまたは同種のものなど他の結合部分でもよい。以下の例は本発明に含まれるような類の分子を例証しており、他のそのような分子は、本明細書の教示から容易に明らかである。
【0074】
1つの結合部位が、(本明細書で定義されるKuタンパク質に選択的に結合する)結合部分を含み、第2の結合部位が、たとえば、実質的に非毒性のプロドラッグを細胞傷害性薬物に変換することができる酵素に結合する部分を含む二重特異性抗体。
【0075】
あるいは、前記作用物質は、本明細書で定義されるKuタンパク質に選択的に結合する抗体で、ビオチンが結合している抗体を含んでいてよい。容易に検出可能なラベルが標識されているアビジンまたはストレプトアビジンは、ビオチン標識抗体とともに、二段階画像化システム(ビオチン標識抗体が先ず患者の標的部位に局在し、次に標識アビジンまたはストレプトアビジンが患者に投与されるシステム)において使ってもよい。二重特異性抗体およびビオチン/ストレプトアビジン(アビジン)システムは、Rosebrough (1996) Q J Nucl. Med. 40、234〜251頁に概説されている。
【0076】
本発明の好ましい実施形態では、結合部分および追加の部分は、融合したポリペプチドである。
【0077】
好ましくは、本発明は、結合部分がペプチドおよび/またはポリペプチドを含む作用物質を提供する。
【0078】
ポリペプチド結合部分は、スクリーニングにより同定することができる。標的タンパク質またはポリペプチドに選択的に結合するペプチドまたは他の分子を同定するための適切な方法またはスクリーニングは、標的タンパク質またはポリペプチドを結合が起こりうる条件の下で試験ペプチドまたは他の分子に接触させ、次にその試験分子またはペプチドが標的タンパク質またはポリペプチドに結合しているかどうかを判定することを含んでいてよい。2つの部分間の結合を検出する方法は、生化学の分野では公知である。好ましくは、ファージディスプレイという既知の技法を使って、結合部分としての使用に適したペプチドまたは他のリガンド分子を同定する。代わりの方法には、酵母ツーハイブリッドシステムがある。
【0079】
一実施形態では、本発明は、結合部分が、配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;および配列番号11を含む群から選択されるポリペプチド配列を含む作用物質を提供する。
【0080】
好ましくは、本発明は、結合部分が抗体またはその断片を含む作用物質を提供する。
【0081】
「抗体」は、免疫グロブリン分子全体のみならず、Fab、F(ab')2、Fvおよび抗原結合部位を保持するその他の断片などのその断片を含む。同様に、用語「抗体」は、単鎖Fv分子(scFv)および単一ドメイン抗体(dAb)などの抗体の遺伝子工学的に改変された誘導体を含む。この用語は、ファージディスプレイまたは分子用の他のランダム選択手法を使って作製することができる抗体様分子も含まれる。この用語は、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEを含むあらゆる種類の抗体も含む。
【0082】
抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ドメインは抗原認識に関与しており、これは初期のプロテアーゼ消化実験により最初に認識された事実である。追加の確証は、げっ歯類抗体の「ヒト化」により見出された。げっ歯類起源の可変ドメインは、得られる抗体が親抗体であるげっ歯類抗体の抗原特異性を保持するように、ヒト起源の定常ドメインに融合させてよい(Morrisonら(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81、6851〜6855頁)。
【0083】
抗原特異性は可変ドメインにより与えられ定常ドメインとは無関係であることは、すべてが1つまたは複数の可変ドメインを含有する抗体断片の細菌による発現を含む実験から知られている。これらの分子には、Fab様分子(Betterら(1988) Science 240、1041頁); Fv分子(Skerraら(1988) Science 240、1038頁); VHおよびVLパートナードメインがフレキシブルなオリゴペプチドを介して連結されている単鎖Fv(ScFv)分子(Birdら(1988) Science 242、423頁; Hustonら(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85、5879頁)および単離Vドメインを含む単一ドメイン抗体(dAb)(Wardら(1989) Nature 341、544頁)がある。その特異的結合部位を保持する抗体断片の合成に関与する技法の概論は、Winter & Milstein (1991) Nature 349、293〜299頁に見ることができる。
【0084】
「ScFv分子」は、VHおよびVLパートナードメインがフレキシブルなオリゴペプチドを介して連結されている分子を含む。
【0085】
抗体全体ではなく抗体断片を使うことによって、利点は何倍にもなる。断片のサイズが小さいほど、標的部位への浸透がよくなるなどの、薬理学的特性が改良されうる。補体結合などの抗体全体のエフェクター機能は除去される。Fab、Fv、ScFvおよびdAb抗体断片はすべて大腸菌において発現し、そこから分泌することが可能であり、したがって大量の前記断片の容易な産生が可能である。
【0086】
抗体全体、およびF(ab')2断片は「二価」である。「二価」は、前記抗体およびF(ab')2断片が2つの抗原結合部位を有するという意味である。これとは対照的に、Fab、Fv、ScFvおよびdAb断片は一価であり、抗原結合部位は1つしかない。
【0087】
抗体はポリクロナール抗体でもよいが、モノクロナール抗体であれば好ましい。いくつかの状況では、特に抗体がヒト患者に繰り返して投与されそうな場合は、そのモノクロナール抗体はヒトモノクロナール抗体またはヒト化モノクロナール抗体であれば好ましい。
【0088】
適切なモノクロナール抗体は、既知の技法、たとえば、"Monoclonal Antibodies; A manual of techniques"、H Zola (CRC Press, 1988)および"Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Application"、SGR Hurrell (CRC Press、1982)において開示されている技法により調製してもよい。多特異性または単一特異性のポリクロナール抗体を作製してよい。ポリクロナール抗体は単一特異性であるのが好ましい。
【0089】
キメラ抗体はNeubergerら(1998、8th International Biotechnology Symposium Part 2、792〜799頁)により取り上げられている。
【0090】
適切に調製された非ヒト抗体は、既知の方法で、たとえば、マウス抗体のCDR領域をヒト抗体のフレームワークに挿入することにより「ヒト化」することができる。
【0091】
抗体は、本明細書で定義されるKuタンパク質に対する特異性のあるヒト抗体のアミノ酸配列を有するという意味でヒト抗体でよいが、ヒトの免疫化を必要としない当技術分野で公知の方法を使って調製してもよい。たとえば、実質的にヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニックマウスを利用することができる(Vaughanら(1998) Nature Biotechnol. 16、535〜539頁を参照されたい)。
【0092】
好ましくは、本発明は、抗体またはその断片がscFvおよび/またはFabである作用物質を提供する。さらに好ましくは、前記scFvは配列番号11のポリペプチド配列を含む。
【0093】
追加の実施形態では、本発明は、癌の治療のための薬剤の製造における本発明の作用物質の使用を提供する。本発明の作用物質などの活性作用物質を用いた薬剤の製造方法は医学および薬学の分野の当業者には公知である。
【0094】
好ましくは、本発明は、癌が固形腫瘍および/または癌腫(carcinoma)である使用法を提供する。さらに好ましくは、本発明は、癌が前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵癌、肺癌、卵巣癌、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、頚部類上皮細胞腫、多発性骨髄腫、急性単球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、神経膠芽腫を含む群から選択される使用法を提供する。
【0095】
第2の態様では、本発明は、本明細書で定義されるKuタンパク質に選択的に結合することが可能な結合部分を含む作用物質を提供する。
【0096】
第3の態様では、本発明は、治療有効量の本発明に従った作用物質および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。
【0097】
「治療有効量」は、Kuタンパク質ならびに/または作用物質およびKuタンパク質を含む複合体の細胞内内部移行を誘導および/または増加させ、それにより治療効果を有するのに十分な本発明の作用物質の量を含む。有効量は、実施例に記載する方法(たとえば、INCA-X抗体の内部移行および免疫毒素が誘導された細胞の細胞傷害性(immunotoxin-directed cell cytotoxicity)を判定するために使用する方法)を使うことによりインビボで決定することができるであろう。「治療効果」は、疾病、病気または病状に付随する状態を軽減するおよび/または予防するあらゆる効果のことであり、治療する状態によって異なるであろう。本発明の作用物質、組成物または薬剤の治療効果を判定するための適切な試験は医学関連分野の当業者には公知であろう。
【0098】
「薬学的に許容可能な」は、調合物が無菌であり発熱物質を含まないという意味を含む。適切な薬学的担体は薬学の分野では公知である。前記担体は、本発明の作用物質と適合性があり、そのレシピエントに有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。典型的には、前記担体は、無菌で発熱物質を含まない水または生理食塩水であろうが、他の許容可能な担体を使ってもよい。
【0099】
第4の態様では、本発明は、本明細書で定義される作用物質および/または本明細書で定義される薬剤および/または本明細書で定義される医薬組成物を用いた治療に潜在的に感受性の癌細胞の同定のための組成物の製造における本発明の作用物質の使用を提供する。
【0100】
本発明の作用物質を使って、本明細書で定義される作用物質および/または本明細書で定義される薬剤および/または本明細書で定義される医薬組成物を用いた治療に潜在的に感受性の癌細胞などの細胞を同定することができることは、分子生物学および細胞生物学の関連技術の当業者なら理解されるであろう。たとえば、本発明の作用物質は、試験試料中において癌細胞などの細胞の表面でのKuタンパク質の存在を検出し、作用物質が結合するとそのようなKuタンパク質の細胞内内部移行が誘導されるおよび/または増加されるかどうかをモニターするための診断試薬として(本発明の方法および添付の実施例に記載の方法に従って)使うことができるであろう。細胞表面のKuタンパク質の同定ならびにKuタンパク質の細胞内内部移行の誘導/増加は、そのような細胞が本発明の作用物質を用いた細胞傷害性部分の送達に適しており、したがって本発明の作用物質および/または薬剤および/または医薬組成物を用いた治療に感受性であることを示しうることは、当業者には明らかであろう。
【0101】
第5の態様では、本発明は、個体において個人の癌を治療するための方法であって、有効量の本発明の作用物質および/または本発明の薬剤および/または本発明の医薬組成物を個体に投与する段階を含む方法を提供する。
【0102】
「有効量」は、治療する特定の癌に付随する状態を予防するおよび/または減少させるのに十分な本発明の作用物質の量という意味を含む。たとえば、有効量は、腫瘍の大きさおよび/もしくは増殖速度および/もしくは転移速度を妨げるならびに/または減少させうる。有効量は、癌細胞の細胞分化を妨げるおよび/または減少させ、それによって、転移を妨げるおよび/または減少させうる。有効量は、実施例に記載の方法(たとえば、INCA-X抗体の内部移行および免疫毒素が誘導された細胞の細胞傷害性を判定するために使用する方法)を使うことによりインビボで決定することができるであろう。本発明の作用物質、組成物または薬剤の治療的効果およびもっとも適切な投与経路を判定するのに適切な試験は、医学の関連技術分野の当業者には公知であろう。
【0103】
第6の態様では、本発明は、本発明の作用物質および/または本発明の薬剤および/または本発明の医薬組成物を用いた治療に潜在的に感受性の癌細胞を有する個体を同定するための方法であって、
a)試験する個体由来の1つまたは複数の癌細胞を含む試料を提供する段階と、
b)前記試料を本発明に従った作用物質および/または本発明に従った薬剤および/または本発明に従った医薬組成物と混合する段階と、
c)前記作用物質および/または薬剤および/または医薬組成物の、1つまたは複数の癌細胞の表面に局在する本明細書で定義されるKuタンパク質との結合、ならびにその後のKuタンパク質の細胞内内部移行を判定する段階と、
d)前記作用物質および/または薬剤および/または医薬組成物が、1つまたは複数の癌細胞の表面に局在するKuタンパク質の細胞内内部移行を誘導および/または促進する場合に、治療に潜在的に感受性の癌細胞を有する個体を同定する段階と
を含む方法を提供する。
【0104】
好ましくは、個体はヒトであるが、(好ましくは、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、イヌおよびネコを含む農業的にまたは商業的に重要性のある)家畜化された哺乳動物などのあらゆる哺乳動物でよい。
【0105】
本発明の作用物質を使って、本明細書で定義される作用物質および/または本明細書で定義される薬剤および/または本明細書で定義される医薬組成物を用いた治療に潜在的に感受性の癌細胞を有する個体を同定することができることは、分子生物学および細胞生物学ならびに医学の関連技術分野における当業者であれば理解するであろう。
【0106】
上記のように、(個体から入手した試験試料における、または直接的に個体それ自体における)癌細胞などの細胞の表面のKuタンパク質の存在を検出し、作用物質が結合するとそのようなKuタンパク質の細胞内内部移行が誘導されるおよび/または増加されるかどうかをモニターするための診断試薬として(本発明の方法および添付する実施例に記載の方法に従って)本発明の作用物質を使うことができるであろう。
【0107】
第7の態様では、本発明は、細胞の表面に局在する本明細書に記載のKuタンパク質に選択的に結合し、Kuタンパク質の細胞内内部移行を誘導し、かつ/または増加させることが可能な作用物質を同定するための方法であって、
a)1つまたは複数の細胞の表面に局在する本明細書に記載のKuタンパク質を含む試料を提供する段階と、
b)前記試料を試験する作用物質と混合する段階と、
c)前記作用物質が1つまたは複数の細胞の表面に局在するKuタンパク質に結合するかどうか、およびKuタンパク質がその後内部移行されるかどうかを判定する段階と、
d)前記作用物質が細胞の表面に局在するKuタンパク質に選択的に結合し、Kuタンパク質の細胞内内部移行を誘導し、かつ/または増加させることが可能である場合に、作用物質を同定する段階と
を含む方法を提供する。
【0108】
細胞の表面に局在するKuタンパク質に選択的に結合し、Kuタンパク質の細胞内内部移行を誘導しおよび/または増加させることが可能である作用物質を同定するのに適した方法は、添付する実施例に記載されている(たとえば、INCA-X抗体の内部移行および免疫毒素が誘導された細胞の細胞傷害性を判定するために使用する方法)。
【0109】
試験する1つまたは複数の作用物質は、小分子ライブラリーおよび/または化学物質および/または抗体ライブラリーなどの候補分子のライブラリーから入手してよい。
【0110】
好ましくは、本発明の第7の態様の方法は、(e)段階(d)において同定される作用物質を合成および/または単離する段階をさらに含む。
【0111】
本発明の第7の態様の方法により同定される作用物質を合成するための方法は、生化学および化学の技術分野における当業者には公知であろう。
【0112】
好ましくは、本発明の第7の態様の方法は、段階(d)において同定され、ならびに/または段階(e)において合成および/もしくは単離される作用物質を医薬組成物に処方する段階をさらに含む。
【0113】
作用物質を医薬組成物に処方するための方法は、医学および薬学の技術分野の当業者には公知であろう。そのような方法および処方の例は添付する実施例に与えられている。
【0114】
第8の態様では、本発明は、本発明に従った作用物質またはその結合部分をコードする核酸分子を提供する。「核酸分子」は、DNA、cDNAおよびmRNA分子のことであり、一本鎖でも二本鎖でもよい。
【0115】
第9の態様では、本発明は、本発明の第8の態様に従った核酸分子を含む発現ベクターを提供する。「発現ベクター」は、適切な宿主中で、核酸分子にコードされたポリペプチドを発現することが可能なベクターという意味である。
【0116】
そのようなベクターは、本発明の作用物質の有用な量を産生するために、宿主細胞中で本発明のコードされた作用物質またはその結合部分を発現するのに有用でありうる。
【0117】
核酸分子、特にDNAを、たとえば、相補的な突出末端を介してベクターに操作可能的に連結する種々の方法が開発されている。たとえば、相補的ホモポリマートラクト(complementary homopolymer tract)を、ベクターDNAに挿入するDNAセグメントに付加することができる。次に、ベクターとDNAセグメントを、相補的ホモポリマーテイル(complementary homopolymeric tail)間の水素結合により結合させ、組換えDNA分子を形成する。
【0118】
1つまたは複数の制限酵素部位を含有する合成リンカーは、DNAセグメントをベクターに結合させる代替法を提供する。たとえば、エンドヌクレアーゼ制限酵素消化により生じるDNAセグメントを、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼまたは大腸菌DNAポリメラーゼI(すなわち、突出3'-一本鎖終端をその3'-5'-エクソヌクレアーゼ活性で除去して、陥凹3'-末端をその重合活性で埋める酵素)で処理する。
【0119】
したがって、これらの活性の組合せは、平滑末端DNAセグメントを生み出す。次に、平滑末端セグメントは、平滑末端DNA分子のライゲーションを触媒することができるバクテリオファージT4 DNAリガーゼなどの酵素の存在の下で、過剰なモル濃度のリンカー分子と一緒にインキュベートする。したがって、反応の生成物は、その末端に重合体リンカー配列を坦持しているDNAセグメントである。次に、これらのDNAセグメントは、適切な制限酵素で切断し、そのDNAセグメントの終端と適合する終端を生み出す酵素で切断されている発現ベクターに連結する。
【0120】
種々の制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する合成リンカーは、インターナショナルバイオテクノロジーズ社(ニューヘーブン、コネチカット、米国)を含むいくつかの製造元から市販されている。
【0121】
本発明のポリペプチドをコードするDNAを改変する望ましい方法は、PCRを使うことである。この方法は、たとえば、適切な制限酵素部位において遺伝子工学的に改変することにより、前記DNAを適切なベクターに導入するために使ってもよいし、当技術分野で公知の他の有用な方法で前記DNAを改変するのに使ってもよい。
【0122】
この方法では、酵素的に増幅させる前記DNAは、それ自体が増幅されたDNAに組み込まれることになる2つの特異的プライマーに隣接している。前記特異的プライマーは、当技術分野で公知の方法を使って発現ベクター中にクローン化するために使うことができる制限酵素エンドヌクレアーゼ認識部位を含有していてよい。
【0123】
次に、DNA(または、レトロウイルスベクターの場合では、RNA)は適切な宿主で発現させて、本発明の作用物質またはその結合部分を含むポリペプチドを産生させる。したがって、前記ポリペプチドをコードするDNAは、既知の技法に従って使い、本明細書に含まれる教示に照らして適切に改変して、発現ベクターを構築し、次に、この構築物を使って、本発明の作用物質またはその結合部分の発現および産生のために適切な宿主細胞を形質転換する。そのような技法には、1984年4月3日公布のRutterらに対する米国特許第4,440,859号、1985年7月23日公布のWeissmanに対する米国特許第4,530,901号、1986年4月15日公布のCrowlらに対する米国特許第4,582,800号、1987年6月30日公布のMarkらに対する米国特許第4,677,063号、1987年7月7日公布のGoeddelに対する米国特許第4,678,751号、1987年11月3日公布のItakuraらに対する米国特許第4,704,362号、1987年12月1日公布のMurrayに対する米国特許第4,710,463号、1988年7月12日公布のToole, Jr.らに対する米国特許第4,757,006号、1988年8月23日公布のGoeddelらに対する米国特許第4,766,075号および1989年3月7日公布のStalkerに対する米国特許第4,810,648号で開示されている技法があり、これらの特許文献はすべて参照により本明細書に組み込まれているものとする。
【0124】
本発明の作用物質またはその結合部分を構成するポリペプチドをコードするDNA(または、レトロウイルスベクターの場合では、RNA)は、適切な宿主に導入するために多種多様の他のDNA配列に結合させてよい。併用DNAは、宿主の性質、DNAを宿主に導入する方法、およびエピソーム維持または組込みが必要かどうかによって決まるであろう。
【0125】
一般に、前記DNAは、プラスミドなどの発現ベクターに、発現のために正しい方向および正確な読み枠で挿入される。必要であれば、前記DNAは、所望の宿主により認識される適切な転写および翻訳調節制御ヌクレオチド配列に連結してもよいが、そのような制御は一般に発現ベクター中で利用することができる。次に、ベクターは標準技術により宿主に導入される。一般に、宿主がすべてベクターによって形質転換されるわけではない。したがって、形質転換された宿主細胞を選択することが必要になる。1つの選択技術では、抗生物質耐性などの形質転換された細胞中の選択可能な性質をコードするDNA配列が、任意の必要な制御エレメントとともに、発現ベクターに組み込まれる。あるいは、そのような選択可能な性質をもたらす遺伝子は、所望の宿主細胞と同時に形質転換するために使われる別のベクター上に存在することができる。
【0126】
次に、本発明の発現ベクターにより形質転換されている宿主細胞は、十分な時間および当業者に公知の適切な条件の下で、本明細書に開示する教示に照らして、培養されて、ポリペプチドを発現させ、このポリペプチドはその後回収することができる。
【0127】
細菌(たとえば、大腸菌(Escherichia coli)および枯草菌(Bacillus subtilis))、酵母(たとえば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae))、糸状菌(filamentous fungi)(たとえば、コウジカビ(Aspergillus))、植物細胞、動物細胞および昆虫細胞を含む多くの発現システムが公知である。
【0128】
前記ベクターは、他の非原核生物細胞型での発現のために使われることになっても、典型的に、原核生物での増殖のための、ColE1複製起点などの原核生物レプリコンを含んでいる。前記ベクターは、それにより形質転換される大腸菌などの細菌宿主細胞において遺伝子の発現(転写および翻訳)を指示することが可能な原核生物プロモーターなどの適切なプロモーターも含むことができる。
【0129】
プロモーターは、RNAポリメラーゼを結合させて転写を起こさせるDNA配列により形成される発現制御エレメントである。典型的な細菌宿主と適合するプロモーター配列は、典型的には、本発明のDNAセグメントの挿入のための便利な制限酵素部位を含有するプラスミドベクターにおいて提供される。
【0130】
典型的な原核生物ベクタープラスミドは、バイオラッドラボラトリーズ(リッチモンド、カリフォルニア、米国)から入手可能なpUC18、pUC19、pBR322およびpBR329ならびにファルマシア(ピスカタウェイ、ニュージャージー、米国)から入手可能なpTrc99AおよびpKK223-3である。
【0131】
典型的な哺乳動物細胞ベクタープラスミドは、ファルマシア(ピスカタウェイ、ニュージャージー、米国)から入手可能なpSVLである。このベクターは、SV40後期プロモーターを使ってクローン化遺伝子の発現を推進し、もっとも高度なレベルの発現はCOS-1細胞などのT抗原産生細胞において見られる。
【0132】
誘導性哺乳動物発現ベクターの例は、pMSGであり、やはりファルマシアから入手可能である。このベクターは、グルココルチコイド誘導性プロモーター(マウス乳癌ウイルスの端末の長い反復配列)を使って、クローン化遺伝子の発現を推進している。
【0133】
有用な酵母プラスミドベクターはpRS403〜406およびpRS413〜416であり、通常、ストラタジーンクローニングシステムズ(ラホーヤ、カリフォルニア92037、米国)から入手可能である。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405およびpRS406は酵母組込み型プラスミド(YIP)であり、酵母選択可能マーカーHIS3、TRP1、LEU2およびURA3を組み込んでいる。プラスミドpRS413〜416は酵母セントロメアプラスミド(Ycp)である。
【0134】
種々の宿主細胞との使用のための他のベクターおよび発現システムは、当技術分野では公知である。
【0135】
第10の態様では、本発明は、本発明の第8の態様に従った核酸分子を含む組換え宿主細胞を提供する。
【0136】
好ましくは、組換え宿主細胞は細菌細胞である。あるいは、組換え宿主細胞は哺乳動物細胞である。
【0137】
宿主細胞は原核生物でも真核生物でもよい。細菌細胞は好ましい原核生物宿主細胞であり、典型的には、たとえば、ベテスダリサーチラボラトリーズ社(ベテスダ、メリーランド、米国)から入手可能な大腸菌株DH5およびアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、ロックビル、メリーランド、米国)から入手可能なRR1(ATCC番号31343)などの大腸菌株である。好ましい真核生物宿主細胞には、酵母、昆虫および哺乳動物細胞があり、好ましくは、マウス、ラット、サルまたはヒト線維芽細胞および腎臓株化細胞由来の細胞などの脊椎動物細胞である。酵母宿主細胞には、YPH499、YPH500およびYPH501があり、これらは通常、ストラタジーンクローニングシステムズ(ラホーヤ、カリフルニア92037、米国)から入手可能である。好ましい哺乳動物宿主細胞には、ヒト胚性腎臓細胞であるCRL1658および293細胞としてATCCから入手可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞がある。好ましい昆虫細胞は、バキュロウイルス発現ベクターでトランスフェクトすることができるSf9細胞である。
【0138】
本発明のDNA構築物を用いた適切な宿主細胞の形質転換は、典型的に使用するベクターの種類に依存する公知の方法により実現される。原核生物宿主細胞の形質転換に関しては、たとえば、Cohenら(1972) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69、2110頁およびSambrookら(1989) Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NYを参照されたい。酵母細胞の形質転換はShermanら(1986) Methods In Yeast Genetics、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、NYに記載されている。Beggs (1978) Nature 275、104〜109頁の方法も有用である。脊椎動物細胞に関しては、そのような細胞をトランスフェクトするのに有用な試薬、たとえば、リン酸カルシウムおよびDEAE-デキストランまたはリポソーム製剤は、ストラタジーンクローニングシステムズまたはライフテクノロジーズ社(ゲイサーズバーグ、メリーランド20877、米国)から入手可能である。
【0139】
エレクトロポレーションも細胞を形質転換しおよび/またはトランスフェクトするために有用であり、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞および脊椎動物細胞を形質転換するためには当技術分野では公知である。
【0140】
たとえば、多くの細菌種はLuchanskyら(1988) Mol. Microbiol. 2、637〜646頁に記載されている方法により形質転換してよく、この文献は参照により本明細書に組み込まれているものとする。25μFDでcm当たり6250Vを使って2.5PEB中に懸濁させたDNA-細胞混合物のエレクトロポレーションに続いて最大数の形質転換細胞が一貫して回収される。
【0141】
エレクトロポレーションによる酵母の形質転換のための方法は、Becker & Guarente (1990) Methods Enzymol. 194、182頁に開示されている。
【0142】
うまく形質転換された細胞、すなわち、本発明のDNA構築物を含有する細胞は、公知の技法により同定することができる。たとえば、本発明の発現構築物の導入から生じる細胞を培養して、本発明のポリペプチドを産生させることができる。細胞は回収して溶解し、そのDNA含有量は、Southern (1975) J. Mol. Biol 98、 503頁またはBerentら(1985) Biotech. 3、208頁により記載されている方法などの方法を使ってDNAの存在を調べることができる。あるいは、上澄み中のタンパク質の存在は、以下に記載する抗体を使って検出することができる。
【0143】
組換えDNAの存在を直接アッセイすることに加えて、形質転換が成功したかどうかは、組換えDNAがタンパク質の発現を指示することが可能である場合は、公知の免疫学的方法により確証することができる。たとえば、発現ベクターを使ってうまく形質転換された細胞は、適切な抗原性を表示するタンパク質を産生する。
【0144】
形質転換されたと思われる細胞の試料は回収され、適切な抗体を使ってそのタンパク質をアッセイされる。
【0145】
宿主細胞は、非ヒト動物体内の宿主細胞でよい。したがって、導入遺伝子の存在のせいで本発明に従った作用物質(または、その結合部分)を発現するトランスジェニック非ヒト動物が含まれる。好ましくは、トランスジェニック非ヒト動物は、マウスなどのげっ歯類である。トランスジェニック非ヒト動物は、当技術分野で公知の方法を使って作製することができる。
【0146】
第11の態様では、本発明は、本発明に従った作用物質またはその結合部分を作製する方法であって、本発明の第8の態様に従った核酸分子、もしくは本発明の第9の態様に従った発現ベクターを発現する段階、または本発明の第10の態様に従った宿主細胞を培養する段階、を含む方法を提供する。
【0147】
前記作用物質が異なる部分、たとえば、結合および/または細胞傷害性ドメインを含む場合には、その部分は1つまたは複数の別々の核酸分子によりコードされていてよいことが認識されるであろう。
【0148】
宿主細胞を培養し、組換えタンパク質を単離するための方法は当技術分野では公知である。宿主細胞によって、産生される本発明の作用物質(または、その結合部分)は異なっていてよいことが認識されるであろう。たとえば、酵母または細菌細胞などのある種の宿主細胞は、翻訳後に異なった形で修飾されうる本発明の作用物質(または、その結合部分)の産生をもたらす異なった翻訳後修飾システムを有していない、または有しているのどちらかである。
【0149】
本発明の作用物質(または、その結合部分)は、哺乳動物細胞などの真核生物システムにおいて産生されることが好ましい。
【0150】
比較的好ましくない実施形態に従えば、本発明の作用物質(または、その結合部分)は、ラビット網状赤血球溶血液またはコムギ胚芽溶解物(プロメガより入手可能)などの市販のインビトロ翻訳システムを使ってインビトロで産生することができる。好ましくは、翻訳システムはラビット網状赤血球溶血液である。都合よく、翻訳システムは、TNT転写翻訳システム(プロメガ)などの転写システムと連結させてもよい。このシステムは、翻訳と同じ反応液中でコード化DNAポリヌクレオチドから適切なmRNA転写物を作製するという利点がある。
【0151】
好ましくは、本発明のこの態様の作製方法は、宿主細胞からまたはインビトロ翻訳混合物から産生される本発明の作用物質(または、その結合部分)を単離する追加の段階を含む。好ましくは、単離は、本発明の発現されたポリペプチドに選択的に結合する抗体を用いる。
【0152】
上記のように、本発明の作用物質の好ましい実施形態では、結合部分は抗体またはその抗原結合断片を含む。抗体は、適切なペプチドで免疫することにより動物内で産生させることができる。適切なペプチドには、表1に収載するタンパク質およびその断片がある。あるいは、最新の技術を使って、動物を利用する必要なしに本明細書で定義される抗体を作製することが可能である。そのような技術には、たとえば、当技術分野で公知の抗体ファージディスプレイ方法がある。本明細書に記載するように、適切な抗体を使ってこの方法で作製される抗体を選択してよい。
【0153】
抗体技術の進歩と共に、抗体を産生するために動物を免疫することは必要がなくなる可能性があることが認識されるであろう。ファージディスプレイライブラリーなどの合成システムを使ってよい。そのようなシステムの使用は本発明の方法に含まれており、そのようなシステムの産物は、本発明のための「抗体」である。
【0154】
表1に収載するタンパク質の1つおよびその変異体または断片を認識するそのような抗体は、特に上記の本発明の作用物質として調製される場合は、有用な研究試薬であり治療薬であることが理解されるであろう。適切には、本発明の抗体は検出可能に標識されており、たとえば、前記抗体はそれが直接的にまたは間接的に検出されるような形で標識してよい。都合よいことに、前記抗体は、放射性部分もしくは有色部分もしくは蛍光部分で標識されており、または前記抗体は酵素に連結してよい。典型的には、前記酵素は非色(または、非蛍光)基質を有色(または蛍光)産物に変換することができる酵素である。前記抗体はビオチン(もしくはストレプトアビジン)で標識し、次に放射性部分もしくは有色部分もしくは蛍光部分もしくは同様のもので標識されているストレプトアビジン(もしくはビオチン)を使って間接的に検出してもよく、または前記抗体は上記の種類の酵素ならどれにでも連結してよい。
【0155】
本発明は、追加の部分が直接的もしくは間接的細胞傷害性部分に、または容易に検出可能な部分に選択的に結合することができる本発明の作用物質、および前記作用物質の追加の部分が結合することができる直接的もしくは間接的細胞傷害性部分または容易に検出可能な部分のいずれか1つを含むキット(または治療システム)も提供する。
【0156】
本発明のある種の態様を例示する好ましい非限定的例を、以下の図を参照してここに記載する。
【実施例】
【0157】
(実施例1:実験データ)
[材料と方法]
[株化細胞]
ヒト膵臓腺癌株化細胞HPAC(CRL-2558)およびPL45(CRL-2119)、前立腺癌PC-3(CRL-1435)、乳癌SK-BR-3(HTB-30)、T-47D(HTB-133)、MCF-7(HTB-22)、ならびに結腸直腸癌LS 174T(CL-188)はATCC(マナッサス、バージニア)から入手し、配給者の勧告に従って培養した。
【0158】
[Ku70/80に対するヒト抗体の単離]
naiveファージ抗体ライブラリーn-CoDeR(登録商標)由来の内部移行ヒト抗体の単離(Soderlindら2000)は最近記載された技術(Fransson, 2004)を使って実施した。手短に言えば、ファージ上に表示される単鎖抗体(scFv)ライブラリーを、先ずT細胞白血病株化細胞MOLT-4を用いたインキュベーションによる除去処理に供した。選択は37℃で1時間のインキュベーション中に膵臓腺癌株化細胞PL45上で実施し、ファージscFv-受容体複合体を内部移行させた。内部移行したファージは、100mMのトリエチルアミンで表面を取り除かれた細胞を溶解することにより回収した。選択過程により生じるいくつかの内部移行したscFv(INCA-Xと表示)を、完全ヒトIgG1抗体に再フォーマットした(Norderhaugら1997)。
【0159】
[膜分画および免疫沈降]
INCA-X抗原の独自性は精製したHPAC膜画分の免疫沈降によって決定した。細胞はPBSで2回洗浄し、細胞ペレットは5ml低張緩衝液(5mMトリス-HCL、pH7.5、5mM EDTA、および完全EDTA非含有プロテアーゼ阻害剤カクテル(ロシュ(Roche)社、マンハイム、独))中で再懸濁した。膨潤した細胞は氷上でDounceホモジナイザーによりホモジナイズし、一連の分画遠心段階にかけた。核および壊れていない細胞は1,000×gで5分間の遠心分離によりペレット状にした。上澄みは10,000×gで12分間遠心分離し、それによって細胞内オルガネラをペレット状にした。10,000×g遠心分離で得られた上澄みは、100,000×gで遠心分離し、ミクロソームペレットを作製した。膜タンパク質は、0.5%(v/v) NP40 等張緩衝液(25mM トリス-HCl、pH 7.5、5mM EDTA、150mM NaCl、およびプロテアーゼ阻害剤カクテル)中4℃で一晩かけて可溶化し、続いて100,000×g遠心分離し、その後可溶化膜タンパク質を含有する上澄みは-20℃で保存した。
【0160】
INCA-X抗体が認識する抗原は、以前記載された通りに(Franssonら、2006)、免疫沈降した。手短に言えば、膜画分はProtein A Sepharose 4 Fast Flow(アマシャムバイオサイエンシズ社、ウプサラ、スウェーデン)を使って回転をかけて2時間の間、予め精製し、20μg INCA-X抗体またはヒトIgG対照により一晩かけて免疫沈降した。0.1%(v/v) NP40を含む等張緩衝液中1% w/v 脱脂粉乳中で予めブロックしたプロテインAセファロースを、添加して1時間インキュベートし、その後、免疫複合体を、0.1%NP40を含む等張緩衝液で十分に洗浄し、5分間煮沸し、4〜12% SDS-PAGE中で分離した。記載の通りに(Franssonら2006)、染色後、対象のタンパク質バンドをSDS-PAGEから切除し、トリプシン消化に供した。ペプチドの質量は、MALDI LRHT (ウォーターズ社、マンチェスター、英国)質量分析器を使って決定した。Piumsソフトウェアーを使って、comprehensive, non-redundant IPI human databaseに対してデータベース検索を実施した(Samuelssonら2004)。
【0161】
[RNA干渉法によるku抗原の機能的同定]
INCA-X抗体特異性に対するMALDI-TOFの結果を確証するために、Ku(p70)転写物に対して有効である低分子干渉RNA(siRNA)オリゴヌクレオチドをアムビオン社(オースティン、テキサス)から購入した。Ku70 siRNAのHPAC細胞へのトランスフェクションは、提供者の勧告に従ってリポフェクタミン2000(インビトロゲン社、ペーズリー、英国)を使って実施した。トランスフェクションの24時間後、INCA-Xまたは対照ヒトIgG抗体のHPAC細胞への結合は、フローサイトメトリーによって評価した。ヒトIgGはPE-標識ヤギ抗ヒトIgG(カルタグラボラトリーズ社、バーリンゲーム、カリフォルニア)で検出し、FACScan装置(ベックトンディキンソン社、フランクリンレイクス、ニュージャージー)で分析した。
【0162】
[INCA-Xの内部移行]
INCA-X抗体の内部移行は、記載の通り(Franssonら2004)に共焦点顕微鏡により確認した。手短に言えば、INCA-X IgGはPL45細胞と一緒に一晩インキュベートし、内部移行した抗体は、サポリン処理した細胞をビオチンコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(ジャクソンイムノリサーチラボラトリーズ社、ウェストグローブ、ペンシルベニア)およびAlexa488コンジュゲートストレプトアビジン(インビトロゲン社)と一緒にインキュベートすることにより検出した。細胞核はヨウ化プロビジウムで染色し、内部移行化は、バイオラド共焦点顕微鏡(ハーキュリーズ社、カリフォルニア)を使って分析した。
【0163】
INCA-X抗体の取込み、内部移行および保持はリガンドトレーサー(TM)プロトタイプ(リッジビューインストルメンツAB社、ウプサラ、スウェーデン)で実施した(BjorkeおよびAndersson, 2006)。この装置は、rotating radioimmunoassay technology(RIA)の使用により放射性リガンド-細胞相互作用を測定する。INCA-Xを、Sundbergら(2003)による記載の通りにクロラミンT法を使って放射性標識し、1ml成長培地中で細胞皿に添加し、測定は指示された時間に実施した。検出器は、増殖中の細胞を含有する領域では5標本点を、空のリファレンス領域では5点を記録するように設定した。測定はすべて37℃、5%CO2の加湿インキュベーター中において実施した。内部移行動態研究では、膜結合活性を、細胞を0.1M グリシン-HCl (pH2.5)で取り除いた後に測定し、内部移行活性は細胞を1M NaOHで溶解した後に測定した。
【0164】
[免疫毒素が誘導された細胞の細胞傷害性(immunotoxin-directed cell cytotoxicity)]
免疫療法におけるINCA-Xの潜在的役割を評価するために、間接的免疫毒素実験をいくつかのヒト腫瘍株化細胞上で実施した。細胞は96ウェルプレート中ウェル当たり10,000個で播き(100,000/ml)、5%CO2中37℃で一晩インキュベートした。細胞は200ngのINCA-X/ウェル一次抗体で処理した。使用した抗体はINCA-Xの完全ヒトIgG1フォーマットおよび対照抗体B1(ヒトMHCクラスIIに反応性のヒト抗体)であった(Franssonら2006)。試験ウェルの半分は続いて100ng/ウェルのサポリンコンジュゲート抗ヒト抗体(Hum-ZAP、アドバンスドターゲティングシステムズ社、サンディエゴ、カリフォルニア)で処理した。免疫毒素コンジュゲートの細胞傷害性は、[3H]チミジン組込みアッセイにより評価した。細胞は56時間後に0.5μCi/ウェルの[3H]チミジン(アマシャムバイオサイエンシズ社)の添加によりパルスし、16時間インキュベートした。[3H]チミジンの組込みは1450マイクロベータ液体シンチレーション計数器(Micro Beta Liquid Scintillation Counter)(ファーマシア社、ウプサラ、スウェーデン)で読み取ることにより決定した。
【0165】
[ヒトグリオーマGA49に対するINCA-Xの間接的細胞傷害性]
GA49細胞(ヒト原発性グリオーマ腫瘍細胞)に結合するINCA-Xを使って、二次サポリンコンジュゲート抗体(HumZAP)により間接的細胞傷害性を誘導することができるかどうかを調査する。
【0166】
[材料]
・HumZAP:ヤギ抗ヒトIgG(サポリンコンジュゲート)、2.9mg/ml(アドバンスドターゲティングシステムズ社、サンディエゴ、カリフォルニア)
・INCA-X:2.5mg/ml
・対照抗体:2.3mg/ml(ヒト抗ICAM1 IgG1抗体)
・GA49:Bengt Widegren、免疫学科、ルンド大学、ルンド、スウェーデン製ヒト原発性グリオーマ腫瘍細胞
・グリオーマ細胞培地:Iscove's変法イーグル培地(IMDM)(115mlを注ぐ)、20%FCS(100mlを添加する)、MEM非必須アミノ酸;100×(5ml添加する)、ピルビン酸ナトリウム(100mM、5ml添加する)、10ml PBSにβ-メルカプトエタノール(7μlの保存液を添加する)、0.2μmの無菌フィルターに通し、5mlを培地に添加する。
【0167】
[手順]
1.抗体投与の24時間前に、細胞を計数し96ウェルプレートに播く。細胞の希釈を変えて細胞を播くことにより、異なった細胞集密度を得る。(細胞約10,000個/ウェル/100μl培養液を播く)。
2.実験時には、グリオーマ細胞培地中のHumZAPを100ng/ウェルまで希釈する(10μg/ml溶液のウェル当たり10μl)。
3.希釈したHumZAPをウェルに添加する。
4.INCA-Xおよび対照抗体ヒト(抗-ICAM1 IgG1抗体)を20μg/mlまで希釈し、ウェル当たり10μl添加する(最終濃度2μg/mlにする)。培地のみの対照ウェルおよび一次抗体のないHumZAPを含める。2組の試料を用意する。
5.3日間インキュベートする。
6.100μl 3H-チミジンを最終濃度0.5μCi/ウェルで添加する。細胞を8時間パルスし、回収までフリーザーに入れておく。
7.β-シンチレーション容器中で細胞を回収する。
【0168】
[結果と考察]
細胞表面受容体は、癌の抗体に基づいた治療のための重要な標的である。抗体が結合すると、標的である膜結合性抗原は、シグナル伝達、たとえば、アポトーシスの開始を細胞内に伝える(Shanら、1998; Franssonら、2006)か、または受容体媒介エンドサイトーシスにより内部移行される(Liuら、2004; Franssonら、2004)可能性がある。抗体会合後の受容体の内部移行により、抗体医薬コンジュゲート(Wu, 2005年)または抗体介在性遺伝子治療(Zhangら2002年)などの広範囲な治療介入に対する門戸が開かれることとなった。
【0169】
未知の膜結合抗原に対する内部移行ヒト抗体を産生する可能性を調査するために、我々は、ヒト膵臓腺癌株化細胞PL45(Franssonら、2004)を使って、我々が最近記載したアプローチを適用した。特に、非常に迅速で強い内部移行を示した1つのヒト抗体、INCA-Xをさらに特徴付けた。その抗原特異性を定義するために、INCA-Xを使って、HPAC膵臓腺癌細胞の可溶化細胞膜画分を沈殿させた。完全ヒトIgG1 INCA-X抗体を使用した免疫沈降により、70および80kDaサイズの2つの特異的バンドが生じた(図1A)。前記バンドを切断し、ゲル内トリプシン処理にかけ、MALDI-TOFにより分析した。前記バンドのペプチドマスフィンガープリントにより、Kuヘテロダイマー(Ku70/Ku80)を構成するATP依存性DNAヘリカーゼIIタンパク質の2つのサブユニットとして同定された(図4/表1)。INCA-Xが標的とする抗原の特異性は、Monferranら(2004)により作製された他のKu特異的抗体の沈殿物のウェスタンブロットにより確証された(データは示していない)。追加の確認研究は、Ku70 mRNA転写物を標的とするsiRNAを、HPAC細胞にトランスフェクトし、続いてフローサイトメトリーを使ってトランスフェクトした細胞に結合しているINCA-X抗体を評価することによって、実施した(図1B)。Ku70の発現がsiRNAにより停止されているHPAC細胞では、2つの細胞集団、すなわち、INCA-XhighおよびINCA-Xlowがトランスフェクションの24時間後に同定され、このうちINCA-Xlow集団が23%を占めていた。負の対照siRNAで処理したウェルでは、または非特異的対照抗体を使用した場合、抗原発現への効果は検出できなかった(図1B)。したがって、INCA-Xlow集団は、siRNA発現の停止に成功した細胞を表し、膜結合性Ku70タンパク質量のかなりの減少を示している。
【0170】
Ku70/80は、腫瘍細胞において内部移行を媒介することは以前は明らかにされていなかったが、Martinezら(Martinez、2005)は、Ku70が細胞内病原性微生物リケッチアコノリイ(Rickettsia conorii)の細胞取込みに機能的に関与していることを最近報告した。したがって、我々は、INCA-X抗体が膵癌株化細胞において内部移行したことを明確に実証する共焦点顕微鏡検査を実施した(図2A)。この受容体媒介エンドサイトーシスの速度および程度を決定するために、クロラミンT法(Sundbergら2003)を使って前記抗体を放射標識し、rotating cell dish system(Bjorkeら、2006)に添加した。このシステムは、細胞膜への結合(取込み)、内部移行および保持動態の測定が可能である。[125I]INCA-Xの取込みは迅速で、2時間後に飽和プラトーに到達した(図2B)。さらに、[125I]INCA-Xの50%内部移行は分析された最初の時点(12分)ですでに実現され、100分後には抗体の約90%が細胞内部に位置していた(図2B)。最後に、INCA-X保持の半減期は約5時間であることが求まった(データは示していない)。INCA-Xの高度な細胞内蓄積は、以前に記載された内部移行抗体-抗原対よりも勝っている。比較として、30%の125I標識mAb 14C5のみが、2時間インキュベーション中に肺および結腸癌細胞内に内部移行された(Burvenichら、2005)。さらに、INCA-Xは、LS174T結腸癌株化細胞における高度内部移行64Cu-DOTA-cBR96抗体(Bryanら、2005)に類似する細胞取込み速度および程度を有している。
【0171】
ヒト株化細胞、ならびに原発性正常および腫瘍細胞上でのKuヘテロダイマーの発現は、Mullerら(2005)によりすでに概説されている。Ku70/80はあらゆる細胞の核内で発現されるが、その細胞膜局在化は、その発現が低酸素の下でまたはCD40L刺激により上方調節される可能性のある異なった分化系列の腫瘍株化細胞に制限されているが、表面結合Ku70/80を発現している唯一の正常ヒト原発性細胞は、マクロファージおよびHUVECである(Muller、2005)。したがって、Ku70/80は免疫療法のための最適分子標的として働く可能性を有している。内部移行研究の結果を実証し、細胞傷害作用物質のための進入路としてのその潜在的使用を評価するために、INCA-Xの免疫毒素が媒介された細胞の細胞傷害性を決定した。フローサイトメトリーにより求めた場合にKu70/80の表面発現が異なっていた癌株化細胞(データは示していない)を、10nMのINCA-X抗体または同位体対照IgG B1抗体で処理した。一次抗体を添加後、細胞はサポリン毒コンジュゲート抗ヒトIgG抗体(Hum-ZAP)と一緒にインキュベートした。毒素複合体が内部移行すると、サポリンは標的作用物質から離脱し、リボソームを不活化する(Foehrら、2006)。図3は、INCA-XがKu70/80-陽性癌株化細胞を効果的に死滅させることを実証しているが、対照抗体は細胞傷害性を全く示さず、これは一次抗体のみで処理したウェルに匹敵していた。INCA-X/Hum-ZAPにより誘導される増殖の阻害は、非常に強い(前立腺癌PC-3上で92%)から中間(結腸直腸癌LS174 T上で30%)までの幅があったが、Ku70/80抗原陰性の乳癌株化細胞SK-BR-3上では全く効果は見られなかった。
【0172】
図5〜8は、二次サポリンコンジュゲート抗体を投与した場合の、INCA-Xおよび対照抗体(ヒト抗ICAM1 IgG1抗体)の効果を示している。72時間後、INCA-Xは、グリオーマ細胞GA49に対して顕著な細胞傷害性効果を示した。対照抗体(ヒト抗ICAM1 IgG1抗体)もある程度細胞傷害性を誘導したが、対照抗体がこれらの細胞の細胞表面に結合するのかどうかは評価しなかった。細胞集密度は重要な要因であり、HumZAPの効果は、低集密度の細胞が細胞傷害性を受ける場合のほうが大きかったが、対照ウェルの細胞もある程度の非特異的HumZAP取込みを受けた。
【0173】
これらのデータは、INCA-Xについての、潜在的治療免疫コンジュゲートとしてのコンセプトの証明を提供している。そのサイズおよび免疫原性が原因で臨床設定では最適ではないサポリンとは対照的に、抗体-毒素分子は、細胞内部で切断されるリンカーおよび酸に不安定なリンカーシスアコニット酸無水物によりコンジュゲートされたドキソルビシンなどの強力な毒素を有する (Yangら、1988)。
【0174】
結論として、ヒト抗体INCA-Xによりもたらされる、いくつかのヒト腫瘍株化細胞への機能的および広範な内部移行により定義されるKu70/80ヘテロダイマーの新規な特徴に関して報告する。さらに、INCA-Xは、ペイロードとして毒素を坦持している場合には広範囲な細胞死も誘導した。
【0175】
(実施例2:好ましい作用物質製剤ならびに投与方法および投与量)
本発明の作用物質、薬剤および医薬組成物は、注射用徐放薬物送達システムを使って送達してよい。これらは、特に注射の頻度を減らすように設計されている。そのようなシステムの例は、注射されると持続時間にわたって緩徐にrhGHを放出する生分解性の微粒子で組換えヒト成長ホルモン(rhGH)を被包しているヌトロピンデポット(Nutropin Depot)である。
【0176】
本発明の作用物質、薬剤および医薬組成物の代替的な送達方法は、温度感受性のReGel注射可能システムである。体温以下では、ReGelは注射可能な液体であり、体温では、ReGelは、ゆっくりと浸食され既知の安全な生分解性ポリマーに溶解するゲルリザーバーを直ちに形成する。活性物質は、前記生体高分子が溶解するに従って時間をかけて送達される。
【0177】
本発明の作用物質、薬剤および医薬組成物は経口的に送達することもできる。前記過程は、身体内へのビタミンB12の経口摂取がタンパク質およびペプチドを同時送達する自然な過程を用いる。ビタミンB12摂取システムに乗せることにより、本発明の核酸、分子および作用物質製剤は腸壁を通過することができる。ビタミンB12類似物と、複合体のビタミンB12部分の内因子(IF)に対する重大な親和性および複合体の活性物質の重大な生理活性の両方を保持する薬物との間で複合体は合成される。
【0178】
ヒトの治療では、本発明の作用物質、薬剤および医薬組成物は単独で投与することができるが、一般には、目的とする投与経路および標準的薬務を考慮して選択される適切な医薬品賦形剤、希釈剤または担体と混合して投与されるであろう。
【0179】
本発明の作用物質、薬剤および医薬組成物は非経口的に、たとえば、静脈内に、動脈内に、腹腔内に、髄腔内に、脳室内に、胸骨内に、脳内に、筋肉内にもしくは皮下に投与することもでき、または注入技術により投与してもよい。本発明の作用物質、薬剤および医薬組成物は、他の物質、たとえば、溶液を血液と等張にするだけの塩類またはブドウ糖を含有していてもよい無菌水溶液の形で使用するのがもっともよい。前記水溶液は、必要であれば、適切に(好ましくは3から9のpHに)緩衝しておくほうがよい。無菌状態の下での適切な非経口製剤の調製は、当業者に公知の標準的製薬技術により容易に実現される。
【0180】
非経口投与に適した薬剤および医薬組成物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬および製剤を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有していてよい水溶性および非水溶性の無菌注射液、ならびに懸濁剤および増粘剤を含んでいてよい水溶性および非水溶性無菌懸濁剤がある。薬剤および組成物は、単位用量または複数回用量容器、たとえば、密封アンプルおよび小瓶で提示されてもよく、無菌液体担体、たとえば、注射用蒸留水を使用直前に添加するだけでよい凍結乾燥状態で保存してもよい。即席の注射溶液および懸濁液を、以前に記載しているような無菌粉末、顆粒および錠剤から調合してもよい。
【0181】
一般に、ヒトでは、本発明の発明薬の作用物質、薬剤および医薬組成物の非経口投与は好ましい経路であり、もっとも都合がよい。
【0182】
獣医学使用のために、本発明の作用物質、薬剤および医薬組成物は、通常の獣医学診療に従って適切に受容可能な処方物として投与され、獣医は特定の動物にもっとも適した投与計画および投与経路を決定することになる。都合のよいことに、処方物は製剤処方物である。有利には、処方物は獣医学処方物である。
【0183】
(実施例3:代表的な製剤処方物)
本発明の作用物質を単独で投与することは可能であるが、本発明の作用物質を、1つまたは複数の受容可能な担体と共に製剤処方物として提供するのが好ましい。担体は、本発明の作用物質と適合性でありそのレシピエントに有害ではないという意味で「受容可能」でなければならない。典型的には、前記担体は、無菌で発熱物質を含まない水または生理食塩水になるであろう。
【0184】
以下の例は、活性成分が本発明の核酸または分子である本発明に従った薬剤および医薬組成物を例示している。
【0185】
(実施例3A:注射製剤)
活性成分 0.20g
無菌、発熱物質を含まないリン酸緩衝液(pH7.0) 10mlまで
【0186】
活性成分はリン酸緩衝液の大半に溶解させ(35〜40℃)、次に容積を整え、無菌ミクロポアフィルターでろ過して、無菌10mlアンバーガラス小瓶(タイプ1)に入れて、無菌クロージャーおよびオーバーシールで密封する。
【0187】
(実施例3B:筋肉内注射)
活性成分 0.20g
ベンジルアルコール 0.10g
グルコフロール75(登録商標) 1.45g
注射用蒸留水適量 3.00mlまで
【0188】
前記活性成分をグリコフロールに溶解させる。次に、ベンジルアルコールを添加して溶解させ、水を3mlまで添加する。次に、混合液を無菌ミクロポアフィルターでろ過して、無菌3mlガラス小瓶(タイプ1)に密封する。
【0189】
[参考文献]



【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1A】INCA-X抗体の標的抗原がKu70/80であることを示す図である。 ヒト膵臓腺癌株化細胞HPACの可溶化膜画分を、M & Mに記載の通りに、20μgのINCA-Xまたは対照IgG抗体により免疫沈降させた。試料を4〜12% SDS-PAGEに供し、特徴的なタンパク質バンドをゲルから切り出して、トリプシン消化に供し、それに続いてMALDI-TOF分析に供した。
【図1B】INCA-X抗体の標的抗原がKu70/80であることを示す図である。 粘着的に増殖しているHPAC細胞を、Ku70 mRNA転写物を標的とする50nM siRNAまたは非存在転写物を標的とする50nM siRNA(すなわち負の対照siRNA)のどちらかでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を回収し、結合している抗体をフローサイトメトリーにより分析した。バーはゲートをかけた細胞集団の割合を示している。
【図2A】膵臓腺癌における、抗体誘導性の受容体により媒介されるエンドサイトーシスを示す図である。 PL45細胞をINCA-X IgG(左)または無関係なIgG抗体混合物(右)のどちらかと一緒にインキュベートした。内部移行はビオチンコンジュゲート抗ヒトIgG抗体で、続いて、Alexa-488コンジュゲートストレプトアビジンで間接的に染色することにより判定した(緑色で示す)。核はヨウ化プロビジウムで染色した(赤色)。結果は共焦点顕微鏡法により分析した。
【図2B】膵臓腺癌における抗体誘導受容体媒介エンドサイトーシスを示す図である。 INCA-X IgGは125Iに連結させて、rotating cell dish systemにおいてHPAC細胞に添加した。INCA-Xの細胞への結合(上パネル)は、空のリファレンス領域と比較して、増殖している細胞を含有する領域において抗体シグナルを記録することによりモニターした。内部移行実験では(下パネル)、内部移行率は、内部移行活性を全細胞結合活性(膜結合と内部移行)で割ることにより決定した。
【図3A】INCA-X免疫毒素コンジュゲートによる細胞増殖阻害を示す図である。 粘着的に増殖しているPC-3前立腺癌細胞を、10μg/mlサポリンコンジュゲート抗ヒト抗体(Hum-ZAP、黒色線欄)と一緒にインキュベートし、続いて、INCA-XまたはB1(すなわち非結合対照IgG1抗体)を10nMの最終濃度で添加した。INCA-X(または、対照IgG1)の癌細胞を死滅させる能力は72時間後に評価し、一次抗体で処理したウェルと比較したが、Hum-ZAPは使わなかった(灰色線欄)。バーは、±標準偏差。
【図3B】INCA-X免疫毒素コンジュゲートによる細胞増殖阻害を示す図である。 INCA-Xの間接的細胞傷害性効果は、上と同様に、種々の抗原-陽性および陰性の株化細胞上で決定した。増殖の阻害は、Hum-ZAPを添加したウェルまたは添加しないウェル間の増殖の割合として求める。
【図4】表1:MALDI-TOF MSの結果およびタンパク質同定のためのデータベース検索を示す図である。
【図5】72時間インキュベーション後のGA49グリオーマ細胞におけるINCA-X誘導間接的細胞傷害性を示す図である。細胞は抗体投与時100%コンフルエントであった。
【図6】72時間インキュベーション後のGA49グリオーマ細胞におけるINCA-X誘導間接的細胞傷害性を示す図である。細胞は抗体投与時80%コンフルエントであった。
【図7】72時間インキュベーション後のGA49グリオーマ細胞におけるINCA-X誘導間接的細胞傷害性を示す図である。細胞は抗体投与時30%コンフルエントであった。
【図8】細胞集密度が異なるGA49グリオーマ細胞におけるINCA-X誘導間接的細胞傷害性を示す図である。
【図9】ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を示す図である。
【図10】(Kabat EAら、1991, In "Sequences of Proteins of Immulogicaal Interest" Fifth Edition、NIH Publication No.91〜3242、pp xv〜xviiに従って)VHおよびVLにおけるCDR1〜3に印をつけた(下線)INCA-Xポリペプチド配列を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療における使用のための、Kuタンパク質に選択的に結合することが可能な結合部分を含む作用物質。
【請求項2】
Kuタンパク質が細胞表面に局在する、請求項1に記載の作用物質。
【請求項3】
Kuタンパク質が癌細胞表面に局在する、請求項1または2に記載の作用物質。
【請求項4】
前記作用物質が、Kuタンパク質ならびに/または前記作用物質およびKuタンパク質を含む複合体の細胞内内部移行を誘導し、かつ/または増加させることが可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項5】
前記Kuタンパク質が哺乳動物タンパク質である、請求項1から4のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項6】
前記Kuタンパク質がヒトタンパク質である、請求項1から5のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項7】
前記Kuタンパク質が、Ku-70モノマーおよび/またはKu-80モノマーを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項8】
前記Kuタンパク質がヘテロダイマーである、請求項1から7のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項9】
前記Kuタンパク質がKu-70/80ヘテロダイマーである、請求項1から8のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項10】
前記Ku70タンパク質が配列番号1のポリペプチド配列を含み、かつ/もしくは配列番号3のポリヌクレオチド配列によりコードされ、ならびに/または前記Ku80タンパク質が、配列番号2のポリペプチド配列を含み、かつ/もしくは配列番号4のポリヌクレオチド配列によりコードされている請求項1から9のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項11】
細胞傷害性部分をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項12】
前記細胞傷害性部分が、直接的にかつ/または間接的に細胞傷害性である、請求項11に記載の作用物質。
【請求項13】
前記細胞傷害性部分が、細胞内にあるときには細胞傷害性である、請求項11または12に記載の作用物質。
【請求項14】
前記細胞傷害性部分が、細胞外にあるときには細胞傷害性ではない、請求項13に記載の作用物質。
【請求項15】
前記細胞傷害性部分が、直接的細胞傷害性化学療法薬である、請求項11から14のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項16】
前記細胞傷害性部分が、直接的細胞傷害性ポリペプチドである、請求項11から15のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項17】
前記細胞傷害性部分が、非細胞傷害性プロドラッグを細胞傷害性薬物に変換することが可能である、請求項11から16のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項18】
前記細胞傷害性部分が放射線増感剤である、請求項11から17のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項19】
前記細胞傷害性部分が、非細胞傷害性プロドラッグを細胞傷害性薬物に変換することが可能である核酸分子である、請求項11から18のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項20】
前記細胞傷害性部分が直接的細胞傷害性核酸分子である、請求項11または12に記載の作用物質。
【請求項21】
前記細胞傷害性部分が、直接的および/または間接的細胞傷害性ポリペプチドをコードする核酸分子である、請求項11または12に記載の作用物質。
【請求項22】
前記細胞傷害性部分が、治療用ポリペプチドをコードする核酸分子である、請求項11または12に記載の作用物質。
【請求項23】
前記細胞傷害性部分が放射性原子を含む、請求項11または12に記載の作用物質。
【請求項24】
前記放射性原子が、リン-32;ヨウ素-125;ヨウ素-131;インジウム-111;レニウム-186;レニウム-188;イットリウム-90を含む群から選択される請求項23に記載の作用物質。
【請求項25】
容易に検出可能な部分をさらに含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項26】
前記容易に検出可能な部分が放射性原子を含む、請求項25に記載の作用物質。
【請求項27】
前記放射性原子がテクネチウム-99mまたはヨウ素-123である、請求項26に記載の作用物質。
【請求項28】
前記容易に検出可能な部分が、ヨウ素-123;ヨウ素-131;インジウム-111;フッ素-19;炭素-13;窒素-15;酸素-17;ガドリニウム;マンガン;鉄を含む群から選択される、請求項25に記載の作用物質。
【請求項29】
直接的または間接的細胞傷害性部分に選択的に結合することが可能な部分をさらに含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項30】
容易に検出可能な部分に選択的に結合することが可能な部分をさらに含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項31】
前記結合部分および前記細胞傷害性部分が、互いに融合したポリペプチドである請求項1から28のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項32】
前記結合部分がペプチドおよび/またはポリペプチドを含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の作用物質。
【請求項33】
前記結合部分が、配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;および配列番号11を含む群から選択されるポリペプチド配列を含む、請求項32に記載の作用物質。
【請求項34】
前記結合部分が抗体またはその断片を含む、請求項32または33に記載の作用物質。
【請求項35】
前記抗体またはその断片がscFvまたはFabである、請求項34に記載の作用物質。
【請求項36】
前記scFvまたはFabが配列番号11のポリペプチド配列を含む、請求項35に記載の作用物質。
【請求項37】
癌の治療のための薬剤の製造における、請求項1から36のいずれか一項に定義の作用物質の使用。
【請求項38】
前記癌が固形腫瘍である、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
前記癌が癌腫である、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記癌が、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、頚部類上皮細胞腫、多発性骨髄腫、急性単球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、神経膠芽腫を含む群から選択される請求項38または39に記載の使用。
【請求項41】
請求項1から36のいずれか一項に定義のKuタンパク質に選択的に結合することが可能な結合部分を含む作用物質。
【請求項42】
治療有効量の請求項1から36のいずれか一項または請求項41に定義の作用物質および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項43】
請求項1から36のいずれか一項もしくは請求項41に定義の作用物質および/または請求項37から40のいずれか一項に定義の薬剤および/または請求項42に定義の医薬組成物を用いた治療に潜在的に感受性の癌細胞の同定のための組成物の製造における、請求項1から36のいずれか一項または請求項41に定義の作用物質の使用。
【請求項44】
個体における癌を治療するための方法であって、有効量の、請求項1から36のいずれか一項もしくは請求項41に定義の作用物質および/または請求項37から40のいずれか一項に定義の薬剤および/または請求項42に定義の医薬組成物の有効量を個体に投与する段階を含む方法。
【請求項45】
請求項1から36のいずれか一項もしくは請求項41に定義の作用物質および/または請求項37から40のいずれか一項に定義の薬剤および/または請求項42に定義の医薬組成物を用いた治療に潜在的に感受性の癌細胞を有する個体を同定するための方法であって、
a)試験する個体由来の1つまたは複数の癌細胞を含む試料を提供する段階と、
b)前記試料を、請求項1から36のいずれか一項もしくは請求項41に定義の作用物質および/または請求項37から40のいずれか一項に定義の薬剤および/または請求項42に定義の医薬組成物と組み合わせる段階と、
c)前記作用物質および/または薬剤および/または医薬組成物の、前記1つまたは複数の癌細胞の表面に局在するKuタンパク質との結合、ならびにその後のKuタンパク質の細胞内内部移行を判定する段階と、
d)前記作用物質および/または薬剤および/または医薬組成物が、前記1つまたは複数の癌細胞の表面に局在するKuタンパク質の細胞内内部移行を誘導および/または促進する場合に、治療に潜在的に感受性の癌細胞を有する個体を同定する段階と
を含む方法。
【請求項46】
細胞の表面に局在するKuタンパク質に選択的に結合し、Kuタンパク質の細胞内内部移行を誘導し、かつ/または増加させることが可能な作用物質を同定するための方法であって、
a)1つまたは複数の細胞の表面に局在するKuタンパク質を含む試料を提供する段階と、
b)前記試料を、試験する作用物質と組み合わせる段階と、
c)前記作用物質が前記1つまたは複数の細胞の表面に局在するKuタンパク質に結合するかどうか、および、続いて、Kuタンパク質が内部移行されるかどうかを判定する段階と、
d)前記作用物質が細胞の表面に局在するKuタンパク質に選択的に結合し、Kuタンパク質の細胞内内部移行を誘導し、かつ/または増加させることが可能である場合に、作用物質を同定する段階と
を含む方法。
【請求項47】
e)段階(d)において同定される作用物質を合成および/または単離する段階、
をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
段階(d)において同定され、かつ/または段階(e)において合成および/もしくは単離される作用物質を医薬組成物に処方する段階をさらに含む、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
請求項1から36のいずれか一項または請求項41に定義の作用物質またはその結合部分をコードする核酸分子。
【請求項50】
請求項49に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項51】
請求項49に記載の核酸分子を含む組換え宿主細胞。
【請求項52】
前記宿主細胞が細菌細胞である、請求項51に記載の組換え宿主細胞。
【請求項53】
前記宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項52に記載の組換え宿主細胞。
【請求項54】
請求項1から36のいずれか一項または請求項41に定義の作用物質またはその結合部分を作製する方法であって、請求項49に記載の核酸分子もしくは請求項50に記載の発現ベクターを発現させる段階、または請求項51から53のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養する段階を含む方法。
【請求項55】
請求項17に記載の作用物質および比較的に非毒性のプロドラッグを含むキット。
【請求項56】
実質的に本明細書に記載の、Kuタンパク質に選択的に結合することが可能な結合部分を含む作用物質。
【請求項57】
癌の治療のための薬剤の製造における、実質的に本明細書に記載の作用物質の使用。
【請求項58】
実質的に本明細書に記載の医薬組成物。
【請求項59】
実質的に本明細書に記載の個体における癌を治療するための方法。
【請求項60】
実質的に本明細書に記載の作用物質および/または薬剤および/または医薬組成物を用いた治療に潜在的に感受性の癌細胞を有する個体を同定するための方法。
【請求項61】
実質的に本明細書に記載の、細胞の表面に局在するKuタンパク質に選択的に結合し、前記Kuタンパク質の細胞内内部移行を誘導し、かつ/または増加させることが可能な作用物質を同定するための方法。
【請求項62】
本明細書で定義される作用物質または実質的に本明細書で定義されるその結合部分をコードする核酸分子。
【請求項63】
実質的に本明細書で定義される、核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項64】
実質的に本明細書で定義される、核酸分子を含む組換え宿主細胞。
【請求項65】
実質的に本明細書で定義される、作用物質を作製する方法。
【請求項66】
実質的に本明細書に記載のキット。

【図1B】
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【図2B】
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【図4】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図10】
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【図1A】
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【図2A】
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【図3A】
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【図3B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−534316(P2009−534316A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504638(P2009−504638)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003216
【国際公開番号】WO2007/115829
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(506209743)バイオインヴェント インターナショナル アーベー (9)
【Fターム(参考)】