説明

併用療法を使用した眼疾患及び過剰血管新生の治療

本発明は、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物の投与を含む併用療法により、眼疾患並びに血管新生関連疾患を治療する又は予防する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物の投与を含む併用療法により、眼疾患並びに血管新生関連疾患を治療する又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生
血管新生(又は新生血管形成)は、新しい血管の形成及び分化である。血管新生は一般に健常成人又は成熟組織においては存在しない。しかし、創傷を治癒するため及び損傷又は傷害後に組織への血流を回復するために健康な身体で血管新生が起こる。女性では、血管新生はまた、月経周期の間及び妊娠期間中にも起こる。これらのプロセスの下で、新たな血管の形成が厳密に調節される。
【0003】
血管新生と疾患
多くの重症疾患状態において、身体は血管新生に対する制御を喪失する。過度の血管新生が、疾患、例えば癌、黄斑変性、糖尿病性網膜症、関節炎及び乾癬などにおいて起こる。これらの状態では、新たな血管が疾患組織に栄養供給し、正常組織を破壊して、癌の場合には、新たな血管が腫瘍細胞を循環中へと漏出させ、他の器官に停留させる(腫瘍転移)。
【0004】
腫瘍増殖が血管新生依存性であるという仮説は1971年に初めて提案された(Folkman, 1971)。簡単に言うとその仮説は、一定の段階を超えた腫瘍容積の拡大は新しい毛細血管の誘導を必要とすると提案する。例えば、マウスにおける早期前血管期の肺の微小転移は、組織切片に関する高倍率顕微鏡検査による以外は検出不能である。さらに、腫瘍増殖が血管新生依存性であるという概念を裏付ける間接的な証拠は、米国特許第5,639,725号、同第5,629,327号、同第5,792,845号、同第5,733,876号、及び同第5,854,205号に認められる。
【0005】
血管新生を刺激するため、腫瘍は、自らの、線維芽細胞増殖因子(αFGF及びβFGF)(Kandel et al., 1991)及び血管内皮細胞増殖因子/血管透過因子(VEGF/VPF)及びHGFを含む様々な血管新生因子の産生を上方調節する。しかし、多くの悪性腫瘍は、アンギオスタチンタンパク質及びトロンボスポンジンを含む血管新生阻害剤も生成する(Chen et al., 1995; Good et al., 1990; O'Reilly et al., 1994)。血管新生表現型は、これらの正の新生血管形成調節因子と負の調節因子の間の最終的な平衡の結果であると考えられている(Good et al., 1990; O'Reilly et al., 1994)。血管新生のいくつかの他の内因性阻害剤も同定されているが、必ずしもすべてが腫瘍の存在に関連するとは限らない。これらは、血小板第4因子(Gupta et al., 1995; Maione et al., 1990)、インターフェロン−α、インターロイキン−12及び/又はインターフェロン−γによって誘導される(Voest et al., 1995)インターフェロン誘導性タンパク質10(Angiolillo et al., 1995; Strieter et al., 1995)、gro−β(Cao et al., 1995)及びプロラクチンの16kDaのN末端フラグメント(Clapp et al., 1993)を含む。
【0006】
眼疾患
眼の組織又は構造の機能不全によって引き起こされる多くの眼疾患又は障害は、視力の低下又は完全な視力喪失を導き得る。眼科疾患、例えばテレビ、コンピュータ、ゲーム機及び他のデジタル機器、並びにコンタクトレンズの広範な使用によるドライアイ及び眼精疲労を含む疾患が近年増加している。
【0007】
眼疾患のうちで、加齢黄斑変性(AMD)は西洋社会の高齢者集団において特によく認められる。AMDは、65歳以上の患者で並びに米国、カナダ、イングランド、ウェールズ、スコットランド及びオーストラリアにおいて、合法的な不可逆的失明の最も一般的な原因である。最初の眼の中心視力を喪失するときの患者の平均年齢は約65歳であるが、一部の患者は40代又は50代でこの疾患の徴候を発現する。この疾患に罹患する人々の数は、我々の現代のライフスタイルと平均余命の延長のために着実に増加しつつある。
【0008】
眼における新生血管形成は、重症眼疾患、例えばAMD及び糖尿病性網膜症の基本である。患者の約10%〜15%が滲出型のこの疾患を発現する。滲出型AMDは血管新生及び病的新生血管系の形成を特徴とする。この疾患は両側性であり、他方の眼が失明に至る障害を発症する可能性は1年ごとに約10%〜15%ずつ累積する。
【0009】
糖尿病性網膜症は、I型糖尿病又はII型糖尿病のいずれかを有すると診断された患者の約40〜45%で起こる糖尿病の合併症である。糖尿病性網膜症は通常両眼に生じ、4つの病期にわたって進行する。第1期の軽度非増殖性網膜症は、眼内の微細動脈瘤を特徴とする。網膜の毛細血管及び小血管に腫脹の小さな領域が発生する。第2期の中等度非増殖性網膜症では、網膜に供給する血管が閉塞されるようになる。重度非増殖性網膜症である第3期では、閉塞した血管が網膜への血液供給の減少を導き、網膜は、網膜に血液供給をもたらすために新たな血管を発生させる(血管新生)ように眼にシグナル伝達する。最も進行した第4期の増殖性網膜症では、血管新生が起こるが、新たな血管は異常であり、脆弱で、網膜及び眼を満たす硝子体ゲルの表面に沿って増殖する。これらの薄い血管が破裂するか又は血液を漏出した場合、重度の視力喪失又は失明が生じ得る。
【0010】
ベバシズマブは、AMDを治療するために使用されてきた化合物であるが、この治療の副作用は網膜剥離の増加である(Chan et al., 2007; Kook et al., 2008; Garg et al., 2008)。
【0011】
加齢と共に、硝子体液はゲルから液体へと変化し、それと共に徐々に収縮して、網膜のILMから分離する。この過程は「後部硝子体剥離」(PVD)として知られ、40歳以降では普通に起こる。しかし、硝子体の変性性変化はまた、病的状態、例えば糖尿病、イールズ病及びブドウ膜炎によっても誘発され得る。また、PVDは近視の人々及び白内障の手術を受けた人々においては普通よりも早期に起こり得る。通常、硝子体は網膜から明瞭に分離している(the vitreous makes a clean break from the retina)。時として、しかしながら、硝子体が特定の場所で網膜に密接に接着する。硝子体の抵抗性で異常に堅固な結合のこれらの小さな病巣は、結合部位において硝子体から網膜への大きな牽引力を伝達し得る。硝子体によるこの持続的な牽引は、しばしば網膜に馬蹄形の裂傷を生じさせる。網膜の裂傷が修復されなければ、硝子体液はこの裂傷を通して網膜内又は網膜の下部へと滲出し、非常に重篤な視力を脅かす状態である網膜剥離を引き起こし得る。加えて、硝子体とILMの間の持続的な結合は、血管の破裂による出血を生じさせることがあり、これは硝子体の混濁及び不透明化をもたらす。
【0012】
不完全なPVDの発生は、硝子体黄斑牽引症候群、硝子体出血、黄斑円孔、黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑症及び網膜剥離を含む、多くの硝子体網膜疾患に影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,639,725号
【特許文献2】米国特許第5,629,327号
【特許文献3】米国特許第5,792,845号
【特許文献4】米国特許第5,733,876号
【特許文献5】米国特許第5,854,205号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Folkman, 1971
【非特許文献2】Kandel et al., 1991
【非特許文献3】Chen et al., 1995
【非特許文献4】Good et al., 1990
【非特許文献5】O'Reilly et al., 1994
【非特許文献6】Good et al., 1990
【非特許文献7】O'Reilly et al., 1994
【非特許文献8】Gupta et al., 1995
【非特許文献9】Maione et al., 1990
【非特許文献10】Voest et al., 1995
【非特許文献11】Angiolillo et al., 1995
【非特許文献12】Strieter et al., 1995
【非特許文献13】Cao et al., 1995
【非特許文献14】Clapp et al., 1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
眼疾患及び/又は血管新生関連障害を治療又は予防するために使用できる付加的な療法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、驚くべきことに、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物を含む併用療法が、眼疾患を治療する又は予防するために使用された場合、相乗作用的であることを見出した。そこで、最初の態様では、本発明は、被験者において眼疾患を治療する又は予防する方法であって、i)細胞、及びii)血管内皮増殖因子(VEGF)シグナル伝達を破壊する化合物を被験者に投与することを含む方法を提供する。
【0017】
本発明の方法を用いて治療又は予防できる眼疾患の例は、網膜虚血、網膜炎症、網膜浮腫、網膜剥離、黄斑円孔、牽引性網膜症、硝子体出血、牽引性黄斑症、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶反応、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症及び/又はルベオーシスを含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、眼疾患は、網膜剥離、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症及び/又は黄斑変性である。
【0018】
1つの実施形態では、黄斑変性は、萎縮型加齢黄斑変性又は滲出型加齢黄斑変性である。好ましくは、黄斑変性は滲出型加齢黄斑変性である。
【0019】
以前に、出願人は、幹細胞又はその子孫が血管新生関連障害を治療する又は予防するために使用できることを示した(国際公開公報第2008/006168号参照)。出願人はまた、驚くべきことに、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物を含む併用療法が、血管新生関連障害を治療する又は予防するために使用された場合、相乗作用的であることを見出した。そこで、第2の態様では、本発明は、被験者において血管新生関連疾患を治療する又は予防する方法であって、i)細胞、及びii)血管内皮増殖因子(VEGF)シグナル伝達を破壊する化合物を被験者に投与することを含む方法を提供する。
【0020】
本発明の方法を用いて治療又は予防できる血管新生関連疾患の例は、血管新生依存性癌、良性腫瘍、関節リウマチ、乾癬、眼血管新生疾患、オスラー−ウェーバー症候群、心筋血管新生、プラーク新生血管形成、毛細血管拡張症、血友病性関節症、血管線維腫、創傷肉芽形成、腸管癒着、アテローム性動脈硬化症、強皮症、過形成性瘢痕、ネコ引っ掻き病及びヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)潰瘍を含むが、これらに限定されない。
【0021】
1つの実施形態では、細胞は、幹細胞又はその子孫細胞である。好ましい実施形態では、幹細胞は骨髄又は眼から得られる。
【0022】
好ましくは、幹細胞は間葉系前駆細胞(MPC)である。好ましくは、間葉系前駆細胞は、TNAP、STRO−1、VCAM−1、THY−1、STRO−2、CD45、CD146、3G5又はそれらの任意の組合せである。もう1つの実施形態では、STRO−1細胞の少なくとも一部はSTRO−1briである。
【0023】
さらなる実施形態では、MPCは培養増殖されておらず、TNAPである。
【0024】
好ましい実施形態では、子孫細胞はMPCをインビトロで培養することによって得られる。
【0025】
1つの実施形態では、化合物は、血管内皮増殖因子に結合する、及び/又は血管内皮増殖因子の産生を低下させる。好ましくは、血管内皮増殖因子は、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C及び/又はVEGF−Dである。より好ましくは、血管内皮増殖因子はVEGF−Aである。
【0026】
1つの実施形態では、血管内皮増殖因子の産生を低下させる化合物は、低酸素誘導因子1(HIF−1)に結合する、及び/又は低酸素誘導因子1の産生を低下させる。
【0027】
選択的実施形態では、化合物は、血管内皮増殖因子受容体に結合する、及び/又は血管内皮増殖因子受容体の産生を低下させる。好ましくは、血管内皮増殖因子受容体は、VEGFR1、VEGFR2及び/又はVEGFR3から選択される。より好ましくは、血管内皮増殖因子受容体はVEGFR1及び/又はVEGFR2である。
【0028】
さらにもう1つの選択的実施形態では、化合物は、血管内皮増殖因子受容体、例えばVEGFRチロシンキナーゼに結合する血管内皮増殖因子によって誘導される細胞内シグナル伝達に関与する分子に結合する、及び/又は前記分子の産生を低下させる。
【0029】
1つの実施形態では、化合物はポリペプチドである。より好ましくは、ポリペプチドは、抗体、抗体関連分子、及び/又はそのいずれか1つのフラグメントである。
【0030】
もう1つの実施形態では、化合物はポリヌクレオチドである。例としては、アンチセンスポリヌクレオチド、センスポリヌクレオチド、触媒ポリヌクレオチド、二本鎖RNA分子、又はそれらのいずれか1つ又はそれ以上をコードするポリヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。
【0031】
1つの実施形態では、細胞の少なくとも一部は遺伝的に修飾されている。
【0032】
また、被験者において眼疾患を治療する又は予防するための併用療法における使用のための薬剤を製造するための、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物の使用が提供される。
【0033】
さらに、被験者において眼疾患を治療する又は予防するための併用療法における使用のための薬剤としての、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物の使用が提供される。
【0034】
また、被験者において血管新生関連障害を治療する又は予防するための併用療法における使用のための薬剤を製造するための、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物の使用が提供される。
【0035】
さらに、被験者において血管新生関連障害を治療する又は予防するための併用療法における使用のための薬剤としての、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物の使用が提供される。
【0036】
さらなる態様では、本発明は、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物、並びに、場合により医薬的に許容される担体を含有する組成物を提供する。
【0037】
もう1つの態様では、本発明は、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物を含むキットを提供する。細胞及び化合物は、同じか又は異なる容器中に存在し得る。
【0038】
明白であるように、本発明の1つの態様の好ましい特徴及び特性は、本発明の多くの他の態様に適用される。
【0039】
本明細書全体を通じて、「comprise(含む)」という語又は「comprises」若しくは「comprising」などの変形は、言明される要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群の包含を意味するが、任意の他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群の排除を意味しないことが了解される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】試験計画。
【図2】同種異系MPCは、血管漏出を低減するうえで抗VEGFと等価であり、抗VEGFと相乗作用性である。
【図3】抗VEGFと同種異系MPCの組合せは重度の漏出血管を除去する。
【図4】高度漏出血管への同種異系MPCと抗VEGFの組合せの相乗作用的効果。
【図5】同種異系MPCと抗VEGFの併用による第4期疾患の持続的な予防。しかし抗VEGF単独では短命な作用しか及ぼさない。
【図6】抗VEGFと同種異系MPCの組合せは、第1期疾患においてより高い割合のレーザー損傷血管を維持する。
【図7】抗VEGFと同種異系MPCの組合せは網膜剥離を予防する。
【図8】抗VEGFと同種異系MPCの組合せは、レーザー誘導新生血管形成後の網膜剥離を予防する。
【0041】
配列表のキーポイント
配列番号:1−ヒトVEGF−A(活性なプロセシングされたペプチド(active processed peptide))。
配列番号:2−ヒトVEGF−B(活性なプロセシングされたペプチド)。
配列番号:3−ヒトVEGF−C(活性なプロセシングされたペプチド)。
配列番号:4−ヒトVEGF−D(活性なプロセシングされたペプチド)。
配列番号:5−ヒトVEGFR−1(マイナスシグナル配列)。
配列番号:6−ヒトVEGFR−2(マイナスシグナル配列)。
配列番号:7−ヒトVEGFR−3(マイナスシグナル配列)。
配列番号:8−ヒトHIF−1α。
配列番号:9−完全長ヒトVEGF−Aについてのコード配列。
配列番号:10−完全長ヒトVEGF−Bについてのコード配列。
配列番号:11−完全長ヒトVEGF−Cについてのコード配列。
配列番号:12−完全長ヒトVEGF−Dについてのコード配列。
配列番号:13−完全長ヒトVEGFR−1についてのコード配列。
配列番号:14−完全長ヒトVEGFR−2についてのコード配列。
配列番号:15−完全長ヒトVEGFR−3についてのコード配列。
配列番号:16−ヒトHIF−1αについてのコード配列。
【発明を実施するための形態】
【0042】
一般的技術
特に明記されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術及び学術用語は、当業者(例えば幹細胞生物学、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学及び生化学における当業者)によって一般的に理解されているのと同じ意味を有すると解釈される。
【0043】
異なる指示がない限り、本発明において利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技術は当業者に周知の標準的手順である。そのような技術は、文献全体にわたって、例えば、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984), J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989), T.A. Brown (editor), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991), D. M. Glover and B. D. Hames (editors), DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes 1-4, IRL Press (1995 and 1996), and F.M. Ausubel et al. (editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988, 現在までのすべての改訂を含む), Ed Harlow and David Lane (editors) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory, (1988), and J.E. Coligan et al. (editors) Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons(現在までのすべての改訂を含む)などの出典において記述され、説明されている。
【0044】
疾患の治療又は予防
本明細書で使用される場合、「被験者」という用語(本明細書では「患者」とも称される)は、温血動物、好ましくはヒトを含む哺乳動物を包含する。被験者は、例えば家畜(例えばヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ)、ペット動物(例えばイヌ、ネコ)、実験動物(例えばマウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)、又は捕獲野生動物(例えばキツネ、シカ)であり得る。好ましい実施形態では、被験者は霊長動物である。さらに一層好ましい実施形態では、被験者はヒトである。
【0045】
本明細書で使用される場合、「治療すること」、「治療する」、又は「治療」という用語は、眼疾患及び/又は血管新生関連障害の少なくとも1つの症状を低減する又は排除するために十分な、本明細書で定義される細胞の治療有効量、及び本明細書で定義される化合物の治療有効量を投与することを含む。1つの実施形態では、疾患は滲出型加齢黄斑変性であり、本発明の方法は、疾患の重症度を低減する及び/又は疾患の再発を遅延させる又は予防する。もう1つの実施形態では、本発明の方法は、血管内皮増殖因子(VEGF)シグナル伝達を破壊する化合物単独の投与よりも長い作用期間を有する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「予防すること」、「予防する」又は「予防」という用語は、眼疾患及び/又は血管新生関連障害の少なくとも1つの症状の発現を阻止する又は妨げるために十分な、本明細書で定義される細胞の治療有効量、及び本明細書で定義される化合物の治療有効量を投与することを含む。
【0047】
眼疾患
本明細書で使用される場合、「眼疾患」は、眼又は眼の部分若しくは領域の1つを侵す又は含む疾患、病気又は状態である。眼は、眼球並びに眼球を構成する組織及び液体、眼周囲筋(例えば斜筋及び直筋)並びに眼球内にある又は眼球に隣接する視神経の部分を含む。
【0048】
1つの実施形態では、眼疾患は、少なくとも一部には、網膜剥離及び/又は血管漏出を特徴とする。
【0049】
本発明の方法は、眼の何らかの疾患若しくは眼に関連する何らかの疾患、又は1つの実施形態では、何らかの眼障害を予防する又は治療するために使用し得ることが理解される。本発明の方法を用いて治療又は予防できる眼疾患の例は、上強膜炎、強膜炎、糖尿病性網膜症、緑内障、黄斑変性、網膜剥離、1色覚/Maskun、弱視、屈折左右不同症、アーガイル・ロバートソン瞳孔、乱視、屈折左右不同症、盲、霰粒腫、色覚異常、1色覚/Maskun、内斜視、外斜視、フローター、硝子体剥離、フックスジストロフィー、遠視(hypermetropia, hyperopia)、高血圧性網膜症、虹彩炎、円錐角膜、レーバー先天性黒内障、レーバー遺伝性視神経障害、黄斑浮腫、近視、夜盲症、進行性外眼筋麻痺及び内眼筋麻痺を含む眼筋麻痺、眼筋不全麻痺、老視、翼状片、赤く充血した目(red eye)(医学)、色素性網膜炎、未熟児網膜症、網膜分離症、河川盲目症、眼筋麻痺、暗点、雪盲/アークアイ(arc eye)、眼瞼障害、下垂症、眼球外腫瘍、斜視を含むが、これらに限定されない。
【0050】
1つの好ましい実施形態では、本発明の方法は、黄斑変性を予防する又は治療するために使用し得る。1つの実施形態では、黄斑変性は黄斑への損傷又は黄斑の破壊を特徴とし、これは、1つの実施形態では、眼の後部の小さな領域である。1つの実施形態では、黄斑変性は中心視力の進行性喪失を引き起こすが、完全な失明には至らない。1つの実施形態では、黄斑変性は萎縮型であり、また別の実施形態では、黄斑変性は滲出型である。1つの実施形態では、委縮型は、黄斑組織の菲薄化及び機能喪失を特徴とする。1つの実施形態では、滲出型は、黄斑の後部の異常血管の増殖を特徴とする。1つの実施形態では、異常血管は出血又は漏出し、治療されなければ瘢痕組織の形成を生じさせる。一部の実施形態では、委縮型の黄斑変性は滲出型に変化し得る。1つの実施形態では、黄斑変性は加齢性であり、これは、1つの実施形態では、網膜色素上皮の下の線維血管組織の増殖を伴うブルーフ膜の欠損を通して、脈絡膜毛細血管の内殖によって引き起こされる。
【0051】
もう1つの好ましい実施形態では、本発明の方法は、網膜症を予防する又は治療するために使用し得る。1つの実施形態では、網膜症は網膜の疾患を指し、これは、1つの実施形態では炎症を特徴とし、また別の実施形態では眼の内部の血管損傷に起因する。1つの実施形態では、網膜症は糖尿病性網膜症であり、これは、1つの実施形態では、網膜の血管の変化によって引き起こされる糖尿病の合併症である。1つの実施形態では、網膜内の血管は、血液を漏出し及び/又は脆弱な刷毛様の分枝及び瘢痕組織を成長させ、これは、1つの実施形態では、網膜が脳に送る像を不鮮明にする又は変形させる。もう1つの実施形態では、網膜症は増殖性網膜症であり、これは、1つの実施形態では、網膜の表面の新たな異常血管の増殖(新生血管形成)を特徴とする。1つの実施形態では、瞳孔の周囲の新生血管形成は眼内の圧を上昇させ、これは、1つの実施形態では、緑内障を導く。もう1つの実施形態では、新生血管形成は、壊れて出血する又は瘢痕組織を増殖させる脆弱な壁を有する新しい血管を導き、これは、1つの実施形態では、網膜を眼の後部から引き離す(網膜剥離)。1つの実施形態では、網膜症の病因は、非酵素的糖化反応、糖酸化反応、進行した糖化反応の最終産物の蓄積、フリーラジカル媒介性タンパク質損傷、マトリックスメタロプロテイナーゼの上方調節、増殖因子の精緻化(elaboration)、血管内皮中の接着分子の分泌、又はそれらの組合せに関連する。
【0052】
もう1つの好ましい実施形態では、網膜症は未熟児網膜症(ROP)を指し、これは、1つの実施形態では、異常な血管と瘢痕組織が網膜上で成長する場合に未熟児において起こる。1つの実施形態では、未熟児網膜症は、未熟児の生存を促進するために必要な治療によって引き起こされる。
【0053】
もう1つの好ましい実施形態では、本発明の方法は、中でも特に裂孔原性、牽引性又は滲出性網膜剥離を含む、網膜剥離を予防する又は治療するために使用され得、網膜剥離は、1つの実施形態では、網膜のその支持層からの分離である。1つの実施形態では、網膜剥離は、眼内液が漏出し得ることを介した網膜における裂傷又は円孔に関連する。1つの実施形態では、網膜剥離は、外傷、老化過程、重症糖尿病、炎症性障害、新生血管形成、又は未熟児網膜症によって引き起こされ、また別の実施形態では、自然発生的に起こる。1つの実施形態では、小さな網膜血管からの出血が剥離の間に硝子体を混濁させることがあり、これは、1つの実施形態では、不鮮明な変形した像を生じさせ得る。1つの実施形態では、網膜剥離は、失明を含む重度の視力喪失を引き起こし得る。
【0054】
血管新生
本明細書で使用される場合、「血管新生」という用語は、新たな及び/又は発生中の血管の組織内への成長を含む組織血管形成の過程と定義され、新生血管形成とも称される。この過程は、3つの方法:血管が既存の血管から出芽し得る、血管の新たな発生が前駆細胞から生じ得る(血管形成)、及び/又は存在する小血管の直径が拡大し得る方法のいずれかで進行し得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、「血管新生関連疾患」は、過剰な及び/又は異常な新生血管形成を特徴とする何らかの状態である。任意の血管新生関連疾患が本発明の方法を用いて治療又は予防され得る。血管新生関連疾患は、血管新生依存性癌、例えば固形腫瘍、血液媒介性腫瘍、例えば白血病及び腫瘍転移;良性腫瘍、例えば血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ及び化膿性肉芽腫;関節リウマチ;乾癬;眼血管新生疾患、例えば糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、未熟児網膜症、委縮型加齢黄斑変性及び滲出型加齢黄斑変性を含む黄斑変性、角膜移植片拒絶反応、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、ルベオーシス;オスラー−ウェーバー症候群;心筋血管新生盲(myocardial angiogenesis blindness);プラーク新生血管形成;毛細血管拡張症;血友病性関節症;血管線維腫;並びに創傷肉芽形成を含むが、これらに限定されない。本発明の方法はまた、病的結果としての血管新生を有する疾患、例えばネコ引っ掻き病(Rochele minalia quintosa)及び潰瘍(ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylorii))の治療又は予防においても有用である。
【0056】
好ましい実施形態では、血管新生関連疾患は眼血管新生疾患である。本明細書で使用される場合、「眼血管新生疾患」は、過剰な及び/又は異常な新生血管形成を特徴とする何らかの眼の疾患である。例としては、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶反応、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症及びルベオーシスを含むが、これらに限定されない。
【0057】
幹細胞及びその子孫細胞
細胞は、眼疾患及び/又は血管新生関連障害を治療するために使用できる任意の細胞型であり得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「幹細胞」という用語は、表現型的及び遺伝子型的に同一の娘細胞並びに少なくとも1つの他の最終的細胞型(例えば最終分化した細胞)を生じさせることができる自己更新細胞を指す。「幹細胞」という用語は、全能性、多能性(pluripotential)及び多分化能性(multipotential)細胞、並びにそれらの分化に由来する始原細胞及び/又は前駆細胞を包含する。
【0059】
本明細書で使用される場合、「全能細胞」又は「全能性細胞」という用語は、完全な胚(例えば胚盤胞)を形成することができる細胞を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「多能細胞」又は「多能性細胞」という用語は、完全な分化多様性、すなわち哺乳動物の身体の約260の細胞型のいずれにも成長する能力を有する細胞を指す。多能細胞は自己更新性であり得、また組織内で休眠又は静止したままであり得る。
【0061】
「多分化能性細胞」又は「多分化能細胞」により、いくつかの成熟細胞型のいずれかを生じさせることができる細胞が意味される。本明細書で使用される場合、この語句は、成体又は胚性幹細胞及び始原細胞、例えば間葉系前駆細胞(MPC)及びこれらの細胞の多分化能性子孫を包含する。多能細胞とは異なり、多分化能細胞はすべての細胞型を形成する能力は有さない。
【0062】
本明細書で使用される場合、「始原細胞」という用語は、特定の細胞型に分化する又は特定の組織型を形成するように分化決定された細胞を指す。
【0063】
間葉系前駆細胞(MPC)は、骨髄、血液、歯髄細胞、脂肪組織、皮膚、脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓、心臓、網膜を含む眼、脳、毛包、腸、肺、リンパ節、胸腺、骨、靭帯、腱、骨格筋、真皮、及び骨膜において認められる細胞であり、種々の生殖細胞系、例えば中胚葉、内胚葉及び外胚葉に分化することができる。従って、MPCは、脂肪組織、骨組織、軟骨組織、弾性組織、筋肉組織及び線維性結合組織を含むがこれらに限定されない、数多くの細胞型に分化することができる。これらの細胞が入る特定系列の決定及び分化経路は、機械的影響及び/又は内因性生物活性因子、例えば増殖因子、サイトカイン、及び/又は宿主組織によって確立される局所的微小環境条件からの様々な影響に依存する。間葉系前駆細胞は、従って、非造血始原細胞であり、それらが分裂して幹細胞又は前駆細胞のいずれかである娘細胞を生じさせ、それらがやがて不可逆的に分化して1つの表現型の細胞を生じる。
【0064】
好ましい実施形態では、本発明の方法において使用される細胞は、被験者から得た試料から富化される。「富化される」、「富化」という用語又はそれらの変形は、1つの特定細胞型の比率又は多数の特定細胞型の比率が未処理集団と比較して高められている細胞の集団を表すために本明細書で使用される。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明において使用される細胞は、TNAP、STRO−1、VCAM−1、THY−1、STRO−2、CD45、CD146、3G5又はそれらの任意の組合せである。好ましくは、STRO−1細胞は、STRO−1明るい(bright)である。好ましくは、STRO−1明るい細胞は、さらにVCAM−1、THY−1、STRO−2及び/又はCD146の1又はそれ以上である。
【0066】
1つの実施形態では、間葉系前駆細胞は、国際公開公報第2004/85630において定義される血管周囲間葉系前駆細胞である。
【0067】
本発明者らが、細胞を所与のマーカーに関して「陽性」であると称する場合、それは、マーカーが細胞表面に存在する程度に依存して、そのマーカーの低(lo若しくは暗い(dim))発現因子又は高(明るい若しくはbri)発現因子のいずれかであり得、その場合、前記用語は、細胞の色選別工程において使用される蛍光又は他の色の強度に関する。lo(又は暗い若しくはくすんだ(dull))とbriの区別は、選別される特定細胞集団について使用されるマーカーに関連して理解される。本発明者らが、本明細書において細胞を所定のマーカーに関して「陰性」であると称する場合、それは、マーカーがその細胞によって全く発現されないことを意味するのではない。それは、マーカーがその細胞によって相対的に非常に低いレベルで発現されること、及び検出可能に標識されたとき非常に低いシグナルを生じることを意味する。
【0068】
「明るい」という用語は、本明細書で使用される場合、検出可能に標識されたとき相対的に高いシグナルを生じる細胞表面のマーカーを指す。理論に拘束されることを望むものではないが、「明るい」細胞は、試料中の他の細胞よりも多くの標的マーカータンパク質(例えばSTRO−1によって認識される抗原)を発現すると提案される。例えば、STRO−1bri細胞は、FACS分析によって測定されるFITC結合STRO−1抗体で標識されたとき、明るくない細胞(STRO−1くすんだ/暗い)よりも大きな蛍光シグナルを生じさせる。好ましくは、「明るい」細胞は、出発試料に含まれる最も明るく標識された骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%を構成する。他の実施形態では、「明るい」細胞は、出発試料に含まれる最も明るく標識された骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、又は少なくとも約2%を構成する。好ましい実施形態では、STRO−1明るい細胞は、STRO−1表面発現の2対数分(2 log magnitude)高い発現を有する。これは、「バックグラウンド」、すなわちSTRO−1である細胞と比較して計算される。比較すると、STRO−1暗い及び/又はSTRO−1中間(intermediate)細胞は、STRO−1表面発現の2対数未満分高い発現、典型的には「バックグラウンド」より約1対数又はそれ未満分高い発現を有する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「TNAP」という用語は、組織非特異的アルカリホスファターゼのすべてのアイソフォームを包含することが意図されている。例えば、この用語は、肝アイソフォーム(LAP)、骨アイソフォーム(BAP)及び腎アイソフォーム(KAP)を包含する。好ましい実施形態では、TNAPはBAPである。特に好ましい実施形態では、本明細書で使用されるTNAPは、ブタペスト条約の規定に従って寄託アクセッション番号PTA−7282の下に2005年12月19日にATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生されるSTRO−3抗体に結合することができる分子を指す。
【0070】
さらに、好ましい実施形態では、前記細胞はクローン原性CFU−Fを生じさせることができる。
【0071】
有意の割合の多分化能性細胞が、少なくとも2つの異なる生殖細胞系に分化できることが好ましい。多分化能性細胞が分化決定され得る系列の非限定的な例としては、骨前駆細胞;胆管上皮細胞及び肝細胞への多分化能性を有する、肝細胞始原細胞;乏突起神経膠細胞及び神経膠星状細胞へと進行する膠前駆細胞を生じることができる、神経限定細胞(neural restricted cell);ニューロンへと進行する神経前駆細胞;心筋及び心筋細胞の前駆細胞、グルコース応答性インスリン分泌膵β細胞株を含む。他の系列は、象牙芽細胞、象牙質産生細胞及び軟骨細胞、並びに以下の細胞の前駆細胞:網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、皮膚細胞、例えばケラチノサイト、樹状細胞、毛包細胞、腎管上皮細胞、平滑筋及び骨格筋細胞、精巣始原細胞、血管内皮細胞、腱細胞、靭帯細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、骨髄間質細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、周皮細胞、血管細胞、上皮細胞、神経膠細胞、神経細胞、神経膠星状細胞及び乏突起神経膠細胞、を含むが、これらに限定されない。
【0072】
1つの実施形態では、幹細胞及びその子孫は、周皮細胞に分化することができる。
【0073】
もう1つの実施形態では、「多分化能性細胞」は、培養後、造血細胞を生じさせることができない。
【0074】
本発明の方法のために有用な幹細胞は、成体組織、胚、又は胎児に由来し得る。「成体」という用語はその最も広い意味で使用され、出生後被験者を包含する。好ましい実施形態では、「成体」という用語は、思春期後である被験者を指す。本明細書で使用される「成体」という用語はまた、女性から採取される臍帯血も包含し得る。
【0075】
本発明はまた、本明細書で述べる幹細胞のインビトロ培養から産生される子孫細胞(増殖細胞とも称され得る)の使用に関し、幹細胞の直接の子孫並びにその子孫等を包含する。本発明の増殖細胞は、培養条件(培地中の刺激因子の数及び/又は種類を含む)、継代数等に依存して多種多様な表現型を有し得る。特定実施形態では、子孫細胞は、親集団から約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9又は約10継代後に得られる。しかし、子孫細胞は、親集団からの任意の回数の継代後に得られ得る。
【0076】
子孫細胞は、任意の適切な培地での培養によって得られ得る。「培地」という用語は、細胞培養に関して使用される場合、細胞を取り囲む環境の成分を含む。培地は、固体、液体、気体、又は相及び物質の混合物であり得る。培地は、液体増殖培地並びに細胞増殖を維持しない液体培地を含む。培地はまた、ゼラチン状培地、例えば寒天、アガロース、ゼラチン及びコラーゲン基質を含む。「培地」という用語はまた、それがまだ細胞と接触していない場合でも、細胞培養における使用を意図される物質を指す。言い換えると、細菌培養のために調製された富栄養液は培地である。同様に、水又は他の液体と混合されたとき細胞培養に適するようになる粉末混合物は、「粉末培地」と称され得る。
【0077】
1つの実施形態では、本発明の方法のために有用な子孫細胞は、STRO−3抗体で標識した磁気ビーズを使用して骨髄からTNAP細胞を単離し、先に記述されているように20%ウシ胎仔血清、2mM L−グルタミン及び100μm L−アスコルビン酸−2−リン酸を添加したα−MEM中で平板培養することによって得られる(培養条件に関するさらなる詳細についてはGronthos et al. (1995)参照)。
【0078】
1つの実施形態では、そのような増殖細胞(少なくとも5継代後)は、TNAP、CC9、HLAクラスI、HLAクラスII、CD14、CD19、CD3、CD11a〜c、CD31、CD86及び/又はCD80であり得る。しかし、本明細書で述べるものとは異なる培養条件では、種々のマーカーの発現が異なり得る可能性がある。また、これらの表現型の細胞は増殖(expended)細胞集団において優勢であり得るが、それは、この(これらの)表現型を有さない細胞の小さな割合が存在しないことを意味しない(例えば、小さな割合の増殖細胞はCC9であり得る)。1つの好ましい実施形態では、本発明の増殖細胞は、まだなお異なる細胞型に分化する能力を有する。
【0079】
1つの実施形態では、本発明の方法で使用される増殖細胞集団は、細胞の少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%がCC9である細胞を含む。
【0080】
もう1つの実施形態では、本発明の方法で使用される増殖細胞集団は、細胞の少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%がSTRO−1である細胞を含む。
【0081】
さらなる実施形態では、子孫細胞は、LFA−3、THY−1、VCAM−1、ICAM−1、PECAM−1、P−セレクチン、L−セレクチン、3G5、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD29、CD18、CD61、インテグリンβ6〜19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、PDGF−R、EGF−R、IGF1−R、NGF−R、FGF−R、レプチン−R、(STRO−2=レプチン−R)、RANKL、STRO−1明るい及びCD146からなる群より選択されるマーカー又はこれらのマーカーの任意の組合せを発現し得る。
【0082】
1つの実施形態では、子孫細胞は、国際公開公報第2006/032092号において定義される多分化能性増殖MPC子孫(MEMP)である。子孫が由来し得るMPCの富化集団を調製するための方法は、国際公開公報第01/04268号及び同第2004/085630号に記載されている。インビトロの状況では、MPCが絶対的に純粋な製剤として存在することはまれであり、一般に、組織特異的に分化決定された細胞(TSCC)である他の細胞と共に存在する。国際公開公報第01/04268号は、約0.1%〜90%の純度レベルで骨髄からそのような細胞を採集することに言及している。子孫が由来するMPCを含む集団は、組織起源から直接採集され得るか、あるいはエクスビボで既に増殖させた集団であり得る。
【0083】
例えば、子孫は、それらが存在する集団の全細胞の少なくとも約0.1、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80又は95%を含む、採集された、未増殖の、実質的に精製されたMPC集団から得られ得る。このレベルは、例えば、TNAP、STRO−1明るい、3G5、VCAM−1、THY−1、CD146及びSTRO−2からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーに関して陽性である細胞について選択することによって達成され得る。
【0084】
MPC出発集団は、たとえば、国際公開公報第01/04268号又は同第2004/085630号に記載されている任意の1又はそれ以上の組織型、すなわち骨髄、歯髄細胞、脂肪組織及び皮膚、又はおそらくより広くは、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱及び骨格筋に由来し得る。
【0085】
MEMPSは、STRO−1briマーカーに関して陽性であり、アルカリホスファターゼ(ALP)マーカーに関して陰性であるという点で新鮮採集されたMPCと区別することができる。これに対し、新鮮単離MPCは、STRO−1bri及びALPの両方について陽性である。本発明の好ましい実施形態では、投与された細胞の少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は95%はSTRO−1bri、ALPの表現型を有する。さらなる好ましい実施形態では、MEMPSは、マーカーKi67、CD44及び/又はCD49c/CD29、VLA−3、α3β1の1又はそれ以上に関して陽性である。なおさらなる好ましい実施形態では、MEMPはTERT活性を示さない及び/又はCD18マーカーに関して陰性である。
【0086】
1つの実施形態では、細胞は、血管新生関連疾患を有する患者から採取され、標準的な技術を用いてインビトロで培養され、自家移植片又は同種移植片として患者に投与される。選択的実施形態では、樹立ヒト細胞株の1又はそれ以上の細胞が使用される。本発明のもう1つの有用な実施形態では、非ヒト動物の(又は患者がヒトではない場合は、別の種からの)細胞が使用される。
【0087】
本発明は、非ヒト霊長動物細胞、有蹄動物、イヌ、ネコ、ウサギ、げっ歯動物、鳥類及び魚類の細胞を含むがこれらに限定されない、任意の非ヒト動物種からの細胞を使用して実施し得る。本発明を実施し得る霊長動物細胞は、チンパンジー、ヒヒ、カニクイザル、及び任意の他の新世界ザル又は旧世界ザルの細胞を含むが、これらに限定されない。本発明を実施し得る有蹄動物細胞は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、水牛及び野牛の細胞を含むが、これらに限定されない。本発明を実施し得るげっ歯動物細胞は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター及びアレチネズミ細胞を含むが、これらに限定されない。本発明を実施し得るウサギ種の例としては、飼い慣らされたウサギ、ジャックウサギ、野ウサギ、ワタオウサギ、カンジキウサギ及びナキウサギを含む。ニワトリ(ガルス・ガルス(Gallus gallus))は、本発明を実施し得る鳥類種の一例である。
【0088】
本発明の方法のために有用な細胞は、使用前に貯蔵され得る。真核細胞及び特に哺乳動物細胞を保存し、貯蔵するための方法及びプロトコールは当分野において周知である(例えば、Pollard, J. W. and Walker, J. M. (1997) Basic Cell Culture Protocols, Second Edition, Humana Press, Totowa, N. J.; Freshney, R. I. (2000) Culture of Animal Cells, Fourth Edition, Wiley-Liss, Hoboken, N.J.参照)。単離された幹細胞、例えば、間葉系幹細胞/始原細胞、又はそれらの子孫の生物活性を維持する任意の方法が、本発明に関連して利用され得る。1つの好ましい実施形態では、細胞は凍結保存を使用することによって維持され、貯蔵される。
【0089】
1つの実施形態では、細胞は同種又は自家細胞である。
【0090】
眼疾患を治療する又は予防するために使用できる他の細胞型の例としては、国際公開公報第07/130060号(網膜外組織からの成体網膜幹細胞)、米国特許出願第2008089868号(網膜幹細胞)、米国特許出願第2001031256号(神経網膜細胞及びブタ網膜色素上皮細胞)、米国特許出願第2006002900号(網膜色素上皮細胞)、米国特許出願第2007248644号(ミュラー幹細胞)及び米国特許第6162428号(hNTニューロン細胞)に記載されている細胞を含むが、これらに限定されない。
【0091】
本発明の方法のために使用できる他の細胞型の例としては、CD34造血幹細胞、脂肪組織由来細胞、STRO−1骨髄由来のMPC、胚性幹細胞、及び骨髄又は末梢血単核細胞を含むが、これらに限定されない。
【0092】
細胞選別技術
本発明の方法のために有用な細胞は様々な技術を用いて入手できる。例えば、細胞−抗体複合体に関連する性質又は抗体に結合された標識を参照することによって細胞を物理的に分離する、多くの細胞選別技術が使用できる。この標識は、磁性粒子又は蛍光分子であり得る。抗体は、密度によって分離可能な、多数の細胞の凝集体を形成するように架させ得る。あるいは、抗体を固定基質に結合してもよく、所望細胞がそれに接着する。
【0093】
好ましい実施形態では、TNAP、STRO−1、VCAM−1、THY−1、STRO−2、3G5、CD45、CD146に結合する抗体(又は他の結合物質)を使用して細胞を単離する。より好ましくは、TNAP又はSTRO−1に結合する抗体(又は他の結合物質)を使用して細胞を単離する。
【0094】
抗体に結合した細胞を非結合細胞から分離する様々な方法が公知である。例えば、細胞に結合した抗体(又は抗アイソタイプ抗体)を標識し、次にその標識の存在を検出する機械的セルソーター(mechanical cell sorter)によって細胞を分離することができる。蛍光活性化セルソーターは当分野において周知である。1つの実施形態では、抗TNAP抗体及び/又はSTRO−1抗体を固体支持体に結合する。様々な固体支持体が当業者に公知であり、アガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、中空糸膜、ポリマー、及びプラスチックペトリ皿を含むが、これらに限定されない。抗体が結合している細胞は、単に細胞懸濁液から固体支持体を物理的に分離することによって細胞懸濁液から取り出すことができる。
【0095】
超常磁性マイクロ粒子を細胞分離のために使用し得る。例えば、マイクロ粒子を抗TNAP抗体及び/又はSTRO−1抗体で被覆し得る。次に、抗体標識した超常磁性マイクロ粒子を、対象とする細胞を含有する溶液と共にインキュベートし得る。マイクロ粒子は所望幹細胞の表面に結合し、その後、これらの細胞を磁場で収集することができる。
【0096】
もう1つの例では、細胞試料を、例えば固相結合抗TNAPモノクローナル抗体及び/又は抗STRO−1モノクローナル抗体と物理的に接触させる。固相結合は、例えば、プラスチック、ニトロセルロース又は他の表面に抗体を吸着させることを含み得る。抗体はまた、中空糸膜の大きな細孔(細胞の流動を許容するのに十分な大きさ)の壁に吸着させることもできる。あるいは、抗体は、ビーズ、例えばPharmacia Sepharose 6 MBマクロビーズの表面に共有結合することができる。固相結合抗体と幹細胞含有懸濁液のインキュベーションの正確な条件及び期間は、使用される系に特異的ないくつかの因子に依存する。適切な条件の選択は、しかし、十分に当分野の技術範囲内である。
【0097】
次に、幹細胞が結合するのに十分な時間を置いた後、非結合細胞を生理緩衝液で溶離するか又は洗い流す。非結合細胞は、他の目的のために回収して使用することができ、又は所望の分離が達成されたことを保証するために適切な試験を実施した後、廃棄し得る。その後、主として固相と抗体の性質に依存して、任意の適切な方法によって結合細胞を固相から分離する。例えば、激しく攪拌することによって結合細胞をプラスチックペトリ皿から溶離することができる。あるいは、酵素的「ニッキング」によって又は固相と抗体の間の酵素感受性「スペーサー」配列を消化することによって結合細胞を溶離できる。アガロースビーズに結合したスペーサーは、例えばPharmaciaから市販されている。
【0098】
溶離され、富化された細胞の画分を、次に、遠心分離によって緩衝液で洗浄してもよく、前記富化画分は、従来技術によってその後の使用のために生存可能な状態で凍結保存し得るか、培養増殖し得る及び/又は患者に導入し得る。
【0099】
VEGFシグナル伝達を破壊する化合物
本発明の方法における使用のための化合物は、VEGFがその通常の生物学的作用を及ぼす能力を低下させる任意の種類の分子であり得る。例えば、化合物は、VEGF自体、その受容体、又はVEGFによる結合後のVEGF受容体活性化時に活性化される及び/又は合成される細胞内シグナル伝達タンパク質若しくは転写因子に結合し得るか、又はその産生を低下させ得る。従って、本明細書で使用される場合、「VEGFシグナル伝達を破壊する化合物」という用語は、VEGF、VEGF受容体又はVEGFシグナル伝達に関与する他の分子の量、及び/又はVEGFがその対応する受容体を介してシグナル伝達し、関連する下流の生物学的作用を生じさせる、例えば細胞増殖及び/又は分裂を促進する能力を低下させる化合物を指す。
【0100】
化合物とその標的(例えばVEGF)の間の結合は、共有結合若しくは非共有結合相互作用又は共有結合相互作用と非共有結合相互作用の組合せによって媒介され得る。相互作用が非共有結合的に結合した複合体を生じさせる場合、生じる結合は、典型的には静電結合、水素結合、又は親水性/親油性相互作用の結果である。1つの実施形態では、化合物は、精製及び/又は組換えポリペプチドである。特に好ましい化合物は、精製及び/又は組換え抗体、抗体関連分子又はその抗原結合フラグメントである。
【0101】
必須ではないが、化合物は標的に特異的に結合し得る。「特異的に結合する」という語句は、特定条件下で、化合物が標的に結合し、他の物質、例えば他のタンパク質又は炭水化物には有意の量で結合しないことを意味する。例えば、1つの実施形態では、化合物はVEGF−Aに特異的に結合するが、他のVEGFには結合しない。もう1つの実施形態では、別のタンパク質と比較したとき標的への化合物の結合との間に10倍以上の差、好ましくは25、50又は100倍大きな差がある場合、化合物は「特異的に結合する」とみなされる。
【0102】
本発明のために有用な化合物の例としては、VEGFのキナゾリン誘導体阻害剤(米国特許出願第2007265286号、同第2003199491号及び米国特許第6809097号)、ケルセチン(VEGFを阻害する)(国際公開公報第02/057473号)、VEGFRチロシンキナーゼのキナゾリン誘導体阻害剤(米国特許出願第2007027145号)、VEGFRチロシンキナーゼのアミノ安息香酸誘導体阻害剤(米国特許第6720424号)、VEGFRチロシンキナーゼのピリジン誘導体阻害剤(米国特許出願第2003158409号)、レセンチン(Recentin)(Astra Zeneca)(3つのVEGFRすべてを阻害する)(国際公開公報第07/060402号)、スニチニブ(Sunitinib)(Novartis)(3つのVEGFRすべてを阻害する)(国際公開公報第08/031835号及び米国特許第6,573,293号)、ペガプタニブ(Pegaptanib)(Macugen(商標))(米国特許第6,051,698号)、アキシチニブ(Axitinib)(Pfizer)(3つのVEGFRすべてを阻害する)(国際公開公報第2004/087152号)、ソラフェニブ(Sorafenib)(Bayer Pharmaceuticals)(国際公開公報第07/053573号)、VEGFR−1結合ペプチド(米国特許出願第2005100963号)、受容体へのVEGFの結合をブロックするアルギニンリッチ抗血管内皮増殖因子ペプチド(米国特許第7291601号)、VEGFトラップ(VEGF-Trap)(Regeneron Pharmaceuticals)(米国特許出願第2005032699号)、可溶性VEGF受容体(米国特許出願第2006110364号及びTseng et al.、2002)、VEGF−C及びVEGF−Dペプチドミメティック阻害剤(米国特許出願第2002065218号)、VEGF−ヘパリン複合体からのVEGFの放出をブロックするPAI−1(米国特許出願第2004121955号)、米国特許出願第2002068697号、国際公開公報第02/081520号、米国特許出願第20060234941号、同第2002058619号に記載されている阻害剤、並びに以下で概説するさらなる例を含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、化合物は、ルセンティス(Lucentis)、アバスチン(Avastin)又はVEGFトラップである。
【0103】
標的分子の例
1つの実施形態では、VEGFシグナル伝達を破壊するための化合物の標的分子は、血管内皮増殖因子である。
【0104】
本明細書で使用される場合、「血管内皮増殖因子」又は「VEGF」という用語は、細胞表面のチロシンキナーゼ受容体(VEGF受容体、又はVEGFR)に結合して、血管新生、血管形成及び内皮細胞増殖を刺激する増殖因子のファミリーを指す(例えばBreen, 2007参照)。
【0105】
本明細書で使用される場合、「VEGF−A」は、VEGFR−1及びVEGFR−2受容体に結合して、内皮細胞有糸分裂誘発及び細胞移動を刺激し、MMOP活性を刺激して、αvβ3活性を上昇させ、血管内腔の創造と開窓を促進し、マクロファージ及び顆粒球に対して走化性であり、同時に強力な血管拡張剤である、VEGFポリペプチド増殖因子ファミリーの成員を指す (Breen, 2007; Eremina and Quaggin, 2004)。あるいは、VEGF−Aの多数の異なるアイソフォームを生じさせる、VEGF−Aのスプライシングされた転写産物変異体が同定されている。VEGF−Aポリペプチドの一例は、配列番号:1に示すアミノ酸配列を含有するタンパク質、並びにその変異体及び/又は突然変異体を含む。さらに、プレプロVEGF−Aをコードするオープンリーディングフレームの一例を配列番号:9に示す。
【0106】
本明細書で使用される場合、「VEGF−B」という用語は、VEGFR−1受容体に結合して、血管新生、内皮細胞の有糸分裂誘発及び移動を刺激するVEGFポリペプチド増殖因子ファミリーの成員を指す(Breen, 2007; Olofsson et al., 1996)。あるいは、VEGF−Bのいくつかのアイソフォームを生じさせる、VEGF−Bのスプライシングされた転写産物変異体が同定されている。VEGF−Bポリペプチドの一例は、配列番号:2に示すアミノ酸配列を含有するタンパク質、並びにその変異体及び/又は突然変異体を含む。さらに、プレプロVEGF−Bをコードするオープンリーディングフレームの一例を配列番号:10に示す。
【0107】
本明細書で使用される場合、「VEGF−C」という用語は、VEGFR−2及びFlt4受容体に結合して、内皮細胞の有糸分裂誘発及び移動並びにリンパ脈管新生を刺激するVEGFポリペプチド増殖因子ファミリーの成員を指す(Breen, 2007; Su et al., 2007)。VEGF−Cは、複雑なタンパク質分解成熟を受けていくつかのアイソフォームを形成し、完全にプロセシングされた形態だけがそのコグネイトVEGFR−2受容体に結合し、それを活性化し得る。VEGF−Cポリペプチドの一例は、配列番号:3に示すアミノ酸配列を含有するタンパク質、並びにその変異体及び/又は突然変異体を含む。さらに、プレプロVEGF−Cをコードするオープンリーディングフレームの一例を配列番号:11に示す。
【0108】
本明細書で使用される場合、「VEGF−D」という用語は、VEGFR−2及びVEGFR−3受容体に結合して、血管新生、リンパ脈管新生、並びに内皮細胞の有糸分裂誘発及び移動を刺激するVEGFポリペプチド増殖因子ファミリーの成員を指す。VEGF−Dは、複雑なタンパク質分解成熟を受けていくつかのアイソフォームを形成し、完全にプロセシングされた形態だけがそのコグネイトVEGFR−2及びVEGFR−3受容体に結合し、それらを活性化し得る。VEGF−Dポリペプチドの一例は、配列番号:4に示すアミノ酸配列を含有するタンパク質、並びにその変異体及び/又は突然変異体を含む。さらに、プレプロVEGF−Dをコードするオープンリーディングフレームの一例を配列番号:12に示す。
【0109】
1つの実施形態では、VEGFシグナル伝達を破壊するための標的分子は、血管内皮増殖因子受容体である。
【0110】
本明細書で使用される場合、「VEGFR−1」(Flt−1としても知られる)という用語は、細胞表面に位置するVEGFチロシンキナーゼ受容体ファミリーの成員1を指し、VEGFR−1は、7つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン、1つの膜貫通ドメイン並びに、VEGF−A及びVEGF−Bが結合する、チロシンキナーゼ機能を含む細胞内ドメインを含有する(Olsson et al., 2006; Cross et al., 2003)。リガンド(例えばVEGF−A)の結合後、VEGFR−1受容体は二量体化し、リン酸基転移を介して活性化されて、血管新生、血管形成及び内皮細胞増殖を刺激する。VEGFR−1ポリペプチドの一例は、配列番号:5に示すアミノ酸配列を含有するタンパク質、並びにその変異体及び/又は突然変異体を含む。さらに、VEGFR−1をコードするオープンリーディングフレームの一例を配列番号:13に示す。
【0111】
本明細書で使用される場合、「VEGFR−2」(KDR又はFlk−1としても知られる)という用語は、細胞表面に位置するVEGFチロシンキナーゼ受容体ファミリーの成員2を指し、VEGFR−2は、7つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン、1つの膜貫通ドメイン並びに、VEGF−A、VEGF−C及びVEGF−Dが結合する、チロシンキナーゼ機能を含む細胞内ドメインを含有する(Olsson et al., 2006; Cross et al., 2003)。リガンドの結合後、VEGFR−2受容体は二量体化し、リン酸基転移を介して活性化されて、血管新生、血管形成及び内皮細胞増殖を刺激する。VEGFR−2ポリペプチドの一例は、配列番号:6に示すアミノ酸配列を含有するタンパク質、並びにその変異体及び/又は突然変異体を含む。さらに、VEGFR−2をコードするオープンリーディングフレームの一例を配列番号:14に示す。
【0112】
本明細書で使用される場合、「VEGFR−3」(Flt−4としても知られる)という用語は、細胞表面に位置するVEGFチロシンキナーゼ受容体ファミリーの成員3を指し、VEGFR−3は、7つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン、1つの膜貫通ドメイン並びに、VEGF−C及びVEGF−Dが結合する、チロシンキナーゼ機能を含む細胞内ドメインを含有する(Olsson et al., 2006; Cross et al., 2003)。リガンドの結合後、VEGFR−3受容体は二量体化し、リン酸基転移を介して活性化されて、リンパ脈管新生を媒介する。VEGFR−3ポリペプチドの一例は、配列番号:7に示すアミノ酸配列を含有するタンパク質、並びにその変異体及び/又は突然変異体を含む。さらに、VEGFR−3をコードするオープンリーディングフレームの一例を配列番号:15に示す。
【0113】
さらなる実施形態では、VEGFシグナル伝達を破壊するための標的分子は、血管内皮増殖因子の産生を低下させる。例えば、標的は低酸素誘導因子1(HIF−1)であり得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、「低酸素誘導因子1」(HIF−1)という用語は、低酸素に対する応答に関与する遺伝子を調節する転写因子を指す。例えば、HIF−1が低酸素に応答してVEGF発現を上方調節することは公知である(Zhang et al., 2007)。HIF−1αはHIF−1の誘導性サブユニットである。HIF−1ポリペプチドの一例は、配列番号:8に示すアミノ酸配列を含有するタンパク質、並びにその変異体及び/又は突然変異体を含む。さらに、HIF−1をコードするオープンリーディングフレームの一例を配列番号:16に示す。
【0115】
HIF−1を標的する化合物の例としては、エキノマイシン(Kong et al., 2005)、BDDF−1(国際公開公報第08/004798号)、S−2−アミノ−3−[4’−N,N,−ビス(2−クロロエチル)アミノ]フェニルプロピオン酸N−オキシドジヒドロクロライド(PX−478)(米国特許出願第2005049309号)、ケトミン(Kung et al., 2004)、3−(5’−ヒドロキシメチル−2’−フリル)−1−ベンジルインダゾール(YC−1)(Yeo et al., 2003)、103D5R(Tan et al., 2005)、キノカルマイシン一クエン酸塩(quinocarmycin monocitrate)及びその誘導体(Rapisarda et al., 2002)、3−(5’−ヒドロキシメチル−2’−フリル)−1−ベンジルインダゾール(米国特許出願第2004198798号)、並びにNSC−134754及びNSC−643735(Chau et al., 2005)を含むが、これらに限定されない。
【0116】
さらなる実施形態では、VEGFシグナル伝達を破壊するための標的分子は、VEGFによる結合後のVEGF受容体活性化時に活性化される及び/又は合成される細胞内シグナル伝達タンパク質又は転写因子である。
抗体−概要
【0117】
抗体は、無傷免疫グロブリンとして、又は様々な形態の修飾型として、例えばV又はVドメインのいずれかを含むドメイン抗体、重鎖可変領域の二量体(ラクダについて記述されている、VHH)、軽鎖可変領域の二量体(VLL)、軽鎖及び重鎖可変領域だけを含むFvフラグメント、又は重鎖可変領域とCH1ドメインを含むFdフラグメントを含むが、これらに限定されない修飾型として存在し得る。共に連結されて一本鎖抗体を形成する重鎖及び軽鎖の可変領域からなるscFv(Bird et al., 1988; Huston et al., 1988)、並びにscFvのオリゴマー、例えばダイアボディ及びトリアボディも、「抗体」という用語に包含される。少なくとも1つのCDR、より好ましくは少なくとも1つの可変ドメインを含む、非天然に生じる形態の抗体はまた、本明細書では「抗体関連分子」とも称される。また、抗体のフラグメント、例えば可変領域と定常領域の一部を含むFab、(Fab’)及びFabFcフラグメントも包含される。CDR移植抗体フラグメント及び抗体フラグメントのオリゴマーも包含される。Fvの重鎖及び軽鎖成分は、同じ抗体に由来し得るか又はそれによりキメラFv領域を生じる、異なる抗体に由来してもよい。抗体は、動物(例えばマウス、ウサギ又はラット)若しくはヒト起源であり得るか、又はキメラ(Morrison et al., 1984)若しくはヒト化抗体 (Jones et al., 1986)であってもよい。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語はこれらの様々な形態を包含する。本明細書で提供されるガイドライン、並びに前記で引用した参考文献及びHarlow & Lane(前出)のような公表文献に記載されている当業者に周知の方法を使用して、本発明の方法における使用のための抗体が容易に作製できる。
【0118】
抗体は、可変軽鎖(V)及び可変重鎖(V)を含むFv領域であり得る。軽鎖と重鎖は、直接連結され得るか又はリンカーを介して連結され得る。本明細書で使用される場合、リンカーは、軽鎖及び重鎖に共有結合的に連結され、2本の鎖の間に、それらが指向するエピトープに特異的に結合することができる立体配座を達成できるように十分な間隔と柔軟性を与える分子を指す。タンパク質リンカーは、融合ポリペプチドのIg部分の固有の成分として発現され得るので、特に好ましい。
【0119】
もう1つの実施形態では、組換え生産された一本鎖scFv抗体、好ましくはヒト化scFvが本発明の方法において使用される。
【0120】
様々な免疫測定形式が、標的分子、例えばVEGF又はその受容体と特異的に免疫反応性である抗体を選択するために使用され得る。例えば、表面標識及びフローサイトメトリー分析又は固相ELISA免疫測定法は、タンパク質又は炭水化物と特異的に免疫反応性である抗体を選択するために常套的に使用される。特異的免疫反応性を測定するために使用できる免疫測定法の形式及び条件の説明については、Harlow & Lane(前出)参照。
【0121】
本発明の方法において使用できる抗体、抗体関連分子又はそのフラグメントの例としては、抗VEGF−A抗体、例えばベバシズマブ(アバスチン)(米国特許第6,054,297号)、ラニビズマブ(ルセンティス)(米国特許第6,407,213号)並びに米国特許第5730977号及び米国特許出願第2002032315号に記載されているもの;抗VEGF−B抗体、例えば米国特許出願第2004005671号及び国際公開公報第07/140534号に記載されているもの;抗VEGF−C抗体、例えば米国特許第6403088号に記載されているもの;抗VEGF−D抗体、例えば米国特許第7097986号に記載されているもの;抗VEGFR−1抗体、例えば米国特許出願第2003088075号に記載されているもの;抗VEGFR−2抗体、例えば米国特許第6344339号、国際公開公報第99/40118号及び米国特許出願第2003176674号に記載されているもの);並びに抗VEGFR−3抗体、例えば米国特許第6824777号に記載されているものを含むが、これらに限定されない。
【0122】
モノクローナル抗体
ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を作製するための一般的な方法は周知である。不死抗体産生細胞株は、細胞融合によって、及びまた他の技術、例えば腫瘍形成性DNAによるBリンパ球の直接形質転換、又はエプスタイン−バーウイルスによるトランスフェクションによって創製され得る。標的エピトープに対して産生されるモノクローナル抗体のパネルを様々な性質に関して、すなわちアイソタイプ及びエピトープ親和性に関してスクリーニングすることができる。
【0123】
動物由来のモノクローナル抗体は、インビボでの直接免疫療法及び体外免疫療法の両方のために使用できる。しかし、例えばマウス由来モノクローナル抗体をヒトにおいて治療薬として使用した場合、患者はヒト抗マウス抗体を産生することが認められた。従って、動物由来モノクローナル抗体は、治療のため、特に長期的な使用のためには好ましくない。確立された遺伝子工学技術を用いて、しかし、動物由来部分とヒト由来部分を有するキメラ又はヒト化抗体を作製することが可能である。動物は、例えば、マウス又は他のげっ歯動物、例えばラットであり得る。
【0124】
キメラ抗体の可変領域が、例えばマウス由来であり、定常領域がヒト由来である場合、そのキメラ抗体は一般に、「純粋な」マウス由来のモノクローナル抗体よりも免疫原性が低い。これらのキメラ抗体は、「純粋な」マウス由来抗体が不適切であることが判明した場合に、治療上の使用のためにより適すると考えられる。
【0125】
キメラ抗体を作製するための方法は当業者に利用可能である。例えば、軽鎖と重鎖を、例えば免疫グロブリン軽鎖と免疫グロブリン重鎖を別々のプラスミドにおいて使用して、別々に発現させることができる。次にこれらを精製し、インビトロで完全な抗体に構築することができる;そのような構築を達成するための方法は記述されている(例えばSun et al., 1986参照)。そのようなDNA構築物は、ヒト定常領域をコードするDNAに連結された、抗体の軽鎖又は重鎖の可変領域についての機能的に再編成された遺伝子をコードするDNAを含み得る。リンパ系細胞、例えば骨髄腫細胞又は軽鎖及び重鎖についてのDNA構築物でトランスフェクトされたハイブリドーマは、抗体鎖を発現し、構築することができる。
【0126】
短縮された単離軽鎖及び重鎖からのIgG抗体の形成のためのインビトロ反応パラメータも記述されている。重鎖と軽鎖の完全なH2L2 IgG抗体への細胞内会合及び連結を達成するための、同じ細胞における軽鎖と重鎖の共発現も可能である。そのような共発現は、同じ宿主細胞において同じ又は異なるプラスミドを使用して達成され得る。
【0127】
本発明のもう1つの好ましい実施形態では、抗体はヒト化、すなわち分子モデリング技術によって作製される抗体であり、ヒト化抗体では、抗体のヒト含量が最大化されており、例えば親であるラット、ウサギ又はマウス抗体の可変領域に起因する結合親和性の喪失をほとんど又は全く生じさせない。以下で述べる方法は抗体のヒト化に適用できる。
【0128】
ヒト化においていずれのヒト抗体配列を使用するかを決定する際に考慮すべきいくつかの因子がある。軽鎖及び重鎖のヒト化は互いに独立して考慮されるが、その根拠は各々に関して基本的に同様である。
【0129】
この選択工程は以下の論理的根拠に基づく:所与の抗体の抗原特異性及び親和性は、主として可変領域CDRのアミノ酸配列によって決定される。可変ドメインのフレームワーク残基は、直接にはほとんど又は全く寄与しない。フレームワーク領域の主たる機能は、CDRを、抗原を認識するためのそれらの適切な空間的配向に保持することである。従って、動物、例えばげっ歯動物CDRをヒト可変ドメインフレームワークに置き換えることは、ヒト可変ドメインフレームワークがそれらの起源である動物可変ドメインに高度に相同である場合に、それらの適切な空間的配向の保持をもたらす可能性が極めて高い。好ましくは、それ故、動物可変ドメインに高度に相同であるヒト可変ドメインが選択されるべきである。適切なヒト抗体可変ドメイン配列は以下のように選択することができる。
【0130】
工程1.コンピュータプログラムを使用して、動物由来抗体の可変ドメインに最も相同なヒト抗体可変ドメイン配列に関してすべての利用可能なタンパク質(及びDNA)データベースを検索する。適切なプログラムの出力は、動物由来抗体に最も相同な配列のリスト、各々の配列に対する相同性パーセント、及び動物由来配列に対する各々の配列のアラインメントである。これは、重鎖と軽鎖の両方の可変ドメイン配列に関して独立して実施される。上記分析は、ヒト免疫グロブリン配列だけが含まれる場合により容易に達成される。
【0131】
工程2.ヒト抗体可変ドメイン配列を列挙し、相同性に関して比較する。主として比較は、極めて可変性である重鎖のCDR3を除き、CDRの長さに関して実施される。ヒト重鎖並びにκ及びλ軽鎖は小群に分けられる:重鎖の3つの小群、κ鎖の4つの小群、λ鎖の6つの小群。各小群内のCDRの大きさは同様であるが、小群間では異なる。通常、相同性の最初の近似化として、動物由来抗体のCDRをヒト小群の1つに一致させることが可能である。次に、類似の長さのCDRを担持する抗体をアミノ酸配列相同性に関して、特にCDR内であるが、周囲のフレームワーク領域においても、比較する。最も相同なヒト可変ドメインをヒト化のためのフレームワークとして選択する。
【0132】
実際のヒト化方法/技術
抗体は、欧州特許出願第EP−A−0239400号に従って所望CDRをヒトフレーワークに移植することによってヒト化され得る。所望の再構成された抗体をコードするDNA配列は、それ故、そのCDRを再構成したいと考えるヒトDNAから始まって作製され得る。所望CDRを含む動物由来可変ドメインアミノ酸配列を、選択したヒト抗体可変ドメイン配列のものと比較する。動物由来CDRを組み込んだヒト可変領域を作製するために動物における対応残基に変更する必要があるヒト可変ドメイン内の残基を選び出す。また、ヒト配列において置換する、ヒト配列に付加する又はヒト配列から欠失させる必要がある残基も存在し得る。
【0133】
ヒト可変ドメインフレームワークを、所望残基を含むように突然変異誘発するために使用できるオリゴヌクレオチドを合成する。それらのオリゴヌクレオチドは任意の好都合な大きさであり得る。通常、利用可能な特定の合成装置の能力によって長さだけが限定される。オリゴヌクレオチド指定インビトロ突然変異誘発の方法は周知である。
【0134】
あるいは、ヒト化は、国際公開公報第92/07075号の組換えポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して達成され得る。この方法を用いて、CDRをヒト抗体のフレームワーク領域の間でスプライシングし得る。一般に、国際公開公報第92/07075号の技術は、2つのヒトフレームワーク領域、AB及びCD、そしてそれらの間に、ドナーCDRによって置換されるべきCDRを含有する鋳型を使用して実施され得る。プライマーAとBを使用してフレームワーク領域ABを増幅し、プライマーCとDを使用してフレームワーク領域CDを増幅する。しかし、プライマーBとCの各々はまた、それらの5'末端に、ドナーCDR配列の全部又は少なくとも一部に対応する付加的な配列を含む。プライマーBとCは、PCRが実施されることを可能にする条件下で互いにそれらの5’末端をアニーリングさせるのに十分な長さだけ重複する。従って、増幅された領域AB及びCDは、オーバーラップ伸長によって遺伝子スプライシングを受けて、単一反応でヒト化産物を生成し得る。
【0135】
抗体を再構成する突然変異誘発反応後、突然変異したDNAを、軽鎖又は重鎖定常領域をコードする適切なDNAに連結し、発現ベクターにクローニングして、宿主細胞、好ましくは哺乳動物細胞にトランスフェクトすることができる。これらの工程は常套的な方法で実施され得る。再構成された抗体は、それ故、
(a)少なくともIg重鎖又は軽鎖の可変ドメイン、ヒト抗体からのフレームワーク領域を含む可変ドメイン及び本発明のヒト化抗体のために必要なCDRをコードするDNA配列に作動可能に連結された適切なプロモーターを含む第1の複製可能な発現ベクターを調製すること;
(b)それぞれ相補的なIg軽鎖又は重鎖の少なくとも可変ドメインをコードするDNA配列に作動可能に連結された適切なプロモーターを含む第2の複製可能な発現ベクターを調製すること;
(c)第1の又は両方の調製したベクターで細胞株を形質転換すること;及び
(d)前記形質転換細胞株を培養して前記の変化した抗体を生成すること
を含む工程によって作製され得る。
【0136】
好ましくは、工程(a)のDNA配列は、可変ドメインとヒト抗体鎖の各々の定常ドメインの両方をコードする。ヒト化抗体は、任意の適切な組換え発現系を使用して作製され得る。変化した抗体を産生するように形質転換される細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株又は、好都合にはリンパ系起源、例えば骨髄腫、ハイブリドーマ、トリオーマ又はクアドローマ細胞株である、不死化哺乳動物細胞株であり得る。細胞株はまた、ウイルス、例えばエプスタイン−バーウイルスでの形質転換によって不死化された、正常リンパ系細胞、例えばB細胞を含み得る。最も好ましくは、不死化細胞株は骨髄腫細胞株又はその誘導体である。
【0137】
抗体の発現のために使用されるCHO細胞は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)欠損であり得、それ故増殖のためにチミジン及びヒポキサンチン依存性であり得る。親dhfr CHO細胞株を、抗体及びdhfr陽性表現型のCHO細胞形質転換体の選択を可能にするdhfr遺伝子をコードするDNAでトランスフェクトする。選択は、チミジン及びヒポキサンチンを欠く培地でコロニーを培養することによって実施され、チミジン及びヒポキサンチンの不在は、非形質転換細胞が増殖すること及び形質転換細胞が葉酸経路を再利用し、それによって選択系を迂回することを防止する。これらの形質転換体は、通常、対象とするトランスフェクトDNAとdhfrをコードするDNAの同時組込みによって低レベルの対象DNAを発現する。抗体をコードするDNAの発現レベルは、メトトレキサート(MTX)を使用した増幅によって上昇させ得る。この薬剤は酵素dhfrの直接の阻害剤であり、これらの条件下で生存するのに十分なそれらのdhfr遺伝子コピー数を増幅する耐性コロニーの単離を可能にする。dhfr及び抗体をコードするDNA配列はもとの形質転換体において密接に連結されているので、通常同時増幅が生じ、それ故所望抗体の発現上昇が起こる。
【0138】
CHO又は骨髄腫細胞での使用のためのもう1つの好ましい発現系は、国際公開公報第87/04462号に記載されているグルタミンシンテターゼ(GS)増幅系である。この系は、GS酵素をコードするDNAと所望抗体をコードするDNAでの細胞のトランスフェクションを含む。次に、グルタミン不含培地で増殖し、それ故GSをコードするDNAを組み込んだと推測できる細胞を選択する。次に、これらの選択したクローンを、メチオニンスルホキシミン(Msx)を使用したGS酵素の阻害に供する。細胞は、生存するために、抗体をコードするDNAの同時増幅を伴ってGSをコードするDNAを増幅する。
【0139】
ヒト化抗体を作製するために使用される細胞株は、好ましくは哺乳動物細胞株であるが、任意の他の適切な細胞株、例えば細菌細胞株又は酵母細胞株も選択的に使用され得る。特に、大腸菌由来細菌株が使用できると予想される。得られた抗体を機能性に関して検査する。機能性が失われている場合は、工程(2)に戻って、抗体のフレームワークを変化させる必要がある。
【0140】
ひとたび発現されれば、全長抗体、それらの二量体、個々の軽鎖及び重鎖、又は他の免疫グロブリン形態を当分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等によって回収し、精製することができる(一般に、Scopes, R., Protein Purification, Springer- Verlag, N. Y. (1982)参照)。少なくとも約90〜95%の均一性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、医薬用途のためには、98〜99%又はそれ以上の均一性が最も好ましい。所望に応じて部分的又は均一に、ひとたび精製されれば、ヒト化抗体は、その後治療において又はアッセイ手順、免疫蛍光染色等を開発し、実施するのに使用され得る(一般に、Lefkovits and Pernis (editors), Immunological Methods, VoIs. I and II, Academic Press, (1979 and 1981)参照)。
【0141】
完全なヒト可変領域を有する抗体も、抗原投与に応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、その内在性遺伝子座が無効にされたトランスジェニック動物に抗原を投与することによって作製できる。様々なその後の操作を実施して、抗体自体又はその類似体のいずれかを得ることができる(例えば米国特許第6,075,181号参照)。
遺伝子サイレンシング
【0142】
1つの実施形態では、VEGFシグナル伝達は遺伝子サイレンシングを用いて破壊される。「RNA干渉」、「RNAi」又は「遺伝子サイレンシング」という用語は、一般に、二本鎖RNA(dsRNA)分子が、その二本鎖RNAが実質的な又は完全な相同性を共有する核酸配列の発現を低下させる過程を指す。しかし、最近になって、非RNA二本鎖分子を使用して遺伝子サイレンシングが達成され得ることが示された(例えば米国特許出願第20070004667号参照)。
【0143】
RNA干渉(RNAi)は、特定のRNA及び/又はタンパク質の産生を特異的に阻害するために特に有用である。理論に拘束されることを望むものではないが、Waterhouse et al. (1998)は、dsRNA(二本鎖RNA)がタンパク質産生を低下させるために利用し得る機構についてのモデルを提供した。この技術は、対象とする遺伝子又はその一部のmRNA、この場合は本発明によるポリペプチドをコードするmRNAと基本的に同一の配列を含むdsRNA分子の存在に基づく。好都合にも、dsRNAは組換えベクター又は宿主細胞において単一プロモーターから作製することができ、前記組換えベクター又は宿主細胞では、センス配列とアンチセンス配列が無関係な配列に隣接されており、その無関係な配列は、センス配列とアンチセンス配列がハイブリダイズしてdsRNA分子を形成することを可能にし、無関係な配列がループ構造を形成する。本発明のための適切なdsRNA分子の設計と作製は、特にWaterhouse et al. (1998), Smith et al. (2000)、国際公開公報第99/32619号、同第99/53050号、同第99/49029号及び同第01/34815号を考慮して、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0144】
本発明は、遺伝子サイレンシングのための二本鎖領域を含む及び/又はコードする核酸分子の使用を含む。核酸分子は、典型的にはRNAであるが、DNA、化学修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドを含み得る。
【0145】
二本鎖領域は、少なくとも19個の隣接ヌクレオチド、例えば約19〜23ヌクレオチドであるべきであるか、又はより長くてもよく、例えば30若しくは50ヌクレオチド、又は100ヌクレオチド若しくはそれ以上であり得る。遺伝子転写産物全体に対応する完全長配列も使用し得る。好ましくは、それらは約19〜約23ヌクレオチド長である。
【0146】
標的される転写産物への核酸分子の二本鎖領域の同一性の程度は、少なくとも90%、より好ましくは95〜100%であるべきである。核酸分子の同一性%は、ギャップ生成ペナルティー=5、ギャップ伸長ペナルティー=0.3でGAP(Needleman and Wunsch, 1970)分析(GCGプログラム)によって決定される。好ましくは、2つの配列をそれらの長さ全体にわたって整列させる。
【0147】
核酸分子は、言うまでもなく、分子を安定化するように機能し得る無関係な配列を含み得る。
【0148】
本明細書で使用される「低分子干渉RNA」又は「siRNA」という用語は、例えばRNAiを配列特異的に媒介することによって、遺伝子発現を阻害する又は下方調節することができるリボヌクレオチドを含む核酸分子を指し、この場合、二本鎖部分は50ヌクレオチド未満の長さ、好ましくは約19〜約23ヌクレオチド長である。例えばsiRNAは、自己相補的センス及びアンチセンス領域を含む核酸分子であり得、前記アンチセンス領域は、標的核酸分子内のヌクレオチド配列又はその一部に相補的なヌクレオチド配列を含み、センス領域は、標的核酸配列又はその一部に対応するヌクレオチド配列を有する。siRNAは2つの別々のオリゴヌクレオチドから構築することができ、一方の鎖はセンス鎖であり、他方はアンチセンス鎖であって、アンチセンス鎖とセンス鎖は自己相補的である。
【0149】
本明細書で使用される場合、siRNAという用語は、配列特異的RNAiを媒介することができる核酸分子を表すために使用される他の用語、例えばマイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉オリゴヌクレオチド、低分子干渉核酸(siNA)、低分子干渉修飾オリゴヌクレオチド、化学修飾siRNA、転写後遺伝子サイレンシングRNA(ptgsRNA)等に等しいことが意図されている。加えて、本明細書で使用される場合、RNAiという用語は、配列特異的RNA干渉を表すために使用される他の用語、例えば転写後遺伝子サイレンシング、翻訳阻害、又はエピジェネティクスに等しいことが意図されている。例えば、本発明のsiRNA分子を使用して、転写後レベル又は転写前レベルの両方で遺伝子を後成的に沈黙させることができる。非限定的な例では、本発明のsiRNA分子による遺伝子発現のエピジェネティック調節は、遺伝子発現を変化させるためのsiRNAを介した染色質構造の修飾から生じ得る。
【0150】
好ましい低分子干渉RNA(「siRNA」)分子は、標的mRNAの約19〜23個の隣接ヌクレオチドに同一であるヌクレオチド配列を含む。1つの実施形態では、標的mRNA配列は、ジヌクレオチドAAから始まり、約30〜70%(好ましくは30〜60%、より好ましくは40〜60%、さらに好ましくは約45%〜55%)のGC含量を含み、例えば標準的なBLAST検索によって決定されるように、それが導入される鳥類(好ましくはニワトリ)のゲノム内に標的以外のいかなるヌクレオチド配列に対しても高い同一性パーセントを有さない。
【0151】
「shRNA」又は「低分子ヘアピンRNA」により、約50ヌクレオチド未満、好ましくは約19〜約23ヌクレオチドが同じRNA分子上に位置する相補的配列と塩基対合しており、前記配列と相補的配列は少なくとも約4〜15ヌクレオチドの非対合領域によって分けられ、前記非対合領域が塩基相補性の2つの領域によって創造されるステム構造の上に一本鎖ループを形成する、siRNA分子が意味される。一本鎖ループの配列の例は、5’UUCAAGAGA3’及び5’UUUGUGUAG3’である。
【0152】
含まれるshRNAは、RNA分子が、一本鎖スペーサー領域によって分けられた2又はそれ以上のそのようなステムループ構造を含む、デュアル又はバイフィンガー及びマルチフィンガーヘアピンdsRNAである。
【0153】
siRNAを設計するための十分に確立された判定基準がある(例えばElbashire et al., 2001 ; Amarzguioui et al., 2004; Reynolds et al., 2004参照)。詳細は、いくつかの商業的供給者、例えばAmbion、Dharmacon、GenScript、及びOligoEngineのウエブサイトにおいて見出される。典型的には、多くのsiRNAを、それらの有効性を比較するために作製し、スクリーニングしなければならない。
【0154】
ひとたび設計されれば、本発明の方法における使用のためのdsRNAは、当分野において公知の任意の方法によって、例えばインビトロ転写によって、組換え法によって、又は合成手段によって作製され得る。siRNAは、組換え酵素、例えばT7 RNAポリメラーゼとDNAオリゴヌクレオチド鋳型を使用することによってインビトロで作製できるか、又は、例えば培養細胞においてインビボで調製することができる。好ましい実施形態では、核酸分子は合成によって生産される。
【0155】
加えて、例えばRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む、ベクターからヘアピンsiRNAを作製するために方法が記述されている。様々なベクターが、H1−RNA又はsnU6 RNAプロモーターのいずれかを使用して宿主細胞においてヘアピンsiRNAを作製するために構築されている。前述したRNA分子(例えば第1部分、連結配列、及び第2部分)をそのようなプロモーターに作動可能に連結することができる。RNAポリメラーゼIIIによって転写される場合、第1部分と第2部分がヘアピンの二本鎖ステムを形成し、連結配列がループを形成する。pSuperベクター(OligoEngines Ltd.,Seattle,Wash.)も、siRNAを作製するために使用できる。
【0156】
本発明の核酸分子の性質を改善するためにヌクレオチドの修飾型又は類似体を導入することができる。改善された性質は、高いヌクレアーゼ抵抗性及び/又は細胞膜を透過する高い能力を含む。従って、「ポリヌクレオチド」及び「二本鎖RNA分子」等の用語は、例えばイノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチル−、2−プロピル−及び他のアルキル−アデニン、5−ハロウラシル、5−ハロシトシン、6−アザシトシン及び6−アザチミン、プソイドウラシル、4−チオウラシル、8−ハロアデニン、8−アミノアデニン、8−チオールアデニン、8−チオールアルキルアデニン、8−ヒドロキシルアデニン及び他の8−置換アデニン、8−ハログアニン、8−アミノグアニン、8−チオールグアニン、8−チオアルキルグアニン、8−ヒドロキシルグアニン及び他の置換グアニン、他のアザ及びデアザアデニン、他のアザ及びデアザグアニン、5−トリフルオロメチルウラシル並びに5−トリフルオロシトシンなどの、しかしこれらに限定されない、合成的に修飾された塩基を含む。
【0157】
1つの実施形態では、ds分子、好ましくはdsRNAは、TがUで置換された、配列番号:9〜16として提供されるヌクレオチドの配列の任意の1又はそれ以上の少なくとも19個の隣接ヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドを含み、二本鎖である分子の部分は少なくとも19塩基対の長さであり、前記オリゴヌクレオチドを含有する。
【0158】
本発明の方法において使用できるds分子の例は、中国特許第1804038号、中国特許第1834254号、国際公開公報第08/045576号、米国特許出願第2006025370号、米国特許出願第2006094032号、英国特許第2406569号、カナダ特許第2537085号、国際公開公報第03/070910号、米国特許出願第2006217332号、同第2005222066号、同第2005054596号、同第2004209832号、同第2004138163号、同第2005148530号及び同第2005171039号に記載されているものを含むが、これらに限定されない。
【0159】
アンチセンスポリヌクレオチド
「アンチセンスポリヌクレオチド」という用語は、本発明のポリペプチドをコードし、転写後事象、例えばmRNA翻訳に干渉することができる特異的mRNA分子の少なくとも一部に相補的なDNA又はRNA又はそれらの組合せの分子を意味すると解釈される。アンチセンス法の使用は当分野において周知である(例えばG. Hartmann and S. Endres, Manual of Antisense Methodology, Kluwer (1999)参照)。Senior (1998)は、アンチセンス法は、現在、遺伝子発現を操作するための極めて広く確立された技術であると述べている。
【0160】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、生理的条件下で標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする。本明細書で使用される場合、「生理的条件下でハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチド」という用語は、ポリヌクレオチド(完全に又は部分的に一本鎖である)が、少なくとも、細胞、好ましくはヒト細胞において通常の条件下でタンパク質、例えば配列番号:9〜16のいずれか1つにおいて提供されるものをコードするmRNAと共に二本鎖ポリヌクレオチドを形成することができることを意味する。
【0161】
アンチセンス分子は、構造遺伝子又は遺伝子発現若しくはスプライシング事象に対する制御を生じさせる配列に対応する配列を含み得る。例えば、アンチセンス配列は、本発明の遺伝子の標的コード領域、又は5’非翻訳領域(UTR)若しくは3’−UTR若しくはこれらの組合せに対応し得る。アンチセンス配列は、イントロン配列に対して部分的に相補的であり得、イントロン配列は転写の間又は転写後にスプライシングによって除去され、好ましくは標的遺伝子のエクソン配列だけになり得る。一般にUTRのより大きな相違を考慮して、これらの領域を標的することは遺伝子阻害のより大きな特異性を提供する。
【0162】
アンチセンス配列の長さは、少なくとも19個の隣接ヌクレオチド、好ましくは少なくとも50ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも100、200、500又は1000ヌクレオチドであるべきである。遺伝子転写産物全体に相補的な完全長配列が使用され得る。長さは、最も好ましくは100〜2000ヌクレオチドである。標的転写産物へのアンチセンス配列の同一性の程度は、少なくとも90%、より好ましくは95〜100%であるべきである。アンチセンスRNA分子は、言うまでもなく、分子を安定化するように機能し得る無関係な配列を含み得る。
【0163】
本発明の方法において使用できるアンチセンスポリヌクレオチドの例は、米国特許出願第2003186920号及び国際公開公報第07/013704号に記載されているものを含むが、これらに限定されない。
【0164】
触媒ポリヌクレオチド
触媒ポリヌクレオチド/核酸という用語は、個別の基質を特異的に認識し、この基質の化学的修飾を触媒する、DNA分子若しくはDNA含有分子(当分野では「デオキシリボザイム」としても知られる)又はRNA若しくはRNA含有分子(「リボザイム」としても知られる)を指す。触媒核酸における核酸塩基は、塩基A、C、G、T(及びRNAについてはU)であり得る。
【0165】
典型的には、触媒核酸は、標的核酸の特異的認識のためのアンチセンス配列、及び核酸を切断する酵素活性(本明細書では「触媒ドメイン」とも称される)を含む。本発明において特に有用なリボザイムの種類は、ハンマーヘッド型リボザイム(Haseloff and Gerlach, 1988; Perriman et al, 1992)及びヘアピン型リボザイム(Shippy et al, 1999)である。
【0166】
本発明における使用のためのリボザイム及びリボザイムをコードするDNAは、当分野で周知の方法を用いて化学合成することができる。リボザイムはまた、RNAポリメラーゼプロモーター、例えばT7 RNAポリメラーゼ又はSP6 RNAポリメラーゼについてのプロモーターに作動可能に連結されたDNA分子(転写後、RNA分子を生じる)から調製され得る。従って、本発明の触媒ポリヌクレオチドをコードする核酸分子、すなわちDNA又はcDNAも、本発明によって提供される。ベクターが、DNA分子に作動可能に連結されたRNAポリメラーゼプロモーターも同時に含む場合、RNAポリメラーゼ及びヌクレオチドとのインキュベーション後にインビトロでリボザイムを生産することができる。別の実施形態では、DNAを発現カセット又は転写カセットに挿入し得る。合成後、リボザイムを安定化し、RNアーゼに対して抵抗性にする能力を有するDNA分子への連結によってRNA分子を修飾することができる。
【0167】
本明細書で述べるアンチセンスポリヌクレオチドに関して、本発明の触媒ポリヌクレオチドはまた、「生理的条件」下で、すなわち細胞内の条件(特に動物細胞、例えばヒト細胞内の条件)下で標的核酸分子(例えば配列番号:1〜8において提供される任意のポリペプチドをコードするmRNA)にハイブリダイズすることができるべきである。
【0168】
本発明の方法において使用できるリボザイムの例は、米国特許第6,346,398,号、Ciafre et al. (2004)及び Weng et al. (2005)に記載されているものを含むが、これらに限定されない。
【0169】
遺伝子治療
本明細書で述べる治療用ポリヌクレオチドは、しばしば「遺伝子治療」と称される治療形式でのそのようなポリヌクレオチドの発現により、本発明に従って使用され得る。そこで、患者からの細胞を、エクスビボでポリヌクレオチドをコードするようにポリヌクレオチド、例えばDNA又はRNAを用いて操作し得る。操作した細胞を、次に、ポリヌクレオチド、又は該当する場合はそれによってコードされるポリペプチド(例えばVEGF抗体)で治療される患者に提供することができる。この実施形態では、例えば形質転換するためのレトロウイルスプラスミドベクターの使用によって、細胞、例えば幹細胞又は分化した幹細胞をエクスビボで操作し得る。そのような方法は当分野において周知であり、本発明におけるそれらの使用は、本明細書における教示から明らかである。
【0170】
さらに、当分野で公知の手順により、インビボでのポリヌクレオチドの発現のために細胞をインビボで操作し得る。例えば、ポリヌクレオチドを、複製欠損レトロウイルスベクター又はアデノウイルスベクター又は他のベクター(例えばポックスウイルスベクター)における発現のために操作し得る。次に発現構築物を単離し得る。パッケージング細胞に、本明細書で述べるポリヌクレオチドをコードするRNAを含むプラスミドベクターを形質導入すると、パッケージング細胞は、今や、対象とする遺伝子を含む感染性ウイルス粒子を産生するようになる。これらのプロデューサー細胞を、インビボでの細胞の操作及びインビボでのポリヌクレオチドの発現のために患者に投与し得る。ポリヌクレオチドを投与するためのこれらや他の方法は、本発明の教示から当業者には明らかなはずである。
【0171】
上記で言及したレトロウイルスプラスミドベクターが由来し得るレトロウイルスは、モロニーマウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳癌ウイルスを含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、レトロウイルスプラスミドベクターはモロニーマウス白血病ウイルスに由来する。
【0172】
そのようなベクターは、ポリヌクレオチドを発現するために1又はそれ以上のプロモーターを含む。使用し得る適切なプロモーターは、レトロウイルスLTR;SV40プロモーター;及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含むが、これらに限定されない。細胞プロモーター、例えば、ヒストン、RNAポリメラーゼIII、メタロチオネインプロモーター、熱ショックプロモーター、アルブミンプロモーター、ヒトグロビンプロモーター及びα−アクチンプロモーターを含むがこれらに限定されない、真核細胞プロモーターも使用できる。使用し得るさらなるウイルスプロモーターは、アデノウイルスプロモーター、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、及びB19パルボウイルスプロモーターを含むが、これらに限定されない。適切なプロモーターの選択は、本明細書に含まれる教示から当業者には明らかである。
【0173】
レトロウイルスプラスミドベクターを使用してパッケージング細胞株に形質導入し、プロデューサー細胞株を形成することができる。トランスフェクトし得るパッケージング細胞の例としては、PE501、PA317、Y−2、Y−AM、PA12、T19−14X、VT−19−17−H2、YCRE、YCRIP、GP+E−86、GP+envAm12、及びMiller(1990)によって記述されたDAN細胞株を含むが、これらに限定されない。ベクターは、当分野で公知の任意の手段を介してパッケージング細胞に形質導入し得る。そのような手段は、エレクトロポレーション、リポソームの使用、及びCaPO沈降を含むが、これらに限定されない。1つの選択的な方法では、レトロウイルスプラスミドベクターをリポソーム中に封入し得るか、又は脂質に結合して、その後宿主に投与し得る。
【0174】
プロデューサー細胞株は、ポリヌクレオチドを含む感染性レトロウイルスベクター粒子を生成する。次にそのようなレトロウイルスベクター粒子を、インビトロ又はインビボで真核細胞に形質導入するために使用し得る。形質導入された真核細胞はポリヌクレオチドを発現し、該当する場合はそれによってコードされるポリペプチドを産生する。形質導入し得る真核細胞は、胚性幹細胞、網膜幹細胞、胚性癌腫細胞、並びに造血幹細胞、肝細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、ケラチノサイト、筋細胞(特に骨格筋細胞)、内皮細胞及び気管支上皮細胞を含むが、これらに限定されない。
【0175】
1つの実施形態では、併用療法の一部として投与される細胞は、それらが化合物を産生するように遺伝的に修飾された細胞ではない。特に好ましい実施形態では、併用療法の一部として投与される細胞は、それらが抗VEGFモノクローナル抗体を産生するように遺伝的に修飾された細胞ではない。
【0176】
遺伝子修飾の成功を観測するため及びポリヌクレオチドが組み込まれた細胞の選択のために、選択マーカーを構築物又はベクターに含めてもよい。非限定的例としては、薬剤耐性マーカー、例えばG148又はハイグロマイシンを含む。加えて、例えばマーカーがHSV−tk遺伝子である場合、陰性選択も使用し得る。この遺伝子は、細胞を作用物質、例えばアシクロビル及びガンシクロビルに対して感受性にする。NeoR(ネオマイシン/G148耐性)遺伝子が一般的に使用されるが、その遺伝子配列が標的細胞内に既に存在していない任意の好都合なマーカー遺伝子が使用できる。さらなる非限定的な例としては、低親和性神経成長因子(NGFR)、強化緑色蛍光タンパク質(EFGP)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(DHFR)、細菌hisD遺伝子、マウスCD24(HSA)、マウスCD8a(lyt)、ピューロマイシン又はフレオマイシンへの耐性を付与する細菌遺伝子、及びβ−ガラクトシダーゼを含む。
【0177】
付加的なポリヌクレオチド配列を同じベクター上で細胞に導入してもよく、又は第2のベクター上で宿主細胞へ導入してもよい。好ましい実施形態では、選択マーカーはポリヌクレオチドと同じベクター上に含まれる。
【0178】
本発明はまた、内因性遺伝子の発現が上方調節されて、野生型細胞と比較してコードされるタンパク質の産生上昇を生じさせるように、内因性遺伝子のプロモーター領域を遺伝的に修飾することを包含する。
【0179】
本発明の有用な実施形態では、血管新生を破壊する又は阻害する遺伝子を含むように細胞を遺伝的に修飾する。遺伝子は、細胞傷害性物質、例えばリシンをコードし得る。もう1つの実施形態では、遺伝子は、免疫拒絶反応を惹起する細胞表面分子をコードする。例えば、α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼを産生するように細胞を細胞を遺伝的に修飾することができる。この酵素は、主要な異好性抗原であるα1,3ガラクトシルエピトープを合成し、その発現は、前形成された循環抗体によって及び/又はT細胞媒介性免疫拒絶反応によってトランスジェニック内皮細胞の超急性免疫拒絶反応を引き起こす。
【0180】
本発明に従った遺伝子治療は、患者における遺伝子治療ポリヌクレオチドの一過性の(一時的な)存在又は患者へのポリヌクレオチドの永続的な導入を含み得る。
【0181】
組成物及びその投与
典型的には、本発明の細胞及び化合物は、少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含有する医薬組成物中で投与される。さらに、本発明の1つの態様は、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物、並びに、場合により医薬的に許容される担体を含有する組成物に関する。
【0182】
「医薬的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織と接触させる使用に適し、妥当な利益/危険度比に釣り合う、化合物、材料、組成物及び/又は投与形態を指す。本明細書で使用される「医薬的に許容される担体」という語句は、医薬的に許容される材料、組成物又はビヒクル、例えば液体若しくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、又は溶媒封入材料を意味する。
【0183】
医薬的に許容される担体は、食塩水、水性緩衝液、溶媒及び/又は分散媒を含む。そのような担体の使用は当分野において周知である。溶液は、好ましくは無菌であり、容易に注射できる程度に流動性である。好ましくは、溶液は、製造及び貯蔵条件下で安定であり、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等の使用を介して微生物、例えば細菌及び真菌の汚染作用から保護される。
【0184】
医薬的に許容される担体としての役割を果たすことができる材料及び溶液の一部の例としては、(1)糖類、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;(4)粉末トラガカントガム;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)滑石;(8)賦形剤、例えばココアバター及び坐剤ワックス;(9)油、例えば落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;(12)エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質不含水;(17)等張食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物;並びに(22)医薬製剤において使用される他の非毒性適合性物質を含む。
【0185】
本発明の方法のために有用な細胞を含有する医薬組成物は、ポリマー担体又は細胞外マトリックスを含有し得る。
【0186】
様々な生物学的又は合成固体マトリックス材料(すなわち固体支持体マトリックス、生体接着剤又は包帯、及び生物学的/医学的足場)が本発明における使用に適する。マトリックス材料は、好ましくはインビボ適用における使用のために医学的に許容される。そのような医学的に許容される及び/又は生物学的若しくは生理学的に許容される若しくは適合性の材料の非限定的な例としては、吸収性及び/又は非吸収性である固体マトリックス材料、例えば小腸粘膜下組織(SIS)、例えばブタ由来(及び他のSISソース)のもの;架橋又は非架橋アルギネート、親水コロイド、発泡体、コラーゲンゲル、コラーゲンスポンジ、ポリグリコール酸(PGA)メッシュ、ポリグラクチン(PGL)メッシュ、フリース、発泡包帯、生体接着剤(例えばフィブリン糊及びフィブリンゲル)並びに1又はそれ以上の層の脱表皮化死滅皮膚等価物(dead de-epidermized skin equivalents)を含むが、これらに限定されない。
【0187】
フィブリン糊は、様々な臨床環境で使用されてきた外科用シーラントの1つのクラスである。当業者が認識するように、数多くのシーラントが本発明の方法で使用するための組成物において有用である。しかし、本発明の好ましい実施形態は、本明細書で述べる細胞とフィブリン糊の使用に関する。
【0188】
本明細書で使用される場合、「フィブリン糊」という用語は、カルシウムイオンの存在下でフィブリンポリマーの架橋によって形成される不溶性マトリックスを指す。フィブリン糊は、フィブリンマトリックスを形成する生体組織又は生体液に由来するフィブリノーゲン又はその誘導体若しくは代謝産物、フィブリン(可溶性モノマー若しくはポリマー)及び/又はそれらの複合体から形成され得る。あるいは、フィブリン糊は、組換えDNA技術によって生産される、フィブリノーゲン又はその誘導体若しくは代謝産物、又はフィブリンから形成され得る。
【0189】
フィブリン糊はまた、フィブリノーゲンとフィブリン糊形成の触媒(例えばトロンビン及び/又は第XIII因子)との相互作用によっても形成され得る。当業者に認識されるように、フィブリノーゲンは触媒(例えばトロンビン)の存在下でタンパク質分解によって切断され、フィブリンモノマーに変換される。フィブリンモノマーは、その後ポリマーを形成し、それらが架橋してフィブリン糊マトリックスを形成し得る。フィブリンポリマーの架橋は、触媒、例えば第XIII因子の存在によって促進され得る。フィブリン糊形成の触媒は、血漿、寒冷沈降物又はフィブリノーゲン若しくはトロンビンを含有する他の血漿画分に由来し得る。あるいは、触媒は組換えDNA技術によって生産され得る。
【0190】
血餅が形成する速度は、フィブリノーゲンと混合されるトロンビンの濃度に依存する。酵素依存性反応であるので、温度が高いほど(37℃まで)、血餅形成速度は速くなる。血餅の引張強度は、使用されるフィブリノーゲンの濃度に依存する。
【0191】
フィブリン糊の使用及びその調製と使用のための方法は、米国特許第5,643,192号に記載されている。米国特許第5,643,192号は、単一ドナーからのフィブリノーゲン及びトロンビン成分の抽出、並びにフィブリン糊として使用するためのこれらの成分だけの組合せを開示する。米国特許第5,651,982号は、フィブリン糊についての別の調製及び使用方法を記載する。米国特許第5,651,982号は、哺乳動物における局所シーラントとしての使用のためのリポソームとフィブリン糊を提供する。
【0192】
いくつかの公表文献は、治療薬の送達のためのフィブリン糊の使用を述べている。例えば米国特許第4,983,393号は、アガロース、寒天、塩類溶液、グリコサミノグリカン、コラーゲン、フィブリン及び酵素を含む、膣内挿入物として使用するための組成物を開示する。さらに、米国特許第3,089,815号は、フィブリノーゲン及びトロンビンから構成される注射用医薬製剤を開示し、米国特許第6,468,527号は、体内の特定部位への様々な生物学的及び非生物学的製剤の送達を容易にするフィブリン糊を開示する。そのような手順は本発明の方法において使用できる。
【0193】
適切なポリマー担体は、合成又は天然ポリマーで形成される多孔性メッシュ又はスポンジ、並びにポリマー溶液を含む。マトリックスの1つの形態はポリマーメッシュ又はスポンジである;他の形態はポリマーヒドロゲルである。使用できる天然ポリマーは、タンパク質、例えばコラーゲン、アルブミン及びフィブリン;並びに多糖類、例えばアルギネート及びヒアルロン酸のポリマーが挙げられる。合成ポリマーは、生分解性ポリマー及び非生分解性ポリマーの両方を含む。生分解性ポリマーの例としては、ヒドロキシ酸のポリマー、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)及びポリ乳酸−グリコール酸(PLGA)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリホスファゼン、並びにそれらの組合せを含む。非生分解性ポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エチレンビニルアセテート、及びポリビニルアルコールを含む。
【0194】
展性のあるイオン架橋した又は共有結合で架橋したヒドロゲルを形成することができるポリマーが、細胞を封入するために使用される。ヒドロゲルは、有機ポリマー(天然又は合成)が共有結合、イオン結合又は水素結合によって架橋されて三次元開格子構造を創造し、それが水分子を捕捉してゲルを形成する場合に作られる物質である。ヒドロゲルを形成するために使用できるマトリックスの例としては、多糖類、例えばアルギネート、ポリホスファジン、及びイオン架橋しているポリアクリレート、又はそれぞれ温度又はpHによって架橋される、ブロックコポリマー、例えばPluronics(商標)若しくはTetronics(商標)、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロックコポリマーを含む。他の材料は、タンパク質、例えばフィブリン、ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸及びコラーゲンを含む。
【0195】
一般に、荷電側基又はその一価イオン塩を有するこれらのポリマーは、水溶液、例えば水、緩衝塩類溶液、又はアルコール水溶液に少なくとも部分的に可溶性である。陽イオンと反応し得る酸性側基を有するポリマーの例は、ポリホスファゼン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸のコポリマー、ポリビニルアセテート、及びスルホン化ポリマー、例えばスルホン化ポリスチレンである。アクリル酸又はメタクリル酸とビニルエーテルモノマー又はポリマーとの反応によって形成される、酸性側基を有するコポリマーも使用できる。酸性基の例は、カルボン酸基、スルホン酸基、ハロゲン化(好ましくはフッ素化)アルコール基、フェノール性OH基、及び酸性OH基である。陰イオンと反応し得る塩基性側基を有するポリマーの例は、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、及び一部のイミノ置換ポリホスファゼンである。ポリマーのアンモニウム塩又は第四級塩も、それらの骨格窒素又はペンダントイミノ基から形成することができる。塩基性側基の例は、アミノ基及びイミノ基である。
【0196】
さらに、本発明の方法のために使用される組成物は、少なくとも1つの他の治療薬を含有し得る。例えば、組成物は、炎症若しくは疼痛を治療するのを助ける鎮痛薬、別の抗血管新生化合物、又は組成物で治療される部位の感染を予防するための抗感染薬を含有し得る。より具体的に、有用な治療薬の非限定的な例としては以下の治療カテゴリーを含む:鎮痛薬、例えば非ステロイド系抗炎症薬、アヘン剤アゴニスト及びサリチル酸塩;抗感染薬、例えば駆虫薬、抗嫌気性菌薬、抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、抗真菌性抗生物質、セファロスポリン系抗生物質、マクロライド系抗生物質、その他のβ−ラクタム系抗生物質、ペニシリン系抗生物質、キノロン系抗生物質、スルホンアミド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、抗マイコバクテリア薬、抗結核性抗マイコバクテリア薬、抗原虫薬、抗マラリア性抗原虫薬、抗ウイルス薬、抗レトロウイルス薬、殺疥癬虫薬、抗炎症薬、コルチコステロイド抗炎症薬、かゆみ止め/局所麻酔薬、局所抗感染薬、抗真菌性局所抗感染薬、抗ウイルス性局所抗感染薬;電解質及び腎臓薬、例えば酸性化薬、アルカリ化薬、利尿薬、炭酸脱水酵素阻害剤利尿薬、ループ利尿薬、浸透圧利尿薬、カリウム保持性利尿薬、チアジド系利尿薬、電解質補充薬、及び尿酸排泄薬;酵素、例えば、膵酵素及び血栓溶解酵素;胃腸薬、例えば、下痢止め薬、胃腸抗炎症薬、胃腸抗炎症薬、制酸性抗潰瘍薬、胃酸ポンプ阻害剤抗潰瘍薬、胃粘膜抗潰瘍薬、H2ブロッカー抗潰瘍薬、胆石溶解薬、消化薬、催吐薬、緩下剤及び便軟化剤、並びに消化管運動改善薬;全身麻酔薬、例えば吸入麻酔薬、ハロゲン化吸入麻酔薬、静脈麻酔薬、バルビツール酸系静脈麻酔薬、ベンゾジアゼピン系静脈麻酔薬、及びアヘン剤アゴニスト静脈麻酔薬;ホルモン及びホルモン調節剤、例えば堕胎薬、副腎薬、コルチコステロイド副腎薬、アンドロゲン、抗アンドロゲン物質、免疫生物学的薬剤、例えば免疫グロブリン、免疫抑制薬、トキソイド、及びワクチン;局所麻酔薬、例えば、アミド型局所麻酔薬及びエステル型局所麻酔薬;筋骨格薬、例えば抗痛風抗炎症薬、コルチコステロイド抗炎症薬、金化合物抗炎症薬、免疫抑制性抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、サリチル酸系抗炎症薬、無機物;並びにビタミン、例えばビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、及びビタミンK。
【0197】
単一組成物又は併用療法のいずれかとして、本発明と共に使用し得る他の抗血管新生因子の例としては、血小板第4因子;硫酸プロタミン;硫酸化キチン誘導体(ズワイガニの甲羅から調製される);硫酸化多糖ペプチドグリカン複合体(SP−PG)(この化合物の機能はステロイド類、例えばエストロゲン及びクエン酸タモキシフェンの存在によって増強され得る);スタウロスポリン;例えばプロリン類似体、シスヒドロキシプロリン、d,L−3,4−デヒドロプロリン、チアプロリン、α,α−ジピリジル、アミノプロピオニトリルフマレートを含む、マトリックス代謝の調節剤;4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3H)−オキサゾロン;メトトレキサート;ミトキサントロン;ヘパリン;インターフェロン;2マクログロブリン−血清;ChIMP−3;キモスタチン;シクロデキストリンテトラデカスルフェート;エポネマイシン;カンプトテシン;フマギリン;金チオリンゴ酸ナトリウム;抗コラゲナーゼ血清;α2−抗プラスミン;ビサントレン(National Cancer Institute);ロベンザリット二ナトリウム(N−(2)−カルボキシフェニル−4−クロロアントロニル酸二ナトリウム);サリドマイド;血管新生抑制性ステロイド;AGM−1470;カルボキシアミノイミダゾール;及びメタロプロテイナーゼ阻害剤、例えばBB94を含むが、これらに限定されない。
【0198】
特定実施形態では、その他の治療薬は、増殖因子又は細胞の分化及び/又は増殖に影響を及ぼす他の分子であり得る。最終分化状態を誘導する増殖因子は当分野において周知であり、最終分化状態を誘導することが示されている任意のそのような因子から選択され得る。本明細書で述べる方法における使用のための増殖因子は、特定実施形態では、天然に生じる増殖因子の変異体又はフラグメントであり得る。
【0199】
細胞を含有する本発明の方法のために有用な組成物は、細胞培養成分、例えば、アミノ酸、金属、補酵素因子を含む培地、並びに他の細胞の小集団、例えば幹細胞のその後の分化によって生じ得るものの一部を含有し得る。
【0200】
細胞を含有する本発明の方法のために有用な組成物は、例えば、培地から対象細胞を沈降させ、それらを所望溶液又は物質に再懸濁することによって調製し得る。前記細胞は、例えば遠心分離、ろ過、限外ろ過等によって培地から沈降させ得る及び/又は変化させ得る。
【0201】
組成物は、経口的、非経口的、口腔内、経膣、経直腸、吸入、吹送、舌下、筋肉内、皮下、局所、鼻内、眼内、腹腔内、胸腔内、静脈内、硬膜外、髄腔内、脳室内経路で、及び関節への注射によって投与し得る。
【0202】
細胞及び/又は化合物は、例えば点眼剤、軟膏、クリーム、ゲル、懸濁液、インプラント等を使用して、眼又は眼瞼に投与し得る。もう1つの実施形態では、眼内注射を使用して眼疾患を治療する。1つの実施形態では、細胞及び/又は化合物は硝子体内に投与され得、もう1つの実施形態では網膜下に、もう1つの実施形態では網膜内に、もう1つの実施形態では眼周囲に投与され得る。1つの実施形態では、細胞及び/又は化合物は、手術中に挿入される眼内レンズインプラントに結合されたデポー剤を介して、又は前眼房若しくは硝子体において縫合された眼内に設置されたデポー剤を介して、前眼房又は硝子体内に前房内経路で投与され得る。細胞及び/又は化合物は、賦形剤、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリジン、中性ポリアクリレート(メタクリレート)エステル、及び他の粘度増強剤と共に製剤され得る。細胞及び/又は化合物は、例えば結膜下若しくはテノン嚢下注射、硝子体内注射、又は球後注射によって眼に注入され得る。細胞及び/又は化合物は、徐放性薬物送達システム、例えばポリマー、マトリックス、マイクロカプセル、又は例えば、単独の又はポリエチレングリコールと組み合わせた、グリコール酸、乳酸、グリコール酸と乳酸の組合せ、リポソーム、シリコーン、ポリ無水物、ポリビニルアセテート等から製剤される他の送達システムで投与され得る。送達装置は、長期的な薬物送達のために眼内に移植することができ、例えば結膜下に移植、眼壁に移植、強膜に縫合することができる。導入の方法は、さらに、非生分解性装置によって提供され得る。特に、細胞及び/又は化合物は移植可能レンズによって投与され得る。細胞及び/又は化合物は、レンズ上に被覆されるか、レンズ全体に分散される又はその両方であり得る。
【0203】
注射用途に適する医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与については、適切な担体は、生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR EL(BASF,Parsippany,N.J.)又はリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。すべての場合に、組成物は無菌でなければならず、また容易に注射できる程度に流動性であるべきである。組成物は、製造及び貯蔵条件下で安定であり、微生物、例えば細菌及び真菌の汚染作用から保護されるべきである。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば被覆剤、例えばレシチンの使用によって、分散の場合は必要な粒径に維持によって及び界面活性剤に使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、様々な抗菌薬及び抗真菌薬、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成され得る。等張剤、例えば糖類、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムも組成物に含めることができる。吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンを組成物に含めることにより、注射用組成物の持続的吸収を生じさせ得る。
【0204】
滅菌注射用溶液は、所要量の化合物及び/又は細胞を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つ又はそれらの組合せと共に適切な溶媒に組み込み、その後ろ過滅菌することによって調製できる。一般に、分散液は、塩基性分散媒及び上記に列挙したものの中から必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中にポリヌクレオチドを組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合は、適切な調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥を含み、前記方法は、有効成分及び任意の付加的な所望成分の粉末を、事前に滅菌ろ過したそれらの溶液から生成する。
【0205】
経口組成物は、一般に不活性希釈剤又は食用担体を含有する。経口治療投与のために、化合物又は細胞を賦形剤と共に組み込むことができ、錠剤、トローチ、又はカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態で使用できる。経口組成物はまた、含そう薬としての使用のために流体担体を用いて調製することもできる。医薬的に適合性の結合剤及び/又はアジュバント物質が組成物の一部として含まれてもよい。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ等は、以下の成分又は同様の性質を備える化合物のいずれかを含有し得る:結合剤、例えば微結晶セルロース、トラガカントガム若しくはゼラチン;賦形剤、例えばデンプン若しくはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、PRIMOGEL若しくはトウモロコシデンプン;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム若しくはSterotes;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味料、例えばスクロース若しくはサッカリン;又は、香味料、例えばペパーミント、サリチル酸メチル若しくはオレンジフレーバー。
【0206】
担体が固体である、経鼻投与に適する製剤は、例えば約20〜約500ミクロンの範囲の粒径を有する粗い粉末を含み、鼻から吸い込むように、すなわち鼻の近くに保持した粉末の容器からの鼻道を通る迅速な吸入によって投与される。ネブライザによる投与のための、担体が液体である適切な製剤は、作用物質の水溶液又は油性溶液を含む。吸入による投与のためには、化合物又は細胞を、適切な推進剤、例えば二酸化炭素などのガスを含有する加圧容器若しくはディスペンサー、又はネブライザから、点滴剤又はエアロゾルスプレーの形態で送達することもできる。そのような方法は、米国特許第6,468,798号に記載されているものを含む。
【0207】
全身投与はまた、経粘膜又は経皮手段によってであり得る。経粘膜又は経皮投与のために、浸透すべきバリアに対して適切な浸透剤が製剤において使用される。そのような浸透剤は一般に当分野において公知であり、例えば経粘膜投与については、界面活性剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻スプレー、点眼剤又は坐剤の使用を通して達成できる、経皮投与については、活性化合物は、当分野において一般に公知のように、軟膏(ointments, salves)、ゲル又はクリームに製剤される。
【0208】
当業者は、本発明の組成物中の及び本発明の方法において投与される細胞、化合物及び任意の担体(1又はそれ以上)の量を容易に決定することができる。1つの実施形態では、任意の添加物(活性細胞又は化合物に加えて)がリン酸緩衝食塩水中に0.001〜50%(重量)の量で存在し、有効成分は、ほぼ数マイクログラムから数ミリグラム程度、例えば約0.0001〜約5重量%、好ましくは約0.0001〜約1重量%、さらに一層好ましくは約0.0001〜約0.05重量%又は約0.001〜約20重量%、好ましくは約0.01〜約10重量%、さらに一層好ましくは約0.05〜約5重量%存在する。言うまでもなく、動物又はヒトに投与される任意の組成物に関して、及び任意の特定投与方法に関して、それ故、毒性を測定すること、例えば適切な動物モデル、例えばげっ歯動物、例えばマウスにおいて致死用量(LD)及びLD50を測定することによって;並びに適切な応答を惹起する、組成物(1又はそれ以上)の用量、その中の成分の濃度及び組成物(1又はそれ以上)を投与する時期を測定することが好ましい。そのような測定は、当業者の知識、本開示及び本明細書で引用する資料から、過度の実験を必要としない。また、過度の実験を伴わずに、連続投与のための時間を確認することができる。
【0209】
本発明の組成物中の細胞の濃度は、少なくとも約5×10細胞/mL、少なくとも約1×10細胞/mL、少なくとも約5×10細胞/mL、少なくとも約10細胞/mL、少なくとも約2×10細胞/mL、少なくとも約3×10細胞/mL、又は少なくとも約5×10細胞/mLであり得る。
【0210】
化合物は、各投与当たり約0.001〜2000mg/kg体重、より好ましくは各投与当たり約0.01〜500mg/kg体重の量で投与され得る。反復用量は、治療する医師によって処方されるように投与され得る。
【0211】
本発明は、血管新生関連疾患を治療する又は予防するための、細胞とVEGFシグナル伝達を破壊する化合物の併用に関する。「と組み合わせて」若しくは「併用療法」という用語又はその変形は、細胞と化合物が、同じ組成物中又は別々(例えば互いに約5分以内に)のいずれかで同時に、連続的に、又はその両方で、並びに数時間、数日間又は数週間の時間間隔をおいて順に投与できることを意味する。そのような併用治療はまた、単回以上の投与を含み得る。そのような併用療法は、1つの治療薬を他方の投与薬の投与の間に複数回投与することを含み得ることが企図される。投与と投与の間の期間は、数秒間(又はそれ以下)から数時間又は数時間までにわたってよく、例えば細胞又は化合物の性質(例えば効力、溶解度、バイオアベイラビリティー、半減期及び動態プロフィール)、並びに患者の状態に依存する。
【0212】
1つの実施形態では、化合物は細胞の前に投与される。これは、特に作用物質がVEGF又はその受容体に結合する場合である。1つの実施形態では、化合物は、細胞の約1日前、3日前、5日前、7日前、9日前又は14日前に投与される。
【0213】
本発明の方法は、眼疾患及び/又は血管新生関連疾患を治療する又は予防するための他の療法と組み合わせ得る。これらの他の療法の性質は、特定の血管新生関連疾患に依存する。例えば、黄斑変性の治療又は予防のためには、本発明の方法の使用は、抗酸化薬及び/又は亜鉛補充剤(zinc supplements)、米国特許第6,942,655号に定義されている方法を用いたマクゲン(Pegaptanib)の投与、ステロイド療法及び/又はレーザー治療(例えばVisudyne(商標))と組み合わせ得る。癌に関しては、本発明の方法による治療は、手術、放射線療法及び/又は化学療法と組み合わせることができる。
【実施例】
【0214】
本発明を、以下の非限定的実施例によって及び添付の図面を参照して、下記で説明する。
【0215】
試験計画の要約を図1に示す。
材料及び方法
受容者
種 カニクイザル(マカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis))
系統 シノモルガス(Cynomolgus)
供給元 PCS Preferred Supplier
年齢 治療開始時に約1歳半〜3歳半
体重範囲 治療開始時に約2〜4kg
群の数 7
動物の数 雄性6匹/群及び予備の2匹(合計44匹の動物)
【0216】
飼育施設
動物を、格子型の床(bar-type floor)と自動給水弁を備えたステンレススチールケージに、可能な場合はグループで収容した(2又は3匹)。各々のケージに、プロジェクト、群、動物番号及び入れ墨を示す色分けしたケージカードを明瞭に貼付した。
【0217】
各々の動物を永続的な皮膚の入れ墨によって独自に同定した。動物室の環境及び光周期についての目標条件は以下のとおりである:
温度 24±3℃
湿度 50±20%
光周期 明12時間及び暗12時間(指定された手順の間を除く)。
【0218】
食餌
すべての動物に、指定された手順の間を除き、市販の標準認定ペレット化霊長類飼料(standard certified pelleted commercial primate food)(2050C Certified Global 20% Protein Primate Diet:Harlan)を1日2回摂取させた。加えて、各々の動物に以下の補助食餌を任意の組合せで毎日与えた:Golden Banana Softy(登録商標)、Prima−Treat(登録商標)(5g体裁)及び/又は新鮮若しくは乾燥果物並びに環境エンリッチメントプログラムの一部として少なくとも週に1回Prima−Foraging Crumbles(登録商標)。麻酔からの回復後には、食欲を刺激し、栄養状態を維持するために付加的な補助果物を与えた。
【0219】
食餌中の夾雑物(例えば重金属、アフラトキシン、有機リン酸化合物、塩素化炭化水素、PCB)の最大許容濃度を管理し、製造者によって常套的に分析させた。軟化され、逆浸透法によって精製され、紫外光に暴露された都市水道水を自由に摂取させた(指定された手順の間を除く)。試験の目的に干渉し得る食餌中の公知の夾雑物は存在しなかったと考えられる。
【0220】
群の割り当て
治療の開始前に、パラメータとして体重による層別化を用いたコンピュータでの無作為化手順を使用して動物を処置群に割り当てた(健康状態が悪い動物も群に割り当てた)(表1)。
【0221】
細胞の調製
サル骨髄前駆細胞−カニクイザル(smMPC−cyno)(この実施例ではMPCとも称される)を、Master Batch Record 3001.MESを通して2007年6月25日に雌性カニクイザル(D.O.B.2005年3月12日)から収集した骨髄吸引物約15mlから単離した。骨髄吸引物懸濁液をフィコール処理し(Ficolled)、洗浄して、無核細胞(赤血球)を除去した。有核細胞を計数し、次に、CA12抗体(STRO−3抗体としても知られる−国際公開公報第2006/108229号参照)及びDynalbeadsに結合することによって分離した。抗体及びビーズが結合した細胞をMPC−1磁石の磁場によって陽性選択した。陽性選択した細胞を計数し、増殖培地中第0継時に、Tフラスコに接種した。選択前、陽性及び陰性細胞をコロニー形成アッセイ(CFU−F)において使用した。
【表1】

【0222】
smMPC−cyno細胞に増殖培地を供給した。すべての培養物(第0継代〜第5継代)に、それらが所望の集密度に達するまで2〜4日ごとに供給した。その後、HBSS洗浄、次にコラゲナーゼ、続いてトリプシン/ベルセンを使用して継代又は採集した。第1継代細胞を計数し、Tフラスコに接種した。第1継代のsmMPC−cynoが所望集密度に達したとき、細胞を採集し、制御された速度の冷凍庫を使用して凍結保存した。
【0223】
第1継代の凍結保存したsmMPC−cynoを解凍し、Tフラスコに接種した(第2継代)。第2継代細胞を第3継代でCell Factoryに継代した。第3継代細胞を採集し、Cell Factoryに第4継代へと継代した。余分な第3継代細胞を凍結保存した。第4継代細胞を第5継代で6×Cell Factoryに継代した。第5継代のsmMPC−cynoが所望集密度に達したとき、細胞を採集し、制御された速度の冷凍庫を使用して凍結保存した。細胞を50%AlphaMEM、42.5%Profreeze、及び7.5%DMSO中で凍結保存した(表2及び3)。試料をCFU−Fアッセイ、FACS、滅菌性、マイコプラズマ、及び内毒素に関して試験した(表4)。
【表2】


【表3】


【表4】

【0224】
凍結保存smMPC−cyno及びヒトMSC(huMPC)を解凍し、軟骨形成、脂質生成及び骨形成経路に沿ったヒトMPC分化のために最適化された分化アッセイに接種した。脂質生成分化及びインビトロでの無機化をそれぞれオイルレッドO及びアリザリンレッド染色によって評価した。
【0225】
huMPC対応物と同様に、smMPCは脂肪生成分化することができた(データは示していない)。sm及びhuMPCの18日目の培養物を、脂肪細胞の存在に関してオイルレッドOで染色した。smMPCの第1継代及び第5継代培養物はどちらも、脂肪生成培養条件で培養したとき、数多くの脂質担持脂肪細胞を保持していた。
【0226】
骨形成培養の21日後、細胞をアリザリンレッドで染色した。赤く染色された無機質の形成によって骨形成分化が証明された。huMPCと同様に、smMPCは骨形成能を有する。
【0227】
レーザー誘導脈絡膜新生血管形成
レーザー誘導脈絡膜新生血管形成(CNV)を試験物質投与と同じ日に実施した。手順の前に動物を一晩絶食させた。
【0228】
手順に先立ち、散瞳点眼薬(1%ミドリアシル(mydriacyl))を両眼に適用した。動物にグリコピロレート、ケタミン及びキシラジンの鎮静薬カクテルの筋肉内注射を実施し、その後イソフルラン/酸素で麻酔した。麻酔下に、250〜300mWの初期出力設定で0.1秒間、810nmダイオードレーザーを使用して各々の眼の黄斑の周囲に9スポットパターンを作製した(黄斑内には作製しなかった)。特定スポットに関してブルーフ膜の裂傷が確認されない場合、動物眼科医が適切とみなしたときには付加的なスポットを追加した。
【0229】
手順の間、食塩水で眼の水分補給を維持した。何らかの注目すべき事象、例えば網膜出血を各々のレーザースポットについて記録した。
【0230】
試験物質の投与
ルセンティス(商標)(0.5mg/mL、0.3mL/バイアル;Novartis Canada)をレーザー治療の時点で投与し、MPC+ルセンティスを摂取する群にはレーザー損傷の7日後にMPCを投与した。局所眼科用抗生物質(ゲンタマイシン)を、治療の前日に2回、最後の注射の直後及び注射の翌日に2回(午前及び午後)適用した。レーザー治療の前に1回だけ注射を実施した場合は、レーザー治療後に抗生物質を適用した。
【0231】
結膜を、滅菌水、U.S.P.で1:10,000(v/v)に希釈した塩化ベンザルコニウム(Zephiran(商標))で洗った。局所麻酔薬(プロパラカイン、0.5%)をZephiran(商標)の前と後に両眼に適用した。30ゲージ、1/2インチ針を用いて、各々の注射について新しい注射器を使用した。ビヒクル、試験物質細胞懸濁液及び/又はルセンティス50μLを両眼に投与した。治療後直ちに両眼を検査し(倒像及び/又は直像眼底検査及び/又は細隙灯生体顕微鏡検査)、注射手順によって引き起こされた異常を記録した。
【0232】
眼評価
眼検査
2、14、26、34及び40日目に動物を眼科学的評価に供した。
【0233】
使用した散瞳薬は1%ミドリアシルであった。検査のために動物を鎮静させた。鎮静薬である注射用塩酸ケタミン(Ketamine)(登録商標)、U.S.P.を適切な絶食期間後に筋肉内注射によって投与した。
【0234】
検査は、最初は散瞳薬なしで(細隙灯のみ)、認定専門医の動物眼科医によって実施され、次に散瞳薬投与後に反復された(細隙灯及び/又は倒像及び/又は直像眼底検査)。各動物の治療前、及び眼検査時に動物眼科医が必要とみなした場合に、眼底写真を撮影した。
【0235】
眼圧測定
眼検査後(投与直後の検査を除く)、眼内圧(IOP)を測定した。測定の前に局所麻酔薬(アルカイン、0.5%)を点眼した。Tono−Pen XL(商標)又はTonoVetを使用して測定を行った。試験全体を通じて同じ装置型を使用した。
【0236】
網膜電図検査
網膜電図記録をすべての動物に関して治療前に1回及び27日目と41日目に実施した。ERG記録の少なくとも30分前に動物を暗所適応させた。動物にグリコピロレート、ケタミン及びキシラジンの鎮静薬カクテルの筋肉内注射を実施した。試験の約5〜10分前にミドリアシル(1%)を各々の眼に適用した。眼瞼を開瞼器によって牽引し、コンタクトレンズ電極を各眼の表面に位置づけた。針電極を各眼の下(参照)及び額の後の頭部(グラウンド)の皮膚に設置した。眼にそれらを設置する前にカルボキシメチルセルロース(1%)点眼薬をコンタクトレンズ電極の内部表面に適用した。
【0237】
各々のERG検査は、以下の一連の暗順応単回閃光刺激からなるものであった:
1)−30dB単回閃光、平均5回の単回閃光、閃光の間隔は10秒間
2)−10dB単回閃光、平均5回の単回閃光、閃光の間隔は15秒間
3)0dB、平均2回の単回閃光、閃光の間隔は約120秒間。
【0238】
暗順応応答の記録後、動物を約25〜30cd/mのバックグラウンド光に約5分間適応させ、続いて平均20掃引の1Hzの明所視白色フリッカー、次に20掃引の29Hzの明所視フリッカーに適応させた。
【0239】
フルオレセイン血管造影(第7群を除く)
フルオレセイン血管造影図(FA)を投与前に1回並びに15、28、35及び42日目に得た。適切な絶食期間後、動物にプロポフォールの静脈内注射を実施し、その後挿管した。
【0240】
試験の約5〜10分前にミドリアシル(1%)を各々の眼に適用した。眼瞼を開瞼器によって牽引した。食塩水で頻繁に洗浄して眼の水分補給を維持した。10%フルオレセインナトリウム1mLを迅速に静脈内注射し、その時点で右眼の充満(filling)を動画モードで約20秒間記録した。フルオレセイン注射の約2分後及び10分後に両眼から静止画像を記録した。充満の順序を定性的に評価した。静止画像での個々のレーザースポットを漏出に関して1〜4の尺度で半定量的に評価した。
【0241】
統計分析
第1〜4群から試験の実施期間中に得た数値データ(主試験のみ)を群平均値及び標準偏差の算定に供した。対象とする各パラメータについて(ERG、眼圧測定及びFAを除く)、0.05の有意レベルでルビーン検定を使用して群分散を比較した。群分散の間の差が有意と認められなかった場合は、一方向分散分析(ANOVA)を実施した。ANOVAによって平均値間で有意差が指示された場合(p≦0.05)は、ダネット「t」検定を使用して対照群と各々の処置群の間で群平均の比較を実施した。
【0242】
ルビーン検定が不等群分散を指示した場合(p≦0.05)は常に、クラスカル−ウォリス検定を使用してすべての検討群を比較した。クラスカル−ウォリス検定が有意であった場合(p≦0.05)は、ダン検定を用いて対照群と各々の試験群との間の差の有意性を評価した。データを個体ベースで評価し、適宜に群平均及び標準偏差を算定した。
【0243】
対象とする各々のペアワイズ群比較に関しては、0.05、0.01及び0.001レベルで有意性を報告した。
【0244】
結果
図2Aは、レーザー光凝固後の非ヒト霊長動物眼に注射した、抗VEGFモノクローナル抗体(ルセンティス0.5mg/50μl)又は低(78,100細胞/50μl)、中(312,500細胞/50μl)若しくは高(1,250,000細胞/50μl)濃度で投与した同種MPCの単回用量のいずれかの硝子体内注射後42日目のフルオレセイン血管造影の結果を示す。硝子体内注射後42日目に、血管漏出/新生血管形成の程度は同等であり、いずれの群間でも有意に異ならなかった。
【0245】
図2Bは、レーザー光凝固の直後の硝子体内ルセンティス(0.5mg/50μl)投与から7日後の、最高濃度(1,250,000細胞/50μl)の硝子体内同種MPCの追加注射が、42日目に有意に低い平均フルオレセイン血管造影図スコアを生じさせたことを示し、併用の相乗作用を明らかにした(p=0.03)。
【0246】
10%フルオレセインナトリウムを使用したフルオレセイン血管造影図(FA)は、投与の約2〜5分後に記録された各々の眼の静止画像で、速やかに静脈内に注入された。血管造影図を、レーザー光凝固を受けた各々のスポットについて1〜4の半定量的評価尺度を用いて42日目に漏出に関して評価した。
【0247】
レーザー光凝固の直後のルセンティス(0.5mg/50μl)投与から7日後の最高濃度(1,250,000細胞/50μl)の同種MPCの併用治療は(下のパネル)、検討したすべての時点で(15、28、35及び42日目)最も重篤な形態の血管漏出(グレード4のスコア)の完全な予防をもたらしたが、これに対しルセンティス単独群では15日目を越えたすべての時点で多くのグレード4の重度の血管漏出が認められた(図3)。
【0248】
すべての重症病変(グループ3又は4の重症度の病変)を分析した場合、レーザー光凝固の直後のルセンティス(0.5mg/50μl)投与から7日後の最高濃度(1,250,000細胞/50μl)の同種MPCの併用は、ルセンティス単独と比較してすべての時点で血管漏出の重症度を軽減することが示された(図4)。この作用は、試験終了時である42日目に最も有意であり(p=0.013)、相乗作用の長期的な効果を示した。
【0249】
媒質単独の硝子体内注射を受けた対照と比較して、ルセンティス治療はグレード4の重症血管漏出を軽減するうえで15日目に卓越していることが認められた(図5)。この作用は、おそらく抗体の短い半減期を反映して、15日目を越えると漸進的に失われた。これに対し、レーザー凝固損傷後7日目の最高用量の同種MPCとルセンティスの併用は、42日の試験期間全体にわたっていかなるグレード4の重症血管病変も完全に予防した。これらの結果は、ルセンティスに同種MPCを追加することが、血管漏出への抗VEGF療法の一時的な作用を長期の持続的な効果に変化させたことを示す。
【0250】
レーザー誘導光凝固損傷後のルセンティス投与から7日後の同種高用量MPCの併用は、対照又はルセンティスだけを投与された動物と比較して、試験期間全体を通じて低グレード(グレード1)血管漏出の数の増加を生じさせた(図6)。これは、併用療法が、初期に認められ、試験期間を通じて維持された作用である、低重症度血管の高重症度血管への進行を予防したことを示す。
【0251】
42日目の組織病理学的分析は、併用療法が、試験したその他の群の各々と比較して、網膜剥離の発生率を有意に低下させた(p<0.01)ことを明らかにした(図7)。網膜剥離は、レーザー光凝固直後のルセンティス(0.5mg/50μl)投与から7日後の最高濃度(1,250,000細胞/50μl)の同種MPCの併用を受けた12匹の動物のうち1匹においてのみ認められた。これに対し、対照12匹のうち7匹、高用量MPC単独で治療された12匹のうち8匹、及びルセンティス単独で治療された12匹のうち7匹で網膜剥離が見られた。
【0252】
レーザー光凝固を受けたすべての動物における網膜剥離の高い発生率(37/72、51%)と比較して、レーザー光凝固直後のルセンティス(0.5mg/50μl)投与から7日後の最高濃度(1,250,000細胞/50μl)の同種MPCの併用を受けた12匹の動物のうち1匹(8.5%)だけが網膜剥離を発症した(p<0.01)(図8)。これらの結果は、併用療法が、レーザー光凝固が誘導する新生血管形成に関連した網膜剥離の危険度を、硝子体内注射手順単独で認められた基線レベルまで低下させたことを示す。
【0253】
広く説明した本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、特定実施形態において示した本発明に対して数多くの変形及び/又は変更を施し得ることは当業者に認識される。本実施形態は、それ故、すべての点で例示とみなされるべきであり、限定と解釈されてはならない。
【0254】
上記で論じたすべての公表文献は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0255】
本出願は、どちらもそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、2008年6月30日出願のオーストラリア特許出願第2008903349号及び2008年6月30日出願の米国特許出願第61/133,607号の優先権を主張するものである。
【0256】
本明細書に含まれる資料、行為、物質、装置、物品等についてのいかなる考察も、もっぱら本発明についての背景を提供するためのものである。これらの事柄のいずれか又はすべては、本出願の各々の特許請求の範囲の優先日以前に存在していたので、先行技術の基礎の一部を構成する又は本発明の関連分野における共通一般知識であったということの承認と解釈されるべきでない。
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者において眼疾患を治療する又は予防する方法であって、i)細胞、及びii)血管内皮増殖因子(VEGF)シグナル伝達を破壊する化合物を被験者に投与することを含む方法。
【請求項2】
眼疾患が、網膜虚血、網膜炎症、網膜浮腫、網膜剥離、黄斑円孔、牽引性網膜症、硝子体出血、牽引性黄斑症、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶反応、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症及び/又はルベオーシスからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
眼疾患が、網膜剥離、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症及び/又は黄斑変性である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
黄斑変性が、萎縮型加齢黄斑変性又は滲出型加齢黄斑変性である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
被験者において血管新生関連疾患を治療する又は予防する方法であって、i)細胞、及びii)血管内皮増殖因子(VEGF)シグナル伝達を破壊する化合物を被験者に投与することを含む方法。
【請求項6】
血管新生関連疾患が、血管新生依存性癌、良性腫瘍、関節リウマチ、乾癬、眼血管新生疾患、オスラー−ウェーバー症候群、心筋血管新生、プラーク新生血管形成、毛細血管拡張症、血友病性関節症、血管線維腫、創傷肉芽形成、腸管癒着、アテローム性動脈硬化症、強皮症、過形成性瘢痕、ネコ引っ掻き病及びヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)潰瘍からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
細胞が幹細胞又はその子孫細胞である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
幹細胞が骨髄又は眼から得られる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
幹細胞が間葉系前駆細胞(MPC)である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
間葉系前駆細胞が、TNAP、STRO−1、VCAM−1、THY−1、STRO−2、CD45、CD146、3G5又はそれらの任意の組合せである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
STRO−1細胞の少なくとも一部がSTRO−1briである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
子孫細胞が、間葉系前駆細胞をインビトロで培養することによって得られる、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
化合物が、血管内皮増殖因子に結合する、及び/又は血管内皮増殖因子の産生を低下させる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
血管内皮増殖因子がVEGF−A、VEGF−B、VEGF−C及び/又はVEGF−Dである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
血管内皮増殖因子がVEGF−Aである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
血管内皮増殖因子の産生を低下させる化合物が、低酸素誘導因子1(HIF−1)に結合する、及び/又は低酸素誘導因子1の産生を低下させる、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
化合物が、血管内皮増殖因子受容体に結合する、及び/又は血管内皮増殖因子受容体の産生を低下させる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
血管内皮増殖因子受容体が、VEGFR1、VEGFR2及び/又はVEGFR3から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
血管内皮増殖因子受容体がVEGFR1及び/又はVEGFR2である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
化合物が、血管内皮増殖因子受容体に結合する血管内皮増殖因子によって誘導される細胞内シグナル伝達に関与する分子に結合する、及び/又は前記分子の産生を低下させる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
化合物がポリペプチドである、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ポリペプチドが、抗体、抗体関連分子、及び/又はそのいずれか1つのフラグメントである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
化合物がポリヌクレオチドである、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ポリヌクレオチドが、アンチセンスポリヌクレオチド、センスポリヌクレオチド、触媒ポリヌクレオチド、二本鎖RNA分子、又はそれらのいずれか1つ又はそれ以上をコードするポリヌクレオチドである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
細胞の少なくとも一部が遺伝的に修飾されている、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
被験者において眼疾患を治療する又は予防するための併用療法における使用のための薬剤を製造するための、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物の使用。
【請求項27】
被験者において眼疾患を治療する又は予防するための併用療法における使用のための薬剤としての、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物の使用。
【請求項28】
被験者において血管新生関連障害を治療する又は予防するための併用療法における使用のための薬剤を製造するための、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物の使用。
【請求項29】
被験者において血管新生関連障害を治療する又は予防するための併用療法における使用のための薬剤としての、細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物の使用。
【請求項30】
細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物、並びに、場合により医薬的に許容される担体を含有する組成物。
【請求項31】
細胞及びVEGFシグナル伝達を破壊する化合物を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−526892(P2011−526892A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516339(P2011−516339)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/003902
【国際公開番号】WO2010/005527
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511002548)アンジオブラスト システムズ,インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】