説明

使用トナー削減モード付き画像形成装置

【課題】 内部ハンドリングデータとしてベクタデータを扱うMFPで、トナー節約モードを実装する際に、特別な画像処理をおこなうことなく、簡単にトナー量を減少させる。
【解決手段】 トナー節約モードでの印刷が指示されると、MFPはレンダリング時に、印刷するオブジェクトの(1)線の属性を変更(2)フォントの属性を変更してレンダリングすることで、使用トナーの削減を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリントシステム、より詳細には、MFP(Multi Function Periferals)におけるトナー節約方式、更には、画像形成用コントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザビームプリンタにおけるランニングコストの低減、および、昨今の世界レベルでの環境保護および資源保護の見地からもレーザビームプリンタにおいてトナー消費量を抑えながら印刷する機能が求められている。
【0003】
従来、トナーを節約する印刷方式としては大きく以下の3つの方式が提案されていた。
【0004】
1.プリンタコントローラで生成されたビットマップデータを予め用意された間引きパターンと論理積をとり、トナー付着が必要なドット数が少数になるようビットマップデータを加工してから印刷する方式。
【0005】
2.現像バイアス等のプロセス条件を変えレーザ照射時間を通常より短くすることでトナーを節約する方式。
【0006】
3.印刷画像を、トナー付着が少なくなるように薄く濃度補正して印刷することで、トナーを節約する方式(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003-220727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の方式について共通して存在する課題として、レーザプリンタの画像処理手段や現像手段などが複雑化し、また、特に文字部などにおいて、印刷品質が劣化し、文字の印刷にとって重要な可読性が損なわれるといった問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような問題点を解決するために、請求項1の発明は、入力されたベクタ画像データをラスタ展開して出力する画像形成装置において、ベクタ画像データを入力する入力手段と、ラスタ画像データを出力する出力手段と、ベクタ画像をラスタ画像に展開するラスタ展開手段と、ベクタ画像データの所定のオブジェクトの属性を変更するオブジェクト属性変更手段とを有し、トナー削減モードでの出力を指示された場合において、前記オブジェクト属性変更手段によって、トナー付着量が少なくなるように、所定のオブジェクトの属性を変更することを特徴とした画像形成装置である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、オブジェクト属性変更手段が、オブジェクトが線画、文字、写真のいずれであるかを判断するオブジェクト種判断手段と、オブジェクトの属性を変更する属性変更手段とを有し、オブジェクト種判断手段によって、線画、もしくは文字と判断されたオブジェクトに対して、属性変更手段によって該オブジェクトの属性を変更することを特徴とした画像形成装置である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、属性変更手段が、オブジェクト種判断手段によって線画と判断されたオブジェクトの線幅属性を変更することを特徴とした画像形成装置である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、属性変更手段が、オブジェクト種判断手段によって線画と判断されたオブジェクトの文字の線幅属性を変更することを特徴とした画像形成装置である。
【0012】
請求項5の発明は、請求項2の発明において、属性変更手段が、オブジェクト種判断手段によって線画と判断されたオブジェクトの文字のフォントを所定のフォントに置換することを特徴とした画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
図4、図5の例で明らかなように、入力画像400は、トナー節約処理204によるベクタ画像データの属性変換処理、もしくは、より線幅の細いフォントへの置換処理によって、文字・線画等を構成する線の太い部分を細くすることで、印刷出力時の使用トナー量を容易に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(本発明の第1の実施形態)
[MFP装置概要]
以下に図を用いて、本発明の装置及びその動作について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係るMFPコントローラの第1実施形態を示すブロック図である。
【0016】
MFPコントローラ101はシステムバスブリッジ(SBB)102によりCPU103、メモリコントローラ(MC)104、汎用バス106、ラスタ展開部113、画像処理部114が接続されている。
【0017】
MC104の先にはシステムメモリ(Memory)105が接続されており、画像データを一次記憶するための媒体として使われる。
【0018】
汎用バス106には画像データを蓄積するためのHDD108を制御するハードディスクコントローラ(HDDCont)107、操作部(LCD)110を制御する操作部コントローラ(LCDC)109、MFPが接続されているネットワーク112を会して、外部機器間との画像データの転送をおこなうインタフェースとなるLAN I/F111が接続されている。
【0019】
ラスタ展開部113の先には画像処理部114が接続され、さらに画像処理部114にはスキャナ115及びプリンタ116が接続されている。
【0020】
MFPコントローラ101でハンドリングされる画像データは、外部機器との入出力はページベクタ(PDL、PDF、SVGなど)、スキャナやプリンタとの入出力はラスタデータでインターフェースされる。
【0021】
続いて、図2のフローチャートを基に、MFPコントローラ1が、外部から入力されたページベクタ画像をどのように印刷処理するのかを説明する。図2は、本発明における入力されたページベクタ画像の印刷出力処理に関わるフローチャート図である。
【0022】
MFPコントローラ101はまず、LAN I/F111を介して、ネットワーク112からPDL,PDF,SVG等のフォーマットで記述されたベクタ画像データを受信する(ステップS201)。
【0023】
次に、受信したベクタデータは、汎用バス106、SBB102、MC104を介してシステムメモリに格納される(ステップS202)。
【0024】
次に、受信したベクタデータの印刷ジョブが、トナー節約モードでおこなわれているかどうかの判断をおこなう(ステップS203)。トナー節約モードでおこなわれている場合(ステップS203のYes)、本発明の主眼となるトナー節約処理(ステップS204)を受信したベクタデータに対しておこなう。このステップS204でのトナー節約処理について、図3を用いて以下で詳細に説明する。
【0025】
図3は、トナー節約処理における入力されたベクタ画像データの画像処理フローを示している。まず、入力されたベクタ画像データにオブジェクトが存在するかどうかを判断する(ステップS301)。オブジェクトがない場合には(ステップS301のNo)、トナー節約処理を終了する。オブジェクトがある場合には(ステップS301のYes)、ステップS302に進み、そのオブジェクトの種類を特定する。
【0026】
ステップS302において、オブジェクトが写真と判断された場合(ステップS302の「写真」)、当該オブジェクトに対する処理を終了し、次のオブジェクトを読み込む(ステップS306)。
【0027】
ステップS302において、オブジェクトが線画と判断された場合(ステップS302の「線画」)、線画オブジェクトの所定の属性を、印刷出力時のトナー使用量が少なくなるように変更する処理をおこなう(ステップS304)。例えば、線画の線幅が1ポイントよりも大きい属性を持つオブジェクトは、線幅の属性を1ポイントに変更するといった処理をおこなう。
【0028】
このような変更処理をおこなった後に、当該オブジェクトに対する処理を終了し、次のオブジェクトを読み込む(ステップS306)。
【0029】
ステップS302において、オブジェクトが文字と判断された場合(ステップS302の「文字」)、文字オブジェクトの所定の属性を、印刷出力時のトナー使用量が少なくなるように変更する処理をおこなう(ステップS303)。例えば、太字属性を持つ文字オブジェクトは、その太字属性を外すように変更するといった処理をおこなう。
【0030】
このステップS305の処理の次に、文字のフォント属性を判断し、印刷出力時のトナー使用量が多くなるような所定のフォントは、印刷出力時のトナー使用量が少なくなるようなあらかじめ決められたフォントに置換する処理をおこなう(ステップS305)。例えば、MS Pゴシック体のような比較的太い線幅を持つフォントは、MS 明朝体のような比較的細い線幅を持つフォントに変更するといった処理をおこなう。
【0031】
このような変更処理をおこなった後に、当該オブジェクトに対する処理を終了し、次のオブジェクトを読み込む(ステップS306)。
【0032】
読み込むオブジェクトがなくなり、すべてのオブジェクトに対して上記処理がおこなわれると(ステップS301のNo)、トナー節約処理を終了する。
【0033】
以上に述べた処理が、入力されたベクタ画像データにどのように影響を与えるかを図4、図5の図を用いて説明する。図4は、MFP101に印刷ジョブとして入力される入力ベクタ画像データの例である。図5は、トナー節約処理S204をおこなった後の出力ベクタ画像データの例である。
【0034】
入力画像400の表401は、線幅4ポイントの属性で記述されている。トナー節約処理S204では、線画の属性変換処理S304において、線画の線幅属性が1ポイント以上である場合には、それを1ポイントに変換する処理がおこなわれる。該オブジェクトの線幅属性を1ポイントに変換処理をおこなった後の出力ベクタ画像データは、表501のようになる。
【0035】
入力画像400の文字列402は、TimeNewRoman、16ポイント、太字のフォント属性で記述されている。トナー節約処理S204では、文字の属性変換処理S303において、文字の属性が太字属性である場合には、その属性を外す処理がおこなわれる。該オブジェクトの太字属性を外す変換処理をおこなった後の出力ベクタ画像データは、文字列502のようになる。
【0036】
入力画像400の文字列403、404は、MS Pゴシック体、16ポイント(文字列404は24ポイント)、太字のフォント属性で記述されている。トナー節約処理S204では、まず、文字の属性変換処理S303において、文字の属性が太字属性である場合には、その属性を外す処理がおこなわれる。次に、MS Pゴシック体のように、太字属性がなくても比較的線幅の太いフォントに関しては、MS 明朝体のように、線幅の細いフォントに置換する。該オブジェクトの太字属性を外す変換処理をおこない、フォントをMS明朝体に置換する処理をおこなった後の出力ベクタ画像データは、文字列503、504のようになる。
【0037】
入力画像400の文字列405は、HGS創英角ポップ体、24ポイント、太字のフォント属性で記述されている。該オブジェクトに対しても、上記処理と同様に、文字の属性変換処理S303、フォント置換処理S304がおこなわれる。該オブジェクトの太字属性を外す変換処理をおこない、フォントをMS明朝体に置換する処理をおこなった後の出力ベクタ画像データは、文字列505のようになる。
【0038】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第1の実施形態では、文字や線画の線幅や、フォント自身が固有にもつ線幅の太さに着目してオブジェクトの属性変換をおこなうことで、使用トナー量を削減したが、本発明で変換する属性は、これに限るものではない。
【0039】
オブジェクトのフィル(領域塗りつぶし)に対しては、フィルに使用する色属性を判断し、使用トナー量が少なくなるような色属性に変換して出力する方法が有効である。すなわち、例えば入力ベクタ画像データの黒による矩形フィルのオブジェクトが存在した場合は、トナー節約処理S204において、黒ではなく、薄いグレー色に色属性を変換する。これによって、矩形フィルのオブジェクトを印刷処理する際の使用トナー量を容易に削減することができる。
【0040】
(本発明の第3の実施形態)
また、本発明の第1および第2の実施形態では、線画部や文字部に対するオブジェクトの属性変更によってトナー削減をおこなったが、写真部に対して選択的に従来のトナー削減手法を用いることで、よりトナー削減の効果を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る、画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る、MFP100のベクタ画像データ印刷処理を説明するためのフローチャート図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る、MFP100のベクタ画像データ印刷処理内のトナー節約処理を詳細に説明するためのフローチャート図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る、MFP100のベクタ画像データ印刷処理内のトナー節約処理による効果を説明するための、入力ベクタ画像の例である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る、MFP100のベクタ画像データ印刷処理内のトナー節約処理による効果を説明するための、図4の入力ベクタ画像に対して前記トナー節約処理をおこなった後の出力ベクタ画像の例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたベクタ画像データをラスタ展開して出力する画像形成装置において、
ベクタ画像データを入力する入力手段と、
ラスタ画像データを出力する出力手段と、
ベクタ画像をラスタ画像に展開するラスタ展開手段と、
ベクタ画像データの所定のオブジェクトの属性を変更するオブジェクト属性変更手段と、を有し、
トナー削減モードでの出力を指示された場合において、前記オブジェクト属性変更手段によって、トナー付着量が少なくなるように、所定のオブジェクトの属性を変更することを特徴とした画像形成装置。
【請求項2】
前記オブジェクト属性変更手段は、オブジェクトが線画、文字、写真のいずれであるかを判断するオブジェクト種判断手段と、
オブジェクトの属性を変更する属性変更手段と、を有し、
前記オブジェクト種判断手段によって、線画、もしくは文字と判断されたオブジェクトに対して、前記属性変更手段によって該オブジェクトの属性を変更することを特徴とした請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記属性変更手段は、前記オブジェクト種判断手段によって線画と判断されたオブジェクトの線幅属性を変更することを特徴とした請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記属性変更手段は、前記オブジェクト種判断手段によって文字と判断されたオブジェクトの文字の線幅属性を変更することを特徴とした請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記属性変更手段は、前記オブジェクト種判断手段によって文字と判断されたオブジェクトのフォントを所定のフォントに置換することを特徴とした請求項2記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−151010(P2009−151010A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327577(P2007−327577)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】