説明

使用

本発明は、パンのストック性を向上させるためのアミラーゼと脂質分解酵素とを組み合わせた使用、かかる酵素の組合せを有する生地及び焼き製品の調製方法、並びに、特定のストック特性を有するパンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンのストック性(stackability)を高めるためのアミラーゼ及び脂質分解酵素の使用、かかる酵素を含む生地の調製方法、かかる酵素と特定のパンストック特性を有するパンとを含む焼き製品――パン等――に関する。
【背景技術】
【0002】
焼き製品(例えばパン)は、焼き製品の品質及び/又は外観に悪影響を及ぼすことなしにストックされる(stacked)ことを可能にする、焼成後の初期の硬さを有することが望ましい。しかしながら、かかる初期の硬さは、一定期間にわたり焼き製品の新鮮さを維持する必要性――例えば、焼き製品の劣化を防ぐ必要性――とバランスをとる必要がある。
【0003】
したがって、初期の硬さとその後の一定期間にわたる硬さの増加レベルとの間の良いバランスを有する焼き製品が必要である。このことは本明細書において「パンストック性(bread stackability)」として言及される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の態様が、請求項及び以下の解説において提示される。
【0005】
本発明の態様の1つは、パンのストック性の向上のためのアミラーゼ及び脂質分解酵素の使用に関する。
【0006】
本発明の第2の態様において、以下のことを含む生地の調製方法が開示される:
a)配列番号1に記載のアミラーゼ又は配列番号1と少なくとも75%の同一性を有する非マルトース生成型アミラーゼを生地に対し10ppmまでの量で添加すること;及び
b)脂質分解酵素を生地に対し10ppmまでの量で添加すること。
【0007】
第3の態様において、本発明は以下のものを含む生地に関する:
a)配列番号1に記載のアミラーゼ又は配列番号1と少なくとも75%の同一性を有する非マルトース生成型アミラーゼ;及び
b)脂質分解酵素、
このときアミラーゼ及び脂質分解酵素の量はそれぞれ生地に対し10ppmまでである。
【0008】
第4の態様において、本発明は以下のものを含む生地を焼成することにより調製される焼き製品に関する:
a)配列番号1に記載のアミラーゼ又は配列番号1と少なくとも75%の同一性を有する非マルトース生成型アミラーゼ;及び
b)脂質分解酵素、
このときアミラーゼ及び脂質分解酵素の量はそれぞれ生地に対し10ppmまでである。
【0009】
第5の態様において、本発明は以下のことを有するパンに関する:
a)少なくとも7HPa/gの初期の硬さ;
b)以下の焼成2時間後からの硬さの変化:
i.4日後に12g以下;及び/又は
ii.6日後に15g以下;及び/又は
iii.11日後に20g以下。
【0010】
第6の態様において、本発明は以下のことを有するパンに関する:
a)少なくとも7HPa/gの初期の硬さ;
b)以下に述べる焼成2時間後からの硬さの変化:
i.4日後に初期の硬さの1.7倍以下;及び/又は
ii.6日後に初期の硬さの2.1倍以下;及び/又は
iii.11日後に初期の硬さの2.9倍以下。
【0011】
実施例に言及することにより実質的に記述された方法、使用、生地及び焼き製品(パン等)もまた、本発明に包含される。
【0012】
驚くべきことに、アミラーゼと脂質分解酵素とを組み合わせた使用が、良好なパンストック性を提供し得ることが見出された。
【0013】
特に、アミラーゼと脂質分解酵素とを組み合わせた使用が、焼成2時間後の初期の硬さとその後の硬さの増加レベルとの間の良好なバランス提供し得ることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、パンのストック性の向上のためのアミラーゼ及び脂質分解酵素の使用が提供される。
【0015】
「パンのストック性の向上」なる文言は、アミラーゼ及び/又は脂質分解酵素が一切添加されていない対照パンと比較して、焼成後に初期の硬さが増加しており、その後一定期間にわたり硬さが減少していることを意味する。
【0016】
「初期の硬さ」なる文言は、焼成2時間後の硬さを意味する。
【0017】
望ましい初期の硬さのレベルは、焼き製品のタイプに依存する。例えば、ライ麦パンが白パンより高い初期の硬さを有することがより望ましくてもよい。
【0018】
好ましくは、焼き製品の初期の硬さは、脂質分解酵素及びアミラーゼが一切添加されていない対照パンより高くてもよい。例えば、好ましくは、初期の硬さは対照と比較して、少なくとも0.5HPa/g、好ましくは、少なくとも1HPa/g、好ましくは、少なくとも1.5HPa/g増加していてもよい。
【0019】
好ましくは、焼き製品の初期の硬さは少なくとも7HPa/gあってもよい。
【0020】
「一定期間にわたり硬さが減少している」なる文言は、焼成2時間後から焼成後少なくとも4日――6日又は11日等――までの硬さの相対的増加が、脂質分解酵素及び/又はアミラーゼが一切添加されていない対照パンより小さいことを意味する。
【0021】
例えば、好ましくは焼成2時間後から焼成4日(又は6日又は11日)後までの硬さの増加は、対照の硬さの増加より少なくとも0.5HPa/g、又は少なくとも1HPa/g、又は少なくとも1.5HPa/g、又は少なくとも2.0HPa/g、又は少なくとも2.5HPa/g、又は少なくとも3.0HPa/g、又は少なくとも3.5HPa/g、又は少なくとも4.0HPa/g、又は少なくとも4.5HPa/g、又は少なくとも5.0HPa/g、又は少なくとも5.5HPa/g小さくてもよい。
【0022】
好ましくは、焼成2時間後からの硬さの変化は以下の通りであってもよい:
i.4日後に12HPa/g以下;及び/又は
ii.6日後に15HPa/g以下;及び/又は
iii.11日後に20HPa/g以下。
【0023】
実施形態の1つにおいて、本発明の焼き製品は以下のことを有していてもよい:
a)少なくとも7HPa/gの初期の硬さ;及び
b)以下の焼成2時間後からの硬さの変化:
i.4日後に初期の硬さの1.7倍以下;及び/又は
ii.6日後に初期の硬さの2.1倍以下;及び/又は
iii.11日後に初期の硬さの2.9倍以下。
【0024】
好ましくは、アミラーゼはマルトース生成型アミラーゼ又は非マルトース生成型アミラーゼであってもよく、好ましくは、アミラーゼは非マルトース生成型エキソアミラーゼ活性を有するポリペプチド等の非マルトース生成型アミラーゼ、好ましくは、配列番号1に記載の配列を有するアミラーゼと等価な非マルトース生成型アミラーゼであってもよい。
【0025】
マルトース生成型アミラーゼ及び非マルトース生成型アミラーゼの例は当業者によく知られている。
【0026】
かかる酵素の例は、グルカン1,4−アルファ−マルトテトラヒドロラーゼ(EC 3.2.1.60)活性を有する酵素、例えば、GRINDAMYL POWERFresh(登録商標)酵素及び国際公開公報第05/003339号に開示されている酵素である。好適な非マルトース生成型アミラーゼは、Powersoft(登録商標)(デンマークのDanisco A/S社より入手可能)として市販されている。Novamyl(登録商標)(デンマークのNovozymes A/S社製)等のマルトース生成型アミラーゼもまた用いられてよい。
【0027】
好ましくは、アミラーゼは以下のものを含んでいてもよい:
a)配列番号1に記載のアミノ酸配列(図8参照);又は
b)配列番号1と少なくとも75%の同一性を有し、非マルトース生成型アミラーゼをコードするアミノ酸配列。
【0028】
好ましくは、非マルトース生成型アミラーゼは、配列番号1との同一性を少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%有するアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0029】
本発明における使用のための脂質分解酵素は、以下のものからなる群から選択される1又は2以上の活性を有してもよい:ホスホリパーゼ活性(ホスホリパーゼA1活性(E.C. 3.1.1.32)又はホスホリパーゼA2活性(E.C. 3.1.1.4)等);グリコリパーゼ活性(E.C. 3.1.1.26)、トリアシルグリセロール加水分解活性(E.C. 3.1.1.3)、脂質アシルトランスフェラーゼ活性(生化学分子生物学国際連合命名委員会(the Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology)のEnzyme Nomenclature Recommendations (1992)に従い、一般にE.C. 2.3.1.xとして分類される)、及びこれらのあらゆる組合せ。かかる脂質分解酵素は当技術分野内でよく知られている。
【0030】
好ましくは、脂質分解酵素は、どの市販で入手可能な脂質分解酵素であってもよい。例えば、脂質分解酵素は、どの1又は2以上の以下のものであってもよい:Lecitase Ultra(登録商標)、デンマークのNovozymes社製;Lecitase 10(登録商標);フザリウム属(Fusarium)の諸種に由来するホスホリパーゼA1、例えばLipopan F(登録商標)、Lipopan Extra(登録商標)、YieldMax(登録商標);アスぺルギルス・ニガー(Aspergillus niger)に由来するホスホリパーゼA2;ストレプトミセス・ビオラセオルベル(Streptomyces violaceruber)に由来するホスホリパーゼA2、例えばLysoMax PLA2(登録商標);チャセイヨウショウロ(Tuber borchii)に由来するホスホリパーゼA2;又はアスぺルギルス・ニガーに由来するホスホリパーゼB、Lipase 3(配列番号3)、Grindamyl EXEL 16(登録商標)、及びGRINDAMYL POWERBake 4000 range Panamore(登録商標)、GRINDAMYL POWERBake 4070(配列番号9)又はGRINDAMYL POWERBake 4100。
【0031】
好ましくは、本発明における使用のための脂質分解酵素は、以下のアミノ酸配列のうちの1つを有していてもよい:
a)配列番号2又は好ましくは配列番号9に記載のアミノ酸配列;
b)配列番号3に記載のアミノ酸配列;
c)配列番号4に記載のアミノ酸配列;
d)配列番号5に記載のアミノ酸配列;又は
e)脂質分解酵素をコードし、a)〜d)の配列のいずれかと少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列。
【0032】
キシラナーゼ及び/又は抗劣化アミラーゼ等のさらなる酵素もまた存在していてよい。
【0033】
本発明の第2の態様において、以下のことを含む生地の調製方法が開示される:
a)配列番号1に記載のアミラーゼ又は配列番号1と少なくとも75%の同一性を有する非マルトース生成型アミラーゼを生地に対し10ppmまでの量で添加すること;及び
b)脂質分解酵素を生地に対し10ppmまでの量で添加すること。
【0034】
有益なことに、これら2つの酵素のかかる用量は、焼き製品にとって望ましいパンストック性特性をもたらし得る。
【0035】
好ましくは、使用される脂質分解酵素の量は、生地に対し0.1〜9ppm、生地に対し0.1〜8ppm、生地に対し0.1〜7ppm、生地に対し0.1〜6ppm、生地に対し0.1〜5ppm、生地に対し0.2〜5ppm、生地に対し0.2〜4ppm、生地に対し0.2〜3ppm、好ましくは、生地に対し0.2〜2ppm、又は生地に対し0.3〜1ppmであってもよく、且つ/或いは、使用されるアミラーゼの量は、生地に対し0.1〜9ppm、生地に対し0.1〜8ppm、生地に対し0.1〜7ppm、生地に対し0.1〜6ppm、生地に対し0.1〜5ppm、生地に対し0.2〜5ppm、生地に対し0.2〜4ppm、生地に対し0.2〜3ppm、好ましくは、生地に対し0.2〜2ppm、又は生地に対し0.3〜1ppmであってもよい。
【0036】
好ましくは、本発明での使用のための脂質分解酵素は、1又は2以上の以下のアッセイを用いて同定されてもよい。
【0037】
ホスホリパーゼ活性の測定(TIPU−Kアッセイ):
基質:
0.6%L−αホスファチジルコリン95%Plant(Avanti社製#441601)、0.4%Triton-X 100(Sigma社製X-100)、及び5mM CaClを0.05M HEPES緩衝液pH7中に溶解させた。
【0038】
アッセイ手順:
34μlの基質がKoneLab自動分析器を用いてキュベットに添加された。時間T=0分に、4μlの酵素溶液が添加された。酵素の代わりに水によるブランク(blank)もまた分析された。試料が混合され、30℃で10分間インキュベートされた。
【0039】
試料の遊離脂肪酸含有量が、WAKO GmbH社から取得したNEFA Cキットを用いて分析された。
【0040】
酵素活性TIPU pH7が、アッセイ条件下で1分当たりに生み出されたマイクロモル脂肪酸として計算された。
【0041】
%アシルトランスフェラーゼ活性の測定のためのプロトコル:
本発明に記載の脂質アシルトランスフェラーゼが添加された食用油が、CHCl3:CH3OH 2:1での酵素反応後に抽出されてもよく、脂肪性物質を含む有機相が単離され、下に詳細に記載した手順でGLC及びHPLCにより分析される。GLC及びHPLC分析から、遊離脂肪酸及び1又は2以上のステロール/スタノールエステルの量が測定される。本発明の酵素が一切添加されていない対照食用油が、同じ方法で分析される。
【0042】
計算:
GLC及びHPLC分析の結果から、遊離脂肪酸及びステロール/スタノールエステルの増加が計算され得る:
Δ%脂肪酸=%脂肪酸(酵素)−%脂肪酸(対照);Mv脂肪酸=脂肪酸の平均分子量;
A=Δ%ステロールエステル/Mvステロールエステル(式中、Δ%ステロールエステル=%ステロール/スタノールエステル(酵素)−%ステロール/スタノールエステル(対照)、Mvステロールエステル=ステロール/スタノールエステルの平均分子量);
トランスフェラーゼ活性は、総酵素活性に対するパーセントとして計算される:
%トランスフェラーゼ活性=A×100/{A+Δ%脂肪酸/(Mv脂肪酸)}
【0043】
もし遊離脂肪酸が食用油中に増加するなら、遊離脂肪酸は好ましくは、実質的には、すなわち有意な程度では増加しない。このことにより本発明者らが意図するのは、遊離脂肪酸の増加が食用油の質に悪影響を及ぼさないということである。
【0044】
アシルトランスフェラーゼ活性アッセイのために用いられる食用油は、好ましくは、以下の方法を用いて植物ステロール(1%)及びホスファチジルコリン(2%)油を補った大豆油である:
攪拌中に95℃まで加熱することにより、植物ステロール及びホスファチジルコリンを大豆油中に溶解させた。
油をその後40℃まで冷却し、酵素を添加した。
試料を磁気撹拌で40℃に維持し、4時間後及び20時間後に試料を取り出し、TLCで分析した。
【0045】
アッセイのために使用される酵素の用量は、好ましくは、0.2TIPU−K/g油、より好ましくは、0.08TIPU−K/g油、好ましくは、0.01TIPU−K/g油である。油中に存在するリン脂質のレベル及び/又はステロールの%変換は、好ましくは、4時間後、より好ましくは、20時間後に測定される。
【0046】
使用される酵素が脂質アシルトランスフェラーゼ酵素である場合、好ましくは、インキュベーション時間は、少なくとも5%のトランスフェラーゼ活性、好ましくは、少なくとも10%のトランスフェラーゼ活性、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、26%、28%、30%、40%、50%、60%又は75%のトランスフェラーゼ活性があることを保証するのに有効な時間である。
【0047】
%トランスフェラーゼ活性(すなわち、総酵素活性に対するパーセントとしてのトランスフェラーゼ活性)は、上に教示されるプロトコルにより測定されてもよい。
【0048】
油中の%トランスフェラーゼ活性を評価すること(上述)に加えて、或いはその代わりに、本発明の方法における使用に最も好ましい脂質アシルトランスフェラーゼ酵素を同定するため、「本発明における使用のための脂質アシルトランスフェラーゼの同定のためのプロトコル」と題された以下のアッセイが用いられ得る。
【0049】
脂質アシルトランスフェラーゼの同定のためのプロトコル
本発明の脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のような結果をもたらすものである:
i)植物ステロール(1%)及びホスファチジルコリン(2%)油を補った大豆油中に存在するリン脂質の除去(以下の方法を用いる:植物ステロール及びホスファチジルコリンを、攪拌中に95℃まで加熱することにより大豆油中に溶解させた。油をその後40℃まで冷却し、酵素を添加した。試料を磁気攪拌で40℃に維持し、4時間後及び20時間後に試料を取り出し、TLCにより分析した);
及び/又は
ii)添加ステロールのステロール−エステルへの変換(%変換)(上のi)に教示される方法を用いる)。実施例2に教示されるステロール及びステロールエステルのレベルを決定するためのGLC法が用いられてもよい。
【0050】
アッセイのために用いられる酵素用量は、0.2TIPU−K/g油、好ましくは、0.08TIPU−K/g油、好ましくは、0.1TIPU−K/g油であってもよい。油中に存在するリン脂質のレベル及び/又はステロールの変換(%変換)は、好ましくは、4時間後に、より好ましくは、20時間後に測定される。
【0051】
脂質アシルトランスフェラーゼの同定のためのプロトコルにおいて、酵素処理後、5%の水が好ましくは添加され、油と十分混合される。油はその後遠心分離を用いて油相及び水相へと分離され("Enzyme-catalyzed degumming of vegetable oils" by Buchold, H. and Laurgi A.-G., Fett Wissenschaft Technologie (1993), 95(8), 300-4, ISSN: 0931-5985)参照)、油相はその後リン含有量に関して以下のプロトコル(「リン含有量に関するアッセイ」)を用いて分析され得る:
【0052】
アミラーゼ
「アミラーゼ」なる用語は、その通常の意味――例えば、とりわけデンプンの分解を触媒できる酵素という意味――で用いられる。特にそれは、デンプン中のα−D−(1,4)−グリコシド結合を切断できるヒドロラーゼである。
【0053】
アミラーゼはヒドロラーゼに分類されるデンプン分解酵素であり、デンプン中のα−D−(1,4)−グリコシド結合を切断する。一般に、α−アミラーゼ(E.C. 3.2.1.1、α−D−(1,4)−グルカングルカノヒドロラーゼ)はデンプン分子内のα−D−(1,4)−グリコシド結合をランダムに切断するエンド作用(endo-acting)酵素として定義される。対照的に、β−アミラーゼ(E.C. 3.2.1.2、α−D−(1,4)−グルカンマルトヒドロラーゼ)等のエキソ作用(exo-acting)アミロース分解酵素、及びマルトース生成型アルファ−アミラーゼ(E.C. 3.2.1.133)等のいくつかの生成物特異的アミラーゼは、デンプン分子を基質の非還元末端から切断する。β−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ(E.C. 3.2.1.20、α−D−グルコシドグルコヒドロラーゼ)、グルコアミラーゼ(E.C. 3.2.1.3、α−D−(144)−グルカングルコヒドロラーゼ)及び生成物特異的アミラーゼは、特定の長さのマルトオリゴ糖をデンプンから生成し得る。
【0054】
好ましくは、本発明における使用のためのアミラーゼは、非マルトース生成型エキソアミラーゼ等の非マルトース生成型アミラーゼであってもよい。
【0055】
実施形態の1つにおいて、本明細書で用いられる「非マルトース生成型エキソアミラーゼ酵素」なる用語は、酵素が初期にはデンプンを、本明細書に記載の生成物測定手順に従い分析される実質的な量のマルトースにまでは分解しないことを意味すると理解されるべきである。
【0056】
好ましくは、非マルトース生成型エキソアミラーゼはエキソマルトテトラオヒドロラーゼを含んでいてもよい。エキソマルトテトラオヒドロラーゼ(E.C. 3.2.1.60)は、より正式にはグルカン1,4−アルファ−マルトテトラヒドロラーゼとして知られている。この酵素は、デンプン性多糖中の1,4−アルファ−D−グルコシド結合を加水分解し、非還元鎖末端から連続するマルトテトラオース残基を除去する。
【0057】
非マルトース生成型エキソアミラーゼは米国特許公報第6,667,065号に詳細に記述されており、ここに参照により組み込まれる。
【0058】
実施形態の1つにおいて、本発明において用いられるアミラーゼは、欧州特許公報第09160655.8号(その内容は本明細書に参照により組み込まれる)に記載の、アミラーゼ活性を有するポリペプチドであってもよい。参照を容易にするため、それらアミラーゼのいくつかについて、ここで以下の番号付き段落において記述する。以下の番号付き段落で記述される酵素はどれも、生地中10ppm以下の用量で用いられてよい。
【0059】
1.以下の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミラーゼ活性を有するポリペプチド
a.配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも78%の配列同一性、このときポリペプチドは以下の位置に1又は2以上のアミノ酸置換を含む:235、16、48、97、105、240、248、266、311、347、350、362、364、369、393、395、396、400、401、403、412又は409、及び/又は
b.配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも65%の配列同一性、このときポリペプチドは以下の位置に1又は2以上のアミノ酸置換を含む:88又は205、及び/又は
c.配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも78%の配列同一性、このときポリペプチドは1又は2以上の以下のアミノ酸置換を含む:42K/A/V/N/I/H/F、34Q、100Q/K/N/R、272D、392K/D/E/Y/N/Q/R/T/G又は399C/H、及び/又は
d.配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性、このときポリペプチドは以下の位置に1又は2以上のアミノ酸置換を含む:44、96、204、354又は377、及び/又は
e.配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも95%配列同一性、このときポリペプチドは以下のアミノ酸置換を含む:392S
配列番号7に示される配列の位置番号を参照している。
【0060】
2.上の第1段落に記載のポリペプチド、このときポリペプチドは以下の位置に1又は2以上のアミノ酸置換を含み:235、88、205、240、248、266、311、377又は409、且つ/或いは、1又は2以上の以下のアミノ酸置換を含む:42K/A/V/N/I/H/F、34Q、100Q/K/N/R、272D又は392K/D/E/Y/N/Q/R/S/T/G。
【0061】
3.上の第1又は第2段落のいずれかに記載のポリペプチド、このときポリペプチドは以下の位置に1又は2以上のアミノ酸置換を含み:235、88、205、240、311又は409、且つ/或いは、1又は2以上の以下のアミノ酸置換を含む:42K/N/I/H/F、272D、又は392K/D/E/Y/N/Q/R/S/T/G。
【0062】
4.上の第1〜第3段落のいずれかに記載のポリペプチド、このときポリペプチドは以下の位置のうち少なくとも4、5又はすべてにおいてアミノ酸置換を含み:88、205、235、240、311又は409、且つ/或いは、少なくとも1又は2の以下のアミノ酸置換を有する:42K/N/I/H/F、272D又は392K/D/E/Y/N/Q/R/S/T/G。
【0063】
5.上の第1〜第4段落のいずれかに記載のポリペプチド、このときポリペプチドはさらに1又は2以上の以下のアミノ酸を含む:33Y、34N、70D、121F、134R、141P、146G、157L、161A、178F、179T、223E/S/K/A、229P、307K、309P及び334P。
【0064】
6.配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する、上の第1〜第5段落のいずれかに記載のポリペプチド。
【0065】
7.位置88にアミノ酸置換を含む、上の第1〜第6段落のいずれかに記載のポリペプチド。
【0066】
8.アミノ酸88Lを有する、上の第7段落に記載のポリペプチド。
【0067】
9.位置235にアミノ酸置換を含む、上の第1〜第8段落のいずれかに記載のポリペプチド。
【0068】
10.アミノ酸235Rを有する、上の第9段落に記載のポリペプチド。
【0069】
11.上の第1〜第10段落のいずれかに記載のポリペプチド、このときポリペプチドはさらに1又は2以上の以下のアミノ酸を含む:121F、134R、141P、229P、又は307K。
【0070】
12.C末端に融合されたリンカーを有する、上の第1〜第11段落のいずれかに記載のポリペプチド。
【0071】
13.エキソアミラーゼ活性を有する、上の第1〜第12段落のいずれかに記載のポリペプチド。
【0072】
14.非マルトース生成型エキソアミラーゼ活性を有する、上の第1〜第13段落のいずれかに記載のポリペプチド。
【0073】
非マルトース生成型エキソアミラーゼ活性に関するアッセイ
本発明の使用に適した、非マルトース生成型エキソアミラーゼ活性を有するポリペプチドを特徴付けるため、以下の系が用いられる。
【0074】
最初に背景知識として述べると、蝋様トウモロコシアミロペクチン(WAXILYS 200としてフランスのRoquette社より取得可能)は、非常に高いアミロペクチン含有量(90%超)を有するデンプンである。
【0075】
20mg/mlの蝋様トウモロコシデンプンが50mM MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(2-(N-morpholino) ethanesulfonic acid))、2mM塩化カルシウム、pH6.0の緩衝液中で3分間煮沸され、続いて50℃でインキュベートされ、30分以内に使用される。
【0076】
1ユニット(unit)の非マルトース生成型エキソアミラーゼは、50mM MES、2mM塩化カルシウム、pH6.0中に10mg/mlの蝋様トウモロコシデンプンが入った前述の通り調製されたものが4ml入った試験管中、50℃でインキュベートされる際に、1分当たり1μmolの還元糖と等価な加水分解生成物を放出する酵素の量として定義される。
【0077】
還元糖は、マルトースを基準として用い、当技術分野で公知の還元糖の定量方法を用いて測定される;特に、Bernfeld, Methods Enzymol., (1 954), 1, 149-1 58のジニトロサリチル酸法を用いる。
【0078】
0.7ユニットの非マルトース生成型エキソアミラーゼを15分間又は300分間、50℃で、緩衝液中に10mg/mlの蝋様トウモロコシデンプンが入った前述の通り調製されたもの4mlが入った試験管中でインキュベートすることにより、非マルトース生成型エキソアミラーゼの加水分解生成物パターンが決定される。
【0079】
試験管を沸騰水浴中に3分間浸すことにより反応を停止させる。
【0080】
溶離剤として酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び水を用い、パルスアンペロメトリック検出を用い、且つ、グルコースからマルトヘプタオースに至る公知の直鎖マルトオリゴ糖を基準として用いて、Dionex PA 100カラムを用いた陰イオン交換HPLCにより、加水分解生成物が分析され、定量される。マルトオクタオース〜マルトデカオースに関して用いられる反応因子がマルトヘプタオースに関して見出される反応因子である。
【0081】
好ましくは、酵素は非マルトース生成型エキソアミラーゼであり、以下の方法において用いられる際に非マルトース生成型エキソアミラーゼ活性を有する。0.7ユニットの量の前記非マルトース生成型エキソアミラーゼが、15分間、50℃の温度及びpH6で、50mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸及び2mM塩化カルシウムを含む緩衝液1ml当たり10mgの前もって煮沸された蝋様トウモロコシデンプンの水溶液4ml中でインキュベートされる。酵素は、1又は2以上の2〜10D−グルコピラノシル単位の直鎖マルトオリゴ糖及び任意でグルコースからなる加水分解生成物をもたらす。前記加水分解生成物のうち重量で少なくとも60%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、最も好ましくは、少なくとも85%が、3〜10D−グルコピラノシル単位の直鎖マルトオリゴ糖、好ましくは4〜8D−グルコピラノシル単位からなる直鎖マルトオリゴ糖からなるだろう。
【0082】
参照を容易にするため、且つ、当面の目的のため、0.7ユニットの量の非マルトース生成型エキソアミラーゼを15分間、50℃の温度、pH6で、50mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸及び2mM塩化カルシウムを含む緩衝液1ml当たり10mgの前もって煮沸された蝋様トウモロコシデンプンの水溶液4ml中でインキュベートすることという特徴は、「蝋様トウモロコシデンプンインキュベーション試験」として言及されてもよい。
【0083】
したがって言い換えれば、本発明の好ましい非マルトース生成型アミラーゼは、蝋様トウモロコシデンプンインキュベーション試験において、1又は2以上の2〜10D−グルコピラノシル単位の直鎖マルトオリゴ糖及び任意でグルコースからなるであろう加水分解生成物をもたらす能力を有するものとして特徴付けられる;このとき、前記加水分解生成物のうち重量で少なくとも60%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、最も好ましくは、少なくとも85%が、3〜10D−グルコピラノシル単位の直鎖マルトオリゴ糖、好ましくは、4〜8D−グルコピラノシル単位からなる直鎖マルトオリゴ糖からなるであろう。
【0084】
蝋様トウモロコシデンプンインキュベーション試験における加水分解生成物は、1又は2以上の2〜10D−グルコピラノシル単位の直鎖マルトオリゴ糖及び任意でグルコースを含んでいてもよい。蝋様トウモロコシデンプンインキュベーション試験における加水分解生成物はまた、他の加水分解生成物を含んでいてもよい。とはいえ、3〜10D−グルコピラノシル単位の直鎖マルトオリゴ糖の%重量は、1又は2以上の2〜10D−グルコピラノシル単位の直鎖マルトオリゴ糖及び任意でグルコースからなる加水分解生成物の量に基づく。言い換えれば、3〜10D−グルコピラノシル単位の直鎖マルトオリゴ糖の%重量は、1又は2以上の2〜10D−グルコピラノシル単位の直鎖マルトオリゴ糖及びグルコース以外の加水分解生成物の量には基づかない。
【0085】
加水分解生成物は、あらゆる好適な手段により分析され得る。例えば加水分解生成物は、パルスアンペロメトリック検出を用い、且つ、例えばグルコースからマルトヘプタオースに至るまでの公知の直鎖マルトオリゴ糖を基準として用いて、Dionex PA 100カラムを用いた陰イオン交換HPLCにより分析されてもよい。
【0086】
参照を容易にするため、且つ、当面の目的のため、パルスアンペロメトリック検出を用い、且つ、グルコースからマルトヘプタオースに至るまでの公知の直鎖マルトオリゴ糖を基準として用いて、Dionex PA 100カラムを用いた陰イオン交換HPLCにより加水分解生成物を分析することという特徴は、「陰イオン交換による分析」として言及され得る。もちろん、前に示されたように、他の分析的技術でも、他の特定の陰イオン交換技術でも十分であろう。
【0087】
したがって言い換えれば、好ましいアミラーゼは、非マルトース生成型エキソアミラーゼ活性を有するものであり、このときそれは、蝋様トウモロコシデンプンインキュベーション試験において1又は2以上の2〜10D−グルコピラノシル単位の直鎖マルトオリゴ糖及び任意でグルコースからなるであろう加水分解生成物をもたらす能力を有するのであり、前記加水分解生成物は陰イオン交換により分析され得る;このとき、前記加水分解生成物のうち重量で少なくとも60%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、最も好ましくは、少なくとも85%が、3〜10D−グルコピラノシル単位の直鎖マルトオリゴ糖、好ましくは4〜8D−グルコピラノシル単位からなる直鎖マルトオリゴ糖からなるであろう。
【0088】
本明細書において、「直鎖マルトオリゴ糖」なる用語は、α−(1−4)結合により結合された2〜10単位のa−D−グルコピラノースを意味するものとして、その通常の意味において用いられる。
【0089】
さらなる酵素
アミラーゼ及び脂質分解酵素に加えて、1又は2以上のさらなる酵素が用いられてもよく、例えば食品、生地調製物、又は食材に添加されてもよい。
【0090】
生地に添加されてもよいさらなる酵素には、オキシドレダクターゼ、リパーゼ及びエステラーゼ、並びに、α−アミラーゼ、プルラナーゼ、及びキシラナーゼ等のグリコシダーゼ等のヒドロラーゼが含まれる。例えばグルコースオキシダーゼ及びヘキソースオキシダーゼ等のオキシドレダクターゼは、生地の強化及び焼き製品の体積の調節のために用いられ得るのであり、キシラナーゼ及び他のヘミセルラーゼは生地取扱い特性、クラム(crumb)柔軟性及びパン体積を向上させるために添加されてもよい。リパーゼは生地強化剤及びクラム軟化剤として有用であり、α−アミラーゼ及び他のアミロース分解性酵素はパン体積を調節するために生地へと組み込まれてもよい。
【0091】
使用されてもよいさらなる酵素が、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、デンプン分解酵素、プロテアーゼ、リポキシゲナーゼからなる群から選択されてもよい。
【0092】
有用なオキシドレダクターゼの例には、グルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)、炭水化物オキシダーゼ、グルセロールオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ(EC 1.1.3.10)、マルトース酸化酵素、例えばヘキソースオキシダーゼ(EC 1.1.3.5)等のオキシダーゼが含まれる。
【0093】
生地組成物に添加されてもよい他の有用なデンプン分解酵素には、グルコアミラーゼ及びプルラナーゼが含まれる。
【0094】
好ましくは、さらなる酵素は少なくともキシラナーゼ及び/又は少なくとも抗劣化アミラーゼである。
【0095】
本明細書において用いられる「キシラナーゼ」なる用語は、キシロシド結合を加水分解するキシラナーゼ(EC 3.2.1.32)を指す。
【0096】
本明細書において用いられる「アミラーゼ」なる用語は、α−アミラーゼ(EC 3.2.1.1)、β−アミラーゼ(EC 3.2.1.2)及びγ−アミラーゼ(EC 3.2.1.3.)等のアミラーゼを指す。
【0097】
さらなる酵素は、小麦粉、水又は任意の他の成分又は添加剤を含むあらゆる生地成分、又は生地改良組成物と共に添加され得る。さらなる酵素は、小麦粉、水、及び任意で他の成分及び添加剤又は生地改良組成物の前に添加され得る。さらなる酵素は、小麦粉、水、及び任意で他の成分及び添加剤又は生地改良組成物の後に添加され得る。さらなる酵素は、有用なことに液体調製物であってもよい。しかしながら、組成物は有用なことに乾燥組成物の形であってもよい。
【0098】
生地改良組成物のいくつかの酵素は、小麦粉生地の流動学的特性及び/又は機械加工可能性特性の向上、及び/又は、生地から作製される製品の品質の向上に関してそれら酵素がもたらす効果が相加的であるのみならず、その効果が相乗的である範囲で、生地条件下で互いと相互作用できる。
【0099】
生地から作製される製品(最終製品)の改良に関して、こうした酵素の組合せがクラム構造に関して実質的な相乗的効果をもたらすことが見出され得る。また、焼き製品の比体積に関して、相乗的効果が見出され得る。
【0100】
宿主細胞
宿主生物は原核生物又は真核生物であり得る。
【0101】
本発明の実施形態の1つにおいて、本発明の脂質分解酵素は宿主細胞、例えば、バチルス属(Bacillus)の諸種等の細菌細胞、例えばバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)宿主細胞に発現している。
【0102】
他の宿主細胞は例えば、真菌、酵母菌又は植物であってもよい。
【0103】
バチルス・リケニフォルミス宿主細胞の使用が、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)等の他の生物と比較して、脂質アシルトランスフェラーゼの発現の増加をもたらすことが見出されている。
【0104】
単離された(ISOLATED)
態様の1つにおいて、本発明における使用のための酵素は、単離された形であってもよい。
【0105】
「単離された」なる用語は、配列又はタンパク質が、自然界において、且つ、自然界に見出されるものとして、自然に結び付いている少なくとも1つの他の成分から少なくとも実質的に分離していることを意味する。
【0106】
精製された(PURIFIED)
態様の1つにおいて、本発明における使用のための酵素は、精製された形で用いられてもよい。
【0107】
「精製された」なる用語は、配列が相対的に純粋な――例えば、少なくとも約51%純粋な、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%純粋な、又は少なくとも約95%純粋な、又は少なくとも約98%純粋な――状態にあることを意味する。
【0108】
本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のクローニング
本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチド又は修飾に適したポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、前記ポリペプチドを生み出すどの細胞又は生物から単離されてもよい。ヌクレオチド配列の単離のための様々な方法が当技術分野内でよく知られている。
【0109】
例えば、ゲノムDNA及び/又はcDNAライブラリーが、このポリペプチドを生み出す生物に由来する染色体DNA又はメッセンジャーRNAを用いて構築されてもよい。もしこのポリペプチドのアミノ酸配列が公知であるなら、生物から調製されたゲノムライブラリーからポリペプチドをコードするクローンを同定するために、標識オリゴヌクレオチドプローブが合成され、使用されてもよい。或いは、また別の公知のポリペプチド遺伝子と相同な配列を含む標識オリゴヌクレオチドプローブが、ポリペプチドをコードするクローンを同定するために使用され得る。後者の場合、比較的低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション及び洗浄条件が使用される。
【0110】
或いは、ポリペプチドをコードするクローンは、ゲノムDNAの断片をプラスミド等の発現ベクターへと挿入すること、酵素陰性菌を結果として生じたゲノムDNAライブラリーで形質転換すること、及び、その後形質転換菌をこのポリペプチドにより阻害される酵素を含む寒天上へとプレーティングし、そのことによってこのポリペプチドを発現しているクローンの同定を可能にすることにより、同定され得る。
【0111】
さらに別の選択肢において、このポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、確立した標準的方法、例えば、Beucage S.L. et al (1981) Tetrahedron Letters 22, p 1859-1869により記述されたホスホロアミダイト法、又は、Matthes et al (1984) EMBO J. 3, p 801-805により記述された方法により、合成によって調製されてもよい。ホスホロアミダイト法では、オリゴヌクレオチドが例えば自動DNA合成器内で合成され、精製され、アニールされ、連結され、適切なベクター中でクローニングされる。
【0112】
ヌクレオチド配列は、合成由来、ゲノム由来又はcDNA由来の断片を(必要に応じて)標準的技術に従い連結することにより調製される、ゲノム由来のものと合成由来のものとの混合物、合成由来のものとcDNA由来のものとの混合物、又はゲノム由来のものとcDNA由来のものとの混合物であってもよい。それぞれの連結された断片は、ヌクレオチド配列全体の様々な部分に相当する。DNA配列はまた、特異的プライマー、例えば米国特許公報第4,683,202号又はSaiki R K et al (Science (1988) 239, pp 487-491)に記載のものを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)により調製されてもよい。
【0113】
ヌクレオチド配列
本発明はまた、本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を包含する。本明細書において用いられる「ヌクレオチド配列」なる用語は、オリゴヌクレオチド配列又はポリヌクレオチド配列、並びに、そのバリアント、ホモログ、断片及び誘導体(配列の一部等)を指す。ヌクレオチド配列は、ゲノム由来又は合成由来又は組換え由来であってもよく、2本鎖又はセンス鎖若しくはアンチセンス鎖である1本鎖であってもよい。
【0114】
本発明に関して「ヌクレオチド配列」なる用語は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、及びRNAを含む。好ましくは、それはDNA、より好ましくは、コード配列のcDNAを意味する。
【0115】
好ましい実施形態において、本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は本質的に、自然環境下にあってそれと自然状態で結び付いている他の配列と結合している際の、自然環境下の天然ヌクレオチド配列を包含しない。参照を容易にするため、本発明者らはこの好ましい実施形態を「非天然ヌクレオチド配列」と呼ぶ。このとき、「天然ヌクレオチド配列」なる用語は、ヌクレオチド配列が天然環境下にあり、且つ、それが自然状態で結び付いているプロモーター全体に機能可能な形で結合されており、そのプロモーターもまたその天然環境下にある際の、そのヌクレオチド配列全体を意味する。したがって、本発明のポリペプチドは、それが天然状態で存在する生物におけるヌクレオチド配列により発現し得るが、このときこのヌクレオチド配列は、その生物内でそれが自然状態で結び付いているプロモーターの制御下にはない。
【0116】
好ましくは、ポリペプチドは天然ポリペプチドではない。このとき、「天然ポリペプチド」なる用語は、ポリペプチドが天然環境下にあり、且つ、天然ヌクレオチド配列により発現した際の、そのポリペプチド全体を意味する。
【0117】
典型的には、本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、組換えDNA技術を用いて調製される(すなわち、組換えDNAである)。しかしながら、本発明のまた別の実施形態において、ヌクレオチド配列はその全体又は一部が、当技術分野においてよく知られている化学的方法を用いて合成され得る(Caruthers MH et al (1980) Nuc Acids Res Symp Ser 215-23及びHorn T et al (1980) Nuc Acids Res Symp Ser 225-232参照)。
【0118】
分子進化
酵素をコードするヌクレオチド配列が単離されるか、或いは酵素をコードするヌクレオチドと推定される配列が同定されると、選択されたヌクレオチド配列を修飾することが望ましくてもよく、例えば、本発明の酵素を調製するために配列を変異させることが望ましくてもよい。
【0119】
合成オリゴヌクレオチドを用いて変異が導入されてもよい。これらオリゴヌクレオチドは、所望の変異部位に隣接するヌクレオチド配列を含む。
【0120】
好適な方法の1つが、Morinaga et al (Biotechnology (1984) 2, p646-649)に開示されている。酵素をコードするヌクレオチド配列に変異を導入するまた別の方法が、Nelson and Long (Analytical Biochemistry (1989), 180, p 147-151)に記述されている。
【0121】
前述したような部位指定変異誘発の代わりに、例えば、Stratagene社から取得したGeneMorphPCR変異誘発キット又はClontech社から取得したDiversifyPCRランダム変異誘発キット等の市販のキットを用いて、ランダムに変異を導入し得る。欧州特許公報第0 583 265号は、例えば欧州特許公報第0 866 796号に記載のもの等の変異誘発性DNAアナログの使用とも組み合わされ得る、PCRに基づく変異誘発を最適化する方法について述べている。変異性PCR技術は、好ましい特徴を有する脂質アシルトランスフェラーゼバリアントの作製に適している。国際公開公報第0206457号は、リパーゼの分子進化について述べている。
【0122】
新規配列を得るための第3の方法は、任意の数の制限酵素又はDnase I等の酵素を用いて、機能タンパク質をコードする完全ヌクレオチド配列を再構成することにより、同一ではないヌクレオチド配列を断片化するというものである。或いは、1又は複数の同一ではないヌクレオチド配列を用い、完全ヌクレオチド配列を再構成する際に変異を導入し得る。DNAシャフリング及びファミリーシャフリング技術は、好ましい特徴を有する脂質アシルトランスフェラーゼバリアントの作製に適している。「シャフリング」を実施するための好適な方法は、欧州特許公報第0 752 008号、欧州特許公報第1 138 763号、欧州特許公報第1 103 606号に見出され得る。シャフリングはまた、米国特許公報第6,180,406号及び国際公開公報第01/34835号に記載の他の形のDNA変異誘発とも組み合わされ得る。
【0123】
したがって、様々な手段によってインビボ又はインビトロでヌクレオチド配列内に数多くの部位指定変異又はランダム変異を生み出し、続いて、コードされたポリペプチドの機能性の向上をスクリーニングすることが可能である。例えばインシリコ及びエキソ媒介(exo mediated)組換え法(国際公開公報第00/58517号、米国特許公報第6,344,328号、米国特許公報第6,361,974号参照)を使用して、分子進化が実行され得るのであり、このとき作製されるバリアントは、公知の酵素又はタンパク質との非常に低い相同性を保持する。こうして得られたかかるバリアントは、公知のトランスフェラーゼ酵素に対して有意な構造的類似性を有する一方で、非常に低いアミノ酸配列相同性を有していてもよい。
【0124】
限定を意図しない例を1つ挙げれば、加えて、ポリヌクレオチド配列の変異又は自然バリアントは、新規バリアントを生み出すために、野生型若しくはその他の変異又は自然バリアントと組み換えられ得る。かかる新規バリアントもまた、コードされたポリペプチドの機能性の向上に関してスクリーニングされ得る。
【0125】
上述及び類似の分子進化法の適用は、タンパク質構造又は機能に関する一切の予備知識なしに、好ましい特徴を有する本発明の酵素のバリアントの同定及び選択を可能にし、予測できない一方で有益な変異又はバリアントの作製を可能にする。当技術分野において酵素活性の最適化又は改変のために分子進化を適用した数多くの例があり、かかる例は1又は2以上の以下のものを含むが、これに限られるものではない:宿主細胞又はインビトロにおける発現及び/又は活性の最適化、酵素活性の増加、基質特異性及び/又は生成物特異性の改変、酵素安定性又は構造的安定性の増加又は減少、例えば温度、pH、基質等の好ましい環境条件下での酵素活性/特異性の改変。
【0126】
当業者にとって明らかであるだろうが、分子進化ツールを使用して酵素をその機能性の向上のために改変してもよい。
【0127】
好ましくは、本発明において用いられる脂質分解酵素及び/又はアミラーゼをコードするヌクレオチド配列はバリアントをコードしていてもよく、すなわち、脂質分解酵素及び/又はアミラーゼは、親酵素と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失又は付加を含んでいてもよい。バリアント酵素は、親酵素と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、99%の相同性を保持する。
【0128】
バリアント脂質分解酵素は、親酵素と比較して、トリグリセリド、及び/又はモノグリセリド及び/又はジグリセリドに対する活性が減少していてもよい。
【0129】
好ましくは、バリアント酵素は、トリグリセリド及び/又はモノグリセリド及び/又はジグリセリドに対する活性を一切有しなくてもよい。
【0130】
或いは、バリアント酵素は耐熱性が増加していてもよい。
【0131】
バリアント酵素は、1又は2以上の以下のものに対する活性が増加していてもよい:極性脂質、リン脂質、レシチン、ホスファチジルコリン、糖脂質、ジガラクトシルモノグリセリド、モノガラクトシルモノグリセリド。
【0132】
脂質アシルトランスフェラーゼのバリアントが知られており、1又は2以上のかかるバリアントが、本発明の方法及び使用における使用、及び/又は、本発明の酵素組成物における使用に適していてもよい。あくまで例として挙げれば、以下の参照文献に記述される脂質アシルトランスフェラーゼのバリアントが、本発明に従い用いられてもよい:Hilton & Buckley J Biol. Chem. 1991 Jan 15: 266 (2): 997-1000;Robertson et al J. Biol. Chem. 1994 Jan 21; 269(3):2146-50;Brumlik et al J. Bacteriol 1996 Apr; 178 (7): 2060-4;Peelman et al Protein Sci. 1998 Mar; 7(3):587-99。
【0133】
アミノ酸配列
本発明はまた、本発明の方法及び/又は使用のいずれかにおける使用のための酵素をコードするヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列の使用をも包含する。
【0134】
本明細書において用いられる「アミノ酸配列」なる用語は、「ポリペプチド」なる用語及び/又は「タンパク質」なる用語と同義である。いくつかの例において、「アミノ酸配列」なる用語は、「ペプチド」なる用語と同義である。
【0135】
アミノ酸配列は適切な原料から調製/単離されてもよく、或いは合成により作製されてもよく、或いは組換えDNA技術の使用により調製されてもよい。
【0136】
好ましくは、アミノ酸配列は、本明細書において教示される単離されたポリペプチドから標準的方法により得られてもよい。
【0137】
単離されたポリペプチドに由来するアミノ酸配列を決定するのに適した方法の1つは以下の通りである:
【0138】
精製されたポリペプチドが凍結乾燥されてもよく、100μgの凍結乾燥された材料を、8M尿素及び0.4M炭酸水素アンモニウム、pH8.4の混合物50μl中に溶解させてもよい。溶解させたタンパク質を、窒素でのオーバーレイ及び45mMジチオスレイトール5μlの添加の後に15分間、50℃で変性させ、還元してもよい。室温まで冷却した後、15分間、室温で、暗所下、窒素中で、システイン残基が誘導体化されるように、100mMヨードアセタミド5μlが添加されてもよい。
【0139】
135μlの水と5μlの水中のエンドプロテイナーゼLys−C 5μgとが上の反応混合物に添加されてもよく、消化は37℃、窒素中で24時間実施されてもよい。
【0140】
結果として生じたペプチドは逆相HPLCにより、VYDAC C18カラム(0.46×15cm;10μm;The Separation Group社製、米国、カリフォルニア)上で、溶媒A:水中の0.1%TFA、及び、溶媒B:アセトニトリル中の0.1%TFAを用いて分離されてもよい。N末端配列決定の前に、選択されたペプチドを、Develosil C18カラム上で、同じ溶媒系を用いて再度クロマトグラフにかけてもよい。配列決定は、製造者の説明書に従いパルス液高速周期(pulsed liquid fast cycles)を用いたApplied Biosystems 476Aシーケンサーを使用してなされてもよい(Applied Biosystems社製、米国、カリフォルニア)。
【0141】
配列同一性又は配列相同性
ここで、「ホモログ」なる用語は、対象アミノ酸配列及び対象ヌクレオチド配列と一定の相同性を有する実体を意味する。ここで「相同性」なる用語は、「同一性」と等しく扱われ得る。
【0142】
相同アミノ酸配列及び/又はヌクレオチド配列は、機能活性を保持し、且つ/或いは、酵素活性を亢進するポリペプチドを提供及び/又はコードするはずである。
【0143】
この文脈では、相同配列は対象配列と少なくとも50%、55%、60%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%同一、好ましくは、少なくとも95又は98%同一であってもよいアミノ酸配列を含むものと理解されるべきである。典型的には、ホモログは、対象アミノ酸配列と同じ活性部位等を含むだろう。相同性はまた、類似性(すなわち、類似の化学特性/機能を有するアミノ酸残基)の観点からも検討され得るとはいえ、本発明の文脈では、配列同一性の観点から相同性を表現することが好ましい。
【0144】
この文脈では、相同配列は、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(対象配列)と少なくとも75、85又は90%同一、好ましくは、少なくとも95又は98%同一であってもよいヌクレオチド配列を含むものと理解されるべきである。典型的には、ホモログは、活性部位等をコードする対象配列と同じ配列を含むだろう。相同性はまた、類似性(すなわち、類似の化学特性/機能を有するアミノ酸残基)の観点からも検討され得るとはいえ、本発明の文脈では、配列同一性の観点から相同性を表現することが好ましい。
【0145】
相同性比較が目視により、或いはより一般的には、容易に入手可能な配列比較プログラムを用いて実施され得る。これらの市販のコンピュータプログラムは、2又は3以上の配列間の%相同性を計算し得る。
【0146】
%相同性は、連続配列(contiguous sequences)にわたって計算されてもよく、すなわち、ある配列を他の配列と並列させ、一方の配列の各アミノ酸が他の配列の対応するアミノ酸と直接に、1残基ずつ比較される。これは「アンギャップト(ungapped)」アラインメントと呼ばれる。典型的には、かかるアンギャップトアラインメントは、比較的少ない数の残基についてのみ実施される。
【0147】
これが非常に単純且つ一貫した方法であるとはいえ、それは例えば、他の点では同一である1対の配列において、1つの挿入又は欠失により以降のアミノ酸残基のアラインメントが一致せず、したがって配列全体のアラインメントが実施される際に、%相同性の大幅な低下がもたらされる可能性があることを考慮していない。結果として、ほとんどの配列比較法が、挿入及び欠失の可能性を考慮し、相同性スコア全体を不当に減じることなく最適なアラインメントをもたらすよう設計されている。このことは、局所的な相同性を最大化するよう配列アラインメントに「ギャップ」を挿入することにより達成される。
【0148】
しかしながら、これらのより一層複雑な方法は、アラインメント中に生じるそれぞれのギャップに「ギャップペナルティ(gap penalties)」を割り当て、結果として、同一アミノ酸が同数である場合には、可能な限り少ないギャップ――比較されている2つの配列間のより高い近縁性を反映している――を有する配列アラインメントが、多くのギャップを有するものより高いスコアを達成する。「アファインギャップコスト(affine gap costs)」が典型的には使用され、これはギャップの存在に比較的高いコストを課し、ギャップ内の以降の各残基に比較的低いペナルティを課する。これが最も一般的に用いられるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティはもちろん、ギャップの数がより少ない最適化されたアラインメントを生み出す。ほとんどのアラインメントプログラムでギャップペナルティの修正が可能である。しかしながら、かかる配列比較用ソフトウェアを用いる際には、デフォルト値を用いることが好ましい。
【0149】
したがって、最大%相同性の計算にはまず、ギャップペナルティを考慮して、最適なアラインメントを作成することが必要とされる。かかるアラインメントを達成するのに適したコンピュータプログラムは、Vector NTI (Invitrogen Corp.社製)である。配列比較を実行し得る他のソフトウェアの例には、BLASTパッケージ(Ausubel et al 1999 Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed - Chapter 18参照)、及びFASTA(Ausubel et al 1999, pages 7-58 to 7-60)が含まれるが、これに限られるものではない。BLAST及びFASTAの両方がオフラインとオンライン検索とで入手可能である(Ausubel et al 1999, pages 7-58 to 7-60参照)。しかしながら、いくつかの用途のためには、Vector NTIプログラムを用いることが好ましい。BLAST 2 Sequencesと呼ばれる新たなツールもまた、タンパク質及びヌクレオチド配列の比較のために入手可能である(FEMS Microbiol Lett 1999 174(2): 247-50;FEMS Microbiol Lett 1999 177(1): 187-8及びtatiana@ncbi.nlm.nih.gov参照)。
【0150】
最終的な%相同性が同一性の観点から測定され得るとはいえ、アラインメントプロセスそれ自体は典型的にはオールオアナッシング(all-or-nothing)の一対比較には基づかない。代わりに、スケールド類似性スコア行列(scaled similarity score matrix)が一般に用いられ、これは化学類似性又は進化距離に基づいてそれぞれの一対比較にスコアを割り当てる。一般的に用いられているかかる行列の一例は、BLOSUM62行列――BLASTスイートのプログラムのデフォルト行列――である。Vector NTIプログラムは一般にパブリックデフォルト値(public default values)又はもし提供されている場合にはカスタムシンボル比較表(custom symbol comparison table)を用いる(さらなる詳細についてはユーザーマニュアル参照)。いくつか用途については、Vector NTIパッケージのデフォルト値を用いるのが好ましい。
【0151】
或いは、パーセント相同性をCLUSTAL(HHiggins DG & Sharp PM (1988), Gene 73(1), 237-244)に類似したアルゴリズムに基づく、Vector NTI(Invitrogen Corp.社製)の多重アラインメント機能を用いて計算してもよい。
【0152】
ソフトウェアが最適なアラインメントを作成すると、%相同性、好ましくは%配列同一性を計算することが可能となる。ソフトウェアは、典型的には配列比較の一部としてこれを行い、計算結果を生成する。
【0153】
配列同一性を決定する際にギャップペナルティが用いられるのであれば、好ましくは以下のパラメータが一対アラインメント(pairwise alignment)のために用いられる:
【0154】
【表1】

【0155】
【表2】

【0156】
実施形態の1つにおいて、好ましくは、ヌクレオチド配列の配列同一性は、上で定義されたギャップペナルティ及びギャップ延長(gap extension)のセットを用いたCLUSTALを用いて決定される。
【0157】
好ましくは、ヌクレオチド配列に関して同一性の程度は、少なくとも20連続ヌクレオチドにわたり、好ましくは、少なくとも30連続ヌクレオチドにわたり、好ましくは、少なくとも40連続ヌクレオチドにわたり、好ましくは、少なくとも50連続ヌクレオチドにわたり、好ましくは、少なくとも60連続ヌクレオチドにわたり、好ましくは、少なくとも100連続ヌクレオチドにわたり決定される。
【0158】
好ましくは、ヌクレオチド配列に関して同一性の程度は、配列全体にわたり決定されてもよい。
【0159】
実施形態の1つにおいて、本発明のアミノ酸配列の同一性の程度は、好ましくは、Vector NTI 10(Invitrogen Corp.社製)等、当技術分野において公知のコンピュータプログラムにより決定されてもよい。一対アラインメントのために使用される行列は、好ましくは、10.0のギャップ開口ペナルティ(Gap opening penalty)及び0.1のギャップ延長ペナルティ(Gap extension penalty)を有するBLOSUM62である。
【0160】
好ましくは、アミノ酸配列に関して同一性の程度は、少なくとも20連続アミノ酸にわたり、好ましくは、少なくとも30連続アミノ酸にわたり、好ましくは、少なくとも40連続アミノ酸にわたり、好ましくは、少なくとも50連続アミノ酸にわたり、好ましくは、少なくとも60連続アミノ酸にわたり決定される。
【0161】
好ましくは、アミノ酸配列に関して同一性の程度は、配列全体にわたり決定されてもよい。
【0162】
配列はまた、サイレントな変化を生み出して機能的に等価な物質をもたらす、アミノ酸残基の欠失、挿入又は置換を有していてもよい。物質の二次結合活性が保持される限りにおいて、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の類似に基づき、意図的なアミノ酸置換がなされてもよい。例えば、負の電荷を帯びているアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる;正の電荷を帯びたアミノ酸には、リジン及びアルギニンが含まれる;非荷電極性頭部基を有し、類似した親水性値を有するアミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、及びチロシンが含まれる。
【0163】
同類置換がなされてもよく、例えば、下の表に従い同類置換がなされてもよい。第2カラムの同じ区画のアミノ酸、好ましくは、第3カラムの同じ行のアミノ酸が互いに置換されてもよい:
【0164】
【表3】

【0165】
本発明はまた、生じる可能性のある相同置換(置換(substitution)及び置換(replacement)はその両方が、現存のアミノ酸残基の代替残基との交換を意味するものとして本明細書において用いられる)、すなわち、塩基性のものを塩基性のものに、酸性のものを酸性に、極性のものを極性のものに、等の同種置換をも包含する。非相同置換もまた生じてよく、すなわちこれは、ある種類の残基からまた別の種類の残基への置換であるか、或いは、オルニチン(以下Zとして言及)、ジアミノ酪酸オルニチン(以下Bとして言及)、ノルロイシンオルニチン(以下Oとして言及)、ピリジルアラニン(pyriylalanine)、チエニルアラニン、ナフチルアラニン及びフェニルグリシン等の非天然アミノ酸が包含されることを伴う置換である。
【0166】
置換はまた、非天然アミノ酸によりなされてもよい。
【0167】
バリアントアミノ酸配列は適切なスペーサー基を含んでいてもよく、これは配列のどの2つのアミノ酸残基の間に挿入されてもよく、グリシン残基又はβ−アラニン残基等のアミノ酸スペーサーに加えて、メチル基、エチル基又はプロピル基等のアルキル基を含む。さらなるバリエーションの形の1つは、ペプトイド型での1又は2以上のアミノ酸残基の存在を伴い、これは当業者によく理解されるだろう。誤解を避けるため述べると、「ペプトイド型(peptoid form)」なる文言は、バリアントアミノ酸残基を指すのに用いられ、このとき、α−炭素置換基は残基のα−炭素上ではなく窒素原子上にある。ペプトイド型のペプチドの調製プロセスは当技術分野において知られており、例えば、Simon RJ et al., PNAS (1992) 89(20), 9367-9371 and Horwell DC, Trends Biotechnol. (1995) 13(4), 132-134が挙げられる。
【0168】
本発明における使用のためのヌクレオチド配列、又は、本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、合成ヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドを内部に含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドに対する様々なタイプの修飾が数多く当技術分野において知られている。これらの中には、メチルホスホネート骨格及びホスホロチオエート骨格、並びに/或いは、分子の3’末端及び/又は5’末端へのアクリジン鎖又はポリリジン鎖の付加が含まれる。本発明の目的のため、本明細書において記述されるヌクレオチド配列が、当技術分野において利用可能などの方法により修飾されてもよいことが理解されるべきである。かかる修飾は、ヌクレオチド配列のインビボでの活性又は寿命を増進するために実施されてもよい。
【0169】
本発明はまた、本明細書において議論される配列と相補的なヌクレオチド配列、又はそのあらゆる誘導体、断片の誘導体の使用をも包含する。もし配列がその断片と相補的であるなら、その配列はプローブとして他の生物における類似のコード配列等を同定するために用いられ得る。
【0170】
本発明の配列と100%相同ではないが、本発明の範囲内に収まるポリヌクレオチドは、数多くの方法で得られる。本明細書において記述される配列の他のバリアントは、例えば様々な個体群に由来する個体等の様々な個体から作製されるDNAライブラリーをプローブすることにより得られてもよい。加えて、他のウイルス性/細菌性ホモログ、又は細胞性ホモログ、特に哺乳動物細胞(例えばラット、マウス、ウシ及び霊長類の細胞)に見出される細胞性ホモログが得られてもよく、かかるホモログ及びその断片は概して、本明細書の配列表に示される配列と選択的にハイブリダイズすることができるだろう。かかる配列は、他の動物種から作製されるcDNAライブラリー又は他の動物種に由来するゲノムDNAライブラリーをプローブすること、並びに、かかるライブラリーを添付の配列表の配列のいずれかのすべて又は一部を含むプローブを用いて、中程度〜高いストリンジェンシー条件下でプローブすることにより得られてもよい。似たような考慮が、本発明のポリペプチド又はヌクレオチド配列の種ホモログ及び対立遺伝子多型を得ることに当てはまる。
【0171】
バリアント及び系統/種ホモログはまた、縮重PCRを用いて得られてもよく、これには、本発明の配列内で保存されたアミノ酸配列をコードするバリアント及びホモログ内の配列を標的にするよう設計されたプライマーを用いる。保存配列は、例えば、複数のバリアント/ホモログに由来するアミノ酸配列を配列比較することにより予測され得る。配列アラインメントは、当技術分野において公知のコンピュータソフトウェアを用いて実施され得る。例えば、GCG Wisconsin PileUpプログラムが広範に用いられている。
【0172】
縮重PCRにおいて使用されるプライマーは1又は2以上の縮重位置を含み、公知の配列に対する単一の配列プライマーでの配列クローニングのために使用されるものより、低いストリンジェンシー条件で用いられるだろう。
【0173】
或いは、かかるポリヌクレオチドは、特徴付けられた配列の部位指定変異誘発により得られてもよい。これは例えば、ポリヌクレオチド配列が発現している特定の宿主細胞のためにコドン選択を最適化する際、サイレントなコドン配列変化が必要である場合に、有用であり得る。制限ポリペプチド認識部位を導入するためか、或いは、ポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドの特性又は機能を改変するために、他の配列変化が望ましくてもよい。
【0174】
本発明のポリヌクレオチド(ヌクレオチド配列)は、プライマー、例えばPCRプライマーやその他の増幅反応のためのプライマー等、プローブ、例えば放射性又は非放射性標識を用いた常法により明確な標識で標識化されたプローブ等を作製するために用いられてもよく、或いは、本発明のポリヌクレオチドはベクター内へとクローニングされてもよい。かかるプライマー、プローブ及び他の断片は、長さが少なくとも15、好ましくは、少なくとも20、例えば、少なくとも25、30又は40ヌクレオチドであり、また、本明細書において用いられる本発明のポリヌクレオチドなる用語により包含される。
【0175】
DNAポリヌクレオチド及びプローブ等の本発明のポリヌクレオチドは、組換え、合成、又は当業者にとって利用可能なあらゆる手段により作製されてもよい。それらポリヌクレオチドはまた、標準的技術によりクローニングされてもよい。
【0176】
一般に、プライマーは合成により作製され、これは所望の核酸配列をヌクレオチド1つ1つ、段階的に製造することを伴う。自動化された技術を用いてこれを達成するための技術は、当技術分野において容易に利用可能である。
【0177】
比較的長いポリヌクレオチドは一般に組換え、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術を用いて作製される。これは、クローニングすることが所望される脂質標的配列の領域に隣接する1対のプライマー(例えば、約15〜30ヌクレオチド)を作製すること、プライマーを動物細胞又はヒト細胞から得られるmRNA又はcDNAと接触させること、所望の領域の増幅をもたらす条件下でポリメラーゼ連鎖反応を実施すること、増幅断片を(例えば、アガロースゲル上の反応混合物を精製することにより)単離すること、及び、増幅DNAを回収することを伴う。プライマーは、適切な制限酵素認識部位を含み、結果として増幅DNAが適切なクローニングベクター中にクローニングされ得るよう設計されてもよい。
【0178】
ハイブリダイゼーション
本発明はまた、本発明の配列と相補的な配列の使用、又は、本発明の配列若しくはそれと相補的な配列とハイブリダイズできる配列の使用をも包含する。
【0179】
本明細書において用いられる「ハイブリダイゼーション」なる用語は、「核酸鎖が塩基対合を介して相補鎖と結合するプロセス」、並びに、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術において実施される増幅プロセスを含む。
【0180】
本発明はまた、本明細書において議論される対象配列と相補的な配列、又はそのあらゆる誘導体、断片若しくは断片の誘導体とハイブリダイズできるヌクレオチド配列の使用をも包含する。
【0181】
本発明はまた、本明細書において議論されるヌクレオチド配列とハイブリダイズできる配列と相補的な配列をも包含する。
【0182】
ハイブリダイゼーション条件は、Berger and Kimmel(1987, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA)に教示されるように、ヌクレオチド結合複合体の融解温度(melting temperature、Tm)に基づくのであり、下に説明される定義された「ストリンジェンシー」を参照せよ。
【0183】
最大ストリンジェンシーは、典型的には、約Tm−5℃(プローブのTmの5℃下)で;高いストリンジェンシーは、Tmの約5℃〜10℃下で;中程度のストリンジェンシーは、Tmの約10℃〜20℃下で;並びに、低いストリンジェンシーはTmの約20℃〜25℃下で生じる。当業者により理解されるだろうが、最大ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは同一のヌクレオチド配列を同定又は検出するために用いられ得る一方で、中程度の(或いは低い)ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、類似又は近縁のポリヌクレオチド配列を同定又は検出するために用いられ得る。
【0184】
好ましくは、本発明は、高いストリンジェンシー条件又は中程度のストリンジェンシー条件下で、本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とハイブリダイズできる配列と相補的な配列の使用を包含する。
【0185】
より好ましくは、本発明は、本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、高いストリンジェンシー条件(例えば65℃及び0.1×SSC{1×SSC=0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム pH7.0})下でハイブリダイズできる配列と相補的な配列の使用を包含する。
【0186】
本発明はまた、本明細書において議論されるヌクレオチド配列(本明細書において議論される配列の相補配列を含む)とハイブリダイズできるヌクレオチド配列の使用に関する。
【0187】
本発明はまた、本明細書において議論されるヌクレオチド配列(本明細書において議論される配列の相補配列を含む)とハイブリダイズできる配列と相補的なヌクレオチド配列の使用に関する。
【0188】
また本発明の範囲内に含まれるのは、本明細書において議論されるヌクレオチド配列と中程度〜最大ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできるポリヌクレオチド配列の使用である。
【0189】
好ましい態様の1つにおいて、本発明は、本明細書において議論されるヌクレオチド配列又はその相補配列と、ストリンジェントな条件(例えば、50℃及び0.2×SSC)下でハイブリダイズできるヌクレオチド配列の使用を包含する。
【0190】
より好ましい態様において、本発明は、本明細書において議論されるヌクレオチド配列又はその相補配列と、高いストリンジェンシー条件(例えば、65℃及び0.1×SSC)下でハイブリダイズできるヌクレオチド配列の使用を包含する。
【0191】
ポリペプチドの発現
本発明における使用のためのヌクレオチド配列、又は、本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、組換え複製可能ベクター内へと組み込まれ得る。ベクターは、適合性の宿主細胞において、且つ/或いは、適合性の宿主細胞から、ポリペプチドの形でヌクレオチド配列を複製及び発現するために用いられてもよい。発現は、プロモーター/エンハンサー及び他の発現制御シグナルを含む制御配列を用いて制御されてもよい。原核細胞プロモーター及び真核細胞において機能するプロモーターが用いられてもよい。組織特異的又は刺激特異的プロモーターが用いられてもよい。上で記述された2又は3以上の異なるプロモーターに由来する配列因子を含むキメラプロモーターがまた用いられてもよい。
【0192】
ヌクレオチド配列の発現により宿主組換え細胞によって作製されるポリペプチドは、配列及び/又は使用されるベクターに応じて、分泌されてもよく、或いは、細胞内に含有されてもよい。コード配列は、特定の原核細胞膜又は真核細胞膜を介して物質コード配列の分泌を司るシグナル配列を考慮して設計され得る。
【0193】
構築物
「構築物(construct)」なる用語――「コンジュゲート(conjugate)」、「カセット(cassette)」及び「ハイブリッド(hybrid)」等の用語と同義である――は、直接又は間接にプロモーターに連結された、本発明での使用のための本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。間接的連結の一例は、Sh1−イントロン又はADHイントロン等のイントロン配列等、適切なスペーサー基の提供であり、これはプロモーターと本発明のヌクレオチド配列との間に介在する。同じことが本発明に関して「融合された(fused)」なる用語についても言え、この用語は直接的又は間接的連結を含む。いくつかの場合において、これらの用語は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、それが通常は結び付いている野生型遺伝子プロモーターとの、両者が自然環境下にある際の自然状態での組合せを包含しない。
【0194】
構築物は、遺伝子構築物の選択を可能にするマーカーまでをも包含又は発現してもよい。
【0195】
いくつかの用途のため、好ましくは、構築物は少なくともプロモーターに機能可能な形で結合された、本発明のヌクレオチド配列又は本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む
【0196】
生物
本発明に関して「生物」なる用語は、本発明のヌクレオチド配列又は本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又はそこから得られる産物を含み得る、あらゆる生物を含む。
【0197】
本発明に関して「トランスジェニック生物」なる用語は、本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又はそこから得られる産物を含むあらゆる生物を含み、且つ/或いは、このときプロモーターがこの生物内で本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を可能にし得る。好ましくは、ヌクレオチド配列は生物のゲノムに組み込まれる。
【0198】
「トランスジェニック生物」なる用語は、自然環境下にある天然プロモーターの制御下にある、やはり自然環境下にある天然ヌクレオチドコード配列を包含しない。
【0199】
したがって、本発明のトランスジェニック生物は、本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、本明細書において定義される構築物、本明細書において定義されるベクター、本明細書において定義されるプラスミド、本明細書において定義される細胞、又はそれらの産物のいずれか又はそれらの組合せを含む生物を含む。例えば、トランスジェニック生物はまた、脂質アシルトランスフェラーゼをコードする配列と自然界において結び付かないプロモーターの制御下にある、本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をも含み得る。
【0200】
宿主細胞/生物の形質転換
宿主生物は原核生物又は真核生物であり得る。
【0201】
好適な原核生物宿主の例には、大腸菌(E. coli)及びバチルス・リケニフォルミス等の細菌、好ましくはバチルス・リケニフォルミスが含まれる。
【0202】
原核生物宿主の形質転換に関する教示は当技術分野において十分記述されており、例えば、Sambrook et al(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照せよ。もし原核生物宿主が用いられるのであれば、ヌクレオチド配列は好ましくは、形質転換前に――イントロンの除去等により――修飾される必要があってもよい。
【0203】
また別の実施形態において、トランスジェニック生物は酵母菌であり得る。
【0204】
糸状真菌細胞は、当技術分野において公知の様々な方法――公知の方法でのプロトプラスト形成及びプロトプラストの形質転換、それに続く細胞壁の再生を伴うプロセス等――を用いて形質転換されてもよい。アスペルギルス属(Aspergillus)の宿主微生物としての使用が、欧州特許公報第0 238 023号に記述されている。
【0205】
また別の宿主生物は、植物であり得る。植物を形質転換するために用いられる一般的技術の概説が、Potrykusによる論文(Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol 0205 42:205-225)及びChristouによる論文(Agro-Food-Industry Hi-Tech March/April 1994 17-27)に見出され得る。植物形質転換に関するさらなる教示が、欧州公開特許公報第0449375号に見出され得る。
【0206】
真菌、酵母菌及び植物の形質転換に関する一般的教示が、以下の項で提示される。
【0207】
形質転換真菌
宿主生物は、真菌――糸状真菌等――であってもよい。好適なかかる宿主の例には、テルモミセス属(Thermomyces)、アクレモニウム属(Acremonium)、アスペルギルス属、ペニシリウム属(Penicillium)、ムコール属(Mucor)、ニューロスポラ属(Neurospora)、トリコデルマ属(Trichoderma)等に属するあらゆるメンバーが含まれる。
【0208】
糸状真菌の形質転換に関する教示は、米国特許公報第A−5741665号に概説されており、糸状真菌の形質転換及び真菌の培養のための標準的技術が当技術分野においてよく知られていると述べられている。アカパンカビ(N. crassa)に適用される技術の詳細な説明は、例えば、Davis and de Serres, Methods Enzymol (1971) 17A: 79-143に見出される。
【0209】
糸状真菌の形質転換に関するさらなる教示は、米国特許公報第A−5674707号に概説されている。
【0210】
態様の1つにおいて、宿主生物はアスペルギルス・ニガー等のアスペルギルス属の生物であり得る。
【0211】
本発明のトランスジェニックアスペルギルス属生物はまた、例えば、Turner G. 1994(Vectors for genetic manipulation. In: Martinelli S.D., Kinghorn J.R.(Editors) Aspergillus: 50 years on. Progress in industrial microbiology vol 29. Elsevier Amsterdam 1994. pp. 641-666)の教示に従うことにより調製され得る。
【0212】
糸状真菌における遺伝子発現は、Punt et al. (2002) Trends Biotechnol 2002 May;20(5):200-6、Archer & Peberdy Crit Rev Biotechnol (1997) 17(4):273-306に概説されている。
【0213】
形質転換酵母菌
また別の実施形態において、トランスジェニック生物は酵母菌であり得る。
【0214】
酵母菌における異種遺伝子発現の原理の概説は、例えば、Methods Mol Biol (1995), 49:341-54, and Curr Opin Biotechnol (1997) Oct;8(5):554-60において提供される。
【0215】
このとき、酵母菌――サッカロミセス・セレビシ(Saccharomyces cerevisi)又はピキア・パストリス(Pichia pastoris)(FEMS Microbiol Rev (2000 24(1):45-66参照)等――が異種遺伝子発現のための媒体として用いられてもよい。
【0216】
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における異種遺伝子発現及び遺伝子産物の分泌の原理の概説は、E Hinchcliffe E Kenny(1993, "Yeast as a vehicle for the expression of heterologous genes", Yeasts, Vol 5, Anthony H Rose and J. Stuart Harrison, eds, 2nd edition, Academic Press Ltd.)により与えられている。
【0217】
酵母菌の形質転換のため、複数の形質転換プロトコルが開発されてきた。例えば、本発明のトランスジェニックサッカロミセス属(Saccharomyces)生物は、Hinnen et al.(1978, Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 75, 1929);Beggs, J D(1978, Nature, London, 275, 104);及びIto, H et al(1983, J Bacteriology 153, 163-168)の教示に従うことにより調製され得る。
【0218】
形質転換酵母菌細胞は、様々な選択マーカー――栄養要求性マーカー、優性抗生物質耐性マーカー等――を用いて選択されてもよい。
【0219】
適切な酵母菌宿主生物は、ピキア属(Pichia)の諸種、ハンゼヌラ属(Hansenula)の諸種、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、ヤロウイア属(Yarrowinia)の諸種、サッカロミセス・セレビシエを含むサッカロミセス属の諸種、又はシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyce pombe)を含むシゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyce)の諸種から選択される酵母菌種等の生物工学的に適切な酵母菌種から選択され得るが、これに限られるものではない。
【0220】
メチロトローフ酵母菌種ピキア・パストリスの株が宿主生物として用いられてもよい。
【0221】
実施形態の1つにおいて、宿主生物は、ハンゼヌラ・ポリモルファ(H. polymorpha)(国際公開公報第01/39544号に記載)等のハンゼヌラ属の種であってもよい。
【0222】
形質転換植物/植物細胞
本発明に適した宿主生物は植物であってもよい。一般的技術の概説は、Potrykusによる論文(Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol 1991 42:205-225)及びChristouによる論文(Agro-Food-Industry Hi-Tech March/April 1994 17-27)、又は国際公開公報第01/16308号に見出されてもよい。トランスジェニック植物は、例えば、植物ステロールエステル及び植物スタノールエステルのレベルの亢進をもたらしてもよい。
【0223】
したがって本発明はまた、植物細胞を本明細書において定義される脂質アシルトランスフェラーゼ(特に本明細書において定義される脂質アシルトランスフェラーゼを含む発現ベクター又は構築物)で形質転換するステップ、及び、形質転換植物細胞から植物を生育するステップを含む、植物ステロールエステル及び植物スタノールエステルのレベルの亢進を伴うトランスジェニック植物の作製方法に関する。
【0224】
分泌
多くの場合、ポリペプチドが発現宿主から培養基内へと分泌されることが望ましく、かかる培養基から酵素がより容易に回収されてもよい。本発明では、分泌リーダー配列は所望の発現宿主に基づき選択されてもよい。ハイブリッドシグナル配列(hybrid signal sequences)もまた本発明の文脈で用いられてもよい。
【0225】
脂質アシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列と自然界において結び付かない分泌リーダー配列の典型的な例は、真菌アミログルコシダーゼ(amyloglucosidase、AG)遺伝子(glaA――例えばアスペルギルス属に由来する、18及び24アミノ酸バージョンの両方)、a−因子遺伝子(酵母菌、例えばサッカロミセス属、クリベロミセス属及びハンゼヌラ属)又はα−アミラーゼ遺伝子(バチルス属)に由来するものである。
【0226】
検出
アミノ酸配列の発現の検出及び測定のための様々なプロトコルが当技術分野において知られている。その例には、酵素結合免疫吸着法(enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)、放射免疫測定法(radioimmunoassay、RIA)及び蛍光活性化細胞選別法(fluorescent activated cell sorting、FACS)が含まれる。
【0227】
多様な標識及び結合技術が当業者により知られており、様々な核酸及びアミノ酸アッセイにおいて用いられ得る。
【0228】
Pharmacia Biotech社(ニュージャージー州ピスカタウェイ)、Promega社(ウィスコンシン州マディソン)、及びUS Biochemical Corp社(オハイオ州クリーブランド)等の数多くの企業が、これらの手法のための市販のキット及びプロトコルを供給している。
【0229】
好適なレポーター分子又は標識には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、又は発色剤が基質、補因子、阻害剤、磁性粒子等と並んで含まれる。かかる標識の使用を教示する特許には、米国特許公報第A−3,817,837号;米国特許公報第A−3,850,752号;米国特許公報第A−3,939,350号;米国特許公報第A−3,996,345号;米国特許公報第A−4,277,437号;米国特許公報第A−4,275,149号及び米国特許公報第A−4,366,241号が含まれる。
【0230】
また、組換え免疫グロブリンが米国特許公報第A−4,816,567号に示される通り作製されてもよい。
【0231】
融合タンパク質
本発明における使用のための酵素は、例えばその抽出及び精製を助けるために、融合タンパク質として作製されてもよい。融合タンパク質パートナーの例には、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase、GST)、6×His、GAL4(DNA結合ドメイン及び/又は転写活性化ドメイン)及びβ−ガラクトシダーゼが含まれる。融合タンパク質配列の除去を可能にするため、融合タンパク質パートナーと目的のタンパク質配列との間にタンパク質分解的切断部位を含むこともまた有用でありうる。好ましくは、融合タンパク質はタンパク質配列の活性を妨げない。
【0232】
大腸菌中の遺伝子融合発現系は、Curr. Opin. Biotechnol. (1995) 6(5):501-6で概説されている。
【0233】
本明細書において定義される特定の特性を有するポリペプチドのアミノ酸配列は、融合タンパク質をコードするため、非天然配列と連結されてもよい。例えば、物質活性に影響を及ぼすことのできる因子に関してペプチドライブラリーをスクリーニングするため、市販の抗体により認識される非天然エピトープを発現するキメラ物質をコードすることが有用であってもよい。
【0234】
さらなるPOI
本発明での使用のための配列はまた、1又は2以上のさらなる対象タンパク質(proteins of interest、POI)又は対象ヌクレオチド配列(nucleotide sequences of interest、NOI)と共に用いられてもよい。
【0235】
限定を意図しないPOIの例には、以下のものが含まれる:デンプン代謝に関与するタンパク質又は酵素、グリコーゲン代謝に関与するタンパク質又は酵素、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−グルカナーゼ、グルカンリアーゼ(glucan lysases)、エンド−β−グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ラムノガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、タウマチン、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ(D−ヘキソース:O−オキシドレダクターゼ、EC 1.1.3.5)又はそれらの組合せ。NOIは、それら配列のいずれかのアンチセンス配列であってもよい。
【0236】
POIは、例えば抽出及び精製を助けるため、融合タンパク質であってもよい。
【0237】
POIは、分泌配列に融合されてもよい。
【0238】
他の配列もまた、分泌を促進するか、或いは、分泌されたPOIの収量を高め得る。かかる配列は、例えば、英国特許出願第9821198.0号に記述されたアスぺルギルス・ニガーcypB遺伝子の産物としてのシャペロンタンパク質をコードし得る。
【0239】
NOIは、その発現産物のプロセシング及び/又は発現を修正する改変を含みはするが、それに限られない数多くの理由から、その活性を改変するよう設計されてもよい。さらなる例を挙げれば、NOIはまた、特定の宿主細胞における発現を最適化するよう修飾されてもよい。他の配列変化が、制限酵素認識部位を導入するために所望されてもよい。
【0240】
NOIは、その内部に合成又は修飾ヌクレオチド――メチルホスホネート骨格及びホスホロチオエート骨格等――を含んでいてもよい。
【0241】
NOIは、細胞内安定性及び半減期を増進するために修飾されてもよい。可能な修飾には、分子の5’末端及び/又は3’末端の隣接配列を付加すること、或いは、分子骨格内でホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエート結合又は2’O−メチル結合を使用することが含まれるが、これに限られるものではない。
【0242】
食品
本発明の組成物は、食品として――或いは食品の調製に――用いられてもよい。ここで「食品」なる用語は、広い意味で用いられる――ヒト用食品並びに動物用食品(すなわち飼料)を包含する。好ましい態様の1つにおいて、食品はヒトによる消費のためのものである。
【0243】
食品は――使用及び/又は適用様式及び/又は投与様式に応じて――溶液の形又は固形物であってもよい。
【0244】
食品――機能性食品等――としての使用――或いはその調製――の際に、本発明の組成物は、1又は2以上の以下のものと共に用いられてもよい:栄養学的に許容可能な担体、栄養学的に許容可能な希釈剤、栄養学的に許容可能な賦形剤、栄養学的に許容可能な補助剤、栄養学的活性を有する成分。
【0245】
食品成分
本発明の組成物は食品成分として用いられてもよい。
【0246】
本明細書において用いられる「食品成分」なる用語は、栄養補助剤及び/又は食物繊維補助剤として機能性食品又は食材に添加される、或いは、添加され得る調合物を含む。ここで用いられる食品成分なる用語はまた、ゲル化、テクスチャ化(texturising)、安定化、懸濁化(suspending)、膜形成(film-forming)及び構造化(structuring)、粘性を加えることなしの多汁性の保持及び食感の向上を必要とする多様な製品において、低いレベルで用いられ得る調合物を指す。
【0247】
食品成分は――使用及び/又は適用様式及び/又は投与様式に応じて――溶液の形又は固形物であってもよい。
【0248】
本発明はここで、あくまで例示のため、以下の図及び実施例を参照して記述される。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】図1は、1:Lipopan F、2:GRINDAMYL POWERBAKE 4070、3:Lipase 3(配列番号3)、4:Exel 16、及び、5:YieldMaxについて、焼成2時間後の初期の硬さを示す。使用されるマルトース生成型アミラーゼは、Novamyl(登録商標)であり、非マルトース生成型アミラーゼはG4(配列番号1)である;
【図2】図2は、1:酵素なし、2:非マルトース生成型アミラーゼG4(配列番号1);3:非マルトース生成型アミラーゼG4(配列番号1)及び脂質分解酵素(配列番号9)、並びに、4:脂質分解酵素(配列番号9)を用いて作製されたパンについて、焼成2時間後からの硬さの変化を示す;
【図3】図3は、1:酵素なし、5:非マルトース生成型アミラーゼG4(配列番号1)及び脂質分解酵素(配列番号9)及び脂質分解酵素(Grindamyl EXEL 16)、並びに、6:脂質分解酵素(Grindamyl EXEL 16)を用いて作製されたパンについて、焼成2時間後からの硬さの変化を示す;
【図4】図4は、1:酵素なし、及び、2:Lipopan Fを用いて作製されたパンについて、焼成2時間後からの硬さの変化を示す;
【図5】図5は、1:酵素なし、及び、3:Lipase 3(配列番号3)を用いて作製されたパンについて、焼成2時間後からの硬さの変化を示す;
【図6】図6は、1:酵素なし、及び、4:Grindamyl EXEL 16を用いて作製されたパンについて、焼成2時間後からの硬さの変化を示す;
【図7】図7は、1:酵素なし、及び、5:Yieldmaxを用いて作製されたパンについて焼成2時間後からの硬さの変化を示す;
【図8】図8は、本発明における使用のための非マルトース生成型アミラーゼのアミノ酸配列−配列番号1を示す;
【図9a−9b】図9aは、本発明における使用のための脂質分解酵素のアミノ酸配列−配列番号2を示す;図9bは、本発明における使用のための脂質分解酵素のアミノ酸配列、GRINDAMYL POWERbake 4070−配列番号9を示す;
【図10】図10は、本発明における使用のための脂質分解酵素のアミノ酸配列、Lipase 3−配列番号3を示す。
【図11】図11は、配列番号4、Lipopan F(国際公開公報第98/26057号の配列番号2にも記載)を示す。国際公開公報第98/26057号が参照により本明細書に組み込まれる。
【図12】図12は、配列番号5、Lipopan H(米国特許公報第5869438号の配列番号2にも記載)を示す。米国特許公報第5869438号が参照により本明細書に組み込まれる。
【図13】図13は配列番号6、アエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)に由来するバリアント脂質アシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列(国際公開公報第09/024736号の配列番号90にも記載)を示す。国際公開公報第09/024736号が参照により本明細書に組み込まれる。
【図14】図14は、配列番号7、pMS382の成熟タンパク質配列(欧州特許出願第09160655.8号の配列番号1にも記載)を示す。欧州特許出願第09160655.8号が参照により本明細書に組み込まれる。
【図15】図15は、配列番号8、pMS382のヌクレオチド配列(欧州特許出願第09160655.8号の配列番号52にも記載)を示す。
【実施例1】
【0250】
実施例1−焼成実験
成分
Reform小麦粉と呼ばれるReform DK2007-00113標準デニッシュ小麦粉。
乾燥酵母菌 1.5%
塩 1.5%
グラニュー糖 250〜400 1.5%
ショートニング 1.0%
水 59%
プロピオン酸カルシウム 0.3%
アスコルビン酸 10ppm。
【0251】
【表4】

アルファアミラーゼ混合物(Alpha Amylase Blend)及びアスコルビン酸で最適化。
柔軟性測定値が8日目以降 (after more than 7 days) に必要である場合にプロピオン酸カルシウムが用いられる。
【0252】
酵素
GRINDAMYL(登録商標)A1000−生地中およそ4.1mg/kgの酵素濃度(生地中4.1ppmの酵素)に相当する、80ppmの調合製品がすべての実験で用いられた。
【0253】
GRINDAMYL(登録商標) H 121−0.15g調合H121/kgに相当する、150ppmの調合キシラナーゼ製品がすべての実験で用いられた。これは、0.20mgキシラナーゼタンパク質/kg小麦粉(生地中0.2ppmの酵素)の用量である。
【0254】
Novamyl 1500(登録商標)−生地中およそ1.5mg/kgの酵素濃度(生地中1.5ppmの酵素)に相当する、300ppmの調合製品が実験で用いられた。
【0255】
GRINDAMYL(登録商標)MAX-LIFE U4−いくつかの試験でさらなる酵素として50ppmの用量で用いられた。これは抗劣化酵素の一例である。
【0256】
GRINDAMYL(登録商標)EXEL 16−250ppmの調合製品がいくつかの試験で用いられた。用量は、1.03mg/kg小麦粉(生地中1ppmの酵素)だった。
【0257】
YieldMax(登録商標)(No. 3461)−860ppmの調合製品がいくつかの試験で用いられた。用量は、生地中2〜5ppmの酵素タンパク質だった。
【0258】
Lipopan F(配列番号4)−いくつかの試験において調合製品100ppmの用量で用いられた。
【0259】
Lipase 3(配列番号3)は、いくつかの試験において調合製品100ppmの用量で用いられた。
【0260】
EDS 218は、いくつかの試験において生地中調合製品163ppm及び酵素タンパク質約1ppmの用量で用いられた。
【0261】
GRINDAMYL Captive POWERfreshは、いくつかの試験において調合製品600ppmの用量で用いられた。
【0262】
配列番号6に示されるアエロモナス・サルモニシダに由来するバリアント脂質アシルトランスフェラーゼ。
【0263】
上の酵素のそれぞれが、生地中約10ppmで用いられてもよい。
【0264】
手順
1)すべての成分及び適切な酵素を1分間、DIOSNA社製混合器SP 12 -4/FUを用いてゆっくり混合する−水を添加する
2)2分間低速−5.5分間高速で混合する(「DKトースト」プログラム("DK toast” prog.))
3)生地温度はおよそ24〜25℃でなければならない
4)生地をキャビネット中で10分間、30℃で静置する
5)4つの生地切片を750gで定量する
6)生地切片を5分間、周囲環境下で静置する
7)Glimek社製ベーキングシステムローラーBM1上で成形する;1:4−2:4−3:14−4:12−幅:10外側
8)生地切片をDKトースト缶(DK toast tins)に入れる−3つは蓋で密封される−1つは体積測定のために開いておく
9)プルーフィング:33℃、85%の相対湿度で60分間−プロピオン酸カルシウムを用いる場合、又は、33℃、85%の相対湿度で50分間−プロピオン酸カルシウムを用いない場合
10)12秒間のスチームを伴う30分間、220℃での焼成−20分後にダンパー(damper)を開く(Miweプログラム2(Miwe prog. 2))
11)焼成後、パンを缶から取り出す
12)重量及び体積の測定前に、70分間、周囲環境下でパンを冷却する
【0265】
硬さは、焼成2時間後、1日後、6日後及び11日後に、下に記述されるパンのテクスチャ特性分析を用いて測定されてもよい。
【0266】
パンのテクスチャ特性分析(Texture Profile Analysis of Bread)
パンの硬さ、まとまり(cohesiveness)及び弾力性が、イギリスのStable Micro Systems社製のテクスチャ分析器を用いたテクスチャ特性分析によりパン切片を分析することにより決定されてもよい。使用されるプローブはアルミニウムであり、50mmの直径を有していた。
【0267】
パンが12.5mmの厚さの切片へとスライスされた。切片は直径45mmを有する円形の小片へと切り出され、個々に測定された。個々の小片の重量もまた任意で、パンクラム(breadcrumb)の硬さ/グラムの決定のために測定されてもよい。
【0268】
以下のセッティングが使用された:
試験前速度:2mm/s
試験速度:2mm/s
試験後速度:10mm/s
破断試験距離:1%
距離:40%
力:0.098N
時間:5.00秒
カウント:5
ロードセル:5kg
トリガータイプ:オート−0.01N
【0269】
パン切片を40%圧縮するのに必要な圧力量(ヘクトパスカル、HPa)が、力(ニュートン、N)をプローブの直径(ミリメートル、mm)で割ったものとして計算される。
【0270】
パンの硬さ(ヘクトパスカル/グラム、HPa/g)が、パン切片を40%圧縮するのに必要な圧力をパンのグラム数で割ることにより決定される。
【0271】
結果
図1は、焼成2時間後の結果を示す。見てわかるように、アミラーゼ(特に非マルトース生成型アミラーゼ)と組み合わせた脂質分解酵素の使用は、パンの初期の硬さを増加させた。
【0272】
図2及び図3は、初期の硬さからの硬さの増加(すなわち、焼成2時間後よりもあとの硬さの増加)を示す。
【0273】
見てわかるように、アミラーゼ(配列番号1に記載の非マルトース生成型アミラーゼ)と脂質分解酵素との組合せは、このアミラーゼ及び/又は脂質分解酵素が添加されなかった場合の対照酵素と比較して、硬さの増加を一定期間にわたり低下させた。
【0274】
図4〜図7は、脂質分解酵素(それぞれLipopan F、Lipase 3(配列番号3)、Grindamyl EXEL 16、及びYieldmax)と組み合わせてのアミラーゼ(配列番号1に記載の非マルトース生成型アミラーゼ)の使用と関連する、初期の硬さの増加及びその後の硬さの減少の両方(すなわち、パンストック性の向上)を示す。
【0275】
上の明細書において言及されたすべての刊行物が、参照により本明細書に組み込まれる。本発明に記述された方法及び系の様々な修正及びバリエーションが、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなしに、当業者に明らかであろう。本発明が特定の好ましい実施形態に関して記述されたとはいえ、請求項に記載の本発明がかかる特定の実施形態に不当に限定されるべきでないことは理解されるべきである。実際に、生化学及び生命工学又は関連分野を専門とする当業者にとって自明な、本発明を実施するために記述された様式の様々な修正は、以下の請求項の範囲内であることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンのストック性向上のためのアミラーゼ及び脂質分解酵素の使用。
【請求項2】
アミラーゼが非マルトース生成型アミラーゼである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
アミラーゼが、
a)配列番号1に記載のアミノ酸配列;又は
b)配列番号1と少なくとも75%の同一性を有し、且つ、非マルトース生成型アミラーゼをコードするアミノ酸配列
を含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
脂質分解酵素が、ホスホリパーゼ活性、グリコリパーゼ活性、トリアシルグリセロール加水分解活性、脂質アシルトランスフェラーゼ活性、及びそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される1又は2以上の活性を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
脂質分解酵素が、
a)配列番号2又は配列番号9に記載のアミノ酸配列;
b)配列番号3に記載のアミノ酸配列;
c)配列番号4に記載のアミノ酸配列;
d)配列番号5に記載のアミノ酸配列;又は
e)脂質分解酵素をコードし、a)〜d)の配列のいずれかと少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列
のうち、1又は2以上のアミノ酸配列を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
キシラナーゼ及び/又は抗劣化アミラーゼ等のさらなる酵素が存在する、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
a)配列番号1に記載のアミラーゼ又は配列番号1と少なくとも75%の同一性を有する非マルトース生成型アミラーゼを生地に対し10ppmまでの量で添加すること;及び
b)脂質分解酵素を生地に対し10ppmまでの量で添加すること
を含む、生地の調製方法。
【請求項8】
使用される脂質分解酵素の量が生地に対し0.2〜2ppmである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
c)配列番号1に記載のアミラーゼ又は配列番号1と少なくとも75%の同一性を有する非マルトース生成型アミラーゼ;及び
d)脂質分解酵素
を含み、アミラーゼ及び脂質分解酵素の量がそれぞれ生地に対し10ppmまでである生地。
【請求項10】
請求項9の生地を焼成することにより調製される焼き製品。
【請求項11】
a)少なくとも7HPa/gの初期の硬さ;
b)以下の焼成2時間後からの硬さの変化:
i.4日後に12HPa/g以下;及び/又は
ii.6日後に15HPa/g以下;及び/又は
iii.11日後に20HPa/g以下
を有するパン。
【請求項12】
a)少なくとも7HPa/gの初期の硬さ;
b)以下の焼成2時間後からの硬さの変化:
i.4日後に初期の硬さの1.7倍以下;及び/又は
ii.6日後に初期の硬さの2.1倍以下;及び/又は
iii.11日後に初期の硬さの2.9倍以下
を有するパン。
【請求項13】
実施例に言及することにより本明細書に実質的に記述されている使用。
【請求項14】
実施例に言及することにより本明細書に実質的に記述されている方法。
【請求項15】
実施例に言及することにより本明細書に実質的に記述されている生地。
【請求項16】
実施例に言及することにより本明細書に実質的に記述されている焼き製品。
【請求項17】
実施例に言及することにより本明細書に実質的に記述されているパン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−527230(P2012−527230A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511396(P2012−511396)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052228
【国際公開番号】WO2010/134035
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(397060588)デュポン ニュートリション バイオサイエンシーズ エーピーエス (67)
【Fターム(参考)】