説明

便器

【課題】脱臭剤の交換が不要で、かつ長期にわたってボウル部内を簡単に脱臭できる便器を提供する。
【解決手段】便器本体2のボウル部3とそのボウル部3に載置される便座4とボウル部3の上方を便座4とともに覆う便蓋5が設けられた便器1において、便座4および便蓋5には、便蓋5を閉じた状態でボウル部3内の空気中に含まれる臭気成分を吸着する吸着材料からなる吸着手段6とこの吸着手段6を加熱して吸着した臭気成分をボウル部3内の空気中に放出させる加熱手段7とが設けられ、便器本体2には、便蓋5を閉じた状態で加熱手段7により吸着手段6から放出した臭気成分を含むボウル部3内の空気を外部に排出する排気手段8が設けられていることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に関し、さらに詳しくは、ボウル部内を脱臭する機能を備えた便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、便器本体のボウル部の上部を便座部分とともに覆う便蓋が設けられた便器において、便蓋に脱臭剤を設けてボウル部内を脱臭する便器が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2002−355193号公報
【特許文献2】実開平7−25900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、以上の脱臭剤が設けられた便器においては、長期間の使用によって脱臭剤の吸着能力が飽和して脱臭効果が薄れてしまう。この場合、ボウル部内の臭気を十分に脱臭しきれず便蓋を開けたときに臭気が拡散してしまい、使用者に不快感を与えるという問題があった。また、脱臭剤の脱臭効果が薄れたときには脱臭剤を交換する必要があり、その交換のための手間がかかってもいた。
【0004】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、脱臭剤の交換が不要で、かつ長期にわたってボウル部内を簡単に脱臭できる便器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の便器は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0006】
第1に、便器本体のボウル部とそのボウル部に載置される便座とボウル部の上方を便座とともに覆う便蓋が設けられた便器において、便座および便蓋には、便蓋を閉じた状態でボウル部内の空気中に含まれる臭気成分を吸着する吸着材料からなる吸着手段とこの吸着手段を加熱して吸着した臭気成分をボウル部内の空気中に放出させる加熱手段とが設けられ、便器本体には、便蓋を閉じた状態で加熱手段により吸着手段から放出した臭気成分を含むボウル部内の空気を外部に排出する排気手段が設けられていることを特徴とする。
【0007】
第2に、上記第1の便器において、排気手段は、水流圧を利用してボウル部内の空気を吸引排出するアスピレータであることを特徴とする。
【0008】
第3に、上記第1の便器において、排気手段は、真空ポンプであることを特徴とする。
【0009】
第4に、上記第1から第3のいずれかの便器において、排気手段で外部に排出される空気は、ボウル部内の封水を外部に排水する排水路に排出されることを特徴とする。
【0010】
第5に、上記第1から第4のいずれかの便器において、便器本体には、便器の不使用の時間帯を判別して加熱手段と排気手段の作動を実行する自動加熱排気制御手段が設けられていることを特徴とする。
【0011】
第6に、上記第1から第5のいずれかの便器において、便器本体には、便蓋を閉じた状態に保持するロック手段が設けられており、加熱手段と排気手段の作動が実行されている間は便蓋が閉じた状態に保持されていることを特徴とする。
【0012】
第7に、上記第6の便器において、便器本体には、人体の在、不在を検知する人体検知手段と、この人体検知手段からの検知信号に基づいて便蓋を自動開閉する便蓋自動開閉機構が設けられており、前記便蓋自動開閉機構は便蓋を閉じた状態に保持するロック手段としての機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記第1の発明によれば、吸着材料からなる吸着手段によりボウル部内が脱臭されるため、便蓋を開けたときに臭気が拡散せず使用者に不快感を与えることはない。また、加熱手段により吸着手段を加熱して吸着手段から臭気成分を放出させることによって、吸着手段の臭気成分の吸着能力を再生することができる。したがって、吸着手段の交換が不要となり、交換する手間がなくなる。さらに、吸着手段から放出された臭気成分を含むボウル部内の空気は排気手段により外部に排気されるので、便蓋を開けたときに臭気が拡散せず使用者に不快感を与えることはない。
【0014】
上記第2の発明によれば、アスピレータが安価であるためコスト安になる。
【0015】
上記第3の発明によれば、吸引排気出力や吸引排出時間の制御が簡単に行えるようになる。
【0016】
上記第4の発明によれば、送風ファンや脱臭フィルターを介してトイレルーム内に排出する場合と比べて、送風ファンや脱臭フィルター等の処理設備が不要となるのでコスト安になる。
【0017】
上記第5の発明によれば、便器の不使用の時間帯を判別して、吸着手段の吸着能力の再生とボウル部内の排気が行われるため使い勝手のよいものとなる。
【0018】
上記第6の発明によれば、ロック手段が設けられていることにより、使用者が加熱手段や排気手段の作動中に誤って便蓋を開くことがなくなるため、加熱した吸着手段に触れて火傷を負う危険がなくなる。また、ボウル部内の臭気が確実に排気されるので、使用者に不快感を与えることはない。
【0019】
上記第7の発明によれば、より一層使い勝手のよい便器とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は本実施形態の便器を示す概略斜視図であり、図2は便器の側面断面図である。図3(a)(b)は図2の便器の要部拡大図である。
【0022】
本実施形態の便器1は、スカート部2aの内部にボウル部3が形成された便器本体2を備えており、ボウル部3内には封水A(溜め水)が一定の水位で溜められている。
【0023】
ボウル部3の上方には使用者が着座可能な便座4が載置され、ヒンジ12によって揺動可能とされている。その便座4の上方には便蓋5が同様にヒンジ12によって揺動可能に設けられており、ボウル部3の開口部を開放または閉鎖可能にしている。便蓋5はボウル部3の上方を覆うような形状であり、例えば図3(a)(b)では、便蓋5の外周壁の下端が、閉じ位置で便器本体2の上面に当接される。また、ボウル部3内を略気密に保つために便器本体2の上面にパッキン13を設け、パッキン13の上面に便蓋5の外周壁の下端を当接するようしてもよい。なお、便蓋5の形状としては、便蓋5の外周壁の下端が、閉じ位置で便座4の上面に当接されるような構成であってもよい。
【0024】
本実施形態では、図2に示すようにターントラップ機構14を備えた便器1を使用しているが、これに限定されるものではなく、水洗タンクを備えたものであってもよい。このターントラップ機構14は、一端がボウル部3に連結され他端が自由端となっている蛇腹状ホース15を有しており、モータの駆動により蛇腹状ホース15の自由端が上下方向に回動する。通常時は自由端は上方向となっているが、用便後の洗浄時には下方向に回動させ、ボウル部3内の封水が汚物とともに排水路11から外部排水管に排水される。
【0025】
図1や図3(a)に示すように、便蓋5の裏面には、便蓋5を閉じた状態でボウル部3内の空気中に含まれる臭気成分を吸着する吸着材料からなる吸着手段6とこの吸着手段6を加熱して吸着した臭気成分をボウル部3内の空気中に放出させる加熱手段7とが設けられている。図3(b)に示すように、便座4の裏面に上記吸着手段6と加熱手段7が設けられていてもよいが、この場合、便座4裏面に設けられた吸着手段6と加熱手段7とがボウル部3と干渉しないように、便座4の内周面側に設けられるようにすることが考慮される。
【0026】
吸着手段6としては、例えば、ゼオライト、木炭、竹炭、シラス、珊瑚砂、珪藻土、軽石等の無機質多孔質材料、その他の吸着材料を塗膜に担持させたものを例示することができる。具体的には、有機系あるいは無機系塗料に前記吸着材料を混合し、これを所定の箇所に塗布して塗膜を形成させることで得ることができる。
【0027】
加熱手段7は、例えば、電熱線が埋め込まれた加熱ヒータ71を例示することができ、吸着手段6と近接して設けられることが好ましい。図3(a)(b)では便蓋5または便座4の裏面に加熱手段7としての加熱ヒータ71が断熱材や真空層等の断熱層16を介して配設され、その加熱ヒータ71の表面に吸着材料を担持させた塗膜が形成される。加熱ヒータ71の加熱範囲としては、塗膜が有機系の場合には40℃〜120℃程度、無機系の場合には40℃〜150℃程度とすることができる。このとき、吸着した臭気成分をより好適に放出させるために、まず加熱ヒータ71で吸着手段6を105℃程度に加熱して水分を蒸発させる。その後、所定の温度に加熱して臭気成分を放出させることで、吸着手段6の臭気成分の吸着能力を再生することができる。この加熱ヒータ71の温度や加熱時間の制御は、後述するアスピレータ81のポンプ24の駆動とともに配線72を通じて制御部27で行われる。
【0028】
排気手段8は、例えば、水流圧を利用してボウル部3内の空気を吸引排出するアスピレータ81を用いることができる。
【0029】
図4に、アスピレータ81の側面断面図を示す。このアスピレータ81は、仕切り板17によって上部室18と下部室19とに仕切られており、下部室19には水道水配管20から分岐させた分岐配管21が接続されて、水道水が一定の水位で溜められている。上部室18には吸入管22と吐出管23を備えたポンプ24が配置され、ポンプ24の駆動に伴い下部室19の貯留水を吸入管22より吸入して吐出管23より再び下部室19に排水している。吐出管23はボウル部3に連通する空気吸引管25と連結されており、ポンプ24の駆動によって吐出管23から貯留水が排水されると吐出管23に水流が発生する。この水流圧で空気吸引管25が負圧となって、ボウル部3内の臭気成分を含む空気が吸引される。吸引された空気は吐出管23の水流により下部室19の貯留水中に排出されると、貯留水の水面上に浮かびこの水面と仕切り板17との空間に溜まる。溜まった空気は、下部室19の側壁に連結された空気排出管26により外部に排出される。本実施形態では、空気排出管26を排水路11に連結しており、例えば、送風ファンや脱臭フィルターを介してトイレルーム内に排出する場合と比べて、送風ファンや脱臭フィルター等の処理設備が不要となるのでコスト安になる。
【0030】
アスピレータ81以外の排気手段8としては、例えば、モータの駆動で回転される吸入ファンであってもよいし、あるいはロータリーポンプやディフュージョンポンプ等の真空ポンプを用いてもよい。真空ポンプを用いた場合には、吸引排気出力や吸引排出時間の制御が簡単に行えるようになるため好ましい。
【0031】
上記加熱ヒータ71の温度や加熱時間の制御およびアスピレータ81のポンプ24駆動の制御は制御部27で行われるが、上記制御を自動加熱排気制御手段としての自動加熱排気制御装置28を設けて所定のアルゴリズムに基づいて加熱と排気を実行させるようにしてもよい。すなわち、図5に示すフローチャートのように、便器1の不使用の時間帯を判別して加熱と排気を実行するようにする。以下、具体的に説明する。
【0032】
まず便器1の不使用時間帯を判別し(ステップS100)、便器1の不使用時間帯であれば、加熱ヒータ71で吸着手段6を105℃程度まで加熱し、所定時間その温度を保持して付着した水分を蒸発させる。その後、所定の温度で吸着手段6を加熱し、吸着手段6に吸着した臭気成分をボウル部3内の空気中に放出させる(ステップS101)。これによって吸着手段6の臭気成分の吸着能力が再生する。次に、アスピレータ81のポンプ24を駆動させボウル部3内の臭気成分を含む空気を外部に排出する(ステップS102)。
【0033】
便器1の不使用時間帯の判別は、具体的には、図1に示すように便器本体2に設けられた人体検知センサ91または便座センサ92からの検知信号に基づいて、便器1の不使用の時間帯情報を蓄積し、その不使用情報と予め定められた基準不使用時間とを所定の時間毎に比較することにより、便器1の時間帯を順次更新する。
【0034】
例えば、図6の便器1の不使用時間帯情報が蓄積される不使用時間帯情報蓄積テーブルで示すように、24時間(1日)を30分毎に区切り、区間0〜47に分ける。人体検知センサ91の検知信号により、便器1の使用を検知すると、その使用時間が属する区間に使用回数を計上していく。例えば、3日の0:00〜0:30の間(区間0)には、便器1の使用回数が1回あったことを意味する。
【0035】
予め定められた基準不使用時間としては、便器1の使用がない区間が、例えば6区間(3時間)以上連続である場合を基準不使用時間として、自動加熱排気制御装置28の記憶手段等に記憶させておく。その基準不使用時間と、前日の不使用時間帯情報を比較し、不使用の時間帯とする。
【0036】
例えば、9日の区間5〜10では便器1の使用がなく、6区間連続で不使用であり、この時間、すなわち区間5〜10を便器1の不使用の時間帯であると判別する。更に、自動加熱排気制御装置28では、日毎に前日の不使用の時間帯情報に基づいて、順次、便器1の不使用の時間帯を更新する。
【0037】
あるいは、前日のみの不使用の時間帯情報に基づくのではなく、前7日間の不使用の時間帯情報に基づいて、便器1の不使用の時間帯を判別する構成としてもよい。例えば、基準不使用時間として、便器1の使用回数がない区間が4区間(2時間)以上連続かつ、同区間で前7日間、便器1の使用がない場合を基準不使用時間としてもよい。
【0038】
例えば、3日から9日の7日間のいずれの日も区間5〜8では便器1の使用がなく、4区間連続で不使用であり、この期間、すなわち、区間5〜8を便器の不使用の時間帯であると判別してもよい。この場合も、日毎に前7日間の情報に基づいて、便器1の不使用の時間帯を順次更新する。
【0039】
また、例えば、使用者の生活パターンに応じて、土日と平日を異なる蓄積テーブルとする、あるいは曜日毎に異なる蓄積テーブルとして、それぞれに便器1の不使用時間帯情報を蓄積、比較、更新、判別を行ってもよい。
【0040】
なお、本実施形態で図示した不使用時間帯情報蓄積テーブルは、一例に過ぎず、便器1の不使用の時間帯を蓄積するものであればどのようなものでもよく、30分毎に区切った区間を1時間毎や15分毎に区切る等どのようにしてもよく、また基準不使用時間も前記した例に限られず、どのようなものとしてもよい。
【0041】
このように、便器1の不使用の時間帯を判別して吸着手段6の吸着能力の再生とボウル部3内の排気が行われるため使い勝手のよいものとなる。
【0042】
本発明の便器1は、別の実施形態として、便蓋5を閉じた状態に保持するロック手段が便器本体2に設けられていてもよい。このロック手段によって便蓋5を閉じた状態に保持している間に前述した加熱と排気を実行するようにする。これによって、使用者が加熱手段7や排気手段8の作動中に誤って便蓋を開くことがなくなるため、加熱した吸着手段6に触れて火傷を負う危険がなくなる。また、ボウル部3内の臭気が確実に排気されるので、使用者に不快感を与えることはない。
【0043】
図7にロック手段を備えた便器1の概略斜視図を示す。なお、ロック手段以外の構成は前述した実施形態と同様であるため、同一符号を付し、説明を省略する。
【0044】
ロック手段は、例えば、便器本体2に配設された電磁石29と、便蓋5に配設された磁性体30とで構成され、便蓋5が閉じた状態となった場合に、便蓋5に配設された磁性体30と近接する位置に電磁石29が配設されている。磁性体30は、鉄板などから構成され、電磁石29の配設箇所に対応する便蓋5の所定位置に配設されている。
【0045】
電磁石29は、駆動電源からの通電により励磁され、磁性体30を吸引し、便蓋5の閉じた状態を保持、すなわち、ロック動作する。
【0046】
なお、それぞれの配設箇所及び形状は図示したものに限られず、便蓋5を閉じた状態で、電磁石29と磁性体30とが近接する位置関係、すなわち、電磁石29への通電により便蓋5の閉じた状態を保持できる箇所に、それぞれを配設する構成とすればよい。また、便蓋5側に電磁石29を配設し、便蓋・便座設置部35側に磁性体30を配設する構成としてもよい。さらに、本実施形態では、電磁石29および磁性体30を左右両方に、それぞれ配設しているが、左右いずれか一方のみにそれぞれを配設する構成としてもよい。さらにまた、磁性体30としては、鉄板に限られず、電磁石29の磁力に吸引されるものであればどのようなものでもよく、ニッケルやコバルトなどで構成してもよい。また、磁性体30を永久磁石や電磁石としてもよい。これにより、より強固に便蓋5の閉じた状態を保持することができる。
【0047】
図8に別のロック手段を示す。(a)は便蓋5の立姿使用者左側部分の下方(便蓋を閉じた状態における下方を指す)に張り出した部分、すなわち張出部の内面側の要部を拡大した図であり、(b)は便蓋・便座設置部35の立姿使用者右側の前方側下部近傍の要部を拡大した図である。
【0048】
この例では、便蓋5には凹部31を形成し、便器本体2にはロックピン33を設け、ロック手段を構成している。
【0049】
詳しくは、凹部31は、便蓋5の立姿使用者左側部分の張出部の内面側に、ロックピン33が挿嵌される穴を穿設した構成としており、ロックピン33は、便蓋・便座設置部35の立姿使用者右側の前方側下部近傍に内設されたソレノイド32から突出駆動されて、凹部31へ挿嵌され、便蓋5の閉じた状態を保持する、すなわちロック動作する構成としている。
【0050】
なお、本例でも便器1の左右両方に、それぞれ凹部31とロックピン33を形設した構成としているが、左右いずれか一方のみにそれぞれを形設する構成としてもよい。
【0051】
また、凹部31およびロックピン33の形状は、図示したものに限られず、他の形状でもよい。さらに、ロックピン33の駆動は、ソレノイド32による駆動に限られず、例えば、モータ駆動によるピニオンとラックによりロックピン33を突出駆動させる構成としてもよい。
【0052】
前記のように構成された各ロック手段は、図8に示すように、ロック動作制御部34により、電磁石29への通電による磁性体30の吸引、ロックピン33の突出駆動による凹部31へのロックピン33の挿嵌がなされ、それぞれロック動作する構成としている。
【0053】
上記ロック動作制御部34によるロック動作は、上述したように、このロック動作によって便蓋5を閉じた状態に保持している間に加熱と排気が実行されるようにする。このようなロック動作と加熱と排気の実行は、便器1の不使用の時間帯を判別してもよい。これを図9のフローチャートに示す。
【0054】
まず上述した方法で便器1の不使用時間帯を判別し(ステップS200)、便器1の不使用時間帯であれば、ロック動作制御部34によりロック手段で便蓋5を閉じた状態に保持する(ステップS201)。続いて、ロック手段によるロック動作の完了を検知した後、加熱ヒータ71で吸着手段6を105℃程度まで加熱し、所定時間その温度を保持して付着した水分を蒸発させる。その後、所定の温度で吸着手段6を加熱し、吸着手段6に吸着した臭気成分をボウル部3内の空気中に放出させる(ステップS202)。これによって吸着手段6の臭気成分の吸着能力が再生する。次に、アスピレータ81のポンプ24を所定時間駆動させボウル部3内の臭気成分を含む空気を外部に排出する(ステップS203)。吸着手段6の加熱温度が40℃以下になった後、ロックを解除する(ステップS204)。
【0055】
本発明の便器1は、人体の在、不在を検知する人体検知手段9と、この人体検知手段9からの検知信号に基づいて便蓋を自動開閉する便蓋自動開閉機構10が設けられていてもよい。この人体検知手段9は、図1に示した人体検知センサ91と同様である。便蓋自動開閉機構10の模式図を図10に示す。
【0056】
便蓋自動開閉機構10は、本実施形態では、便蓋・便座設置部35と便蓋5の枢着部の一方に内設された、ウォームギア36と、ウォームギア36が取り付けられたウォーム軸38と、ウォーム軸38を回転駆動する駆動モータ37とを備え、便蓋5の枢軸に取り付けられたウォームホイール39とウォームギア36とが噛合される構成としている。
【0057】
なお、図10では、便蓋5は閉じた状態を破線で示しており、その他の構成は省略している。
【0058】
前記のように構成された便蓋自動開閉機構10は、自動開閉制御部40の制御により人体検知センサ91からの検知信号に基づいて、便蓋5を自動開閉する。すなわち、人体の在を検知すると、駆動モータ37を開方向に駆動して、便蓋5を開駆動し、人体の不在を検知すると、駆動モータ37を閉方向に駆動して、便蓋5を閉駆動する構成としている。ここで、本実施形態では、便蓋自動開閉機構10は、通電の制御、すなわち通電が停止されることにより便蓋5の閉じた状態を保持するロック手段として機能する。すなわち、通電が停止されると、人体の在を検知しても便蓋5の開駆動をせず、閉状態を保持する。特に、本実施形態では、便蓋自動開閉機構10として、ウォームギア36とウォームホイール39とを適用しているので、非通電状態でも摩擦抵抗が高く、便蓋5が開状態となることを防止することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、便蓋5の自動開閉機構として、ウォームギア36とウォームホイール39とを適用して、自動開閉を行う構成としているが、通常のギアとギアとで構成してもよく、その場合には、それぞれのギア比を摩擦抵抗が高くなるように設定することが好ましい。
【0060】
また、便蓋自動開閉機構10への通電の制御として、駆動モータ37の端子を短絡、すなわち閉回路を構成するように制御することで、保持トルクを利用し、便蓋5の閉じた状態を保持する構成としてもよい。
【0061】
上記のような便器1は、ロック手段を、便蓋自動開閉機構10への通電の制御、すなわち、通電の停止により機能させる構成としているので、簡易な構成かつ制御を容易に行えるようになり、より一層使い勝手のよい便器1とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】吸着手段、加熱手段および排気手段を備えた便器を示す概略斜視図である。
【図2】吸着手段、加熱手段および排気手段を備えた便器の側面断面図である。。
【図3】(a)(b)は吸着手段、加熱手段および排気手段を備えた便器の要部拡大図である。
【図4】アスピレータの側面断面図である。
【図5】第1実施形態の便器の基本動作を示すフローチャートである。
【図6】不使用時間帯情報蓄積テーブルである。
【図7】ロック手段を備えた便器の概略斜視図である。
【図8】(a)は便蓋の要部拡大図であり、(b)は便器本体の要部拡大図である。
【図9】ロック手段を備えた便器の基本動作を示すフローチャートである。
【図10】便蓋自動開閉機構の模式図である。
【符号の説明】
【0063】
1 便器
2 便器本体
3 ボウル部
4 便座
5 便蓋
6 吸着手段
7 加熱手段
8 排気手段
9 人体検知手段
10便蓋自動開閉機構
11 排水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体のボウル部とそのボウル部に載置される便座とボウル部の上方を便座とともに覆う便蓋が設けられた便器において、便座および便蓋には、便蓋を閉じた状態でボウル部内の空気中に含まれる臭気成分を吸着する吸着材料からなる吸着手段とこの吸着手段を加熱して吸着した臭気成分をボウル部内の空気中に放出させる加熱手段とが設けられ、便器本体には、便蓋を閉じた状態で加熱手段により吸着手段から放出した臭気成分を含むボウル部内の空気を外部に排出する排気手段が設けられていることを特徴とする便器。
【請求項2】
排気手段は、水流圧を利用してボウル部内の空気を吸引排出するアスピレータであることを特徴とする請求項1に記載の便器。
【請求項3】
排気手段は、真空ポンプであることを特徴とする請求項1に記載の便器。
【請求項4】
排気手段で外部に排出される空気は、ボウル部内の封水を外部に排水する排水路に排出されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の便器。
【請求項5】
便器本体には、便器の不使用の時間帯を判別して加熱手段と排気手段の作動を実行する自動加熱排気制御手段が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の便器。
【請求項6】
便器本体には、便蓋を閉じた状態に保持するロック手段が設けられており、加熱手段と排気手段の作動が実行されている間は便蓋が閉じた状態に保持されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の便器。
【請求項7】
便器本体には、人体の在、不在を検知する人体検知手段と、この人体検知手段からの検知信号に基づいて便蓋を自動開閉する便蓋自動開閉機構が設けられており、前記便蓋自動開閉機構は便蓋を閉じた状態に保持するロック手段としての機能を有することを特徴とする請求項6に記載の便器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−81962(P2008−81962A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260987(P2006−260987)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】