便座暖房装置
【課題】 便座に配備された発熱体に供給する電力をより適切に制御し、便座暖房開始時の過電流を抑制できる便座暖房装置を提供すること。
【解決手段】 便座暖房装置1は、便座2aと、便座2aに配備したヒータ3aと、便座2aの温度を検知するサーミスタ4と、便座2aの温度を制御する制御部6と、を備え、制御部6はローパスフィルタ20、加算器8、コントローラ10、ヒータ回路40を備える。予め設定された便座暖房設定温度T0はローパスフィルタ20によりT0より小さな暖房変動目標温度に低減され、加算器8により算出される暖房変動目標温度と便座検知温度との偏差はコントローラ10に伝達され、コントローラ10はヒータ3aに供給する電力のデューティ演算をして、このデューティに基づき、ヒータ3aに電力が供給される。
【解決手段】 便座暖房装置1は、便座2aと、便座2aに配備したヒータ3aと、便座2aの温度を検知するサーミスタ4と、便座2aの温度を制御する制御部6と、を備え、制御部6はローパスフィルタ20、加算器8、コントローラ10、ヒータ回路40を備える。予め設定された便座暖房設定温度T0はローパスフィルタ20によりT0より小さな暖房変動目標温度に低減され、加算器8により算出される暖房変動目標温度と便座検知温度との偏差はコントローラ10に伝達され、コントローラ10はヒータ3aに供給する電力のデューティ演算をして、このデューティに基づき、ヒータ3aに電力が供給される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座表面を所定の温度に暖房する便座暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の便座暖房装置として、便座を暖める熱源と、人体検出手段と、便座内部の温度を検出する便座温度検出手段と、熱源及び人体検出手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は人体検出を行うと熱源に複数の通電率にて一定時間、電力を供給した後、複数の通電率よりも高い一定の通電率にて便座温度が所定時間内に着座可能温度に達するように制御する便座装置が開示されている。上記の所定時間は、室温検出手段により検出された室内の温度または便座温度検出手段により検出された便座の温度に応じて決定される。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、加熱手段が裏面に付設された金属製の便座と、加熱手段と商用電源との間に介装された開閉手段と、便座への使用者の接近のときのみ開閉手段で商用電源から加熱手段への通電を行わせる制御手段と、からなり、便座の裏面に、保温用の別の加熱手段を設けた暖房便座装置が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
また、便座部と、便座部を加熱する発熱体と、便座部の温度を検出する温度検出部と、使用者の存在を検知する人体検知部と、制御部と、を備え、制御部は人体検知部により使用者の存在が検知された場合に発熱体への通電を行い、使用者が冷たいと感じない便座の最低温度である限界温度まで便座部の温度が第1の温度勾配で上昇するように第1の電力で第1の時間駆動した後、使用者が予め設定した便座設定温度よりも高い温度まで便座部の温度が第1の温度勾配よりも緩やかな第2の温度勾配で上昇するように第1の電力よりも小さい第2の電力で発熱体を第2の時間駆動する便座装置が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−7018号公報
【特許文献2】特開2003−79539号公報
【特許文献3】特許第4140627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1によれば、便座の温度に応じて熱源であるヒータに通電する所定時間を決定することで、必要最低限の時間で便座の温度を着座可能温度に到達できる。しかし、人体検知をしてから一定時間、ヒータに供給される電力の複数の通電率は、予め決定されており、人体検知時の便座温度に応じては決定されず、また人の入室のたびに高い一定の通電率の電力がヒータに供給される。従って、頻繁に人の出入りがある公共施設などに設置された便座装置、あるいは、家庭における通勤や通学のため、同一時間帯に連続的に使用される便座装置では、時間帯によって便座の温度が高くなり過ぎる問題がある。
【0007】
また、便座装置の便座温度制御は、着座可能温度(目標値)と便座検出温度(制御量)とを比較して、この比較値に基づき電源に電力を供給するフィードバック制御ではなく、オープンループ制御によってなされる。このため、ヒータに異常が生じても、通常通りヒータに電力が供給され、着座に快適な便座温度が得られない問題がある。
【0008】
また、特許文献2によれば、制御手段は、人体検知センサによりトイレット室に人が入ったことを検知すると、予め設定された便座の設定温度と人を検知した時点における便座温度との差異に応じて、環境温度との相関において、加熱手段であるヒータに電力が供給され、便座が急速加熱される。しかし、ヒータへの電力供給がなされるまでヒータ線は便座と同じ温度まで冷えているため、ヒータの電気抵抗が小さくなっており、通電開始時にヒータへ大電流が流れ、過電流になる。この過電流により、トイレット室内の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの通電が遮断される場合がある。
【0009】
また、便座暖房の温度は、便座の検出温度がフィードバックされることなく、予め設定された電力のデューティ値に基づき、ヒータへの通電がオープンループ制御される。このため、ヒータに異常が生じても、通常通りヒータに電力が供給され、着座に快適な便座温度が得られない問題がある。
【0010】
また、特許文献3によれば、制御部は、使用者の存在を検知すると便座の温度を検出し、この検出温度に対応するヒータ制御テーブルに基づいて発熱体への通電制御を行う。便座の温度制御はオープンループ制御で、フィードバック制御ではない。ヒータ制御テーブルは、トイレットルームの室温をある程度考慮したものであるが十分ではなく、また、人が便座に着座した際の体温を考慮していない。このため、便座の温度は便座設定温度からずれる問題がある。
【0011】
また、特許文献1〜3では、上述したように、便座は、検出された便座温度をフィードバックすることなく、ヒータ制御テーブルに基づき昇温される。このため、ヒータに異常が生じても、通常通りヒータに電力が供給され、着座に快適な便座温度が得られない問題がある。さらに、ヒータに電力を供給する電源の電圧変動が生じると、便座の温度は便座設定温度に暖房されない問題がある。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、便座に配備された発熱体に供給する電力をより適切に制御し、便座暖房開始時の過電流を抑制できる便座暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、便座と、便座への人の接近を検知する入室検知手段と、便座に配備され便座を暖房する発熱体と、便座の温度を検知する温度検知手段と、発熱体に供給する電力をデューティ制御するコントローラと、入室検知手段による人の便座接近検知時から一定時間までは、設定された便座暖房設定温度と温度検知手段により検知された便座検知温度に基づいて便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差より小さな低減偏差をコントローラに出力し、一定時間経過後は、偏差と低減偏差のうちいずれか一方をコントローラに出力する偏差低減手段と、を備え、コントローラは、偏差低減手段の出力に基づき、発熱体に電力を供給するデューティを演算して、発熱体に供給する電力をデューティ制御する、ことである。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、偏差低減手段は、入室検知手段による人の便座接近検知時の便座検知温度に基づいて、一定時間を設定する、ことである。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、偏差低減手段は、便座暖房設定温度を便座暖房設定温度より低い暖房変動目標温度に低減するローパスフィルタと、低減された暖房変動目標温度から便座検知温度を差引いた低減偏差を算出する加算器と、を備え、算出された低減偏差をコントローラに出力する、ことである。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、偏差低減手段は、便座暖房設定温度と便座検知温度との移動平均を算出する移動平均演算手段と、便座暖房設定温度から算出された移動平均を差引いた低減偏差を算出する加算器と、を備え、算出された低減偏差をコントローラに出力する、ことである。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、偏差低減手段は、便座暖房設定温度と便座検知温度との加重移動平均を算出する加重移動平均演算手段と、便座暖房設定温度から算出された加重変動移動平均を差引いた低減偏差を算出する加算器と、を備え、算出された低減偏差をコントローラに出力する、ことである。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、偏差低減手段は、便座暖房設定温度から温度検知手段により検知される便座検知温度を差引いた偏差を算出する加算器と、加算器に接続された初期偏差低減手段と、を備え、初期偏差低減手段は、便座暖房設定温度と、人の便座接近検知時以降に温度検知手段により検知された便座検知温度とに基づき、便座暖房設定温度から便座接近検知時と便座接近検知時以降のうちいずれか一方の便座検知温度を差引いた偏差より小さな低減偏差を出力する偏差低減器と、入室検知手段による人の便座接近検知時から一定時間までは、偏差低減器から出力された低減偏差をコントローラに出力し、一定時間経過後は加算器により算出された偏差をコントローラに出力する切換スイッチと、を備える、ことである。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、便座と、便座への人の接近を検知する入室検知手段と、便座に配備され便座を暖房する発熱体と、便座の温度を検知する温度検知手段と、設定された便座の便座暖房設定温度から温度検知手段により検知された便座検知温度を差引いた偏差を演算して、出力する加算器と、加算器から出力された偏差に基づき、発熱体に供給する電力をデューティ制御するデューティの目標となる基本デューティを出力するコントローラと、入室検知手段による人の便座接近検知時から一定時間までは、コントローラから出力される基本デューティを低減した初期低減デューティを出力し、一定時間経過後は、初期低減デューティと、コントローラから出力される基本デューティのうちいずれか一方を出力する初期デューティ低減手段と、を備え、初期デューティ低減手段の出力に基づき、発熱体に供給する電力をデューティ制御する、ことである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明では、偏差低減手段は、入室検知手段による便座への人の接近が検知された時点(以後、便座接近検知時)から少なくとも一定時間までは、便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差よりも小さな低減偏差を算出し、コントローラへ出力する。これにより、便座接近検知時から少なくとも一定時間は、便座の暖房温度の目標値が便座暖房設定温度より低く、時間の経過に伴い連続的または段階的に変動する。そして、コントローラは、暖房温度の目標値の変動が考慮された低減偏差に基づき、発熱体(以下、ヒータ)に供給する電力のデューティを演算する。演算されたデューティに基づきヒータに供給する電力がデューティ制御され、この供給電力は前述の便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差に基づくデューティによる供給電力より少なくなるように低減される。従って、本発明の便座暖房装置は、便座接近検知時から少なくとも一定時間までは、便座暖房設定温度より低い目標温度に基づき低減された電力がヒータに供給され、便座暖房設定温度に基づいた電力より小さい。結果、電力供給開始時のヒータの温度が低く、電気抵抗が低い状態において生じる過電流を抑制でき、トイレット室の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの遮断を防止できる。
【0021】
また、温度検知手段により検知された便座検知温度をフィードバックして、コントローラにより演算されたデューティに基づき、ヒータに電力を供給して便座の暖房がなされる。結果、本発明の便座暖房装置は、ヒータの抵抗変化あるいは便座温度の異常に対応して適正な便座温度に制御できると共に、トイレット室の温度、使用者の体温などの環境温度あるいは電力供給源の電圧変動に左右されずに便座を所定温度に暖房できる。
【0022】
また、請求項2に記載の発明では、偏差低減手段により、便座への人の接近が検知された時の便座検知温度に基づいて一定時間が設定される。この一定時間の設定により、便座接近検知時から一定時間までは、ヒータの電気抵抗が低い状態であっても、ヒータの電気抵抗に適合した電流が通電され、一定時間以降はヒータの温度上昇により電気抵抗が高くなり急速に加熱するのに十分な大きさの電流を通電できる。結果、本発明の便座暖房装置は、トイレット室の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの遮断を防止できる。
【0023】
また、請求項3に記載の発明では、ローパスフィルタから出力される暖房変動目標温度は、便座暖房設定温度より低く、時間の経過と共に便座暖房設定温度に漸近し、そして時間の経過と共に変化する便座の暖房温度の目標値である。これにより、加算器により算出され、暖房変動目標温度から便座検知温度を差引いた低減偏差は、便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差よりも小さい。この低減偏差がコントローラに伝達される。
【0024】
また、請求項4に記載の発明では、移動平均演算手段から出力される便座温度の移動平均は、便座暖房設定温度より温度が低く、時間の経過と共に便座暖房設定温度に漸近し、そして時間の経過と共に変化する便座の暖房温度の目標値である。これにより、加算器より算出され、移動平均演算手段で算出した便座温度の移動平均から便座検知温度を差引いた低減偏差は、便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差よりも小さい。この低減偏差がコントローラに伝達される。
【0025】
また、請求項5に記載の発明では、加重移動平均演算手段から出力される便座温度の移動平均は、便座暖房設定温度より温度が低く、時間の経過と共に便座暖房設定温度に漸近し、そして時間の経過と共に変化する便座の暖房温度の目標値である。これにより、加算器より算出され、加重移動平均演算手段で算出した便座温度の移動平均から便座検知温度を差引いた低減偏差は、便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差よりも小さい。この低減偏差がコントローラに入力される。
【0026】
また、請求項6に記載の発明では、便座接近検知時から一定時間までは、便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差より小さな低減偏差が、初期偏差低減手段の偏差低減器により出力され、コントローラに伝達される。これにより、便座接近検知時からの一定時間は、便座の暖房温度の目標値が便座暖房設定温度より低い温度になる。
【0027】
また、一定時間経過後は、コントローラには、加算器により便座暖房設定温度から便座検知温度が差引かれた偏差が伝達されるので、フィードバック制御系が形成される。結果、本発明の便座暖房装置は、ヒータの抵抗変化あるいは便座温度の異常に対応して適正な便座温度に制御できると共に、トイレット室の温度、使用者の体温などの環境温度あるいは電力供給源の電圧変動に左右されずに便座を便座暖房設定温度に暖房できる。
【0028】
また、請求項7に記載の発明では、加算器により算出された便座暖房設定温度と便座検知温度との偏差が、コントローラに入力される。コントローラは、入力された偏差に基づき、発熱体(ヒータ)への供給電力を制御するデューティの目標となる基本デューティを演算して、初期デューティ低減手段に出力する。初期デューティ低減手段は、便座接近検知時から少なくとも一定時間までは、基本デューティを低減した低減デューティを出力し、この低減デューティに基づき供給電力がデューティ制御され、ヒータに電力が供給される。従って、便座接近検知時から少なくとも一定時間までの低減デューティに基づく供給電力は、基本デューティに基づく供給電力より少ない。結果、ヒータへの電力供給の初期にヒータの温度が低く、電気抵抗が低い状態において生じる過電流が抑制され、トイレット室の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの遮断を防止できる。
【0029】
また、温度検知手段により検知された便座検知温度を加算器にフィードバックし、加算器により便座暖房設定温度と便座検知温度との偏差が算出される。算出された偏差は、順次、コントローラ、初期デューティ低減手段へ伝達され、初期デューティ低減手段から出力されるデューティに基づき、ヒータに電力が供給されて、便座が便座暖房設定温度に暖房される。従って、便座検知温度をフィードバックして便座温度を制御するフィードバック制御系が形成される。結果、本発明の便座暖房装置は、ヒータの抵抗変化あるいは便座温度の異常に対応して適正な便座温度に制御できると共に、トイレット室の温度、使用者の体温などの環境温度あるいは電力供給源の電圧変動に左右されずに便座を便座暖房設定温度に暖房できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1〜5に係る暖房便座の斜視図である。
【図2】図1の便座部を上側から視た分解斜視図である。
【図3】図2のヒータ部の説明図である。
【図4】実施例1の便座暖房装置の便座暖房制御系のブロック線図である。
【図5】実施例1の便座暖房装置の暖房・保温制御フロー図である。
【図6】実施例1の便座暖房時の暖房変動目標温度、サーミスタの検知温度(便座検知温度)、およびヒータへの供給電力の経過を示す図である。
【図7】実施例2に係る便座暖房装置の便座暖房制御系のブロック線図である。
【図8】実施例3に係る便座暖房装置の便座暖房制御系のブロック線図である。
【図9】実施例4に係る便座暖房装置の便座暖房制御系のブロック線図である。
【図10】図9のブロック線図を変形した本発明に係るブロック線図である。
【図11】実施例5に係る便座暖房装置の便座暖房制御系のブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0032】
(実施例1)
図1は実施例1〜5に係る暖房便座の斜視図であり、図2は図1の便座部を下側からみた分解斜視図である。図3は図2の便座の裏面に接着したヒータ部の説明図であり、下側から視た図である。
【0033】
暖房便座100は、便座部2と、本体部7と、便座部2と本体部7とに跨り配備された便座暖房装置1と、を備える。便座部2は、金属で成形された便座2aと、下部便座カバー2bと、便座2aと下部便座カバー2bとの間に設置されたヒータ部3と、を備える。ヒータ部3は、線状のヒータ(発熱体)3aと、ヒータ3aを挟着する絶縁フィルムを備えた金属箔3b、3bと、により構成され、便座2aの裏面2cに接着される。尚、ヒータ部3は、エッチングまたは印刷処理により金属箔をパターン化した発熱抵抗体を絶縁フィルムで挟着しても良い。
【0034】
便座暖房装置1は、便座2aと、ヒータ3aと、ヒータ部3に設置され便座2aの温度を検知するサーミスタ(温度検知手段)4と、便座への人の接近を検知する入室検知手段5と、本体部7に収納され便座温度を制御する制御部6と、を備える。尚、本実施例では、制御部6は本体部7の内部に設置されているが、本体部7の内部以外、例えば、トイレット室の壁などに設置されるリモートコントローラに配設されても良い。
【0035】
サーミスタ4はヒータ部3の下面の金属箔3bに取付けられ、便座2aの温度はヒータ部3を介在してサーミスタ4により検知される(図3)。ここで、サーミスタ4の検知温度TSを便座2aの温度(以後、便座検知温度TS)とする。
【0036】
入室検知手段5は、トイレット室に人が入室する際など、便座2aへの人の接近を検知するものであり、焦電型赤外線センサあるいは反射型赤外線センサなどの人体検知センサが使用される。本実施例では、暖房便座100の本体部7の図1における左上側角部に設けられる。焦電型赤外センサは対象物である人が動くとオン信号を発生し、反射型赤外センサは人から反射された赤外線を検出してトイレット室に人が入室したことを検知する。また、人体検知センサに代えて、使用者のトイレット室への踏み込みを検知するスイッチ、例えば、トイレット室のドアの開閉に連動してオン・オフするスイッチを使用しても良い。あるいは、便座上蓋(図示せず)の開閉を検知するスイッチでも良い。
【0037】
図4は、予め設定された便座暖房設定温度T0を目標値(入力)とし、制御量(出力)を便座検知温度TSとする便座暖房装置1の暖房便座制御系のブロック線図B1である。ブロック線図B1は、制御部6に配設した偏差低減手段9およびコントローラ10と、ヒータ回路40と、サーミスタ4と、により形成される。偏差低減手段9は、ローパスフィルタ20(以後、LPF20)と、加算器8と、により構成される。ヒータ回路40は、便座2aの裏面に接着されたヒータ部3のヒータ3aと、制御部6に配設され、後述するコントローラ10から出力される電力のデューティに基づきオン・オフするトライアックなどのスイッチ41と、を備え、電源(例えば、50Hzの単相交流電源)42に接続される。
【0038】
ローパスフィルタ20は、入室検知手段5によりトイレット室への人の入室が検知された時点以降、予め設定された便座暖房設定温度T0を低減して、便座暖房設定温度T0より低い温度の暖房変動目標値T1を出力する。暖房変動目標値T1は、時間の経過と共に便座暖房設定温度T0に漸近する。そして、暖房変動目標値T1は、各時点における便座2aの暖房温度の目標値になる。
【0039】
加算器8は、便座検知温度TSがフィードバックされるサミングポイントであり、暖房変動目標値T1と便座検知温度TSを入力とし、暖房変動目標値T1から便座検知温度TSを差引いた低減偏差ΔT1S(=T1−TS)を算出し、出力する。そして、この出力は、コントローラ10に伝達(出力)される(図6)。
【0040】
コントローラ10は、伝達された低減偏差ΔT1Sをオーバーシュート抑制制御(例えば、PID制御)して便座検知温度TSのオーバーシュートを抑制しつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給する電源42の電力(例えば、50Hzの交流電力)の適正な通電率のデューティを出力する。このデューティに基づき、ヒータ3aに供給される電力がデューティ制御される。即ち、出力されたデューティに基づき、制御部6に設けたゼロクロス検知部(図示せず)により供給電力の通電が位相制御されるように、ヒータ3aに電力を供給・停止するスイッチ41のオン・オフ信号が出力される。
【0041】
以上により、ブロック線図B1は、LPF20に入力された便座暖房設定温度T0の出力、即ち暖房変動目標温度T1と、フィードバックされたサーミスタ4の検知温度TSとの低減偏差ΔT1Sがコントローラ10に入力され、コントローラ10から出力されるデューティに基づいて、電源42の電力がヒータ3aに適正な通電率で供給され、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房されるフィードバック制御系を形成している。
【0042】
次に、本発明の実施例1に係る便座暖房装置1の作動と効果について説明する。図5は、便座暖房装置1の便座2aの暖房・保温制御フロー図である。ここで、Step1〜Step8は便座2aを暖房する各ステップであり、Step1、およびStep9〜Step11は便座2aを保温する各ステップである。便座暖房の制御が開始されると、以下の各Stepが順次実施される。
【0043】
(Step1)
入室検知手段5により便座2aに人が接近したか(トイレット室に人が入室したか)が検知される。トイレット室に人が入室した場合は、入室検知手段5がオンになりStep2へ進む。未入室の場合は、入室検知手段5がオフでStep9へ進む。
【0044】
(Step2)
サーミスタ4により便座検知温度TSが検知され、Step3へ進む。
【0045】
(Step3)
ユーザが予め設定した便座暖房設定温度T0が確認され、Step4へ進む。尚、便座暖房設定温度T0は、例えば、(高40℃、中38℃、低36℃)の三つのいずれかの温度に設定できる。
【0046】
(Step4)
便座暖房設定温度T0がLPF20に入力され、便座暖房設定温度T0より低い温度に低減された暖房変動目標温度T1がLPF20から出力され、Step5へ進む。
【0047】
(Step5)
暖房変動目標温度T1と、サーミスタ4により検知される便座検知温度TSとの低減偏差ΔT1S(=T1−TS)が加算器8により演算され、コントローラ10に出力される。次に、Step6へ進む。
【0048】
(Step6)
コントローラ10に出力された低減偏差ΔT1S基づき、コントローラ10はPID制御をしつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給する電力のデューティをヒータ回路40に出力する。次に、Step7へ進む。
【0049】
尚、PID制御は、低減偏差ΔT1Sが演算式{KP(ΔT1S)+KDs(ΔT1S)+KI(ΔT1S)/s}で示されるように比例、積分、そして微分される。ここで、sはラプラス演算子で時間微分を示し、1/sは時間積分を示す。KP、KI、KDは、定数で、それぞれPID制御の比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインである。
【0050】
(Step7)
入室検知手段5により、人がトイレット室より退室したかが検知される。退室の場合は、入室検知手段5がオフになり、Step8へ進む。在室の場合は、入室検知手段5のオン状態が継続され、Step4へ戻り、便座2aの暖房が継続される。
【0051】
(Step8)
ヒータ部3のタイマ(図示せず)が作動され、タイマの作動開始から60秒間まではStep7に戻る。60秒間、人がトイレット室に在室していないことが検知されると、人がトイレット室より退室したことが判断され、便座暖房制御が終了する。
【0052】
(Step9)
前述したようにStep1での入室検知手段5がオフの場合であり、サーミスタ4により便座温度が検知され、Step10へ進む。
【0053】
(Step10)
サーミスタ4により、便座2aの温度が、予め設定された便座保温設定温度TC(例えば、15℃)以下であるかが検知される。便座保温設定温度TC以下である場合は、Step11へ進む。便座保温設定温度TCを超える場合は、Step1へ戻る。
【0054】
(Step11)
便座2aが、予め設定された便座保温設定温度TC(例えば、15℃)に保温される。この場合、便座便座暖房制御と同様に、入力された便座保温設定温度TCはLPF20により低減される。そして、加算器8により保温変動目標温度T2と、サーミスタ4により検知された便座検知温度TSと、の低減偏差ΔT2S(=T2−TS)が算出され、コントローラ10に出力される。そして、出力された低減偏差ΔT2Sに基づき、コントローラ10はPID制御をしつつ、便座温度が便座保温設定温度TCになるように制御して、ヒータ3aに供給する保温のための供給電力のデューティをヒータ回路40に出力する。このデューティに基づいてスイッチ41のオン・オフが繰返され、ヒータ3aに電源42の電力が適正な通電率で供給され、便座2aが保温され、便座保温制御が終了する。
【0055】
便座暖房・保温の制御が終了すると、予め設定された時間間隔で、再び便座暖房・保温制御の各ステップが繰返される。
【0056】
尚、便座2aの保温のブロック線図は、図示していないが、図4のブロック線図B1に基づいて保温がなされる。この場合、ブロック線図B1における便座暖房設定温度T0の入力が、便座保温設定温度TCの入力に入れ代わる。便座暖房設定温度T0の入力と、保温設定温度TCの入力の切換えは、制御部6に配備した切換スイッチ(図示せず)により行われる。
【0057】
図6は、便座2aの暖房時の暖房変動目標温度T1、便座検知温度(サーミスタ4の検知温度)TS、およびヒータ3aへの供給電力Wの経過を示す。図中、W0はAC100Vの電源42の定格出力を示し、TS1は入室検知時の便座検知温度を示す。
【0058】
LPF20にステップ状の便座暖房設定温度T0が入力されると、LPF20により便座暖房設定温度T0に含まれる低い周波成分が通過され、高い周波数成分は低減されて、暖房変動目標温度T1がLPF20から出力される(図4、図5のStep4)。これにより、図6に示すように、暖房変動目標温度T1は、初期の立ち上がり時、ステップ状に立ち上がらず、時間の経過と共に滑らかに増加しながら立ち上がる。便座暖房設定温度T0がLPF20に入力されてから時間t2(例えば、1.5秒)まで、暖房変動目標温度T1は便座暖房設定温度T0に比べて低い。時間t2以降では、時間の経過と共に暖房変動目標温度T1は便座暖房設定温度T0に漸近しながら、便座暖房設定温度T0とほぼ同じになる。前述したように、暖房変動目標温度T1は、各時点における便座2aの暖房温度の目標値であり、この目標値は時間の経過と共に変化する。
【0059】
ヒータ3aに供給される電力(以下、供給電力)は、人の入室検知時から時間t1(例えば、0.8秒)まで、適正なデューティの下スイッチ41のオン・オフが繰返され、時間の経過と共に増加しながら立ち上がる。t1時点では、入室検知と比べて、ヒータ3aの温度は充分高くなり、電気抵抗が増大する。そして、入室検知時から時間t1後に、電源42の定格出力W0(W)がヒータ3aに供給される。入室検知時から時間t3(例えば、2.3秒)以降は、徐々に供給電力が低減される。この電力低減により、便座検知温度TSのオーバーシュートが抑制され、入室検知時から時間t4(例えば、3.3秒)後では、便座2aは目標温度である便座暖房設定温度T0にほぼ到達する。
【0060】
ここで、図6の時間t0は、入室検知時の便座検知温度に基づいて偏差低減手段9により設定される一定時間である。具体的には、一定時間t0は、便座検出温度TS1に対応して、制御部6のゼロクロス検知部によって商用電源(例えば、AC50Hz100V)のゼロクロス回数で設定される。この一定時間t0は、過電流を抑制するために設定され、入室検知時から一定時間t0では、ヒータ3aが十分に温まらず、電気抵抗が低い状態であるので、低い抵抗値に適合した適性値の電流がヒータ3aに通電される。一定時間以降はヒータ3aの温度上昇により電気抵抗が高くなり急速に加熱するのに十分な大きさの電流をヒータ3aに通電できる。
【0061】
以上により、人の入室検知時から一定時間t0では、暖房変動目標温度T1は便座暖房設定温度T0に比べて充分に低いので、暖房変動目標温度T1から便座検知温度TSを差引いた低減偏差ΔT1Sは、便座暖房設定温度T0からから便座検知温度TSを差引いた偏差ΔT0Sより小さい。入室検知時から一定時間t0では、暖房変動目標温度T1が滑らかに増加しながら立ち上がるので、便座暖房開始の立ち上がり時における供給電力のデューティは、図6に示すように、供給電力が徐々に増加するようにコントローラ10から出力される。従って、本実施例の便座暖房装置1は、通電開始時、ヒータ3aの温度が低く、電気抵抗が小さい状態において、ヒータ3aの通電開始時の突入電流は小さく抑えられ、過電流が抑制される。結果、トイレット室の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの遮断が防止できる。
【0062】
また、前述したように、本発明の便座暖房装置1は、便座検知温度TSがフィードバックされ、便座温度が制御されるフィードバック制御系が形成されている。従って、従来技術の供給電力と出力時間とをマップ化した便座暖房装置に比べて、本実施例の便座暖房装置1は、ヒータ3aの抵抗変化あるいは便座温度の異常に対応して適正な便座温度に制御できると共に、トイレット室の温度、使用者の体温などの環境温度あるいは電源42の電圧変動に左右されずに便座を便座暖房設定温度T0に暖房できる。
【0063】
さらに、コントローラ10に伝達された偏差ΔT1Sは、コントローラ10により、例えば、PID制御などのオーバーシュート抑制制御がなされ、便座検知温度TSのオーバーシュートが抑制され、短時間に便座検知温度TSが目標温度に到達する。以上により、本実施例の便座暖房装置1は、少ない電力で、且つ短時間に便座2aを便座暖房設定温度に暖房できる。
【0064】
(実施例2)
図7は、本発明に係る便座暖房装置1(図1)の便座2aを暖房する便座暖房制御系のブロック線図である。図7に示すように、本実施例の便座暖房装置1の便座暖房制御系のブロック線図B2は、図4のブロック線図B1のLPF20が移動平均演算手段21に置換わる。即ち、ブロック線図B2は、制御部6(図1)に配設した偏差低減手段9aおよびコントローラ11と、ヒータ回路40と、サーミスタ(温度検知手段)4と、により形成される。ヒータ回路40は、便座2aの裏面に接着したヒータ部3のヒータ3a(発熱体)と、制御部6に配設され、コントローラ11から出力される電力のデューティに基づきオン・オフするスイッチ41と、を備え、電源42に接続される。偏差低減手段9aは、移動平均演算手段21と加算器8と、により構成される。
【0065】
そして、ブロック線図B2は、便座暖房設定温度T0を便座暖房の目標値(入力)、制御量(出力)を便座検知温度TSNとし、便座検知温度TSNを加算器8にフィードバックして、コントローラ11から出力されるデューティに基づき、ヒータ3aに電力が供給されて、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房されるフィードバック制御系よりなる。便座検知温度TSNは、サーミスタ4により所定の時間間隔Δtで検知される便座温度であり、Nは、N=1、2、・・・である。
【0066】
移動平均演算手段21の入力は、予め設定された便座暖房設定温度T0と、トイレット室へ人が入室した時にサーミスタ4により検知される便座検知温度TS1である。移動平均演算手段21の出力は、便座暖房設定温度T0と入室時に検知される便座検知温度TS1とで順次、移動平均演算手段21により算出される移動平均である。即ち、入室検知手段5により人の入室が検知されると、移動平均演算手段21により、順次、便座暖房設定温度T0と入室時に検知される便座検知温度TS1との移動平均T0S1(=(T0+TS1)/2))、便座暖房設定温度T0と移動平均T0S1との移動平均T0S2(=(T0+T0S1)/2))、・・・便座暖房設定温度T0と移動平均T0S(N−1)との移動平均T0SN(=(T0+T0S(N−1))/2))が、順次、算出され、所定の時間間隔Δtで移動平均演算手段21から暖房変動目標値として出力される。
【0067】
そして、移動平均演算手段21から出力された移動平均T0S1、T0S2、・・・T0SNは加算器8に入力され、加算器8により、これらの離散した移動平均T0S1、T0S2、・・・T0SNから便座検知温度TS1、TS2、・・・T0SNが、各々差引かれて離散した減少偏差ΔTM1、ΔTM2、・・・ΔTMNが算出される。算出された減少偏差ΔTM1、ΔTM2、・・・ΔTMNがコントローラ11に入力される。コントローラ11は、例えば、PID制御などのオーバーシュート抑制制御をしつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給される電力の適正なデューティをヒータ回路40に出力する。このデューティに基づき、ヒータ3aへの供給電力がデューティ制御され、ヒータ3aに適正な通電率で電力が供給され、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房される。
【0068】
暖房変動目標値である移動平均T0S1、T0S2、・・・T0SNは、便座暖房設定温度T0より小さく、便座2aの暖房温度の目標値であり、入室検知時から一定時間t0において徐々に増加し、時間の経過と共に変化しながら便座暖房設定温度T0に漸近する。従って、前述した減少偏差ΔTM1、ΔTM2、・・・ΔTMNは、便座暖房設定温度T0から便座検知温度TSを差引いた偏差ΔT0S(=T0−TS)より小さくなる。
【0069】
以上により、本実施例の便座暖房装置1は、実施例1の便座暖房装置1と同じ作用に基づき、同じ効果を生じる。
【0070】
(実施例3)
図8は、本発明に係る便座暖房装置1(図1)の便座2aを暖房する便座暖房制御系のブロック線図である。図8に示すように、本実施例の暖房装置1の便座暖房制御系のブロック線図B3は、ブロック線図B2(図7)の移動平均演算手段21が加重移動平均演算手段22に置換わる。即ち、便座暖房装置1の便座暖房制御系のブロック線図B3は、制御部6(図1)に配設した偏差低減手段9bおよびコントローラ12と、ヒータ回路40と、サーミスタ(温度検知手段)4と、により形成される。ヒータ回路40は、便座2aの裏面に接着したヒータ部3のヒータ3a(発熱体)と、制御部6に配設され、コントローラ12から出力される供給電力のデューティに基づきオン・オフするスイッチ41と、を備え、電源42に接続される。偏差低減手段9bは、加重移動平均演算手段22と加算器8と、により構成される。
【0071】
そして、ブロック線図B3は、便座暖房設定温度T0を便座暖房の目標値(入力)、制御量(出力)を便座検知温度TSNとし、便座検知温度TSNを加算器8にフィードバックして、コントローラ12から出力されるデューティに基づき、ヒータ3aに電力が供給されて、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房されるフィードバック制御系よりなる。便座検知温度TSNは、サーミスタ4により所定の時間間隔Δtで検知される便座温度であり、Nは、N=1、2、・・・である。
【0072】
加重移動平均演算手段22の入力は、予め設定された便座暖房設定温度T0と、トイレット室へ人が入室した時にサーミスタ4により検知される便座検知温度TS1である。加重移動平均演算手段22の出力は、便座暖房設定温度T0と入室時に検知される便座検知温度TS1とで順次、加重移動平均演算手段22により算出される加重移動平均である。
【0073】
即ち、加重移動平均演算手段22により、順次、便座暖房設定温度T0と入室時に検知される便座検知温度TS1との加重移動平均T0SW1(=(T0+1×TS1)/2)、便座暖房設定温度T0と加重移動平均T0SW1との加重移動平均T0SW2(=(T0+2×T0SW1)/(2+1))、・・・便座暖房設定温度T0と加重移動平均T0SW(N−1)との加重移動平均T0SWN(=(T0+N×T0SW(N−1))/(2+N−1))が、順次、算出され、所定の時間間隔Δtで加重移動平均演算手段22から暖房変動目標値として出力される。
【0074】
そして、加重移動平均演算手段22から出力された加重移動平均T0SW1、T0SW2、・・・T0SWNが加算器8に入力され、加算器8により、これらの離散した加重移動平均T0SW1、T0SW2、・・・T0SWNから便座検知温度TS1、TS2、・・・TSNが、各々差引かれて離散した減少偏差ΔTW1、ΔTW2、・・・ΔTWNが算出される。算出された減少偏差ΔTW1、ΔTW2、・・・ΔTWNがコントローラ12に入力される。コントローラ12は、例えば、PID制御などのオーバーシュート抑制制御をしつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給される電力の適正なデューティをヒータ回路40に出力する。このデューティに基づき、ヒータ3aへの供給電力がデューティ制御され、ヒータ3aに適正な通電率で電力が供給され、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房される。
【0075】
暖房変動目標値である加重移動平均T0SW1、T0SW2、・・・T0SWNは、便座暖房設定温度T0より小さく、便座2aの暖房温度の目標値であり、入室検知時から一定時間t0において徐々に増加し、時間の経過と共に変化しながら便座暖房設定温度T0に漸近する。従って、前述した減少偏差ΔTW1、ΔTW2、・・・ΔTWNは、便座暖房設定温度T0から便座検知温度TSを差引いた偏差ΔT0S(=T0−TS)より小さくなる。
【0076】
以上により、本実施例の便座暖房装置1は、実施例1の便座暖房装置1と同じ作用に基づき、同じ効果を生じる。
【0077】
尚、実施例2および3は、図5の暖房・保温制御フロー図が適用できる。
【0078】
(実施例4)
図9は、本発明に係る便座暖房装置1(図1)の便座2aを暖房する便座暖房制御系のブロック線図である。図9に示すように、本実施例の便座暖房装置1の便座暖房制御系のブロック線図B4は、制御部6(図1)に配設した偏差低減手段9cおよびコントローラ13と、ヒータ回路40と、サーミスタ4(温度検知手段)と、により形成される。ヒータ回路40は、便座2aの裏面に接着したヒータ部3のヒータ3a(発熱体)と、制御部6に配設され、コントローラ13から出力される電力のデューティに基づきオン・オフするスイッチ41と、を備え、電源42に接続される。
【0079】
ブロック線図B4は、図4のブロック線図B1のLPF20が除去され、加算器8とコントローラ13との間に初期偏差低減手段30が設けられる。そして、ブロック線図B4は、便座暖房設定温度T0を便座暖房の目標値(入力)、制御量(出力)を便座検知温度TSとし、便座検知温度TSを加算器8にフィードバックして、加算器8から出力される偏差ΔT0S(=T0−TS)をコントローラ13へ伝達して、コントローラ13から出力されるデューティに基づき、ヒータ3aに電力を供給して便座2aを暖房するフィードバック制御系よりなる。
【0080】
偏差低減手段9cは、加算器8と初期偏差低減手段30により構成される。初期偏差低減手段30は、偏差低減器31、タイマ32、および切換スイッチ33を備える。タイマ32は、切換スイッチ33を切換える一定時間t0が設定される。そして、入室検知手段5による人の入室の検知時からタイマ32に設定された一定時間t0までは、切換スイッチ33は、接点aが接点cに接続され、一定時間t0経過後は、接点bが接点cに接続される。
【0081】
一定時間t0は、前述したように、入室検知時の便座検知温度に基づいて偏差低減手段9cにより設定される。
【0082】
偏差低減器31は、便座暖房設定温度T0と、人が入室した時にサーミスタ4により検知される便座検知温度TS1との偏差ΔT0S1=(T0−TS1)より小さな低減偏差ΔT(例えば、一定値の温度差、時間に対して階段状に変化する温度差、時間に比例した温度差あるいは移動平均温度など)を発生し、出力する。この場合は、偏差低減器31は関数発生器として作用する。
【0083】
あるいは、偏差低減器31は、便座暖房設定温度T0と、人が入室した時からサーミスタ4により検知される便座検知温度TSとの偏差ΔT0S=(T0−TS)より小さな低減偏差ΔTを演算し、出力する。この場合は、偏差低減器31は、例えば、ローパスフィルタとして作用する。いずれの場合も、偏差低減器31は、人が入室した時点から一定時間t0、即ち、切換スイッチ33の接点aが接点cに接続された間は、低減偏差ΔTをコントローラ13へ伝達する。
【0084】
前述のいずれの場合においても、偏差低減器31から出力される低減偏差ΔTは、偏差ΔT0S1より小さいので、入室時からの一定時間t0までは、便座2aの暖房温度の目標値は便座暖房設定温度T0より低い温度になる。
【0085】
上記の暖房温度の目標値の情報を含んだ低減偏差ΔTは、コントローラ13に伝達される。コントローラ13は、例えば、PID制御などのオーバーシュート抑制制御をしつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給される電力の適正なデューティをヒータ回路40に出力する。このデューティに基づきヒータ3aへの供給電力がデューティ制御される。
【0086】
以上により、人の入室検知時点から一定時間t0までは、便座暖房温度の目標値が便座暖房設定温度T0より低く設定された状態であるので、供給電力は、便座暖房温度の目標値が便座暖房設定温度T0の場合に比べて小さくなる。従って、本実施例の便座暖房装置1は、ヒータ3aの通電開始時の突入電流は小さく抑えられ、過電流が抑制される。結果、トイレット室の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの遮断が防止できる。
【0087】
一定時間t0経過後、即ち、切換スイッチ33の接点bが接点cに接続され、便座暖房温度の目標値は便座暖房設定温度T0になる。そして、加算器8により、便座暖房設定温度T0と便座検知温度TSとの偏差ΔT0S(=T0−TS)が算出されて、偏差ΔT0Sがコントローラ13へ伝達される。伝達された偏差ΔT0Sに基づき、コントローラ13は、PID制御などのオーバーシュート抑制制御をしつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給する電力の適正なデューティをヒータ回路40に出力する。このデューティに基づき、ヒータ3aに適正な通電率の電力が供給され、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房される。これにより、一定時間t0経過後は、本実施例の便座暖房装置1はサーミスタ4により検知された便座検知温度TSが加算器8にフィードバックされ、便座2aを暖房するフィードバック制御系が形成される。また、偏差低減器31が、例えば、ローパスフィルタとして機能する場合も、本実施例の便座暖房装置1は、サーミスタ4により検知された便座検知温度TSがフィードバックされ、便座2aを暖房するフィードバック制御系が形成される。
【0088】
以上により、本実施例の便座暖房装置1は、ヒータ3aの抵抗変化あるいは便座温度の異常に対応して適正な便座温度に制御できると共に、トイレット室の温度、使用者の体温などの環境温度あるいは電源42の電圧変動に左右されずに便座を便座暖房設定温度T0に暖房できる。
【0089】
また、コントローラ13に入力された低減偏差ΔTおよび偏差ΔT0Sは、コントローラ13により、例えば、PID制御などのオーバーシュート抑制制御がなされ、便座検知温度TSのオーバーシュートが抑制され、短時間に便座検知温度TSが便座暖房設定温度T0に到達する。結果、本実施例の便座暖房装置1は、少ない電力で、且つ短時間に便座2aを所定温度に暖房できる。
【0090】
尚、本実施例の便座暖房装置1のブロック線図B4は、加算器8とコントローラ13との間に初期偏差低減手段30が設けられているが、これに限定されることはない。即ち、初期偏差低減手段30に代わって、例えば、加算器8とコントローラ13との間に実施例1のローパスフィルタ、実施例2の移動平均演算手段、実施例3の加重移動平均演算手段のうちいずれか一つを設けても良い。
【0091】
図10は、加算器8とコントローラ13との間にローパスフィルタ23を設けた本発明の暖房装置1の便座暖房制御系のブロックB5であり、加算器8とローパスフィルタ20とで偏差低減手段9dが構成される。ローパスフィルタ23により、便座暖房設定温度T0から便座検知温度TSを差引いた偏差ΔT0Sは低減され、この低減された低減偏差はコントローラ13に伝達される。
【0092】
また、移動平均演算手段を設けた場合、加算器8から、順次、出力される2つの偏差に基づく2項移動平均が移動平均演算手段により算出される。即ち、移動平均演算手段により、順次、入室検知時の偏差ΔT0S1と次の時点の偏差ΔT0S2との平均ΔM1=(ΔT0S1+ΔT0S2)/2、偏差ΔT0S2と次の時点の偏差ΔT0S3との平均ΔM2=(ΔT0S2+ΔT0S3)/2、・・・、偏差ΔT0S2と次の時点の偏差ΔT0S3との平均ΔMN=(ΔT0SN+ΔT0S(N+1))/2が算出され、移動平均演算手段から順次、出力される。
【0093】
また、加重移動平均演算手段を設けた場合、加算器8から、順次、出力される2つの偏差に基づく2項加重移動平均が加重移動平均演算手段により算出される。即ち、加重移動平均演算手段により、順次、入室検知時の偏差ΔT0S1と次の時点の偏差ΔT0S2との平均ΔW1=(ΔT0S1+1×ΔT0S2)/2、偏差ΔT0S2と次の時点の偏差ΔT0S3との平均ΔW2=(ΔT0S2+2×ΔT0S3)/(2+1)、・・・、偏差ΔT0SNと次の時点の偏差ΔT0S(N+1)との平均ΔWN=(ΔT0SN+N×ΔT0S(N+1))/(2+N−1)が算出され、加重移動平均演算手段から順次、出力される。
【0094】
上記Nは、N=1、2、・・・、Nである。
【0095】
尚、実施例4の暖房・保温制御フローは、実施例1の暖房・保温制御フロー(図5)と異なる。即ち、図5のStep3とStep4の間に、人の入室の検知時から一定時間t0経過したか否かの判断Step4aが設けられる。また、判断Step4aでの判断が経過した場合の加算器8による偏差ΔT0Sを算出する偏差算出Step5aが追加され、偏差算出Step5aはStep6のPID制御に繋がる。
【0096】
判断Step4aでの判断が否の場合は、図5のStep4に進む。判断Step4aでの判断が経過した場合は、順次、偏差算出Step5a、図5のStep6へ進む。Step7の人体検知OFF?の判断Noは、判断Step4aへ戻る。
【0097】
(実施例5)
図11は、本発明に係る便座暖房装置1(図1)の便座2aを暖房する便座暖房制御系のブロック線図である。図11に示すように、本実施例の便座暖房装置1のブロック線図B6は、制御部6(図1)に配設した加算器8およびコントローラ14と、ローパスフィルタ(初期デューティ低減手段、以後、LPF)24と、ヒータ回路40と、サーミスタ(温度検知手段)4と、により形成される。ヒータ回路40は、便座2aの裏面に接着したヒータ部3のヒータ3a(発熱体)と、制御部6に配設され、LPF24から出力される電力のデューティに基づきオン・オフするスイッチ41と、を備え、電源42に接続される。
【0098】
加算器8は、入力された便座暖房設定温度T0と、サーミスタ(温度検知手段)4により検知された便座検知温度TSとにより、偏差ΔT0S(=T0−TS)を算出して、この偏差ΔT0Sをコントローラ14に伝達(出力)する。
【0099】
伝達された偏差ΔT0Sに基づき、コントローラ14は、短時間に便座検知温度TSを便座暖房設定温度T0に到達させるために、例えば、PID制御などのオーバーシュート抑制制御をしつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給する電力の目標となる基本デューティYをLPF24に伝達(出力)する。
【0100】
LPF24は、伝達された基本デューティYに含まれる高周波成分を低減し、低周波成分を通過させることにより、基本デューティYより小さく、暖房開始初期において徐々に増加し、時間の経過と共に基本デューティYに漸近する初期低減デューティを出力する。初期低減デューティが基本デューティYより小さいので、便座暖房温度の目標値が便座暖房設定温度T0より小さくなっている。
【0101】
前述の初期低減デューティに基づきヒータ3aへの供給電力がデューティ制御されて、スイッチ41のオン・オフが適正に繰返され、ヒータ3aに適正な通電率の電力が供給される。
【0102】
初期低減デューティにより、人の入室時から一定時間t0は、便座暖房初期の立ち上がり時の供給電力は徐々に増加するように制御され、時間の経過と共に、供給電力の通電率は、基本デューティYに基づく供給電力の通電率に漸近する。この電力供給により、便座検知温度TSも、便座暖房初期の立ち上がり時は、徐々に増加し、時間の経過と共に便座暖房設定温度T0に漸近し、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房される。従って、本実施例の便座暖房装置1は、通電開始時のヒータ3aの温度が低く、電気抵抗が小さい状態において、ヒータ3aの通電開始時の突入電流は小さく抑えられ、過電流が抑制され、トイレット室の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの遮断が防止できる。
【0103】
ここで、一定時間t0は、入室検知時の便座検知温度TSに基づいてLPF24により設定される。この一定時間t0は、過電流を抑制するために設定され、入室検知時から一定時間t0では、ヒータ3aが十分に温まらず、電気抵抗が低い状態であるので、低い抵抗値に適合した適性値の電流がヒータ3aに通電される。一定時間以降はヒータ3aの温度上昇により電気抵抗が高くなり急速に加熱するのに十分な大きさの電流を通電できる。
【0104】
また、本実施例の便座暖房装置1は、サーミスタ4により検知された便座検知温度TSが加算器8にフィードバックされ、加算器8から出力される偏差ΔT0Sが、順次、コントローラ14、LPF24に伝達され、LPF24から初期低減デューティが出力される。この初期低減デューティに基づきヒータ3aへの供給電力がデューティ制御され、ヒータ3aに適正な電力が供給される。従って、本実施例の便座暖房装置1は、ヒータ3aの抵抗変化あるいは便座温度の異常に対応して適正な便座温度に制御できると共に、トイレット室の温度、使用者の体温などの環境温度あるいは電源42の電圧変動に左右されずに便座を便座暖房設定温度T0に暖房できる。
【0105】
また、コントローラ14は、入力された偏差ΔT0Sにオーバーシュート抑制制御(例えば、PID制御など)をし、便座検知温度TSのオーバーシュートを抑制する。これにより、本実施例の便座暖房装置1は、少ない電力で、短時間に便座検知温度TSが便座暖房設定温度T0に暖房される。
【0106】
尚、本実施例の便座暖房装置1のブロック線図B6では、コントローラ14の出力側にLPF24が設けられているが、LPF24に代わって、前述した移動平均演算手段(図7)、加重移動平均演算手段(図8)、および初期偏差低減手段(図9)と同構成の初期デューティ低減手段のうちいずれか一つを初期デューティ低減手段として設けても良い。
【0107】
尚、移動平均演算手段を設けた場合は、移動平均演算手段により、順次、入室検知時の基本デューティY1と次の時点の基本デューティY2との移動平均M1=(Y1+Y2)/2、基本デューティY2と次の時点の基本デューティY3との移動平均M2=(Y2+Y3)/2、・・・、基本デューティYNと次の時点の基本デューティYN+1との移動平均MN=(YN+Y(N+1))/2が算出される。移動平均M1、M2、・・・、MNは、それぞれ基本デューティY1、Y2、・・・、YNより小さく、時間の経過と共に基本デューティに漸近し、ヒータ3aに電力を供給するデューティとして、移動平均演算手段から順次、出力される。上記のNは、N=1、2、・・・である。
【0108】
加重移動平均演算手段を設けた場合は、加重移動平均演算手段により、順次、入室検知時の基本デューティY1と次の時点の基本デューティY2との加重移動平均W1=(Y1+1×Y2)/2、基本デューティY2と次の時点の基本デューティY3との加重移動平均W2=(Y2+2×Y3)/(2+1)、・・・、基本デューティYNと次の時点の基本デューティYN+1との加重移動平均WN=(YN+N×Y(N+1))/(2+(N−1)が算出される。加重移動平均W1、W2、・・・、WNは、それぞれ基本デューティY1、Y2、・・・、YNより小さく、時間の経過と共に基本デューティに漸近し、ヒータ3aに電力を供給するデューティとして、加重移動平均演算手段から順次、出力される。
【0109】
また、初期偏差低減手段と同構成の初期デューティ低減手段の場合は、入室検知時から一定時間t0までは、この初期デューティ低減手段からは、基本デューティより小さな初期低減デューティが出力され、一定時間t0経過後は、基本デューティが出力される。
【符号の説明】
【0110】
1 便座暖房装置
2a 便座
3a ヒータ(発熱体)
4 サーミスタ(温度検知手段)
5 入室検知手段
6 制御部
8 加算器
9、9a、9b、9c、9d 偏差低減手段
10、11、12、13、14 コントローラ
20 ローパスフィルタ
21 移動平均演算手段
22 加重移動平均演算手段
24 ローパスフィルタ(初期デューティ低減手段)
30 初期偏差低減手段
31 偏差低減器
33 切換スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座表面を所定の温度に暖房する便座暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の便座暖房装置として、便座を暖める熱源と、人体検出手段と、便座内部の温度を検出する便座温度検出手段と、熱源及び人体検出手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は人体検出を行うと熱源に複数の通電率にて一定時間、電力を供給した後、複数の通電率よりも高い一定の通電率にて便座温度が所定時間内に着座可能温度に達するように制御する便座装置が開示されている。上記の所定時間は、室温検出手段により検出された室内の温度または便座温度検出手段により検出された便座の温度に応じて決定される。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、加熱手段が裏面に付設された金属製の便座と、加熱手段と商用電源との間に介装された開閉手段と、便座への使用者の接近のときのみ開閉手段で商用電源から加熱手段への通電を行わせる制御手段と、からなり、便座の裏面に、保温用の別の加熱手段を設けた暖房便座装置が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
また、便座部と、便座部を加熱する発熱体と、便座部の温度を検出する温度検出部と、使用者の存在を検知する人体検知部と、制御部と、を備え、制御部は人体検知部により使用者の存在が検知された場合に発熱体への通電を行い、使用者が冷たいと感じない便座の最低温度である限界温度まで便座部の温度が第1の温度勾配で上昇するように第1の電力で第1の時間駆動した後、使用者が予め設定した便座設定温度よりも高い温度まで便座部の温度が第1の温度勾配よりも緩やかな第2の温度勾配で上昇するように第1の電力よりも小さい第2の電力で発熱体を第2の時間駆動する便座装置が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−7018号公報
【特許文献2】特開2003−79539号公報
【特許文献3】特許第4140627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1によれば、便座の温度に応じて熱源であるヒータに通電する所定時間を決定することで、必要最低限の時間で便座の温度を着座可能温度に到達できる。しかし、人体検知をしてから一定時間、ヒータに供給される電力の複数の通電率は、予め決定されており、人体検知時の便座温度に応じては決定されず、また人の入室のたびに高い一定の通電率の電力がヒータに供給される。従って、頻繁に人の出入りがある公共施設などに設置された便座装置、あるいは、家庭における通勤や通学のため、同一時間帯に連続的に使用される便座装置では、時間帯によって便座の温度が高くなり過ぎる問題がある。
【0007】
また、便座装置の便座温度制御は、着座可能温度(目標値)と便座検出温度(制御量)とを比較して、この比較値に基づき電源に電力を供給するフィードバック制御ではなく、オープンループ制御によってなされる。このため、ヒータに異常が生じても、通常通りヒータに電力が供給され、着座に快適な便座温度が得られない問題がある。
【0008】
また、特許文献2によれば、制御手段は、人体検知センサによりトイレット室に人が入ったことを検知すると、予め設定された便座の設定温度と人を検知した時点における便座温度との差異に応じて、環境温度との相関において、加熱手段であるヒータに電力が供給され、便座が急速加熱される。しかし、ヒータへの電力供給がなされるまでヒータ線は便座と同じ温度まで冷えているため、ヒータの電気抵抗が小さくなっており、通電開始時にヒータへ大電流が流れ、過電流になる。この過電流により、トイレット室内の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの通電が遮断される場合がある。
【0009】
また、便座暖房の温度は、便座の検出温度がフィードバックされることなく、予め設定された電力のデューティ値に基づき、ヒータへの通電がオープンループ制御される。このため、ヒータに異常が生じても、通常通りヒータに電力が供給され、着座に快適な便座温度が得られない問題がある。
【0010】
また、特許文献3によれば、制御部は、使用者の存在を検知すると便座の温度を検出し、この検出温度に対応するヒータ制御テーブルに基づいて発熱体への通電制御を行う。便座の温度制御はオープンループ制御で、フィードバック制御ではない。ヒータ制御テーブルは、トイレットルームの室温をある程度考慮したものであるが十分ではなく、また、人が便座に着座した際の体温を考慮していない。このため、便座の温度は便座設定温度からずれる問題がある。
【0011】
また、特許文献1〜3では、上述したように、便座は、検出された便座温度をフィードバックすることなく、ヒータ制御テーブルに基づき昇温される。このため、ヒータに異常が生じても、通常通りヒータに電力が供給され、着座に快適な便座温度が得られない問題がある。さらに、ヒータに電力を供給する電源の電圧変動が生じると、便座の温度は便座設定温度に暖房されない問題がある。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、便座に配備された発熱体に供給する電力をより適切に制御し、便座暖房開始時の過電流を抑制できる便座暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、便座と、便座への人の接近を検知する入室検知手段と、便座に配備され便座を暖房する発熱体と、便座の温度を検知する温度検知手段と、発熱体に供給する電力をデューティ制御するコントローラと、入室検知手段による人の便座接近検知時から一定時間までは、設定された便座暖房設定温度と温度検知手段により検知された便座検知温度に基づいて便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差より小さな低減偏差をコントローラに出力し、一定時間経過後は、偏差と低減偏差のうちいずれか一方をコントローラに出力する偏差低減手段と、を備え、コントローラは、偏差低減手段の出力に基づき、発熱体に電力を供給するデューティを演算して、発熱体に供給する電力をデューティ制御する、ことである。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、偏差低減手段は、入室検知手段による人の便座接近検知時の便座検知温度に基づいて、一定時間を設定する、ことである。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、偏差低減手段は、便座暖房設定温度を便座暖房設定温度より低い暖房変動目標温度に低減するローパスフィルタと、低減された暖房変動目標温度から便座検知温度を差引いた低減偏差を算出する加算器と、を備え、算出された低減偏差をコントローラに出力する、ことである。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、偏差低減手段は、便座暖房設定温度と便座検知温度との移動平均を算出する移動平均演算手段と、便座暖房設定温度から算出された移動平均を差引いた低減偏差を算出する加算器と、を備え、算出された低減偏差をコントローラに出力する、ことである。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、偏差低減手段は、便座暖房設定温度と便座検知温度との加重移動平均を算出する加重移動平均演算手段と、便座暖房設定温度から算出された加重変動移動平均を差引いた低減偏差を算出する加算器と、を備え、算出された低減偏差をコントローラに出力する、ことである。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、偏差低減手段は、便座暖房設定温度から温度検知手段により検知される便座検知温度を差引いた偏差を算出する加算器と、加算器に接続された初期偏差低減手段と、を備え、初期偏差低減手段は、便座暖房設定温度と、人の便座接近検知時以降に温度検知手段により検知された便座検知温度とに基づき、便座暖房設定温度から便座接近検知時と便座接近検知時以降のうちいずれか一方の便座検知温度を差引いた偏差より小さな低減偏差を出力する偏差低減器と、入室検知手段による人の便座接近検知時から一定時間までは、偏差低減器から出力された低減偏差をコントローラに出力し、一定時間経過後は加算器により算出された偏差をコントローラに出力する切換スイッチと、を備える、ことである。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、便座と、便座への人の接近を検知する入室検知手段と、便座に配備され便座を暖房する発熱体と、便座の温度を検知する温度検知手段と、設定された便座の便座暖房設定温度から温度検知手段により検知された便座検知温度を差引いた偏差を演算して、出力する加算器と、加算器から出力された偏差に基づき、発熱体に供給する電力をデューティ制御するデューティの目標となる基本デューティを出力するコントローラと、入室検知手段による人の便座接近検知時から一定時間までは、コントローラから出力される基本デューティを低減した初期低減デューティを出力し、一定時間経過後は、初期低減デューティと、コントローラから出力される基本デューティのうちいずれか一方を出力する初期デューティ低減手段と、を備え、初期デューティ低減手段の出力に基づき、発熱体に供給する電力をデューティ制御する、ことである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明では、偏差低減手段は、入室検知手段による便座への人の接近が検知された時点(以後、便座接近検知時)から少なくとも一定時間までは、便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差よりも小さな低減偏差を算出し、コントローラへ出力する。これにより、便座接近検知時から少なくとも一定時間は、便座の暖房温度の目標値が便座暖房設定温度より低く、時間の経過に伴い連続的または段階的に変動する。そして、コントローラは、暖房温度の目標値の変動が考慮された低減偏差に基づき、発熱体(以下、ヒータ)に供給する電力のデューティを演算する。演算されたデューティに基づきヒータに供給する電力がデューティ制御され、この供給電力は前述の便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差に基づくデューティによる供給電力より少なくなるように低減される。従って、本発明の便座暖房装置は、便座接近検知時から少なくとも一定時間までは、便座暖房設定温度より低い目標温度に基づき低減された電力がヒータに供給され、便座暖房設定温度に基づいた電力より小さい。結果、電力供給開始時のヒータの温度が低く、電気抵抗が低い状態において生じる過電流を抑制でき、トイレット室の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの遮断を防止できる。
【0021】
また、温度検知手段により検知された便座検知温度をフィードバックして、コントローラにより演算されたデューティに基づき、ヒータに電力を供給して便座の暖房がなされる。結果、本発明の便座暖房装置は、ヒータの抵抗変化あるいは便座温度の異常に対応して適正な便座温度に制御できると共に、トイレット室の温度、使用者の体温などの環境温度あるいは電力供給源の電圧変動に左右されずに便座を所定温度に暖房できる。
【0022】
また、請求項2に記載の発明では、偏差低減手段により、便座への人の接近が検知された時の便座検知温度に基づいて一定時間が設定される。この一定時間の設定により、便座接近検知時から一定時間までは、ヒータの電気抵抗が低い状態であっても、ヒータの電気抵抗に適合した電流が通電され、一定時間以降はヒータの温度上昇により電気抵抗が高くなり急速に加熱するのに十分な大きさの電流を通電できる。結果、本発明の便座暖房装置は、トイレット室の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの遮断を防止できる。
【0023】
また、請求項3に記載の発明では、ローパスフィルタから出力される暖房変動目標温度は、便座暖房設定温度より低く、時間の経過と共に便座暖房設定温度に漸近し、そして時間の経過と共に変化する便座の暖房温度の目標値である。これにより、加算器により算出され、暖房変動目標温度から便座検知温度を差引いた低減偏差は、便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差よりも小さい。この低減偏差がコントローラに伝達される。
【0024】
また、請求項4に記載の発明では、移動平均演算手段から出力される便座温度の移動平均は、便座暖房設定温度より温度が低く、時間の経過と共に便座暖房設定温度に漸近し、そして時間の経過と共に変化する便座の暖房温度の目標値である。これにより、加算器より算出され、移動平均演算手段で算出した便座温度の移動平均から便座検知温度を差引いた低減偏差は、便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差よりも小さい。この低減偏差がコントローラに伝達される。
【0025】
また、請求項5に記載の発明では、加重移動平均演算手段から出力される便座温度の移動平均は、便座暖房設定温度より温度が低く、時間の経過と共に便座暖房設定温度に漸近し、そして時間の経過と共に変化する便座の暖房温度の目標値である。これにより、加算器より算出され、加重移動平均演算手段で算出した便座温度の移動平均から便座検知温度を差引いた低減偏差は、便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差よりも小さい。この低減偏差がコントローラに入力される。
【0026】
また、請求項6に記載の発明では、便座接近検知時から一定時間までは、便座暖房設定温度から便座検知温度を差引いた偏差より小さな低減偏差が、初期偏差低減手段の偏差低減器により出力され、コントローラに伝達される。これにより、便座接近検知時からの一定時間は、便座の暖房温度の目標値が便座暖房設定温度より低い温度になる。
【0027】
また、一定時間経過後は、コントローラには、加算器により便座暖房設定温度から便座検知温度が差引かれた偏差が伝達されるので、フィードバック制御系が形成される。結果、本発明の便座暖房装置は、ヒータの抵抗変化あるいは便座温度の異常に対応して適正な便座温度に制御できると共に、トイレット室の温度、使用者の体温などの環境温度あるいは電力供給源の電圧変動に左右されずに便座を便座暖房設定温度に暖房できる。
【0028】
また、請求項7に記載の発明では、加算器により算出された便座暖房設定温度と便座検知温度との偏差が、コントローラに入力される。コントローラは、入力された偏差に基づき、発熱体(ヒータ)への供給電力を制御するデューティの目標となる基本デューティを演算して、初期デューティ低減手段に出力する。初期デューティ低減手段は、便座接近検知時から少なくとも一定時間までは、基本デューティを低減した低減デューティを出力し、この低減デューティに基づき供給電力がデューティ制御され、ヒータに電力が供給される。従って、便座接近検知時から少なくとも一定時間までの低減デューティに基づく供給電力は、基本デューティに基づく供給電力より少ない。結果、ヒータへの電力供給の初期にヒータの温度が低く、電気抵抗が低い状態において生じる過電流が抑制され、トイレット室の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの遮断を防止できる。
【0029】
また、温度検知手段により検知された便座検知温度を加算器にフィードバックし、加算器により便座暖房設定温度と便座検知温度との偏差が算出される。算出された偏差は、順次、コントローラ、初期デューティ低減手段へ伝達され、初期デューティ低減手段から出力されるデューティに基づき、ヒータに電力が供給されて、便座が便座暖房設定温度に暖房される。従って、便座検知温度をフィードバックして便座温度を制御するフィードバック制御系が形成される。結果、本発明の便座暖房装置は、ヒータの抵抗変化あるいは便座温度の異常に対応して適正な便座温度に制御できると共に、トイレット室の温度、使用者の体温などの環境温度あるいは電力供給源の電圧変動に左右されずに便座を便座暖房設定温度に暖房できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1〜5に係る暖房便座の斜視図である。
【図2】図1の便座部を上側から視た分解斜視図である。
【図3】図2のヒータ部の説明図である。
【図4】実施例1の便座暖房装置の便座暖房制御系のブロック線図である。
【図5】実施例1の便座暖房装置の暖房・保温制御フロー図である。
【図6】実施例1の便座暖房時の暖房変動目標温度、サーミスタの検知温度(便座検知温度)、およびヒータへの供給電力の経過を示す図である。
【図7】実施例2に係る便座暖房装置の便座暖房制御系のブロック線図である。
【図8】実施例3に係る便座暖房装置の便座暖房制御系のブロック線図である。
【図9】実施例4に係る便座暖房装置の便座暖房制御系のブロック線図である。
【図10】図9のブロック線図を変形した本発明に係るブロック線図である。
【図11】実施例5に係る便座暖房装置の便座暖房制御系のブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0032】
(実施例1)
図1は実施例1〜5に係る暖房便座の斜視図であり、図2は図1の便座部を下側からみた分解斜視図である。図3は図2の便座の裏面に接着したヒータ部の説明図であり、下側から視た図である。
【0033】
暖房便座100は、便座部2と、本体部7と、便座部2と本体部7とに跨り配備された便座暖房装置1と、を備える。便座部2は、金属で成形された便座2aと、下部便座カバー2bと、便座2aと下部便座カバー2bとの間に設置されたヒータ部3と、を備える。ヒータ部3は、線状のヒータ(発熱体)3aと、ヒータ3aを挟着する絶縁フィルムを備えた金属箔3b、3bと、により構成され、便座2aの裏面2cに接着される。尚、ヒータ部3は、エッチングまたは印刷処理により金属箔をパターン化した発熱抵抗体を絶縁フィルムで挟着しても良い。
【0034】
便座暖房装置1は、便座2aと、ヒータ3aと、ヒータ部3に設置され便座2aの温度を検知するサーミスタ(温度検知手段)4と、便座への人の接近を検知する入室検知手段5と、本体部7に収納され便座温度を制御する制御部6と、を備える。尚、本実施例では、制御部6は本体部7の内部に設置されているが、本体部7の内部以外、例えば、トイレット室の壁などに設置されるリモートコントローラに配設されても良い。
【0035】
サーミスタ4はヒータ部3の下面の金属箔3bに取付けられ、便座2aの温度はヒータ部3を介在してサーミスタ4により検知される(図3)。ここで、サーミスタ4の検知温度TSを便座2aの温度(以後、便座検知温度TS)とする。
【0036】
入室検知手段5は、トイレット室に人が入室する際など、便座2aへの人の接近を検知するものであり、焦電型赤外線センサあるいは反射型赤外線センサなどの人体検知センサが使用される。本実施例では、暖房便座100の本体部7の図1における左上側角部に設けられる。焦電型赤外センサは対象物である人が動くとオン信号を発生し、反射型赤外センサは人から反射された赤外線を検出してトイレット室に人が入室したことを検知する。また、人体検知センサに代えて、使用者のトイレット室への踏み込みを検知するスイッチ、例えば、トイレット室のドアの開閉に連動してオン・オフするスイッチを使用しても良い。あるいは、便座上蓋(図示せず)の開閉を検知するスイッチでも良い。
【0037】
図4は、予め設定された便座暖房設定温度T0を目標値(入力)とし、制御量(出力)を便座検知温度TSとする便座暖房装置1の暖房便座制御系のブロック線図B1である。ブロック線図B1は、制御部6に配設した偏差低減手段9およびコントローラ10と、ヒータ回路40と、サーミスタ4と、により形成される。偏差低減手段9は、ローパスフィルタ20(以後、LPF20)と、加算器8と、により構成される。ヒータ回路40は、便座2aの裏面に接着されたヒータ部3のヒータ3aと、制御部6に配設され、後述するコントローラ10から出力される電力のデューティに基づきオン・オフするトライアックなどのスイッチ41と、を備え、電源(例えば、50Hzの単相交流電源)42に接続される。
【0038】
ローパスフィルタ20は、入室検知手段5によりトイレット室への人の入室が検知された時点以降、予め設定された便座暖房設定温度T0を低減して、便座暖房設定温度T0より低い温度の暖房変動目標値T1を出力する。暖房変動目標値T1は、時間の経過と共に便座暖房設定温度T0に漸近する。そして、暖房変動目標値T1は、各時点における便座2aの暖房温度の目標値になる。
【0039】
加算器8は、便座検知温度TSがフィードバックされるサミングポイントであり、暖房変動目標値T1と便座検知温度TSを入力とし、暖房変動目標値T1から便座検知温度TSを差引いた低減偏差ΔT1S(=T1−TS)を算出し、出力する。そして、この出力は、コントローラ10に伝達(出力)される(図6)。
【0040】
コントローラ10は、伝達された低減偏差ΔT1Sをオーバーシュート抑制制御(例えば、PID制御)して便座検知温度TSのオーバーシュートを抑制しつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給する電源42の電力(例えば、50Hzの交流電力)の適正な通電率のデューティを出力する。このデューティに基づき、ヒータ3aに供給される電力がデューティ制御される。即ち、出力されたデューティに基づき、制御部6に設けたゼロクロス検知部(図示せず)により供給電力の通電が位相制御されるように、ヒータ3aに電力を供給・停止するスイッチ41のオン・オフ信号が出力される。
【0041】
以上により、ブロック線図B1は、LPF20に入力された便座暖房設定温度T0の出力、即ち暖房変動目標温度T1と、フィードバックされたサーミスタ4の検知温度TSとの低減偏差ΔT1Sがコントローラ10に入力され、コントローラ10から出力されるデューティに基づいて、電源42の電力がヒータ3aに適正な通電率で供給され、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房されるフィードバック制御系を形成している。
【0042】
次に、本発明の実施例1に係る便座暖房装置1の作動と効果について説明する。図5は、便座暖房装置1の便座2aの暖房・保温制御フロー図である。ここで、Step1〜Step8は便座2aを暖房する各ステップであり、Step1、およびStep9〜Step11は便座2aを保温する各ステップである。便座暖房の制御が開始されると、以下の各Stepが順次実施される。
【0043】
(Step1)
入室検知手段5により便座2aに人が接近したか(トイレット室に人が入室したか)が検知される。トイレット室に人が入室した場合は、入室検知手段5がオンになりStep2へ進む。未入室の場合は、入室検知手段5がオフでStep9へ進む。
【0044】
(Step2)
サーミスタ4により便座検知温度TSが検知され、Step3へ進む。
【0045】
(Step3)
ユーザが予め設定した便座暖房設定温度T0が確認され、Step4へ進む。尚、便座暖房設定温度T0は、例えば、(高40℃、中38℃、低36℃)の三つのいずれかの温度に設定できる。
【0046】
(Step4)
便座暖房設定温度T0がLPF20に入力され、便座暖房設定温度T0より低い温度に低減された暖房変動目標温度T1がLPF20から出力され、Step5へ進む。
【0047】
(Step5)
暖房変動目標温度T1と、サーミスタ4により検知される便座検知温度TSとの低減偏差ΔT1S(=T1−TS)が加算器8により演算され、コントローラ10に出力される。次に、Step6へ進む。
【0048】
(Step6)
コントローラ10に出力された低減偏差ΔT1S基づき、コントローラ10はPID制御をしつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給する電力のデューティをヒータ回路40に出力する。次に、Step7へ進む。
【0049】
尚、PID制御は、低減偏差ΔT1Sが演算式{KP(ΔT1S)+KDs(ΔT1S)+KI(ΔT1S)/s}で示されるように比例、積分、そして微分される。ここで、sはラプラス演算子で時間微分を示し、1/sは時間積分を示す。KP、KI、KDは、定数で、それぞれPID制御の比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインである。
【0050】
(Step7)
入室検知手段5により、人がトイレット室より退室したかが検知される。退室の場合は、入室検知手段5がオフになり、Step8へ進む。在室の場合は、入室検知手段5のオン状態が継続され、Step4へ戻り、便座2aの暖房が継続される。
【0051】
(Step8)
ヒータ部3のタイマ(図示せず)が作動され、タイマの作動開始から60秒間まではStep7に戻る。60秒間、人がトイレット室に在室していないことが検知されると、人がトイレット室より退室したことが判断され、便座暖房制御が終了する。
【0052】
(Step9)
前述したようにStep1での入室検知手段5がオフの場合であり、サーミスタ4により便座温度が検知され、Step10へ進む。
【0053】
(Step10)
サーミスタ4により、便座2aの温度が、予め設定された便座保温設定温度TC(例えば、15℃)以下であるかが検知される。便座保温設定温度TC以下である場合は、Step11へ進む。便座保温設定温度TCを超える場合は、Step1へ戻る。
【0054】
(Step11)
便座2aが、予め設定された便座保温設定温度TC(例えば、15℃)に保温される。この場合、便座便座暖房制御と同様に、入力された便座保温設定温度TCはLPF20により低減される。そして、加算器8により保温変動目標温度T2と、サーミスタ4により検知された便座検知温度TSと、の低減偏差ΔT2S(=T2−TS)が算出され、コントローラ10に出力される。そして、出力された低減偏差ΔT2Sに基づき、コントローラ10はPID制御をしつつ、便座温度が便座保温設定温度TCになるように制御して、ヒータ3aに供給する保温のための供給電力のデューティをヒータ回路40に出力する。このデューティに基づいてスイッチ41のオン・オフが繰返され、ヒータ3aに電源42の電力が適正な通電率で供給され、便座2aが保温され、便座保温制御が終了する。
【0055】
便座暖房・保温の制御が終了すると、予め設定された時間間隔で、再び便座暖房・保温制御の各ステップが繰返される。
【0056】
尚、便座2aの保温のブロック線図は、図示していないが、図4のブロック線図B1に基づいて保温がなされる。この場合、ブロック線図B1における便座暖房設定温度T0の入力が、便座保温設定温度TCの入力に入れ代わる。便座暖房設定温度T0の入力と、保温設定温度TCの入力の切換えは、制御部6に配備した切換スイッチ(図示せず)により行われる。
【0057】
図6は、便座2aの暖房時の暖房変動目標温度T1、便座検知温度(サーミスタ4の検知温度)TS、およびヒータ3aへの供給電力Wの経過を示す。図中、W0はAC100Vの電源42の定格出力を示し、TS1は入室検知時の便座検知温度を示す。
【0058】
LPF20にステップ状の便座暖房設定温度T0が入力されると、LPF20により便座暖房設定温度T0に含まれる低い周波成分が通過され、高い周波数成分は低減されて、暖房変動目標温度T1がLPF20から出力される(図4、図5のStep4)。これにより、図6に示すように、暖房変動目標温度T1は、初期の立ち上がり時、ステップ状に立ち上がらず、時間の経過と共に滑らかに増加しながら立ち上がる。便座暖房設定温度T0がLPF20に入力されてから時間t2(例えば、1.5秒)まで、暖房変動目標温度T1は便座暖房設定温度T0に比べて低い。時間t2以降では、時間の経過と共に暖房変動目標温度T1は便座暖房設定温度T0に漸近しながら、便座暖房設定温度T0とほぼ同じになる。前述したように、暖房変動目標温度T1は、各時点における便座2aの暖房温度の目標値であり、この目標値は時間の経過と共に変化する。
【0059】
ヒータ3aに供給される電力(以下、供給電力)は、人の入室検知時から時間t1(例えば、0.8秒)まで、適正なデューティの下スイッチ41のオン・オフが繰返され、時間の経過と共に増加しながら立ち上がる。t1時点では、入室検知と比べて、ヒータ3aの温度は充分高くなり、電気抵抗が増大する。そして、入室検知時から時間t1後に、電源42の定格出力W0(W)がヒータ3aに供給される。入室検知時から時間t3(例えば、2.3秒)以降は、徐々に供給電力が低減される。この電力低減により、便座検知温度TSのオーバーシュートが抑制され、入室検知時から時間t4(例えば、3.3秒)後では、便座2aは目標温度である便座暖房設定温度T0にほぼ到達する。
【0060】
ここで、図6の時間t0は、入室検知時の便座検知温度に基づいて偏差低減手段9により設定される一定時間である。具体的には、一定時間t0は、便座検出温度TS1に対応して、制御部6のゼロクロス検知部によって商用電源(例えば、AC50Hz100V)のゼロクロス回数で設定される。この一定時間t0は、過電流を抑制するために設定され、入室検知時から一定時間t0では、ヒータ3aが十分に温まらず、電気抵抗が低い状態であるので、低い抵抗値に適合した適性値の電流がヒータ3aに通電される。一定時間以降はヒータ3aの温度上昇により電気抵抗が高くなり急速に加熱するのに十分な大きさの電流をヒータ3aに通電できる。
【0061】
以上により、人の入室検知時から一定時間t0では、暖房変動目標温度T1は便座暖房設定温度T0に比べて充分に低いので、暖房変動目標温度T1から便座検知温度TSを差引いた低減偏差ΔT1Sは、便座暖房設定温度T0からから便座検知温度TSを差引いた偏差ΔT0Sより小さい。入室検知時から一定時間t0では、暖房変動目標温度T1が滑らかに増加しながら立ち上がるので、便座暖房開始の立ち上がり時における供給電力のデューティは、図6に示すように、供給電力が徐々に増加するようにコントローラ10から出力される。従って、本実施例の便座暖房装置1は、通電開始時、ヒータ3aの温度が低く、電気抵抗が小さい状態において、ヒータ3aの通電開始時の突入電流は小さく抑えられ、過電流が抑制される。結果、トイレット室の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの遮断が防止できる。
【0062】
また、前述したように、本発明の便座暖房装置1は、便座検知温度TSがフィードバックされ、便座温度が制御されるフィードバック制御系が形成されている。従って、従来技術の供給電力と出力時間とをマップ化した便座暖房装置に比べて、本実施例の便座暖房装置1は、ヒータ3aの抵抗変化あるいは便座温度の異常に対応して適正な便座温度に制御できると共に、トイレット室の温度、使用者の体温などの環境温度あるいは電源42の電圧変動に左右されずに便座を便座暖房設定温度T0に暖房できる。
【0063】
さらに、コントローラ10に伝達された偏差ΔT1Sは、コントローラ10により、例えば、PID制御などのオーバーシュート抑制制御がなされ、便座検知温度TSのオーバーシュートが抑制され、短時間に便座検知温度TSが目標温度に到達する。以上により、本実施例の便座暖房装置1は、少ない電力で、且つ短時間に便座2aを便座暖房設定温度に暖房できる。
【0064】
(実施例2)
図7は、本発明に係る便座暖房装置1(図1)の便座2aを暖房する便座暖房制御系のブロック線図である。図7に示すように、本実施例の便座暖房装置1の便座暖房制御系のブロック線図B2は、図4のブロック線図B1のLPF20が移動平均演算手段21に置換わる。即ち、ブロック線図B2は、制御部6(図1)に配設した偏差低減手段9aおよびコントローラ11と、ヒータ回路40と、サーミスタ(温度検知手段)4と、により形成される。ヒータ回路40は、便座2aの裏面に接着したヒータ部3のヒータ3a(発熱体)と、制御部6に配設され、コントローラ11から出力される電力のデューティに基づきオン・オフするスイッチ41と、を備え、電源42に接続される。偏差低減手段9aは、移動平均演算手段21と加算器8と、により構成される。
【0065】
そして、ブロック線図B2は、便座暖房設定温度T0を便座暖房の目標値(入力)、制御量(出力)を便座検知温度TSNとし、便座検知温度TSNを加算器8にフィードバックして、コントローラ11から出力されるデューティに基づき、ヒータ3aに電力が供給されて、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房されるフィードバック制御系よりなる。便座検知温度TSNは、サーミスタ4により所定の時間間隔Δtで検知される便座温度であり、Nは、N=1、2、・・・である。
【0066】
移動平均演算手段21の入力は、予め設定された便座暖房設定温度T0と、トイレット室へ人が入室した時にサーミスタ4により検知される便座検知温度TS1である。移動平均演算手段21の出力は、便座暖房設定温度T0と入室時に検知される便座検知温度TS1とで順次、移動平均演算手段21により算出される移動平均である。即ち、入室検知手段5により人の入室が検知されると、移動平均演算手段21により、順次、便座暖房設定温度T0と入室時に検知される便座検知温度TS1との移動平均T0S1(=(T0+TS1)/2))、便座暖房設定温度T0と移動平均T0S1との移動平均T0S2(=(T0+T0S1)/2))、・・・便座暖房設定温度T0と移動平均T0S(N−1)との移動平均T0SN(=(T0+T0S(N−1))/2))が、順次、算出され、所定の時間間隔Δtで移動平均演算手段21から暖房変動目標値として出力される。
【0067】
そして、移動平均演算手段21から出力された移動平均T0S1、T0S2、・・・T0SNは加算器8に入力され、加算器8により、これらの離散した移動平均T0S1、T0S2、・・・T0SNから便座検知温度TS1、TS2、・・・T0SNが、各々差引かれて離散した減少偏差ΔTM1、ΔTM2、・・・ΔTMNが算出される。算出された減少偏差ΔTM1、ΔTM2、・・・ΔTMNがコントローラ11に入力される。コントローラ11は、例えば、PID制御などのオーバーシュート抑制制御をしつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給される電力の適正なデューティをヒータ回路40に出力する。このデューティに基づき、ヒータ3aへの供給電力がデューティ制御され、ヒータ3aに適正な通電率で電力が供給され、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房される。
【0068】
暖房変動目標値である移動平均T0S1、T0S2、・・・T0SNは、便座暖房設定温度T0より小さく、便座2aの暖房温度の目標値であり、入室検知時から一定時間t0において徐々に増加し、時間の経過と共に変化しながら便座暖房設定温度T0に漸近する。従って、前述した減少偏差ΔTM1、ΔTM2、・・・ΔTMNは、便座暖房設定温度T0から便座検知温度TSを差引いた偏差ΔT0S(=T0−TS)より小さくなる。
【0069】
以上により、本実施例の便座暖房装置1は、実施例1の便座暖房装置1と同じ作用に基づき、同じ効果を生じる。
【0070】
(実施例3)
図8は、本発明に係る便座暖房装置1(図1)の便座2aを暖房する便座暖房制御系のブロック線図である。図8に示すように、本実施例の暖房装置1の便座暖房制御系のブロック線図B3は、ブロック線図B2(図7)の移動平均演算手段21が加重移動平均演算手段22に置換わる。即ち、便座暖房装置1の便座暖房制御系のブロック線図B3は、制御部6(図1)に配設した偏差低減手段9bおよびコントローラ12と、ヒータ回路40と、サーミスタ(温度検知手段)4と、により形成される。ヒータ回路40は、便座2aの裏面に接着したヒータ部3のヒータ3a(発熱体)と、制御部6に配設され、コントローラ12から出力される供給電力のデューティに基づきオン・オフするスイッチ41と、を備え、電源42に接続される。偏差低減手段9bは、加重移動平均演算手段22と加算器8と、により構成される。
【0071】
そして、ブロック線図B3は、便座暖房設定温度T0を便座暖房の目標値(入力)、制御量(出力)を便座検知温度TSNとし、便座検知温度TSNを加算器8にフィードバックして、コントローラ12から出力されるデューティに基づき、ヒータ3aに電力が供給されて、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房されるフィードバック制御系よりなる。便座検知温度TSNは、サーミスタ4により所定の時間間隔Δtで検知される便座温度であり、Nは、N=1、2、・・・である。
【0072】
加重移動平均演算手段22の入力は、予め設定された便座暖房設定温度T0と、トイレット室へ人が入室した時にサーミスタ4により検知される便座検知温度TS1である。加重移動平均演算手段22の出力は、便座暖房設定温度T0と入室時に検知される便座検知温度TS1とで順次、加重移動平均演算手段22により算出される加重移動平均である。
【0073】
即ち、加重移動平均演算手段22により、順次、便座暖房設定温度T0と入室時に検知される便座検知温度TS1との加重移動平均T0SW1(=(T0+1×TS1)/2)、便座暖房設定温度T0と加重移動平均T0SW1との加重移動平均T0SW2(=(T0+2×T0SW1)/(2+1))、・・・便座暖房設定温度T0と加重移動平均T0SW(N−1)との加重移動平均T0SWN(=(T0+N×T0SW(N−1))/(2+N−1))が、順次、算出され、所定の時間間隔Δtで加重移動平均演算手段22から暖房変動目標値として出力される。
【0074】
そして、加重移動平均演算手段22から出力された加重移動平均T0SW1、T0SW2、・・・T0SWNが加算器8に入力され、加算器8により、これらの離散した加重移動平均T0SW1、T0SW2、・・・T0SWNから便座検知温度TS1、TS2、・・・TSNが、各々差引かれて離散した減少偏差ΔTW1、ΔTW2、・・・ΔTWNが算出される。算出された減少偏差ΔTW1、ΔTW2、・・・ΔTWNがコントローラ12に入力される。コントローラ12は、例えば、PID制御などのオーバーシュート抑制制御をしつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給される電力の適正なデューティをヒータ回路40に出力する。このデューティに基づき、ヒータ3aへの供給電力がデューティ制御され、ヒータ3aに適正な通電率で電力が供給され、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房される。
【0075】
暖房変動目標値である加重移動平均T0SW1、T0SW2、・・・T0SWNは、便座暖房設定温度T0より小さく、便座2aの暖房温度の目標値であり、入室検知時から一定時間t0において徐々に増加し、時間の経過と共に変化しながら便座暖房設定温度T0に漸近する。従って、前述した減少偏差ΔTW1、ΔTW2、・・・ΔTWNは、便座暖房設定温度T0から便座検知温度TSを差引いた偏差ΔT0S(=T0−TS)より小さくなる。
【0076】
以上により、本実施例の便座暖房装置1は、実施例1の便座暖房装置1と同じ作用に基づき、同じ効果を生じる。
【0077】
尚、実施例2および3は、図5の暖房・保温制御フロー図が適用できる。
【0078】
(実施例4)
図9は、本発明に係る便座暖房装置1(図1)の便座2aを暖房する便座暖房制御系のブロック線図である。図9に示すように、本実施例の便座暖房装置1の便座暖房制御系のブロック線図B4は、制御部6(図1)に配設した偏差低減手段9cおよびコントローラ13と、ヒータ回路40と、サーミスタ4(温度検知手段)と、により形成される。ヒータ回路40は、便座2aの裏面に接着したヒータ部3のヒータ3a(発熱体)と、制御部6に配設され、コントローラ13から出力される電力のデューティに基づきオン・オフするスイッチ41と、を備え、電源42に接続される。
【0079】
ブロック線図B4は、図4のブロック線図B1のLPF20が除去され、加算器8とコントローラ13との間に初期偏差低減手段30が設けられる。そして、ブロック線図B4は、便座暖房設定温度T0を便座暖房の目標値(入力)、制御量(出力)を便座検知温度TSとし、便座検知温度TSを加算器8にフィードバックして、加算器8から出力される偏差ΔT0S(=T0−TS)をコントローラ13へ伝達して、コントローラ13から出力されるデューティに基づき、ヒータ3aに電力を供給して便座2aを暖房するフィードバック制御系よりなる。
【0080】
偏差低減手段9cは、加算器8と初期偏差低減手段30により構成される。初期偏差低減手段30は、偏差低減器31、タイマ32、および切換スイッチ33を備える。タイマ32は、切換スイッチ33を切換える一定時間t0が設定される。そして、入室検知手段5による人の入室の検知時からタイマ32に設定された一定時間t0までは、切換スイッチ33は、接点aが接点cに接続され、一定時間t0経過後は、接点bが接点cに接続される。
【0081】
一定時間t0は、前述したように、入室検知時の便座検知温度に基づいて偏差低減手段9cにより設定される。
【0082】
偏差低減器31は、便座暖房設定温度T0と、人が入室した時にサーミスタ4により検知される便座検知温度TS1との偏差ΔT0S1=(T0−TS1)より小さな低減偏差ΔT(例えば、一定値の温度差、時間に対して階段状に変化する温度差、時間に比例した温度差あるいは移動平均温度など)を発生し、出力する。この場合は、偏差低減器31は関数発生器として作用する。
【0083】
あるいは、偏差低減器31は、便座暖房設定温度T0と、人が入室した時からサーミスタ4により検知される便座検知温度TSとの偏差ΔT0S=(T0−TS)より小さな低減偏差ΔTを演算し、出力する。この場合は、偏差低減器31は、例えば、ローパスフィルタとして作用する。いずれの場合も、偏差低減器31は、人が入室した時点から一定時間t0、即ち、切換スイッチ33の接点aが接点cに接続された間は、低減偏差ΔTをコントローラ13へ伝達する。
【0084】
前述のいずれの場合においても、偏差低減器31から出力される低減偏差ΔTは、偏差ΔT0S1より小さいので、入室時からの一定時間t0までは、便座2aの暖房温度の目標値は便座暖房設定温度T0より低い温度になる。
【0085】
上記の暖房温度の目標値の情報を含んだ低減偏差ΔTは、コントローラ13に伝達される。コントローラ13は、例えば、PID制御などのオーバーシュート抑制制御をしつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給される電力の適正なデューティをヒータ回路40に出力する。このデューティに基づきヒータ3aへの供給電力がデューティ制御される。
【0086】
以上により、人の入室検知時点から一定時間t0までは、便座暖房温度の目標値が便座暖房設定温度T0より低く設定された状態であるので、供給電力は、便座暖房温度の目標値が便座暖房設定温度T0の場合に比べて小さくなる。従って、本実施例の便座暖房装置1は、ヒータ3aの通電開始時の突入電流は小さく抑えられ、過電流が抑制される。結果、トイレット室の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの遮断が防止できる。
【0087】
一定時間t0経過後、即ち、切換スイッチ33の接点bが接点cに接続され、便座暖房温度の目標値は便座暖房設定温度T0になる。そして、加算器8により、便座暖房設定温度T0と便座検知温度TSとの偏差ΔT0S(=T0−TS)が算出されて、偏差ΔT0Sがコントローラ13へ伝達される。伝達された偏差ΔT0Sに基づき、コントローラ13は、PID制御などのオーバーシュート抑制制御をしつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給する電力の適正なデューティをヒータ回路40に出力する。このデューティに基づき、ヒータ3aに適正な通電率の電力が供給され、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房される。これにより、一定時間t0経過後は、本実施例の便座暖房装置1はサーミスタ4により検知された便座検知温度TSが加算器8にフィードバックされ、便座2aを暖房するフィードバック制御系が形成される。また、偏差低減器31が、例えば、ローパスフィルタとして機能する場合も、本実施例の便座暖房装置1は、サーミスタ4により検知された便座検知温度TSがフィードバックされ、便座2aを暖房するフィードバック制御系が形成される。
【0088】
以上により、本実施例の便座暖房装置1は、ヒータ3aの抵抗変化あるいは便座温度の異常に対応して適正な便座温度に制御できると共に、トイレット室の温度、使用者の体温などの環境温度あるいは電源42の電圧変動に左右されずに便座を便座暖房設定温度T0に暖房できる。
【0089】
また、コントローラ13に入力された低減偏差ΔTおよび偏差ΔT0Sは、コントローラ13により、例えば、PID制御などのオーバーシュート抑制制御がなされ、便座検知温度TSのオーバーシュートが抑制され、短時間に便座検知温度TSが便座暖房設定温度T0に到達する。結果、本実施例の便座暖房装置1は、少ない電力で、且つ短時間に便座2aを所定温度に暖房できる。
【0090】
尚、本実施例の便座暖房装置1のブロック線図B4は、加算器8とコントローラ13との間に初期偏差低減手段30が設けられているが、これに限定されることはない。即ち、初期偏差低減手段30に代わって、例えば、加算器8とコントローラ13との間に実施例1のローパスフィルタ、実施例2の移動平均演算手段、実施例3の加重移動平均演算手段のうちいずれか一つを設けても良い。
【0091】
図10は、加算器8とコントローラ13との間にローパスフィルタ23を設けた本発明の暖房装置1の便座暖房制御系のブロックB5であり、加算器8とローパスフィルタ20とで偏差低減手段9dが構成される。ローパスフィルタ23により、便座暖房設定温度T0から便座検知温度TSを差引いた偏差ΔT0Sは低減され、この低減された低減偏差はコントローラ13に伝達される。
【0092】
また、移動平均演算手段を設けた場合、加算器8から、順次、出力される2つの偏差に基づく2項移動平均が移動平均演算手段により算出される。即ち、移動平均演算手段により、順次、入室検知時の偏差ΔT0S1と次の時点の偏差ΔT0S2との平均ΔM1=(ΔT0S1+ΔT0S2)/2、偏差ΔT0S2と次の時点の偏差ΔT0S3との平均ΔM2=(ΔT0S2+ΔT0S3)/2、・・・、偏差ΔT0S2と次の時点の偏差ΔT0S3との平均ΔMN=(ΔT0SN+ΔT0S(N+1))/2が算出され、移動平均演算手段から順次、出力される。
【0093】
また、加重移動平均演算手段を設けた場合、加算器8から、順次、出力される2つの偏差に基づく2項加重移動平均が加重移動平均演算手段により算出される。即ち、加重移動平均演算手段により、順次、入室検知時の偏差ΔT0S1と次の時点の偏差ΔT0S2との平均ΔW1=(ΔT0S1+1×ΔT0S2)/2、偏差ΔT0S2と次の時点の偏差ΔT0S3との平均ΔW2=(ΔT0S2+2×ΔT0S3)/(2+1)、・・・、偏差ΔT0SNと次の時点の偏差ΔT0S(N+1)との平均ΔWN=(ΔT0SN+N×ΔT0S(N+1))/(2+N−1)が算出され、加重移動平均演算手段から順次、出力される。
【0094】
上記Nは、N=1、2、・・・、Nである。
【0095】
尚、実施例4の暖房・保温制御フローは、実施例1の暖房・保温制御フロー(図5)と異なる。即ち、図5のStep3とStep4の間に、人の入室の検知時から一定時間t0経過したか否かの判断Step4aが設けられる。また、判断Step4aでの判断が経過した場合の加算器8による偏差ΔT0Sを算出する偏差算出Step5aが追加され、偏差算出Step5aはStep6のPID制御に繋がる。
【0096】
判断Step4aでの判断が否の場合は、図5のStep4に進む。判断Step4aでの判断が経過した場合は、順次、偏差算出Step5a、図5のStep6へ進む。Step7の人体検知OFF?の判断Noは、判断Step4aへ戻る。
【0097】
(実施例5)
図11は、本発明に係る便座暖房装置1(図1)の便座2aを暖房する便座暖房制御系のブロック線図である。図11に示すように、本実施例の便座暖房装置1のブロック線図B6は、制御部6(図1)に配設した加算器8およびコントローラ14と、ローパスフィルタ(初期デューティ低減手段、以後、LPF)24と、ヒータ回路40と、サーミスタ(温度検知手段)4と、により形成される。ヒータ回路40は、便座2aの裏面に接着したヒータ部3のヒータ3a(発熱体)と、制御部6に配設され、LPF24から出力される電力のデューティに基づきオン・オフするスイッチ41と、を備え、電源42に接続される。
【0098】
加算器8は、入力された便座暖房設定温度T0と、サーミスタ(温度検知手段)4により検知された便座検知温度TSとにより、偏差ΔT0S(=T0−TS)を算出して、この偏差ΔT0Sをコントローラ14に伝達(出力)する。
【0099】
伝達された偏差ΔT0Sに基づき、コントローラ14は、短時間に便座検知温度TSを便座暖房設定温度T0に到達させるために、例えば、PID制御などのオーバーシュート抑制制御をしつつ、便座温度が便座暖房設定温度T0になるように制御して、ヒータ3aに供給する電力の目標となる基本デューティYをLPF24に伝達(出力)する。
【0100】
LPF24は、伝達された基本デューティYに含まれる高周波成分を低減し、低周波成分を通過させることにより、基本デューティYより小さく、暖房開始初期において徐々に増加し、時間の経過と共に基本デューティYに漸近する初期低減デューティを出力する。初期低減デューティが基本デューティYより小さいので、便座暖房温度の目標値が便座暖房設定温度T0より小さくなっている。
【0101】
前述の初期低減デューティに基づきヒータ3aへの供給電力がデューティ制御されて、スイッチ41のオン・オフが適正に繰返され、ヒータ3aに適正な通電率の電力が供給される。
【0102】
初期低減デューティにより、人の入室時から一定時間t0は、便座暖房初期の立ち上がり時の供給電力は徐々に増加するように制御され、時間の経過と共に、供給電力の通電率は、基本デューティYに基づく供給電力の通電率に漸近する。この電力供給により、便座検知温度TSも、便座暖房初期の立ち上がり時は、徐々に増加し、時間の経過と共に便座暖房設定温度T0に漸近し、便座2aが便座暖房設定温度T0に暖房される。従って、本実施例の便座暖房装置1は、通電開始時のヒータ3aの温度が低く、電気抵抗が小さい状態において、ヒータ3aの通電開始時の突入電流は小さく抑えられ、過電流が抑制され、トイレット室の他の電気機器の性能低下あるいは屋内のブレーカの遮断が防止できる。
【0103】
ここで、一定時間t0は、入室検知時の便座検知温度TSに基づいてLPF24により設定される。この一定時間t0は、過電流を抑制するために設定され、入室検知時から一定時間t0では、ヒータ3aが十分に温まらず、電気抵抗が低い状態であるので、低い抵抗値に適合した適性値の電流がヒータ3aに通電される。一定時間以降はヒータ3aの温度上昇により電気抵抗が高くなり急速に加熱するのに十分な大きさの電流を通電できる。
【0104】
また、本実施例の便座暖房装置1は、サーミスタ4により検知された便座検知温度TSが加算器8にフィードバックされ、加算器8から出力される偏差ΔT0Sが、順次、コントローラ14、LPF24に伝達され、LPF24から初期低減デューティが出力される。この初期低減デューティに基づきヒータ3aへの供給電力がデューティ制御され、ヒータ3aに適正な電力が供給される。従って、本実施例の便座暖房装置1は、ヒータ3aの抵抗変化あるいは便座温度の異常に対応して適正な便座温度に制御できると共に、トイレット室の温度、使用者の体温などの環境温度あるいは電源42の電圧変動に左右されずに便座を便座暖房設定温度T0に暖房できる。
【0105】
また、コントローラ14は、入力された偏差ΔT0Sにオーバーシュート抑制制御(例えば、PID制御など)をし、便座検知温度TSのオーバーシュートを抑制する。これにより、本実施例の便座暖房装置1は、少ない電力で、短時間に便座検知温度TSが便座暖房設定温度T0に暖房される。
【0106】
尚、本実施例の便座暖房装置1のブロック線図B6では、コントローラ14の出力側にLPF24が設けられているが、LPF24に代わって、前述した移動平均演算手段(図7)、加重移動平均演算手段(図8)、および初期偏差低減手段(図9)と同構成の初期デューティ低減手段のうちいずれか一つを初期デューティ低減手段として設けても良い。
【0107】
尚、移動平均演算手段を設けた場合は、移動平均演算手段により、順次、入室検知時の基本デューティY1と次の時点の基本デューティY2との移動平均M1=(Y1+Y2)/2、基本デューティY2と次の時点の基本デューティY3との移動平均M2=(Y2+Y3)/2、・・・、基本デューティYNと次の時点の基本デューティYN+1との移動平均MN=(YN+Y(N+1))/2が算出される。移動平均M1、M2、・・・、MNは、それぞれ基本デューティY1、Y2、・・・、YNより小さく、時間の経過と共に基本デューティに漸近し、ヒータ3aに電力を供給するデューティとして、移動平均演算手段から順次、出力される。上記のNは、N=1、2、・・・である。
【0108】
加重移動平均演算手段を設けた場合は、加重移動平均演算手段により、順次、入室検知時の基本デューティY1と次の時点の基本デューティY2との加重移動平均W1=(Y1+1×Y2)/2、基本デューティY2と次の時点の基本デューティY3との加重移動平均W2=(Y2+2×Y3)/(2+1)、・・・、基本デューティYNと次の時点の基本デューティYN+1との加重移動平均WN=(YN+N×Y(N+1))/(2+(N−1)が算出される。加重移動平均W1、W2、・・・、WNは、それぞれ基本デューティY1、Y2、・・・、YNより小さく、時間の経過と共に基本デューティに漸近し、ヒータ3aに電力を供給するデューティとして、加重移動平均演算手段から順次、出力される。
【0109】
また、初期偏差低減手段と同構成の初期デューティ低減手段の場合は、入室検知時から一定時間t0までは、この初期デューティ低減手段からは、基本デューティより小さな初期低減デューティが出力され、一定時間t0経過後は、基本デューティが出力される。
【符号の説明】
【0110】
1 便座暖房装置
2a 便座
3a ヒータ(発熱体)
4 サーミスタ(温度検知手段)
5 入室検知手段
6 制御部
8 加算器
9、9a、9b、9c、9d 偏差低減手段
10、11、12、13、14 コントローラ
20 ローパスフィルタ
21 移動平均演算手段
22 加重移動平均演算手段
24 ローパスフィルタ(初期デューティ低減手段)
30 初期偏差低減手段
31 偏差低減器
33 切換スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座と、
前記便座への人の接近を検知する入室検知手段と、
前記便座に配備され前記便座を暖房する発熱体と、
前記便座の温度を検知する温度検知手段と、
前記発熱体に供給する電力をデューティ制御するコントローラと、
前記入室検知手段による人の便座接近検知時から一定時間までは、設定された便座暖房設定温度と前記温度検知手段により検知された便座検知温度に基づいて前記便座暖房設定温度から前記便座検知温度を差引いた偏差より小さな低減偏差を前記コントローラに出力し、前記一定時間経過後は、前記偏差と前記低減偏差のうちいずれか一方を前記コントローラに出力する偏差低減手段と、
を備え、
前記コントローラは、前記偏差低減手段の出力に基づき、前記発熱体に電力を供給するデューティを演算して、前記発熱体に供給する電力をデューティ制御する、ことを特徴とする便座暖房装置。
【請求項2】
前記偏差低減手段は、前記入室検知手段による人の便座接近検知時の前記便座検知温度に基づいて、前記一定時間を設定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の便座暖房装置。
【請求項3】
前記偏差低減手段は、前記便座暖房設定温度を該便座暖房設定温度より低い暖房変動目標温度に低減するローパスフィルタと、低減された前記暖房変動目標温度から前記便座検知温度を差引いた低減偏差を算出する加算器と、を備え、算出された該低減偏差を前記コントローラに出力する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の便座暖房装置。
【請求項4】
前記偏差低減手段は、前記便座暖房設定温度と前記便座検知温度との移動平均を算出する移動平均演算手段と、前記便座暖房設定温度から算出された該移動平均を差引いた前記低減偏差を算出する加算器と、を備え、算出された該低減偏差を前記コントローラに出力する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の便座暖房装置。
【請求項5】
前記偏差低減手段は、前記便座暖房設定温度と前記便座検知温度との加重移動平均を算出する加重移動平均演算手段と、前記便座暖房設定温度から算出された該加重変動移動平均を差引いた前記低減偏差を算出する加算器と、を備え、算出された該低減偏差を前記コントローラに出力する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の便座暖房装置。
【請求項6】
前記偏差低減手段は、前記便座暖房設定温度から前記温度検知手段により検知される便座検知温度を差引いた偏差を算出する加算器と、前記加算器に接続された初期偏差低減手段と、を備え、
前記初期偏差低減手段は、前記便座暖房設定温度と、人の便座接近検知時以降に前記温度検知手段により検知された便座検知温度とに基づき、前記便座暖房設定温度から前記便座接近検知時と便座接近検知時以降のうちいずれか一方の前記便座検知温度を差引いた偏差より小さな低減偏差を出力する偏差低減器と、
前記入室検知手段による人の便座接近検知時から一定時間までは、前記偏差低減器から出力された前記低減偏差を前記コントローラに出力し、前記一定時間経過後は前記加算器により算出された前記偏差を前記コントローラに出力する切換スイッチと、
を備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の便座暖房装置。
【請求項7】
便座と、
前記便座への人の接近を検知する入室検知手段と、
前記便座に配備され前記便座を暖房する発熱体と、
前記便座の温度を検知する温度検知手段と、
設定された前記便座の便座暖房設定温度から前記温度検知手段により検知された前記便座検知温度を差引いた偏差を演算して、出力する加算器と、
前記加算器から出力された前記偏差に基づき、前記発熱体に供給する電力をデューティ制御するデューティの目標となる基本デューティを出力するコントローラと、
前記入室検知手段による人の便座接近検知時から一定時間までは、前記コントローラから出力される前記基本デューティを低減した初期低減デューティを出力し、前記一定時間経過後は、前記初期低減デューティと、前記コントローラから出力される前記基本デューティのうちいずれか一方を出力する初期デューティ低減手段と、
を備え、
前記初期デューティ低減手段の出力に基づき、前記発熱体に供給する電力をデューティ制御する、ことを特徴とする便座暖房装置。
【請求項1】
便座と、
前記便座への人の接近を検知する入室検知手段と、
前記便座に配備され前記便座を暖房する発熱体と、
前記便座の温度を検知する温度検知手段と、
前記発熱体に供給する電力をデューティ制御するコントローラと、
前記入室検知手段による人の便座接近検知時から一定時間までは、設定された便座暖房設定温度と前記温度検知手段により検知された便座検知温度に基づいて前記便座暖房設定温度から前記便座検知温度を差引いた偏差より小さな低減偏差を前記コントローラに出力し、前記一定時間経過後は、前記偏差と前記低減偏差のうちいずれか一方を前記コントローラに出力する偏差低減手段と、
を備え、
前記コントローラは、前記偏差低減手段の出力に基づき、前記発熱体に電力を供給するデューティを演算して、前記発熱体に供給する電力をデューティ制御する、ことを特徴とする便座暖房装置。
【請求項2】
前記偏差低減手段は、前記入室検知手段による人の便座接近検知時の前記便座検知温度に基づいて、前記一定時間を設定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の便座暖房装置。
【請求項3】
前記偏差低減手段は、前記便座暖房設定温度を該便座暖房設定温度より低い暖房変動目標温度に低減するローパスフィルタと、低減された前記暖房変動目標温度から前記便座検知温度を差引いた低減偏差を算出する加算器と、を備え、算出された該低減偏差を前記コントローラに出力する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の便座暖房装置。
【請求項4】
前記偏差低減手段は、前記便座暖房設定温度と前記便座検知温度との移動平均を算出する移動平均演算手段と、前記便座暖房設定温度から算出された該移動平均を差引いた前記低減偏差を算出する加算器と、を備え、算出された該低減偏差を前記コントローラに出力する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の便座暖房装置。
【請求項5】
前記偏差低減手段は、前記便座暖房設定温度と前記便座検知温度との加重移動平均を算出する加重移動平均演算手段と、前記便座暖房設定温度から算出された該加重変動移動平均を差引いた前記低減偏差を算出する加算器と、を備え、算出された該低減偏差を前記コントローラに出力する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の便座暖房装置。
【請求項6】
前記偏差低減手段は、前記便座暖房設定温度から前記温度検知手段により検知される便座検知温度を差引いた偏差を算出する加算器と、前記加算器に接続された初期偏差低減手段と、を備え、
前記初期偏差低減手段は、前記便座暖房設定温度と、人の便座接近検知時以降に前記温度検知手段により検知された便座検知温度とに基づき、前記便座暖房設定温度から前記便座接近検知時と便座接近検知時以降のうちいずれか一方の前記便座検知温度を差引いた偏差より小さな低減偏差を出力する偏差低減器と、
前記入室検知手段による人の便座接近検知時から一定時間までは、前記偏差低減器から出力された前記低減偏差を前記コントローラに出力し、前記一定時間経過後は前記加算器により算出された前記偏差を前記コントローラに出力する切換スイッチと、
を備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の便座暖房装置。
【請求項7】
便座と、
前記便座への人の接近を検知する入室検知手段と、
前記便座に配備され前記便座を暖房する発熱体と、
前記便座の温度を検知する温度検知手段と、
設定された前記便座の便座暖房設定温度から前記温度検知手段により検知された前記便座検知温度を差引いた偏差を演算して、出力する加算器と、
前記加算器から出力された前記偏差に基づき、前記発熱体に供給する電力をデューティ制御するデューティの目標となる基本デューティを出力するコントローラと、
前記入室検知手段による人の便座接近検知時から一定時間までは、前記コントローラから出力される前記基本デューティを低減した初期低減デューティを出力し、前記一定時間経過後は、前記初期低減デューティと、前記コントローラから出力される前記基本デューティのうちいずれか一方を出力する初期デューティ低減手段と、
を備え、
前記初期デューティ低減手段の出力に基づき、前記発熱体に供給する電力をデューティ制御する、ことを特徴とする便座暖房装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−75531(P2012−75531A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221649(P2010−221649)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]