説明

便座装置およびそれを使用した衛生洗浄装置

【課題】便座の着座面の温度を極めて短時間で昇温させるとともに、万が一の故障したときにも安全な便座暖房を提供する。
【解決手段】第一の防水絶縁箔455a、第二の防水絶縁455bで、金属箔ユニット454の両面を挟持したので、外部からの浸水を防止して絶縁性を強化した便座ヒータを構成でき、密領域部460cにおける第一の金属箔453と第一の防水絶縁箔455aの間に熱伝導ペースト材496aからなる伝熱促進体496を設けて感熱部470aを密着させたので、密領域部460cから着座面410Uへの不要な熱移動を抑制し、感熱部470aへ熱移動を集中化でき、着座面410Uの温度過昇を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度過昇防止装置を設けた便座装置とそれを使用した衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の便座装置では、図18に示すように金属製便座1の裏面に加熱手段2で便座を所定温度まで昇温させ、省エネを図るというものであった(例えば、特許文献1参照)。すなわち、この種の暖房便座において、加熱手段2は省電力のため使用者の便座への着座直前に通電して着座するまでの短時間に、すばやく便座を適温にしなければならないので、金属製の便座1を使用している。
【0003】
従って、臀部を直接に乗せ、かつ短時間に温度上昇させる暖房便座では、何らかの異常により便座への通電が所定の設定温度でも停止せずに継続されるような事態が発生した時、比較的短時間で適温を越えて使用者に不快感を与え、これにより使用者が便座から立ち上がる必要が生じるという事態も考えられる。
【特許文献1】特開2003−79539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、前記従来の構成では、万が一の異常事態などにより便座1の温度過昇が発生しうるという課題があった。
【0005】
前記従来の技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、なんらかの異常事態が発生し便座の温度制御が不能となった場合でも、便座の温度過昇を速やかに検知して温度過昇の防止を可能とし、それにより安全な便座装置と、さらにそれを使用した衛生洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の便座装置は、着座面を有し金属材料を含む便座と、前記着座面の裏側に貼着した便座ヒータと、感熱部を具備する温度過昇防止装置とを備え、前記便座ヒータは、密に配線したパターンの蜜領域部を一部に有する線状発熱体を保持すると共に、前記線状発熱体を第一の防水絶縁箔と第二の防水絶縁箔とで挟持して構成し、前記密領域部において線状発熱体と第一の防水絶縁箔との間に伝熱促進体を設けると共に、第一の防水絶縁箔に前記温度過昇防止装置の感熱部を密着させたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の便座装置は、線状発熱体を第一および第二防水絶縁箔で挟持したことにより、外部からの浸水を防止して絶縁性を強化した便座ヒータを構成でき、さらに密領域部において線状発熱体と第一の防水絶縁箔との間に伝熱促進体を設けるとともに、第一の防水絶縁箔に温度過昇防止装置の感熱部を密着させたことで、密領域部からの発熱を一旦伝熱促進体に無駄なく熱移動させるとともに、第一の防水絶縁箔を介して感熱部へ熱伝導させることができるため、何らかの異常事態によって生じる着座面の温度過昇を速やかに検知できて絶縁性の確保といった電気的安全性と、着座面の高温化防止といった熱的安全性を共に確保できる便座装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、着座面を有し金属材料を含む便座と、前記着座面の裏側に貼着した便座
ヒータと、感熱部を具備する温度過昇防止装置とを備え、前記便座ヒータは、密に配線したパターンの蜜領域部を一部に有する線状発熱体を保持すると共に、前記線状発熱体を第一の防水絶縁箔と第二の防水絶縁箔とで挟持して構成し、前記密領域部において前記線状発熱体と第一の防水絶縁箔との間に伝熱促進体を設けると共に、第一の防水絶縁箔に前記温度過昇防止装置の感熱部を密着させたものである。
【0009】
これにより、外部からの浸水を防いで線状発熱体に水分が接触することを防止して絶縁性を強化した便座ヒータを構成できる。
【0010】
そして、密領域部において線状発熱体と防水絶縁箔との間に伝熱促進体を設け、さらに防水絶縁箔に温度過昇防止装置の感熱部を密着させたことで、密領域部からの発熱を一旦伝熱促進体に無駄なく熱移動させ、同時に防水絶縁箔を介して感熱部へ熱伝導させることができる。
【0011】
したがって、何らかの異常事態によって生じる着座面の温度過昇を速やかに検知できるため、絶縁性の確保といった電気的安全性と、着座面の高温化防止といった熱的安全性を共に確保できる便座装置を提供することができる。
【0012】
第2の発明は、特に第1の発明において、便座ヒータは、第一の金属箔と第二の金属箔の間に線状発熱体を挟持して所定の配設パターンを保持し、さらに第一の金属箔と第二の金属箔を、各々第一の防水絶縁箔と第二の防水絶縁箔で挟持し、第一の防水絶縁箔と第二の防水絶縁箔との境界部における浸水を防止したものである。
【0013】
これにより、第一の金属箔と第二の金属箔の間に線状発熱体を挟持して所定の配設パターンを保持することで、線状発熱体からの発熱を第一、第二の金属箔全体に均一に拡散させることができる。
【0014】
そして、第一、第二の金属箔を各々第一、第二の防水絶縁箔で挟持し、第一の防水絶縁箔と第二の防水絶縁箔との境界部での浸水を防止したことで、第一、第二の金属箔、および線状発熱体が水分と接触するのを確実に防止することができる。
【0015】
このようにして、均一な熱拡散状態を維持でき、かつ外部からの浸水を防止して絶縁性を確保した安全なシート型の便座ヒータを実現することができる。
【0016】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、第一の防水絶縁箔と第二の防水絶縁箔は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどのポリエステル系樹脂箔のうち、いずれか1つを用いたものである。
【0017】
これにより、線状発熱体の実際の最高使用温度にあわせた選択が可能である。例えば、180℃程度までならポリエチレンテレフタレート(PET)、200℃程度であればポリエステルイミド(PEI)、250℃程度であればポリアミドイミド(PAI)またはポリイミド(PI)といった選択が可能となる。
【0018】
第4の発明は、特に第1から第3のいずれか1つの発明において、伝熱促進体は、熱伝導ペースト材の充填部で構成したものである。
【0019】
これにより、密領域部において、線状発熱体と第一の防水絶縁箔との間には、伝熱促進体として熱伝導ペースト材を空隙なく充填しているため、温度過昇防止装置の感熱部の形状に合わせて密着状態を実現でき、多様な感熱部の形状に対応できる。
【0020】
さらに、密領域部と感熱部との密着状態は、密領域部の発熱により熱伝導ペースト材がある程度の熱膨張を起こし、そのため密領域部と感熱部との密着状態はさらに向上し、感熱部への熱移動を促進できる。
【0021】
第5の発明は、特に第1から第4のいずれか1つの発明において、伝熱促進体は、Cu成型体を含む構成としたものである。
【0022】
これにより、伝熱促進体は、高熱伝導性の金属であるCu成型体を含むものとなるため、密領域部からの発熱は効率よく伝熱促進体に吸収されて温度上昇し、さらに第一の防水絶縁箔から感熱部に熱伝達されるため、着座面への不必要な熱移動を抑制して感熱部への熱移動を集中化できる。
【0023】
第6の発明は、特に第1から第5のいずれか1つの発明において、伝熱促進体は、熱伝導ペースト材の充填部およびCu板で構成し、Cu板を防水絶縁箔に密着させたものである。
【0024】
これにより、伝熱促進体は、密領域部からの発熱を、直接Cu板に熱伝導する第一の熱量と、空隙なく充填された熱伝導ペースト材を介してCu板に熱伝導する第二の熱量として吸収し、その結果Cu板全体を効率よく温度上昇させる作用を持ち、さらに第一の防水絶縁箔から感熱部に熱伝達させるため、感熱部への熱移動を集中化できる。
【0025】
また、Cu板は平板材、コイル材などから打抜き加工により容易に構成できるので、第一の防水絶縁箔を介して接触する感熱部の形状が、例えば平板形状であれば、全く絞り加工などを必要としない使用が可能であり、低コストで汎用性の高い伝熱促進体が得られる。
【0026】
第7の発明は、特に第1から第6のいずれか1つの発明において、伝熱促進体は、全体あるいは大部分をCu成型体で構成し、Cu成型体の一部の形状を密領域部の凹凸形状に略一致させたものである。
【0027】
これにより、伝熱促進体の全体あるいは大部分が高熱伝導性の金属であるCuで構成されることになり、同時にCu成型体の一部と密領域部の凹凸形状との接触面積の拡大により、密領域部からの発熱は急速かつ効率よくCu成型体に吸収され、さらに第一の防水絶縁箔から感熱部に熱伝達されるため、着座面への不必要な熱移動を抑制して感熱部への熱移動を集中化できる。
【0028】
第8の発明は、特に第1〜第7のいずれか1つの発明において、密領域部は、使用者が通常着座する頻度の少ない領域に設けたものである。
【0029】
この時、密領域部での発熱は、温度過昇防止装置の感熱部へ熱移動して、該当する着座面の部位での温度上昇が鈍くなる場合、または、感熱部と密領域部との密着が不十分で、該当する着座面の部位での温度過昇を招く場合とが考えられる。
【0030】
そのため、使用者の腿部、臀部といった確実に接触する着座部の部位を遠く離れた部位、例えば、便座ヒータ後方の外周部近傍の左右の端部に密領域部を位置させることにより、使用者が着座した際に便座の温度分布に違和感を抱くことなく、安全で快適な使用感を与えることができる。
【0031】
第9の発明は、特に第1〜第8のいずれか1つの発明において、温度過昇防止装置は、サーモスタットを用いたものである。
【0032】
これにより、着座面の温度過昇が発生した時に速やかにサーモスタットにより通電を遮断し、安全に機器の停止を行うことが可能であり、使用者の安全が確保される。
【0033】
第10の発明は、特に第1から第9のいずれか1つに記載の便座装置と、本体部とを備えたものである。
【0034】
これにより、着座面に生じた異常な温度過昇を応答速度の速い温度過昇防止装置で検知して、遮断することができ、安全で快適な衛生洗浄装置を提供することができる。
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0036】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における便座装置の概略構成の断面図、図2は同便座装置に用いた便座ヒータの正面図、図3は同便座全体の分解斜視図、図4は同便座ヒータを着座面に貼着した状態図、図5は図2の点線領域イの部分拡大図、図6は同線状発熱体の部分拡大断面図、図7は他の線状発熱体の例の部分拡大断面図、図8は同便座装置の制御ブロックの概念図、図9は同温度過昇防止装置を装着した便座ヒータの正面図、図10は同温度過昇防止装置の斜視図、図11は同温度過昇防止装置の係止具の斜視図、図12は同温度過昇防止装置の装着部の部分拡大断面図、図13は同第一、第二の防水絶縁箔の境界部の構成例を示す部分拡大断面図、図14は同温度過昇防止装置と着座面の温度上昇特性図である。
【0037】
以上の図面を用いて、本発明の実施の形態1における便座装置の構成、および動作、作用について説明する。
【0038】
図1から図4において、便座400は、合成樹脂製の便座基盤420と、アルミニウムなどの高い熱伝導性を有する金属で形成された着座面410Uと、便座基盤420と着座面410Uの間に便座ヒータ450が介在する構成で、便座ヒータ450は、粘着層(図示せず)を着座面410Uの内面部の一定の位置に貼着されて固定されている。また、便座ヒータ450には、通常時の着座面410Uの温度調節のためのサーミスタ401aが装着されている。
【0039】
さらに、便座ヒータ450は、一定のパターンで線状発熱体460を配線させたもので、その一部のパターンは、内部にバイメタルスイッチ(図示せず)を有するサーモスタットからなる温度過昇防止装置470の感熱部470a(図12)に接触し、感熱部470aに熱集中させるため所定パターンで配線した線状発熱体460の一部を密に配線した密領域部460cとなっている。
【0040】
一方、制御部90には、人体検知センサ600(図8)からの信号入力600a、着座信号入力610a、サーミスタ401aからの出力、さらには、間に温度過昇防止装置470を介して便座ヒータ450の通電経路が接続されている。
【0041】
図2、図5に示すように、線状発熱体460は、便座400の着座面410Uの形状に合わせて左右方向に蛇行する蛇行形状に配設される。線状発熱体460は、蛇行形状の曲げ部が着座面の外側の側辺および内側の側辺の近傍に位置するように配置されている。具体的には、1本の連続する線状発熱体460が、第1系列Aの線状発熱体460aと、第2系列Bの線状発熱体460bとに分けられ、両者はほぼ平行に配列されている。
【0042】
この配列は、曲げ部間の線間隔が短いため、熱膨張、収縮に起因する線状発熱体460の線長の変化が小規模となり、また曲げ部で熱膨張、収縮による熱ストレスを緩衝し、断線などを抑制する構成となっている。なお、図2の点線領域イの曲げ部の長さLa、Lbおよび曲げ部間の間隔Sは、任意の調整が可能で、それによって便座ヒータ450の加熱分布を調整することができる。
【0043】
例えば、便座ヒータ450の外側および内側の側辺近傍の加熱密度が便座ヒータ450の中央部の加熱密度よりも高くなるように、曲げ部の長さLa,Lbおよび曲げ部間の間隔Sを調整し、便座ヒータ450のほぼ全領域において均等な暖房温度を維持することができる。また、本例では、第1系列Aの線状発熱体460aでの電流の向きが、第1系列Bの線状発熱体460bでの電流の向きと対向するため、双方の線状発熱体460a、460bから発生する磁場が打ち消される傾向にあり、その結果、ノイズ等の発生が抑制される。
【0044】
図2、図12、図13(a)(b)で、着座面410Uは、例えば厚さ1mmのアルミニウム板413により形成される。アルミニウム板413の上下面には、約150〜180℃の耐熱性を有するポリエステル樹脂製の上面塗装膜411、下面塗装膜412が約0.05〜0.2mmの厚さで形成され、アルミニウム板の生地が露出しないようになっている。なお、着座面410Uには、アルミニウム板413以外にも、銅板、ステンレス板、アルミニウムめっき鋼板および亜鉛アルミニウムめっき鋼板のうちいずれか、または複数の組合せを用いてもよい。
【0045】
一方、着座面410Uの下面塗装膜412側には便座ヒータ450が貼着されている。便座ヒータ450は、第一の金属箔453の粘着層(図示せず)側と第二の金属箔451の非粘着層側との間に線状発熱体460を挟持させて、前述の蛇行形状配列を保持させたものである。第一の金属箔453、第二の金属箔451は、例えば、比較的熱伝導率の高い厚さ0.05mmのアルミニウム箔を用いているが、その他、銅箔などさらに高い熱伝導率を有する金属材料を使用すると、便座ヒータ450としての加熱性能は上昇する。
【0046】
また、便座ヒータ450は、まず、第一の金属箔453の粘着層側(図示せず)と第二の金属箔451の非粘着層側との間に線状発熱体460を挟持してシート型の金属箔ユニット454を構成する。さらに、金属箔ユニット454、すなわち第一の金属箔453、第二の金属箔451の挟持体よりも大きい寸法(本例では周囲5〜10mm)を有する第一の防水絶縁箔455a、第二の防水絶縁箔455bで挟持したものとなっている。
【0047】
具体的には、第一の金属箔453側に第一の防水絶縁箔455aの粘着層側(図示せず)を貼着し、第二の金属箔451の粘着層側(図示せず)に第二の防水絶縁箔455bの非粘着層側を貼着し、金属箔ユニット454の両面を挟持して、第二の防水絶縁箔455bの粘着層側(図示せず)を、着座面410Uの下面塗装膜412側を貼着したシート型構成の便座ヒータ450となっている。
【0048】
なお、第一の防水絶縁箔455aの粘着層側と第二の防水絶縁箔455bの非粘着層側との貼着部は、金属箔ユニット454よりも大きい寸法部である周囲5〜10mmの領域に相当し、第一の金属箔453、第二の金属箔451、および線状発熱体460への外部からの浸水を防止するための境界部458となっている。
【0049】
境界部458としては、まず、図13(a)のように、第一の防水絶縁箔455aの粘着層側と、第二の防水絶縁箔455bの非粘着層側との貼着部を、境界部458aとする方法が比較的簡便である。
【0050】
さらに、図13(b)に示すように、第一の防水絶縁箔455aを全周または部分的に第二の防水絶縁箔455bよりも大きい寸法にして、そのはみ出し部分を第二の防水絶縁箔455b側に折り返して境界部458bを構成する方法がある。この場合、境界部458bの加工性としては複雑となるが、着座面410Uへの貼着の際に皺の発生、または曲面が多い部分への貼着の際に、浸水防止効果を補強することが可能である。
【0051】
また、第一の防水絶縁箔455a、第二の防水絶縁箔455bに使用する材質としては、例えば、ポリエステル系樹脂の中で比較的汎用性の高いポリエチレンテレフタレート(PET)を用いている。そして、第一の防水絶縁箔455a、第二の防水絶縁箔455bの厚みは、金属箔ユニット454を強固に挟持するための軟性、および防水絶縁性を確保するためには、0.012〜0.05mmの範囲であれば良く、本例では最適値として0.025mmとした。
【0052】
なお、第一の防水絶縁箔455a、第二の防水絶縁箔455bの材質は、線状発熱体の使用温度範囲、許容コストなどにより、ポリエステル系樹脂の中でもさらに耐熱性の高い材料の選択が可能である。例えば、200℃程度であればポリエステルイミド(PEI)、250℃程度であればポリアミドイミド(PAI)またはポリイミド(PI)といった選択が可能である。
【0053】
図6に示す線状発熱体460は、断面が略円形の発熱線463a、第一の絶縁被覆層としてエナメル層463bおよび第二の絶縁被覆層462により構成される。断面が略円形の発熱線463aの外周面がエナメル層463b、次いで第二の絶縁被覆層462で順に被覆される。エナメル層463bを形成した発熱線463aは通常エナメル線463と呼称される。
【0054】
発熱線463aは、例えば0.16〜0.25mmの直径を有する、銅または銅合金からなる。本例では、発熱線463aとして、直径0.168mmの4%Ag−Cu合金からなる高抗張力型ヒータ線が用いられる。因みに抵抗値は0.88Ω/mのものを用いている。
【0055】
また、エナメル層463bは、例えば200℃程度の耐熱性を有するポリエステルイミド(PEI)からなる。エナメル層463bの膜厚は、0.02mm以下であり、本例では0.01〜0.016mmである。このようなエナメル線463は、エナメル層463bの膜厚が極めて薄い0.01〜0.02mm程度であっても、電気用品技術基準である1000Vで1分間以上の電気絶縁耐圧性能を十分確保することができる。また、エナメル層463bの他の材料としては、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)などを用いれば、さらに250℃程度まで耐熱性を上昇させることができる。
【0056】
さらに、第二の絶縁被覆層462は、例えば260℃の耐熱性を有するパーフルオロアルコキシ混合物(以下PFA層462と称する)等のフッ素樹脂からなる。PFA層462の厚みは、例えば0.05〜0.15mmである。PFA層462の形成は、押出し加工により行うことができる。この場合、PFA層462の厚みが0.05mm程度に薄くても、落雷時における電気絶縁耐圧性能を確保することができる。
【0057】
したがって、発熱線463a上にエナメル層463bと薄膜状のPFA層462といった二重の絶縁被覆層を構成した線状発熱体460が得られる。その外径は、0.3〜0.5mmの範囲に留めることができ、本例の場合0.35mm程度として絶縁耐圧を確保すると共に、発熱線463aから第二の金属箔451、第二の防水絶縁箔455bを通じ、着座面410Uへの熱伝導を極めて俊敏に行うことができる。
【0058】
このように耐熱性能に優れたエナメル線463をヒータ線として使用した場合、十分短時間で着座面410Uを昇温でき、かつ電気絶縁性および安全性を確保できるので、種々の便座装置への適用が可能である。
【0059】
図7は、線状発熱体460の他の構成例で、複数のエナメル線463が撚り合わされたもので、各エナメル線463は、直径0.09mmの発熱線463aに第一の絶縁被覆として膜厚0.01mmのエナメル層463bが形成される。
【0060】
さらに、複数のエナメル線463の結束を囲繞するように、第二の絶縁被覆層としてPFA層462を形成することにより同様に二重の絶縁構造を確保している。なお、図7では、7本のエナメル線463が撚り合わされているが、エナメル線463の数は7本に限定されるものではない。
【0061】
この構成では、複数のエナメル線463を撚り合わせた結束とすることで、熱膨張、収縮による熱ストレスを線束全体に分散させることができるため、断線などの事態を抑制できる。また、線束のうち少なくとも1本をエナメル層463bのない非絶縁電線とすることにより、局所高熱等によりいずれかのエナメル線463のエナメル層463bが絶縁破壊された場合にも、その絶縁破壊を迅速に検知し、安全に発熱線463aへの通電を遮断することができる。
【0062】
図8に示す便座装置110は、本体部200、遠隔操作装置300、便座400および人体検知センサ600を備える。本体部200は、制御部90、温度測定部401、ヒータ駆動部402、便座温調ランプRA1および着座センサ610を含む。また、便座部400は、便座ヒータ450、温度過昇防止装置470、およびサーミスタ401aを備える。
【0063】
制御部90は、例えばマイクロコンピュータからなり、使用者の入室および便座400の温度等の判定、タイマ機能、種々の情報の記憶、ならびに、ヒータ駆動部402の動作を制御するための通電率切替などの機能を有する。
【0064】
温度測定部401は、サーミスタ401aに接続され、サーミスタ401aから出力される信号に基づいて便座400の温度を測定し、ヒータ駆動部402は、便座ヒータ450に接続され、便座ヒータ450を駆動する。
【0065】
本例では通常の使用状態として、初期設定時では、制御部90がヒータ駆動部402を制御することにより、便座400が待機温度として例えば約18℃に温度調整される。制御部90では、人体検知センサ600からの入室検知信号により使用者のトイレットルームへの入室を検知する。ついで、制御部90は、便座400の測定温度値、および便座設定温度に基づき、所定のヒータ制御パターンの選択を経て、ヒータ駆動部402により便座ヒータ450が駆動され、便座400の温度が設定温度へと瞬時に加温される。したがって、使用者が便座部400に着座した時に冷感を覚えることなく、快適な使用が可能である。
【0066】
また、万一、制御部90、その他に異常が発生して、便座ヒータ450への通電が停止せず、便座400の温度が設定温度を超える状態になると、温度過昇防止装置470が作動して、使用者に対する熱的安全性を確保でき、便座温度に抑えることができる。
【0067】
次に、図2、図9〜12で、線状発熱体460が高密度で蛇行する密領域部460cは、使用者が通常着座する頻度の極めて少ない領域に位置するように、便座ヒータ450の片側後方の外周部近傍に構成している。そして、密領域部460cには、バイメタルスイ
ッチ(図示せず)を内蔵したサーモスタットからなる温度過昇防止装置470が装着されている。
【0068】
この時、密領域部460cでの発熱は、温度過昇防止装置470の感熱部470aへ熱移動して、該当する着座面410Uの部位での温度上昇が鈍くなる場合、または、感熱部470aと密領域部460cとの密着が不十分で、該当する着座面410Uの部位での温度過昇を招く場合とが考えられる。
【0069】
そのため、使用者の腿部、臀部といった確実に接触する着座面410Uの部位を遠く離れた部位、便座ヒータ450の片側後方の外周部近傍に密領域部460cを位置させることにより、使用者が着座した際に便座の温度分布に違和感を抱くことなく、安全で快適な使用感を与えることができる。
【0070】
ここで、サーモスタットは、復帰型と非復帰型があり、復帰型を用いた場合は、サーモスタットが接続された通電経路中に非復帰型の温度過昇防止装置を別途設置する方が望ましい。本例では、サーモスタットは一例として復帰型を用い、非復帰型として温度ヒューズ(図示せず)を便座ヒータ450に設置した構成である。温度過昇防止装置470は、感熱部470a(図11、図12)を略円缶状のアルミニウム等の熱伝導性の良好な金属で構成している。感熱部470aは、その周囲を囲繞するように、同様にアルミニウムなどからなる固定フランジ470bで嵌合させ、感熱部470aと固定フランジ470bを密領域部460cに密着させている。
【0071】
感熱部470aと密領域部460cとは、着座面410U側に設けた係止具480と固定フランジ470bとの間に密領域部460cを挟持しながら、係止具480に設けた2箇所の円筒状の突起部480aを、固定フランジ470bの対応する位置決め孔に合わせたのち、突起部480aの先端を圧着嵌合させることによって、密着状態を確保することができる。
【0072】
この時、密領域部460cについては、隣接する線状発熱体460の間隔が他の配線パターン部に比べて密になっているため、第一の金属箔453と第一の防水絶縁箔455aとの間に空隙ができる可能性がある。本例では、密領域部460c全体で、第一の金属箔453と第一の防水絶縁箔455aとの間の空隙の発生を防止するため、該当する第一の金属箔453と第一の防水絶縁箔455aとの間に、以下の伝熱促進体496を構成した。
【0073】
伝熱促進体496は、熱伝導率0.8〜1.0W/m・Kのシリコン系の熱伝導グリスからなる熱伝導ペースト材496aを充填したものである。また、感熱部470aと第一の防水絶縁箔455aとの接触部の周囲には、補助的に熱伝導ペースト材496aを塗布しているが、温度過昇防止装置470の感度により、この塗布の有無は裁量の範囲である。なお、熱伝導ペースト材496aは、シリコン系に限らず、酸化亜鉛なども使用可能で、ペースト状であれば問題ない。
【0074】
したがって、本構成での密領域部460cでは、線状発熱体460は第一の金属箔453、熱伝導ペースト材496a、第一の防水絶縁箔455aを介して、温度過昇防止装置470の感熱部470aの表面形状に関わらずに密着させることができる。そのため、密領域部460cに、感熱部470aの面形状に対応した接触状態を確保しうる柔軟性を具備させることができ、それらに応じて空隙を発生させることのない良好な密着状態を実現できる。
【0075】
また、本例では、感熱部470aと固定フランジ470bの材質にアルミニウムまたは
アルミニウム合金を用いたが、CuまたはCu合金などのさらに高熱伝導性の金属を用いることも可能である。但しその場合の注意事項として、便座400内への水分混入という事態も想定されるため、異種金属の接触部で発生しやすいガルバニ腐食防止の点から、感熱部470a、固定フランジ470b、および係止具480はほぼ同一の材質か、イオン化傾向が比較的近い材質を用いることが望ましい。
【0076】
一般に、便座400は着座面410Uに直接皮膚を接触させて着座するため、安全に対しては十分な配慮が必要である。通常使用では安全、快適に使用できるが、万一何らかの異常事態により制御部90、その他に不具合が生じ、便座ヒータ450への通電制御が不能となった場合は、早急な安全装置の作動が必要である。本例における温度過昇防止装置470は、以下に述べるように作動する。
【0077】
図14は、制御部90が故障したことを想定して線状発熱体460に通電した場合の温度過昇防止装置470の検知温度と着座面410Uの表面温度を測定した結果である。図14において曲線A、A’は着座面410Uの表面温度であり、曲線B、B’は温度過昇装置470の検知温度である。
【0078】
線状発熱体460への通電が開始されると、着座面410Uの表面温度は時間t1で便座最高設定温度T1に達する。通常であればT1に達した時点で、制御部90からの指令で通電を停止させるが、何らかの異常事態が発生した場合は、通電は継続され続ける場合がある。温度過昇防止装置470のOFF動作温度がT3に設定されていると、着座面410Uの表面温度が便座最高設定温度T1以上であり、確実に異常昇温であると判断できるT2に達した時に、温度過昇防止装置470内部のバイメタルスイッチが反転動作して、線状発熱体460への通電を遮断する。このとき、着座面410Uと温度過昇防止装置470の温度は、着座面410Uでの熱拡散作用により、(t2−t1)秒間過昇温し続ける。
【0079】
ここで、温度過昇防止装置470のOFF動作温度は、物作り面や、コスト面を考慮すると交差0とするのは非常に困難であり、公差は±2℃とするのが一般的である。つまり、公差を考慮すると温度過昇防止装置470のOFF動作温度は(T3)〜(T3+4)となる。OFF動作温度が(T3+4)であれば、着座面410Uの温度と温度過昇防止装置470の検知温度の曲線はA’、B’となり、時間t3で温度過昇防止装置470が動作し、通電回路が遮断される。この場合は(t3−t1)秒間過昇温し続けたこととなる。
【0080】
つまり、温度過昇防止装置470のOFF動作温度のバラツキを考慮すると、過昇温する時間は最短で(t2−t1)秒間、最長で(t3−t1)秒間となる。安全面を考慮すると、過昇温時はできるだけ短時間で回路を遮断しなければならない。そのために、曲線Bの傾きを大きくする、つまり温度過昇防止装置470の温度応答速度を速くすることによって、時間(t3−t1)を短くすることができ、着座面410Uの温度が過昇する前に、線状発熱体460への通電回路を遮断することが可能となり、万が一の時でも安心安全に使用できる。
【0081】
以上のように、本例においては、第一の防水絶縁箔455a、第二の防水絶縁455bで、便座ヒータ450の金属箔ユニット454の両面を挟持して、外部からの浸水を防止しているため、絶縁性を強化した便座ヒータ450を構成できるが、通常そのままの構成では、温度過昇防止装置470の感熱部470aと密領域部460cとの距離が拡大して、温度過昇防止装置470の温度応答遅れが発生する場合がある。
【0082】
このような場合においても、密領域部460cにおける線状発熱体460は、第一の金
属箔453と第一の防水絶縁箔455aとの間に、伝熱促進体496として熱伝導ペースト材496aを空隙なく充填し、第一の防水絶縁箔455aを介して、温度過昇防止装置470の感熱部470aの表面形状に合わせて完全に接触させているため、空隙の発生を抑えて感熱部470aとの密着状態を実現できる。
【0083】
また、密領域部460cの発熱により、熱伝導ペースト材496aが一定の熱膨張を起こし、そのため密領域部460cと感熱部470aとの密着状態はさらに向上し、着座面410Uへの不必要な熱移動を抑制する一方、感熱部470aへの熱移動を促進できる。したがって、前記の温度過昇防止装置470の温度応答遅れを生じさせることなく、何らかの異常によって生じる温度過昇を速やかに検知して、便座ヒータ450への通電を遮断することができる。
【0084】
このようにして、外部からの浸水などの事態でも絶縁性の確保といった電気的安全性と、着座面410Uの高温化防止といった熱的安全性を共に確保できる便座装置110を提供することができる。
【0085】
(実施の形態2)
図15は、本発明の実施の形態2における便座装置の温度過昇防止装置の装着部の部分拡大断面図である。以上の図面を用いて、本発明の実施の形態2における便座装置の構成、および動作、作用について説明する。
【0086】
図15に示す本実施の形態において、実施の形態1と異なる点は、第一の金属箔453と第一の防水絶縁箔455aとの間に、以下の伝熱促進体497を構成したところである。
【0087】
伝熱促進体497は、第一の金属箔453と第一の防水絶縁箔455aとの間に、熱伝導ペースト材497aを充填し、温度過昇防止装置470の感熱部470aの感熱面積に近い寸法の高熱伝導性のCu成型体499としてCu板499aを設けたものである。
【0088】
ちなみに、Cu板499aの厚さは、0.1〜0.5mm程度が適当であるが、本例では変形防止などの観点から0.3mmを使用している。また、本例では、Cu板499aは、感熱部470aの形状に合わせて一般的な平板形状としたが、感熱部470aの他の形状に合わせてCu板497bを絞り加工することも可能である。なお、実施の形態1と同一符号のものは同一構成を示し、説明は省略する。
【0089】
伝熱促進体497の作用として、密領域部460cからの発熱は、第一の金属箔453から直接Cu板499aに熱伝導する熱量と、熱伝導ペースト材497aを介してCu板499aに熱伝導する熱量により、Cu板499a全体が効率よく温度上昇し、同時に第一の防水絶縁箔455aから感熱部470aに熱伝達されるため、着座面410Uへの不必要な熱移動を抑制して感熱部470aへ熱移動を集中化でき、何らかの異常によって生じる温度過昇を速やかに検知して、通電を遮断することができる。
【0090】
ここで、Cu板499aは、平板から打抜き加工により容易に構成できるので、第一の防水絶縁箔455bを介して接触する感熱部470aの形状が概ね平板形状であれば、低コストでのなじみのよい伝熱促進体497の構成が実現できる。
【0091】
したがって、同様に、浸水などの事態でも絶縁性の確保といった電気的安全性と、着座面の高温化防止といった熱的安全性を共に確保できる。さらに、感熱部470aがアルミニウムで構成されていても、Cu板499aと感熱部470aとの間には第一の防水絶縁箔が介在するため、金属同士の接触とはならずガルバニ腐食の問題は発生しない。
【0092】
(実施の形態3)
図16は本発明の実施の形態3における便座装置の温度過昇防止装置の装着部の部分拡大断面図である。以上の図面を用いて、本発明の実施の形態3における便座装置の構成、および動作、作用について説明する。
【0093】
図16に示す本実施の形態において、実施の形態1、2と異なる点は、第一の金属箔453と第一の防水絶縁箔455aとの間に、以下の伝熱促進体498を構成したところである。
【0094】
伝熱促進体498は、第一の金属箔453と第一の防水絶縁箔455aとの間に、密領域部460c側の面を密領域部460cにおける第一の金属箔453の凹凸形状に略合致させてその接触面積を拡大させ、第一の防水絶縁箔側455a側の面を温度過昇防止装置470の感熱部470aの面形状に対応させたCu成型体499bを第一の防水絶縁箔455aに密着させたところである。
【0095】
なお、Cu成型体499bは、第一の金属箔453の凹凸形状と感熱部470aの面形状に対応する最小の厚さを保持するだけでよい。したがって、Cu成型体499b全体の厚さとしては、1〜1.5mm程度で差し支えない。なお、実施の形態1、2と同一符号のものは同一構成を示し、説明は省略する。
【0096】
伝熱促進体498の作用として、密領域部460cからの発熱は、第一の金属箔453とほぼ全面接触しているCu成型体499bに均一に効率よく吸収されて温度上昇し、同時に第一の防水絶縁箔455aから感熱部470aに熱伝達されるため、着座面410Uへの不必要な熱移動を抑制して感熱部470aへ熱移動を集中化できる。したがって、何らかの異常事態によって生じる温度過昇を速やかに検知して、通電を遮断することができる。
【0097】
したがって、同様に、浸水などの事態でも絶縁性の確保といった電気的安全性と、着座面の高温化防止といった熱的安全性を共に確保できる。
【0098】
(実施の形態4)
図17は、本発明の実施の形態4における衛生洗浄装置を示す外観斜視図で、実施の形態1〜3に示した便座装置のうちいずれか一つを備えたものである。
【0099】
図17に示すトイレットルーム内に設置された衛生洗浄装置900は、便器700の上面に取り付けられる。そして、衛生洗浄装置800は、本体部200、遠隔操作装置300、便座400および蓋部500により構成される。
【0100】
便座400は、実施の形態1〜3に示した便座装置のうちいずれか一つを包含し、本体部200には、便座400および蓋部500が開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、便器700内に出入りする洗浄装置800と洗浄水供給機構(図示せず)が設けられるとともに、制御部90が内蔵される。なお、実施の形態1、2、3と同一符号のものは同一構成を示し、説明は省略する。
【0101】
使用者がトイレットルーム内に入室すると、人体検知センサ600(例えば反射型の赤外線センサ)が、人体から反射された赤外線を検出し、使用者の入室を検知する。その時点で、実施の形態1で述べたように、便座400の着座面410Uが、少なくとも使用者が冷感を感じない温度まで急速に、例えば6秒以内に昇温する。
【0102】
次いで、使用者が着座面410Uに着座すると、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ610(例えば反射型の赤外線センサ)が、人体から反射された赤外線を検出することにより、便座400上に使用者が存在することを検知して、着座面410Uは快適に着座できる適温に保持される。
【0103】
そして、使用者が用便終了後に遠隔操作装置300を操作して洗浄指示を信号として本体部200に送ると、水道配管(図示せず)に接続された洗浄水供給機構と直結した洗浄装置800が突出して、その先端近傍から洗浄水(矢印)が噴出して使用者の局部を洗浄する。
【0104】
さらに、使用者が洗浄終了後に遠隔操作装置300を操作して洗浄停止を信号として本体部200に送ると、洗浄装置900が本体200内に収納される。最終的に、使用者が着座面410Uから立ち上がり、トイレットルームから退出する。
【0105】
以上が、通常使用時の動作の概要で、使用者が着座面410Uに着座する際に、実施の形態1で述べたような制御部90の異常が発生し、便座ヒータ450への通電が一定の設定温度で停止せず継続し続けるような場合には、温度過昇防止装置470、便座ヒータ450の密領域部460c、第一の金属箔453と第一の防水絶縁箔の間に設けた伝熱促進体496、または伝熱促進体497、または伝熱促進体498の感熱部470aへの伝熱促進作用により、温度過昇防止装置470が速やかに作動して、便座ヒータ450への通電を遮断し、使用者に対する熱的安全性を確保できる。
【0106】
さらに、使用者の用便の過程などで便座400内部に浸水が発生しても、便座ヒータ450内、すなわち第一の金属箔453、第二の金属箔451、および線状発熱体460との水分の接触は阻止でき、電気的絶縁性、熱的安全性を同時に確保、維持することが可能な衛生洗浄装置が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上のように、本発明の便座装置は、外部からの浸水を防止して絶縁性を強化した便座ヒータで、絶縁性の確保といった電気的安全性と、着座面の高温化防止といった熱的安全性を共に確保できるので、便座装置に限らず、使用者の接触を前提とする暖房機器の汎用的な安全機構技術としての適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置の概略構成の断面図
【図2】同実施の形態1における便座装置の便座ヒータの正面図
【図3】同実施の形態1における便座装置の便座全体の分解斜視図
【図4】同実施の形態1における便座装置の便座ヒータを着座面に貼着した状態図
【図5】同実施の形態1における図2の点線領域イの部分拡大図
【図6】同実施の形態1の便座装置における便座ヒータの線状発熱体の部分拡大断面図
【図7】同実施の形態1の便座装置における便座ヒータの線状発熱体の他の例の部分拡大断面図
【図8】同実施の形態1における便座装置の制御ブロックの概念図
【図9】同実施の形態1の便座装置における便座ヒータの温度過昇防止装置を装着した便座ヒータの正面図
【図10】同実施の形態1の便座装置における便座ヒータの温度過昇防止装置の斜視図
【図11】同実施の形態1の便座装置における便座ヒータの温度過昇防止装置の係止具の斜視図
【図12】同実施の形態1の便座装置における便座ヒータの温度過昇防止装置の装着部の拡大断面図
【図13】同実施の形態1の便座装置における便座ヒータの第一、第二の防水絶縁箔の境界部の構成を示す部分拡大断面図
【図14】同実施の形態1の便座装置における便座ヒータの温度過昇防止装置と着座部の温度上昇特性図
【図15】本発明の実施の形態2における便座装置の便座ヒータの温度過昇防止装置の装着部の拡大断面図
【図16】本発明の実施の形態3における便座装置の便座ヒータの温度過昇防止装置の装着部の拡大断面図
【図17】本発明の実施の形態4における衛生洗浄装置を示す外観斜視図
【図18】従来の便座装置の要部の断面図
【符号の説明】
【0109】
110 便座装置
200 本体部
400 便座
410U 着座面
450 便座ヒータ
451 第二の金属箔
453 第一の金属箔
455a 第一の防水絶縁箔
455b 第二の防水絶縁箔
458、458a、458b 境界部
460 線状発熱体
460c 密領域部
470a 感熱部
496、497、498 伝熱促進体
496a、497a 熱伝導ペースト材
499、499b Cu成型体
499a Cu板
900 衛生洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座面を有し金属材料を含む便座と、着座面の裏側に貼着した便座ヒータと、感熱部を具備する温度過昇防止装置とを備え、前記便座ヒータは、密に配線したパターンの蜜領域部を一部に有する線状発熱体を保持すると共に、前記線状発熱体を第一の防水絶縁箔と第二の防水絶縁箔とで挟持して構成し、前記密領域部において前記線状発熱体と前記第一の防水絶縁箔との間に伝熱促進体を設けると共に、前記第一の防水絶縁箔に前記温度過昇防止装置の感熱部を密着させた便座装置。
【請求項2】
便座ヒータは、第一の金属箔と第二の金属箔の間に線状発熱体を挟持して所定の配設パターンを保持し、前記第一の金属箔と前記第二の金属箔を、各々第一の防水絶縁箔と第二の防水絶縁箔で挟持し、前記第一の防水絶縁箔と前記第二の防水絶縁箔との境界部における浸水を防止した請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
第一の防水絶縁箔と第二の防水絶縁箔は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどのポリエステル系樹脂箔のうち、いずれか1つを用いた請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
伝熱促進体は、熱伝導ペースト材の充填部で構成した請求項1から3のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項5】
伝熱促進体は、Cu成型体を含む構成とした請求項1から4のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項6】
伝熱促進体は、熱伝導ペースト材の充填部およびCu板で構成し、Cu板を防水絶縁箔に密着させた請求項1から5のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項7】
伝熱促進体は、全体あるいは大部分をCu成型体で構成し、Cu成型体の一部の形状を密領域部の凹凸形状に略一致させた請求項1から6のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項8】
密領域部は、使用者が通常着座する頻度の少ない領域に設けた請求項1から7のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項9】
温度過昇防止装置は、サーモスタットを用いた請求項1から8のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の便座装置と、本体部とを備えた衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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