説明

便座装置

【課題】着座時の衝撃を吸収し、かつ長時間快適に着座でき、しかも便座の暖房に無駄な電力を使用しない快適で省エネ性の高い便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも一部に使用者の体形に沿うように変形する弾性体層13と、複数のPTCヒータ12と、PTCヒータ12に電力を供給する電源電極28を備え、電源電極28の一方は便座6の開口縁6a近傍に配設し、他方は便座6の外周縁6b近傍に配設し、前記複数のPTCヒータ12を前記電源電極28に接続した構成としたことにより、便座6に着座時の人体への負担を軽減するとともに、弾性体層13が変形してもPTCヒータ12が破損したり特性が変化することを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器上面に設けられ、使用者の体形に沿うように変形する弾性体層を有する便座装置のヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の暖房便座装置としては、合成皮革の表皮材の裏面に紐状ヒータを配設し、それらの下方に低反発の発泡樹脂を設置した構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、特許文献1に記載された従来の暖房便座装置の断面を示すものである。図8に示すように、使用者の皮膚に接触する便座1の表面から表皮材2、紐状発熱体3、クッション層4、合成樹脂基材5の順に構成されている。
【特許文献1】特開2005−102809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら便座ヒータが表皮材と軟質樹脂層の間に配置され、その便座ヒータの形状が紐状ヒータである場合、着座したときに便座に紐状ヒータのところだけ凸になった面が形成され、でこぼこ感が残るとともに、長く座っていると臀部に凸凹の型が残ってしまうなど実用性に欠いていた。また、クッション材にて構成された便座部が柔らかすぎることで剛性不足となり、使用者の体重を十分に支えきれない場合があるなどの課題を有していた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであり、着座時の衝撃を吸収し、かつ着座状態の座り心地が良く、かつ長時間の着座の際においても人体への負担を軽減することができる。また軟質樹脂層の変形によるヒータへの影響を抑制し、ヒータの性能の安定と耐久性の向上を図ることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、少なくとも一部に使用者の体形に沿うように変形する弾性体層と、複数のPTCヒータと、PTCヒータに電力を供給する電源電極を備え、電源電極の一方は便座の開口縁近傍に配設し、他方は便座の外周縁近傍に配設し、前記複数のPTCヒータを前記電源電極に接続した構成とした。
【0007】
これにより、便座に着座時の人体への負担を軽減するとともに、弾性体層が変形してもPTCヒータが破損したり特性が変化することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の暖房便座装置は、弾性体層を備えた暖房便座装置において、弾性体層の変形によるPTCヒータの損傷や特性の変化を抑制することにより、性能の安定と耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、便器上に装着する暖房便座において、少なくとも一部に使用者の体形に沿うように変形する弾性体層と、正温度係数特性を有する複数のPTCヒータと、前記PTCヒータに電力を供給する電源電極を備え、前記電源電極は極性の異なる一対の電極で構成し、電源電極の一方は便座の開口縁近傍に配設し、他方は便座の外周縁近傍に配設し
、前記複数のPTCヒータを前記電源電極に接続した構成とすることにより、複数のPTCヒータを電源電極に並列に接続することとなり、一部のPTCヒータが故障した場合でも前座全体の暖房が停止することはなく、対応力の高い便座装置を提供することが可能となる。
【0010】
また、PTCヒータを複数に分割して便座に配設することにより、便座表面にしわができにくくなり、使用者が着座面から受ける負担を軽減し、座り心地の良い便座を提供することができる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明の電源電極を環状に形成したことにより、仮に電源電極が1箇所切断されてもすべてのPTCヒータに給電することが可能となるため、故障が発生しにくく耐久性の高い便座装置を提供することができる。
【0012】
第3の発明は、特に第1または第2の発明のPTCヒータは柔軟性シートにPTC電極とPTC抵抗体とを印刷して形成し、前記PTC電極は、対向して配設した一対の主電極と、前記対向する主電極より交互に相対する主電極に向かって導出した複数の枝電極とを備え、前記枝電極を便座の開口縁に対し略平行となる方向に配設したことにより、便座に使用者が着座したときに弾性体層は、主電極と略同方向の便座の開口部の開口縁に対し略垂直方向に主として撓むこととなり、この撓みの方向に対して略直角方向に枝電極を配設したことで、枝電極は弾性体層の撓みの影響をほとんど受けることがなく、枝電極の破損を抑制することができ、PTCヒータの伸びに対する対抗力が弱い方向である枝電極の方向を変形の少ない方向とすることができることとなり、PTCヒータが損傷したり特性が変化することを抑制することができる。
【0013】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、便座の部位により、枝電極を異なる間隔で配設したことにより、枝電極の間隔が広い部位は抵抗値が高くなるため発熱量が少なくなり、枝電極の間隔が狭い部位は抵抗値が低くなり発熱量を多くすることができるため、着座して人体が接触する部位の枝電極の間隔を狭くし、人体が接触しない周辺部等は枝電極の間隔を広くすることにより、人体が接触する部位では人体には十分な熱が伝わり快適な暖房となり、人体が接触しない周辺部には無駄な熱の供給を行わないため省エネ性を高めることができる。
【0014】
第5の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、PTC抵抗体はカーボンと樹脂を含有する構成とし、カーボンと樹脂の配合比率を便座の部位により異なる配合比率としたことにより、カーボンの配合比率を少なくした部位は抵抗値が高くなるため発熱量が少なくなり、カーボンの配合比率を多くした部位は抵抗値が低くなり発熱量を多くすることができるため、着座して人体が接触する部位の配合比率を多くし、人体が接触しない周辺部等はカーボンの配合比率を少なくすることにより、人体が接触する部位では人体には十分な熱が伝わり快適な暖房となり、人体が接触しない周辺部には無駄な熱の供給を行わないため省エネ性を高めることができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における便座装置の斜視図を示し、図2は同便座の断面図を示し、図3は面状便座ヒータであるPTCヒータの内部構成図を示し、図4(a)、(b)は伸縮性PTC抵抗体の模式図を示し、図5は電源電極とPTCヒータの印刷パターンを示す平面図を示し、図6は便座の温度特性のグラフを示すものである。
【0017】
図に示すように、本発明の第1の実施の形態における便座装置は着座面を暖房する暖房便座であって、便座6と、便蓋7と、本体8を主構成部材として構成している。
【0018】
本体8の内部には、洗浄温水を作り貯湯する熱交換タンク(図示せず)、局部を洗浄する洗浄ノズル(図示せず)、洗浄水の噴出を制御する電磁弁(図示せず)、洗浄後の局部を乾燥する乾燥乾燥ユニット(図示せず)、排便の臭気を脱臭する脱臭ユニット(図示せず)、便座装置の各機能を制御する制御装置9等が内蔵されており、使用者は洗浄ノズルから吐水される温水を局部に当てることにより、用便による汚れを洗い流すことができるものである。
【0019】
この便座装置は、便器10の上面に戴置した本体8はゴムブッシュ及びボルトを介して便器10に固定し、便座6と便蓋7は本体8に回動自在に枢支している。
【0020】
図2に示すように、便座6は上面から、使用者の皮膚と接触する面であり変形自在な軟質で使用者の臀部になじむシート状用の表皮材11、屈曲変形自在な面状のPTCヒータ12、弾性を備えた軟質樹脂材からなる弾性体層13、弾性を備えた硬質樹脂成型品からなる補強部材14、硬質樹脂成型品からなる便座下部部材15の主要部材で構成しいる。
【0021】
補強部材14と便座下部部材15はビス16で螺合してあり、補強部材14は真ん中をビス止めのために平面部17とし、両側はそれぞれ凸部18として強度を上げている。そして端部19には便座下部部材15の端部と嵌合するように長手方向に一定間隔で爪を設けてある。
【0022】
補強部材14は便座下部部材15だけでは剛性不足で体重を支えきれないことを想定して設けたものである。従来の便座は上下の樹脂部材を上下ともU字型にして上下のU字部分と逆U字部分の開放面を合わせ面として一体に構成して構造体とすることにより体重を支えるようにしている。しかしながら本実施の形態では上部の部材は軟質樹脂である弾性体層であるため硬質樹脂部材を組み合わせて支えることができないことに対する対策として、便座下部部材15と補強部材14で体重を支えるように構成したものである。
【0023】
トイレ(図示せず)のドアを開けたところの対面には、人体の温度を検出したり、反射光を検出したりして人がトイレに入ってきたことを検知する人体検知手段20が設置してあり、人体検知手段20からの信号を受信する受信手段21は本体8の袖部に配置してあり制御装置9と電気的に繋がっている。人体検知手段20が人体を検知していない状態において便座6は通常通電しないか、極端に室温が低い場合に10W前後の通電を行うことによって、便座表面温度を15℃から20℃程度に保ってある。
【0024】
本実施の形態では、表皮材11としてPPフィルムを使用している。表皮材11としては0.1mm以下の薄いフィルムで構成され、耐薬品性のある、かつ熱容量の少ないものであれば他の材質によるフィルムでもかまわない。
【0025】
面状のPTCヒータ12の構成は、図5に示すように便座6と略相似形の柔軟性シート22に伸縮性のPTC抵抗体23を印刷し、PTC抵抗体23に重層するように銀ペーストを主体とする電極24を印刷して、別の柔軟性シート25で挟み込んだ構成としてある。
【0026】
伸縮性のPTC抵抗体23は、図4(a)、(b)に示すように樹脂とカーボンを混合した粒子26をエラストマー27の中に配合することで、伸縮させた場合においても組成が破壊しない特性を備えている。図4(a)はPTCヒータ23に応力が加えられていない状態の粒子26の状態を示す模式図であり、(b)は便座7に使用者が着座した場合等
でPTCヒータに応力が加わり変形した状態を示す模式図である。
【0027】
また、PTC抵抗体23は樹脂とカーボンの配合比率を変化させることで抵抗値を変化させることができ、最高温度や温度の立ち上がりのスピードを変えることができる。カーボンを少なくすると抵抗値が高くなり最高温度は低くなるため、人体との接触頻度の低い便座の周辺部に対応するPTC抵抗体23のカーボンの配合を減らすことにより温度は低くなり省エネを図る事が可能となる。
【0028】
図5はPTC抵抗体23と電極24の印刷パターンの詳細を示すものである。本実施の形態においては、電源電極28とPTCヒータ12を1枚の柔軟性シート22に同一工程で形成することにより生産の効率化を図っている。図5に示すように便座6と略相似形の柔軟性シート22の開口縁22aと外周縁22bの近傍に幅の広い環状の電源電極28a、28bを対向するように配置してある。電源電極28a、28bはPTCヒータ12に電力を供給するために設けたものである。また、PTCヒータ12を便座6に組み込んだ状態では、電源電極28a、28bは便座6の開口縁6aと外周縁6bの近傍に配設される。
【0029】
電源電極28a、28bからそれぞれ対向するようにPTCヒータ12の主電極29a、29bを配設し、さらに、それぞれの主電極29a、29bから略直角方向に交互に相手側の主電極に向かって複数の枝電極30a、30bを導出して櫛状の電極を構成してある。なお、主電極29a、29bは柔軟性シート22の開口縁22a対し略垂直の方向に配設することにより、枝電極30a、30bは開口縁22aに対して略平行となり、PTCヒータ12便座6に組み込んだ状態においては、枝電極30a、30bは便座6の開口縁6aに対し略平行に配設される。
【0030】
電源電極28aと主電極29aと枝電極30a、また電源電極28bと主電極29bと枝電極30bは電気的に接続した構成となっており、開口縁22a側の電源電極28aをプラス電極、外周縁22b側の電源電極28bをマイナス電極としている。
【0031】
そして、枝電極30a、30bを配設した範囲全体に重層するようにPTC特性を有するPTC抵抗体23が印刷してある。
【0032】
主電極29a、29bと枝電極30a、30bとPTC抵抗体23で1つのPTCヒータ12を形成しており、電源電極28a、28bの全周に亘りほぼ均等間隔でPTCヒータが配設してある。
【0033】
電源電極28a、28bはリード線31を介して制御装置9に接続してあり、制御装置9から供給した電流は電源電極28a、28b、主電極29a、29b、枝電極30a、30bを介してPTC抵抗体23に給電される。
【0034】
給電されたPTC抵抗体23は立ち上がり時など温度が低いときはハイパワーで発熱し、温度が高くなると自動的にローパワーになるという自己温度制御により、所定の温度に制御される。PTC抵抗体23と主電極29a、29bと枝電極30a、30bを着座面に均一に配置することにより着座時の臀部に対して均一な暖房感が得られる構成となっている。
【0035】
また、枝電極30a、30bは便座の円周方向と略平行となるため、座った時に着座部が撓む方向に対して略直角方向となり、PTC抵抗体23が破壊されることなく耐久性に優れる。
【0036】
上記構成のPTCヒータ12は200Wから500W程度のヒータ容量をもち、AC30V以下またはDC45V以下の電圧で加熱するようにしている。PTCヒータ12は温度が低いときは、カーボンの連鎖が重なっていて電流が通りやすく、温度が高くなると伝導性粒子の連鎖を断ち切り電流を流しにくくするというPTC特性(正温度係数特性)を有している。すなわち、通電直後の立ち上がり時など温度が低いときはハイパワーで発熱し、温度が高くなると自動的にローパワーになるというヒータ特性(自動温度制御特性)を有している。
【0037】
弾性体層13は発泡ポリウレタンを使用しており、主として内部の気泡がつながっていない独立気泡構造をとり、ガスの出入りをなくし、空気によるクッション性を持たせているが、適度なクッション性を有するものであれば連続気泡構造のものでもよい。また弾性体層13は補強部材14の周りを覆うように形成してあり、着座したときも臀部が直接、補強部材14に接しないようにしてある。
【0038】
以上のように構成された便座装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0039】
まず、人が用を足すためにトイレに入室すると、人体検知手段20が人体を検知し、その信号を本体8に設けてある受信手段21に送信する。受信手段21で受信した信号により制御装置9は面状のPTCヒータ12に通電して急激な立ち上げを行う。PTCヒータ12は立ち上がり時など温度が低いときはハイパワーで発熱し、温度が高くなると自動的にローパワーになる。従って熱容量の少ない薄い表皮材11を介して使い始めにすぐに温度があがるという速熱性を有している。
【0040】
図6は本実施の形態における便座6の温度特性を示すものであり、横軸に時間、縦軸に便座表面温度を示しており、便座6の表面温度は10秒以内で35℃前後の温度になることがわかる。便座6の快適な表面温度は35℃から40℃程度である。PTCヒータ12が35℃程度に暖まるまでに要する時間は、人が服を脱いで便座に着座する時間とほぼ同程度の数秒から10秒くらいであり、座るときには冷たくない温度となっている。
【0041】
使用者が上記構成の便座に着座した状態では、クッション性のある弾性体層13と屈曲自在なPTCヒータ12は使用者の臀部沿って変形する、また着座時の衝撃により弾性体層13は大きく変形し底当たり状態となるが、補強部材12が弾性を備えることにより、使用者は衝撃を受けないで着座することができる。
【0042】
本実施の形態のPTCヒ−タ12は、図4(a)、(b)に示すように樹脂とカーボンを混合した粒子26をエラストマー27の中に配合することで、伸縮させた場合においても組成が破壊しないことを特徴としている。このようにフレキシブル性に富んだ伸縮性のある構成をしているため、5〜10%程度の伸びに関してはPTC抵抗体23の破壊は起こらない。
【0043】
使用者が着座した状態において、便座の撓みは、便座6の周方向には少なく、主に開口縁6aから外周縁6bに向かう略垂直方向が大きくなる。本実施の形態の枝電極30a、30bは開口縁6aあるいは外周縁6bと略並行に配設することにより、伸縮性のPTC抵抗体23と特性を活かし,PTCヒータ12の破損や特性の変化を最小限に抑えている。
【0044】
また、電源電極28a、28bは便座の開口縁6aと外周縁6bと略相似形の環状としているため、たとえ1箇所が異常な変形等により切断された場合でも全ての主電極との接続を維持することができるため、耐久性を確保することができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態においては、電源電極は便座の開口縁と外周縁と略相似形の環状とし、開口縁に対し略平行となる方向に枝電極を配設するPTCヒータを、使用者の体形に沿うように変形する弾性体層内に配設することにより、使用者は着座時の衝撃や冷たさを感じることが少なく、長時間着座しても臀部の血流を妨げることもなく、快適な暖房便座装置とすることができる。
【0046】
また、PTCヒータのPTC特性(自動温度制御特性)により、速熱性と昇温後の自己温度制御機能により、無駄な電力の使用を抑え、省エネ効果の高い便座装置を提供することができる。
【0047】
しかも、着座による便座の変形によるPTCヒータへの影響を最小限に抑える印刷パターンを採用することにより、電極やPTC抵抗体の破損や特性の変化を抑制し耐久性の高い便座装置を提供することができる。
【0048】
また、本実施の形態においてはPTCヒータ12のPTC抵抗体は、樹脂とカーボンの配合比率が同一のものを全てのPTCヒータに使用したが、PTCヒータの配設位置によって配合比率の異なるPTC抵抗体を使用しても良い、例えば便座6の両側部に配設するPTCヒータはカーボンの配合比率の多いものを使用し、便座の前部と後部に配設するPTCヒータはカーボンの配合比率の少ないものを使用することにより、便座に着座した使用者の臀部が多く密着する両側部は発熱量が多く暖房効果が高く、臀部が密着することが少ない前部と後部は発熱量が少なく無駄な電力を使用することなく、より快適で省エネ性を高めることができる。
【0049】
また、前記ではPTCヒータ毎に樹脂とカーボンの配合比率の異なるPTC抵抗体を使用する構成としたが、1つのPTCヒータの部位によって配合比率を変えても良い。例えば、便座の開口縁に近い部位はカーボンの配合比率を多くし、便座の外周縁に近い部位はカーボンの配合比率を少なくすることにより、便座に着座した使用者の臀部が多く密着する開口縁近傍は発熱量が多く暖房効果が高く、臀部が密着することが少ない外周縁近傍は発熱量が少なく無駄な電力を使用することなく、前記と同様に快適で省エネ性を高めることができる。
【0050】
なお、本実施の形態においては、PTCヒータとして伸縮性PTC抵抗体を使用したPTCヒータを採用したが、これに限るものではなく、伸縮特性を持たないPTCヒータ等で面状の構成が可能なヒータであれば、本実施の形態と近似の効果を得ることができる。また、本実施の形態では表皮材とPTCヒータは別部材で構成したが、表皮材をPTCヒータの柔軟性シートで兼ねることも可能である。
【0051】
また、本実施の形態ではPTCヒータを弾性体層の内部に設置する構成としたが、PTCヒータの設置場所としては、表皮材と弾性体層の間に介在させたり、補強部材の上面に設置することも可能であり、特に、屈曲性の低いPTCヒータの場合は、弾性体層の下方となる補強部材の上面に設置することにより、着座した状態でPTCヒータの存在を感じることが少なく快適性を高めることができる。
【0052】
また、本実施の形態では補強部材を樹脂成型品で構成しているがこれに限るものではなく、弾性を有する金属で形成してもよく、また樹脂、金属、セラミック等の複数の材料を組み合わせて構成したものでもよい。また、補強部材が備える弾性の強度は全ての部位で同一の弾性を備えるのではなく、例えば臀部に対応する部分は弾性の強度を弱くすることで、着座時の衝撃を吸収しやすくできるし、太ももに対応する部分は弾性の強度を強くすることで、着座しているときの体重を安定して保持することができ、より快適な便座を提供することができる。
【0053】
また、本実施の形態においては、電源電極をPTCヒータと同一に柔軟性シートに印刷して形成したが、これに限るものではなく、別の柔軟性シートに印刷したものを重層して接続する構成でもよく、また、薄い金属板で形成した電源電極をPTCヒータの主電極に重層して接続する構成等が考えられる。
【0054】
(実施の形態2)
図7は本発明の実施の形態2における、電源電極とPTCヒータの印刷パターンを示すものである。
【0055】
本実施の形態が実施の形態1と異なる点は、図7に示すように柔軟性シート32の外周及と内周に開放した切り込み33a、33bを交互に設け、電源電極34a、34bを切り込みに沿って環状に設け、電源電極34a、34bとPTC抵抗体23挟み込む別の柔軟性シートも同様に切り込みを設けた点である。
【0056】
切り込み33a、33bを設けたことにより、PTCヒータ12は弾性体層13の撓みの一部を切り込み31a、32aで吸収することで、PTCヒータ12の変形を少なくすることができるため、PTCヒータ12が損傷したり、特性が変化することをより確実に抑制することができる。
【0057】
なお、図7に示すPTCヒータ12は柔軟性シート32の外周と内周の両方に開放する切り込みを交互に設けたが、外周あるいは内周の一方にのみ開放する切り込み、あるいは外周と内周に開放しない切り込みを設けても、一定の効果を得ることができる。
【0058】
(実施の形態3)
図8は本発明の実施の形態3における、電源電極とPTCヒータの印刷パターンを示すものである。
【0059】
本実施の形態が実施の形態1と異なる点は、PTCヒータの電極の印刷パターンが異なっており、他の構成は実施の形態1と同じである。
【0060】
図8に示すように、本実施の形態におけるPTCヒータ35は、主電極36a、36bから交互に配設した枝電極37a、37bの間隔を便座6の後方と、後方の外側コーナ部と、前方に対応する部位を他の部位より広くしている。
【0061】
枝電極37a、37bの間隔を広くすることにより、その間のPTC抵抗体23は抵抗値が高くなるため、温度が上がりにくくなる。
【0062】
使用者が便座に着座した場合、使用者の臀部あるいは大腿部は便座の側部に主に接触し、前部、後部、後方の外側コーナ部にはあまり接触しない。また、着座直後は臀部や大腿部が接触した部位は人体が熱を奪うことにより温度が低下する。そのため、人体が接触する部位は他の部位より熱量を多く供給する必要がある。それ以外の部位は使用者の人体と接触することは少なく、その場所を接触する場所と同じだけ暖める必要はなく、枝電極の幅を広げることで発熱量を低くすることにより省エネ性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明にかかる便座装置は、着座時の快適性と暖房機能の省エネ性の効果を備えたものであるので、椅子や座布団等の着座して使用する暖房機器などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における便座の断面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるPTCヒータの構成図
【図4】(a)本発明の実施の形態1における伸縮性PTC抵抗体の通常状態の模式図(b)変形した状態の模式図
【図5】本発明の実施の形態1におけるPTCヒータの印刷パターンの平面図
【図6】本発明の実施の形態1における便座の温度特性図
【図7】本発明の実施の形態2におけるPTCヒータの印刷パターンの平面図
【図8】本発明の実施の形態3におけるPTCヒータの印刷パターンの平面図
【図9】従来の便座装置の断面図
【符号の説明】
【0065】
6 便座
6a 開口縁
6b 外周縁
10 便器
12、35 PTCヒータ
13 弾性体層
22、32 柔軟性シート
23 PTC抵抗体
24 電極
28、28a、28b、34a、34b 電源電極
29a、29b、36a、36b 主電極
30a、30b、37a、37b 枝電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に装着する便座において、少なくとも一部に使用者の体形に沿うように変形する弾性体層と、正温度係数特性を有する複数のPTCヒータと、前記PTCヒータに電力を供給する電源電極を備え、前記電源電極は極性の異なる一対の電極で構成し、電源電極の一方は便座の開口縁近傍に配設し、他方は便座の外周縁近傍に配設し、前記複数のPTCヒータを前記電源電極に接続した構成の便座装置。
【請求項2】
電源電極は環状に形成した請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
PTCヒータは柔軟性シートに電極とPTC抵抗体とを印刷して形成し、前記PTC電極は、対向して配設した一対の主電極と、前記対向する主電極より交互に相対する主電極に向かって導出した複数の枝電極とを備え、前記枝電極を便座の開口縁に対し略平行となる方向に配設した請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
便座の部位により、枝電極を異なる間隔で配設した請求項1〜3に記載の便座装置。
【請求項5】
PTC抵抗体はカーボンと樹脂を含有する構成とし、カーボンと樹脂の配合比率を便座の部位により異なる配合比率とした請求1〜3のいずれか1項に記載の便座装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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