説明

便座装置

【課題】 トイレブースを狭くすることなく、便器を隠すことによりトイレ空間の美観を損ねることがないようにした便座装置を提供する。
【解決手段】 利用者が着座する着座面を有する便座を備えた便座装置において、着座面に対して下方に延在し、便器を覆うスカート部を備えたことを特徴としているため、便座装置の設けられたスペースが狭くなることがない。また、スカート部が便器の側面を覆すように配置されるため、利用者からは便器が視界に入らず、トイレ空間の美観を損ねることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置に関するものであり、特に便座装置の開閉を行う便座に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の便座装置には、使用するときの快適性を高めるために、人体局部を洗浄する洗浄機構、利用者が着座する着座面を温める暖房機構、洗浄後の乾燥機構、脱臭・消臭機構など様々の機能が備えられ、その快適性により一般家庭を中心に広く普及している。一方、例えばホテル、デパート、空港といった公共施設では、未だ便座装置の普及率は、一般家庭の普及率と比べて低い。
【0003】
近年、ホテル、デパート、空港といった公共施設において、不特定多数の人々が快適に使用できる便座装置が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、便座の上面に便蓋としても機能する幼児乗せ板を設置することにより、トイレブース内の面積を広くすることなく設置可能で、かつ、オムツ交換と便器が使用可能な簡易オムツ交換ベッドに関する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2007−54289(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の簡易型オムツ交換ベッドは、既設のトイレブースに取り付け可能であり、トイレブースに利用者が入った場合に便器を隠すことができるが、ベッド部となる幼児乗せ板が便座より手前に張り出しているため、トイレブースが狭くなってしまい、快適にトイレを利用することができない問題点がある。
【0006】
そこで本発明は、上記した従来の問題点を解決するもので、便座装置の設けられたスペース(トイレブース)を従来より狭くすることなく、トイレ空間の美観を向上させる便座装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために講じた手段としては、便座装置は、人体局部の洗浄を行う洗浄機構と、便器に対して取り付けられ前記洗浄機構を内蔵した本体部と、利用者が着座する着座面を有し前記本体部に対して開閉自在な便座とを備えた便座装置において、前記便座は、前記着座面に対して下方に延在し、前記便座装置の設けられたスペースに利用者が入った場合に、前記便器を覆うスカート部を備えた構成とした。この場合、スカート部は、便器の側面を覆い隠すために着座面の外周縁部から着座面に対して下方に延在しているものであり、特に、着座面の前方から下方に延在していることが好ましい。
【0008】
便座は、着座面から面一な状態で前記洗浄機構を操作する操作部を有していると良い。面一な状態とは、操作部が着座面と略同一面にあり、着座部と操作部が連続した面として形成されていることである。
【0009】
また、操作部は、着座面に形成された操作部の内側に照明手段を有し、該照明手段により絵文字が写し出される。この絵文字は、便座装置に備えられた洗浄装置などを操作する操作手段を表示するものであり、非表示となる絵文字を有し、該絵文字は非表示手段によって非表示となると良い。
【0010】
更に、絵文字は、利用者が男性用と女性用で異なった表示を行うと良い。男性用と女性用で異なった表示を行うことができる絵文字は、女性向けにビデ洗浄を操作するための絵文字であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記手段によれば、便器を覆うスカート部が着座面に対して下方に延在しているため、便座装置の設けられたスペースが狭くなることがない。スカート部が便器の側面や前方を覆すようにすれば、トイレ空間に入ろうとする利用者からは便器が視界に入らず、トイレ空間内における便座装置の美観が向上する。さらに、高級感のあるトイレ空間内に設置された場合でも、その高級感を損ねることがない。
【0012】
また、洗浄機構を操作する操作部が便座の着座面と面一な状態で形成されているため、上記した効果に加えて、便座装置の設けられたスペースに利用者が入った場合に、利用者が便座と操作部が一体なものとして認識され、便座装置の美観が向上する。なお、便座の外観に高級感を感じさせる滑らかな3次元的な曲面の意匠をもつ便座を用いたときには、着座面に形成された操作部が面一に形成されているため、便座の意匠性を損ねることがない。さらに、着座面に着座した利用者の手の近くに操作面が配置されるため、利用者が操作しやすくなる。
【0013】
更に、操作部に凹凸を形成することなく各種機能を操作するための絵文字を表示するようにすれば、操作部に埃や汚れが付着しにくく、付着した場合においても清掃が容易となる。また、高級感を高めるために薄暗い環境にしたトイレ空間においては、絵文字が浮き出されるように表示され、高級感が演出できる。
【0014】
表示されている絵文字を非表示に切り替えを行えば、使用しない絵文字を非表示となるように事前に設定することにより、利用者は使用する絵文字を確実に選択することができ、誤操作を防ぐことができる。また、利用者が選択すべき絵文字のみを順番に表示させることができるため、利用者に操作する順番を案内するナビ機能を付加させることができる。
【0015】
操作部に表示される絵文字を男性用と女性用の絵文字を異なった表示を行うようにすれば、女性向けのビデ洗浄用の絵文字などは女性用のみの場合に表示させ、男性用の場合には非表示にすることにより、男性利用者の誤操作を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明の便座装置1の全体を示す斜視図である。便座装置1は便器2の上に設置された状態で使用され、着座面4aの外周縁部から着座面4aに対して下方に延在したスカート部4bが形成されている。図中の便器2は壁掛式洋風便器を使用しているが、床に設置される一般洋風便器を使用してもよい。また、便座4は高級感を感じさせるために全体的に滑らかな3次元的な曲面を有している。
【0018】
図3は、本発明の便座装置1の側面図である。便座4は、便器2に取り付けられる本体部3に対してヒンジ機構5により開閉自在に備えられている。また、便座4に形成したスカート部4bは、着座面4aとは滑らかな曲面でつながっている。
【0019】
このスカート部4aは、図5に示されるように、便座装置1を備えるスペース8(トイレブース)に入ろうとする利用者の視線から、便器2の側面2aが隠れるように形成されている。
【0020】
また、スカート部4bは、トイレブース内を上から薄暗く照らす図示していないダウンライトの光の中で便座装置1が浮かんで見えるようにするために、利用者から便座4の厚みが薄く見えるように形成されている。すなわち、利用者から見た場合に、上から薄暗く照らす図示していないダウンライトの光の中でスカート部4bが着座面4bの影に入るように、スカート部4bは着座面4bの下方で便器2の側面2bがある方向に傾いた状態で形成されている。さらに、スカート部4bは利用者が正面から見て中心から左右に離れるにしたがって傾斜が大きくなり、便座3の厚みがより薄く見えるように形成されている。このスカート部4bの形状は、図1〜図5に開示された形状に限定するものではなく、スカート部の長さ・幅・厚み・傾斜角度等の形状を決定する数値は、スカート部が便器を隠す機能を有して、便座装置の美観や利用者の使い心地を損ねることがない範囲で自由に設定できる。
【0021】
図2は、本発明の便座装置1の正面図である。便座4には、着座面4aから面一な状態で操作部7が形成されている。操作部7の位置は、着座面に座った利用者が操作しやすい位置であればよいが、特に、右利きの利用者が多いことを考慮すれば、右手で操作しやすい位置として、利用者が着座面に座った際の右手側が望ましい。またこの操作部7は、図3に図示されるように、着座面4aに対して傾斜するように形成されている。これにより、利用者が着座面4aを認識し易くなり、操作部7に利用者が誤って着座するようなことがなくなり、誤動作を防ぐことができる。さらに、この操作部7は、絵文字15が写し出されるように形成されている。
【0022】
図4は、図2のA−Aの矢示断面図である。便座4の表面に形成される操作部7は、表面に凹凸なしに形成され、この操作部7の内部には、操作スイッチ装置11を配置している。この操作スイッチ11、は利用者が操作部7の表面を指で触れることにより便座装置1が備える各種機能を操作できる機能を有している。この操作スイッチ装置11は、人の静電気に反応して電気信号のON・OFF制御が行える静電式スイッチ11aと操作部7に絵文字を写し出すための照明手段(LED)11bが搭載された操作スイッチ基板11cと、静電式スイッチ11aの検知部となる電極フィルム11dとで構成されている。この静電式スイッチ11aは周知のものを使用している。静電式スイッチ11aの検知感度を高めるために、電極フィルム11dは便座内部の上面4dに配置し、電極フィルム11dの背面に照明手段(LED)11bを配置した。便座4はブラック系の色調をした透光性樹脂PCにより形成されたものであり、操作部7ではLEDの光を透過する性質を持つ。また、便座4の成型時、操作部7の部分を透光性樹脂PCとなるように成型してもよい。これら透光性樹脂はPPを用いてもよい。便座内部の上面4dと電極フィルム11dとの間にある印刷シート14は、印刷により遮光部(印刷部分)と透光部(非印刷部分)が設けられており、透光部は操作部7の絵文字と認識できるように形成されている。印刷シート14は、透光性樹脂PETを使用している。このような構造により、便座内部のLED11bの光が印刷シート14の透光部を介して、便座4の表面にある操作部7に絵文字15が写し出される。
【0023】
この絵文字は、男性用と女性用とで写し出される絵文字の切り替えができる。絵文字の切り換えは、トイレブースに便座装置を設置するときに、本体部3の側面に配置された非表示手段3cにより行う。ビデ洗浄用の絵文字は女性用に切り替えたときのみ表示される。同様に、男性用と女性用で絵文字の色が切り替わり、男性用では青白系の絵文字となり、女性用ではピンク系の絵文字となる。
【0024】
さらに操作部7には、人体局部の洗浄を行う洗浄機構3aを操作するための絵文字だけでなく、水洗便器の洗浄水を吐出する操作をするための絵文字も配置されている。この絵文字は、便座装置1が掛けられている壁の内部にある図示していない便器2の洗浄水を吐出するための電磁式フラッシュバルブを制御するためのものである。使用者はこの絵文字に指で触れることにより、便器2の洗浄水を流すことができる。利用者にとっては、便座4に一体で操作部7が一箇所に集中されているので使い勝手がよくなる。
【0025】
便座4には、図4に図示されているように、便座の横の操作スイッチ装置11以外にも、利用者が着座する際にひんやり感を与えないように着座面4aを温めるヒータ部12と、着座面4の裏面から床面8bを照らす照明部6が着座面4aの左右両側に組み込まれている。
【0026】
着座面4bの裏面から床面8bを照らす照明部6は、照明としてLED6aを使用している。この照明部6の取り付け位置は、着座面4aの両側にライン状に設けられ、着座面4bと同様に曲面形状を有している。そのため、LED6aを取り付けるための基板6bはフレキシブル性のあるものを使用している。便座4は、ブラック系の色調をした透光性樹脂PCにより形成されたものであり、LED6aの光を透過する性質を持つ。また、便座4の成型時、内部に設けられたLED6aで床面を照らす際に光を透過させる部分のみ、透光性樹脂PCとなるように成型してもよい。これら透光性樹脂はPPを用いてもよい。さらに、LED6aからの光を散乱させるために、便座4の成型時、樹脂表面層をシボやレンズカット状に成型してもよい。あるいは、LED6aの光が透過する部分に光散乱効果のあるフィルムを配置してもよい。そうすることにより、LED6aからの光が広範囲に照射され、より淡い光となる。
【0027】
この照明部6について、本実施形態の一例を次に示す。図7に示すように一般的なサイズのトイレブース8に本発明の便座装置1を設置した場合、照明部6は、トイレブース内で便座装置1が利用者に浮かんで見えるように、照明部6の鉛直下方からトイレブースの横壁8dまでの床面8bを照らすように配置している。
【0028】
この照明部6は、床面8bを照らすため、トイレブースに侵入した利用者が直接照明を見ることがないので、目に対する刺激が少ない。また、トイレブース内を薄暗くした照明環境においては、便座4の裏面からトイレブースの床面8bを照らす間接照明効果によって、利用者は浮かび上がるように便座装置1が認識され、便座装置1の高級感を演出することができる。スポット的に床面8bを照射した場合、利用者は照射スポットを強く意識するようになり、便座4が浮かぶように認識しにくくなるので、好ましくない。また、トイレブースの横壁8dまで照らした場合、利用者はトイレブースの横壁8dを意識し易くなるため、空間の狭さを感じてしまうので好ましくない。この照明部は、図示されていないスイッチよる点灯・消灯、タイマーにより所定時間帯のみ点灯させる機構、トイレブース内が所定の照度以下となった場合のみ照明を点灯させる機構、あるいはトイレブース内が暗い環境において人を検知したときのみ照明を点灯させる機構など様々な機構を、便座装置に求められる機能に応じて設けてもよい。
【0029】
便座4に組み込まれたのヒータ部12は、便座内部の上面に沿ってヒータ線12aが配置され、ヒータ線12aの熱を着座面全体に伝熱させるためのシート状伝熱体12bが貼り付けられているものである。
【0030】
本体部3には、図3に図示されるように、人体局部の洗浄を行う洗浄機構3a、および便座装置1に装着されている各種機能を制御するための電気制御回路3bが内蔵されている。
【0031】
この電気制御回路3bは、人体局部の洗浄を行う洗浄機構3aを制御する機能としては、利用者が操作部7に配置された絵文字に触れることにより、人体局部の洗浄を開始・停止させることができる機能、人体局部の洗浄に使う吐出水を加熱するヒータの温度調整機能、吐出水の流量調整機能を有している。また、利用者が便座装置に近づくにしたがって、順番に照明部6、操作部7を点灯させることで、便座装置1が利用者を出迎えるような演出機能をつけてもよい。
【0032】
本発明の便座装置1は、少なくとも人体局部を洗浄する洗浄機構を有しているが、周知のように、利用者が着座する着座面を温める暖房機構、洗浄後の乾燥機構、脱臭・消臭機構、等を必要に応じて備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の便座装置の全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の便座装置の平面図である。
【図3】本発明の便座装置の側面図である。
【図4】図2のA−A’面の断面図である。
【図5】便座装置と便座装置を備えるスペースに入る利用者の視線を示す概念図である。
【図6】本発明の便座の下面図である。
【図7】便座装置を備えるスペースの正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 便座装置
2 便器
3 本体部
3a 洗浄機構
3b 電気制御回路
3c 非表示手段
4 便座
4a 着座面
4b スカート部
7 操作部
8 スペース(トイレブース)
9 立ち位置
10 視線
15 絵文字

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体局部の洗浄を行う洗浄機構と、
便器に対して取り付けられ前記洗浄機構を内蔵した本体部と、
利用者が着座する着座面を有し前記本体部に対して開閉自在な便座と
を備えた便座装置において、
前記便座は、前記着座面に対して下方に延在し、前記便座装置の設けられたスペースに利用者が入った場合に、前記便器を覆うスカート部を備えたことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記便座は、前記着座面から面一な状態で前記洗浄機構を操作する操作部を有することを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記着座面に形成された前記操作部の内側に照明手段を有し、該照明手段により絵文字が写し出され、
前記絵文字のうち少なくとも1つは、非表示となる絵文字を有し、該絵文字は非表示手段によって非表示となること
を特徴とする請求項2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記絵文字は、利用者が男性用と女性用で異なった表示を行うことを特徴とする請求項3に記載の便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−207568(P2009−207568A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51325(P2008−51325)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】