説明

便座装置

【課題】人体検知センサの検知範囲を確保し、操作部の操作性を損なうことなく、コンパクトな操作部を備えた便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便器700上に設置する本体200と、着座面311を加熱する発熱体350を内蔵した便座300と、本体200と便座300とを覆う便蓋400と、本体200の側方に設け、前端が便座200の前端より後退した袖部210と、制御部を含み、袖部210にトイレに人体検知センサ600を備え、人体検知センサ600は便座300の着座面311より低い位置に設置し、便蓋400を閉成した状態において、便蓋400の前端位置における左右方向の垂直面において、所定の幅および所定の高さの基準検知範囲WSを備えたことにより、袖部の操作性を損なうことなく、コンパクトな操作部を備えた便座装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置の人体検知に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便座装置は、便器の後方に設置した本体に便蓋と便座を回動自在に枢支している。前記便座は略楕円の環状形状であり、便座後部の両側に一体に設けた腕部を介して本体に回動自在に枢支している。便座の上面は使用者が着座する着座面を形成している。便座の内部には着座面を加熱する加熱手段を内蔵している。また、本体の側方に設けた袖部には、人がトイレに入室したことを検知する人体センサを備え、便座の保温を自動で開始したり、便蓋を自動で開閉したりする機構が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は特許文献1に記載された従来の便座装置を示す斜視図である。図10に示すように、本体1の側部より前方に突出するように設けた袖部2の上面には前方から後方にかけて高くなる段部3が形成されかつ段部3の前方には人体検知センサ収納部4が形成され、人体検知センサ収納部4には人体検知センサが内蔵されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−172741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の便座装置では、人体検知センサの検知範囲を拡大するために、袖部上面に袖部前方から後方にかけて高くなる段部を形成し、段部前方には人体検知センサ収納部を形成し、人体検知センサ収納部には人体検知センサが内蔵されているため、着座動作時に段部に身体や衣服が接触したり、また袖部スイッチの操作を行うとき人体検知センサ収納部に手や指が接触したり、また袖部スイッチが見にくいといった操作性や使い勝手を損なうとともに操作部が大型化するという課題を有していた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するもので、人体検知センサの検知範囲を確保しつつ、操作部の操作性や使い勝手を損なうことなく、かつ操作部のコンパクト化を図ることができる便座装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、便器上に設置する本体と、本体に回動可能に枢支し、着座面を加熱する発熱体を内蔵した便座と、本体に回動可能に枢支し、本体と便座とを覆う便蓋と、本体の側方に設け、前端が便座の前端より後退した袖部と、本体に内蔵し、少なくとも発熱体を制御する制御部を含み、袖部の前端上部にトイレに入室した人体を検知する人体検知センサを備え、人体検知センサは便座の着座面より低い位置に設置し、便蓋を閉成した状態において、人体検知センサは便蓋の前端位置における左右方向の垂直面において、所定の幅および所定の高さの検知範囲を備えたものである。
【0008】
これにより、袖部は便座の前端より後退しており、しかも人体検知センサは便座の着座面より低い位置に設置されているため、袖部および人体検知センサが便座への着座動作に障害をきたすことがなく、また袖部に設けた操作スイッチの操作性を損なうことがない。
しかも、便蓋先端位置の所定範囲の検知が可能であるため、トイレ室に入室した人体を確実に検知することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の便座装置は、便座への着座動作や操作スイッチの操作性を損なうことなく、確実な人体検知ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置の便蓋開放状態を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における便座装置の便蓋閉成状態を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における人体検知センサ取付部のカバーを外した状態を示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態1における便座の分解斜視図
【図5】本発明の実施の形態1における人体検知センサ取付部を示す断面図
【図6】(a)は本発明の実施の形態1における人体検知センサの水平方向の設置方向を示す平面図、(b)は人体検知センサの垂直方向の設置方向を示す側面図
【図7】本発明の実施の形態1における人体検知センサと便蓋との位置関係を示す断面図
【図8】本発明の実施の形態1における便座装置をトイレ室に設置した状態を示す模式図
【図9】本発明の実施の形態1における人体検知センサの検知範囲を示す模式図
【図10】従来の便座装置の外観を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、便器上に設置した本体と、前記本体に回動可能に枢支し、着座面を加熱する発熱体を内蔵した便座と、前記本体に回動可能に枢支し、前記本体と前記便座とを覆う便蓋と、前記本体の側方に設け、前端が前記便座の前端より後退した袖部と、前記本体に内蔵し、少なくとも前記発熱体を制御する制御部を含み、前記袖部の前端上部にトイレ室に入室した人体を検知する人体検知センサを備え、前記人体検知センサは便座の着座面より低い位置に設置し、前記便蓋を閉成した状態において、前記人体検知センサは便蓋の前端位置における左右方向の垂直面において、所定の幅および所定の高さの基準検知範囲を備えたものである。
【0012】
これにより、袖部は便座の前端より後退しており、しかも人体検知センサは便座の着座面より低い位置に設置されているため、袖部および人体検知センサが便座への着座動作に支障をきたすことがなく、袖部に設けた操作スイッチの操作性を損なうことがない。
【0013】
また、人体検知センサを着座面より低い位置に設置したことにより、着座面の温度が上昇した場合でも、便座を人体として誤検知することがない。しかも、便蓋先端位置の所定範囲の検知が可能であるため、トイレ室に入室した人体を確実に検知することができる。
【0014】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記基準検知範囲は、幅は便蓋の前後方向の中心線に対して、少なくとも左右にそれぞれ40cm以内の範囲、高さは少なくとも床面より80cm以上の範囲を含むものである。
【0015】
これにより、本便座装置を通常のトイレ室に設置した状態で、単独で用便が可能な身長の低い子供でも確実に検知することが可能となる。
【0016】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、前記人体検知センサが人体を検知した場合、前記制御部は前記着座面を昇温するように前記発熱体を制御するものである。
【0017】
これにより、人体が検知されない便座装置を使用しないときは発熱体への通電を遮断または抑制し、便座装置を使用する人体が検知されたときにのみ、通電量を増やして昇温することが可能となるため、高い省エネルギー効果を得ることができる。
【0018】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか1つの発明において、前記便蓋を自動的に開閉する便座便蓋回動機構を備え、前記人体検知センサが人体を検知した場合、前記制御部は前記便座便蓋回動機構を制御し、前記便蓋を開成するものである。
【0019】
これにより、使用者がトイレ室に入室した場合、便蓋が自動的に開成するため、使い勝手が良く、しかも衛生的である。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態における便座装置を便器上に設置し、便蓋を開放した状態の外観の斜視図を示し、図2は便蓋を閉成した状態の外観の斜視図を示し、図3は袖部の先端前面上部に取り付けられカバーを外した状態での人体検知センサの外観の斜視図を示すものである。
【0022】
<1>便座装置の構成
図1に示すように、便座装置100は、本体200、便座300、便蓋400により構成され、便器700の上面に設置される。
【0023】
以下本実施の形態においては、便座装置100の本体200を配置した方を後方とし、便座を配置した方を前方として説明を行う。
【0024】
本体200には、便座300および便蓋400が便座便蓋回動機構(図示せず)を介して電動で開閉可能に取り付けられている。図1に示すように便蓋400を開放した状態においては、便蓋400は便座装置100の最後部に位置するように起立する。また、図2に示すように便蓋400を閉成すると便蓋400は便座300の上面と、後述の上部便座ケーシング310の側面を隠蔽する。
【0025】
また、本体200には、図示しない洗浄水供給機構(図示せず)、熱交換器(図示せず)、洗浄ノズル201等からなる洗浄機構と、乾燥ユニット(図示せず)と、制御部(図示せず)等が内蔵される。
【0026】
本体200の前面コーナー部には着座センサ202が設置してある。この着座センサ202は非接触式着座センサであり反射型の赤外線センサである。すなわち、発光部から赤外線を発光し人体によって反射された赤外線を受光部が受光検出することにより、便座300上に使用者が着座していることを検知する。
【0027】
また、洗浄水供給機構と熱交換器は洗浄ノズル201に接続されており、水道配管から供給される洗浄水を熱交換器で加熱することにより温水を洗浄ノズルに供給し、洗浄ノズル201から使用者の局部に向けて洗浄水を噴出し、使用者の局部を洗浄するものである。洗浄ノズル201はお尻を洗浄するお尻洗浄ノズル部と女性の局部を洗浄するビデノズル部を備えている。
【0028】
また、乾燥ユニットは洗浄水により濡れた局部に向けて温風を噴出し、局部を乾燥する
ことができる。
【0029】
なお、洗浄機構と乾燥ユニットは便座装置の必須構成要素ではなく、これらの構成要素を具備しない便座装置でもよい。
【0030】
また、本体200の側部より前方に突出するように袖部210が設けてあり、袖部210の上面には操作部211が設けてあり便座装置の各機能の操作が可能である。なお、袖部210の上面は便座300の着座面311より低く、前端は便座300の前端より後退した位置となっている。
【0031】
図3に示すように袖部210の前端上部211には人体検知センサ600が取り付けられている。人体検知センサ600は、反射型の赤外線センサであり、発光部から赤外線を発光し人体によって反射された赤外線を受光部が受光検出することにより、トイレット室内に使用者が入室したことを検知する。
【0032】
本体200の制御部は、操作部211、人体検知センサ600および着座センサ202から送信される信号に基づいて、便座装置100の各部の動作を制御する。
【0033】
<2>便座300の構成
図4は便座300の分解斜視図を示すものである。図4に示すように、便座300は、主としてアルミニウムにより形成された略楕円形状の環状の上部便座ケーシング310と、上部便座ケーシング310の裏面に粘着した略馬蹄形状の便座ヒータ350および合成樹脂により形成された略楕円形状の環状の下部便座ケーシング320を主構成部品として構成されている。
【0034】
以下、本実施の形態においては、着座した使用者から見て前方側を便座300の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座300の後部とする。
【0035】
上部便座ケーシング310は、厚さ約1mmのアルミニウム板をプレス加工等により成形し、表面にはアルマイト層と表面化粧層を施し、裏面には絶縁性を有する耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜が形成されている。
【0036】
なお、アルミニウム板の代わりに銅やステンレス等の板材あるいはマグネシウム合金の成型品等の熱伝導の良い他の金属を使用してもよい。また、アルミニウム板に施される表面処理は上記仕様に限定されるものではなく、他の化学的な処理やアクリル系やウレタン系の塗料を使用した他の塗装等も選択可能である。
【0037】
便座ヒータ350は、前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成されている。便座ヒータ350は、アルミニウムからなる2枚の金属箔の間に、線状ヒータを蛇行させて配設して構成されている。便座ヒータ350は着座面311と起曲部312を加熱できるように線状ヒータを配設あり、特に着座した使用者の大腿部と臀部が快適に加熱されるように場所によって密度を変えて配設してある。
【0038】
下部便座ケーシング320は樹脂材料を使用した成型品であり、平面形状が上部便座ケーシング310と略同形状の本体ケーシング部321と、本体ケーシング部321の両側後方に斜め上方に突出した腕部322で構成されている。上部便座ケーシング310と下部便座ケーシング320は内周部311aおよび外周部311bで結合し、結合部にはゴムまたは樹脂系のパッキンまたは接着シール剤による水密手段が施されている。
【0039】
上部便座ケーシング310の裏面には便座ヒータ350を粘着し、下部便座ケーシング
320を結合した便座300は、図5に示すように後部に腕部322を備えており、腕部322を本体200の便座便蓋回動機構(図示せず)に結合することにより、回動自在に枢支されている。
【0040】
上記構成の便座300の非使用時は、上方より便蓋400で隠蔽される。特に便座ヒータ350を裏面に粘着した上部便座ケーシング310は、図2に示すように、上面と側面を便蓋400で隠蔽されるので、待機中の放熱を抑制し、省エネルギー効果を向上することができる。
【0041】
<3>人体検知センサの取付構造
図1及び図3に示すように、本体200の側方には袖部210が設けられ袖部210上面には操作部211が設けられ便座装置の各機能の操作を行うことができる。また、袖部210の前端上部には開口部212が設けられ、開口部212にはカバー213が取り付けられている。カバー213は樹脂材料による成型品であり、袖部210の前面と上面に連続的に連接する曲面形状とし、赤外線が通過する部分の板厚は略均等とすることにより、赤外線の透過時に不規則な屈折や反射等の発生を抑制する形状となっている。
【0042】
カバー213の内側には人がトイレに入室したことを検知する人体検知センサ600が設けられている。人体検知センサ600は、反射型の赤外線センサであり、発光部から赤外線を発光し人体によって反射された赤外線を受光部が受光検出した場合にトイレット室内に使用者が入室したことを検知する構成となっている。
【0043】
人体検知センサ600は、袖部210の前端上部の開口部212内に設けられており、袖部210の上面には突起物がないため、操作部211のスイッチ操作時に支障をきたすことがなく、操作部を含む袖部のコンパクト化が可能となる。
【0044】
さらに、人体検知センサ600をカバー213内側に内蔵する構成で、袖部211表面に露出していないため人体検知センサ600の破損等の問題もなく、安定した検知性能の確保が可能となる。
【0045】
図5は人体検知センサ600の設置位置における断面図を示すものである。図に示すように、袖部210は便座300の着座面311より下方に設け、人体検知センサ600は着座面311より約20mm下方となる位置に設置している。
【0046】
このため、使用者が便座300に着座する着座動作時に、袖部210に使用者の身体や着衣が当たって着座動作に支障をきたす心配がなく、しかも人体検知センサ600は着座面311より約20mm下方となる位置に設置しているため、着座面311の表面温度が人体に近い温度になっている場合でも、便座300を人体として誤検知することを防止することができる。
【0047】
図6(a)、図6(b)は人体検知センサの設置方向を示すものであり、図6(a)は水平方向の設置方向を示す平面図であり、図6(b)は垂直方向の設置方向を示す側面図である。
【0048】
図6(a)に示すように、人体検知センサ600は、袖部210が設けられた本体200の反対側に検知範囲角度を約15度振るよう設置されており、人体検知センサ600が配置されていない側のトイレ800の入口801からの人の入室にたいしても確実に検知することが可能となる。 また図6(b)に示すように、人体検知センサ600は、前方向の検知範囲の仰角を水平より約30度上方を向くよう配置されたることにより、人体検知の範囲を広範囲に設定できるため、人の入室を確実に検知することが可能となる。
【0049】
図7は人体検知センサと便蓋との位置関係を示す断面図である。図7に示すように人体検知センサ600の側方には、人体検知センサ600より高い位置に便蓋400が配置されており、便蓋400の反対側の検知範囲は便蓋400により一部が遮蔽される。そのため、検知範囲を確保するため、人体検知センサ600と便蓋400の上縁とがなす仰角が30度以下になるよう人体検知センサ600を配置している。これにより、便蓋400で遮られる人体検知範囲を小さくできるため、身長の低い子供でも確実に検知することが可能となる。
【0050】
図8は便座装置を標準的なトイレ室に設置した標準的な設置状態を示す模式図である。図に示すように、標準的なトイレ室は幅80cm、奥行き120cmであり、その奥の方に設置された便器の上面にトイレ装置100が設置される。
【0051】
トイレ室800の入り口の扉801は、便座装置100の前方の壁面、あるいは前方の左右の壁面に設置されるのが一般的であり、本実施の形態における人体検知センサ600はこれらのいずれの場合においても、扉801から入室した直後の人体を検知可能とするものである。
【0052】
図9は図8に示す標準的な設置状態に設置した本実施の形態における人体検知センサの検知範囲を示す模式図である。図に示すように人体検知センサ600の検知範囲Wは便座装置100の前方の袖部210取り高い略直方体の範囲であるが、特に袖部210の反対側の下方については検知できない範囲が発生する。本実施の形態においては便蓋400の前端位置における左右方向の垂直面においては、袖部の反対側の検知範囲の下端は床面レベルより80cmとなっており、それより前方は80cmより低い位置まで検知可能であり、それより後方はより高い範囲のみが検知可能となっている。
【0053】
上記の検知範囲Wを備えた本実施の形態の便座装置100は、図8に示す標準的なトイレ室800に設置した場合、前方あるいは左右いずれの側壁に設けた扉801から入室した人体を、入室直後に検知することができるものである。特に上記検知範囲の下端を80cmに設定したことにより、便座装置100の単独使用が可能な身長の低い子供でも確実に検知することができる。
【0054】
上記検知範囲Wにおいて、便座装置100より離れた前方の検知範囲については、人体検知センサ600の設置条件に対して、ほとんど制約を加えるものではないが、便蓋400の前端位置における左右方向の垂直面の検知範囲は、主にそれより前方の検知範囲W全体を決定する基準となる検知範囲であり、本実施の形態においては、この位置における検知範囲を基準検知範囲WSと称する。
【0055】
図9の斜線の範囲で示すように、本実施の形態における基準検知範囲WSは、便蓋400の前後方向の中心線C上の前端位置における左右方向の垂直面において、左右の幅方向はそれぞれ40cm以内の範囲、高さ方向においては床面より80cm以上の範囲が基準検知範囲である。
【0056】
人体検知センサ600がこの基準検知範囲WSの検知が可能な場合、図8に示す幅80cmで奥行き120cmの標準的なトイレ室800に便座装置100を設置した場合、扉801を図に示す両側面および正面のいずれの位置に設置した場合でも、使用者がトイレ室に入室した直後に人体検知センサ600は人体を検知することができる。
【0057】
<4>便座装置の動作、作用
以上のように構成された便座装置は次のように動作する。
【0058】
非使用時において、便蓋300は閉成しており、便座300の上面と上部便座ケーシング310の側面を隠蔽しており、冬季等の室温が低い場合は、制御部90の制御により便座ヒータ350に通電することにより、便座300が例えば約18℃となるように温度調整される。このときの温度を待機温度と称する。当然ながら夏季等で室温が高い場合には便座300の温度も高くなり便座ヒータ350への通電は行わない。
【0059】
使用者がトイレット室に入室すると、人体検知センサ600が使用者を検知する。それにより検知信号が制御部に送信される。
【0060】
制御部は人体検知センサ600からの検知信号により使用者のトイレット室への入室を検知すると、制御部は便蓋400を開放するとともに、記憶された便座設定温度に基づいて便座ヒータ350の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
【0061】
選択されたヒータ制御パターンおよび計時部により得られる時間情報に基づいて便座ヒータ350の駆動を制御する。それにより、便座ヒータ350が昇温駆動され、便座300の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇される。
【0062】
便座設定温度へと瞬時に上昇させるために、便座ヒータ350の最大容量である1200W駆動は、すくなくとも、便座300の表面温度が使用者が着座した際に冷たいという不快を感じない最低限界の温度(以降冷感限界温度と称する)に達するまで行われる。この冷感限界温度は、発明者らの実施した被験者実験により約29℃であることがわかっている。
【0063】
一方、発明者らの実施した被験者実験では、使用者がトイレット室に入室してから通常の着衣状態から脱衣して便座に座るまでに要する最短時間の平均値は6秒であり、1200Wで駆動することにより、これより短い時間で限界温度まで昇温することができる。
【0064】
限界温度到達後、制御部は便座ヒータ350の駆動を600W駆動に低下し、便座300の着座面311が設定温度に達するまで駆動を継続する。設定温度に到達後は50W駆動に低下し、着座面311を設定温度に保温する。
【0065】
ここで、使用者が袖部210の操作部211の便座温度調整スイッチを操作することにより、設定温度を変更することができる。
【0066】
便座300に使用者が着座すると、着座センサ202は着座した人体を検知し、検知信号を制御部に送信する。これにより、着座状態で使用できる、洗浄機能や乾燥機能の操作が可能となる。
【0067】
例えば、使用者が袖部210の操作部211のお尻洗浄スイッチを操作すると、洗浄ノズル201のお尻洗浄ノズルが前方に突出し、洗浄水が噴出してお尻洗浄を開始する。次に、終了スイッチを操作すると、洗浄水の噴出が停止し、お尻洗浄ノズルは元の収納位置に収納される。
【0068】
次に、乾燥スイッチを操作すると、使用者のお尻に向けて温風が噴出し、洗浄で濡れたお尻を乾燥させることができる。
【0069】
使用者が便座300から立ち上がると、着座センサ202は使用者が離席したことを検知し検知信号を制御部に送信する。この信号により、制御部は所定時間経過後に便座ヒータへの通電を停止する。
【0070】
使用者がトイレ室から退出すると、人体検知センサ600の人体検知の信号の送信が停止することにより、制御部は所定時間後に便蓋400を閉成する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明にかかわる便座装置は、袖部スイッチの操作性を損なうことなく、かつ操作部のコンパクト化を図り確実な人体検知が可能となるので、他の着座用採暖機器の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0072】
100 便座装置
200 本体
210 袖部
300 便座
311 着座面
350 便座ヒータ(発熱体)
400 便蓋
600 人体検知センサ
700 便器
C 中心線
WS 基準検知範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に設置した本体と、
前記本体に回動可能に枢支し、着座面を加熱する発熱体を内蔵した便座と、
前記本体に回動可能に枢支し、前記本体と前記便座とを覆う便蓋と、
前記本体の側方に設け、前端が前記便座の前端より後退した袖部と、
前記本体に内蔵し、少なくとも前記発熱体を制御する制御部を含み、
前記袖部の前端上部にトイレ室に入室した人体を検知する人体検知センサを備え、
前記人体検知センサは便座の着座面より低い位置に設置し、
前記便蓋を閉成した状態において、前記人体検知センサは便蓋の前端位置における左右方向の垂直面において、所定の幅および所定の高さの基準検知範囲を備えたことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記基準検知範囲は、幅は便蓋の前後方向の中心線に対して、少なくとも左右にそれぞれ40cm以内の範囲、高さは少なくとも床面より80cm以上の範囲を含む請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記人体検知センサが人体を検知した場合、前記制御部は前記着座面を昇温するように前記発熱体を制御する請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記便蓋を自動的に開閉する便座便蓋回動機構を備え、前記人体検知センサが人体を検知した場合、前記制御部は前記便座便蓋回動機構を制御し、前記便蓋を開成する請求項1〜3のいずれか1項に記載の便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−268940(P2010−268940A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122880(P2009−122880)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】