説明

便座装置

【課題】便座と便蓋の回動範囲に相関性を備えることにより、便座の倒伏姿勢を基準とする所定位置で起立姿勢の便蓋を保持させることを可能とする便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便座装置10に、便器70の上面に載置される本体20と、便器70上において本体20に回動可能に設けられた便座30と、便座30の回動方向と同一方向に且つ便座30に相対する所定の回動範囲だけ回動可能に設けられた便蓋40とを備えた。便座30に設けた枢結部と便蓋40に設けた被枢結部とのうち、一方を軸形状部とし、他方を軸形状部を支承する軸受形状部として、軸形状部と軸受形状部とに相互の回動範囲を規制する規制部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器上に載置して使用する便座装置に関し、特に、便座装置が備える便座と便蓋との回動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄機能、乾燥機能、消臭機能、暖房機能などを備えた便座装置が知られている。このような便座装置は、便器上に載置して使用され、一般に、便座装置が備える機能の中枢と成る本体部と、便器上に載置される便座と、便座を上方から覆う便蓋とを備えている。便座と便蓋とはそれぞれ本体に対して回動可能に設けられており、本体に便座と便蓋とが共に枢支された形態のもの、本体に便座が枢支され且つ便座に便蓋が枢支された形態のものなどが、知られている。
【0003】
上記のような便座装置は、便蓋並びに便座を起立した姿勢に保持させるための機構を備えており、便座と便蓋とが共に便器上に倒れ伏した状態(便蓋が閉成された状態)、便座が便器上に倒れ伏し且つ便蓋が起立した状態(便蓋が開放された状態)、及び、便座と便蓋とが共に起立した状態の三態でそれぞれ姿勢を保持できるように構成されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の便座装置では、便座の上面に載置された本体に設けられた軸受け部に、便座と一緒に回動する便座ヒンジ軸が支承されることにより、本体に便座が枢支されている。そして、本体に設けられた便座用の緩衝装置により便座ヒンジ軸の回動が規制されて、便座が起立姿勢の所定位置で保持されるとともに、便座が起立姿勢から倒伏姿勢まで緩やかに回動するように構成されている。また、本体に別途設けられた軸受け部に、便蓋と一緒に回動する便蓋ヒンジ軸が支承されることにより、本体に便蓋が枢支されている。そして、本体に設けられた便蓋用の緩衝装置により便蓋ヒンジ軸の回動が規制されて、便蓋が起立姿勢の所定位置で保持されるとともに、便蓋が起立姿勢から倒伏姿勢まで緩やかに回動するように構成されている。
【特許文献1】特開平3−267030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の便座装置では、起立姿勢の便座と便蓋とは、それぞれ独立して本体を基準とする所定位置でヒンジ軸の回動が規制されて、その姿勢が保持される。従って、便座装置の本体が設置される便器の上面が傾斜している場合、例えば、便器の上面の前側が低く後側が高いような場合には、起立姿勢の便座と便蓋とが垂直よりも前側に傾いてしまい使用に支障を来す事態が想定される。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、便座の倒伏姿勢を基準とする所定位置で起立姿勢の便蓋を保持させることを可能とする便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の便座装置は、便器の上面に載置される本体と、前記便器上において前記本体に回動可能に設けられた便座と、前記便座の回動方向と同一方向に前記便座に相対する所定の回動範囲だけ回動可能に設けられた便蓋とを備えるものである。
【0008】
上記構成の便座装置によれば、便座と便蓋とは相互に所定の回動範囲内で回動可能であり、例えば、便蓋は便座を基準として所定範囲の角度で回動し、範囲の終端で係止することができる。即ち、便蓋は、便座装置の本体の設置状態に影響されず、便器上面で最も形状が安定した部分に設置される便座を基準として便蓋を所定範囲で回動し、範囲の終端で確実に係止することができる。
【0009】
前記便座装置において、前記便座に相対する前記便蓋の回動範囲は、前記便座が前記便器上に倒れ伏した状態において、前記便蓋が前記便座上に倒れ伏した位置から使用者が前記便座を使用可能な状態まで前記便蓋が起立した位置までの間とすることが好ましい。これにより、便座に着座して使用する便蓋開放状態で、便蓋を起立した姿勢に保持させることが可能となる。
【0010】
前記便座装置において、前記便座は枢結部を有し、前記便蓋は前記枢結部に枢結され且つ前記枢結部に相対して所定の回動範囲だけ回動可能である被枢結部を有する構成とすることができる。このように、便座と便蓋との枢結部分に相互の回動を規制する機構を設ければ、便座装置をコンパクトに構成することが可能となる。
【0011】
上記において、前記枢結部及び前記被枢結部のうち一方は軸形状部であり、他方は前記軸形状部を支承する軸受形状部であって、前記軸形状部と前記軸受形状部とは、相互の回動範囲を規制する規制部を有する構成とすることができる。
【0012】
この場合、前記軸形状部と前記軸受形状部とは、前記便座が前記便器上に倒れ伏した状態において前記便蓋を起立した姿勢で保持させる後倒規制部を有する構成とすることが好ましい。これにより、前記便蓋を起立した姿勢で安定して保持させた状態で、便座を使用することができる。
【0013】
前記便座装置において、前記軸形状部は前記便蓋に設けられ、前記軸受形状部は前記便座に設けられていることが好ましい。これにより、重量の大きい便座側で重量の小さい便蓋側を支承することとなり、枢支の強度とバランスを備え、耐久性を向上させることができる。
【0014】
また、前記便座装置において、前記便座を回動させる便座用回動駆動機構と、前記便蓋を回動させる便蓋用回動駆動機構とを更に備えることができる。これにより、便座と便蓋とを自動開閉式とすることができ、しかも、便蓋が動力に連結されることによって便蓋の回動位置が安定して保持されるため、便座装置の使い勝手の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
本発明によれば、便座装置の本体に相対して回動可能に設けられた便座と便蓋の回動範囲が相関性を有することにより、便蓋の回動可能範囲が本体ではなく便座に相対して定まるので、便座の倒伏姿勢を基準とする所定位置で起立姿勢の便蓋を保持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複説明を省略する。
【0018】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る便座装置について説明する。なお、以下に説明する便座装置は、使用者の臀部を洗浄する洗浄機能と、洗浄後に乾燥させる乾燥機能と、便座を暖める便座暖房機能とを備えたものであるが、本発明に係る便座装置はこのような機能を備えたものに限定されず、洗浄機能、乾燥機能及び暖房機能のうち少なくとも一つを備えたものであっても、これらの機能を全く備えないものであってもかまわない。
【0019】
〔便座装置10の概略構成〕
まず、便座装置10の概略構成から説明する。図1は本発明の実施の形態に係る便座装置を便器上に設置し、便蓋を開放した状態の外観斜視図、図2は便蓋閉成状態の便座装置の外観斜視図、図3は便蓋開放状態の便座装置の外観斜視図、図4は便座開放状態の便座装置の外観斜視図である。
【0020】
図1に示すように、便座装置10は、本体20、便座30、及び便蓋40から成る便座装置基体と、リモートコントローラ50と、人体検知センサ60とを、備えている。便座装置10の本体20、便座30及び便蓋40は、一体的に組み付けられて便器70の上面に設置される。以下、便座30に着座した使用者から見て前方を前、後方を後ろ、左右側方を左右として説明する。
【0021】
本体20には、後述する便座便蓋回動機構を介して便座30の後部が回動可能に支承されており、便座30の後部には、同じく便座便蓋回動機構を介して便蓋40の後部が回動可能に支承されている。以下、図2に示すように、便座30及び便蓋40が共に便器70上に倒れ伏した状態を「便蓋閉成状態」といい、図3に示すように、便座30が便器70上に倒れ伏し且つ便蓋40が起立した状態を「便蓋開放状態」といい、図4に示すように、便座30及び便蓋40が共に起立した状態を「便座開放状態」という。
【0022】
本体20の筐体は中空の箱状に形成されており、本体20の右側部には便座装置10に備えられた機能のうち主要な一部を操作するための操作部23が設けられ、本体20の前部には着座センサ22が設けられている。
【0023】
また、本体20には、何れも図示しないが、便座30に着座した使用者の臀部へ洗浄水を噴出する洗浄ノズル、洗浄ノズルに洗浄水を供給する洗浄水供給機構、及び洗浄ノズルに供給される洗浄水を温める熱交換器等から成る洗浄機構と、便座30に着座した使用者の臀部へ温風を送風する送風装置等から成る乾燥機構と、操作部23、着座センサ22、リモートコントローラ50、及び人体検知センサ60からの信号を受けて便座装置10の動作を制御する制御部とが内蔵されている。
【0024】
着座センサ22は、便座30に使用者が着座したことを検出するための手段であり、本体20の前部に設けられている。本実施の形態において、着座センサ22は反射型の赤外センサで構成されており、着座センサ22は、赤外線を本体20の前面から便座30の上方へ向けて投射するとともに便座30に着座した人体で反射された赤外線を検出して、この検出信号を本体20の制御部へ送信する。本体20の制御部では、着座センサ22から検出信号を受信して、便座30上に使用者が存在することが検知される。
【0025】
リモートコントローラ50は、トイレットルーム内において便座30に着座した使用者が操作可能な位置に設置される。このリモートコントローラ50には、便座装置10に備えられた機能を操作するための操作部が設けられている。リモートコントローラ50は、本体20の制御部と無線通信可能に構成されており、リモートコントローラ50の操作部にて入力された操作信号は本体20の制御部へ送信され、制御部では受信した操作信号に応じた便座装置10の動作制御が行われる。
【0026】
人体検知センサ60は、トイレットルーム内に使用者が入室したことを検出するための手段であり、トイレットルームの壁面等に設置される。本実施の形態において、人体検知センサ60は反射型の赤外センサで構成されており、人体検知センサ60は、赤外線を所定位置へ向けて投射するとともに人体で反射された赤外線を検出して、この検出信号を本体20の制御部へ送信する。本体20の制御部では、人体検知センサ60から検出信号を受信して、トイレットルーム内に使用者が入室したことが検知される。
【0027】
〔便座便蓋回動機構〕
ここで、便座便蓋回動機構について説明する。この便座便蓋回動機構は、便座30と便蓋40との回動範囲が相関しているという特徴を有している。図5は便座の平面図、図6は便蓋の平面図、図7は本体の平面図、図8は便蓋閉成状態の便座装置の平面図、図9は便座軸と本体側軸穴の形状を示す図8におけるIX−IX断面図、図10は便蓋軸と便座側軸穴の形状を示す図8におけるX−X断面図である。
【0028】
(便座30)
まず、便座30及び便座30に設けられた便座便蓋回動機構から説明する。図5及び図8に示すように、便座30は、平面視略楕円環形状の着座部31と、着座部31の後部に連続して形成された起曲部32と、起曲部32の後部に連続して形成された左右二本のアーム部33,33とが、一体的に形成されている。なお、便座30はアーム部33を除いて、上枠体と下枠体とを合わせた中空状に構成されており、上枠体は、熱容量を小さく且つ熱伝導性を高くするためにアルミニウム材料で構成されるとともに、着座部31に対応する部分の裏面に便座ヒータ(図示略)が貼り付けられている。
【0029】
便座30の着座部31の上面は、楕円環の内周側が低く外周側が高くなるような傾斜を有しており、その表面は上方に凸の曲面で形成されている。また、便座30の起曲部32の上面は、着座部31の上面と連続する凹曲面で形成されており、後上がりに傾斜している。また、便座30のアーム部33は、起曲部32の後部から後方へ突出するように設けられており、このアーム部33に、本体20に枢結される第1被枢結部と、便蓋40を枢結する第2枢結部とを備えている。
【0030】
便座30のアーム部33,33に設けられた第1被枢結部は、左右のアーム部33,33が対峙する面(側面)にそれぞれ設けられている。本実施の形態において、第1被枢結部は、左右のアーム部33,33が対峙する側面からそれぞれ内側に向かって突出する便座軸34,34として構成されている。便座軸34は、図9に示すように短径部34aと長径部34bとを有する軸形状部であって、便座30のアーム部33に一体的に設けられている。このような便座軸34は、短径部34aと長径部34bとの境界に段差面を2つ有する。この段差面の一方は前倒係止面34cであり、他方は後倒係止面34dである。
【0031】
一方、便座30のアーム部33,33に設けられた第2枢結部は、左右のアーム部33,33の第1被枢結部が設けられた側面と反対側の側面に設けられている。本実施の形態において、第2枢結部は、左右のアーム部33,33の外側の側面にそれぞれ穿設された便座側軸穴35,35として構成されている。便座側軸穴35は、図10に示すように、短径部35aと長径部35bとを有する異形穴状の軸受形状部であって、便座30のアーム部33に一体的に設けられている。このような便座側軸穴35は、短径部35aと長径部35bとの境界に段差面を2つ有する。この段差面の一方は前倒規制面35cであり、他方は後倒規制面35dである。
【0032】
便座30のアーム部33,33に設けられた便座軸34,34と便座側軸穴35,35とは、全て同一軸上に設けられている。
【0033】
(便蓋40)
続いて、便蓋40及び便蓋40に設けられた便座便蓋回動機構を説明する。図6及び図8に示すように、便蓋40は、便蓋閉成状態において便座30の上面及び側面の上部と、本体20の上部とを、被覆することができるような形状を有している。このように、便蓋40で便座30及び本体20の上面と側面の一部を覆うことにより、便座装置10全体の外観がすっきりとした印象となり、意匠性の向上を図ることができる。さらに、便蓋40で本体20及び便座30、および部材の継ぎ目や隙間などに埃が堆積することを防止することができ、便蓋40の表面を清掃すればよいので作業が容易となる。また、便座30のうち発熱部分である上枠体の上面及び側面が蓋体40で覆われているので、待機中の便座30からの放熱が効果的に抑制され、省エネルギー効果が期待される。
【0034】
便蓋40の左右両内側面には、便座30に枢結される第2被枢結部がそれぞれ設けられている。第2被枢結部は、便座30に設けられた第2枢結部と枢結される部分であり、便座30の第2枢結部に対応する位置に設けられている。本実施の形態において、第2被枢結部は、便蓋40の左右両内側面から、内側へ突出する便蓋軸41,41として構成されている。便蓋軸41は、図10に示すように短径部41aと長径部41bとを有する軸形状部であって、便蓋40に一体的に形成されている。このような便蓋軸41は、短径部41aと長径部41bとの境界に段差面を2つ有する。この段差面の一方は前倒係止面41cであり、他方は後倒係止面41dである。
【0035】
便蓋軸41は便座側軸穴35に挿入(嵌入)可能に形成されている。つまり、便蓋軸41の短径部41aは、便座側軸穴35の短径部35aの内周面の内側に収まる大きさであり、また、便蓋軸41の長径部41bは、便座側軸穴35の長径部35bの内周面の内側に収まる大きさである。そして、便蓋40が便座30に枢支された状態で、便蓋軸41,41と便座側軸穴35,35とが同一軸上にあるように、これらの位置関係が定められている。さらに、便座側軸穴35に便蓋軸41が挿入された状態において、便座側軸穴35の前倒規制面35cと便蓋軸41の前倒係止面41cとが当接可能であり、便座側軸穴35の後倒規制面35dと便蓋軸41の後倒係止面41dとが当接可能となるように、便座側軸穴35と便蓋軸41とがそれぞれ形成されている。
【0036】
(本体20)
続いて、本体20及び本体20に設けられた便座便蓋回動機構を説明する。図7及び図8に示すように、本体20の筐体の上面の左右略中央部には、周囲から部分的に隆起した隆起部25が設けられている。この隆起部25は、便座30の対峙するアーム部33,33間に嵌り込む左右幅を有している。そして、本体20の隆起部25の左右両側面には、便座30を枢結する第1枢結部が設けられている。本実施の形態において、第1枢結部は、本体20の隆起部25の左右両側面にそれぞれ穿設された本体側軸穴26,26として構成されている。本体側軸穴26は、図9に示すように、短径部26aと長径部26bとを有する異形穴状の軸受形状部であって、本体20の筐体に一体的に形成されている。このような本体側軸穴26は、短径部26aと長径部26bとの境界に段差面を2つ有する。この段差面の一方は前倒規制面26cであり、他方は後倒規制面26dである。
【0037】
本体側軸穴26は、便座軸34を挿入(嵌入)可能に形成されている。つまり、便座軸34の短径部34aは、本体側軸穴26の短径部26aの内周面の内側に収まる大きさであり、また、便座軸34の長径部34bは、本体側軸穴26の長径部26bの内周面の内側に収まる大きさである。そして、便座30が本体20に枢支された状態で、便座軸34,34と本体側軸穴26,26とが同一軸上にあるように、これらの位置関係が定められている。さらに、本体側軸穴26に便座軸34が挿入された状態において、本体側軸穴26の前倒規制面26cと便座軸34の前倒係止面34cとが当接可能であり、本体側軸穴26の後倒規制面26dと便座軸34の前倒係止面34cとが当接可能となるように、本体側軸穴26と便座軸34とがそれぞれ形成されている。
【0038】
さらに、本体20の後部には、起立姿勢にある便蓋40の後倒を規制する後倒規制部29が設けられている。後倒規制部29は本体20の筐体に一体的に形成されており、起立姿勢にある便蓋40が更に後倒しようとする際に、便蓋40の後端部42が後倒規制部29に当接することによって便蓋40の後方への回動が規制される。なお、後倒規制部29により規制される便蓋40の後方への回動の程度(角度)は、適宜定められる。
【0039】
(便座便蓋回動機構の動作)
次に、上述のように構成された便座便蓋回動機構の動作について説明する。図11は便座と便蓋の状態により変化する便座軸と本体側軸穴との相互関係並びに便蓋軸と便座側軸穴との相互関係を説明する図、図12は便蓋閉成状態の便座軸と本体側軸穴との相互関係並びに便蓋軸と便座側軸穴との相互関係の別態様を説明する図、図13は便蓋開放状態の便蓋と本体の後倒規制部との状態を説明する図、図14は便座開放状態の便蓋と本体の後倒規制部との状態を説明する図である。
【0040】
本体20に設けられた第1枢結部である本体側軸穴26,26に、便座30に設けられた第1被枢結部である便座軸34,34が挿入されることによって、本体20に便座30が枢支されている。また、便座30に設けられた第2枢結部である便座側軸穴35,35に、便蓋40に設けられた第2被枢結部である便蓋軸41,41が挿入されることによって、便座30に便蓋40が枢支されている。このとき、便蓋40は、便座30の回動方向と同一方向に且つ便座30に相対する所定の回動範囲だけ回動可能に便座装置10に設けられていることとなる。なお、便座30に便蓋40を着脱する際には、樹脂材料で成る便蓋40の弾性変形を利用して2つの便蓋軸41,41間の距離を開き、これらの便蓋軸41,41をそれぞれ便座側軸穴35,35へ挿入する作業を行う。便蓋40が便座30と本体20とをすっぽりと覆う形状を有することで、このように便座30から便蓋40を容易に着脱することができることとなり、便蓋40を便座30から取り外して清掃することができるので、便蓋40及び便座30の清掃が容易となる。
【0041】
便座閉成状態にある便座装置10において、図11(a)に示すように、便座側軸穴35の前倒規制面35cに便蓋軸41の前倒係止面41cが当接しており、本体側軸穴26の前倒規制面26cに便座軸34の前倒係止面34cが当接している。但し、便座30の前側への回動は便座30の下面が便器70の上面に当接することによって規制されるため、本体20が設置される便器70の上面が前下がりに傾斜している場合には、図12に示すように、便座閉成状態において、本体側軸穴26の前倒規制面26cに便座軸34の前倒係止面34cが当接しないこともある。
【0042】
便座閉成状態から、便蓋40のみを後方へ回動させると、便座側軸穴35に相対して便蓋軸41が回動し、やがて、図11(b)に示すように、便座側軸穴35の後倒規制面35dに便蓋軸41の後倒係止面41dが当接することにより、便蓋40の後方への回動が規制される(便蓋開放状態)。このようにして、便蓋40は起立した姿勢に安定して保持され、使用者が便座30を使用することができるようになる。なお、このとき、図13に示すように、便蓋40の後端部42は、本体20の後倒規制部29には当接していない。
【0043】
便座開放状態における便蓋軸41を中心とする便座30と便蓋40との相対角度、つまり、便蓋40の回動可能範囲は、便座側軸穴35の長径部35bの角度から、便蓋軸41の長径部41bの角度を差し引いた角度である。このような便蓋40の回動可能範囲は、便座30が便器70上に倒れ伏した状態において、便蓋40が便座30上に倒れ伏した位置から使用者が便座30を使用可能な状態まで便蓋40が起立した位置までの間である。なお、便蓋40の回動可能範囲は、便蓋40の前倒を防止し起立した姿勢を安定して保持するために、90度より大きい所定の角度であることが好ましい。
【0044】
便蓋40は、倒伏姿勢にある便座30を前倒側の基準として前述のように定まる回動可能範囲において回動することができる。つまり、便蓋40の回動可能範囲は、本体20を基準として定まるのではなく、便座30を基準として定まることとなる。従って、本体20が設置される便器70の上面が傾いていたとしても、これに関係なく便蓋40は倒伏姿勢にある便座30に相対して所定範囲だけ回動することができる。特に、本実施の形態に係る便座装置10の便蓋40は、便座30及び本体20の上面と側面の一部をすっぽりと覆う形状を有することから、一般に見られるような便座のみを覆う形状の便蓋と比較して、大型化すると共に重量化する。しかし、このように大型化且つ重量化した便蓋40であっても、本体20の設置状況に関わらず便座を基準位置として所定範囲だけ回動することができるので、例えば、便蓋40が前傾した状態で後方への回動が規制されるといった事態を回避することができ、使用される便座30に対して好適な起立姿勢を安定して保持することができる。よって、便座30の使用中に不用意に便蓋40が閉じられるような不都合が生じにくい。
【0045】
便蓋開放状態から、便座30を後方へ回動させると、固定された本体側軸穴26に相対して便座軸34が回動するとともに、便蓋軸41に相対して便座側軸穴35が回動する。すると、図11(c)に示すように、便座側軸穴35の後倒規制面35dが便蓋軸41の後倒係止面41dから離れるので、便蓋40は便座30が回動したぶんだけ更に後方へ回動できるようになる。便蓋開放状態から更に後方へ回動した便蓋40は、図14に示すように、便蓋40の後端部42が後倒規制部29に当接することによって便蓋40の後方への回動が規制されて、所定位置で保持される。
【0046】
便座30を更に後方へ回動させると、やがて、図11(d)に示すように、本体側軸穴26の後倒規制面26dに便座軸34の後倒係止面34dが当接することにより、便座30の後方への回動が規制される(便座開放状態)。このようにして、便座30及び便蓋40は起立した姿勢に保持される。なお、便座30が起立姿勢で保持される位置(回動位置)は、本体側軸穴26の後倒規制面26dの位置によって定まるが、便座30の前倒を防止し起立した姿勢を安定して保持するために、便座30が垂直よりも後方へ回動した位置であることが望ましい。
【0047】
上述の通り、本実施の形態に係る便座装置10では、本体20に相対して回動可能に設けられた便座30と便蓋40の回動範囲が相関性を有することにより、便蓋40の回動可能範囲が本体20ではなく便座30に相対して定まるので、便座30の倒伏姿勢を基準とする所定位置で起立姿勢の便蓋を保持させることができる。しかも、便座30と便蓋40との枢結部分に相互の回動範囲を規制する機構が設けられているので、便座装置10をコンパクトに構成することが可能となる。
【0048】
なお、本実施の形態に係る便座装置10において、便座30が便座装置10の本体20で枢支されるとともに便蓋40が便座30で枢支されているが、本発明はこれに限定されない。つまり、便座装置10において、便座30が、便器70上において本体20に回動可能に設けられ、便蓋40が、便座30の回動方向と同一方向に且つ便座30に相対する所定の回動範囲だけ回動可能に設けられていれば、便蓋40は本体20及び便座30の何れに枢支されていてもかまわない。従って、例えば、便座30及び便蓋40が便座装置10の本体20に枢支され、便蓋40の回動範囲が便座30に相対して定まるような規制部材を別途設ける構成としてもかまわない。
【0049】
また、本実施の形態に係る便座装置10において、第1被枢結部及び第2被枢結部は共に軸形状部で構成され、第1枢結部及び第2枢結部は共に軸形状部を支承する軸受形状部で構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、軸受形状部と軸形状部との関係を逆にしてもかまわない。但し、重量の大きい方に軸受形状部を設け、重量の小さい方に軸形状部を設ければ、重量の大きい方で重量の小さい方を支承することとなり、枢支の強度とバランスを備え、耐久性を向上させることができるので、好ましい。
【0050】
また、上述の便座装置10において、便座30及び便蓋40は使用者が手動で回動させる手動開閉式としているが、便座30及び便蓋40のうち何れか一方又は両方を自動で回動させる自動開閉式としてもかまわない。例えば、便座装置10の便座30及び便蓋40を自動開閉式とする場合には、便蓋軸41を回動させるモータ等の便蓋用回動駆動機構と、便座軸34を回動させるモータ等の便座用回動駆動機構とをそれぞれ本体20に備え、これらの回動駆動機構を制御部にて動作制御することにより、便座30と便蓋40とをそれぞれ独立して回動させることができる。このように、便座30と便蓋40とを自動開閉式とした場合、便座及び便蓋が動力に連結されているので、これらの回動位置が安定して保持されるため、便座装置の使い勝手の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係る便座装置は、便座と便蓋の回動範囲に相関性を備えることにより、便座の倒伏姿勢を基準とする所定位置で起立姿勢の便蓋を保持させることが可能となるので、便座装置が備える機能に限定されず広く便座と便蓋とを備える便座装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に係る便座装置を便器上に設置し、便蓋を開放した状態の外観斜視図である。
【図2】便蓋閉成状態の便座装置の外観斜視図である。
【図3】便蓋開放状態の便座装置の外観斜視図である。
【図4】便座開放状態の便座装置の外観斜視図である。
【図5】便座の平面図である。
【図6】便蓋の平面図である。
【図7】本体の平面図である。
【図8】便蓋閉成状態の便座装置の平面図である。
【図9】便座軸と本体側軸穴の形状を示す図8におけるIX−IX断面図である。
【図10】便蓋軸と便座側軸穴の形状を示す図8におけるX−X断面図である。
【図11】便座と便蓋の状態により変化する便座軸と本体側軸穴との相互関係並びに便蓋軸と便座側軸穴との相互関係を説明する図である。
【図12】便蓋閉成状態の便座軸と本体側軸穴との相互関係並びに便蓋軸と便座側軸穴との相互関係の別態様を説明する図である。
【図13】便蓋開放状態の便蓋と本体の後倒規制部との状態を説明する図である。
【図14】便座開放状態の便蓋と本体の後倒規制部との状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0053】
10 便座装置
20 本体
22 着座センサ
23 操作部
25 隆起部
26 本体側軸穴
26a 短径部
26b 長径部
26c 前倒規制面(前倒規制部)
26d 後倒規制面(後倒規制部)
29 後倒規制部
30 便座
31 着座部
32 起曲部
33 アーム部
34 便座軸
34a 短径部
34b 長径部
34c 前倒係止面(前倒規制部)
34d 後倒係止面(後倒規制部)
35 便座側軸穴
35a 短径部
35b 長径部
35c 前倒規制面(前倒規制部)
35d 後倒規制面(後倒規制部)
40 便蓋
41 便蓋軸
41a 短径部
41b 長径部
41c 前倒係止面(前倒規制部)
41d 後倒係止面(後倒規制部)
42 後端部
50 リモートコントローラ
60 人体検知センサ
70 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の上面に載置される本体と、
前記便器上において前記本体に回動可能に設けられた便座と、
前記便座の回動方向と同一方向に前記便座に相対する所定の回動範囲だけ回動可能に設けられた便蓋とを備える、
便座装置。
【請求項2】
前記便座に相対する前記便蓋の回動範囲は、前記便座が前記便器上に倒れ伏した状態において、前記便蓋が前記便座上に倒れ伏した位置から使用者が前記便座を使用可能な状態まで前記便蓋が起立した位置までの間である、
請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記便座は枢結部を有し、
前記便蓋は前記枢結部に枢結され且つ前記枢結部に相対して所定の回動範囲だけ回動可能である被枢結部を有する、
請求項1又は請求項2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記枢結部及び前記被枢結部のうち一方は軸形状部であり、他方は前記軸形状部を支承する軸受形状部であって、
前記軸形状部と前記軸受形状部とは、相互の回動範囲を規制する規制部を有している、
請求項3に記載の便座装置。
【請求項5】
前記軸形状部と前記軸受形状部とは、前記便座が前記便器上に倒れ伏した状態において前記便蓋を起立した姿勢で保持させる後倒規制部を有している、
請求項4に記載の便座装置。
【請求項6】
前記軸形状部は前記便蓋に設けられ、前記軸受形状部は前記便座に設けられている、
請求項4又は請求項5に記載の便座装置。
【請求項7】
前記便座を回動させる便座用回動駆動機構と、前記便蓋を回動させる便蓋用回動駆動機構とを更に備える、
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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