説明

便座装置

【課題】複数の便座装置を設置するトイレ空間において、便座の不使用時の待機電力を低減すると共に快適な便座温度で使用できる便座装置を提供する。
【解決手段】使用者の便器への接近を検知する検知領域の異なる複数の検知部(800,600)を備えて、複数の検知部の検知動作に応じて、使用者が便器に近づくのに伴って便座400の温度を段階的に立ち上がるように制御する。これにより、使用者の接近を事前に検知して早めに昇温するから、待機時の温度を低くすることを可能にし、便座の不使用時の待機電力を停止、若しくは低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座の温度を制御する便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な便座装置は、常時暖房方式の便座装置であり、厚み3ミリ程度の樹脂製の便座の裏側に出力50W程度の中電力のヒータを配設して、使用に備えて予め34℃から40℃程度の設定温度に常時保温して、何時でも快適に使用できるようにしている。しかし、一般的には使用時間よりも不使用時間が長いため、不使用の時間帯にエネルギーを無駄に浪費することになり、不経済でもあった。
【0003】
これに対して、瞬間暖房方式の便座装置があり、この方式では、便座の枠体を熱伝導性の良いアルミニウムなどの金属材料で構成し、その便座の裏側に高電力のヒータを備えている。そして、不使用の時にはヒータを低電力で駆動して、便座の温度を所定の待機温度に維持しておいて、人体検知センサで使用者の入室を検知し、ヒータを高電力で駆動して便座を瞬間的に昇温している。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この瞬間暖房方式の便座装置では、1200Wの高電力のヒータを用いて、着座面を毎秒約2K(ケルビン)という昇温速度で昇温することができる。これは、常時暖房方式の便座装置に比べて30倍程度の昇温速度になっている。これにより、使用者がトイレ室に入室してから便座に着座するまでの数秒の間に便座を瞬間的に昇温して、34℃から40℃の範囲の設定温度を維持するように制御し、着座中の使用者が快適な暖感覚を得られるようにしている。
【0005】
図12は、特許文献1の便座装置における便座の待機温度からの設定温度まで昇温する時の昇温特性を示すグラフである。同図において、室温が15℃で待機温度を18℃とした場合の昇温特性が曲線aで示してあり、室温が10℃に低下した状態で待機温度を18℃に維持した場合の昇温特性が曲線cで示してあり、室温が5℃低下することにより、待機温度から冷感限界温度に達するまでの昇温時間が5.5秒間から6.5秒間へと1秒間長くなることが示されている。この遅れを補正するために、待機温度を20℃に変更した場合の温度特性が曲線dで示してあり、待機温度を20℃に変更することにより昇温時間を5.5秒間に維持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−050436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の便座装置では、人体検知センサにより使用者を検知してから便座に着座するまでに要する着座動作時間を予め検証しており、この着座動作の最短時間としては5.5秒という実験結果が得られている。また、使用者が便座に着座した時に冷たいと感じない冷感限界温度が29℃であることも実験で得られている。従って、着座動作の最短時間(5.5秒)内に冷感限界温度(29℃)まで昇温する昇温速度を高めることができれば、不使用時の待機温度を下げることができる。
【0008】
そして、便座を昇温する昇温速度を高める一手段として、便座ヒータの高電力化を図る方法がある。しかしながら、この方法を採用すると、便座ヒータの安全動作や便座ヒータの信頼性の確保が必要となる、一般家庭の屋内配線には電流容量の制限がある等の問題が有り、昇温速度を大幅に向上することは困難であった。
【0009】
本発明は、オフィスビルや商業施設などのトイレ室のような、一つのトイレ空間内に複数設置された便座装置においても、使用者が便座を使用する時の快適性を維持しつつ、省エネルギー性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、トイレ空間を間仕切りした複数の個室毎に設置される複数の便器と、着座面および前記着座面を加熱する便座ヒータを有し前記便器の上部に載置される便座と、前記トイレ空間内の人の有無を検知する第1の検知部と、前記各個室への使用者の入室を検知する第2の検知部と、前記着座面の温度が目標温度に追従するように前記便座ヒータへの通電を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1および第2の検知部の検知動作に応じて、前記使用者が前記便器に近づくのに従って順次高い目標温度に切り替え、前記着座面の温度を前記目標温度に追従させて最終目標温度である設定温度に向けて立ち上げるように制御するものである。
【0011】
これにより、使用者が便器に接近しつつあることを事前に検知して、便座の着座面の温度を使用者の接近度合いに応じて段階的に上昇させるので、昇温動作の動作時間を短縮することができる。そのため、使用者が便座に着座するまでに、着座面を十分に暖めることができるので快適に使用でき、不使用時の便座温度を低くして電力消費を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の便座装置は、使用者が便器へ接近しつつあることを事前に検知して、便座の着座面の待機温度を使用者の接近度合いに応じて段階的に上昇させるので、昇温動作の動作時間を短縮できる分、便座ヒータの加熱をより低電力駆動で待機させることを可能にし、省エネルギー性に優れた便座装置を提供することができる。
【0013】
特に、一つのトイレ空間に複数の便座装置が設置されることの多いオフィスビルや商業施設においては、勤務時間内や営業時間内など不特定多数の人が利用するトイレ空間に設置される便座装置において、どの便座に着座しても常に快適な暖房効果が得られ、さらに複数の便座装置に対して有効に作用するので、大きな省エネルギーを実現することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置を便器上に設置した状態の外観を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1おける便座の分解斜視図
【図3】本発明の実施の形態1おける便座の上部便座ケーシングに便座ヒータを取り付けた状態を示す下面図
【図4】本発明の実施の形態1おける便座ヒータの平面図
【図5】本発明の実施の形態1における便座装置の駆動系の構成を示す模式図
【図6】本発明の実施の形態1における便座装置の動作を使用者の接近とともに示す模式図
【図7】本発明の実施の形態1における便座ヒータの駆動例および便座の表面温度の変化を示すタイムチャート
【図8】本発明の実施の形態2のトイレ空間における検知部の配置を示した模式図
【図9】本発明の実施の形態2における待機温度設定部の模式図
【図10】本発明の実施の形態3のトイレ空間における検知部の配置を示した模式図
【図11】本発明の実施の形態1における第2の検知部が非検知の場合の便座ヒータの駆動例と便座の表面温度の変化を示すタイムチャート
【図12】従来の便座装置の昇温特性を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、トイレ空間を間仕切りした複数の個室毎に設置される複数の便器と、着座面および前記着座面を加熱する便座ヒータを有し前記便器の上部に載置される便座と、前記トイレ空間内の人の有無を検知する第1の検知部と、前記各個室への使用者の入室を検知する第2の検知部と、前記着座面の温度が目標温度に追従するように前記便座ヒータへの通電を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1および第2の検知部の検知動作に応じて、前記使用者が前記便器に近づくのに従って順次高い目標温度に切り替え、前記着座面の温度を前記目標温度に追従させて最終目標温度である設定温度に向けて立ち上げるように制御するものである。
【0016】
これにより、使用者が便器に接近しつつあることを事前に検知して、便座の着座面の温度を使用者の接近度合いに応じて段階的に上昇させるので、昇温動作の動作時間を短縮することができる。そのため、使用者が便座に着座するまでに、着座面を十分に暖めることができるので快適に使用でき、不使用時の便座温度を低くして電力消費を低減することができる。
【0017】
第2の発明は、トイレ空間を間仕切りした複数の個室毎に設置される複数の便器と、着座面および前記着座面を加熱する便座ヒータを有し前記便器の上部に載置される便座と、前記トイレ空間内の人の有無を検知する第1の検知部と、前記各個室への使用者の入室を検知する第2の検知部と、前記便座の着座面の温度を検知する温度測定部と、前記温度測定部の前記検知温度が目標温度に追従するように前記便座ヒータへの通電を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1の検知部の検知動作に応じて前記着座面の温度を最終目標温度より低い目標温度である待機温度に向けて昇温し、前記第2の検知部が前記使用者を検知すると、前記着座面の温度を前記最終目標温度である設定温度に向けて昇温するように、前記便座過熱部への通電を制御するものである。
【0018】
これにより、便座装置を複数設置したトイレ空間において、使用者が便器に接近することを、第1の検知部が事前に検知することにより便座を予め待機温度まで昇温し、便器にさらに近づく使用者を第2の検知部で検知することにより便座の着座面を設定温度まで昇温するので、昇温動作の動作時間を短縮することができ、着座面を十分に暖めることができる。また、昇温動作の動作時間を短縮できる分、不使用時の便座温度を低くすることが可能となり、不使用時の電力消費を低減できる。
【0019】
第3の発明は、トイレ空間を間仕切りした複数の個室毎に設置される複数の便器と、着座面および前記着座面を加熱する便座ヒータを有し前記便器の上部に載置される便座と、前記トイレ空間内の人の有無を検知する第1の検知部と、前記各個室への使用者の入室を検知する第2の検知部と、前記便座の着座面の温度を検知する温度測定部と、前記温度測定部の前記検知温度が目標温度に追従するように前記便座ヒータへの通電を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1の検知部の検知動作に応じて前記着座面の温度を第1の待機温度から前記第1の待機温度より高い第2の待機温度に向けて昇温し、前記第2の検知部が前記使用者を検知すると前記着座面の温度を前記第2の待機温度より高い最終目標温度である設定温度に向けて昇温するように、前記便座ヒータへの通電を制御するものである。
【0020】
これにより、周囲の温度が低下しても、トイレ空間内に使用者が居ない場合は、便座を第1の待機温度として一定に保っているので、第1の検知部が使用者の接近を事前に検知すると、便座を第2の待機温度まで昇温することができ、便器にさらに近づく使用者を第2の検知部で検知することにより、便座の着座面を最終目標温度である設定温度まで昇温することが可能になる。従って、不使用時の便座温度を低くして電力消費を低減できて、使用者が便座に着座するまでに、着座面を十分に暖めることができるので快適に使用できる。つまり、周囲温度が低下しても使用者の着座するときの便座温度が保証される。
【0021】
第4の発明は、特に、第3の発明の制御部は、第1の待機温度の設定部を備えており、前記設定部は第1の待機温度を任意に設定できるものである。
【0022】
これにより、トイレ空間における第1の検知部の設置場所は便座装置の配置に合わせて第1の待機温度を任意の温度に設定することができるので、個々のトイレ空間に合わせて適した設定に調整していれば、使用者は便座に着座した時に、便座が冷たくて嫌な思いをすることがない。
【0023】
トイレ空間に設置される個々の便座装置において、第1の待機温度は個々の便座装置毎に設定しても良く、快適な暖感覚が得られて更に大きな省エネルギー効果を得ることができる。
【0024】
第5の発明は、特に、第3の発明の制御部は、さらにタイマ部を備えており、前記タイマ部により計測された第1の検知部の検知動作から第2の検知部の検知動作までの時間間隔によって、第1の待機温度の制御目標値を決定するものである。
【0025】
これにより、特に意識せずとも実際の使用において第1の検知部の検知動作と第2の検知部の検知動作との時間間隔を基に第1の待機温度が決定されるので、トイレ空間における第1の検知部の設置位置や複数の便座装置の配置に合わせて実際に使用される時間間隔に則して不使用時の便座温度を低くして電力消費を低減できて、使用者が便座に着座するまでに、着座面を十分に暖めることができ、使用者は快適に使用することができる。
【0026】
トイレ空間に設置される個々の便座装置において、第1の待機温度は個々の便座装置毎に適した温度に決定されるので、複数設置されたどの便座を使用しても快適な暖感覚が得られて更に大きな省エネルギー効果を得ることができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態における便座装置を便器上に設置した状態の外観の斜視図を示すものである。
【0029】
<1>便座装置の構成
図1に示すように、便座装置100は、便器700の上面に配置される便座本体200、便蓋300、便座400と、リモートコントローラ500、第1の検知部800、第2の検知部600により構成される。
【0030】
便座本体200は、便蓋300および便座400が便座便蓋回動機構(図示せず)を介して電動で開閉可能に取り付けられている。また、便座本体200は、洗浄水供給機構(図示せず)、熱交換器(図示せず)および洗浄ノズル201等からなる洗浄機構と、乾燥ユニット(図示せず)、便座温調ランプRA1および制御部90等が内蔵されている。
【0031】
そして、便座本体200の前面部には着座センサ202が設置してある。この着座センサ202は反射型の赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出することにより便座400上に使用者が存在することを検知する。
【0032】
また、洗浄水供給機構および熱交換器は、洗浄ノズル201に接続されており、水道配管(図示せず)から供給される洗浄水をその熱交換器で加熱し、加熱した洗浄水を洗浄ノズル201に供給する。なお、洗浄機構は便座装置の必須構成要素ではなく、これらの構成要素を具備しない便座装置であってもよい。
【0033】
洗浄ノズル201は、お尻を洗浄するお尻洗浄ノズル部(図示せず)と、女性の局部を洗浄するビデノズル部(図示せず)とを備えており、使用者の局部に向けて洗浄水を噴出し、使用者の局部を洗浄水で洗浄するものである。
【0034】
リモートコントローラ500は、複数の操作スイッチを有しており、便座400上に着座した使用者が操作可能なトイレ室の壁面等の場所に取り付けられている。そして、使用者がリモートコントローラ500の操作スイッチを操作することにより、便座装置100の各機能を操作することができる。
【0035】
制御部90は、リモートコントローラ500、第1の検知部800、第2の検知部600および着座センサ202から送信される信号に基づいて、便座装置100の各部の動作を制御するようになっている。
【0036】
第1の検知部800および第2の検知部600は、例えば反射型の赤外線センサで構成され、人体から反射された赤外線を検出して使用者の接近を検知する。これらは、それぞれ検知領域が異なり、第2の検知部600は第1の検知部800の検知領域よりも便器700(便座本体200)に近い場所を検知領域にしている。これにより、人体が便器に接近する接近度合いに応じて段階的に検知できるようにしている。
【0037】
<2>便座400の構成
図2は便座400の分解斜視図を示すものである。
【0038】
図2に示すように、便座400は、着座面である略楕円形をした環状の上部便座ケーシング410と、上部便座ケーシング410の裏面に粘着した略馬蹄形状の便座ヒータである便座ヒータ450と、合成樹脂により形成された略楕円形をした環状の下部便座ケーシング420とを主要部品として構成されている。
【0039】
上部便座ケーシング410は、厚さ約1mmのアルミニウム板をプレス加工等により成形し、表面および裏面には電気絶縁性と耐熱性を有するポリエステル粉体を含む塗装膜が形成されている。
【0040】
下部便座ケーシング420は、樹脂材料を使用した成型品であり、平面形状が上部便座ケーシング410と略同形状の本体部421と、本体部421の両側後方に斜め上方に突出した腕部422で構成されている。上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420は内周部および外周部で結合し、その結合部には水密手段が施されている。
【0041】
上部便座ケーシング410の裏面には便座ヒータ450を粘着し、下部便座ケーシング420を結合した便座400は、図2に示すように後部に腕部422を備えており、腕部422を便座本体200の便座便蓋回動機構に結合することにより、回動自在に枢支されている。
【0042】
<3>便座ヒータの構成
図3は便座ヒータ450を上部便座ケーシング410に貼着した状態の下面図を示し、図4は便座ヒータ450の平面図を示すものである。
【0043】
図3に示すように、上部便座ケーシング410の裏面のほぼ全面に便座ヒータ450が粘着固定されており、便座ヒータ450の一部表面には温度過昇防止装置として、サーモスタット461と、温度ヒューズ462とが設置してある。また側部表面には、サーミスタ401aが貼り付けてあり、サーミスタ401aは便座ケーシング410の温度に基づいて便座ヒータ450への通電をフィードバック制御するための温度測定部とつながっている。
【0044】
上部便座ケーシング410の外周部には万が一の漏電における感電を防止するためにアース線480が接続してある。
【0045】
図4に示すように、便座ヒータ450は、シート状で前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成される。便座ヒータ450は、アルミニウムからなる2枚の金属箔451と452の間にヒータ線453を挟み込んだ状態で、ヒータ線453を蛇行状に配設して構成されたものである。
【0046】
また、便座ヒータ450の一部にはヒータ線460が高い密度で蛇行する高密度部が形成され、その高密度部にはバイメタルを用いた復帰型のサーモスタット461が設けられる。このサーモスタット461は、温度過昇防止として機能し、便座ヒータ450が想定外の異常温度になると、便座ヒータ450への通電を停止する。
【0047】
また、サーモスタット461のバックアップ機能として、温度ヒューズ462が便座ヒータ450に密着し固定されており、復帰型のサーモスタット462が異常温度上昇時に作動しない場合には、非復帰型の温度ヒューズ462が溶断することにより、便座ヒータ450への電力の供給を完全に遮断する。
【0048】
<4>便座ヒータの駆動系の構成
図5は、便座装置100の駆動系の構成を示す模式図である。図5に示すように、便座本体200は、制御部90、温度測定部401、ヒータ駆動部402、便座便蓋回動機構490、便座温調ランプRA1および着座センサ202を含んでいる。また、便座400は便座ヒータ450およびサーミスタ401aを備える。
【0049】
制御部90は、マイクロコンピュータを主構成部品とし、使用者の入室および便座400の温度等を判定する判定部620、計時機能とタイマ機能とを有するタイマ部403、種々の情報を記憶する記憶部404ならびに、ヒータ駆動部402の動作を制御するための通電率切替回路406等を含む。
【0050】
温度測定部401は、便座400の上部便座ケーシング410に設置したサーミスタ401aに接続されている。これにより、温度測定部401は、サーミスタ401aから出力される信号に基づいて便座400の着座面の温度を測定する。以下、サーミスタ401aを通じて温度測定部401により測定される便座400の温度を測定温度値と称する。
【0051】
また、使用者がリモートコントローラ500の便座温度調整スイッチを操作した場合には、便座400の設定温度が制御部90に送信される。制御部90は、リモートコントローラ500から受信した設定温度を記憶部404に記憶する。
【0052】
ヒータ駆動部402は、便座本体200内に設けられ、便座400内の便座ヒータ450に接続されており、便座ヒータ450を駆動する構成となっている。
【0053】
図6は本実施の形態における便座装置の動作を便座装置に近づく使用者とともに示したものである。図6(A)は使用者が便座装置100に近づき第1の検知部800の検知領域800a内に入ると、第1の検知部800が使用者の接近を検知して、検知信号を便座本体200内の制御部90へ向けて送信する。これにより、制御部90は便座ヒータ450を昇温駆動する制御を開始する。
【0054】
図6(B)は使用者がさらに便座装置100に接近して第2の検知部600の検知領域600a内に入ると、第2の検知部600は使用者が更に便座装置100に接近したことを検知し、検知信号を便座本体200内の制御部90へ向けて送信する。これにより、制御部90は便座400の温度をさらに設定温度に向けて昇温駆動すると共に便蓋300を開くように制御する。これにより、使用者は暖かい便座400に快適に着座することができる。
【0055】
図7は、第1の検知部800及び第2の検知部600の検知動作と便座の温度変化を示すタイムチャートである。図7において、時点T0は図6(A)段階の動作に相当し、第1の検知部800の検知動作に応じて便座ヒータ450が駆動され、便座400の温度は待機温度(請求項の第2の待機温度に相当)に向けて上昇する。便座ヒータ450への通電は、1200W通電する直前に短時間600Wで通電する。これは、便座ヒータ450を通電するときの突入電流を抑制するために行う。
【0056】
次に、時点T1は図6(B)段階の動作に相当し、第2の検知部600の検知動作に応じて便座ヒータ450が駆動され、便座400の温度はさらに設定温度に向けて温度上昇される。冷感限界温度を29℃に設定しており、この冷感限界温度を境(時点T2)に便座ヒータ450への供給電力を600Wに低下させて昇温速度を緩め、設定温度に近づく時の温度変化を安定化させる。これは、便座温度のオーバーシュートを防止するためであり、温度制御の追従性が不十分な時に生じる温度誤差を解消して、使用者が着座する時の快適性を改善するためでもある。時点T3で使用者が便座400に着座すると、着座センサ202は使用者が着座したことを検知してON状態になる。
【0057】
なお、本実施形態においては、便座400の温度が設定温度に達したあとは、便座ヒータ450を低い通電率で低電力駆動し、便座400の温度が設定温度を維持するように保温制御される。
【0058】
このように、使用者の便器への接近を複数の検知部で段階的に検知し、使用者が近づくのに伴って事前に着座面の温度を段階的に上昇させるので、使用者が便座に着座するまでに、着座面を十分に暖めることができる。従って、使用者は便座装置を快適に使用できるだけでなく、不使用時の便座温度を低くして電力消費を低減することができる。
【0059】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る便座装置のレイアウトについて、図面を参照しながら説明する。図8は、実施の形態2に係る便座装置における第1および第2の検知部の配置の一例を示した模式図である。
【0060】
図8に示すように、オフィスビルや商業施設等の広いトイレ室内は、複数に間仕切りされた複数の個室と、これらの個室に夫々設けられた便器と、誰もが自由に出入りする共用空間とを有している。そして、本発明の便座装置100は、これらの個室710,711の便器に夫々設けられている。
【0061】
そして、第1の検知部800は、反射型の赤外線センサ等で構成され、広いトイレ室内の共用空間に設けられ、特にトイレ室の入口付近に設置され、共用空間を移動して個室へと移動する使用者を事前に検知するものである。入室前検知する手段としては、トイレ室に設けた照明の点灯あるいは消灯用のセンサと兼用しても良いし、それとは別に設けても良い。
【0062】
第2の検知部600,601は、反射型の赤外線センサ等で構成され、トイレ空間を間仕切りした個室710,711の壁面等に取り付けられ、便座400,401を設置した個室710,711に使用者が入室したことを検知する。
【0063】
第1の検知部800は、第2の検知部600,601とは検知領域の位置が異なり、トイレ室に入った使用者が個室710(又は711)までの共用空間を移動して個室710(又は711)に入る前に事前に検知する。
【0064】
そして、便座装置100は次のように動作する。第1の検知部800が検知動作しない場合は、トイレ室内には使用者が居ないので、便座ヒータ450への通電を停止して加熱しない。従って、便座400はトイレ室の環境温度と略同じ温度である。
【0065】
使用者がトイレ室に入室して、第1の検知部800がその使用者を検知すると、制御部90がヒータ駆動部402を制御して便座ヒータ450を通電をすることにより、便座400が約18℃となるように加熱される。この温度を第2の待機温度と称する。ただし、室温が18℃以上の場合は、便座ヒータ450を通電しないので、便座400の温度は室温と同じになる。
【0066】
便座装置100を設置した個室710(或いは711)に使用者が入室すると、制御部90は、人体検知センサである第2の検知部600からの信号を受け、便座ヒータ450に通電を行う。便座ヒータ450は1200W程度の非常に高出力のヒータであり、使用者がトイレ室に入室してから便座に着座するまでの6秒から10秒程度の間に、便座400の着座面411を40℃程度の適温に温める。便座400が適温に達した後は、便座ヒータ450への通電を50W程度の低電力に下げて加熱を続け、便座400の温度を適温に保つ。
【0067】
また、冬季などにおいて、低温の環境条件でトイレ空間に人が居ない場合、第1の検知部800は検知動作せず、便座400の温度が第2の待機温度よりも低い第1の待機温度を少なくとも維持するように制御される。
【0068】
図9は、コントローラ500に設けた待機温度設定部550を示す図である。図9に示すように、待機温度設定部550は、ツマミを高と低との間で回転させて、ツマミの回転角に応じた温度値に第1の待機温度を任意に設定できるようにしている。なお、待機温度設定部550は本体200に設けても良いし、調節手段は図9に示すようにツマミを回転させる構成でも良いし、押しボタンの設定で調整しても良い。また、トイレ空間が広くて、第1の検知部800の検知動作から第2の検知部600の検知動作までの時間間隔が長い場合は、便座温度を昇温する時間が十分に確保できるので、第1の待機温度を更に低く設定することで、更に効果的に電力消費を少なくすることができる。
【0069】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る便座装置のレイアウトについて、図面を参照しながら説明する。図10は、実施の形態3に係る便座装置における第1および第2の検知部の配置の一例を示した模式図である。
【0070】
図10に示すように、トイレ室内には、便座装置100を備えた個室710,711以外に男子小便器40と手洗い50が備えている。そして、第1の検知部800,801はトイレ空間の天井に互いに離間して設けられ、広い領域(800a,801a)内を検知するように構成されている。
【0071】
そして、第1の検知部800(或いは801)の検知領域800a(或いは801a)に人の存在を検知すると、複数の個室毎に設置された便座装置に向けて検知信号を有線または無線(電磁波)で送信する。すると、制御部90は、第1の検知部800の検知信号に応じてヒータ駆動部402を制御して便座ヒータ450を通電することにより、便座を第2の待機温度となるように加熱する。
【0072】
第1の待機温度は第1の検知部800,801の少なくともいずれか一方の検知動作から第2の検知部600の検知動作までの時間間隔に基づいて決定される。つまり、設置される第1の検知部800がどの位置にあっても、時間間隔によって第2の検知部600の検知動作の時点では便座400の温度が第2の待機温度に達するように、第1の待機温度が自動設定されるである。
【0073】
例えば、便座400の昇温速度が毎秒2K(ケルビン)であり、計測された時間間隔が最短5秒の場合には、第1の検知部800の検知動作がない場合には18℃よりもさらに低い温度の8℃程度(つまり5秒間での温度上昇分の10K(ケルビン)を差し引いた温度)に便座を保温するように制御する。便座400を設置した周囲の温度(本実施の形態では着座面の温度を検知する温度測定部の温度)が8℃よりも低くならなければ、便座400の便座ヒータ450を通電しない。したがって、トイレ空間内に使用者が居ないときには、電力消費を大幅に削減することができる。
【0074】
次に、使用時の動作について説明する。使用者がトイレ空間に入り、第1の検知部800の検知領域800a内に進むと、使用者を検知した第1の検知部800が検知信号を制御部90に送信する。
【0075】
制御部90の判定部620は、第1の検知部800からの検知信号により使用者のトイレ空間での存在を検知して、便座400の温度測定値と記憶部404に記憶された便座設定温度に基づいて便座ヒータ450の駆動に関する特定の制御パターンを実行する。
【0076】
ここで、タイマ部403は、第1検知部600の検知信号により計測を開始し、第2検知部800の検知動作までの時間を計測し、計測した時間を記憶部404に記憶する。第1検知部800の検知動作から第2検知部600が検知動作までの時間間隔に基づいて第1の待機温度を自動設定し、第2の検知部600の検知動作の時点までは第2の待機温度に達するようにする。
【0077】
続いて、使用者が便座装置100を設置した個室に入室して第2の検知部600の検知領域600aに入ると、第2の検知部600が使用者を検知して、検知信号を制御部90に送信する。
【0078】
制御部90の判定部620は、第2の検知部600からの入室検知信号により使用者の便座装置100を設置した個室への入室を検知する。制御部90は便座便蓋回動機構490を駆動して弁蓋300を開放するとともに、制御部90の判定部620は、便座400の測定温度値、および記憶部404に記憶された便座設定温度に基づいて便座ヒータ450の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
【0079】
通電率切替回路406は、選択されたヒータ制御パターンおよび計時部403により得られる時間情報に基づいてヒータ駆動部402の動作を制御する。それにより、ヒータ駆動部402により便座ヒータ450が駆動され、便座400の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇される。
【0080】
このように第1の待機温度の決定においては、記憶部404に記憶された時間間隔を基に決定されることにより便座装置100を設置した個室への使用者の入室に対してして不使用時の便座温度を低くして電力消費を低減できて、使用者が便座400に着座するまでに、着座面を十分に暖めることができるので快適に使用することができる。また周囲温度が低下しても使用者の着座するときの便座温度が保証される。
【0081】
一方、トイレ空間に第1の検知部800を設ける場合の課題としては誤検知が考えられる。本発明では、第1の検知部800の検知動作に応じて所定時間動作するタイマ部403を備えることにより、第1の検知部800が誤検知してタイマ部403を動作させても、第2の検知部600が動作しなければ設定温度まで昇温せず、一定時間の内(例えば1分間)に第2の検知部600の動作が無い場合には誤動作と判定し第1の検知部800の検知を無効にしてもよく、誤動作時の電力消費を少なくすることができ、第1の検知部800の誤動作を許容することができる。
【0082】
図11に示すように、第1の検知部800の検知動作により便座ヒータ450が駆動され便座温度が待機温度まで上昇する。その後、第2の検知部600の検知動作が無い場合には時点T3にて誤検知と判断し、待機温度の維持を停止する。本実施形態のタイマ部403の時間設定は時点T0から時点T4まで1分としているが、通常検知される時点T0から時点T1までの時間差に余裕を考慮して、時間を設定するようにしても良い。
【0083】
なお、第1の検知部および第2の検知部は本実施形態においては赤外線センサとしたが、これに限らず、ミリ波や超音波を用いたセンサでもよく、使用者が操作するスイッチであっても良いし、廊下などの照明スイッチと連動させる構成でも良い。また携帯電話などから送信させる方法も考えられる。
【0084】
また、充電されたバッテリー電源を設けておき、複数の便座装置に同時に通電する場合の電力をバッテリー電源から供給するようにしても良い。
【0085】
また、便座ヒータへの通電開始のタイミングを便座装置毎にずらして制御しても良い。この場合には第1の検出部からの検出信号を順次発信するようにしても良いし、便座ヒータの通電制御のタイミングや通電のパターンを便座装置毎に違うように設定するようにしてもよく、電力消費を分散できるので電源の電圧低下の影響も抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明にかかる便座装置は、複数設置して使用される場合において待機時の電力消費量の削減が効果的に出来るので、他の加熱機器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0087】
90 制御部(制御手段)
100 便座装置
202 着座センサ(着座検知手段)
400 便座
403 タイマ部
404 記憶部(記憶手段)
411 着座面
450 便座ヒータ
600 第2の検知部(人体検知手段)
800 第1の検知部(人体検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ空間を間仕切りした複数の個室毎に設置される複数の便器と、着座面および前記着座面を加熱する便座ヒータを有し前記便器の上部に載置される便座と、前記トイレ空間内の人の有無を検知する第1の検知部と、前記各個室への使用者の入室を検知する第2の検知部と、前記着座面の温度が目標温度に追従するように前記便座ヒータへの通電を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1および第2の検知部の検知動作に応じて、前記使用者が前記便器に近づくのに従って順次高い目標温度に切り替え、前記着座面の温度を前記目標温度に追従させて最終目標温度である設定温度に向けて立ち上げるように制御する便座装置。
【請求項2】
トイレ空間を間仕切りした複数の個室毎に設置される複数の便器と、着座面および前記着座面を加熱する便座ヒータを有し前記便器の上部に載置される便座と、前記トイレ空間内の人の有無を検知する第1の検知部と、前記各個室への使用者の入室を検知する第2の検知部と、前記便座の着座面の温度を検知する温度測定部と、前記温度測定部の前記検知温度が目標温度に追従するように前記便座ヒータへの通電を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1の検知部の検知動作に応じて前記着座面の温度を最終目標温度より低い目標温度である待機温度に向けて昇温し、前記第2の検知部が前記使用者を検知すると、前記着座面の温度を前記最終目標温度である設定温度に向けて昇温するように、前記便座過熱部への通電を制御する便座装置。
【請求項3】
トイレ空間を間仕切りした複数の個室毎に設置される複数の便器と、着座面および前記着座面を加熱する便座ヒータを有し前記便器の上部に載置される便座と、前記トイレ空間内の人の有無を検知する第1の検知部と、前記各個室への使用者の入室を検知する第2の検知部と、前記便座の着座面の温度を検知する温度測定部と、前記温度測定部の前記検知温度が目標温度に追従するように前記便座ヒータへの通電を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1の検知部の検知動作に応じて前記着座面の温度を第1の待機温度から前記第1の待機温度より高い第2の待機温度に向けて昇温し、前記第2の検知部が前記使用者を検知すると前記着座面の温度を前記第2の待機温度より高い最終目標温度である設定温度に向けて昇温するように、前記便座ヒータへの通電を制御する便座装置。
【請求項4】
制御部は、第1の待機温度の設定部を備えており、
前記設定部は第1の待機温度を任意に設定できる請求項3に記載の便座装置。
【請求項5】
制御部は、さらにタイマ部を備えており、前記タイマ部により計測された第1の検知部の検知動作から第2の検知部の検知動作までの時間間隔によって、第1の待機温度の制御目標値を決定する請求項3に記載の便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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