説明

係止具取付構造及び遊技機

【課題】固定部材に裏側から係合して係止具を仮止め可能にする爪部を備えるものでありながら、爪部の弾性を確保しつつ任意の材質で係止具本体を形成可能にする。
【解決手段】所定の係止具100を所定の固定部材300に形成された孔部301に取り付ける係止具取付構造であって、係止具100は、押し込み操作される頭部111と孔部301を貫通する軸部112とが形成された係止具本体110と、孔部301を変形状態で通過するとともに復元状態で固定部材300に裏側から係合する爪部121が形成された弾性係合体120と、を備え、弾性係合体120は、軸部112に着脱可能に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の係止具を所定の固定部材に形成された孔部に取り付ける係止具取付構造と、このような係止具取付構造を用いる遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
スロットマシンなどの遊技機では、所定の係止具を所定の固定部材に形成された孔部に取り付ける係止具取付構造が広く用いられている。
例えば、特許文献1には、化粧パネルの孔部を介して固定部材(カバー部材)の孔部に取り付けられる係止具が示されており、該係止具に固定部材の裏側からネジ材を螺入することにより、化粧パネルが固定部材に固定されるようになっている。
しかしながら、このような係止具は、化粧パネルを固定部材に固定する組立作業に際し、前面側から係止具を押えつつ裏側からネジ材を螺入する必要があるので、組立性に劣るという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献2に示されるように、固定部材に仮止め可能に係合する係合爪部を備える係止具も提案されている。
このような係止具によれば、化粧パネルなどを固定部材に固定する組立作業に際し、前面側から係止具を押えることなく、裏側からネジ材を螺入することができるので、組立性が向上するという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−295508号公報
【特許文献2】特開2005−245716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に示されるような係合爪部は、固定部材の孔部を変形状態で通過するとともに復元状態で固定部材に裏側から係合するように弾性変形自在に形成する必要があるので、係止具の材質が限定されてしまうという問題があった。
すなわち、上記のような係止具は、適度な弾性を有する樹脂で形成するのが一般的であり、その他の任意の材質で形成することは困難であった。
また、適度な弾性を有する樹脂の表面にメッキや蒸着により金属の薄膜を形成し、係止具の外観意匠を高めることも考えられるが、メッキや蒸着をすると係合爪部の弾性が失われるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、固定部材に裏側から係合して係止具を仮止め可能にする爪部を備えるものでありながら、爪部の弾性を確保しつつ任意の材質で係止具本体を形成することができる係止具取付構造及び遊技機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の係止具取付構造は、所定の係止具を所定の固定部材に形成された孔部に取り付ける係止具取付構造であって、前記係止具は、押し込み操作される頭部と前記孔部を貫通する軸部とが形成された係止具本体と、前記孔部を変形状態で通過するとともに復元状態で前記固定部材に裏側から係合する爪部が形成された弾性係合体と、を備え、前記弾性係合体は、前記軸部に着脱可能に装着される構成としてある。
【0008】
また、本発明の遊技機は、所定の係止具を所定の固定部材に形成された孔部に取り付ける係止具取付構造を有する遊技機であって、前記係止具取付構造を、上記の係止具取付構造としてある。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、固定部材に裏側から係合して係止具を仮止め可能にする爪部を備えるものでありながら、爪部の弾性を確保しつつ任意の材質で係止具本体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るスロットマシンの外観を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスロットマシンの内部を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るスロットマシンの前扉組立工程を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るスロットマシンの前扉組立工程を示す要部拡大分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る係止具の係止具本体を示す図であり、(a)は、係止具本体の平面図、(b)は、係止具本体の正面図、(c)は、係止具本体の側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る係止具の弾性係合体を示す図であり、(a)は、弾性係合体の平面図、(b)は、弾性係合体の正面図、(c)は、弾性係合体の側面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る係止具の弾性係合体非装着状態を示す分解斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る係止具の弾性係合体装着状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る係止具の種類を示す平面図及び側面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る固定部材の孔部を示す図であり、(a)は、孔部の正面図、(b)は、孔部のA−A断面図、(c)は、孔部のB−B断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る固定部材の孔部に係止具を取り付けた状態を示す図であり、(a)は、孔部及び係止具の裏面図、(b)は、孔部及び係止具のA−A断面図、(c)は、孔部及び係止具のB−B断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る係止具の取り外し方法を示す図であり、(a)は、孔部及び係止具の裏面図、(b)は、ネジ材を緩めた状態を示すA−A断面図、(c)は、ネジ材を前方に押圧して爪部の係合を解除した状態を示すA−A断面図、(d)は、ネジ材をさらに前方に押圧して爪部が爪部貫通孔を通過した状態を示すA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
遊技機には、パチンコ機、スロットマシン、アレンジボール、雀球など様々な機類があるが、本実施形態では、メダルを遊技媒体とするスロットマシンに本発明の係止具取付構造を適用した場合について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
[スロットマシン本体]
図1は、本発明の実施形態に係るスロットマシンの外観を示す正面図、図2は、本発明の実施形態に係るスロットマシンの内部を示す斜視図である。
これらの図に示すように、本実施形態のスロットマシン1は、複数のリール21a,21b,21cを回転させることによって遊技媒体であるメダルを獲得することができる回胴式遊技機を構成している。
【0013】
スロットマシン1は、内部がマイクロコンピュータ等で構成された制御部30及び必要な機械、装置等を収納する正面側が開口した筐体1bと、筐体1bの正面側を開閉可能に覆う前扉1aとで構成されている。
【0014】
前扉1aは、図2に示すように、スロットマシン1の筐体1bにヒンジ等を介して開閉可能に取り付けられる扉体で、この前扉1aに遊技操作に係る操作部4が設けられて、スロットマシン1の正面部を構成している。
【0015】
操作部4には、メダルが投入されるメダル投入口40と、各リール21a,21b,21cの回転を始動させるスタートレバー41と、回転している各リール21a,21b,21cを停止させる3つの停止ボタン42a,42b,42cが設けられている。
【0016】
前扉1aには、各リール21a,21b,21cに表示された図柄を視認可能とする表示窓5が、例えば操作部4の上側に設けられる。また、前扉1aには、効果音等が出力されるスピーカ6が、例えば操作部4の下側に設けられる。
【0017】
筐体1bの中央には、リール21a,21b,21cと、各リール21a,21b,21cを回転させる図示しないモータ及び回転位置を検出するセンサ等を備えるドラムユニット2が設けられる。
【0018】
また、筐体1bの下部には、メダルを貯留・払出するメダル払出装置8が設けられる。メダル払出装置8には、メダルを貯留するホッパー80が設けられ、メダル投入口40より投入されたメダルは、メダルセレクター81により検出されるとともに、ホッパー80に誘導されるようになっている。
【0019】
スロットマシン1では、遊技者によりメダル投入口40からメダルが投入され、スタートレバー41が操作されると、スタート信号が制御部30に入力される。スタート信号が入力されると、制御部30では、所定の遊技プログラムに従いドラムユニット2を駆動して、各リール21a,21b,21cを回転させる制御を行う。
【0020】
さらに、制御部30では、例えばボーナスや小役等を抽せんする内部抽せんが行われ、各停止ボタン42a,42b,42cが押下操作されたタイミングに基づき、抽せん結果に応じた図柄の組合せで停止するよう、回転している各リール21a,21b,21cの停止制御を行う。
【0021】
また、制御部30は、各リール21a,21b,21cを所定の図柄の組合せで停止させると、メダル払出装置8で所定数のメダルを払い出す制御を行い、メダルをメダル払出口82から払い出す。
【0022】
[係止具取付構造]
図3は、本発明の実施形態に係るスロットマシンの前扉組立工程を示す分解斜視図、図4は、本発明の実施形態に係るスロットマシンの前扉組立工程を示す要部拡大分解斜視図である。
これらの図に示すように、スロットマシン1の正面には、遊技者に面して化粧パネル9が取り付けられている。この化粧パネル9は、板状部材の一例であり、全体が円弧形状に形成され、前扉1aの正面略全域(操作部4、表示窓5、スピーカ6などを除く)を覆う透光性の樹脂パネルであり、側面視で上側及び下側が前方に進出し、かつ中間部が後方へ退避する湾曲面を有している。
本発明の係止具取付構造は、上記の化粧パネル9を前扉1aに固定する箇所に適用されており、以下、化粧パネル9の固定箇所に適用された本発明の実施形態に係る係止具取付構造について、図3〜図12を参照して説明する。
【0023】
図3及び図4に示すように、化粧パネル9の各固定箇所は、係止具100及びネジ材200を用いて、前扉1a側の固定部材300に固定されるようになっている。
化粧パネル9及び固定部材300には、各固定箇所に対応する複数の孔部91、301が形成されている。そして、化粧パネル9の孔部91を介して固定部材300の孔部301に係止具100を取り付けるとともに、固定部材300の裏側から係止具100にネジ材200を螺入することにより、化粧パネル9が固定部材300に固定されるようになっている。
【0024】
また、係止具100には、固定部材300の孔部301に取り付けられた際、係止具100を仮止め状態にする爪部121を備えている。この爪部121は、固定部材300の孔部301を変形状態で通過するとともに復元状態で固定部材300に裏側から係合することにより、係止具100を固定部材300に仮止め可能としている。
このような係止具100によれば、化粧パネル9を固定部材300に固定する組立作業に際し、前面側から係止具100を押えることなく、裏側からネジ材200を螺入することができるので、組立性が向上するという利点がある。
【0025】
図5は、本発明の実施形態に係る係止具の係止具本体を示す図であり、(a)は、係止具本体の平面図、(b)は、係止具本体の正面図、(c)は、係止具本体の側面図、図6は、本発明の実施形態に係る係止具の弾性係合体を示す図であり、(a)は、弾性係合体の平面図、(b)は、弾性係合体の正面図、(c)は、弾性係合体の側面図、図7は、本発明の実施形態に係る係止具の弾性係合体非装着状態を示す分解斜視図、図8は、本発明の実施形態に係る係止具の弾性係合体装着状態を示す斜視図である。
【0026】
これらの図に示すように、本発明の実施形態に係る係止具100は、係止具本体110と弾性係合体120との2部材で構成されている。
係止具本体110は、押し込み操作される頭部111と、固定部材300の孔部301を貫通する軸部112とを備えている。
また、弾性係合体120は、固定部材300の孔部301を変形状態で通過するとともに復元状態で固定部材300に裏側から係合する爪部121を備えている。
そして、弾性係合体120を、係止具本体110の軸部112に着脱可能に装着することにより、係止具100が構成されるようになっている(図7、図8参照)。
【0027】
つまり、本発明の実施形態に係る係止具100は、外部に露出する係止具本体110と、爪部121が形成される弾性係合体120とを別体として備え、係止具本体110の軸部112に弾性係合体120を装着して構成されるので、係止具100を仮止め可能にする爪部121を備えるものでありながら、爪部121の弾性を確保しつつ任意の材質で係止具本体110を形成することが可能になる。
例えば、弾性係合体120は、弾性率に優れたエンジニアプラスチック(例えば、POM)で形成する一方、係止具本体110は、金属や意匠性を有する表面処理が可能な樹脂(例えば、ABS)などの任意の材質で形成することができる。また、係止具本体110においては、表面にメッキや蒸着により金属の薄膜を形成してもよい。特に、本実施形態のように、外観意匠を重視するような使用、すなわち、係止具本体110の頭部111を外部に露出させて用いる場合に最適であり、係止具本体110を形成する材質の選択肢を広げることができる。
【0028】
本実施形態の弾性係合体120は、係止具本体110の軸部112を把持する把持部122と、該把持部122から後方に延出する左右一対の爪部121を備えている。
把持部122は、係止具本体110の軸部112を把持可能に環状の一部を切り欠いたC文字状に形成されており、弾性変形により係止具本体110に着脱されるようになっている。
このようにすると、弾性係合体120が有する弾性を利用して、係止具本体110と弾性係合体120を結合させることができるので、ネジなどの結合部材を用いる場合に比べて構造の簡略化や部品点数の削減が可能になる。
【0029】
また、本実施形態の弾性係合体120は、係止具本体110の軸部112と凹凸嵌合する嵌合部を有し、この凹凸嵌合によって軸部112の軸方向及び周方向への移動が規制されるようになっている。
本実施形態の嵌合部は、把持部122の内周部に突出形成される凸部123と、上下の切欠部122a,122bとで形成され、この凸部123を、軸部112の外周部に形成される凹部113に凹凸嵌合させることにより、軸部112に対する弾性係合体120の軸方向への移動が規制されるとともに、切欠部122a,122bを軸部112の軸方向に沿って突出形成される回転規制部115、116にそれぞれ凹凸嵌合させることにより、軸部112に対する弾性係合体120の周方向への移動が規制されるようになっている。
このようにすると、弾性係合体120を弾性変形により係止具本体110に装着するものでありながら、軸部112に対する弾性係合体120の軸方向及び周方向への移動を規制し、係止具本体110と弾性係合体120を一体的に結合させることができる。
【0030】
図9は、本発明の実施形態に係る係止具の種類を示す平面図及び側面図である。
この図に示すように、本実施形態の係止具100には、軸部112に対する頭部111の角度を異ならせた複数種類の係止具本体110a〜110dが含まれている。これらの係止具本体110a〜110dは、各固定箇所(各孔部91)における化粧パネル9の表面角度に応じて頭部111の角度が設定されており、所定の固定箇所に対して専用の係止具100A〜100Dを取り付ける必要がある。
【0031】
具体的には、化粧パネル9の固定箇所となる各孔部91は、止め孔部の一例であり、爪部121とともに軸部122を貫通可能とし頭部111を貫通不能とする水平方向に開口されるとともに、係止具100を固定部材300の孔部301に対して遊技者側から押し込み操作したときに、頭部121裏面の当接する当該孔部91周面(表面)の傾斜角がそれぞれ異なる位置に開口されている(図3参照)。そうすると、各孔部91周面(表面)に頭部121裏面を隙間なく当接させるためには、係止具本体110を各孔部91に対応した専用品とする必要がある。
そこで、係止具本体110a〜110dは、軸部122を同一形状としながら、裏面角度のそれぞれ異なる頭部121を有している。一方、これらに装着される弾性係合体120は、係止具本体110a〜110dの軸部122が同一形状であるため、複数種類の係止具本体110a〜110dに対して形状が同一の一種類としてある。
【0032】
すなわち、本実施形態の係止具100は、係止具本体110a〜110dを、固定部材300に固定する部材(本実施形態では化粧パネル9)の形状(本実施形態では表面角度)に応じて、頭部11の形状を任意に変更可能な専用部品とすることで、いかなる形状の部材も取付可能な係止具として機能させつつ、弾性係合体120を共通部品として使用可能に構成されている。これにより、係止具100としての用途範囲を拡大させつつ、金型作製費用等のコスト低減が図られる。
また、このような表面角度の異なる化粧パネル9を、一種類の係止具本体110からなる係止具100を用いて固定すると、頭部111が化粧パネル9表面から不揃いに突出して美観を損なうことになるが、本実施形態の係止具100は化粧パネル9の表面角度に応じて頭部111の角度が設定されているため、化粧パネル9の表面に凹凸が生じない滑らかな湾曲面とすることができる。
【0033】
ところが、このような頭部121の形状の異なる係止具本体110a〜110dと同一形状の弾性係合体120とを組合せた係止具100A〜100Dは、一見すると識別し難く、複数の固定箇所(孔部91)と係止具100A〜100Dとの対応関係が不明確となり、化粧パネル9の組立時に誤組立を生じさせるおそれがある。
そこで、本実施形態では、係止具本体110a〜110dの種類毎に異なる色(例えば、黄、グレー、白、青)の弾性係合体120を装着することにより、弾性係合体120の色にもとづいて係止具本体110a〜110dの種類を識別可能にしている。
このようにすると、係止具本体110a〜110dの種類を目視で容易に識別できるだけでなく、誤組立を防止することができる。
【0034】
図10は、本発明の実施形態に係る固定部材の孔部301を示す図であり、(a)は、孔部の正面図、(b)は、孔部のA−A断面図、(c)は、孔部のB−B断面図である。
この図に示すように、固定部材300の孔部301は、爪部121の貫通を許容する左右一対の爪部貫通孔302と、左右一対の爪部貫通孔302間に形成され、ネジ材200の挿入を許容するネジ挿入孔303とを備えており、このネジ挿入孔303を介して軸部112の螺入孔114にネジ材200を螺入することにより、係止具100が固定部材300に固定されるようになっている。
【0035】
また、固定部材300の孔部301には、係止具本体110の回転規制部115、116と係合する溝部304a,304bが形成されている。係止具本体110の回転規制部115、116は、軸部112の軸方向に沿って突出形成されるリブであり、該リブが固定部材300の溝部304a,304bに係合することにより、ネジ材200の螺入による係止具100の回転を規制するとともに、固定部材300に対する係止具100の取付角度位置を位置決めするようになっている。
【0036】
本実施形態では、軸部112の上下に回転規制部115、116を形成するにあたり、上側回転規制部115の突出寸法と、下側回転規制部116の突出寸法を相違させるとともに、孔部301における上側溝部304a及び下側溝部304bの形状(溝の深さ)も各回転規制部115、116の突出寸法に対応させている。
このようにすると、係止具100を上下反転状態で固定部材300の孔部301に取り付けようとしても、突出寸法の長い回転規制部115が引っ掛かり、係止具100の取り付けを規制するので、係止具100の誤組立を防止することが可能になる。
【0037】
つぎに、係止具100の取り付け手順及び取り外し手順について、図11及び図12を参照して説明する。
図11は、本発明の実施形態に係る固定部材の孔部に係止具を取り付けた状態を示す図であり、(a)は、孔部及び係止具の裏面図、(b)は、孔部及び係止具のA−A断面図、(c)は、孔部及び係止具のB−B断面図である。
係止具100を固定部材300の孔部301に取り付ける場合は、まず、固定部材300に化粧パネル9を重ね合わせるとともに、化粧パネル9の孔部91を介して、弾性係合体120が装着された係止具本体110の軸部112を固定部材300の孔部301に遊技者側から押し込む。
係止具本体110の軸部112を固定部材300の孔部301に押し込むと、弾性係合体120の爪部121が、固定部材300の孔部301(爪部貫通孔302)を変形状態で通過するとともに復元状態で固定部材300に裏側から係合する。これにより、係止具100が仮止め状態となる。
なお、図11(c)の爪部拡大図に示すように、爪部121における固定部材300裏側との対向面にテーパ部121aを形成してある。これにより、外部から(例えば化粧パネル9側から)係止具100に引き抜き力が作用すると、爪部121がこのテーパ部121aによって内側に撓み、固定部材300裏側との係合を容易に解除できるようになっている。
【0038】
つぎに、ネジ材200を固定部材300の裏側から軸部112の螺入孔114に螺入し、係止具100を固定部材300に固定する。
ネジ材200は、平ワッシャ(フランジ)201を備えており、この平ワッシャ201が左右の爪部121間に入り込むことにより、爪部121の係合解除方向の弾性変形を阻止するようになっている。
このようにすると、外部から(例えば化粧パネル9側から)係止具100に強い引き抜き力が作用したとしても、爪部121の係合状態を維持してネジ材200の締結強度を補うことができるので、係止具100の不正な取り外しを防止することが可能になる。
この状態では、係止具100の頭部111が外部に露出するとともに、化粧パネル9が係止具100を介して前扉1a(固定部材300)に取り外し不能に固定される。
【0039】
図12は、本発明の実施形態に係る係止具の取り外し方法を示す図であり、(a)は、孔部及び係止具の裏面図、(b)は、ネジ材を緩めた状態を示すA−A断面図、(c)は、ネジ材を前方に押圧して爪部の係合を解除した状態を示すA−A断面図、(d)は、ネジ材をさらに前方に押圧して爪部が爪部貫通孔を通過した状態を示すA−A断面図である。
リサイクルなどに際して係止具100を取り外す場合は、まず、ネジ材200を緩め、平ワッシャ201を爪部121と干渉しない位置まで後退させる(図12(b)参照)。これにより、爪部121の係合解除方向への弾性変形が許容される。
つぎに、ネジ材200を前方へ押圧操作する(例えば、ドライバで押し込む)と、テーパ部121aが固定部材300裏側から抗力を受け、この裏側に摺接しながら、爪部121を内側に撓ませる。その結果、爪部121と固定部材300との係合が解除され、係止具100が前方に飛び出す(図12(c)参照)。
さらに、ネジ材200を前方へ押圧操作すると、爪部121が爪部貫通孔302を通過した状態となり(図12(d)参照)、その後、ネジ材200を緩めれば、ネジ材200から係止具100が分離し、係止具100の取り外しが完了する。
このようにすると、ネジ材200を係合解除具として機能させ、係止具100を容易に取り外すことが可能になる。
【0040】
以上のように構成された本実施形態によれば、所定の係止具100を所定の固定部材300に形成された孔部301に取り付ける係止具取付構造であって、係止具100は、押し込み操作される頭部111と孔部301を貫通する軸部112とが形成された係止具本体110と、孔部301を変形状態で通過するとともに復元状態で固定部材300に裏側から係合する爪部121が形成された弾性係合体120と、を備え、弾性係合体120は、軸部112に着脱可能に装着されるので、固定部材300に裏側から係合して係止具100を仮止め可能にする爪部121を備えるものでありながら、爪部121の弾性を確保しつつ任意の材質で係止具本体110を形成することができ、係止具本体(頭部111)の外観意匠を向上させることができる。
【0041】
また、弾性係合体120は、軸部112を把持可能に環状に形成され、弾性変形により係止具本体110に着脱されるので、ネジなどの結合部材を用いる場合に比べて構造の簡略化や部品点数の削減が可能になる。
【0042】
以上、本発明について、実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、係止具100の誤組立を防止するにあたり、上側回転規制部115の突出寸法と、下側回転規制部116の突出寸法を相違させたが、周方向における突出位置を非対称にして相違させてもよい。
また、本実施形態では、係止具取付構造を化粧パネル9の取り付けに適用したが、基板ケース(制御部30など)、ドラムユニット2などその他の部品の取り付けにも適用できる。
また、本実施形態では、係止具としての機能性を優先すべく、固定部材300に取り付ける部材(化粧パネル9)の形状(表面角度)に応じて、裏面角度の異なる複数種類の頭部111を形成したが、意匠性を優先して、例えば、本実施形態で適用した円形状のほか、三角や四角、星形などの複数種類の頭部111を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、所定の係止具を所定の固定部材に形成された孔部に取り付ける係止具取付構造に適用することができ、特に、係止具の一部を外部に露出させる係止具取付構造を有する遊技機に好適である。
【符号の説明】
【0044】
1 スロットマシン
9 化粧パネル(板状部材)
91 孔部(止め孔部)
100 係止具
110 係止具本体
111 頭部
112 軸部
113 凹部
114 螺入孔
115 回転規制部
116 回転規制部
120 弾性係合体
121 爪部
122 把持部
123 凸部
200 ネジ材
201 平ワッシャ
300 固定部材
301 孔部
302 爪部貫通孔
303 ネジ挿入孔
304 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の係止具を所定の固定部材に形成された孔部に取り付ける係止具取付構造であって、
前記係止具は、押し込み操作される頭部と前記孔部を貫通する軸部とが形成された係止具本体と、前記孔部を変形状態で通過するとともに復元状態で前記固定部材に裏側から係合する爪部が形成された弾性係合体と、を備え、
前記弾性係合体は、前記軸部に着脱可能に装着されることを特徴とする係止具取付構造。
【請求項2】
前記弾性係合体は、前記軸部を把持可能に一部を切り欠いた環状に形成され、弾性変形により前記係止具本体に着脱される請求項1記載の係止具取付構造。
【請求項3】
前記弾性係合体は、前記軸部と凹凸嵌合する嵌合部を有し、該凹凸嵌合によって前記軸部の軸方向及び周方向への移動が規制される請求項2記載の係止具取付構造。
【請求項4】
前記係止具本体は、形状の異なる前記頭部と、同一形状の前記軸部とを備える複数種類からなり、
前記弾性係合体は、複数種類の前記係止具本体に対して形状が同一の一種類からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の係止具取付構造。
【請求項5】
前記係止具本体は、前記軸部に裏側から螺入される所定のネジ材を介して前記固定部材に固定可能に形成されるとともに、前記ネジ材の螺入による前記係止具の回転を規制する回転規制部を備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の係止具取付構造。
【請求項6】
前記回転規制部は、前記軸部の軸方向に沿って突出形成されるリブであり、該リブが前記固定部材に形成される溝部に係合することにより、前記ネジ材の螺入による前記係止具の回転を規制するとともに、前記固定部材に対する前記係止具の取付角度位置を位置決めする請求項5記載の係止具取付構造。
【請求項7】
前記ネジ材は、平ワッシャにより前記爪部の弾性変形を阻止し、前記爪部と前記固定部材との係合解除を規制する請求項5又は6記載の係止具取付構造。
【請求項8】
所定の係止具を所定の固定部材に形成された孔部に取り付ける係止具取付構造を有する遊技機であって、
前記係止具取付構造が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の係止具取付構造であることを特徴とする遊技機。
【請求項9】
複数の前記係止具を介して、前記固定部材に遊技者に面して取り付けられる所定の板状部材を備え、
前記板状部材は、円弧形状を有するとともに、前記爪部とともに前記軸部を貫通可能とし前記頭部を貫通不能とする水平方向に開口された複数の止め孔部を有し、
前記各止め孔部は、前記係止具を前記固定部材の前記孔部に対して遊技者側から押し込み操作したときに、前記頭部裏面の当接する当該止め孔部周面の傾斜角がそれぞれ異なる位置に開口され、
前記係止具本体は、前記各止め孔部周面に当接する裏面角度の異なる前記頭部と、同一形状の前記軸部とを備える複数種類からなり、
前記弾性係合体は、複数種類の前記係止具本体に対して形状が同一の一種類からなる請求項8記載の遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−217917(P2011−217917A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89561(P2010−89561)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(591142507)株式会社北電子 (348)
【Fターム(参考)】