説明

促進された反応及びフラッシングを伴うカルボニル化による酢酸の製造

酢酸を製造する方法は、(a)メタノール又はその反応性誘導体を、均一第VIII族金属触媒及びヨウ化メチル促進剤の存在下、酢酸、水、酢酸メチル、ヨウ化メチル、及び均一触媒を含む液体反応混合物中において、反応器圧力において運転する反応容器内で一酸化炭素と接触反応させ;(b)反応容器から反応混合物を排出し、排出された反応混合物を更なる一酸化炭素と一緒に、反応容器圧力よりも低い圧力で運転するフラッシャー前/反応器後の容器に供給し;(c)フラッシャー前の容器内の軽質留分を排気し、同時にフラッシャー前/反応器後の容器内の酢酸メチルを消費することを含む。フラッシャー前/反応器後の容器内の反応条件、滞留時間、及び組成は、フラッシャー前/反応器後の容器内のフラッシュ前の混合物が酢酸に富み、ヨウ化メチル及び酢酸メチルが減少するように制御する。フラッシャー前/反応器後の容器から、酢酸に富む混合物を(d)排出し、フラッシュ容器に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年7月7日出願の同じ標題の米国特許出願12/459,725(その全部を参照として本明細書中に包含する)に対する優先権を主張する。
本発明は酢酸の製造に関し、特に低圧フラッシャー内でのフラッシングの前にヨウ化メチルを除去し且つ酢酸メチルを消費する中間圧力のフラッシュ前/反応器後の容器を有するメタノールカルボニル化システムに関する。低圧の吸収器によって精製系列の軽質留分カラムが脱ボトルネックされる。
【背景技術】
【0002】
酢酸を合成するために現在用いられている方法の中で、商業的に最も多く用いられているものの1つは一酸化炭素によるメタノールの接触カルボニル化である。この方法を実施する好ましい方法としては、1991年3月10日発行の米国特許5,001,259;1991年6月25日発行の米国特許5,026,908;及び1992年9月1日発行の米国特許5,144,068;並びに1992年7月1日公告のヨーロッパ特許EP−0161874B2;において見られる種類のロジウム又はイリジウムによって触媒する所謂「低水」プロセスが挙げられる。低水カルボニル化プロセスの実施に関連する特徴としては、反応媒体中に、触媒的に有効量のロジウム及び少なくとも限定濃度の水と共に、系中のヨウ化水素に起因して存在するヨウ化物イオンに加えて高い濃度の無機ヨウ化物アニオンを保持することを挙げることができる。このヨウ化物イオンは単純な塩であってよく、殆どの場合においてヨウ化リチウムが好ましい。米国特許5,001,259;5,026,908;5,144,068;及びヨーロッパ特許EP−0161874B2;は参照として本明細書中に包含する。
【0003】
一般的に言うと、メタノールカルボニル化製造ラインは、反応セクション、精製セクション、軽質留分回収、及び触媒貯留システムを含む。反応セクションにおいては、メタノール及び一酸化炭素を、反応器内の均一撹拌液相反応媒体中でロジウム又はイリジウム触媒と接触させて酢酸を生成させる。メタノールは、メタノールサージタンクから反応器中にポンプ移送する。このプロセスは高効率であり、通常は99%より高いメタノールの酢酸への転化率を有する。反応セクションはまた、一般に、反応セクションから粗生成物を取り出すために排出流をフラッシングする反応器に接続されているフラッシュ容器も含む。粗生成物は、一般に軽質留分又はストリッパーカラム、乾燥カラム、補助精製及び場合によっては仕上げカラムを含む精製セクションに供給する。このプロセスにおいては、軽質留分、特にヨウ化メチル、一酸化炭素、及び酢酸メチルを含む種々の非凝縮性排気流が生成し、軽質留分回収セクションに供給される。これらの排気流は溶媒によってスクラビングして軽質留分を取り出し、これをシステムに戻すか又は廃棄する。
【0004】
当該技術における進歩にもかかわらず、触媒失活及び排気損失、特に一酸化炭素の損失のために、メタノールカルボニル化システムにおける非効率性が依然として存在する。また、排気のスクラビング及び生成物の精製に関連する設備費及び運転費を減少させる必要性が常に存在する。
【0005】
伝統的なメタノールカルボニル化プラントには、酢酸をスクラバー溶媒として用いる高圧及び低圧の吸収器が含まれる。酢酸溶媒は、その後に、酸を廃棄しないように通常は他の精製カラム内で軽質留分を除去しなければならない。かかるカラムは、ジルコニウム合金などのような高耐腐食性材料で構成しなければならないので高価である。更に、酸からの軽質留分のストリッピングには水蒸気が必要で、これは運転費の一因となる。メタノールも、メタノールカルボニル化プロセスに関連してスクラバー溶媒として用いることが示唆されている。この点に関しては、「酢酸の製造方法」と題されたAubigneらの米国特許5,416,237を参照。‘237特許においては、フラッシュタンクの塔頂蒸気からの非凝縮性物質を冷却したメタノールで向流スクラビングすることができると言及されている。メタノールスクラバー溶媒の残留流を純粋なメタノールに加えて、次に反応器への供給流として用いる。9欄30〜42行を参照。中国特許出願公開200410016120.7においては、メタノール及び酢酸によるスクラビングを用いて酢酸/無水酢酸の製造からの排気ガス中の軽質成分を回収する方法が開示されている。他のシステムが、「Process of 200ktpa Methanol Low Press Oxo Synthesis AA」(SWRDICI 2006)(中国)(以下、SWRDICIと呼ぶ)と題された産業出版物において見られる。この研究出版物においては、高圧吸収器及び低圧吸収器を含む排気ガス処理システムが示されている。このシステムの吸収器は両方とも、スクラブ液としてメタノールを用いて運転するように記載されている。
【0006】
ヨーロッパ特許EP−0759419においては、メタノールを反応器排気流中に注入し、場合によっては不均一触媒を含む二次反応器内でより多くの生成物を触媒的に製造することによって排気損失を減少させることが提案されている。
【0007】
触媒の失活及び損失は、一般に、フラッシャー内で見られるようなカルボニル化システム内の一酸化炭素が減少しているか又は低圧の環境によるものであると考えられている。一酸化炭素レベルは触媒溶液中で低下するので、ロジウムは次第に三ヨウ化ロジウムの形態をとって沈殿する。従来のプロセスのこの状況に対処するための種々の修正法が当該技術において提案されており、おそらく最も成功しているものは低水条件下で触媒安定性及び反応速度を向上させるためにヨウ化リチウムを用いることである。他の提案されている修正法を以下に議論する。
【0008】
Denisらの米国特許5,770,768においては、フラッシャーからの再循環触媒溶液を反応器に戻す前に更なる一酸化炭素で処理して触媒安定性を増加させるカルボニル化システムが開示されている。
【0009】
中国特許ZL−92108244.4及びSWRDICI(上記記載)においては、高圧「転化」反応器が提案されている。SWRDICIにおいて示されている転化反応器は、高圧排気スクラバーに接続されており、フラッシングの前に反応をより大きな程度まで進行させることができると報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許5,001,259
【特許文献2】米国特許5,026,908
【特許文献3】米国特許5,144,068
【特許文献4】ヨーロッパ特許EP−0161874B2
【特許文献5】米国特許5,416,237
【特許文献6】中国特許出願公開200410016120.7
【特許文献7】ヨーロッパ特許EP−0759419
【特許文献8】米国特許5,770,768
【特許文献9】中国特許ZL−92108244.4
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「Process of 200ktpa Methanol Low Press Oxo Synthesis AA」(SWRDICI 2006)(中国)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明によれば、生産性及び運転効率を増加させるために段階的な反応及び軽質留分のフラッシュ前の除去を用いる改良されたカルボニル化システムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、(a)メタノール又はその反応性誘導体を、均一第VIII族金属触媒及びヨウ化メチル促進剤の存在下において、酢酸、水、酢酸メチル、ヨウ化メチル、及び均一触媒を含む液体反応混合物を含み、反応器圧力において運転する反応容器内で一酸化炭素と接触反応させ;(b)反応容器から反応混合物を排出し、排出された反応混合物を更なる一酸化炭素と一緒に、反応容器圧力よりも低い低圧で運転するフラッシャー前/反応器後の容器に供給し;(c)フラッシャー前の容器内の軽質留分を排気し、同時にフラッシャー前/反応器後の容器内の酢酸メチルを消費する;ことを含む酢酸の製造方法が提供される。フラッシャー前/反応器後の容器内の反応条件、滞留時間、及び組成は、フラッシャー前/反応器後の容器内のフラッシング前の混合物が、反応混合物と比べて酢酸に富み、ヨウ化メチル及び酢酸メチルが減少するように制御する。(d)フラッシャー前/反応器後の容器から、酢酸に富む混合物を排出し、フラッシュ容器に供給し;これから(e)反応混合物からの粗酢酸流をフラッシングする。フラッシュ容器は、フラッシャー前/反応器後の容器の圧力よりも低い圧力で運転する。このプロセスはまた、(f)フラッシュ容器からの残渣を反応容器に再循環し;そして(g)粗生成物流を精製する;ことも含む。
【0014】
本発明システムの有利性としては、増加した生産性、軽質留分カラムの脱ボトルネック、及び場合によっては一酸化炭素効率の増加、並びに触媒安定性の向上が挙げられる。
フラッシャー前/反応器後の容器は、好適には、反応容器の圧力よりも少なくとも5又は10psi低く、好ましくは反応容器の圧力よりも少なくとも15psi低い圧力で運転する。幾つかの態様においては、フラッシャー前/反応器後の容器は、反応容器の圧力よりも少なくとも20psi、25psi、又は30psi低い圧力で運転する。
【0015】
フラッシャー前/反応器後の容器内で一酸化炭素を更に散布して酢酸メチルを消費することが好ましい。
本発明の更なる詳細及び有利性は以下の議論から明らかになるであろう。
【0016】
以下において、添付の図面を参照して本発明を詳細に記載する。図において同じ番号は同様の部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明による酢酸を製造するためのカルボニル化システムを示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下において、例示及び実例のみの目的のための数多くの態様を参照して本発明を詳細に記載する。特許請求の範囲において示される本発明の精神及び範囲内の特定の態様に対する修正は当業者に容易に明らかになるであろう。
【0019】
下記においてより具体的に定義しない限りにおいて、ここで用いる用語はその通常の意味で与える。パーセント、%などの用語は、他に示さない限りにおいて重量%を指す。
「ヨウ化物塩安定剤/共促進剤」などの用語は、ヨウ化物アニオンの増加したレベル、即ちヨウ化水素酸に起因するレベルを超えるレベルを生成させ且つ保持する成分を指す。ヨウ化物塩安定剤/共促進剤は、単純な塩、又はここで更に議論するような反応混合物中にヨウ化物アニオンを生成させ且つ保持する任意の化合物又は成分であってよい。
【0020】
「軽質留分」とは、酢酸よりも低い沸点を有する成分を指す。而して、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び溶解一酸化炭素が本発明の目的のための「軽質留分」である。
「低圧」などの用語は、ここで議論する種類のカルボニル化反応器内で保持される圧力よりも低い圧力を指す。「減少した」圧力は、通常は基準圧力よりも少なくとも5psi低く、好ましくは基準圧力よりも少なくとも10psi又は20psi低い。「低圧」吸収器とは、反応器圧力よりも実質的に低く、好ましくはカルボニル化反応器内で保持される圧力よりも25psi超低い圧力で運転される吸収器を指す。
【0021】
特定のレベルのフラッシャー前/反応器後の容器内でのその消費による酢酸メチルの減少に言及する場合には、減少率は反応器内の反応混合物中の酢酸メチルの量に対するものである。而して、フラッシャー前/反応器後の容器における酢酸メチルの25%減少率とは、フラッシャー前/反応器後の容器の出口流中において、反応容器内で保持されるレベルと比べて25%低いレベルを指す。而して、酢酸メチルのレベルが反応容器内で4重量%であり、酢酸メチルがフラッシャー前/反応器後の容器内で3%のレベルまで消費される場合には、25%の減少率が達成される。本発明の幾つかの好ましい形態においては、酢酸メチルを、フラッシャー前/反応器後の容器から排出される反応混合物中において1.5重量%未満又は1重量%未満のレベルまで消費する。更に他の場合においては、フラッシャー前/反応器後の容器から排出される流れの中の酢酸メチルの濃度は、0.5重量%未満又は0.25重量%未満にすることができる。
【0022】
通常のカルボニル化反応器において、水素、二酸化炭素、及び一酸化炭素を含む排気ガスを、反応器から、反応器内のものと同等の圧力で運転する高圧吸収器に供給して、反応物質及び/又は生成物を回収する。フラッシャー内において酢酸を触媒溶液から分離する。粗酢酸生成物流に同伴するヨウ化メチル及び酢酸メチルを軽質留分カラム内で取り出し、凝縮させるか又は吸収器を用いて排気ガスからスクラビングする。
【0023】
本発明による方法においては、主反応器からの排気ガスをフラッシャー前/反応器後の容器に直接供給して、それによって高圧吸収器の必要性を減少又は排除しながら一酸化炭素反応物質を節約することができる。反応混合物に供給される更なる一酸化炭素は、触媒を安定化し、酢酸メチルと反応してシステムの酢酸生産性を増加させる。
【0024】
フラッシャー前/反応器後の容器は、主反応器及びその後のフラッシャーの運転圧力の間の中間の圧力で運転して、それによってヨウ化メチル及び酢酸メチルをフラッシングしながら溶液中に酢酸生成物の殆どを保持する。フラッシャー前/反応器後の容器からフラッシングされるヨウ化メチル及び酢酸メチルは、凝縮器に供給することができ、或いは低圧吸収器に直接送って、それによってその後の軽質留分カラムに対する負荷を低減することができる。吸収器の運転は、一般に凝縮ユニットの運転よりも高価である。したがって、吸収の必要性を最小にすることによって運転コストが減少する。
【0025】
通常は、反応液を反応器から引き出し、以下に記載するようにフラッシャー前/反応器後の容器及び伝統的なフラッシュ容器を用いる段階的又は多段階プロセスでフラッシングする。フラッシャーからの粗蒸気プロセス流は、当該技術において公知の一般に少なくとも軽質留分カラム及び脱水カラムを含む精製セクションに送る。
【0026】
本発明は、本発明の一態様による代表的なカルボニル化方法及び装置を示す概要図である図1を参照することによって更に理解される。
図1においては、本発明にしたがって構成されるカルボニル化装置10が示されている。装置10は、当業者に認められるように、一般に、カルボニル化反応器12、フラッシャー前/反応器後の容器14、フラッシャー16、並びに軽質留分ストリッパーカラム18のような更なる精製装置などを含む。
【0027】
運転中においては、メタノール及び一酸化炭素を、反応器12内に含まれる接触反応媒体中で反応させるために、それぞれライン20、22を用いて反応容器12に供給する。カルボニル化反応を、反応溶媒(通常は酢酸)、メタノール及び/又はその反応性誘導体、可溶性ロジウム触媒、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び少なくとも限定濃度の水を含む均一接触反応系内で進行させる。メタノール及び一酸化炭素の効率は、一般に、米国特許5,001,259;5,026,908;及び5,144,068(全てSmithら)(これらの開示事項は参照として本明細書中に包含する)から認められるように、それぞれ約98及び90%より大きい。
【0028】
反応器12から、反応媒体の一部を、ライン24を介し、圧力低下バルブ24aを通してフラッシャー前/反応器後の容器14に送る。また、示されているように、ライン26を介して、反応容器12からフラッシャー前容器14への排気によって一酸化炭素も供給される。COの好ましい源は、更なる新しい一酸化炭素をフラッシャー前/反応器後の容器14に供給する(これは、例えば図の下部に向かって示されているライン28を介して達成することができる)必要性を減少させるので、圧力低下バルブ26aを通る排気26からのものである。一酸化炭素がライン34中に引き抜かれるのを阻止する(又はその量を減少させる)ために、一酸化炭素は容器14の底部及びライン34の上方の離れた高さHにおいて容器14中に散布することに留意されたい。高さHは、少なくとも0.25m以上、好ましくは少なくとも0.5m、又は少なくとも1mであってよい。
【0029】
フラッシャー前/反応器後の容器14において、反応媒体を中間圧力に保持し、一方、COを反応混合物と相互作用させて酢酸メチルを消費する。好ましい態様においては、容器14に加える一酸化炭素の量及び反応条件は、反応混合物中の酢酸メチルが更なる処理の前に実質的に消費されるように制御する。フラッシャー前/反応器後の容器14には、図に示されるように、30において気体を非凝縮性物質及びヨウ化メチル並びに場合によっては若干の酢酸メチルを含む系から低圧スクラビングシステム32に取り出す排気口が備えられている。低圧吸収システム32に供給する前に、流れを30aで示される圧力低下バルブに通すことによって排気流30における圧力を低下させる。
【0030】
このように反応混合物を変性し、フラッシングの前に予めコンディショニングする。特に、ヨウ化メチルの一部及び場合によっては酢酸メチルの一部を反応混合物から取り出し、低圧でフラッシングする前に低圧排気スクラビングシステムに供給する。以下の議論から認められるように、このようにして粗生成物に関する精製の必要性が減少する。フラッシャー前/反応器後の容器14内の反応の後、軽質留分が減少したコンディショニングされた反応混合物を、ライン34を介し、圧力低下バルブ34aを通してフラッシャー16に供給する。フラッシャー16内においては、圧力をフラッシャー前容器14に対して低下させ、更には反応器12に対して低下させる。フラッシャー16内においては、粗酢酸を反応混合物からフラッシングして36で示される塔頂流として排出し、当該技術において公知の軽質留分カラム18に供給する。
【0031】
これも当該技術において公知なように、フラッシャー16から触媒をライン38、40を介して反応器12に再循環する。
ライン36を介して軽質留分カラム18に供給される粗生成物は、酢酸メチルがフラッシャー前/反応器後の容器14内で消費され、図に示されているようにヨウ化メチル及び場合によっては酢酸メチルが予め低圧排気スクラバーシステム32に予めフラッシングされているので、従来のカルボニル化システムと比較してヨウ化メチル及び酢酸メチルの大きく減少したレベルを有する。軽質留分カラム18から、生成物が、ヨウ化メチル及び酢酸メチルの殆どが生成物から除去されている精製流42内に送り出される。流れ42は、脱水カラムに供給して生成物流から水を除去し、次に場合によっては処理して重質留分、有機ヨウ化物のような他の不純物を除去した後に貯蔵及び輸送する。カラム18からの残渣は、ライン38aを介してライン38及び40、そして最終的には反応器12に再循環する。
【0032】
カラム18からの塔頂流は凝縮して、44を介して受容器46に排出し、当該技術において公知なように再循環することができる。非凝縮性物質、即ち48は、50で示すようにメタノール及び/又は酢酸及び/又は酢酸メチルを用いることができる低圧排気スクラビングシステムに供給する。これに関しては吸収塔52が与えられている。低圧スクラバーにおけるスクラブ液としてメタノールを用いる場合には、使用済みのスクラブ流体は、図に示すようにライン50aを介して反応器12に直接供給することができる。好ましくは、更なる処理の前に、ヨウ化メチルの90%超又は95%超を吸収剤流体によって排気ガスから取り出す。スクラバー流体は、一般に塔内で使用する前に約5℃〜約25℃の温度に冷却するが、但しスクラバー溶媒として酢酸を用いる場合には、溶媒の温度は凍結を防ぐために17℃以上に保持する。
【0033】
塔52からの一酸化炭素を含む非凝縮性物質は、ライン54を介して排出し、当該技術において公知なように圧力スイング吸着又は真空スイング吸着によって更に精製することができる。これに関し、Pengの米国特許5,529,970及びSircarらの米国特許6,322,612(これらの開示事項は参照として本明細書中に包含する)にこれらのプロセスの記載が与えられている。
【0034】
図1に示す態様においては高圧吸収器は必要でなく、これによって設備コスト及び運転コストが低下する。他の態様においては、高圧吸収器の使用を最小にして運転コストを低下させることができる。
【0035】
上記から、得られるフラッシングされた粗生成物流36中のより低いヨウ化メチル及び酢酸メチルのレベルによって軽質留分カラムが脱ボトルネックされることが認められる。フラッシャー前/反応器後の容器14内における一酸化炭素の消費のために、一酸化炭素を損失することなく高い気体散布速度を達成することができる。
【0036】
カルボニル化システム10は、場合によっては2つの主精製カラムのみを用い、好ましくは「低エネルギーカルボニル化プロセス」と題されたScatesらの米国特許6,657,078(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)により詳細に記載されているように運転する。システムによって更なるカラムが一般的に所望のように用いられる。
【0037】
本発明に関連して用いる第VIII族触媒金属は、ロジウム及び/又はイリジウム触媒であってよい。触媒の選択は本発明の運転にとって重要ではない。ロジウムベースの触媒を選択する場合には、ロジウム金属触媒は、当該技術において周知なように、ロジウムが[Rh(CO)アニオンを含む平衡混合物として触媒溶液中に存在するような任意の好適な形態で加えることができる。ロジウム溶液が反応器の一酸化炭素に富む雰囲気中に存在する際は、ロジウム/ヨウ化カルボニルアニオン種は水及び酢酸中に概して可溶であるので、ロジウムの可溶性が概して保持される。しかしながら、フラッシャー、軽質留分カラムなどの中で通常存在する一酸化炭素が減少した雰囲気に移すと、より少ない一酸化炭素しか利用できないので、ロジウム/触媒組成物の安定性が低下する。従来のシステムにおいては、相当量のロジウムが例えばRhIとして沈殿して損失する。反応器の下流の同伴ロジウムの形態に関する詳細はあまりよく理解されていない。ヨウ化物塩安定剤/共促進剤は、当業者に認められるように所謂「低水」条件下においてフラッシャー内における沈殿を軽減するのに役立つ。ロジウム触媒は、1ppmから溶解度の範囲までの範囲、好ましくは10〜2000重量ppmのロジウムの範囲の濃度で存在させることができる。
【0038】
本発明に関連して用いるヨウ化物塩安定剤/共促進剤は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の可溶性塩、或いは第4級アンモニウム又はホスホニウム塩の形態であってよい。幾つかの態様においては、触媒安定剤/共促進剤は、ヨウ化リチウム、酢酸リチウム、又はこれらの混合物である。ヨウ化物塩は、ヨウ化リチウム及びヨウ化ナトリウム及び/又はヨウ化カリウムの混合物のような複数の塩の混合物として加えることができる。上記で引用した米国特許‘259;‘908;及び‘068(いずれもSmithら)を参照。或いは、反応システムの運転条件下において、その場でヨウ化物アニオンを生成させる塩前駆体としてヨウ化物塩安定剤/共促進剤を加えることができる。前駆体として有用な広範囲の非ヨウ化物塩としては、ヨウ化メチル及び/又はHIと反応して対応するヨウ化物塩安定剤を生成させるアルカリ金属酢酸塩及びカルボン酸塩が挙げられる。好適なヨウ化物塩は、更に、所望の場合にはホスフィンの酸化物、ヒ化物、ホスフィン、アミン、アミノ酸、スルフィド、スルホキシド、又は任意の好適な1種類又は複数の有機リガンドのような非イオン性前駆体からその場で生成させることができる。ホスフィン酸化物、ホスフィン、アミン、アミノ酸、又は他の窒素若しくはリン含有化合物、並びに好適な有機リガンドは、一般にヨウ化メチルの存在下において昇温下で4級化を受けて塩を生成し、これによって反応混合物中のヨウ化物アニオンの高い濃度が保持される。而して、ヨウ化物塩安定剤/共促進剤は、それらを系に加える際の形態ではなく、高いヨウ化物アニオンレベルを保持するそれらの能力によって規定される。ヨウ化物塩共促進剤を導入する1つの方法は、好適な成分を、反応混合物に加えるロジウムと会合したカチオン又はリガンド(通常は単座又は二座リガンド)としてロジウム触媒系又はコンプレックス中に導入することによるものである。ヨウ化メチルの存在下でのカルボニル化条件下においては、これらのコンプレックスは分解及び/又は4級化してヨウ化物アニオンの高いレベルを与える。これに関しては、以下の中国参照文献が特に興味深い:中国公開CN−1345631;出願00124639.9;中国公開CN−1105603;出願94100505.4;及び中国公開CN−1349855;出願00130033.4。而して、ヨウ化物塩共促進剤を与える好適なロジウム触媒コンプレックスとしては、次の構造:
【0039】
【化1】

【0040】
【化2】

【0041】
(式中、Rは、H又はカルボキシル含有炭化水素誘導体であり;(X)は、BPh、BF、又はCHCOOであり;Xは、I、Cl、又はBrであり;n=0、1、又は2である)
を有するコンプレックスが挙げられる。ヨウ化物塩共促進剤として有用な他の化合物としては、
【0042】
【化3】

【0043】
(式中、Rは、H又はカルボキシル含有炭化水素誘導体であり;nは0、1、又は2である)
のようなピリジン誘導体が挙げられる。好ましくは、RはH、或いは例えばリチウムピリジン−2−ホルメート、リチウムピリジン−3−ホルメート、リチウムピリジン−4−ホルメート、リチウムピリジン−2−アセテート、リチウムピリジン−3−アセテート、リチウムピリジン−4−アセテート、又はリチウムピリジン−3−プロピオネートである。当業者であれば、非常に多くの他の成分をヨウ化物塩共促進剤として用いることができることを認識するであろう。
【0044】
液体カルボニル化反応組成物中のイリジウム触媒は、液体反応組成物中に可溶の任意のイリジウム含有化合物を含んでいてよい。イリジウム触媒は、液体反応組成物中に溶解するか、又は可溶性形態に転化させることができる任意の好適な形態で、カルボニル化反応のための液体反応組成物に加えることができる。液体反応組成物に加えることができる好適なイリジウム含有化合物の例としては、IrCl、IrI、IrBr、[Ir(CO)I]、[Ir(CO)Cl]、[Ir(CO)Br]、[Ir(CO)、[Ir(CO)Br、[Ir(CO)、[Ir(CH)I(CO)]、Ir(CO)12、IrCl・3HO、IrBr・3HO、Ir(CO)12、イリジウム金属、Ir、Ir(acac)(CO)、Ir(acac)、酢酸イリジウム、[IrO(OAc)(HO)][OAc]、及びヘキサクロロイリジウム酸[HIrCl]が挙げられる。通常は、酢酸塩、シュウ酸塩、及びアセト酢酸塩のような塩化物を含まないイリジウムのコンプレックスを出発物質として用いる。液体反応組成物中のイリジウム触媒の濃度は、100〜6000ppmの範囲であってよい。イリジウム触媒を用いるメタノールのカルボニル化は周知であり、以下の米国特許:5,942,460;5,932,764;5,883,295;5,877,348;5,877,347;及び5,696,284(これらの開示事項は参照としてそれらの全てを示されているように本出願中に包含する)に一般的に記載されている。
【0045】
ヨウ化メチルを促進剤として用いているが、促進剤の選択は本発明の運転にとって重要ではない。好ましくは、液体反応組成物中のヨウ化メチルの濃度は、1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%の範囲である。
【0046】
促進剤は、特にロジウム触媒系に関しては塩安定剤/共促進剤化合物と混合することができる。これらの促進剤としては、第IA又は第IIA族の金属の塩、或いは第4級アンモニウム又はホスホニウム塩、或いは上記のようなこれらの前駆体を挙げることができる。ヨウ化物又は酢酸塩、例えばヨウ化リチウム又は酢酸リチウムが特に好ましい。
【0047】
ヨーロッパ特許公開EP−0849248(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)に記載されているような他の促進剤及び共促進剤を、本発明の触媒系の一部として用いることができる。好適な促進剤は、ルテニウム、オスミウム、タングステン、レニウム、亜鉛、カドミウム、インジウム、ガリウム、水銀、ニッケル、白金、バナジウム、チタン、銅、アルミニウム、スズ、アンチモンから選択され、より好ましくはルテニウム及びオスミウムから選択される。米国特許6,627,770(その全てを参照として本明細書中に包含する)に特定の共促進剤が記載されている。
【0048】
促進剤は、液体反応組成物及び/又は酢酸回収段階からカルボニル化反応器へ再循環される全ての液体プロセス流中におけるその溶解度の限界値以下の有効量で存在させることができる。用いる場合には、促進剤は、好適には、[0.5〜15]:1、好ましくは[2〜10]:1、より好ましくは[2〜7.5]:1の促進剤と金属触媒とのモル比で液体反応組成物中に存在させる。好適な促進剤の濃度は400〜5000ppmである。
【0049】
一酸化炭素反応物質は、実質的に純粋であってよく、或いは二酸化炭素、メタン、窒素、希ガス、水、及びC〜Cパラフィン系炭化水素のような不活性不純物を含んでいてもよい。一酸化炭素中に存在し、及び水性ガスシフト反応によってその場で生成する水素の存在は、水素化生成物の形成を引き起こす可能性があるので、好ましくは例えば1bar未満の低い分圧に保持する。反応中の一酸化炭素の分圧は、好適には、1〜70bar、好ましくは1〜35bar、最も好ましくは1〜15barの範囲である。
【0050】
酢酸は、通常は反応のための溶媒として反応混合物中に含ませる。
好適なメタノールの反応性誘導体としては、酢酸メチル、ジメチルエーテル、ギ酸メチル、及びヨウ化メチルが挙げられる。メタノール及びその反応性誘導体の混合物を、本発明方法において反応物質として用いることができる。好ましくは、反応物質としてメタノール及び/又は酢酸メチルを用いる。メタノール及び/又はその反応性誘導体の少なくとも一部は、液体反応組成物中において、酢酸生成物又は溶媒との反応によって酢酸メチルに転化し、したがって酢酸メチルとして存在する。液体反応組成物中の酢酸メチルの濃度は、好適には、0.5〜70重量%、好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜35重量%、最も好ましくは1〜20重量%、ロジウム触媒系の場合には1〜10重量%の範囲である。
【0051】
主反応器及びフラッシュ前/反応器後の容器内のカルボニル化プロセスはバッチ又は半連続ベースで運転することができるが、好ましくは連続モードで運転する。主反応器内におけるカルボニル化反応の圧力は、一般に145psi〜2900psi(10〜200bar)、好ましくは145psi〜1450psi(10〜100bar)、最も好ましくは217psi〜725psi(15〜50bar)の範囲、例えば約400psi(28bar)である。フラッシュ前/反応器後の容器内の圧力は、多くの場合において主反応器圧力の10〜40%低下し、これは約40psiの圧力低下に相当する。フラッシュ前/反応器後の容器は、一般に約160psig〜約400psigの圧力で運転する。フラッシュ容器は、通常は約14〜約100psigの範囲内の圧力で運転する。主反応容器及びフラッシュ前/反応器後の容器は、同程度の温度で運転する。カルボニル化反応の温度は、好適には212°F〜572°F(100〜300℃)の範囲、好ましくは302°F〜428°F(150〜220℃)の範囲、例えば約370°F(188℃)である。図1を参照して、装置及び流れの種々の部分における好適な圧力及び組成は次の通りである。
【0052】
装置:
12:カルボニル化反応圧力=300〜500psig、好ましくは350〜450psig;
14:フラッシャー前/反応器後の容器の圧力=200〜450psig、好ましくは300〜400psig(常に反応器12よりも低い圧力);
16:フラッシャー圧力=0〜100psig、好ましくは15〜45psig;
52:排気スクラバー圧力=5〜500psig、好ましくは5〜100psig、より好ましくは10〜50psig;
流れ:
30:MeI、MeAc、COを含む;
34:HAc、Rh、HO、溶解ガス(CO/CO)、及び流れ24よりも低い濃度のMeAc及びMeIを含む;
26:CO、H、CO、CHを含む;
48:非凝縮性ガス及びMeIを含む;
54:主として非凝縮性ガスを流れ30よりも低い濃度のMeIと共に含む。
【0053】
水は、例えばメタノール反応物質と酢酸生成物との間のエステル化反応によって、液体反応組成物中においてその場で形成することができる。水は、液体反応組成物の他の成分と一緒か又は別々にカルボニル化反応器に導入することができる。水を反応器から排出される反応組成物の他の成分から分離して、液体反応組成物中における水の求められる濃度を保持するように制御された量で再循環することができる。
【0054】
而して、種々の態様においては、フラッシャー前/反応器後の容器は、反応容器の圧力よりも少なくとも5、10、15、20、25、又は30psi低い圧力で運転する。また、第VIII族金属触媒は均一ロジウム触媒であり、反応混合物の約300重量ppm〜約5,000重量ppmの濃度で反応混合物中に存在させ、一方、反応容器内の反応混合物中の水の量は反応混合物の0.1重量%〜10重量%のレベルに保持し、反応混合物にはヨウ化物塩安定剤/共促進剤を更に含ませる。或いは、反応容器内の反応混合物中の水の量を反応混合物の0.5重量%〜8重量%のレベルに保持し、反応混合物にヨウ化物塩安定剤/共促進剤を更に含ませ、或いは、反応容器内の反応混合物中の水の量を反応混合物の0.5重量%〜5重量%のレベルに保持し、反応混合物にヨウ化物塩安定剤/共促進剤を更に含ませる。幾つかの好ましい場合においては、反応容器内の反応混合物中の水の量を反応混合物の0.5重量%〜3重量%のレベルに保持し、反応混合物にヨウ化物塩安定剤/共促進剤を更に含ませ、一方、ヨウ化物塩安定剤/共促進剤は反応容器内の反応混合物の約2重量%〜約20重量%のヨウ化物アニオン濃度を生成させ且つ保持する量で存在させ、例えばヨウ化物塩安定剤/共促進剤は、反応容器内の反応混合物の約5重量%〜約17.5重量%のヨウ化物アニオン濃度を生成させ且つ保持する量で存在させる。
【0055】
ヨウ化物塩安定剤/共促進剤は時には複数のヨウ化物塩の混合物であり、及び/又はヨウ化物塩安定剤/共促進剤は非イオン形態で反応混合物に供給する。
第VIII族金属触媒は均一イリジウム触媒であってよく、反応容器内の反応混合物中の水の量は反応混合物の3重量%〜8重量%のレベルに保持することができ、一方、反応容器内の反応混合物中のヨウ化メチルの量は反応混合物の2重量%〜8重量%のレベルに保持し、反応混合物中の酢酸メチルの量は反応容器内において反応混合物の10重量%〜20重量%のレベルで保持する。
【0056】
1つの好ましい形態においては、一酸化炭素を反応器からの排気流を用いてフラッシャー前/反応器後の容器に散布する。他の好ましい形態においては、フラッシャー前/反応器後の容器からの軽質留分を低圧スクラバーに排気する。
【0057】
通常は、反応混合物中の酢酸メチルは、フラッシャー前/反応器後の容器内において、反応容器内の反応混合物中の酢酸メチルの濃度よりも少なくとも25%低いレベルまで消費される。時には、反応混合物中の酢酸メチルは、フラッシャー前/反応器後の容器内において、反応容器内の反応混合物中の酢酸メチルの濃度よりも少なくとも50%低いレベルまで消費される。
【0058】
本発明の他の形態においては、(a)メタノール又はその反応性誘導体を、第VIII族金属触媒及びヨウ化メチル促進剤の存在下、酢酸、水、酢酸メチル、及びヨウ化メチルを含む液体反応混合物中において一酸化炭素でカルボニル化するように適合されており、300psig〜500psigの反応圧力で運転される反応容器;(b)反応器に接続されており、反応器からそれに送られる液体反応混合物を受容するように適合されており、200psig〜450psigの圧力で運転されるフラッシャー前/反応器後の容器、但し、フラッシャー前/反応器後の容器内の圧力は反応容器の圧力よりも少なくとも5psi低く、フラッシャー前/反応器後の容器内の組成及び条件は、軽質留分が、フラッシャー前/反応器後の容器の排気口、及び反応混合物と比べて酢酸に富みヨウ化メチル及び酢酸メチルが減少したフラッシュ前混合物に供給されるようなものであり;(c)フラッシャー前/反応器後の容器の排気口に接続され、それから軽質留分を回収するように適合されているスクラバー;(d)フラッシャー前/反応器後の容器に接続されており、フラッシャー前/反応器後の容器からそれに送られる液体のフラッシュ前混合物を受容するように適合されており、フラッシャー前/反応器後の容器の圧力よりも実質的に低い圧力で運転され、更にフラッシュ前混合物から粗生成物流をフラッシングして、反応器への再循環反応混合物を与えるように適合されているフラッシュ容器;及び(e)フラッシュ容器に接続されており、粗生成物流を精製するように適合されている精製セクション;を含む、酢酸を製造するためのカルボニル化システムが提供される。反応器は350psig〜450psigの圧力で運転することができ、一方、フラッシャー前/反応器後の容器は例えば300〜400psigの圧力で運転する。好適には、フラッシャー前/反応器後の容器は反応容器よりも少なくとも15psi低い圧力で運転し、一方、フラッシュ容器は0psig〜100psigの圧力で運転し、例えばフラッシュ容器は15psig〜45psigの圧力で運転する。排気スクラバーは5psig〜450psig又はそれ以上の圧力で運転し、好適には排気スクラバーは5psig〜100psigの圧力で運転し、例えば排気スクラバーは10psig〜50psigの圧力で運転する。
【0059】
本発明の他の好ましい形態においては、フラッシャー前/反応器後の容器は、例えば一酸化炭素源が反応容器からの排気流である場合などには一酸化炭素源に接続する。
更なる改良点としては、反応容器の排気流とフラッシャー前/反応器後の容器を接続する圧力低下バルブを更に含み、及び/又はフラッシャー前/反応器後の容器とスクラバーを接続する圧力低下バルブを更に含み、及び/又はフラッシャー前/反応器後の容器とフラッシュ容器を接続する圧力低下バルブを更に含むシステムが挙げられる。幾つかの場合においては、反応容器は専らフラッシャー前/反応器後の容器に排気され、システムに単一の低圧排気スクラバーが与えられる。
【0060】
本発明を詳細に記載したが、発明の精神及び範囲内の修正は当業者に容易に明らかであろう。上記の議論、当該技術における関連する知識、並びに背景及び詳細な説明に関連して上記で議論した参照文献(それらの開示事項は全て参照として本明細書中に包含する)を考慮すると、更なる記載は不要であると考えられる。更に、本発明の複数の形態及び種々の態様の複数の部分を完全か又は部分的に結合又は交換することができると理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載は例示のみの目的であり、本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)メタノール又はその反応性誘導体を、均一第VIII族金属触媒及びヨウ化メチル促進剤の存在下において、酢酸、水、酢酸メチル、ヨウ化メチル、及び均一触媒を含む液体反応混合物を含み、反応器圧力において運転する反応容器内で一酸化炭素と接触反応させ;
(b)反応容器から反応混合物を排出し、排出された反応混合物を更なる一酸化炭素と一緒に、反応容器圧力よりも低い低圧で運転するフラッシャー前/反応器後の容器に供給し;
(c)フラッシャー前の容器内の軽質留分を排気し、同時にフラッシャー前/反応器後の容器内の酢酸メチルを消費して、反応混合物と比べて酢酸に富み、ヨウ化メチル及び酢酸メチルが減少したフラッシュ前の混合物を生成させ;
(d)フラッシュ前の反応混合物をフラッシャー前/反応器後の容器から排出して、フラッシュ前の混合物をフラッシュ容器に供給し;
(e)フラッシャー前/反応器後の容器の圧力よりも実質的に低い圧力で運転するフラッシュ容器内の混合物から粗酢酸流をフラッシングし;
(f)フラッシュ後の残渣をフラッシュ容器から反応容器に再循環し;そして
(g)粗生成物流を精製する;
ことを含む酢酸の製造方法。
【請求項2】
フラッシャー前/反応器後の容器を反応容器の圧力よりも少なくとも5psi低い圧力で運転する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フラッシャー前/反応器後の容器を反応容器の圧力よりも少なくとも10psi低い圧力で運転する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
フラッシャー前/反応器後の容器を反応容器の圧力よりも少なくとも15psi低い圧力で運転する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
フラッシャー前/反応器後の容器を反応容器の圧力よりも少なくとも20psi低い圧力で運転する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
フラッシャー前/反応器後の容器を反応容器の圧力よりも少なくとも25psi低い圧力で運転する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フラッシャー前/反応器後の容器を反応容器の圧力よりも少なくとも30psi低い圧力で運転する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第VIII族金属触媒が均一ロジウム触媒であり、反応混合物の約300重量ppm〜約5,000重量ppmの濃度で反応混合物中に存在させる、請求項1に記載のカルボニル化方法。
【請求項9】
反応容器内の反応混合物中の水の量を反応混合物の0.1重量%〜10重量%のレベルに保持し、反応混合物にヨウ化物塩安定剤/共促進剤を更に含ませる、請求項8に記載のカルボニル化方法。
【請求項10】
反応容器内の反応混合物中の水の量を反応混合物の0.5重量%〜8重量%のレベルに保持し、反応混合物にヨウ化物塩安定剤/共促進剤を更に含ませる、請求項9に記載のカルボニル化方法。
【請求項11】
反応容器内の反応混合物中の水の量を反応混合物の0.5重量%〜5重量%のレベルに保持し、反応混合物にヨウ化物塩安定剤/共促進剤を更に含ませる、請求項9に記載のカルボニル化方法。
【請求項12】
反応容器内の反応混合物中の水の量を反応混合物の0.5重量%〜3重量%のレベルに保持し、反応混合物にヨウ化物塩安定剤/共促進剤を更に含ませる、請求項9に記載のカルボニル化方法。
【請求項13】
ヨウ化物塩安定剤/共促進剤を、反応容器内の反応混合物の約2重量%〜約20重量%のヨウ化物アニオン濃度を生成させて保持する量で存在させる、請求項9に記載のカルボニル化方法。
【請求項14】
ヨウ化物塩安定剤/共促進剤を、反応容器内の反応混合物の約5重量%〜約17.5重量%のヨウ化物アニオン濃度を生成させて保持する量で存在させる、請求項9に記載のカルボニル化方法。
【請求項15】
ヨウ化物塩安定剤/共促進剤が複数のヨウ化物塩の混合物である、請求項9に記載のカルボニル化方法。
【請求項16】
ヨウ化物塩安定剤/共促進剤を非イオン形態で反応混合物に供給する、請求項9に記載のカルボニル化方法。
【請求項17】
第VIII族金属触媒が均一イリジウム触媒である、請求項1に記載のカルボニル化方法。
【請求項18】
反応容器内の反応混合物中の水の量を反応混合物の3重量%〜8重量%のレベルに保持する、請求項17に記載のカルボニル化方法。
【請求項19】
反応容器内の反応混合物中のヨウ化メチルの量を反応混合物の2重量%〜8重量%のレベルに保持する、請求項17に記載のカルボニル化方法。
【請求項20】
反応混合物中の酢酸メチルの量を反応容器内において反応混合物の10重量%〜20重量%のレベルに保持する、請求項17に記載のカルボニル化方法。
【請求項21】
反応器からの排気流を用いて一酸化炭素をフラッシャー前/反応器後の容器に散布する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
フラッシャー前/反応器後の容器からの軽質留分を低圧スクラバーに排気する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
反応混合物中の酢酸メチルを、フラッシャー前/反応器後の容器において、反応容器内の反応混合物中の酢酸メチルの濃度よりも少なくとも25%低いレベルまで消費する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
反応混合物中の酢酸メチルを、フラッシャー前/反応器後の容器において、反応容器内の反応混合物中の酢酸メチルの濃度よりも少なくとも50%低いレベルまで消費する、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−532867(P2012−532867A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519539(P2012−519539)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/001900
【国際公開番号】WO2011/005304
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】