説明

保冷ケース

【課題】輸送の効率を向上できる保冷ケースを提供する。
【解決手段】保冷ケース10は、筒状の胴部g1の上部に突出した細首部g2の上端に設けた開口が止栓されて液体薬品が内部に充填された複数の瓶Gを収容する。保冷ケース10は、略直方体の第1収容ケース1と第2収容ケース2を備える。第1収容ケース1は、瓶Gの胴部1gを収容する凹部1aを有する。第2収容ケース2は、第1収容ケース1の上面に密着するように載置する。第2収容ケース2は、第1収容室2aと第2収容室2bを有する。第1収容室2aは、底面が開口されて胴部g1の上部が当接する内壁21aを設ける。第2収容室2bは、第1収容室2aに連通して細首部g2を包囲する。第2収容ケース2は、上面が開口されて冷気が流入可能な第1冷気流入路21であって、第2収容室2bに貫通する第1冷気流入路21を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷ケースに関する。特に、薬品などが充填された複数の瓶を所定の低温を維持して輸送するための保冷ケースの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、レジストと呼ばれる液体は、3リットル程度の容量を有する、いわゆるガロン瓶に充填されて輸送される。そして、レジストの品質を維持するために、レジストが充填されたガロン瓶は、所定の低温に保持する保冷ケースに収容される。更に、この保冷ケースは、ダンボール箱などで梱包されて輸送されている。
【0003】
複数の薬品用の瓶を低温下で維持して輸送する保冷ケースとしては、全体の重量及び容積を比較的小さくすることが可能であり、保冷性に優れ、内部の温度が均一に維持され、かつ作業性及び機械的耐久性が良好な輸送用の保冷ケースが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1による保冷ケースは、非金属からなる外層と発泡樹脂からなる内層部で構成されている。内層部は、2分割されて複数の薬品用の瓶を保持可能に成形されている。又、内層部の中央部には、内層部全体の高さに対して20%以上の高さの位置にかさ上げされた底部を有し、内層部全体の体積の5〜20%の容積の独立した冷却材室を設けている。更に、冷却材室と各隔室との間には、冷却材室底部より冷却材室の高さの40%以下の高さの位置に、冷却材室の側面積の1から4%の大きさの通気孔を冷却材室の側面に有している。
【特許文献1】特開平11−91828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の実施例2には、内層部が4室に区画されて、4つの薬品用の瓶が配置された保冷ケースが開示されている。実施例2の保冷ケースは、一対の薬品用の瓶を仕切るように冷却材室を中央部に設けているので、保冷ケースの床面積を大きくしている。
【0006】
保冷ケースの床面積を大きくすることなく、複数の薬品用の瓶を収容できれば、搭載面積が規定されたパレットに積載する保冷ケースの個数も増えて、輸送の効率も向上できる。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、薬品などが充填された複数の瓶を所定の低温を維持して輸送するための保冷ケースであって、輸送の効率を向上できる保冷ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上下に分割された一組の発泡ケースに複数の薬品用の瓶を収容し、瓶の周囲に冷気が流入可能に発泡ケースの上部を開口することにより、輸送の効率を向上できることを見出し、これに基づいて、以下のような新たな保冷ケースを発明するに至った。
【0009】
(1) 筒状の胴部の上部に突出した細首部の上端に設けた開口が止栓されて液体薬品が内部に充填された複数の瓶を収容する保冷ケースであって、前記瓶が載置されて当該胴部を高さ方向の途上まで収容する凹部を有する略直方体の第1収容ケースと、この第1収容ケースの上面に密着するように載置する第2収容ケースであって、底面が開口されて前記胴部の上部が部分的に当接する内壁を設ける第1収容室、及びこの第1収容室に連通して前記細首部を包囲する第2収容室を有する略直方体の第2収容ケースと、備え、前記第2収容ケースは、上面が開口されて冷気が流入可能な第1冷気流入路であって、前記第2収容室に貫通する第1冷気流入路を有する保冷ケース。
【0010】
(1)の発明による保冷ケースは、液体薬品が内部に充填された複数の瓶を収容する。この瓶は、筒状の胴部の上部に突出した細首部の上端に設けた開口が止栓されている。
【0011】
(1)の発明による保冷ケースは、略直方体の第1収容ケースと略直方体の第2収容ケースを備えている。第1収容ケースは、瓶が載置される凹部を有している。この凹部は、瓶の胴部を高さ方向の途上まで収容する。
【0012】
第2収容ケースは、第1収容ケースの上面に密着するように載置している。そして、第2収容ケースは、第1収容室と第2収容室を有している。第1収容室は、底面が開口されており、胴部の上部が部分的に当接する内壁を設けている。第2収容室は、第1収容室に連通しており、瓶の細首部を包囲している。
【0013】
又、第2収容ケースは、第2収容室に貫通する第1冷気流入路を有している。第1冷気流入路は、第2収容ケースの上面が開口されて冷気が流入可能となっている。
【0014】
ここで、瓶は、筒状の胴部とこの胴部の上部に突出した細首部とで構成されてよく、細首部の上端に設けた開口が止栓されている。筒状の胴部は、直円柱又は角柱体の内のいずれか一方の形状を含むことができる。胴部の上部と細首部の基端部とは、円錐体状の傾斜面で接続されてよく、内部に充填された液体薬品を排出することが容易になる。
【0015】
瓶は細首部を有するとは、口が大きく胴が丸く深い土器・陶器と区別している。瓶は、ガラス瓶が好ましく、液体薬品を入れる容器に適している。又、この瓶は、細首部に指を挿入可能な取っ手を設けることを排除しない。
【0016】
細首部の上端に設けた開口は、キャップ、及びコルク又は口金で止栓されよく、輸送途上の液体薬品の漏洩を防止できる。保冷ケースは瓶を収容するとは、瓶を耐薬品の袋に包装して収容することを排除しない。
【0017】
第1収容ケース及び第2収容ケースは、軽量であり断熱性と緩衝性を兼ね備えた材質からなることが好ましく、このような材質としては、発泡樹脂が挙げられる。発泡樹脂の代表的なものである発泡スチロールは、合成樹脂素材の一種で気泡を含ませたポリスチレンである。発泡スチロールは、成形が容易であり、破損しやすい物品の緩衝・梱包材として適している。
【0018】
第1収容ケース及び第2収容ケースは、対向する一対の金型で成形可能な形状とすることが好ましく、対向する一対の金型以上の他の金型を必要とすると、金型の費用が増大する。
【0019】
第1収容ケースは、瓶が載置される凹部を有しているとは、凹部に瓶が載置されることにより瓶の立脚姿勢が維持されることを意味している。凹部の内壁は、瓶の胴部に部分的に当接することが好ましく、凹部の内壁に複数の溝を設けることにより、この溝に冷気を導入することも可能になる。
【0020】
第2収容ケースは、第1収容ケースの上面に密着するように載置しているとは、第1収容ケースと第2収容ケースの境界から冷気が逃げることを防止することを意味している。第1収容ケースの上面と第2収容ケースの底面とは、互いに嵌合する段差を設けて密着してよく、第1収容ケースの上面に凸部を設け、第2収容ケースの底面に凹部を設け、この凸部とこの凹部が嵌合するようにしてもよい。
【0021】
例えば、第1収容室は、第2収容ケースの底面が開口されて上面に向かって縮径する円錐体状の内壁を形成してよく、胴部の上部が当接する。そして、第1収容ケースと第2収容ケースとをバンドなどで締結すれば、瓶は、第1収容ケースの凹部と第2収容ケースの第1収容室で挟持されるので、瓶の姿勢が維持される。
【0022】
第1収容室の内壁は、胴部の上部に部分的に当接するとは、第1収容室の内壁が胴部の上部を密閉しないことを意味しており、胴部の周囲に冷気が流通可能な通路が確保されることを意味している。例えば、第1収容室の内壁に複数の溝を形成して、第1冷気流入路に連通できる。
【0023】
同様に、第2収容室は細首部を包囲するとは、第2収容室の内壁が細首部を密閉しないことを意味しており、細首部の周囲に冷気が流通可能な通路が確保されることを意味している。第2収容室が上面に向けて貫通しており、この貫通穴に冷気が流入することにより、瓶を保冷できる。
【0024】
(1)の発明による保冷ケースは、第1収容ケースの4隅に瓶を配置する形態を考えることができる。この場合、特許文献1の実施例2のように、一対の瓶を仕切るように冷却材室を中央部に設けていないので、第1収容ケースの床面積を小さくできる。
【0025】
そして、後述するように、冷却材を収容する保冷箱を第2収容ケースに載置すれば、冷却材の冷気が第1冷気流入路に流入して、瓶を保冷できる。第2収容ケースに載置される保冷箱は、後述するような実施形態に限定されない。例えば、保冷箱は、底面が多孔板又は網目板などで構成してよく、この保冷箱にドライアイス又は複数の冷却パックを収容してよく、保冷箱の底面から第1冷気流入路に冷気が流入して瓶を冷却できる。
【0026】
(1)の発明による保冷ケースは、内部に冷却材室を設けることなく、瓶の周囲に冷気が流入可能な開口を上面に設けているので、保冷ケースの床面積を大きくすることなく、複数の薬品用の瓶を収容できる。したがって、搭載面積が規定されたパレットに積載する保冷ケースの個数も増えて、輸送の効率も向上できる。
【0027】
(2) 前記第2収容ケースは、上面の中央部が開口されて冷気が流入可能な第2冷気流入路であって、当該上面から底面に貫通すると共に、当該底面から前記第1収容室に連通する溝を設ける第2冷気流入路を有する(1)記載の保冷ケース。
【0028】
(2)の発明による保冷ケースは、第2収容ケースが第2冷気流入路を有している。第2冷気流入路は、第2収容ケースの上面の中央部が開口されて冷気が流入可能となっている。第2冷気流入路は、第2収容ケースの上面から底面に貫通しており、この底面から第1収容室に連通する溝を設けている。
【0029】
(2)の発明による保冷ケースは、第2冷気流入路に流入する冷気が第1収容室に流入するので、瓶の保冷を援助できる。又、(2)の発明による保冷ケースは、第2冷気流入路が複数の第1収容室を相互に連通しているので、複数の瓶の保冷温度を均等化できる。
【0030】
(3) 前記第2収容ケースに載置して、前記第1冷気流入路及び前記第2冷気流入路に冷気を送出する冷却材を収容する保冷箱を更に備える(2)記載の保冷ケース。
【0031】
保冷箱は、第1収容ケース及び第2収容ケースと同じ材質からなることが好ましく、発泡スチロールで成形されることが好ましい。冷却材は、ドライアイス又は冷却パックであってよく、複数の瓶の輸送時間及び保冷温度範囲に対応して、必要量又は必要個数の冷却材が保冷箱に収容される。
【0032】
(4) 前記保冷箱は、上面が開口されて前記冷却材を収容する発泡材で成形される略直方体の本体、及びこの本体の開口を密閉する発泡材で成形される蓋体からなり、前記本体は、前記第1冷気流入路に接続する第1冷気排出口と、前記第2冷気流入路に接続する第2冷気排出口と、を有し、前記第1冷気排出口及び前記第2冷気排出口は、前記本体の底部に開口している(3)記載の保冷ケース。
【0033】
(4)の発明による保冷ケースは、保冷箱が略直方体の本体と蓋体からなっている。本体は、発泡材で成形されており、上面が開口されて冷却材を収容している。蓋体は、発泡材で成形されており、本体の開口を密閉している。
【0034】
(4)の発明による保冷ケースは、保冷箱の本体が第1冷気排出口と第2冷気排出口を有している。第1冷気排出口は、第1冷気流入路に接続する。第2冷気排出口は、第2冷気流入路に接続する。そして、第1冷気排出口及び第2冷気排出口は、本体の底部に開口している。
【0035】
(4)の発明による保冷ケースは、保冷箱の内部の冷気を外部に漏洩することなく、冷気を確実に第1冷気流入路及び第2冷気流入路に流入できる。
【0036】
(5) 前記冷却材は、冷却剤が袋詰めされた複数の冷却パックからなり、前記本体は、これらの冷却パックの移動が困難な仕切り部材を有する(4)記載の保冷ケース。
【0037】
冷却パックは、再利用できる利点がある。保冷箱の本体の内部に複数の冷却パックの移動が困難な仕切り部材を有することにより、複数の瓶の保冷温度の偏りを防止できる。
【0038】
(6) 前記第1収容ケース、前記第2収容ケース、及び前記保冷箱の順番に積層されて、ダンボール箱に箱詰めされる(3)から(5)のいずれかに記載の保冷ケース。
【0039】
第1収容ケース、第2収容ケース、及び保冷箱の順番に積層されて、直方体の積層体となることが好ましく、この積層体の外面がダンボール箱の内面に密着するように、箱詰めされることが好ましい。ダンボール箱は、板紙が空気層を含んでいるので断熱効果があり、保冷ケースの梱包に適している。
【発明の効果】
【0040】
本発明による保冷ケースは、内部に冷却材室を設けることなく、瓶の周囲に冷気が流入可能な開口を上面に設けているので、保冷ケースの床面積を大きくすることなく、複数の薬品用の瓶を収容できる。したがって、搭載面積が規定されたパレットに積載する保冷ケースの個数も増えて、輸送の効率も向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0042】
図1は、本発明による保冷ケースの一実施形態を示す縦断面図である。図2は、前記実施形態による保冷ケースに収容される瓶の斜視図である。図3は、前記実施形態による保冷ケースの外観図であり、図3(A)は、保冷ケースの平面図、図3(B)は、保冷ケースの正面図である。
【0043】
図4は、前記実施形態による保冷ケースを構成する第1収容ケースの平面図である。図5は、前記実施形態による第1収容ケースの正面図である。図6は、前記実施形態による第1収容ケースの縦断面図であり、図4のA−A矢視図である。図7は、前記実施形態による第1収容ケースの縦断面図であり、図4のB−B矢視図である。図8は、前記実施形態による第1収容ケースの斜視図である。
【0044】
図9は、前記実施形態による保冷ケースを構成する第2収容ケースの平面図である。図10は、前記実施形態による第2収容ケースの正面図である。図11は、前記実施形態による第2収容ケースの下面図である。図12は、前記実施形態による第2収容ケースの縦断面図であり、図11のA−A矢視図である。図13は、前記実施形態による第2収容ケースの斜視図であり、第2収容ケースを下面から観ている。
【0045】
図14は、前記実施形態による保冷ケースを構成する保冷箱の本体の平面図である。図15は、前記実施形態による保冷箱の本体の縦断図であり、図14のA−A矢視図である。
【0046】
図16は、前記実施形態による第1収容ケースがダンボール箱に搭載された状態を示す斜視図である。図17は、図16の状態から更に第2収容ケースがダンボール箱に搭載された状態を示す斜視図である。図18は、図17の状態から更に保冷箱の本体に複数の冷却パックが収容された状態を示す斜視図である。
【0047】
最初に、本発明の実施形態による保冷ケースの構成を説明する。図1において、保冷ケース10は、液体薬品が内部に充填された複数の瓶Gを収容している。図2に示されるように、瓶Gは、筒状の胴部g1の上部に突出した細首部g2の上端に設けた開口がキャップg3で止栓されている。
【0048】
図1又は図3において、保冷ケース10は、略直方体の第1収容ケース1と略直方体の第2収容ケース2を備えている。第1収容ケース1は、瓶Gが載置される凹部1aを有している(図8参照)。凹部1aは、瓶Gの胴部g1を高さ方向の途上まで収容している。
【0049】
図1又は図3において、第2収容ケース2は、第1収容ケース1の上面に密着するように載置している。図12又は図13を参照すると、第2収容ケース2は、第1収容室2aと第2収容室2bを有している。第1収容室2aは、底面が開口されており、胴部g1の上部が部分的に当接する内壁21aを設けている。第2収容室2bは、第1収容室2aに連通しており、瓶Gの細首部g2を包囲している(図1参照)。
【0050】
図1又は図12を参照すると、第2収容ケース2は、第2収容室2bに貫通する第1冷気流入路21を有している。第1冷気流入路21は、第2収容ケース2の上面が開口されて冷気が流入可能となっている。
【0051】
図2を参照すると、瓶Gは、3リットル程度の容量を有する、いわゆるガロン瓶を示している。瓶Gは、褐色のガラス瓶からなり、レジストを収容する容器に適している。胴部1gの上部と細首部g2の基端部とは、円錐体状の傾斜面で接続されている。又、瓶Gは、細首部g2に指を挿入可能な取っ手g4を設けている。瓶Gは、耐薬品の透明な袋g5に包装されて、保冷ケース10に収容されている(図1参照)。
【0052】
図3から図13において、第1収容ケース1及び第2収容ケース2は、軽量であり断熱性と緩衝性を兼ね備えた発泡スチロールからなっている。発泡スチロールは、成形が容易であり、破損しやすい瓶Gの緩衝・梱包材として適している。第1収容ケース1及び第2収容ケース2は、それぞれ対向する一対の金型で成形されており、金型の費用を廉価にしている。
【0053】
図1を参照すると、第1収容ケース1の凹部1aに瓶Gが載置されることにより、瓶Gの立脚姿勢が維持される。図4又は図8を参照すると、凹部1aの内壁には、複数の円弧状の溝11aを設けている。凹部1aの内壁は、瓶Gの胴部1gに部分的に当接することになる。そして、これらの溝11aに冷気が導入されて、瓶Gが保冷される。
【0054】
図4、図7及び図8を参照すると、第1収容ケース1の中央部には、矩形に開口された凹部1bが設けられている。凹部1bには、図示しない温度記録計が収容される。この温度記録計により、瓶Gの保冷温度を確認できる。
【0055】
図8を参照すると、第1収容ケース1には、上面に突出した一対の段差10c・10cが対角線上の2隅に設けられている。一方、図13を参照すると、第2収容ケース2には、底面に突出した一対の段差20c・20cが対角線上の2隅に設けられている。第2収容ケース2を第1収容ケース1の上面に載置すると、一対の段差10c・10cと一対の段差20c・20cとが嵌合して、第1収容ケース1の上面に密着できる(図3参照)。
【0056】
図12を参照すると、第1収容室2aは、第2収容ケース2の底面が円形に開口されて、上面に向かって縮径する円錐体状の内壁21aを形成している。図1に示されるように、瓶Gの胴部1gの上部が内壁21aに当接している。
【0057】
図1に示された状態で、第1収容ケース1と第2収容ケース2とをバンドなどで締結すれば、瓶Gは、第1収容ケース1の凹部1aと第2収容ケース2の第1収容室2aで挟持されるので、瓶Gの姿勢が維持される。
【0058】
図11又は図13を参照すると、第1収容室2aの内壁21aには、複数の円弧状の溝21bを設けている。第1収容室2aの内壁21aは、瓶Gの胴部1gの上部に部分的に当接することになる。そして、これらの溝21bに第1冷気流入路21から冷気が導入されて、瓶Gの胴部1gの周囲に冷気が流通可能な通路が確保される。
【0059】
図9、図11及び図13を参照すると、第2収容ケース2は、上面の中央部が開口されて冷気が流入可能な第2冷気流入路22を設けている。第2冷気流入路22は、第2収容ケース2の上面から底面に貫通している。そして、第2冷気流入路22は、第2収容ケース2の底面から第1収容室2aに連通する溝2cを設けている。
【0060】
図1又は図3において、保冷ケース10は、第2収容ケースに載置する保冷箱3を更に備えている。保冷箱3は、第1冷気流入路21及び第2冷気流入路22(図9参照)に冷気を送出する冷却材Rを収容している。
【0061】
図1又は図3において、保冷箱3は、略直方体の本体31と板状の蓋体32で構成されている。本体31は、発泡材(発泡スチロール)で成形されており、上面が開口されて冷却材Rを収容している。蓋体32は、発泡材(発泡スチロール)で成形されており、本体31の開口を密閉している。
【0062】
図15を参照すると、本体31は、底面から突出する一対の帯板状の凸部31c・31cを設けている。一方、図9を参照すると、第2収容ケース2は、上面から陥没する一対一組の長尺の凹部20d・20dを設けている。本体31を第2収容ケース2に載置して、一対の凸部31c・31cを一対の凹部20d・20dに嵌合できる(図1参照)。
【0063】
図14及び図15において、本体31は、4つの第1冷気排出口311を底部に開口している。本体31を第2収容ケース2に載置して、第1冷気排出口311を第1冷気流入路21の開口に接続できる(図1参照)。
【0064】
図14及び図15において、本体31は、底部から開口に向けて突出するボス31aを中央部に設けている。そして、第2冷気排出口312をボス31aに開口している。本体31を第2収容ケース2に載置して、第2冷気排出口312を第2冷気流入路22の開口に接続できる(図9参照)。
【0065】
図1に示された冷却材Rは、冷却剤が袋詰めされた複数の冷却パックからなっている。図14及び図15において、本体31は、内部を区画する一対の仕切り部材31b・31bを有している。一対の仕切り部材31b・31bは、複数の冷却パックの移動を困難としている。なお、ボス31aも複数の冷却パックの移動が困難な仕切り部材として機能する。
【0066】
次に、本発明の実施形態による保冷ケースの作用を説明する。
【0067】
本発明の実施形態による保冷ケース10は、第1収容ケース1の4隅に瓶Gを配置できる(図16参照)。この場合、特許文献1の実施例2のように、一対の瓶を仕切るように冷却材室を中央部に設けていないので、第1収容ケース1の床面積を小さくできる。
【0068】
図1に示されるように、冷却材Rを収容する保冷箱3を第2収容ケース2に載置すれば、冷却材Rの冷気が第1冷気流入路21に流入して、4つの瓶Gを保冷できる。第2収容ケース2に載置される保冷箱は、前述した実施形態に限定されない。例えば、保冷箱は、底面が多孔板又は網目板などで構成してよく、この保冷箱にドライアイス又は複数の冷却パックを収容してよく、保冷箱の底面から第1冷気流入路21に冷気が流入して4つの瓶Gを冷却できる。
【0069】
本発明の実施形態による保冷ケース10は、内部に冷却材室を設けることなく、瓶Gの周囲に冷気が流入可能な開口を上面に設けているので、保冷ケースの床面積を大きくすることなく、複数の薬品用の瓶Gを収容できる。したがって、搭載面積が規定されたパレットに積載する保冷ケースの個数も増えて、輸送の効率も向上できる。
【0070】
図13を参照すると、本発明の実施形態による保冷ケース10は、第2冷気流入路22に流入する冷気が溝2cを流通して、第1収容室2aに流入するので、瓶Gの保冷を援助できる。又、保冷ケース10は、第2冷気流入路22が複数の第1収容室2aを相互に連通しているので、複数の瓶Gの保冷温度を均等化できる。
【0071】
図3を参照すると、本発明の実施形態による保冷ケース10は、幅W=390mm、奥行きD=390mmであり、正方形の床面積を有している。又、第1収容ケース1、第2収容ケース2、及び保冷箱3の順番に積層された、保冷ケース10の高さHは、514mmである。
【0072】
本発明の実施形態による保冷ケース10は、次の手順でダンボール箱に梱包される。図16を参照すると、最初に、ダンボール箱9の上部が開かれて、予め載置されていた第2収容ケース2及び保冷箱3がダンボール箱9から取り除かれる(図3参照)。次に、図示しない温度記録計が凹部1bに設置される。
【0073】
次に、図17に示されるように、第2収容ケース2が設置される。次に、図18に示されるように、保冷箱3の本体31が設置されて、所定数の冷却パックが本体31の内部に投入される。次に、蓋体32が取り付けられ、ダンボール箱9の上部が閉じられて、一連の梱包作業が終了する。そして、ダンボール箱9に梱包された保冷ケース10は、直ちに空輸される。
【0074】
本発明の実施形態によるダンボール箱9は、幅×奥行き×高さが410mm×410mm×540mmであり、所要のパレットに3列×3行、すなわち1段当たり9個のダンボール箱9を搭載できる。3段程度は積載可能であり、パレットで一度に27個のダンボール箱9を移送できる。
【0075】
保冷レースに内蔵した温度記録計に記録されたデータから、保冷ケース10の保冷温度を検証した。その結果、レジストの種類により、温度上昇カーブに多少の相違が認められたが、外気温度が30℃の条件で、0℃以上20℃の保冷適切温度を30時間以上、約50時間未満、保持できた。又、保管温度が5℃の条件下で、レジストの下限温度である0℃を下回る温度にならなかったことを確認できた。
【0076】
なお、上記の検証は、市販の冷却パックを2日間以上、マイナス20℃で冷凍したものを10個、保冷ケース10に投入して行った。又、レジスト入りの瓶Gは、24時間冷蔵保存したものを使用した。
【0077】
又、保冷ケース10をダンボール箱9に梱包した状態で、落下試験を実施した。図3に示された保冷ケース10の天地を逆さまにした状態で、1.2mの高さからダンボール箱9を落下させた。その結果、保冷箱3に破損及び亀裂が生じたが、瓶Gに損傷は発生しなかった。本発明の実施形態による保冷ケース10は、耐衝撃性があることが立証された。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明による保冷ケースの一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】前記実施形態による保冷ケースに収容される瓶の斜視図である。
【図3】前記実施形態による保冷ケースの外観図であり、図3(A)は、保冷ケースの平面図、図3(B)は、保冷ケースの正面図である。
【図4】前記実施形態による保冷ケースを構成する第1収容ケースの平面図である。
【図5】前記実施形態による第1収容ケースの正面図である。
【図6】前記実施形態による第1収容ケースの縦断面図であり、図4のA−A矢視図である。
【図7】前記実施形態による第1収容ケースの縦断面図であり、図4のB−B矢視図である。
【図8】前記実施形態による第1収容ケースの斜視図である。
【図9】前記実施形態による保冷ケースを構成する第2収容ケースの平面図である。
【図10】前記実施形態による第2収容ケースの正面図である。
【図11】前記実施形態による第2収容ケースの下面図である。
【図12】前記実施形態による第2収容ケースの縦断面図であり、図11のA−A矢視図である。
【図13】前記実施形態による第2収容ケースの斜視図であり、第2収容ケースを下面から観ている。
【図14】前記実施形態による保冷ケースを構成する保冷箱の本体の平面図である。
【図15】前記実施形態による保冷箱の本体の縦断図であり、図14のA−A矢視図である。
【図16】前記実施形態による第1収容ケースがダンボール箱に搭載された状態を示す斜視図である。
【図17】図16の状態から更に第2収容ケースがダンボール箱に搭載された状態を示す斜視図である。
【図18】図17の状態から更に保冷箱の本体に複数の冷却パックが収容された状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
1 第1収容ケース
1a 凹部
2 第2収容ケース
2a 第1収容室
2b 第2収容室
10 保冷ケース
21 第1冷気流入路
21a 第1収容室の内壁
G 瓶
g1 胴部
g2 細首部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴部の上部に突出した細首部の上端に設けた開口が止栓されて液体薬品が内部に充填された複数の瓶を収容する保冷ケースであって、
前記瓶が載置されて当該胴部を高さ方向の途上まで収容する凹部を有する略直方体の第1収容ケースと、
この第1収容ケースの上面に密着するように載置する第2収容ケースであって、底面が開口されて前記胴部の上部が部分的に当接する内壁を設ける第1収容室、及びこの第1収容室に連通して前記細首部を包囲する第2収容室を有する略直方体の第2収容ケースと、備え、
前記第2収容ケースは、上面が開口されて冷気が流入可能な第1冷気流入路であって、前記第2収容室に貫通する第1冷気流入路を有する保冷ケース。
【請求項2】
前記第2収容ケースは、上面の中央部が開口されて冷気が流入可能な第2冷気流入路であって、当該上面から底面に貫通すると共に、当該底面から前記第1収容室に連通する溝を設ける第2冷気流入路を有する請求項1記載の保冷ケース。
【請求項3】
前記第2収容ケースに載置して、前記第1冷気流入路及び前記第2冷気流入路に冷気を送出する冷却材を収容する保冷箱を更に備える請求項2記載の保冷ケース。
【請求項4】
前記保冷箱は、上面が開口されて前記冷却材を収容する発泡材で成形される略直方体の本体、及びこの本体の開口を密閉する発泡材で成形される蓋体からなり、
前記本体は、前記第1冷気流入路に接続する第1冷気排出口と、前記第2冷気流入路に接続する第2冷気排出口と、を有し、
前記第1冷気排出口及び前記第2冷気排出口は、前記本体の底部に開口している請求項3記載の保冷ケース。
【請求項5】
前記冷却材は、冷却剤が袋詰めされた複数の冷却パックからなり、
前記本体は、これらの冷却パックの移動が困難な仕切り部材を有する請求項4記載の保冷ケース。
【請求項6】
前記第1収容ケース、前記第2収容ケース、及び前記保冷箱の順番に積層されて、ダンボール箱に箱詰めされる請求項3から5のいずれかに記載の保冷ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−60151(P2010−60151A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223558(P2008−223558)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】