説明

保冷容器

【課題】冷凍食品、冷蔵食品などの輸送において積み重ねて使用される上面開放型の折畳み可能な保冷容器であって、耐久性に優れ、長期に渡って高い断熱性能を維持し得る保冷容器を提供する。
【解決手段】保冷容器は、底板(1)の4辺部にそれぞれ側壁(2)を回動自在に取り付けて成り、組み立てた状態で容器を積み重ねた際に上段の容器の底板(1)下面が下段の容器の側壁(2)の上端部に嵌合する構造を備えている。そして、底板(1)下面の外周部には、下段の容器の側壁(2)の上端縁に当接するシール材が付設され、前記外周部の一部である底板(1)下面の各コーナー部には、積み重ねる際に下段の容器の上端縁に接触するシール材保護用の突起が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷容器に関するものであり、詳しくは、冷凍食品、冷蔵食品、生鮮食品などの輸送において多段に積み重ねて使用される上面開放型の折畳み可能な保冷容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品、冷蔵食品、生鮮食品などの定期的な宅配などにおいては、回収再使用するいわゆる通い容器としての保冷容器が使用されるが、容器回収時の輸送効率の観点から、折畳み構造の保冷容器も多く使用されている。
【0003】
上記の保冷容器としては、例えば、底板部材(底板)の4辺部に対し、蓋以外の4つの側板部材(側壁)を各々の下端側に設けられたヒンジによって連結することにより、各側板部材を内側に折畳み可能に構成された「折畳コンテナー」が提案されている。斯かる折畳みコンテナにおいて、底板部材および各側板部材は、断熱性および耐久性を高めるため、表層部だけが非発泡の発泡樹脂成形板で構成されている。
【特許文献1】特開2001−10635号公報
【0004】
また、折畳み構造の容器としては、底壁(底板)4辺部に対してそれぞれ側壁を起倒自在に連結し、対向する一対の側壁を底壁の上面に折り畳み、その上面に他の一対の側壁を折り畳む様にした上面開放型の「折り畳みコンテナ」が提案されている。斯かる上面開放型の折り畳みコンテナは、輸送の際、多段に積み重ねて使用できるため、取扱性に優れ、省スペース化を図ることが出来る。
【特許文献2】特開2002−332037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食品などの低温輸送においては、食品と共に、ドライアイスや再利用可能な蓄冷材を容器に収容するが、冷熱の損失を出来る限り少なくし、かつ、流通時における取扱性を向上させる観点からは、断熱性に優れた素材で構成された上面開放型の折畳み構造の保冷容器を使用するのが好ましい。
【0006】
ところで、上面開放型の容器は、通常、積み重ねる際に下段の容器の上端(各側壁の上端部)と上段の容器の底板との嵌合構造によって転倒を防止しているが、前記の嵌合構造部分においては、成形時の反り等による寸法誤差が生じていることもあり、積み重ねた状態において隙間が発生し易く、低温輸送に適用した場合、前記の隙間を通じて容器内の冷熱が漏出することがある。
【0007】
そこで、容器底板の外周部にシール材を配置して上記の隙間を封止することにより、容器内の空気の流出を低減し、冷熱の損失を防止する構造を検討した。しかしながら、容器同士を積み重ねる作業においては、容器の上端(側壁の上端縁)に上段の容器の底板の一部を引掛け、上段の容器を滑らせる様にして積み重ねるため、実際、使用を繰り返すうちに、容器の底板に取り付けたシール材が側壁の上端縁に摺接し、摩耗、損傷すると言う問題が生じる。その結果、断熱性能が著しく低下する。
【0008】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷凍食品、冷蔵食品、生鮮食品などの輸送において多段に積み重ねて使用される上面開放型の折畳み可能な保冷容器であって、耐久性に優れ、かつ、長期に渡って高い断熱性能を維持し得る保冷容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明においては、組み立てた状態で上段の容器の底板下面を下段の容器の側壁上端部に嵌合させて上下に積み重ね可能にし、しかも、容器を積み重ねた状態において、底板下面の外周部に付設したシール材を下段の容器の各側壁の上端縁に当接させて容器内からの冷気の漏出を防止する様にした。そして、容器を積み重ねる操作において、底板下面の各コーナー部に設けた突起を下段の容器の側壁の上端縁に接触させ、シール材の摺接を回避する様にした。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、平面形状が方形に形成された底板の4辺部にそれぞれ側壁を回動自在に取り付けて成り且つ前記底板および前記各側壁が非発泡樹脂の表層部と発泡樹脂の内層部とを有する樹脂成形体から構成された上面開放型の折畳み可能な保冷容器であって、組み立てた状態で容器を積み重ねた際に上段の容器の前記底板下面が下段の容器の前記側壁の上端部に嵌合する構造を備えており、前記底板下面の外周部には、組み立てた状態で容器を積み重ねた際に下段の容器の前記側壁の上端縁に当接するシール材が当該外周部に沿って付設され、かつ、前記外周部の一部である前記底板下面の各コーナー部には、前記外周部から下方へ突出する突起が設けられていることを特徴とする保冷容器に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保冷容器によれば、容器を積み重ねる際、上段の容器の底板下面の各コーナー部に設けた突起を下段の容器の側壁の上端縁に接触させ、上端縁に対するシール材の摺接を回避できるため、シール材の摩耗や損傷がなく、長期に渡って高い断熱性能を維持することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る保冷容器の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る保冷容器の一例の組み立てた状態の外観を示す斜視図である。図2は、図1の保冷容器の折畳み方法を示す斜視図である。図3は、図1の保冷容器の折り畳まれた状態を示す斜視図である。図4は、図1の保冷容器の底板の下面側の形状をを示す斜視図である。そして、図5は、図1の保冷容器において底板の下面に設けられたシール材およびシール材損傷防止用の突起を示す図であり、図4のV−V線に沿って視た部分的な縦断面図である。
【0013】
本発明の保冷容器は、主に、低温管理すべき食品、例えば、凍結食肉、凍結魚類、冷菓などの冷凍食品、ハム・ソーセージ、生鮮魚介類、各種総菜などの冷蔵食品、あるいは、野菜、果物などの生鮮食品を輸送する場合に使用され、かつ、使用する際は多段に積み重ねることが出来る断熱性に優れた上面開放型の折畳み可能な保冷容器である。斯かる保冷容器は、図1〜図4に示す様に、平面形状が方形(例えば略長方形)に形成された底板(1)の4辺部に蝶番または軸部材(図示省略)によってそれぞれ側壁(2)を回動自在に取り付けて構成される。
【0014】
本発明の保冷容器は、輸送や保管中の取扱に対する所定の耐久性能と断熱性能を備えている必要があり、しかも、より軽量であることが好ましい。そこで、底板(1)および各側壁(2)は、非発泡樹脂の表層部と発泡樹脂の内層部とを有する樹脂成形体から構成される。すなわち、上記の保冷容器において、それぞれ成形体である底板(1)及び各側壁(2)の各表面は非発泡樹脂で構成され、そして、底板(1)及び各側壁(2)の各内部は発泡樹脂で構成される。
【0015】
上記の成形体の表層部及び内層部を構成する樹脂としては、各種ポリオレフィンが挙げられる。具体的には、ポリエチレン若しくは密度の異なるポリエチレンのブレンド物、または、ポリプロピレン、ポリプロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体もしくはブロック共重合体、あるいは、これらのブレンド物、ポリエチレンとポリプロピレンの各種のブレンド物などが挙げられる。中でも、製造時に成形体の表層部と内層部をより一体化するため、表層部と内層部を構成する各ポリオレフィンの成分の20%以上が同一成分(ポリエチレン成分またはポリプロピレン成分)であるものが好ましい。
【0016】
成分の20%以上が同一のポリオレフィンによって構成された成形体としては、例えば、ポリピロピレンによって内層部が構成され、ポリエチレンを20%以上含むポリエチレンとポリプロピレンのブレンド物によって表層部が構成されたものを挙げることが出来る。特に、表層部及び内層部がポリエチレンによって構成された成形体は、軽量で且つ成形性、耐低温特性に優れている。本発明の保冷容器は、例えば食品輸送に適用する場合、通常、内容積を10〜25リットル程度とされる。そして、底板(1)及び側壁(3)の各厚さは10〜40mmに設定され、表層部の厚さは0.5〜2.5mmに設定される。
【0017】
本発明の保冷容器は、各種の成形方法によって製造することが出来るが、例えば、内層部を構成する板状の発泡成形体を予め作製した後、斯かる発泡成形体を分割金型の間に配置し、次いで、表層部を構成する樹脂を発泡成形体の両表面と金型成形面との間にシート状に押し出して型締することにより、例えば蝶番構成部分を含む底板(1)及び側壁(3)をそれぞれ作製し、そして、これら底板(1)及び側壁(3)を連結することにより製造される。
【0018】
本発明の保冷容器の具体的な構造は以下の通りである。すなわち、保冷容器において、底板(1)は、図1及び図4に示す様に、例えば平面形状を長方形に形成され、その短手方向の1組の平行な2辺部には、図1に示す様に、表側に取手部(3)が設けられた1組の側壁(2a)が相対向して蝶番(図示省略)により回動自在に取り付けられる。蝶番は、底板(1)の上記の2辺部に形成された蝶番構成部と、側壁(2a)の下端内縁側に形成された他方の蝶番構成部とにより構成される。これにより、1組の側壁(2a)は、図2に示す様に内側に折り畳むことが出来る。
【0019】
一方、図1及び図2に示す様に、底板(1)の長手方向の他の1組の平行な2辺部は、側壁(2a)の略厚さ分だけ上方に立ち上げられた立上り部分を備えている。そして、斯かるた立上り部分には、他の1組の側壁(2b)が相対向して蝶番(図示省略)により回動自在に取り付けられる。蝶番は、底板(1)の立ち上げられた他の1組の2辺部の内縁に形成された蝶番構成部と、側壁(2b)の下端内縁側に形成された他方の蝶番構成部とにより構成される。これにより、他の1組の側壁(2b)は、図3に示す様に、先に折り畳まれた側壁(2a)の上面側に被せる状態で内側に折り畳むことが出来る。なお、図1及び図2に示す様に、組み立てた状態における側壁(2b)の左右の端部には、隣接する側壁(2a)側に僅かに張り出す張出部(27)が設けられる。
【0020】
また、図1及び図2に示す様に、上記の1組の側壁(2b)の各内面側の左右の側端部の上部には、容器を組み立てる際に側壁(2a)を掛止するストッパー(6)が設けられる。ストッパー(6)は、側壁(2b)の内側表面に常時突出した状態に形成された舌片状の弾性変形部であり、壁面の幅方向の中央から外側に向かうに従い容器内側への突出量が漸次大きくなる様に構成される。しかも、ストッパー(6)は、側壁(2b)の左右の側端から側壁(2a)の厚さに略相当する距離だけ壁の中央側にずれた位置に配置される。
【0021】
本発明の保冷容器を組み立てる場合は、図3に示す様な折り畳んだ状態から長手方向の1組の側壁(2b)をその厚さ部分が底板(1)の縁部に突き当たって当該底板に直交する角度までそれぞれに引き起こし、次いで、図2に示す様に、短手方向の1組の側壁(2a)を上記の張出部(27)に突き当たるまでそれぞれに引き起こす。その際、ストッパー(6)は、側壁(2a)に押圧されて壁面に没入し、側壁(2a)が引き起こされた後に再び突出して側壁(2a)の内側(倒れる方向)への回動を規制する。従って、各側壁(2a)の引起し操作により、図1に示す様な容器に組み立てることが出来る。
【0022】
なお、図示しないが、本発明の保冷容器においては、底板(1)の平面形状が正方形であってもよい。更に、側壁(2a)、(2b)は、肉薄のヒンジによって底板(1)に取り付けられてもよい。その場合も、底板(1)の互いに隣接する各辺に対応するヒンジの位置が側壁(2a)の厚さ分だけ上下にずれていることにより、1組の側壁(2a)を折り畳んだ後に他の1組の側壁(2b)を被せる状態に折り畳むことが出来る。また、組み立てた場合の側壁(2a)及び(2b)の固定手段としては、ストッパー(6)の他に、例えば、組み立てた状態において側壁(2a)及び(2b)の上端角部に設けられた各種の掛止め具が挙げられる。
【0023】
本発明の保冷容器は、上下に複数段積み重ねて使用するため、組み立てた状態で容器を積み重ねた際に上段の容器の底板(1)の下面が下段の容器の側壁(2a)、(2b)の上端部に嵌合する構造を備えている。具体的には、図1に示す様に、組み立てた状態における各側壁(2)の上端縁は、その長さ方向の稜線部(21)の内側に落込み部(22)が設けられた2段構造を備えている。すなわち、各側壁(2a)の上端縁には、その長さ方向に沿って、高さの最も高い稜線部(21)と、当該稜線部よりも低い高さの落込み部(22)とが設けられている。また、図4に示す様に、底板(1)の下面は、底面視した場合に外周部(11)が後退して方形の膨出面(12)が形成された2段構造を備えている。すなわち、底板(1)の下面は、所定の幅の外周部(11)と、当該外周部よりも更に下方へ突き出した膨出面(12)とから形成される。
【0024】
本発明の保冷容器は、組み立てた状態で上下に積み重ねた際、上段の容器の底板(1)下面の膨出面(12)が下段の容器の側壁(2)の落込み部(22)に嵌合する様に構成されており、斯かる嵌合構造により、安定して多段に積み重ねることが出来る。側壁(2)上端の落込み部(22)の深さ及び底板(1)下面の膨出面(12)の突き出し量、すなわち、落込み部(22)に対する膨出面(12)の嵌合深さは、通常、5〜20mm程度である。また、図1及び図2に示す様に、組み立てた状態における各側壁(2b)の上端縁の端部には、後述する突起(9)(図4参照)が嵌合する様に、稜線部(21)よりも低い凹部(4)が形成されている。
【0025】
なお、本発明において、容器を積み重ねた際の上段の容器の底板(1)と下段の容器の側壁(2a)、(2b)の上端部との嵌合構造としては、例えば、容器を組み立てた状態において、上段の容器の底板(1)下面の前述の膨出面(12)が下段の容器の側壁(2a)、(2b)の内側に嵌り込む構造であってもよい。
【0026】
更に、図3に示す様に、本発明の保冷容器においては、折り畳んだ状態で複数積み重ね得る様に、折り畳んだ際に上面側に位置する各側壁(2b)には、突出部(24)及び(25)が帯状に設けられる。突出部(24)は、組み立てた状態(図1の状態)において側壁(2b)の表側の左右の端部に沿って設けられ、突出部(25)は、組み立てた状態において側壁(2b)の表側の下端部に沿って設けられる。そして、図3に示す様に、各側壁(2b)を折り畳んだ状態においては、突出部(24)及び(25)の内側の領域が高さの低い後退面(26)を形成している。
【0027】
また、各側壁(2b)を折り畳んだ状態における上面側の四隅、すなわち、組み立てた状態における各側壁(2b)表側の下端側の両角部には、突出部(24)と突出部(25)の各端部を離間させた構造で且つ底板(1)下面の後述する突起(9)(図4参照))が係合する隙間が設けられる。更に、上記の隙間の部位には、突起(9)と係合する凹部(5)が設けられてもよい。
【0028】
本発明の保冷容器は、折り畳んだ状態で積み重ねた場合、上段の容器の底板(1)下面の膨出面(12)が下段の容器の上面側の後退面(26)に嵌合する様に構成されており、斯かる嵌合構造により、空状態で運搬、保管する場合に安定して多段に積み重ねることが出来、省スペース化を図ることが出来る。なお、突出部(24)及び(25)の突出高さ、換言すれば、突出部(24)及び(25)からの後退面(26)の深さは、前述の膨出面(12)の嵌合深さとされる。
【0029】
本発明においては、保冷効果を高めるため、図4に示す様に、底板(1)下面の外周部(11)には、組み立てた状態で容器を積み重ねた際に下段の容器の側壁(2)の上端縁に当接するシール材(8)が外周部(11)の長さ方向(4辺部の各長さ方向)に沿って付設される。シール材(8)は、冷蔵品などを収容して容器を積み重ねた際、下段側の容器の側壁(2)の稜線部(21)と接触し、上段側と下段側の各容器の隙間から冷気が漏れるのを防止する機能を有する。シール材(8)は、紐状の成形体から成り、その長さ方向に直交する断面形状は、適宜の形状に設計できるが、側壁(2)の上端縁に対する密着性を高め且つ弾性を維持するため、例えば図5に示す様に、先端側(容器を積み重ねた状態における下方側)に向かうに従い幅が漸次狭くなる山形状または半楕円形状に形成される。
【0030】
上記のシール材(8)の構成材料としては、ニトリルゴム、ブチルゴム、水素化ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等のゴム類(その水素添加物を含む。)、ゴム類の発泡体およびフッ素樹脂などが挙げられる。
【0031】
シール材(8)は、上記の様な弾性材料によって成形され、そして、図5に示す様に、底板(1)の外周部(11)に形成された溝(11c)に先端部を露出させた状態で埋め込まれる。その場合、シール材(8)は、溝(11c)に対し、当該シール材の高さの50〜80%に相当する部分が底板(1)の埋め込まれる。具体的には、図5に示す様に断面視した場合、通常、シール材(8)の高さ(H)は3〜12mm程度、幅(W)は2〜8mm程度であり、外周部(11)に対するシール材(8)の埋込み深さ(h)(溝(11c)の深さ)は1.5〜10mm、外周部(11)表面へのシール材(8)の突出量(=H−h)は0.5〜3mmとされる。
【0032】
シール材(8)の埋込み量を規定する理由は次の通りである。すなわち、シール材(8)の埋込み深さ(h)が当該シール材の高さ(H)の80%よりも大きい場合には、変形代が小さくなるため、側壁(2)の上端縁である稜線部(21)に対する密着性が不足する虞がある。これに対し、上記の埋込み深さ(h)がシール材(8)の高さ(H)の50%よりも小さい場合には、シール材(8)の突出量(=H−h)が大きくなり、後述するシール材保護用の突起(9)の高さが高くなり過ぎるため、肉厚および剛性不足による変形が発生し易くなり、また、外部の力が加えられた場合に損傷し易くなる。
【0033】
更に、本発明においては、上記のシール材(8)の損傷を防止するため、図4に示す様に、外周部(11)の一部である底板(1)下面の各コーナー部には、外周部(11)から下方へ突出するシール材保護用の突起(9)が設けられる。上記の突起(9)は、上段側の容器を横方向からずらす様にして積み重ねる際、下段側の容器の側壁(2)の稜線部(21)に当接し、斯かる稜線部(21)に上段側容器のシール材(8)が直接接触するのを規制する。従って、突起(9)は、図4及び図5に示す様に、シール材(8)よりも更に下方(底面視した場合は上方)へ突出しているのが好ましい。
【0034】
突起(9)は、底板(1)のコーナー部において突出している必要があるが、その形状は特に限定されるものではない。突起(9)の平面形状(底面視した場合の形状)は、円や各種多角形に形成でき、図に例示した突起(9)は、幾分扁平な三角柱状に形成されたものである。底面視した場合の突起(9)の外周部(11)からの突出高さ、すなわち、図5において突起(9)の外周部(11)表面からの高さは、シール材(8)の突出量(=H−h)よりも大きく設計される。具体的には、突起(9)の上記の高さは、通常0.6〜5mm、好ましくは1〜3.5mmとされる。
【0035】
本発明の保冷容器は、前述の様に、組み立てた状態において、上段の容器の底板(1)の下面が下段の容器の側壁(2a)、(2b)の上端部に嵌合する構造を備えている。図に例示する様に、各側壁(2)の上端縁が稜線部(21)の内側に落込み部(22)を設けた2段構造に構成され、底板(1)の下面が外周部(11)の内側に方形の膨出面(12)を設けた2段構造に構成されている。これにより、上段の容器の膨出面(12)を下段の容器の側壁(2)の落込み部(22)に嵌合させて上下に積み重ねることが出来る。
【0036】
容器を積み重ねる作業においては、通常、下段側の容器の上端部、換言すれば、側壁(2)の上端縁に上段側の容器をその底板(1)下面の一部が引っ掛かった状態に載せ、上段側の容器を横方向から滑らせる様にして積み重ねる。その際、上段の容器の底板(1)の膨出面(12)が下段の容器の側壁(2)の落込み部(22)に嵌合し得る位置では、底板(1)下面のコーナー部に設けられた突起(9)が下段側の容器の側壁(2)の稜線部(21)に接触する。すなわち、底板(1)下面に設けられた突起(9)は、下段側の容器の側壁(2)の稜線部(21)に当接し、斯かる稜線部(21)に上段側容器のシール材(8)が直接接触するのを規制する。従って、上下に容器を積み重ねる作業においてシール材(8)が擦れることがない。
【0037】
容器を積み重ねた状態においては、突起(9)が側壁(2)上端の凹部(4)に嵌合し、底板(1)下面の外周部(11)に付設したシール材(8)が下段の容器の各側壁(2)の稜線部(21)に当接するため、上下の容器の間の隙間を封止することが出来、容器内からの冷気の流出を防止することが出来る。
【0038】
上記の様に、本発明の保冷容器によれば、上下に容器を積み重ねる際、上段の容器の底板(1)下面の突起(9)を下段の容器の側壁(2)の稜線部(21)(側壁(2)の上端縁)に接触させ、稜線部(21)に対するシール材(8)の摺接を回避できるため、シール材(8)の摩耗や損傷がなく、長期に渡って高い断熱性能を維持することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る保冷容器の一例の組み立てた状態の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の保冷容器の折畳み方法を示す斜視図である。
【図3】図1の保冷容器の折り畳まれた状態を示す斜視図である。
【図4】図1の保冷容器の底板の下面側の形状をを示す斜視図である。
【図5】図1の保冷容器において底板の下面に設けられたシール材およびシール材保護用の突起を示す図であり、図4のV−V線に沿って視た部分的な縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 :底板
11:底板下面の外周部
11c:溝
12:底板下面の膨出面
2 :側壁
21:稜線部
22:落込み部
27:張出部
4 :凹部
6 :ストッパー
8 :シール材
9 :突起
H :シール材の高さ
h :シール材の埋込み深さ
W :シール材の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状が方形に形成された底板の4辺部にそれぞれ側壁を回動自在に取り付けて成り且つ前記底板および前記各側壁が非発泡樹脂の表層部と発泡樹脂の内層部とを有する樹脂成形体から構成された上面開放型の折畳み可能な保冷容器であって、組み立てた状態で容器を積み重ねた際に上段の容器の前記底板下面が下段の容器の前記側壁の上端部に嵌合する構造を備えており、前記底板下面の外周部には、組み立てた状態で容器を積み重ねた際に下段の容器の前記側壁の上端縁に当接するシール材が当該外周部に沿って付設され、かつ、前記外周部の一部である前記底板下面の各コーナー部には、前記外周部から下方へ突出する突起が設けられていることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
突起がシール材よりも突出している請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
シール材は、底板の外周部に形成された溝に埋め込まれている請求項1又は2に記載の保冷容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−285185(P2008−285185A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130705(P2007−130705)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】