説明

保冷容器

【課題】果菜類を収納し蓋体を被せて、一側壁が底になるように立てた状態で、傾きを生じさせずに安定性よく積み重ねることができる保冷容器を提供する。
【解決手段】発泡樹脂製の容器本体10と蓋体30とからなり、容器本体10には、一側壁12aを底にして横向きに立てた状態において上下に対向する両側壁12a,12bの外側面の一部に、それぞれ対応位置において容器底面に対し垂直面をなして互いに平行な少なくとも一対の容器積み重ね時の当接用フラット面17a,17bを形成し、容器積み重ね時にフラット面17a,17b同士を当接させて垂直に積み重ね得るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として各種の果菜類を収容して保管又は輸送するのに好適な保冷容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、アスパラガス等のやや長い果菜類の保管及び輸送に際しては、断熱性のある発泡樹脂製の保冷容器が使用され、通常、前記果菜類は形状維持等の理由から上下方向を揃えて立てた状態で収容されていた。例えば、アスパラガスは、容器への収納後の輸送中においても僅かに成長することから、穂先の側を上にして立てた状態を保持するようにして取り扱われる。
【0003】
前記のように、果菜類を立てた状態で容器内に順次収納するのは、収納作業に手数が掛かり、かつ果菜類同士が擦れたりして傷みが生じる等の問題がある。そのため、アスパラガス等の果菜類を、一旦横方向で揃えて容器内に収納し蓋体を被着した後、該果菜類の基部側の側壁が底になるように横向きにして立てた状態で、保管や輸送に供するようにした保冷容器が提案されている(特許文献1)。
【0004】
ところで、容器内に果菜類を収納した状態での保管や輸送の際には、前記のように容器を横向きにして立てた状態で、パレット上等に複数段に積み重ねて取り扱われるが、発泡樹脂製の容器は、通常、側壁外側面が容器底面に対し垂直面をなすのでなく、成型上の抜き勾配による傾斜面をなしているために、上下容器の側壁外側面同士を合わせるようにして同方向に積み重ねると、積み重ねた容器に傾きが生じ、その傾きは上段の容器ほど大きくなって、積み重ね状態が不安定になり、運搬等の物流作業や輸送中に積み重ねた容器が倒れたり、崩れ落ちたりする虞がある。また、上下容器の側壁外側面同士を単に合わせるようにして積み重ねただけでは、上下容器間の位置ずれも生じ易く、その結果、積み重ね状態が不安定になる虞がある。
【0005】
なお、発泡樹脂製の容器の成型において、側壁の外側面全体に抜き勾配をつけずに成型することも可能であるが、その場合、成型後の型抜きに時間がかかり、量産性に乏しく、コスト高になるので、通常一般には、例えば1/50〜1/100の抜き勾配がつけられている。そのため、前記の問題が生じる結果になっている。
【0006】
さらに、アスパラガス等の果菜類を保冷容器に収納して出荷する場合、春先は予冷せずに、夏季等には蓋体を被着した状態で真空予冷を行って出荷する。そのため、予冷しない春先の出荷においては、アスパラガス等の果菜類より生じる熱が容器内部に籠もらないように通気部を必要とし、また、夏季等の予冷して出荷するときは、冷却した熱を逃がさないように通気部を閉じた状態にしてある程度の密封性を確保することが望まれる。
【特許文献1】特開2002−104542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになしたものであり、その目的は、果菜類を収納して蓋体を被着した後、一側壁が底になるように横向きにして立てた状態で積み重ねて取り扱う場合に、部分的に設けたフラット面により傾きを生じさせずに安定性よく積み重ねることができて、輸送物理作業時の倒れや荷崩れを抑制できる保冷容器を提供するところにある。また、本発明は、前記の保冷容器において、容器成型に支障が生じない形態で、積み重ね時のずれ防止の機能を付与することで、さらに安定性のよい積み重ね状態を保持でき、輸送物流作業時の荷崩れ防止の効果をさらに向上できる保冷容器を提供する。さらには、予冷しない春先等の出荷、あるいは夏季その他の予冷して出荷する場合等の使用の態様に応じて、通気用切欠溝を蓋体の被着操作で簡単に開閉でき、予冷後の密封性を良好に保持できる保冷容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上方に開口する平面矩形の発泡樹脂製の容器本体と、該容器本体の開口部に被着自在な発泡樹脂製の蓋体とからなり、果菜類を収納して蓋体を被着した後、一側壁が底になるように横向きにして立てた状態で保管や輸送に供する保冷容器であって、前記容器本体には、前記立てた状態において上下に対向する両側壁の外側面の一部に、それぞれ対応位置において容器底面に対し垂直面をなして互いに平行をなす少なくとも一対の容器積み重ね時の当接用フラット面が形成され、容器積み重ね時に前記フラット面同士が当接して垂直に積み重ね得るように設けられてなることを特徴とする。
【0009】
前記構成の保冷容器によれば、アスパラガス等の果菜類を収納して蓋体を被着した後、横向きに立てた状態で複数段に積み重ねる際、上下容器の対向する側壁の外側面に成型上の問題が生じないように部分的に設けた前記当接用フラット面同士を当接させて積み重ねることにより、傾きを殆ど生じさせずに安定性よく積み重ねることができ、輸送物流作業時の倒れや荷崩れを抑制でき、作業性を向上できる。
【0010】
前記の保冷容器において、前記対向する両側壁のそれぞれの当接用フラット面が、各側壁両側のコーナー部に沿って両側に間隔をおいて設けられてなるものとすることができる。これにより、前記側壁外側面の両側に有するフラット面同士を突き合わせるようにして、各保冷容器を安定性よく積み重ねることができる。
【0011】
また、前記の保冷容器において、前記対向する両側壁の当接用フラット面は、一方の側壁の当接用フラット面がコーナー部外側面に対して凹、他方の側壁の当接用フラット面が凸をなすように形成されてなるものが好ましい。この場合、前記のように複数段に積み重ねた場合に、上下容器の前記フラット面同士の当接部が一方の容器のコーナー部の内側にあって、左右方向の位置ずれが規制されることになり、積み重ね状態がさらに安定する。
【0012】
前記の保冷容器において、前記対向する両側壁のコーナー部外側面が、容器底面に対して垂直面をなしているのが好ましい。この場合、容器積み重ね時に該コーナー部外側面同士も当接するものであれば、各保冷容器の積み重ね状態がさらに安定する上、最下段の保冷容器の底にした側壁に有する当接用フラット面がコーナー部外側面に対して凹となっているものであっても、該最下段の保冷容器を、床面あるいはパレット面に対して横向きにして垂直に立てることができ、安定性のよい積み重ね状態を得ることができる。
【0013】
前記の保冷容器において、前記対向する両側壁の外側面には、容器積み重ね時に互いに嵌合する凸部と凹部が、前記当接用フラット面とは別に、成型上のパーティングライン近くに形成されてなるものとすることができる。
【0014】
この場合、積み重ね時の当接用フラット面同士の当接により傾きを生じさせずに積み重ねることができるのに加え、前記凹部と凸部の嵌合により上下容器を位置決めできて、各保冷容器を揃えて積み重ねることができ、かつ積み重ね状態でのずれ動きも抑制でき、輸送中の振動等によっても位置ずれしたり、ずれ落ちたりすることのない安定性のよい積み重ね状態を保持できる。しかも、前記凹部と凸部が成型上のパーティングライン近くに設定されているため、成型上のアンダーカット形状を用いずに容易に成型できる。
【0015】
前記の保冷容器において、前記容器本体の側壁上端の開口端部とこれに対応する蓋体の周縁部とに、互いに嵌合する嵌合部が設けられてなるものが好ましい。これにより、蓋体の被着状態を良好に保持でき、予冷後の容器内部の保冷状態の維持、内容物の保護を良好になすことができる。
【0016】
前記の保冷容器において、前記容器本体の開口端部の各辺部の中央部に切欠き部が形成されるとともに、これに対応する蓋体の周縁部各辺部下面の中央部に前記切欠き部に嵌合する垂下片が設けられ、前記切欠き部の端縁部分と前記垂下片の端縁部分とが、相欠き形状の凸縁と段部とにより嵌合可能に設けられてなる。この場合、果菜類を収納した容器本体を予冷室において予冷する際に、容器本体をずらせたりせずに切欠き部から冷気を取り込むことができる。しかも、容器本体に前記蓋体を被着することにより、密封性を良好に保持できる。
【0017】
前記容器本体の前記当接用フラット面を有する両側壁と交差する方向で対向する両側壁の切欠き部の端縁部分と、これに対応する前記蓋体の両辺部の垂下片の端縁部分とには、それぞれ幅方向センターから同じ側にずれた位置の前記相欠き形状の凸縁の個所に、前記蓋体の通常の被着状態において互いに合致し、かつ180°方向転換した被着状態において相互にずれた位置になるように通気用切欠溝が形成されてなるものとすることができる。
【0018】
この場合、例えば予冷しない春先の出荷の際は、前記蓋体を通常の被着状態にして、前記容器本体の切欠き部の端縁部分の凸縁に有する通気用切欠溝と、蓋体の垂下片の端縁部分の凸縁に有する通気用切欠溝を合致させて開口させておくことにより、該切欠溝を通じて通気性を確保でき、そのため、アスパラガス等の果菜類より生じる熱が容器内部に籠もることがない。また、夏季等の予冷して出荷する際は、前記蓋体を180°方向転換して被着し、前記容器本体と蓋体の前記通気用切欠溝を相互にずれた位置にしておくことにより、他方の相欠き形状の凸縁により閉塞でき良好な密封性を確保でき、容器内部の冷気を逃がすことがない。
【発明の効果】
【0019】
上記したように本発明の保冷容器は、アスパラガス等の果菜類を収納して蓋体を被着した後、一側壁が底になるように横向きにして立てた状態で積み重ねて取り扱う場合に、成型上の問題が生じないように部分的に設けたフラット面により傾きを生じさせずに安定性よく積み重ねることができて、輸送物理作業中の倒れや荷崩れを抑制できる。また、容器本体の成型時のパーティングライン近くに設けた凹部と凸部の嵌合により、容器成型に支障が生じない形態で位置決めできて、かつ位置ずれを防止でき、さらに安定性のよい積み重ね状態を保持でき、輸送物流作業時の荷崩れ防止の効果をさらに向上できる。
【0020】
さらには、本発明の保冷容器は、春先等に予冷しないで出荷する場合、及び夏季等の予冷して出荷する場合等の使用の態様に応じて、通気用切欠溝を蓋体の被着操作で簡単に開閉でき、予冷後の密封性を良好に保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明の実施例の保冷容器の容器本体と蓋体の斜視図、図2は同上の容器本体の他方向からの斜視図、図3は容器本体と蓋体の縦断正面図、図4は同上の半部縦断側面図、図5は蓋体を被着した正面図、図6は同蓋体被着状態のコーナー部の嵌合部の拡大断面図、図7は同蓋体被着状態の通気用切欠溝部分の拡大断面図、図8は同上の通気用切欠溝をずらせた蓋体被着状態の一部の断面図である。図9は果菜類を収納して横向きにして立てた状態の斜視図、図10は同上の断面図、図11は積み重ね状態の断面図、図12は積み重ね状態の一部の拡大断面図である。
【0023】
この実施例の保冷容器Aは、発泡樹脂製の成型容器であって、図に示すように、基本的に上方に開口する平面略矩形の容器本体10と、該容器本体10の開口端部11に対し嵌合被着される蓋体30とよりなる。この保冷容器Aは、前記容器本体10の開口を上方に向けた状態で、内部に果菜類B例えばアスパラガスを揃えて収納した後、蓋体30を被着し、前記果菜類Bの基部側になる前記容器本体10の一側壁12aが底になるように横向きにして立てた状態で、保管や輸送に供することができるようになっている。
【0024】
図中の符号12bは、前記のように立てた状態において前記一側壁12aと上下に対向する側壁を示し、符号13a、13bは前記両側壁12a,12bと交差する他方向で対向する両側壁を示している。符号14は容器本体10の各側壁が連続する四つのコーナー部を示している。
【0025】
図示する実施例の場合、前記容器本体10の内部には、底部15に横向きに寝かせて収納される果菜類Bの支えの役目をする凸部16が設けられている。果菜類の支えとしては、図示していないが、収納される果菜類の種類に応じた任意の形状にして実施できる。例えば、果菜類がアスパラガスの場合、アスパラガスの茎部の下部を受ける側ほど低く傾斜した形状の支えにして、横向きに立てた状態においてアスパラガスを立ち姿勢に良好に保持できるようにすることができる。
【0026】
そして、前記容器本体10には、前記のように横向きに立てた状態において上下に対向する両側壁12a,12bの外側面の一部の領域に、それぞれ互いの対応位置、すなわち両側壁12a,12b間のセンターを通る中心線に関して対称の位置において、成型上の抜き勾配をつけずに容器底面(容器本体10の底面)に対し垂直面をなしてかつ互いに平行をなす少なくとも一対の容器積み重ね時の当接用フラット面17a,17bが、抜き勾配のついた本来の側壁外面部分19に対して凸をなすように増肉されて形成されており、容器積み重ね時に上下容器の前記フラット面17a,17b同士が当接して容器底面が直線状に並列して垂直に積み重ね得るようになっている。
【0027】
図の場合、前記当接用フラット面17a,17bは、対向する両側壁12a,12bの両側のコーナー部14に沿って両側に間隔をおいて設けられており、成型上の抜き勾配の付けていない部分を少なくして、成型上の型抜き等の問題が生じないように形成されている。特に、前記両側壁12a,12bの当接用フラット面17a,17bは、いずれか一方側、例えば、図のように横向きに立てた状態において下側になる側壁12aの当接用フラット面17aがコーナー部14の外側面14aに対して凹、他方の側壁12bの当接用フラット面17bが前記コーナー部14の外側面14aに対して凸をなすように形成されており、積み重ね状態において左右のずれを規制して位置決め機能を果たすように形成されている(図12参照)。
【0028】
前記容器本体10の対向する両側壁12a,12bの外側面において、各コーナー部14の外側面14aについても、容器底面つまり容器本体10の底面に対して垂直面で成型上の抜き勾配を付けていないフラット面として形成され、容器積み重ね時には上下容器の前記当接用フラット面17a,17b同士が当接するときに、該コーナー部外側面14a,14a同士も同時に当接するように形成されており、一層安定した積み重ね状態を得ることができるようになっている。このため、前記当接用フラット面17a,17b及び前記コーナー部外側面14aの前記側壁外面部分19に対する高さが、前記のように同時に当接するように設定されている。また、前記のようにコーナー部14の外側面14aがフラット面をなすことにより、横向きに立てた状態において下側になる側壁12aの当接用フラット面17aがコーナー部外側面14aに対して凹をなすものであっても、最下層の容器本体10を床面等に対し垂直に横向きに立てることができ、安定性よく積み重ねることができる。
【0029】
さらに、前記対向する両側壁12a,12bの外側面には、少なくとも一個所の互いの対応位置に、容器積み重ね時に互いに嵌合する位置決め用の凸部18aと凹部18bとが成型時にアンダーカットの形にならないように形成されている。すなわち、容器本体10の成型においては、通常、開口端部11の側に成型上のパーティングラインが設定されることから、該パーティングラインが存する前記開口端部11に近い個所において、前記凸部18aと凹部18bとが、それぞれ成型上のアンダーカットの形にならないように設けられている。
【0030】
前記容器本体10と蓋体30とは、前記容器本体10の側壁上端の開口端部11とこれに対応する蓋体30の周縁部31とに、互いに嵌合する嵌合部が設けられている。この嵌合部としては、例えば、容器本体の開口端部と、これに対応する蓋体の周縁部とに、全周にわたって連続する凸縁と切欠段部とによる相欠き形状の嵌合部を設けておく等、横向きに立てた状態においても被着状態が外れないような種々の嵌合構造による実施が可能である。
【0031】
図示する実施例の場合は、前記容器本体10の各コーナー部14の上面に平面L形の嵌合凸部22が形成されるとともに、蓋体30の各コーナー部34の下面には、前記嵌合凸部22に嵌合する嵌合凹部32が設けられている。前記嵌合凸部22の側面と前記嵌合凹部32の内側面には、嵌合状態において互いに係合する凸部22a、32aが設けられており、嵌合操作時には発泡体の弾性力に抗して弾力的に嵌合できて、かつ嵌合状態においては横向きに立てた状態でも妄りに抜脱しないようになっている。
【0032】
また、前記容器本体10の開口端部11の各辺部の中央部に切欠き部25が形成されるとともに、これに対応する蓋体30の周縁部31の各辺部の下面中央部に前記切欠き部25に嵌合する垂下片35が設けられており、さらに前記切欠き部25の端縁部分と前記垂下片35の端縁部分とが、相欠き形状の凸縁26,36と段部27,37とにより嵌合可能に設けられている。これにより、果菜類を収納した容器本体10を積み重ねて予冷する際には、各容器本体10をずらせたりせずに切欠き部25から冷気を取り込むことができ、かつ、蓋体30を被着した状態においては、両者の前記凸縁26,36と前記段部37,27とが相互に嵌合して密封できるようになっている。図の場合、前記凸縁26,36の嵌合状態での接合面側には、相互に抜脱方向に係合する凸部26a,36aが設けられており、これにより嵌合状態を良好に保持できるようになっている。
【0033】
前記容器本体10の前記当接用フラット面17a,17bを有する両側壁12a,12bと交差する方向の両側壁13a,13bの切欠き部25の端縁部分と、これに対応する前記蓋体30の両辺部の垂下片35の端縁部分とには、それぞれ幅方向センターから同じ側にずれて平面において線対称となる位置の前記相欠き形状の凸縁26,36の個所に、蓋体30の通常の被着状態においては互いに合致し、かつ180°方向転換した被着状態においては相互にずれた位置になるように通気用切欠溝28,38が形成されている。すなわち、使用の態様において、前記容器本体10の前記切欠溝28と蓋体30の前記切欠溝38とを合致させて通気可能に開口させた状態と、双方の前記切欠溝28,38の位置をずらせて相互に他方の凸縁36,26で閉塞した状態とを選択して使用できるようになっている。
【0034】
前記通気用切欠溝28,38は、それぞれ前記端縁部分の段部27,37に対して凸縁26,36の基部を残すように数mmの段差をつけて形成しておくのが好ましい。すなわち、前記のように段差をつけて形成しておくことにより、前記切欠溝28,38の位置をずらせて蓋体30を容器本体10に被着した状態において、蓋体30に少々の浮きが生じた場合にも、前記切欠溝28,38の部分を閉塞状態に保持できることになり、密封性を良好に確保できる。
【0035】
図中の符号29は容器本体10の底部15の下面に設けた横向きに立てた状態での手掛け部であり、符号23は容器本体10の各コーナー部14の上端部に設けた開蓋操作用の切欠部である。符号39は蓋体30の上面に設けた手掛け部である。また、前記容器本体10の底面及び蓋体30の上面には、それぞれ収納する果菜類Bの縦方向を示す矢印が設けられている。
【0036】
なお、前記容器本体10の横向きに立てた状態において下側になる前記一側壁12aの内面には、必要に応じて、前記のように横向きに立てた状態において収納された果菜類が当接する凸状面を有する凹凸形状(図示省略)に形成され、さらに果菜類から発生する水分の排出用の流通部(図示せず)が蓋体との嵌合部や接合面部分に設けられる。
【0037】
前記容器本体10及び蓋体30の構成材である発泡樹脂としては、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種合成樹脂の発泡体を用いることができる。中でも、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡による成型体が好適に用いられる。スチレン改質ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させて得られるものであり、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の中でも、スチレン改質ポリエチレン樹脂が好ましく、例えば、スチレン成分の割合は40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは55〜75重量%のものが用いられる。また、前記発泡体の発泡倍率は10〜70倍が好ましい。
【0038】
スチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡体の成型品は、同じ発泡倍率のポリプロピレン系樹脂ビーズの成型品に比べて強度があり、また、深さが500mmを越える容器を成型した場合の収縮率が低く寸法精度もよい。さらに、スチレン系樹脂ビーズの発泡成型品に比べて擦れによる粉が出難い長所もある。前記発泡樹脂の表面に非発泡樹脂の表皮層を設ける場合もある。
【0039】
上記した本発明の実施例の保冷容器Aによれば、上向きに開口している容器本体10内に、アスパラガス等の果菜類Bを、上下方向を揃えて、例えばアスパラガスの場合は穂先の側を揃えて一旦横方向にして収納する。こうして蓋体30を容器本体10の開口端部11に嵌合し被着した後、該果菜類の基部側の側壁12aが底になるように横向きにして立てた状態で(図9)、必要に応じて予冷を行って、或いは予冷しないで出荷する。
【0040】
例えば、予冷しない春先の出荷の際は、前記容器本体10の切欠き部25の端縁部分の凸縁26に有する通気用切欠溝28と、蓋体30の垂下片35の端縁部分の凸縁36に有する通気用切欠溝38を合致させて開口させておくことにより、該切欠溝28,38を通じて通気性を確保でき、アスパラガス等の果菜類Bより生じる熱が容器内部に籠もることがない。また、夏季等において真空予冷を行って出荷するときは、前記容器本体10と蓋体30の前記通気用切欠溝28,38を相互にずらせた位置にする。この状態で真空予冷を実施すると、相互にすれた位置にある前記切欠溝28,38の間が、前記凸縁26,36間の隙間、特には前記凸部26a,36aによってできる隙間を通じて真空予冷のための通気性を確保でき、かつ真空予冷後に大気圧に戻す際の通気性も確保でき、その後は良好な密封性を保持できる。
【0041】
そして、上記のように果菜類Bを収納した状態の保冷容器Aの保管及び輸送等において、該保冷容器Aを横向きに立てた状態で複数段に積み重ねる際、上下容器の対向する側壁12a,12bの外側面に有する位置決め用の凸部18aと凹部18bを嵌合して位置決めするとともに、前記側壁12a,12bの外側面に部分的に有する抜き勾配のついていない当接用フラット面17a,17b同士を当接させて積み重ねることにより、図11のように傾きを殆ど生じさせずに、また左右前後に位置ずれを生じさせずに安定性よく積み重ねることができ、輸送物流作業時の倒れや荷崩れを抑制でき、作業性を向上できる。
【0042】
しかも、前記当接用フラット面17a,17bは、容器本体10の側壁12a,12bの一部に存するだけであり、大部分は本来の抜き勾配のついた側壁外面部分19よりなるため、成型上の型抜きが困難になる等の問題もない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の保冷容器は、各種の果菜類を収容して保管又は輸送するのに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例の保冷容器の容器本体と蓋体の斜視図である。
【図2】同上の容器本体の他方向からの斜視図である。
【図3】容器本体と蓋体の縦断正面図である。
【図4】同上の半部縦断側面図である。
【図5】蓋体を被着した正面図である。
【図6】同蓋体被着状態のコーナー部の嵌合部の拡大断面図である。
【図7】同蓋体被着状態の通気用切欠溝部分の拡大断面図である。
【図8】同上の通気用切欠溝をずらせた蓋体被着状態の一部の断面図である。
【図9】果菜類を収納して横向きにして立てた状態の斜視図である。
【図10】同上の断面図である。
【図11】積み重ね状態の断面図である。
【図12】同上の一部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0045】
A…保冷容器、10…容器本体、11…開口端部、12a,12b…一方の対向する側壁、13a,13b…他方の対向する側壁、14…コーナー部、14a…外側面、15…底部、16…凸部、17a,17b…当接用フラット面、18a…凸部、18b…凹部、19…側壁外面部分、22…嵌合凸部、22a…凸部、23…切欠部、25…切欠き部、26…凸縁、27…段部、28…通気用切欠溝、29…手掛け部、30…蓋体、31…周縁部、32…嵌合凹部、32a…凸部、34…蓋体のコーナー部、35…切欠き部、36…凸縁、37…段部、38…通気用切欠溝、39…手掛け部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する平面矩形の発泡樹脂製の容器本体と、該容器本体の開口部に被着自在な発泡樹脂製の蓋体とからなり、果菜類を収納して蓋体を被着した後、一側壁が底になるように横向きにして立てた状態で保管や輸送に供する保冷容器であって、
前記容器本体には、前記立てた状態において上下に対向する両側壁の外側面の一部に、それぞれ対応位置において容器底面に対し垂直面をなして互いに平行をなす少なくとも一対の容器積み重ね時の当接用フラット面が形成され、容器積み重ね時に前記フラット面同士が当接して垂直に積み重ね得るように設けられてなることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
前記対向する両側壁のそれぞれの当接用フラット面が、各側壁両側のコーナー部に沿って両側に間隔をおいて設けられてなる請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
前記対向する両側壁の当接用フラット面は、一方の側壁の当接用フラット面がコーナー部外側面に対して凹、他方の側壁の当接用フラット面が凸をなすように形成されてなる請求項1又は2に記載の保冷容器。
【請求項4】
前記対向する両側壁のコーナー部外側面が、容器底面に対して垂直面をなしている請求項1〜3のいずれか1項に記載の保冷容器。
【請求項5】
前記対向する両側壁の外側面には、容器積み重ね時に互いに嵌合する凸部と凹部が、前記当接用フラット面とは別に、成型時のパーティングライン近くに形成されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の保冷容器。
【請求項6】
前記容器本体の側壁上端の開口端部とこれに対応する蓋体の周縁部とに、互いに嵌合する嵌合部が設けられてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の保冷容器。
【請求項7】
前記容器本体の開口端部の各辺部の中央部に切欠き部が形成されるとともに、これに対応する蓋体の周縁部各辺部下面の中央部に前記切欠き部に嵌合する垂下片が設けられ、前記切欠き部の端縁部分と前記垂下片の端縁部分とが、相欠き形状の凸縁と段部とにより嵌合可能に設けられてなる請求項6に記載の保冷容器。
【請求項8】
前記容器本体の前記当接用フラット面を有する両側壁と交差する方向で対向する両側壁の切欠き部の端縁部分と、これに対応する前記蓋体の両辺部の垂下片の端縁部分とには、それぞれ幅方向センターから同じ側にずれた位置の前記相欠き形状の凸縁の個所に、前記蓋体の通常の被着状態において互いに合致し、かつ180°方向転換した被着状態において相互にずれた位置になるように通気用切欠溝が形成されてなることを特徴とする請求項7に記載の保冷容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−76816(P2010−76816A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248056(P2008−248056)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(506069505)株式会社セキホー四国 (5)
【Fターム(参考)】