説明

保守管理装置、保守管理方法、および保守管理用プログラム

【課題】通信ネットワーク構成装置の保守管理のための処理に関し、同時に実行不可能な複数の処理が競合する場合にも適切に処理を実行することが可能な保守管理装置、保守管理方法、および保守管理用プログラムを提供する。
【解決手段】端末の保守に関する処理ごとの、自身の処理が実行中であるときの後発の競合対象の処理に対する優先度を示す先発優先度と、先発の競合対象の処理に対する自身の処理の優先度を示す後発優先度とを記憶する管理テーブル記憶部11と、実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の競合対象の処理の先発優先度よりも高いときには競合対象の処理の実行を非優先として停止するとともに実行対象の処理を優先して実行を開始し、実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の競合対象の処理の先発優先度よりも低いときには競合対象の処理の実行を優先して継続し実行対象の処理を非優先として実行を中止する処理実行制御部12を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワーク構成装置間において実行される保守管理のための定期処理やイベント処理に関し、同時に実行不可能な複数の処理が競合する場合に適切に実行制御を行う保守管理装置、保守管理方法、および保守管理用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信ネットワークの構成装置は、適切な通信サービスの提供と維持のため、通常の通信処理の他に保守管理として、品質測定等の定期処理や保守者の操作により入力されるデータ設定や状態監視等のためのコマンド処理などのイベント処理を行う。
【0003】
これらの定期処理/イベント処理を管理し、処理が競合する際には競合制御を行うことで、必要なタイミングで確実に処理を実行し、確実に終了させることが必要である。
【0004】
一般的に考えられる競合制御は、(1)先着処理(先発処理)を優先し、先発処理実行中に発生した処理(後発処理)は実施しない、(2)先発処理を優先し、先発処理実行中に発生した処理(後発処理)は、先発処理が終了するまで待たせ、終了後に実行開始する、(3)後発処理を優先し、先発処理は中断し、後発処理を実行する、というのが基本的な方法である。
【0005】
しかし、上記(1)、(2)の方法は、先発の処理が遅延した場合や、何らかのトラブルで終了しない場合、後発の処理はいつまでも実施されないという問題がある。(3)は、先発で実施していた処理の中断のタイミングや中断手順を誤ったり、後発処理によってシステムの状態が変わったりすると、先発処理を正常に再開できなくなる恐れや、頻繁に先発処理が中断することにより先発処理が終了できなくなる恐れがある。
【0006】
複数のトランザクション処理を並行処理するための技術として、特許文献1および特許文献2に記載の技術がある。
【0007】
特許文献1には、他のトランザクション処理を実行中に、当該実行中または中断中のトランザクション処理よりも高い優先度を有するトランザクション処理の指示を受けた場合に、実行中または中断中のトランザクション処理と要求されたトランザクション処理との間のデータベース資源の競合の状況を判定し、中止または中断するトランザクション処理を適切に決定するトランザクション並行制御方法が記載されている。
【0008】
また特許文献2には、クライアント情報データベースにクライアントの優先度を設定して、優先度の高いクライアントのトランザクション終了要求コマンドを優先させることにより、優先度の高いクライアントは、優先度の低いクライアントによる影響を受けることなくデータベースにアクセスすることを可能とするトランザクション制御方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−294695号公報
【特許文献2】特開2001−312424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、これら特許文献1および特許文献2に記載の発明は通信ネットワーク構成装置を対象とした定期処理/イベント処理の競合制御に関するものでは無く、保守管理のための処理に関して同時に実行不可能な複数の処理が競合する場合に発生する問題、例えば優先された先発処理の遅延や何らかのトラブルにより終了しない場合に優先度の低い後発処理がいつまでも実行されないという問題や、頻繁な割り込み処理により実行中の優先度の低い処理の中断/停止が過度に発生し、当該処理をいつまでも終了できないかまたは、実行中の処理が不適切に中断されることより正常に再開できなくなるという問題等を解決するための技術が望まれていた。
【0011】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、通信ネットワーク構成装置の保守管理のための処理に関し、同時に実行不可能な複数の処理が競合する場合にも適切に処理を実行することが可能な保守管理装置、保守管理方法、および保守管理用プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための本発明の保守管理装置は、保守対象の端末に接続された保守管理装置であって、前記端末の保守に関する処理ごとの、現在実行中か非実行中かを示す実行状態情報と、同時に実行することができない競合対象の処理を示す競合対象処理情報と、自身の処理が先発処理として実行中であるときの後発の競合対象の処理に対する優先度を示す先発優先度と、自身の処理が後発処理となる場合の先発の競合対象の処理に対する優先度を示す後発優先度とを記憶する管理テーブル記憶部と、実行対象の処理に関する競合対象の処理情報を、前記管理テーブル記憶部の競合対象処理情報に基づいて抽出し、この競合対象の処理が現在実行中か非実行中かを、前記管理テーブル記憶部の実行状態情報に基づいて判断し、現在実行中であると判断したときに、前記実行対象の処理の後発優先度および現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度を前記管理テーブル記憶部から取得し、前記実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度よりも高いときには前記競合対象の処理の実行を非優先として停止するとともに前記実行対象の処理を優先して実行を開始し、前記実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度よりも低いときには前記競合対象の処理の実行を優先して継続し前記実行対象の処理を非優先として実行を中止する処理実行制御部とを備えることを特徴とする。
【0013】
また本発明の保守管理方法は、保守対象の端末に接続された保守管理装置が、前記端末の保守に関する処理ごとの、現在実行中か非実行中かを示す実行状態情報と、同時に実行することができない競合対象の処理を示す競合対象処理情報と、自身の処理が先発処理として実行中であるときの後発の競合対象の処理に対する優先度を示す先発優先度と、自身の処理が後発処理となる場合の先発の競合対象の処理に対する優先度を示す後発優先度とを記憶する管理テーブル記憶ステップと、実行対象の処理に関する競合対象の処理情報を、前記管理テーブル記憶ステップで記憶された競合対象処理情報に基づいて抽出し、この競合対象の処理が現在実行中か非実行中かを、前記管理テーブル記憶ステップで記憶された実行状態情報に基づいて判断し、現在実行中であると判断したときに、前記実行対象の処理の後発優先度および現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度を前記管理テーブル記憶ステップで記憶された情報から取得し、前記実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度よりも高いときには前記競合対象の処理の実行を非優先として停止するとともに前記実行対象の処理を優先して実行を開始し、前記実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度よりも低いときには前記競合対象の処理の実行を優先して継続し前記実行対象の処理を非優先として実行を中止する処理実行制御ステップとを有することを特徴とする。
【0014】
また本発明の保守管理用プログラムは、保守対象の端末に接続された保守管理装置に、前記端末の保守に関する処理ごとの、現在実行中か非実行中かを示す実行状態情報と、同時に実行することができない競合対象の処理を示す競合対象処理情報と、自身の処理が先発処理として実行中であるときの後発の競合対象の処理に対する優先度を示す先発優先度と、自身の処理が後発処理となる場合の先発の競合対象の処理に対する優先度を示す後発優先度とを記憶する管理テーブル記憶機能と、実行対象の処理に関する競合対象の処理情報を、前記管理テーブル記憶機能により記憶された競合対象処理情報に基づいて抽出し、この競合対象の処理が現在実行中か非実行中かを、前記管理テーブル記憶機能により記憶された実行状態情報に基づいて判断し、現在実行中であると判断したときに、前記実行対象の処理の後発優先度および現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度を前記管理テーブル記憶機能により記憶された情報から取得し、前記実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度よりも高いときには前記競合対象の処理の実行を非優先として停止するとともに前記実行対象の処理を優先して実行を開始し、前記実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度よりも低いときには前記競合対象の処理の実行を優先して継続し前記実行対象の処理を非優先として実行を中止する処理実行制御機能とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の保守管理装置、保守管理方法、および保守管理用プログラムによれば、通信ネットワーク構成装置の保守管理のための処理に関し、同時に実行不可能な複数の処理が競合する場合にも適切に処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による保守管理装置の構成を示す全体図である。
【図2】本発明の一実施形態による保守管理装置の管理テーブル記憶部に記憶される管理テーブルの一例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態による保守管理装置の処理実行制御部の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態による保守管理装置のエスカレーション機能部の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態による保守管理装置で実行される動作の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態による保守管理装置で実行される動作の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〈一実施形態による保守管理装置の構成〉
本発明の一実施形態による保守管理装置1の構成について、図1を参照して説明する。
【0018】
本実施形態による保守管理装置1は、保守対象装置Xに記憶されたデータベースx内のデータと、保守対象装置Yに記憶されたデータベースy1およびy2内のデータとの整合性をとるための管理を行うものであり、管理テーブル記憶部11と、処理実行制御部12と、エスカレーション機能部13とを有する。
【0019】
管理テーブル記憶部11は、保守対象装置Xに記憶されたデータベースx内のデータと、保守対象装置Yに記憶されたデータベースy1およびy2内のデータとの整合性をとるための制御に用いる情報を格納した管理テーブルを記憶する。
【0020】
処理実行制御部12は、管理テーブル記憶部11に記憶された管理テーブルの情報に基づいて、保守対象装置Xに記憶されたデータベースx内のデータと保守対象装置Yに記憶されたデータベースy1およびy2内のデータとの整合性をとるための制御を実行する。
【0021】
エスカレーション機能部13は、管理テーブル記憶部11に記憶された管理テーブル内のエスカレーション情報を監視し、このエスカレーション情報内の非優先カウント値が予め設定された閾値を超えた処理があるときには、当該処理の優先度を上げるように、当該管理テーブルの優先度情報を更新する。
【0022】
〈一実施形態による保守管理のための保守管理装置の動作〉
次に、本実施形態による保守管理装置1の動作について、図2〜4を参照して説明する。
【0023】
本実施形態において、管理テーブル記憶部11に予め記憶される管理テーブルの一例を、図2に示す。
【0024】
図2の管理テーブルは、保守管理のための競合制御処理を行うための管理項目として、競合制御対象の処理の処理名101を示す欄と、処理の種類102を示す欄と、処理時間103を示す欄と、処理対象装置名104を示す欄と、タイマー設定時間105を示す欄と、タイムアウト時の動作内容106を示す欄と、現在の実行状態107を示す欄と、競合対象処理108を示す欄と、優先度情報109を示す欄と、非優先時の動作内容110を示す欄と、エスカレーション情報111を示す欄とを有する。
【0025】
処理名101は保守管理のための競合制御対象の処理を識別する情報であり、この管理テーブルには、図1に示すように保守対象装置Yのデータベースy1(データIDごとのデータ(i))の情報をデータベースy2(データIDごとのデータ(ii))に整合させる処理「H」、保守対象装置Xのデータベースx(データIDごとのデータ(i))の情報を保守対象装置Yのデータベースy1(データIDごとのデータ(i))に整合させる処理「I」、保守対象装置Xのデータベースx(データIDごとのデータ(ii))の情報を保守対象装置Yのデータベースy2(データIDごとのデータ(ii))に整合させる処理「J」、オペレータの指示により実行する処理「K」、および、処理「J」の実行に付随して実行する処理「L」が入力されている。
【0026】
処理の種類102は、競合制御対象の処理ごとに、処理所定の時刻になったときに処理を開始する「定期処理(1)」、所定の周期で処理を開始する「定期処理(2)」、所定の処理の終了を契機に開始する「準定期処理」、オペレータのコマンド入力により開始する「非定期処理」の4種類のうちの、いずれか該当する処理が示される。
【0027】
図2の管理テーブルには、処理「H」は「定期処理(2)」であり、処理「I」は「定期処理(1)」であり、処理「J」は「定期処理(1)」であり、処理「K」は「非定期処理」であり、処理「L」は「準定期処理」であることが入力されている。
【0028】
処理時間103は、競合制御対象の処理ごとの、処理が開始される契機に関する情報が示される。
【0029】
図2の管理テーブルには、処理「H」は「2時間周期」で開始し、処理「I」は毎日「1:00」に開始し、処理「J」は毎日「6:00」に開始し、処理「L」は処理「J」の終了時に開始することが入力されている。なお、処理「K」は固定された開始契機がないため、「NULL」が入力されている。
【0030】
処理対象装置名104は、競合制御対象の処理ごとの、実行開始時のアクセス先が示される。
【0031】
図2の管理テーブルには、処理「H」の実行開始時のアクセス先は「保守対象装置Y」であり、処理「I」の実行開始時のアクセス先は「保守対象装置X」であり、処理「J」の実行開始時のアクセス先は「保守対象装置X」であり、処理「K」の実行開始時のアクセス先は「保守対象装置Y」であり、処理「L」の実行開始時のアクセス先は「保守対象装置X」であることが入力されている。
【0032】
タイマー設定時間105は、競合制御対象の処理ごとの、実行時間の遅延や故障などを判断するためのタイムアウト判定を行うか否かを示す情報、および、タイムアウト判定を行う場合にはタイムアウトに達したか否かを判定するためのタイマー設定時間が示される。
【0033】
図2の管理テーブルには、処理「H」、「K」、および「L」はタイムアウト判定を行わず、処理「I」はタイマー設定時間「4時間」でタイムアウト判定を行い、処理「J」はタイマー設定時間「12時間」でタイムアウト判定を行うことが入力されている。
【0034】
タイムアウト時の動作内容106は、競合制御対象の処理ごとの、タイマー設定時間105において入力されたタイマー設定時間によりタイムアウトに達したと判定されたときに実行する動作内容として、「強制停止」や「アラーム出力」などが示される。
【0035】
図2の管理テーブルには、タイマー設定時間が入力されている処理「I」、「J」はタイムアウト時に「強制停止」とすることが入力されている。
【0036】
現在の実行状態107は、競合制御対象の処理ごとの現在の実行状態として、「ON(実行中)」または「OFF(非実行中)」が示される。
【0037】
図2の管理テーブルには、処理「H」が現在「ON(実行中)」状態であり、処理「I」、「J」、「K」、および「L」が現在「OFF(非実行中)」状態であることが入力されている。
【0038】
競合対象処理108は、競合制御対象の処理ごとに、同時に実行することができない競合対象の処理の識別情報が示される。
【0039】
図2の管理テーブルには、処理「H」の競合対象として処理「I」および「J」、処理「I」の競合対象として処理「H」、処理「J」の競合対象として処理「H」、処理「K」の競合対象として処理「I」が入力され、処理「L」は競合対象がないことが示されている。
【0040】
優先度情報109は、自身の処理が他の処理の先発処理として実行中であるときの競合する他の後発処理に対する優先度を示す先発優先度109a、および自身の処理が後発処理となる場合の他の先発処理に対する優先度を示す後発優先度109bが示される。これらの優先度情報は、数値が大きいほど優先度が高いものとして処理され、後発優先度の値を高くすると、既に実行している先発処理よりも新たに発生した後発処理のほうが優先されて割り込みをし易くなり、先発優先度の値を高くすると、既に実行中の先発処理の方が新たに発生した後発処理よりも優先されて割り込まれにくくなる。
【0041】
図2の管理テーブルには、処理「H」の先発優先度として「3」、後発優先度として「3」、処理「I」の先発優先度として「4」、後発優先度として「4」、処理「J」の先発優先度として「4」、後発優先度として「5」、処理「K」の先発優先度として「6」、後発優先度として「6」が入力されている。処理「L」は競合対象がないため、優先度情報は入力されていない。また、これらの優先度は、後述するエスカレーション機能部13により動的に更新される。
【0042】
非優先時の動作内容110は、競合制御対象の処理ごとに、競合対象処理108として示された他の競合対象の処理および自身の処理の優先度情報109に従って、自身の処理が非優先と判断されたときの動作内容が示される。
【0043】
図2の管理テーブルには、処理「H」が非優先と判断されたときは「停止」し、処理「I」が非優先と判断されたときは「停止してアラームを出力」し、処理「J」が非優先と判断されたときは「優先した先発処理終了後再開」し、処理「K」が非優先として判断されたときには「停止してNG応答を出力」することが入力されている。処理「L」は競合対象がないため、非優先時の動作内容は入力されていない。
【0044】
エスカレーション情報111は、競合制御対象の処理ごとに、優先度の低い処理が永続的に実行されない事態を防ぐために実行されるエスカレーション処理に利用される情報として、非優先回数カウント値111a、優先度制御閾値111b、および優先度加算値111cが示される。非優先回数カウント値111aは、優先度情報に基づいて非優先と判断された回数のカウント値であり、優先度制御閾値111bは、非優先回数カウント値111aに基づいて優先度の値を変更するか否かを判定するための閾値であり、優先度加算値111cは、非優先回数カウント値111aと優先度制御閾値111bとに基づいて優先度の値を変更すると判定されたときの変更量(加算値)である。
【0045】
図2の管理テーブルには、処理「H」の非優先回数カウント値111aとして「0」、優先度制御閾値111bとして「12」、優先度加算値111cとして「+1」であり、処理「I」の非優先回数カウント値111aとして「0」、優先度制御閾値111bとして「6」、優先度加算値111cとして「+1」であり、処理「J」の非優先回数カウント値111aとして「0」、優先度制御閾値111bとして「4」、優先度加算値111cとして「+1」であり、処理「K」の非優先回数カウント値111aとして「0」、優先度制御閾値111bとして「0」、優先度加算値111cとして「0」であり、処理「L」の非優先回数カウント値111aとして「0」、優先度制御閾値111bとして「0」、優先度加算値111cとして「0」が入力されている。
【0046】
このように管理テーブルが管理テーブル記憶部11に記憶されている状態で保守管理装置1が稼動したときの、処理実行制御部12の動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0047】
まず管理テーブルの処理の種類102および処理時間103の情報に基づいて、いずれかの競合制御対象の処理の開始時刻が到来した処理があるか否かが監視される(S1)。
【0048】
いずれかの処理の処理開始時刻が到来したと判断されたとき(S1の「YES」)には、当該処理開始時刻が到来した処理の競合対象処理が競合対象処理108に基づいて抽出され、この抽出された競合対象処理に該当する処理名101の現在の実行状態107が、現在実行中(実行状態ON)か、実行されていない(実行状態OFF)かが判断される(S2)。
【0049】
競合対象処理に関する対象装置が現在実行されていない(実行状態OFF)とき(S2の「YES」)は、処理開始時刻が到来した処理に関し対象装置名104で示された装置にアクセスされて実行が開始されるとともに管理テーブルの当該処理の現在の実行状態107がOFFからONに更新される(S3)。
【0050】
ここで処理の実行が開始されると、当該処理について管理テーブルのタイマー設定時間105が入力されているか否かが判断され、入力されている場合にはこの設定時間でタイマーが設定される。
【0051】
そして、このタイマーの設定によりタイムアウトされていない間(S4の「NO」)に当該処理の実行が終了されると(S5の「YES」)、管理テーブルの当該処理の現在の実行状態107がONからOFFに更新される(S6)。また、処理の実行終了前に、処理の遅延や故障によりタイムアウトされたとき(S4の「YES」)には、管理テーブルのタイムアウト時の動作内容106に基づいて強制停止等が行われる(S7)。強制停止された場合には、管理テーブルの当該処理の現在の実行状態107はOFFに更新される。
【0052】
またステップS2において当該処理開始時刻が到来した処理の競合対象処理に関する対象装置が現在実行中(実行状態ON)であるとき(S2の「NO」)は、管理テーブルの優先度情報109に基づいて、処理開始時刻が到来した後発処理の後発優先度109bが、既に実行されている先発の競合処理の先発優先度109aよりも高いか否かが判断される(S8)。
【0053】
判断の結果、処理開始時刻が到来した後発処理の後発優先度109bが、既に実行されている先発の競合処理の先発優先度109aよりも高いとき(S8の「YES」)には、実行中の先発処理が停止されて管理テーブルの先発処理に関する現在の実行状態107がONからOFFに更新されるとともに、この先発処理が終了できなかったことにより先発処理に関するエスカレーション情報111の非優先回数カウント値111aが1加算される。また、処理開始時刻が到来した後発処理に関し対象装置名104で示された装置にアクセスされて実行が開始され、管理テーブルの後発処理に関する現在の実行状態107がOFFからONに更新される(S9)。
【0054】
ここで、後発処理の後発優先度109bと先発の競合処理の先発優先度109aとが等しいときにどちらを優先させるかは、予めオペレータにより指定されているもとし、デフォルト状態では例えば「先発処理を優先させる」ことが設定されている。
【0055】
後発処理の実行が開始されると、当該処理について管理テーブルのタイマー設定時間105が入力されている場合にはこの設定時間でタイマーが設定され、このタイマーの設定によりタイムアウトされていない間(S4の「NO」)に当該処理の実行が終了されると(S5の「YES」)、管理テーブルの当該処理の現在の実行状態107がONからOFFに更新される(S6)。
【0056】
また、停止された先発処理は、当該処理について管理テーブルの非優先時の動作内容110に基づいて、停止、アラーム出力、優先した処理終了後の再開、NG応答等が行われる。ここで、非優先時の動作内容110に基づいて、優先した処理終了後に後発処理が再開される場合にも、競合対象処理108の抽出、現在の実行状態107の判定、優先度情報による優先処理の判定による競合処理は行われる。
【0057】
またステップS8において、処理開始時刻が到来した後発処理の後発優先度109bが、既に実行されている先発の競合処理の先発優先度109aよりも低いとき(S8の「NO」)には、先発処理が継続され当該後発処理は実行されず、エスカレーション情報111の非優先回数カウント値111aが1加算される(S10)。またこの実行されなかった後発処理は、当該処理について管理テーブルの非優先時の動作内容110に基づいて、停止、アラーム出力、優先した処理終了後の再開、NG応答等が行われる。
【0058】
一方、保守管理装置1が稼動したときの、エスカレーション機能部13の動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0059】
エスカレーション機能部13では、処理ごとに、管理テーブルのエスカレーション情報111の非優先回数カウント値111aが優先度制御閾値111bを超えたか否かが監視され(S11)、優先度制御閾値111bを超えたと判断されたとき(S11の「YES」)は、当該処理の優先度情報109の先発優先度109aおよび後発優先度109bの値が、優先度加算値111c分加算されて更新される(S12)。
【0060】
先発優先度109aおよび後発優先度109bの値が加算されたことにより処理の優先度が高くなり、当該処理が実行されたことが管理テーブルの現在の実行状態107に基づいて判断されると(S13の「YES」)、エスカレーション情報111の非優先回数カウント値111aの値が「0」にクリアされる(S14)。
【0061】
このように動作する保守管理装置1において、複数処理に対して競合制御が行われるときの具体例について、図5および6を参照して説明する。
【0062】
まず、処理「H」の処理開始時刻(0:00)が到来すると、この処理「H」の競合処理「I」、「J」は実行されていないため保守管理装置1から保守対象装置Yに処理「H」の実行開始指示が送信され(S21)、これに応答して保守対象装置Yから保守管理装置1に一次応答が送信され(S22)、処理「H」が実行される(S23)。
【0063】
次に処理「I」の処理開始時刻(1:00)が到来すると、実行中の先発処理「H」は後発処理「I」の競合対象処理であり、後発処理「I」の後発優先度「4」が先発処理「H」の先発優先度「3」よりも高いため、先発処理「H」の停止指示が保守管理装置1から保守対象装置Yに送信され(S24)、これに応答して保守対象装置Yから保守管理装置1に二次応答が送信され(S25)、処理「H」が停止される(S26)。
【0064】
そして、保守管理装置1から保守対象装置Xに処理「I」の実行開始指示が送信され(S27)、これに応答して保守対象装置Xから保守管理装置1に一次応答が送信され(S28)、保守対象装置Xおよび保守対象装置Y間で整合処理「I」が実行される(S29)。例えば、保守対象装置Yのデータベースy1においてデータCに関するデータ(i)が欠損している場合、保守管理装置Xのデータベースxに格納されているデータCに関するデータ(i)である「データCC」が保守対象装置Yに送信され、データベースy1に格納されることで整合処理「I」が実行される。
【0065】
次に処理「H」の処理開始時刻(2:00)が到来すると、実行中の先発処理「I」は後発処理「H」の競合対象処理であり、後発処理「H」の後発優先度「3」が先発処理「I」の先発優先度「4」よりも低いため、先発処理「I」が継続され、後発処理「H」の実行開始指示は送信されない(S30)。
【0066】
そして時刻(2:40)に、実行されていた処理「I」が終了すると保守対象装置Xから保守管理装置1に二次応答が送信され(S31)、保守管理装置1の管理テーブルが更新される。
【0067】
次に処理「H」の処理開始時刻(4:00)が到来すると、この処理「H」の競合処理「I」、「J」は実行されていないため保守管理装置1から保守対象装置Yに処理「H」の実行開始指示が送信され(S32)、これに応答して保守対象装置Yから保守管理装置1に一次応答が送信され(S33)、処理「H」が実行される(S34)。
【0068】
そして時刻(5:20)に、実行されていた処理「H」が終了すると保守対象装置Yから保守管理装置1に二次応答が送信され(S35)、保守管理装置1の管理テーブルが更新される。
【0069】
次に処理「J」の処理開始時刻(6:00)が到来すると、この処理「J」の競合処理「H」は実行されていないため保守管理装置1から保守対象装置Yに処理「J」の実行開始指示が送信され(S36)、保守対象装置Xおよび保守対象装置Y間で処理「J」が実行される(S37)。
【0070】
以上の本実施形態によれば、通信ネットワーク構成装置の保守管理のための処理に関し、競合対象処理、実行状態情報、処理の優先度情報、非優先時の動作内容等のパラメータをきめ細かく設定して一元管理することにより、同時に実行不可能な複数の処理が競合する場合にも適切且つ柔軟に処理を実行することができる。
【0071】
また、各処理について必要に応じてタイマー設定時間やタイムアウト時の動作内容を設定しておくことで、処理時間の異常な遅延の検出とその時の措置を設定し、実行中の処理の処理時間が異常に伸びたり何らかのトラブルで処理が終了されないことにより待機中の非優先処理が実行できなくなるという事態を回避することができる。
【0072】
また、非優先として停止または中止された回数を処理ごとに計数し、予め設定された閾値を超えた場合には優先度が高くなるように更新されることにより、非優先状態が継続され処理が長期に渡り見送られることを防止することができる。
【0073】
また、各処理について非優先と判断されたときの動作内容をきめ細かく設定しておくことのより、不適切な処理中断が生じないように競合制御を行うことができる。
【0074】
また上記実施形態において、非優先と判断され中断または中止した処理の中断/中止時間を示す延べ中断/中止時間情報と、この延べ中断/中止時間情報に基づいて動作を更新するか否かを判定するための閾値を示す動作更新閾値と、延べ中断/中止時間情報と動作更新閾値とに基づいて動作を更新すると判定されたときの更新動作内容(停止、アラーム出力、NG応答等)を管理テーブル記憶部11に記憶しておき、処理実行制御部12により、非優先と判断され中断または中止された処理の中断/中止時間が動作更新閾値を超えたか否かを監視し、動作更新閾値を超えたと判断されたときに当該処理の更新動作内容に基づいて動作を実行するようにしてもよい。
【0075】
また本実施形態による保守管理装置の機能をプログラム化してコンピュータに搭載することにより、当該コンピュータを保守管理装置として機能させる保守管理用プログラムを構築することも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…保守管理装置
10…管理テーブル記憶部
11…管理テーブル記憶部
12…処理実行制御部
13…エスカレーション機能部
101…処理名
102…処理の種類
103…処理時間
104…処理対象装置名
105…タイマー設定時間
106…タイムアウト時の動作内容
107…現在の実行状態
108…競合対象処理
109…優先度情報
109a…先発優先度
109b…後発優先度
110…非優先時の動作内容
111…エスカレーション情報
111a…非優先回数カウント値
111b…優先度制御閾値
111c…優先度加算値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守対象の端末に接続された保守管理装置において、
前記端末の保守に関する処理ごとの、現在実行中か非実行中かを示す実行状態情報と、同時に実行することができない競合対象の処理を示す競合対象処理情報と、自身の処理が先発処理として実行中であるときの後発の競合対象の処理に対する優先度を示す先発優先度と、自身の処理が後発処理となる場合の先発の競合対象の処理に対する優先度を示す後発優先度とを記憶する管理テーブル記憶部と、
実行対象の処理に関する競合対象の処理情報を、前記管理テーブル記憶部の競合対象処理情報に基づいて抽出し、この競合対象の処理が現在実行中か非実行中かを、前記管理テーブル記憶部の実行状態情報に基づいて判断し、現在実行中であると判断したときに、前記実行対象の処理の後発優先度および現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度を前記管理テーブル記憶部から取得し、前記実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度よりも高いときには前記競合対象の処理の実行を非優先として停止するとともに前記実行対象の処理を優先して実行を開始し、前記実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度よりも低いときには前記競合対象の処理の実行を優先して継続し前記実行対象の処理を非優先として実行を中止する処理実行制御部と
を備えることを特徴とする保守管理装置。
【請求項2】
管理テーブル記憶部は、前記端末の保守に関する処理ごとの、実行時間が予め設定された閾値を超えタイムアウトしたときの動作内容を示すタイムアウト時動作内容を記憶するタイムアウト時動作内容をさらに記憶し、
前記処理実行制御部は、実行中の処理の実行時間を計測し、この実行時間が予め設定された閾値を超えタイムアウトしたと判断したときには、当該処理の前記管理テーブル記憶部のタイムアウト時動作内容に基づいて動作する
ことを特徴とする請求項1に記載の保守管理装置。
【請求項3】
前記非優先と判断された回数を処理ごとにカウントし、このカウント値が予め設定された閾値を超えた場合に、当該処理に関し、前記先発優先度および前記後発優先度に予め設定された加算値を加算するエスカレーション機能部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の保守管理装置。
【請求項4】
前記管理テーブル記憶部は、前記端末の保守に関する処理ごとの、非優先と判断され中断または中止した処理の中断/中止時間が予め設定された閾値を超えたときの動作内容を示す中断/中止更新動作内容をさらに記憶し、
前記処理実行制御部は、非優先と判断され中断または中止した処理の中断/中止時間を計測し、この計測値が予め設定された閾値を超えたと判断したときには、前記管理テーブル記憶部の中断/中止更新動作内容に基づいて動作する
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の保守管理装置。
【請求項5】
前記管理テーブル記憶部は、競合対象の処理に対して非優先と判断されたときの動作内容を示す非優先時動作内容をさらに記憶し、
前記処理実行制御部は、非優先と判断された処理に関し、前記管理テーブル記憶部の非優先時動作内容に基づいて動作する
ことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の保守管理装置。
【請求項6】
保守対象の端末に接続された保守管理装置が、
前記端末の保守に関する処理ごとの、現在実行中か非実行中かを示す実行状態情報と、同時に実行することができない競合対象の処理を示す競合対象処理情報と、自身の処理が先発処理として実行中であるときの後発の競合対象の処理に対する優先度を示す先発優先度と、自身の処理が後発処理となる場合の先発の競合対象の処理に対する優先度を示す後発優先度とを記憶する管理テーブル記憶ステップと、
実行対象の処理に関する競合対象の処理情報を、前記管理テーブル記憶ステップで記憶された競合対象処理情報に基づいて抽出し、この競合対象の処理が現在実行中か非実行中かを、前記管理テーブル記憶ステップで記憶された実行状態情報に基づいて判断し、現在実行中であると判断したときに、前記実行対象の処理の後発優先度および現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度を前記管理テーブル記憶ステップで記憶された情報から取得し、前記実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度よりも高いときには前記競合対象の処理の実行を非優先として停止するとともに前記実行対象の処理を優先して実行を開始し、前記実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度よりも低いときには前記競合対象の処理の実行を優先して継続し前記実行対象の処理を非優先として実行を中止する処理実行制御ステップと
を有することを特徴とする保守管理方法。
【請求項7】
保守対象の端末に接続された保守管理装置に、
前記端末の保守に関する処理ごとの、現在実行中か非実行中かを示す実行状態情報と、同時に実行することができない競合対象の処理を示す競合対象処理情報と、自身の処理が先発処理として実行中であるときの後発の競合対象の処理に対する優先度を示す先発優先度と、自身の処理が後発処理となる場合の先発の競合対象の処理に対する優先度を示す後発優先度とを記憶する管理テーブル記憶機能と、
実行対象の処理に関する競合対象の処理情報を、前記管理テーブル記憶機能により記憶された競合対象処理情報に基づいて抽出し、この競合対象の処理が現在実行中か非実行中かを、前記管理テーブル記憶機能により記憶された実行状態情報に基づいて判断し、現在実行中であると判断したときに、前記実行対象の処理の後発優先度および現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度を前記管理テーブル記憶機能により記憶された情報から取得し、前記実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度よりも高いときには前記競合対象の処理の実行を非優先として停止するとともに前記実行対象の処理を優先して実行を開始し、前記実行対象の処理の後発優先度が現在実行中の前記競合対象の処理の先発優先度よりも低いときには前記競合対象の処理の実行を優先して継続し前記実行対象の処理を非優先として実行を中止する処理実行制御機能と
を実行させる保守管理用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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