説明

保温装置

【課題】惣菜中における菌の繁殖を抑制できるとともに、菌の繁殖を抑制する際に生じる惣菜の水分の過度な蒸発を抑制できる、惣菜を保温するための保温装置を提供する。
【解決手段】保温装置1aは、惣菜90を収容するための上方から出し入れ可能な容器10と、容器10を加温するためのヒーター30と、容器10をヒーター30により、容器10の内部の惣菜90の殺菌を目的とした温度に上昇させる機能を含む制御ユニット61と、容器10の温度を強制的に降下させるための強制冷却手段50とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗や飲食店などにおいて惣菜を陳列したり販売したりする際などに、惣菜を保温するのに好適な保温装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
店舗や飲食店などにおいては、温かい状態が好ましい惣菜(調理物)を保温装置のような装置に収容して陳列したり販売したりすることがある。
【0003】
特許文献1には、鍋と、鍋を加熱する加熱手段と、加熱手段により鍋内の調理物を所定の保温温度に保温する保温制御手段とを備える、おでん販売用加熱保温器が開示されている。この保温器では、客足に応じて保温温度を調節できるように、保温制御手段により加熱手段を制御することにより、保温温度が複数段階に設定されるようになっている。
【0004】
また、特許文献2には、容器と、容器を載置するための容器に当接する複数の突起部を備えた部材と、容器を加熱する加熱手段と、容器の温度を検知する温度検知手段と、検知温度により容器を加熱しながら、容器内の被調理物の温度を制御する温度制御手段とを備える、おでん販売用加熱保温器が開示されている。この保温器では、少なくとも2箇所の突起部に温度検知手段の感熱部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−238794号公報(段落番号0005)
【特許文献2】特開2002−102062号公報(段落番号0007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、店舗や飲食店などにおいて、温かい状態が好ましい惣菜(調理物)を保温装置のような装置に収容して陳列したり販売したりする場合、惣菜の品質を低下させる可能性のある菌の繁殖を抑制するため、装置を比較的高温に維持する、すなわち、惣菜を比較的高温に維持することがある。惣菜の陳列や販売を目的とする保温装置は、惣菜を取り分けるために上方から出し入れ可能となっていることが多い。このような保温装置により惣菜が比較的高温で保持されると、惣菜の多くは汁気が蒸発し、煮詰まって、煮崩れたり変色したりして、商品価値が比較的早く低下してしまうことがある。このような商品価値の低下は、おでんなどのように比較的汁気が多い惣菜よりも、肉じゃがなどのように比較的汁気が少ない惣菜で問題となることが多い。一方、保温装置により惣菜を、その販売に適した範囲のうちの比較的低い温度で保持すると、汁気の蒸発は抑制できるかもしれないが、惣菜中に菌が繁殖してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、惣菜を保温するための装置(保温装置)であって、惣菜を収容するための上方から出し入れ可能な容器と、容器を加温するためのヒーターと、容器をヒーターにより、容器の内部の惣菜の殺菌を目的とした温度に上昇させる機能を含む制御ユニットと、容器の温度を強制的に降下させるための強制冷却手段とを有する。
【0008】
この保温装置は、容器の温度を強制的に降下させるための強制冷却手段を有している。このため、制御ユニットによりヒーターを制御し、容器の温度をその内部の惣菜の殺菌を目的とした温度に上昇させても、その後、容器の温度を比較的短時間で強制的に降下させることができる。
【0009】
すなわち、この保温装置によれば、典型的には、通常はヒーターにより容器を惣菜の保温を目的とする温度に維持し、定期的にヒーターにより容器をその内部の惣菜の殺菌を目的とした温度に上昇させて菌の繁殖を抑制することができる。容器をその内部の惣菜の殺菌を目的とした温度に維持する時間は、菌の繁殖を抑制(殺菌)できるだけの時間であればよく、その後は、強制冷却手段により容器を速やかに惣菜の殺菌を目的とした温度よりも低い、惣菜の保温を目的とする温度に戻すことができる。この際、強制冷却手段により、速やかに容器の温度を惣菜の保温を目的とする温度まで低下できる。したがって、容器の温度を自然に低下させる場合と比べて、内部に収容された惣菜の煮詰まり、煮崩れ、あるいは変色を抑制できる。
【0010】
したがって、この保温装置によれば、惣菜を、その販売に適した温度に維持(保温)でき、しかも、惣菜中における菌の繁殖を抑制できるとともに、菌の繁殖を抑制する際に生じる惣菜の水分の過度な蒸発を抑制できる。また、この保温装置によれば、汁気の蒸発を抑制できるため、煮詰まって、煮崩れたり変色したりすることを抑制でき、良好な商品価値を比較的長時間維持できる。
【0011】
この保温装置において、強制冷却手段は、従来知られている冷却装置、例えば、ペルチェ素子を含むような冷却装置や、液状冷媒を使用する冷却装置を含むものであってもよいが、外気を導入して容器を冷却するためのファンを含むものが好ましい。すなわち、強制冷却手段は、空冷タイプの冷却手段であることが好ましい。比較的簡単な構成で、容器を強制的に冷却することができる。
【0012】
また、この保温装置が、強制冷却手段が外気を導入して容器を冷却するためのファンを含み、かつ、容器の外周を覆うやけど防止用などのカバーをさらに含む場合、容器とカバーとの間隙は、ファンにより形成された空気の流れを流通させるダクトを兼ねていることが好ましい。ダクトを新たに設けることなく、容器の外周に効率的に空気を流通させ、容器の温度を効率良く低下させることができる。また、容器とカバーとの間隙に空気の流れが形成されるため、容器だけでなくカバーも冷やされる。したがって、カバーをより低い温度に保つことができるため、装置の外面(典型的にはカバー)に接触したときのやけど防止にも、より効果的である。
【0013】
さらに、この場合、容器の上端とカバーの上端との間にクリアランスを形成し、このクリアランスを、外気をダクト内に吸引する吸引口とすることができる。あるいは、このクリアランスを、外部に向けてダクト内の空気が排出される排気口とすることができ、カバーに吸排気口を特別に設けなくてもよく経済的である。
【0014】
本発明の他の態様は、惣菜を保温するための装置を制御する方法である。この装置は、惣菜を収容するための上方から出し入れ可能な容器と、容器を加温するためのヒーターと、容器の温度を強制的に降下させるための強制冷却手段と、ヒーターおよび強制冷却手段を制御するための制御ユニットとを有する。当該方法は、以下の工程を含む。
(a)制御ユニットがヒーターにより、容器の温度を、容器の内部の惣菜の保温を目的とする温度から惣菜の殺菌を目的とした温度にまで定期的に上昇させること(上昇させる工程)。
(b)上昇させること(上昇させる工程)の後、制御ユニットが強制冷却手段により、容器の温度を、惣菜の保温を目的とする温度近傍にまで強制的に降下させること(降下させる工程)。
【0015】
この方法(制御方法)によれば、惣菜中における菌の繁殖を抑制できるとともに、菌の繁殖を抑制する際に生じる惣菜の水分の過度な蒸発を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる保温装置の概略構成を示す図。
【図2】図1中のII−II線に沿って切断して示す断面図。
【図3】図1中のIII−III線に沿って切断して示す断面図。
【図4】図1の保温装置の制御方法の一例を説明するためのフローチャート。
【図5】図1の保温装置における容器の温度の経時変化の一例を示す図。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる保温装置の概略構成を示す図。
【図7】図6中のVII−VII線に沿って切断して示す断面図。
【図8】本発明の第3の実施形態にかかる保温装置の概略構成を示す図。
【図9】本発明の第4の実施形態にかかる保温装置の概略構成を示す図。
【図10】本発明の第5の実施形態にかかる保温装置の概略構成を示す図。
【図11】本発明の第6の実施形態にかかる保温装置の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、断面を用いて本発明の第1の実施形態にかかる保温装置の概略構成を示している。図2は、図1中のII−II線に沿って切断した断面図を示している。図3は、図1中のIII−III線に沿って切断した断面図を示している。
【0018】
本例の保温装置1aは、店舗や飲食店などにおいて惣菜(調理物)90を陳列したり販売したりする際などに、惣菜90を保温するために用いられる装置(ユニット)である。この保温装置1aは、惣菜90中における菌の繁殖を抑制できるとともに、菌の繁殖を抑制する際に生じる惣菜90の水分の過度な蒸発を抑制できる。このため、種々の惣菜90を良好に保温および品質保持することができる。したがって、特に、水分(汁気)の少ない惣菜90を比較的長時間保温しながら陳列し、さらに、惣菜90の品質を保持することができる。本例の保温装置1aは、例えば、惣菜90として肉じゃがを保温する際に好適に用いることができる。すなわち、本例の保温装置1aは、肉じゃが販売用保温装置として好適である。
【0019】
図1ないし図3に示すように、この保温装置1aは、惣菜(調理物、本例では肉じゃが)90を収容するための上方から出し入れ可能な容器10と、容器10の下方に設けられ、内部が機械室21となったケース20と、容器10を加熱するためのヒーター30と、容器10の温度を検知するためのセンサ(温度センサ)31と、容器10およびケース20の外周を覆うように設けられたカバー40と、容器10の温度を強制的に降下させるための強制冷却手段50と、ケース20内に配置された制御基板60とを有している。本例の強制冷却手段50は、外気を導入して容器10を冷却するためのファン51を含んでいる。ファン51は、例えば、ケース20の4つの側壁のうちの1つの側壁24aと対峙するように、ケース20の内部に配置されている。制御基板60は、ヒーター30および強制冷却手段50に含まれるファン51を制御するための制御ユニット61を含んでいる。
【0020】
容器10は、例えば、横断面が長方形状の箱型の容器であり、上方から惣菜90を出し入れできるように、上方11が開放されている。容器10は、取り外して清掃(洗浄)できるように、ケース20の上に搭載されている。より詳しくは、ケース20の上面にヒーター30および温度センサ31が配置されており、容器10は、その下面が、ヒーター30および温度センサ31と接触するようにケース20の上に搭載されている。なお、容器10の形状は任意であり、横断面が長方形状の箱型に限定されるものではなく、横断面が円形状の鍋のようなものであってもよい。また、保温装置1aは、容器10の上方11の開放された部分を開閉可能に閉塞できる蓋を備えていてもよい。このような蓋は、容器10とは別体であってもよく、また、開放部11を開閉可能なように、容器10にヒンジなどを介して取り付けられていてもよい。
【0021】
ケース20は、例えば、箱型であり、本例のケース20は、カバー40よりも容積が一回り小さく形成されている。ケース20の下面の四隅には、それぞれ脚部22が設けられている。このため、保温装置1aをテーブルなどに搭載しても、ケース20の下面とテーブルなどとの間には空隙が形成される。したがって、本例の保温装置1aでは、機械室内などで発生した熱がテーブルなどに伝わりにくく、また、後述するように、ファン51を駆動させると、ケース20の下面とテーブルなどとの空隙からケース20の内部に外界からの空気を吸い込むことができる。
【0022】
ケース20の上面に、容器10の下面と接触するように配置された温度センサ31は、容器10の内部の惣菜90の温度を容器10の外側の温度から間接的に検知するタイプである。放射温度計などの赤外線を用いて温度を検出するセンサを設けて惣菜90の温度を直接検出してもよい。いずれの場合も温度センサ31を容器10の外部に配置することにより、容器10を取り外して洗浄し易くなる。また、衛生上、惣菜90とセンサとが接触する機会は少ないことが望ましい。なお、本例では、容器10の内部の惣菜90の温度は、温度センサ31により検知された容器10の温度とほぼ等しいと仮定して説明する。惣菜90の温度と、温度センサ31により検知された容器10の温度とに差があってもよく、温度差(オフセット)をあらかじめ設定して制御を行うことができる。
【0023】
カバー40は、容器10の外周およびケース20の外周を覆うように設けられている。容器10の外面やケース20の外面は、比較的高温になりやすい。カバー40は、外部からの接触によるやけどを防止するためのやけど防止用カバー40を兼ねている。また、カバー40と容器10との間隙およびカバー40とケース20との間隙は、ファン51により形成された空気の流れを流通させるダクト70を兼ねている。容器10の上端10eとカバー40の上端40eとの間には、容器10を出し入れしたり、容器10が確実にヒーター30の上に乗るようにクリアランス81が形成されている。この装置1aにおいては、このクリアランス81を、外部に向けてダクト70内の空気が排出される排気口として使っている。
【0024】
ケース20には、その底壁23に吸込口25が形成されている。また、ケース20の4つの側壁のうちの1つの側壁24aに吹出口26が形成されている。容器10の温度を強制的に降下させるための強制冷却手段50としてのファン51は、吹出口26と対向するように、ケース20内に配置されている。
【0025】
したがって、ファン51を駆動させると、図1ないし図3に矢印で示すように、装置1aの外部から、外気がケース20の下部とテーブルなどとの間の空隙から、吸込口25を介して機械室21内に吸い込まれ、機械室21内を流通し、吹出口26を介してケース20の外部、すなわち、ダクト70内に吹き出される。そして、ダクト70内に吹き出された空気は、水平方向にも流通しながら、全体として鉛直方向上側に流通する。
【0026】
図1および図3に示すように、ケース20の外側では、ケース20の外周に沿って、吹出口26側から水平方向および鉛直方向上方に風が流れ、全体として容器10の外周に沿って、ダクト70内を吹出口26側から空気が流れ、容器10とカバー40とのクリアランス(排気口)81から外部に排出される。このような空気の流れにより、容器10が空冷される。また、機械室21内においても空気が流通するため、ヒーター30や制御基板60が空冷される。ヒーター30が空冷されることもまた、容器10の温度を速やかに降下させることに寄与する。
【0027】
ケース20の底部に配置された制御基板60は、ヒーター30および強制冷却手段50を制御するための制御ユニット61を含んでいる。制御ユニット61は、ヒーター30およびファン51と電気的に接続されている。また、制御ユニット61は、温度センサ31とも電気的に接続されている。この制御ユニット61は、ヒーター30により、容器10の温度を、容器10の内部の惣菜90の殺菌を目的とした温度に上昇させる第1の機能91と、強制冷却手段50としてのファン51により、容器10の温度を、惣菜90の保温を目的とする温度近傍にまで強制的に降下させる第2の機能92と、ヒーター30により、容器10の温度を、容器10の内部の惣菜90の保温を目的とした温度に維持する第3の機能93とを含んでいる。一般に、殺菌を目的とする温度は、保温を目的とする温度よりも高い温度である。
【0028】
より詳しくは、本例では、第1の機能91は、ヒーター30により、たとえば、ヒーター30の出力を一時的に上げることにより、容器10の温度を、容器10の内部の惣菜90の保温を目的とする温度T1から、容器10の内部の惣菜90の殺菌を目的とした温度T2にまで定期的に上昇させる機能である。第2の機能92は、ヒーター30により、ファン51を稼働させて容器10の温度T2を、惣菜90の保温を目的とする温度T1近傍にまで強制的に降下させる(元の温度に戻す)機能である。第3の機能93は、ヒーター30により、たとえば、ヒーター30の出力を下げて、容器10の温度を、容器10の内部の惣菜90の保温を目的とする温度T1に維持する機能である。
【0029】
次に、この保温装置1aの制御方法について説明する。この保温装置1aの制御ユニット61による制御は、ヒーター30により、容器10の温度を、容器10の内部の惣菜90の保温を目的とする温度T1から惣菜90の殺菌を目的とした温度T2にまで定期的に上昇させる工程と、その後、強制冷却手段50により、容器10の温度を、惣菜90の保温を目的とする温度T1近傍にまで強制的に降下させる工程とを含んでいる。図4は、図1の保温装置1aの制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0030】
ステップ101において、殺菌のタイミングとなると、ステップ102において、制御ユニット61は、第1の機能91により、ヒーター30の出力を上げて、容器10を加熱する。ステップ103において、容器10が殺菌温度(容器10の内部の惣菜90の殺菌を目的とする温度)T2にまで上昇すると、ステップ104において、ヒーター30の出力を、容器10を殺菌温度に保持できる出力とし、容器10を殺菌温度T2に保持する。ステップ105において、所定の保持時間Mt2(たとえば5分)だけ容器10を殺菌温度T2に保持すると、ステップ106において、制御ユニット61は、第2の機能92により、ヒーター30をオフするとともにファン51をオンし、ファン51により容器10などの強制冷却を開始する。ステップ107において、容器10が所定の保温温度(容器10の内部の惣菜90の保温を目的とする温度)T1にまで降下すると、ステップ108において、ファン51をオフし、容器10の強制冷却を終了する。一方、ステップ101において、殺菌のタイミングでない場合には、ステップ109において、制御ユニット61は第3の機能93により、ヒーター30の出力を、容器10を保温温度T1に保持できる出力とし、容器10を保温温度T1に保持する。
【0031】
図5は、この保温装置1aを上記のように制御したときの容器10の温度の経時変化の一例を示している。肉じゃがなどの惣菜を保温しておく場合、図5に示すように、通常時には、第1の設定温度T1、例えば55℃となるように、容器10を加熱し、これを維持する。この温度は、惣菜を温かい状態で販売したり、取り分けたりするために適した温度の一例である。
【0032】
第1の保持時間Mt1、例えば1時間(60分)が経過すると、その毎にヒーター30の出力を上げて容器10が第2の設定温度T2になるように加熱し、第2の保持時間Mt2、例えば5分間、第2の設定温度T2、例えば75℃を維持する。この温度は殺菌に適した温度の一例である。第2の保持時間Mt2が経過した後、第2の設定温度T2から第1の設定温度T1に戻すときには、ファン(ファンモータ)51を運転させ、容器10を強制的に冷却(空冷)する。これにより、容器10を早急に第1の設定温度T1に戻すことができる。
【0033】
例えば、食中毒の原因菌として知られるO157は、加熱に弱い菌であることが知られている。O157の感染を防ぐためには、ハンバーグなどの挽肉を原材料とする食品の場合、その中心温度を75℃1分と同等に加熱することが必要であると言われている。これに従えば、肉じゃがなどの惣菜を、75℃1分と同等あるいはそれ以上に加熱することにより、O157などの菌の繁殖を抑制することができると考えられる。
【0034】
このように、本例では、2つの動作を定期的に繰り返す。つまり、第1の保持時間(本例では1時間)Mt1の間は、容器10を第1の設定温度T1(55℃)に維持して保温する。これが通常時(通常の保温のための動作)である。そして、1時間毎に、第2の保持時間(本例では5分)Mt2の間、容器10を第2の設定温度T2(75℃)にする。これが惣菜90中における菌の繁殖を抑制する(殺菌する)ための動作である。
【0035】
このような昇温と冷却とを繰り返して行うことにより、惣菜90を、その販売に適した温度に維持(保温)でき、しかも、惣菜90中における菌の繁殖を抑制でき、さらに、菌の繁殖を抑制する際に生じる惣菜90の水分の過度な蒸発を抑制できる。また、殺菌動作の後には、ファン51により、速やかに容器10の温度を惣菜90の保温を目的とする温度まで低下させることができるため、容器10の温度を自然に低下させる場合と比べて、内部に収容された惣菜90の煮詰まり、煮崩れ、あるいは変色を、より抑制できる。
【0036】
以上のように、本例の保温装置1aおよびこの制御方法によれば、惣菜90、特に汁気を適度に含むことが望ましい惣菜については汁気をなくしてしまったり、品質が低下したりということが発生しにくい状態で、適温に長時間にわたり保持でき、さらに、菌の繁殖を抑制することもできる。
【0037】
また、この保温装置1aによれば、ファン51により外気を導入して容器10を冷却するため、比較的簡単な構成で、容器10の温度を強制的に冷却することができる。さらに、容器10とカバー40との間隙を冷却用の空気の流路(ダクト)70として利用するため、簡易かつコンパクトな構成で、容器10の外周に効率的に空気を流通させることができ、容器10の温度を効率良く低下させることができる。また、容器10とカバー40との間隙に空気の流れが形成されるため、容器10だけでなくカバー40も冷やされる。したがって、カバー40をより低い温度に保つことができるため、装置1aに接触したときのやけどの防止にもより効果的である。
【0038】
図6は、本発明の第2の実施形態にかかる保温装置の概略構成を示している。図7は、図6中のVII−VII線に沿って切断した断面図を示している。本例の保温装置1bでは、ケース20の側壁24aの1つに吸込口25が形成されているとともに、その底壁23に吹出口26が形成されている。そして、容器10の温度を強制的に降下させるための強制冷却手段50としてのファン51は、吸込口25と対向するように、ケース20内に配置されている。さらに、容器10の上端10eとカバー40の上端40eとの間のクリアランスは、外気をダクト70内に吸引する吸引口82となっている。なお、他の構成は、第1の実施形態の装置1aと同様であるため、重複する説明は図面に同符号を付して省略する。
【0039】
この保温装置1bでは、ファン51を駆動させると、図6および図7に矢印で示すように、装置1bの外部の空気は、容器10とカバー40とのクリアランス(吸引口82)から、ダクト70内に吸引される。そして、ダクト70内に吸引された空気は、水平方向にも流通しながら、全体として鉛直方向下側に流通する。したがって、吸引された外気は、容器10の外周に沿って流れて容器10および内部の惣菜90を冷却し、ケース20の吸込口25を介して機械室21内に流入する。流入した空気は、機械室21内を通り、ヒーター30を含めて機械室21の内部を冷却し、吹出口26からケース20の下部とテーブルなどとの間の空隙を介して外部に排出される。この保温装置1bにおいても、第1の実施形態の装置1aと同様の効果が得られる。
【0040】
図8は、本発明の第3の実施形態にかかる保温装置の概略構成を示している。本例の保温装置1cでは、ケース20の少なくとも1つの側壁、例えば互いに対向する2つの側壁24aおよび24bに吸込口25が形成されているとともに、その底壁23に吹出口26が形成されている。そして、容器10の温度を強制的に降下させるための強制冷却手段50としてのファン51は、吹出口26と対向するように、ケース20内の底部に配置されている。さらに、容器10の上端10eとカバー40の上端40eとの間のクリアランスは、外気をダクト70内に吸引する吸引口82となっている。なお、他の構成は、第1の実施形態の装置1aと同様であるため、重複する説明は図面に同符号を付して省略する。
【0041】
図8に矢印で示すように、この保温装置1cでは、ファン51を駆動させると、ダクト70内および機械室21内において、第2の実施形態の保温装置1bとほぼ同様に空気が流通する。この保温装置1cにおいても、第1の実施形態の装置1aや第2の実施形態の装置1bと同様の効果が得られる。
【0042】
図9は、本発明の第4の実施形態にかかる保温装置の概略構成を示している。本例の保温装置1dでは、ケース20の底壁23に吸込口25が形成されているとともに、その少なくとも1つの側壁、例えば互いに対向する2つの側壁24aおよび24bに吹出口26が形成されている。そして、容器10の温度を強制的に降下させるための強制冷却手段50としてのファン51は、吸込口25と対向するように、ケース20内の底部に配置されている。さらに、容器10の上端10eとカバー40の上端40eとの間のクリアランスは、外部に向けてダクト70内の空気が排出される排気口81となっている。なお、他の構成は、第1の実施形態の装置1aと同様であるため、重複する説明は図面に同符号を付して省略する。
【0043】
図9に矢印で示すように、この保温装置1dでは、ファン51を駆動させると、機械室21内およびダクト70内において、第1の実施形態の保温装置1aとほぼ同様に空気が流通する。この保温装置1dにおいても、第1の実施形態の装置1aと同様の効果が得られる。
【0044】
図10は、本発明の第5の実施形態にかかる保温装置の概略構成を示している。この保温装置1eでは、カバー40は、容器10のみを覆うように形成されている。また、ケース20には、4つの側壁のうちの1つである側壁24bと底壁23とにそれぞれ吸込口25が形成されているとともに、吸込口25が形成されている側壁24bと対向する側壁24aに吹出口26が形成されている。容器10の温度を強制的に降下させるための強制冷却手段50としてのファン51は、側壁24aに形成された吹出口26と対向するように、ケース20内に配置されている。なお、他の構成は、第1の実施形態の装置1aと同様であるため、重複する説明は図面に同符号を付して省略する。
【0045】
この保温装置1eでは、図10に矢印で示すように、ファン51を駆動させると、外部の空気が側壁24bの吸込口25および底壁23の吸込口25から機械室21内に吸い込まれ、機械室21内を流通し、側壁24aの吹出口26から外部に吹き出される。この際、装置1e中で最も加熱されているヒーター30が急速冷却(空冷)される。ヒーター30が空冷されることは、容器10の温度を速やかに降下させることに良好に寄与する。したがって、この保温装置1eにおいても、殺菌動作の後、容器10を比較的速やかに保温温度に戻すことができる。
【0046】
図11は、本発明の第6の実施形態にかかる保温装置の概略構成を示している。この保温装置1fでは、カバー40は、容器10のみを覆うように形成されている。また、ケース20には、4つの側壁のうちの1つである側壁24aに吸込口25が形成されているとともに、吸込口25が形成されている側壁24aと対向する側壁24bと底壁23とにそれぞれ吹出口26が形成されている。容器10の温度を強制的に降下させるための強制冷却手段50としてのファン51は、側壁24aに形成された吸込口25と対向するように、ケース20内に配置されている。なお、他の構成は、第1の実施形態の装置1aと同様であるため、重複する説明は図面に同符号を付して省略する。
【0047】
この保温装置1fでは、図11に矢印で示すように、ファン51を駆動させると、外部の空気が側壁24aの吸込口25から機械室21内に吸い込まれ、機械室21内を流通し、側壁24bの吹出口26および底壁23の吹出口26から外部に吹き出される。この際、装置1f中で最も加熱されているヒーター30が急速冷却(空冷)される。ヒーター30が空冷されることは、容器10の温度を速やかに降下させることに良好に寄与する。したがって、この保温装置1fにおいても、殺菌動作の後、容器10を比較的速やかに保温温度に戻すことができる。
【0048】
なお、本例では、上述のように、容器10の内部の惣菜90の温度は、温度センサ31により検知された容器10の温度とほぼ等しいとしているが、容器10の容量、容器10の内部の惣菜90の量、容器10の材質などによっては、温度センサ31で検知される容器10の温度よりも容器10の内部の惣菜90の温度の方が低くなる可能性がある。このような温度差が発生しても、その温度差を推定することは可能であるため、その推定された温度差分だけバイアスを設けてヒーター30などを制御すればよい。内部との温度差がある場合には、その温度差を勘案して制御する温度を設定することも好ましい。あるいは、上述のように、O157であれば、75℃で感染を防ぐ効果があるが、安全のために容器10の温度が一時的に75℃よりもさらに高温(例えば80℃程度)となるように設定(制御)してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1a、1b、1c、1d、1e、1f 保温装置
10 容器、 20 ケース、 30 ヒーター
40 カバー、 50 強制冷却手段、 51 ファン
61 制御ユニット、 70 ダクト
81 排気口、 82 吸引口、 90 惣菜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
惣菜を保温するための装置であって、
前記惣菜を収容するための上方から出し入れ可能な容器と、
前記容器を加温するためのヒーターと、
前記容器を前記ヒーターにより、前記容器の内部の前記惣菜の殺菌を目的とした温度に上昇させる機能を含む制御ユニットと、
前記容器の温度を強制的に降下させるための強制冷却手段と、を有する、保温装置。
【請求項2】
請求項1において、前記強制冷却手段は、外気を導入して前記容器を冷却するためのファンを含む、保温装置。
【請求項3】
請求項2において、前記容器の外周を覆うカバーをさらに含み、
前記容器と前記カバーとの間隙は、前記ファンにより形成された空気の流れを流通させるダクトを兼ねている、保温装置。
【請求項4】
請求項3において、前記容器の上端と前記カバーの上端との間にクリアランスが形成され、前記クリアランスは、外気を前記ダクト内に吸引する吸引口、または外部に向けて前記ダクト内の空気が排出される排気口となっている、保温装置。
【請求項5】
惣菜を保温するための装置を制御する方法であって、
前記装置は、
前記惣菜を収容するための上方から出し入れ可能な容器と、
前記容器を加温するためのヒーターと、
前記容器の温度を強制的に降下させるための強制冷却手段と、
前記ヒーターおよび前記強制冷却手段を制御するための制御ユニットと、を有し、
当該方法は、
前記制御ユニットが前記ヒーターにより、前記容器の温度を、前記容器の内部の前記惣菜の保温を目的とする温度から前記惣菜の殺菌を目的とした温度にまで定期的に上昇させることと、
前記上昇させることの後、前記制御ユニットが前記強制冷却手段により、前記容器の温度を、前記惣菜の前記保温を目的とする温度近傍にまで強制的に降下させることとを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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