説明

保湿剤

【課題】保湿性に優れ、かつ皮膚刺激性が少ないべたつきのない保湿剤の提供。
【解決手段】分子全体の平均として、構成グルコース単位当たり0.2個以上のアミド基(a)と0.2個以上のカルボキシル基(b)を有するセルロース誘導体が保湿性能を示し、かつ皮膚刺激性が少ないベタつきのない保湿剤であり、該セルロース誘導体(A)が、カルボキシメチルセルロースをアミド変性したアミド変性カルボキシメチルセルロースである保湿剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料および皮膚外用剤などに用いる保湿剤に関する。より詳細には、高価なヒアルロン酸などの代替品として使用できる比較的安価なセルロース誘導体の変性物からなる保湿剤と、それが配合された化粧料および皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料および皮膚外用剤などに用いる保湿剤は、皮膚表面の水分の調整をして、皮膚、毛髪にうるおいのあるしっとり感を与える目的で配合されている。従来、このような保湿剤としては、グリセリン、1,3ブチレングリコール、ソルビトール等の低分子アルコールや、尿素などが広く用いられている。しかし、グリセリン等の低分子量アルコールや尿素は多量に使用するとべたつきなどの不快な感触を与え、また、尿素は皮膚に対して刺激性があるため、多量に使用することができない。
また、べたつきを抑制する目的で高分子材料を保湿成分に利用する試みもなされている。例えば、皮膚の保湿に有効な成分であるヒアルロン酸、コラーゲン、セラミドなどの天然由来高分子を配合したり、多糖類にステロールを導入した誘導体(特許文献1)を合成して配合する試みがなされているが、いずれも高価であるため、少量しか添加できず、十分な保湿効果を得ることができなかった。
また、側鎖にポリエチレングリコール構造を有するポリ(メタ)アクリレート等により保湿性を高める試みもなされている(特許文献2)が、十分な保湿性が得られず、かつ経時変化に伴い発生する副生物によりアレルギー反応を起こす可能性があるという問題がある。
【特許文献1】特開2002−284693号公報
【特許文献2】特開2003−171257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、保湿性に優れ、皮膚刺激性が少なく、かつべたつきのない保湿剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、分子全体の平均として、構成グルコース単位当たり0.2個以上のアミド基(a)と0.2個以上カルボキシル基(b)を有するセルロース誘導体が優れた保湿性能を発現することを見出し本発明に達した。
すなわち、本発明は、分子全体の平均として、構成グルコース単位当たり0.2個以上のアミド基(a)と0.2個以上のカルボキシル基(b)を有するセルロース誘導体を必須成分として含有する保湿剤である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の分子全体の平均として、構成グルコース単位当たり0.2個以上のアミド基(a)と0.2個以上のカルボキシル基(b)を有するセルロース誘導体は、保湿性を示す。さらに、皮膚刺激性も少なく、べたつき感の少ない良好な使用感が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の保湿剤は、分子全体の平均として、構成グルコース単位当たり0.2個以上のアミド基(a)と0.2個以上のカルボキシル基(b)を有するセルロース誘導体(A)を必須成分として含有することを特徴とする。
本発明のセルロース誘導体(A)は、構成単位であるグルコースが1,4−β−グリコシド結合により直鎖状に結合した高分子であり、構成グルコース1単位中に本来3個存在する水酸基の一部または全部がアミド基またはカルボキシル基に置換された誘導体である。
ただし、全ての構成グルコース単位が少なくとも1個のアミド基(a)またはカルボキシル基(b)で置換されている必要はなく、分子全体の平均として、構成グルコース単位当たり0.2個以上のアミド基(a)と0.2個以上のカルボキシル基(b)で置換されていればよい。
【0007】
本発明のセルロース誘導体(A)は、カルボキシル基を含有するセルロース誘導体(B)をアミド変性することで得ることができる。
原料となるカルボキシル基を含有する誘導体(B)としては、カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロースなど);カルボキシメチルセルロース誘導体(カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシプロピルセルロースなど)が挙げられる。
これらのうち、保湿性の観点および原料の入手の容易性から、カルボキシメチルセルロースをアミド変性したアミド変性カルボキシメチルセルロースが好ましい。
【0008】
本発明で原料として使用されるカルボキシル基を含有する誘導体(B)は、市販品のみならず、下記の公知の方法で合成し、使用してもよい。
原料となるセルロース、またはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体は、構成グルコース1単位に水酸基が3個存在する。これらの水酸基をアルカリ条件下でモノクロロアルキルカルボン酸もしくはモノクロロアルキルカルボン酸ナトリウムと反応させることで末端カルボキシル基がナトリウム塩型であるカルボキシアルキルセルロースナトリウムを得る。
得られたカルボキシアルキルセルロースナトリウムは、塩酸、硝酸などの無機酸で処理した後、水洗処理を行うことで、カルボキシル基末端がカルボン酸であるカルボキシル基を含有する誘導体(B)を得ることができる。
【0009】
カルボキシル基を含有する誘導体(B)の置換度、すなわち、その構成グルコース単位当たりのカルボキシル基の平均個数(n0)は、通常、0.2〜2.5、好ましくは0.4〜2.0、さらに好ましくは0.6〜1.7である。
その構成グルコース単位当たりのカルボキシル基の平均個数(n0)が0.2未満では、アミド変性して得られるセルロース誘導体(A)の保湿性の観点から、好ましくない。
また、2.5を超えると入手および合成が困難なため好ましくない。
【0010】
これらの誘導体の重量平均分子量は5,000〜1000,000であり、特に10,000〜500,000の範囲のものが好ましい。
【0011】
カルボキシル基を含有する誘導体(B)へのアミド基の導入方法としては、アルキルクロリドでのエステル化を経て得る方法(例えば米国特許第4988806公報に記載)や、アミド基含有反応性化合物を反応させて得る方法(例えば、特開2001−181301号公報に記載)などの他段階反応による従来法で得ることができる他、末端カルボン酸であるカルボキシメチルセルロースをイオン液体で膨潤させ、アミド化剤と反応させることで得ることができる。
【0012】
本発明で用いられる優れた保湿性を有するセルロース誘導体(A)の製造方法としては、カルボキシル基を含有する誘導体(B)であるカルボキシメチルセルロースをイオン液体(c)中でアミド化剤(d)を加え、反応させることによりアミド変性カルボキシメチルセルロースを得ることができる。
その後、得られた反応混合液を、有機溶剤中に投入することでアミド変性カルボキシメチルセルロースを析出させ、固液分離操作を行った後、有機溶剤で洗浄することでアミド変性カルボキシメチルセルロースを得る。得られたアミド変性カルボキシメチルセルロース(A)の重量平均分子量は5,000〜1,000,000であり、10,000〜500,000が好ましい。分子量が5,000よりも小さい場合、べたつき感を感じ、かつ、保湿性が劣るため好ましくない。一方、分子量が500,000を超える場合、水溶解性が劣るため取り扱いが困難であるという欠点がある。
【0013】
イオン液体(c)のうち、取り扱いの観点から好ましいのは150℃以下で液体であるイオン液体である。さらに好ましいのは、100℃以下で液体であるイオン液体(c)である。
【0014】
イオン液体(c)のうち、本発明のアミド化反応に適したイオン液体としては、例えば、イミダゾリウムカルボキシレート、およびイミダゾリウムクロライドなどが挙げられる。
さらに好ましくは、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムホルメート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムフマレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムラクテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドである。
【0015】
保湿性の観点から、得られたアミド変性カルボキシメチルセルロースの水との親和性が高いのが好ましいため、アミド化剤(d)のアルキル鎖長は短い方が好ましい。また、安全性の観点から、残存すると皮膚刺激性で問題となるアミド化剤を極力減らすために、アミド化剤(d)は低沸点アミンであることが好ましい。
【0016】
アミド化剤(d)としては、アルキル鎖長の短い1級アミンまたは、2級アミンであることが好ましく、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。好ましくは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンであり、更に好ましくは、メチルアミンまたはエチルアミンである。
アミド化剤(d)は、少量ずつを分割投入しても、または一括投入してもよい。
【0017】
カルボキシアルキルセルロースは加熱で溶融する前に熱分解するため、アミド化反応温度はできるだけ低温でアミド化反応を進行させることが好ましい。
アミド化反応温度としては、120℃〜160℃の範囲が好ましく、更に好ましくは130℃〜160℃、特に好ましくは、140℃〜160℃である。
反応の終点は、通常、系内の圧力を測定して確認でき、系内圧力が一定となった時点を終点とすることが好ましい。この工程では、アミド化反応に由来する水が副生する。
【0018】
得られたセルロース誘導体(A)中に含まれる、アミド基(a)としては、メチルアミド基、エチルアミド基、プロピルアミド基、イソプロピルアミト゛基、ブチルアミド基、ペンチルアミド基、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基が挙げられる。保湿性の観点から、好ましくは、メチルアミド基、エチルアミド基、プロピルアミド基であり、更に好ましくは、メチルアミド基またはエチルアミド基である。
【0019】
セルロース誘導体(A)に含まれるカルボキシル基(b)は、その塩の形でもよい。
塩の形で用いられる場合の対アニオンの種類としては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)、アミン類(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)、塩基性アミノ酸類(リジン、アルギニンなど)、アンモニア等が挙げられる。
安全性、および、保湿性の観点から、アルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましく、更に好ましくは、ナトリウム、カリウムである。
【0020】
本発明において、得られたセルロース誘導体(A)の「アミド化比率」とは、原料のセルロース誘導体(B)の構成グルコース単位あたりのカルボキシル基(b)がアミド基(a)に置換された置換率を示し、具体的には下記数式(1)に従い、置換度、即ち、構成グルコース単位あたりに含まれるアミド基(a)の平均個数とカルボキシル基(b)の平均個数から求めることができる。
アミド化比率(α)=n1/(n1+n2) (1)
ここで、n1は、アミド化変性された誘導体(A)の構成グルコース単位あたりのアミド基(a)の平均個数で、一般に「アミド基置換度」と呼ばれる数値である。
また、n2はアミド化変性された誘導体(A)の構成グルコース単位あたりのカルボキシル基(b)の平均個数であり、一般に「カルボキシル基置換度」と呼ばれる数値である。 なお、n0はアミド化変性される前のセルロース誘導体(B)の構成グルコース単位あたりのカルボキシル基(b)の平均個数で、一般に「カルボキシル基置換度」または「エーテル化度」と呼ばれる数値であり、n0=n1+n2の関係にある。
但し、これらの平均数とは、セルロース誘導体分子全体としての平均である。
【0021】
アミド化変性の前後のそれぞれのカルボキシル基置換度(n0)および(n2)は、コロイド滴定や、赤外分光法(IR)、或いは核磁気共鳴分光法(NMR)などにより求めることができる。
【0022】
アミド基置換度(n1)は、
(1)直接、Zeisel法(D.G.Anderson, Anal. Chem., 43, 894(1971))により測定する、(2)カルボキシル基を含有する誘導体(B)のカルボキシル基置換度(n0)と、アミド変性セルロース誘導体(A)のカルボキシル基置換度(n2)をコロイド滴定法により求め、それらの値から、n1=n0−n2の関係式から算出することにより求めることができる。
【0023】
コロイド測定法は、具体的には以下の通りである。
濃度既知のアミド変性セルロース誘導体(A)溶液を調製し、これに攪拌下、重量既知の0.005Nメチルグリコールキトサン溶液(和光純薬(株)製、コロイド滴定用)を加え、更にトルイジンブルー指示薬溶液(和光純薬(株)製、コロイド滴定用)を数滴加える。
これを0.0025Nポリビニル硫酸カリウム溶液(和光純薬(株)製、コロイド滴定用)により逆滴定し、滴定量から置換度を算出する。
【0024】
アミド変性セルロース誘導体(A)のカルボキシル基置換度(n2)は、好ましくは、0.2〜2.2、さらに好ましくは0.4〜1.6である。0.2未満の場合、保湿性が劣るため、好ましくなく、また、2.2を超える場合、べたつき感が発生するとともに保湿性が劣るため、好ましくない。
【0025】
アミド化比率は通常0〜1.0であり、保湿性の観点から好ましくは、0.2〜0.8、更に好ましくは、0.3〜0.7である。小さい場合は、アミド化比率が少ないことから保湿性が劣るため好ましくない。大きい場合は、カルボキシル基含量が少なくなるため、水への溶解性が悪くなり、保湿性が劣るため好ましくない。
【0026】
本発明の化粧料としては、化粧水、洗顔クリーム、洗顔フォーム、クレンジングクリーム、クレンジングミルク、クレンジングローション、マッサージクリーム、コールドクリーム、モイスチャークリーム、日焼け止めクリーム、日焼け用オイル、ボディーシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアクリーム、香油、ヘアリキッド、セットローション、カラーリンス、カラースプレー、パーマネンウェーブ液、プレスパウダー、ルースパウダー、アイシャドー、ハンドクリーム、入浴剤が挙げられる。
【0027】
本発明の皮膚外用剤としては、外用医薬品に配合するもの全般が挙げられ、鎮痛剤、消毒殺菌剤、抗真菌剤、核質軟化・剥離剤、皮膚漂白剤、皮膚着色剤、肉芽発生剤、表皮形成剤、壊死組織除去剤、腐食剤、発毛剤、脱水剤、日焼け止め剤、発汗剤、防臭剤、ホルモン剤、ビタミン剤などが挙げられる。
【0028】
本発明の化粧料もしくは、皮膚外用剤には、必須成分であるセルロース誘導体(A)以外に添加剤として界面活性剤、粘剤、油剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粉体、防腐剤、香料、保湿剤 、薬剤、キレート剤、着色剤、美白剤、抗炎症剤、肌荒れ防止剤、制汗剤、ビタミン類、ホルモン類、pH調整剤等を1種以上配合して使用することができる。
【実施例】
【0029】
以下実施例により本発明をさらに説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
製造例1
攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、カルボキシル基を含有するセルロース誘導体として「CMCダイセル1390」(ダイセル化学工業(株)製、エーテル化度(n0)=1.31)10g、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート90gを加え、100℃で1時間攪拌することで、均一に溶解したカルボキシメチルセルロース溶液を得た。
その後、アミド化剤としての40%モノメチルアミン水溶液2.9gを滴下し、150℃で3時間反応させることで粗アミド変性カルボキシメチルセルロース誘導体溶液を得た。
【0031】
50℃まで徐々に冷却した上記の粗アミド変性カルボキシメチルセルロース溶液102.9gをイソプロパノール300g中に投入し、アミド変性カルボキシメチルセルロース誘導体を析出させた。
析出物をホモミキサーで10,000rpmで3分間破砕させてイソプロパノール中に分散させた後、ヌッチェを用いて減圧濾過し、イオン液体とイソプロパノールの混合液から目的物質であるアミド変性カルボキシメチルセルロース誘導体を分離した。
得られた固形物は、さらにイソプロパノール200gで3回繰り返し洗浄し、アルカリで中和を行い、70℃、減圧度−0.09MPaGで24時間乾燥した後、粉砕し、白色粉末状のアミド変性カルボキシメチルセルロース誘導体(A−1)9.7gを得た。n1が0.65、n2が0.66であった。
【0032】
製造例2
40%モノメチルアミン水溶液の仕込量を1.8gにかえること以外は、製造例1と同様にして、反応および精製を行い、白色粉末状のアミド変性カルボキシメチルセルロース誘導体(A−2)9.6gを合成した。n1が0.40、n2が0.91であった。
【0033】
製造例3
カルボキシル基を含有するセルロース誘導体として、「H−CMC」(ダイセル化学工業(株)製、エーテル化度=0.80)を使用し、40%モノメチルアミン水溶液を1.2g使用したこと以外は、製造例1と同様にして、反応および精製を行い、白色粉末状のアミド変性カルボキシメチルセルロース誘導体(A−3)9.5gを得た。n1が0.22、n2が0.58であった。
【0034】
製造例4
40%モノメチルアミン水溶液仕込量を3.0gにかえること以外は、製造例3と同様にして、反応および精製を行い、白色粉末状のアミド変性カルボキシメチルセルロース誘導体(A−4)9.8gを合成した。n1が0.60、n2が0.20であった。
【0035】
比較製造例1
40%モノメチルアミン水溶液仕込量を7.0gにかえること以外は、製造例1と同様にして、反応および精製を行い、白色粉末状のセルロース誘導体(A’−1)9.5gを合成した。n1は1.31、n2は0であった。
【0036】
実施例1〜4、比較例1〜6
製造例1〜4および比較製造例1で得られたアミド変性カルボキシメチルセルロース誘導体を使用して、精製水で希釈し、それぞれの1重量%水溶液を作成し、実施例1〜4および比較例1として性能評価した。
また、市販の「CMCダイセル1390」(ダイセル化学工業(株)製)、「ヒアルロン酸FCH」(紀文フードケミファ(株)製)、グリセリン(和光純薬工業(株)製)、PEG−400(分子量400のポリエチレングリコール;和光純薬工業(株)製)を使用して、それぞれの1重量%水溶液を作成し、比較例2〜5として性能評価した。さらに、保湿剤成分を何も入れない 単なる精製水を比較例6として性能評価した。
【0037】
以下の方法により、保湿性、べたつき性、皮膚刺激性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
<保湿性評価>
恒温恒湿室(25℃、50%R.H.)内でヒト前腕屈側部に、1cm2当たり10μLの各試料水溶液を塗布した後、20分間放置した。
次いで、皮表角層水分量測定装置[SKICON−200(アイ・ビイ・エス(株)社製)]により、塗布直後の表皮コンダクタンス(k2)を測定し、塗布直前の表皮コンダクタンス(k1)との比(k2/k1)を求めた。
同様に、他のパネラー8人についても、この比を求め、9人のパネラーの算術平均値(小数点以下1桁に四捨五入)を以下の評価基準で評価した。
値が大きいほど皮膚に対する保湿効果が高いことを示す。
(評価基準)
◎:1.6以上
○:1.3〜1.5
△:1.0〜1.2
×:0.9以下
【0040】
<皮膚刺激性評価>
皮膚刺激性については、各1重量%水溶液を用い、9人のパネラーによるパッチテスト(クローズド、48時間、上腕内側)により評価した。
個々人の紅斑の度合いによる評点の判定基準は以下の通りである。
0点:反応(紅斑)無し
1点:ごく軽度の紅斑
2点:明瞭な紅斑
3点:強度の紅斑
次に、9人のパネラーの算術平均値(小数点以下1桁に四捨五入)を求め、以下の評価基準で○から×3段階で評価した。
○(紅班発生を全く認めない):0点
△(紅班発生を僅かに認める):0.1〜1.0点
×(紅班発生を多く認める):1.1点以上
【0041】
<べたつき感評価>
9名のパネラーによりべたつき感を評価した。
前腕部に各1重量%水溶液0.2mL塗布した後、官能評価により判定した。
個々人のべたつき感の評点による評価基準は以下の通りである。
2点:好ましい
1点:やや好ましい
0点:ふつう
−1点:やや好ましくない
−2点:好ましくない
次に、9人のパネラーの算術平均値(小数点以下1桁に四捨五入)を求め、以下の評価基準で○から×3段階で評価した。
○(べたつき感を感じない) :1.0点以上
△(べたつき感を僅かに感じる):−0.5〜0.9
×(べたつき感を多く感じる):−0.6点以下
【0042】
表1で明らかなように、本発明のセルロース誘導体を保湿剤として用いた実施例1〜4はいずれも、保湿性に優れ、皮膚刺激性が少なく、かつべたつきのない良好な使用感を兼ね備えていることがわかる。
一方、カルボキシメチル基がすべてアミド変性されたためアミド化率が高過ぎる比較例1やアミド変性されていないカルボキシメチルセルロースそのものである比較例2は、保湿性が不十分である。
また、保湿剤成分として低分子化合物であるグリセリンを使用した比較例4は、べたつきが感じられる。また、PEG−400は製造時および保管中の空気酸化によるホルムアルデヒドを微量だが含有するため、比較例5では、皮膚刺激性が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のセルロース誘導体は、保湿剤として、化粧料基材、皮膚外用剤基材などに配合して利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子全体の平均として、構成グルコース単位当たり0.2個以上のアミド基(a)と0.2個以上のカルボキシル基(b)を有するセルロース誘導体(A)を必須成分として含有することを特徴とする保湿剤。
【請求項2】
下記数式(1)で表されるアミド化比率(α)が0.2〜0.8である請求項1記載の保湿剤。
アミド化比率(α)=n1/(n1+n2) (1)
[但し、n1はセルロース誘導体(A)の構成グルコース単位当たりのアミド基の平均個数、n2は構成グルコース単位当たりのカルボキシル基の平均個数を表す。]
【請求項3】
該セルロース誘導体(A)が、カルボキシメチルセルロースをアミド変性したアミド変性カルボキシメチルセルロースである請求項1または2記載の保湿剤。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の保湿剤が配合された化粧料。
【請求項5】
請求項1〜3いずれか記載の保湿剤が配合された皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−143892(P2009−143892A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288717(P2008−288717)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】