説明

保湿性粒子およびその製造方法

【課題】化粧料等の皮膚に使用する製品に配合した際に、しっとり感とさらさら感とを両立できる保湿性粒子を提供する。
【解決手段】保湿性粒子は、架橋ポリアクリル酸エステル粒子におけるカルボン酸エステルの一部が加水分解された構造を有している球形状である。出発原料である架橋ポリアクリル酸エステル微粒子は球形状であり、該球形状の表面にあるカルボン酸エステルが加水分解されて、保湿性粒子の表面にポリアクリル酸が存在すると共に、内部にカルボン酸エステルが存在するよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、化粧料等への添加剤として好適に用いられる保湿性粒子およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーム状、ゲル状あるいは液体性状(これらを総称して、以下液状という。)の剤型を有する化粧料は、水あるいはアルコールのような分散媒体に種々の化合物を配合した組成物である。化粧料には、配合した各々の化合物を分散する分散安定剤、性状を安定に維持する保形性能剤、保湿を調整する保湿剤として種々の高分子素材が用いられている。
【0003】
前記高分子素材としては、セルロース、キトサン、カルボキシメチルセルロース塩、プルラン、ヒアルロン酸、アルギン酸、グルクロン酸、キサンタンガム、グアーガム、シゾフィラン、ポルフィランのような水溶性の多糖誘導体、あるいは、コラーゲン、ポリグルタミン酸などのタンパク質やポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール等の合成高分子のような、水溶性高分子が用いられている。このような水溶性高分子を配合した化粧料は、皮膚に塗布した際に特有のべたつき感を与えるものや乾いた際につっぱり感を与えるものが多い。
【0004】
最近では、天然の高分子素材は、狂牛病や鳥インフルエンザ、豚インフルエンザの問題により動物由来の保湿成分は嫌われるようになっている。また、動物由来以外の天然の高分子素材であっても、高分子素材の分子構造が完全に判明していないものも多く、肌への使用には、さまざまなリスクを負うこともあり得る。更に、天然の高分子素材は、その抽出・精製が煩雑であり、コスト高になる問題もある。こうした背景から、分子構造があらかじめ判明している汎用的な樹脂を、分散安定剤、保形剤、保湿剤等として用いることがニーズとして存在する。
【0005】
例えば、人工の高分子素材としては、吸水樹脂として開発された球状の粉末がある(例えば、特許文献1〜6参照)。吸水樹脂は、水溶性のモノマーと水溶性の架橋モノマーを有機溶媒中で重合させる逆相懸濁重合法で生成され、分子鎖の中に水を抱え込む設計がなさている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭34−10644号公報
【特許文献2】特公昭53−46389号公報
【特許文献3】特開昭57−21405号公報
【特許文献4】特開昭62−172006号公報
【特許文献5】特開昭56−26909号公報
【特許文献6】特開昭57−158209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記吸水樹脂は、水に浸漬した際に水を抱え込む吸水性は高いものの、親水基が表面を向いていないため、吸湿性は比較的小さい。更に、吸水樹脂は、水を含むと膨潤し過ぎるため、さらさら感がなく、逆にべとつき感が生じる問題が生じる。
【0008】
すなわち本発明は、従来の技術に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、化粧料等の皮膚に使用する製品に配合した際に、しっとり感とさらさら感を同時に与えることができる保湿性粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の保湿性粒子は、
下記化学式で表される架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子におけるカルボン酸エステルの一部が加水分解された構造を有する球形状であることを特徴とする。
【化1】

【化2】

前記化学式1および化学式2のRは、脂肪族または芳香族の炭化水素基から選択される疎水性の官能基を表す。
請求項1に係る発明によれば、架橋(メタ)アクリル酸エステル粒子におけるカルボン酸エステルの一部が加水分解された構造を有しているので、加水分解により生成されたカルボシキル基が示す親水性によって、保湿性粒子は吸湿性および吸水性を有している。また、保湿性粒子は、カルボキシル基と疎水基を有するエステルとを有し、カルボシキル基が示す親水性により吸湿および吸水するものの、疎水基を有するエステルが示す疎水性により水となじまず膨潤しない疎水部分があるために一部だけが膨潤するので、水を過剰に吸収しない。すなわち、保湿性粒子は、例えば化粧料等の皮膚に使用する製品に配合した際に、べたつき感を抑えてしっとり感を向上することができる。更に、保湿性粒子は、一部が湿潤するものの、球状の(メタ)アクリル酸エステル粒子に由来する強度および特性を維持しているので、皮膚に使用する製品に配合した際に、肌の上でのコロガリ、肌触りが良好となる。このように、本願の請求項1に係る保湿性粒子は、皮膚に使用する製品に用いた場合に、しっとり感とさらさら感とを両立させることができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、前記架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル微粒子は球形状であり、該球形状の表面にあるカルボン酸エステルが加水分解され、表面にポリ(メタ)アクリル酸が存在すると共に、内部にカルボン酸エステルが存在するよう構成されることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、保湿性粒子は、表面にカルボキシル基を有し、内部に疎水基を有するエステルを有するため、表面から水を吸湿および吸水するものの、内部に水となじまず膨潤しない疎水部分があるために、表面は膨潤するものの、内部は球状の(メタ)アクリル酸エステル粒子の強度および特性を維持している。従って、保湿性粒子は、例えば化粧料等の皮膚に使用する製品に配合した際に、表面の親水性によるしっとり感が好適に発現されると共に、球状のポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子の特性によって、肌の上でのコロガリ、肌触りが良好となる。
【0011】
請求項3に係る発明では、前記架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子を加水分解して生成したカルボン酸の一部または全てが、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属によって金属塩化された構造を有することを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、保湿性粒子は、金属塩化された構造を有することで、pHの調整を行い易く、化粧料等の皮膚に使用する製品として製品化が容易である。
【0012】
請求項4に係る発明では、湿潤状態での平均粒径が1〜1000μmであることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、平均粒径を当該範囲に設定することで、化粧料等の皮膚に使用する製品に配合した際に、きしみ感が抑制されて好適な感触が得られる。
【0013】
請求項5に係る発明では、カチオン交換容量が、0.15〜10meq/gの範囲に設定されることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、カチオン交換容量を当該範囲に設定することで、得られる保湿性粒子の球形状が損なわれ難く、かつ化粧料等の皮膚に使用する製品に配合した際に所望の保湿効果が得られ易い。
【0014】
請求項6に係る発明では、飽和吸水量が、10〜80g/gの範囲にあることを要旨とする。
請求項6に係る発明によれば、飽和吸水量を当該範囲に設定することで、化粧料等の皮膚に使用する製品に配合した際にしっとり感が得られ易い。
【0015】
請求項7に係る発明では、吸湿量が、1.15〜2.5g/gの範囲にあることを要旨とする。
請求項7に係る発明によれば、吸湿量を当該範囲に設定することで、化粧料等の皮膚に使用する製品に配合した際にしっとり感が得られ易い。
【0016】
請求項8に係る発明では、円形度が、水分散状態で0.95〜1.0の範囲にあることを要旨とする。
請求項8に係る発明によれば、円形度を当該範囲に設定することで、化粧料等の皮膚に使用する製品に配合した際にさらさら感が得られ易い。
【0017】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項9に係る発明の保湿性粒子の製造方法は、
下記化学式で表される球形状に形成された架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子を、アルカリ中で有機溶媒を加えて反応することで、該ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子におけるカルボン酸エステルの一部を加水分解するようにしたことを特徴とする。
【化1】

【化2】

前記化学式1および化学式2のRは、脂肪族または芳香族の炭化水素基から選択される疎水性の官能基を表す。
請求項9に係る発明によれば、簡単な処理で架橋(メタ)アクリル酸エステル粒子におけるカルボン酸エステルの一部を適切に加水分解することができ、カルボキシル基を有する保湿性粒子を簡単・確実に製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る保湿性粒子およびその製造方法で得られた保湿性粒子によれば、化粧料等の皮膚に使用する製品に配合した際に、しっとり感とさらさら感を同時に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な実施例に係る保湿性粒子を示す概略断面説明図である。
【図2】実施例1の保湿性粒子の赤外吸収スペクトルを示すグラフ図である。
【図3】実施例9の保湿性粒子の表面部分および内部の夫々で赤外吸収スペクトルを測定した結果を示すグラフ図である。
【図4】参考例、実施例3および8の保湿性粒子の赤外吸収スペクトルを示すグラフ図である。
【図5】参考例、実施例3,4,8,9,10,11のカチオン交換容量をプロットしたグラフ図である。
【図6】参考例、実施例3,4,10,14、比較例1の放置時間と吸湿量との関係を示すグラフ図である。
【図7】参考例、実施例3、比較例2および3の放置時間と吸湿量との関係を示すグラフ図である。
【図8】実施例1を2500倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例1を10000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例3を2500倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例3を10000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願発明に係る保湿性粒子は、下記の化学式1で表される架橋ポリアクリル酸エステルまたは下記の化学式2で表される架橋ポリメタクリル酸エステルの誘導体である。ここで、化学式1および化学式2のRは、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル基やフェニル基、ベンジル基等であり、脂肪族または芳香族の炭化水素基から選択される疎水性の官能基を表す。なお、ポリアクリル酸エステルおよび架橋ポリメタクリル酸エステルをまとめて、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子と以下表記する。保湿性粒子は、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子から基本的に構成され、該架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステルにおけるカルボン酸エステルの一部を加水分解した構造を有している。また、保湿性粒子は、その形状が球形状であり、球形状に形成された架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子の形状がおおよそ維持されている。保湿性粒子は、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子の球形状表面にあるカルボン酸エステルが加水分解されて、球形状表面部分にポリアクリル酸が存在すると共に、球形状内側部分に疎水基を有するカルボン酸エステルが存在するよう構成される(図1参照)。
【化1】

【化2】

前記化学式1および化学式2のRは、脂肪族または芳香族の炭化水素基から選択される疎水性の官能基を表す。
【0021】
出発原料として用いる架橋ポリアクリル酸エステル粒子は、アクリル酸エステルモノマーを架橋剤により架橋して微細な球形状とした粒子が用いられる。球形状の架橋ポリアクリル酸エステル粒子の製造方法は、架橋剤として、アルカンジアクリレート、フェニルジアクリレート、アルカントリアクリレート、アルカンテトラアクリレートもしくは、アルカンジメタクリレート、アルカントリメタクリレート、アルカンテトラメタクリレート、フェニルジメタクリレート、ジビニルベンゼン等の二官能以上の多官能の架橋剤を用いたアクリル酸エステルの乳化共重合、懸濁共重合法等があげられる。架橋ポリアクリル酸エステル粒子の製造において使用される架橋剤のモル濃度は、多官能のアクリレートの場合、全モノマーに対して10〜100モル%の範囲で配合するよう設定される。この場合に、架橋剤のモル濃度が10モル%未満であると、保湿性粒子を製造するときの加水分解反応の際に架橋剤が直ちに加水分解を起こすので、球形を保つことができなくなる不都合がある。また、架橋剤として酸、アルカリに安定なジビニルベンゼンや多官能性のメタクリレート、アクリルアミドやジビニルベンゼンを使用する場合には、全モノマーに対して10〜50モル%の範囲で配合するが好ましい。この場合に、架橋剤のモル濃度が50モル%より大きくなると、架橋剤が疎水性であるため、保湿性粒子の製造時に加水分解反応を起こしても、架橋剤がポリアクリル酸の親水性を阻害して保湿性粒子全体として疎水性を示し、化粧料等の皮膚に使用する製品に配合した際に必要とされる保湿効果が得られない。なお、球形状の架橋ポリメタクリル酸エステル粒子の製造方法は、架橋ポリアクリル酸アルキルエステル粒子の場合と同様である。
【0022】
なお、アクリル樹脂には、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルとがあるが、出発原料としてはアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの何れであってもよい。
【0023】
前記吸湿性粒子は、湿潤状態での平均粒子の直径(以下、平均粒径という。)が1〜1000μmの範囲にされるのが望ましく、より好ましくは3〜300μmの範囲の球形状とされる。吸湿性粒子の平均粒子径が1000μmより大きくなると、化粧料等の皮膚に使用する製品に用いた場合にきしみ感を生じ易い。また、吸湿性粒子の平均粒径が1μmより小さくなると、化粧料等の皮膚に使用する製品に用いた場合に洗い流すことが困難になり、また更に小さすぎると、表皮吸収をおこすことが考えられ、化粧料等としての機能を損なう可能性がある。なお、平均粒径が3〜200μmの範囲にある吸湿性粒子は、好適な球状を示し、容易に製造することができる。吸湿性粒子の平均粒径は、吸湿性粒子を吸水量以上の大過剰の水中に分散させて測定した値であって、マイクロスコープで得られた画像から画像処理装置によって体積平均粒径が算出される。1μ以下のサイズの吸湿性粒子は、光散乱法によって測定される。
【0024】
前記保湿性粒子の粒径は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子の粒径に由来するので、湿潤状態での平均粒径が1〜1000μmの範囲にあり、好ましくは3〜200μmの範囲にある球形状のポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子が用いられる。
【0025】
前記保湿性粒子は、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子が部分的に加水分解されて生成したカルボン酸の一部または全てが、アルカリ金属によって金属塩化された構造を有し、しかも水に不溶である。アルカリ金属としては、水酸化物のアルカリ金属、アルカリ土類金属を用いることが好ましく、特に、水酸化ナトリウムによるナトリウム、水酸化カリウムによるカリウム、水酸化マグネシウムによるマグネシウム等がよい。
【0026】
前記保湿性粒子は、カチオン交換容量が0.15〜10meq/gの範囲にあるのが望ましく、より好ましくは0.2〜6.5meq/gの範囲に設定される。ここで、保湿性粒子のカチオン交換容量が10meq/gより大きくなると、球形状が損なわれ、0.15meq/gより小さくなると疎水性を示し、保湿材としての機能が低下してしまう。なお、カチオン交換容量が0.15〜6.5meq/gの範囲にある保湿性粒子は、好適な球形状を示し、容易に製造することができる。
【0027】
前記保湿性粒子は、飽和吸水量が10〜80g/gの範囲になるよう設定されるのが望ましく、より好ましくは20〜70g/gの範囲とされる。飽和吸水量は、水に浸漬した後の保湿性粒子の重量から乾燥時の保湿性粒子の重量を減じた値を乾燥時の保湿性粒子の重量で除して算出される値である。
・飽和吸水量=(「吸水後の保湿性粒子の重量」−「乾燥時の保湿性粒子の重量」)/「乾燥時の保湿性粒子の重量」
ここで、保湿性粒子の乾燥条件は、該保湿性粒子に含まれる水をメタノールで置換し、更にメタノールをエーテルで置換した後に、24時間減圧乾燥している。また、吸水後の保湿性粒子の重量は、前記条件により乾燥した保湿性粒子を水に3時間浸漬して吸水させた後の重量を測定している。保湿性粒子は、飽和吸水量が10g/g未満であると疎水性が強くなり、水に馴染み難くなる。これに対し、保湿性粒子は、飽和吸水量が80g/gより大きくなると、保湿性粒子の形がつぶれ易くなり、保湿性粒子を皮膚に使用する製品に配合した際に肌に対する感触改良効果が低下する不都合がある。
【0028】
前記保湿性粒子は、吸湿量が1.15〜2.5g/gの範囲になるよう設定されるのが望ましく、より好ましくは1.22〜2.2g/gの範囲とされる。吸湿量は、特定の湿度環境に所定時間放置した後の保湿性粒子の重量を乾燥時の保湿性粒子の重量で除して算出される値である。
・吸湿量=「吸湿後の保湿性粒子の重量」/「乾燥時の保湿性粒子の重量」
ここで、保湿性粒子の乾燥条件は、該保湿性粒子に含まれる水をメタノールで置換し、更にメタノールをエーテルで置換した後に、24時間減圧乾燥している。また、吸湿後の保湿性粒子の重量は、前記条件により乾燥した保湿性粒子を、温度40℃、湿度90%の条件に設定した空のサンプル瓶の中に60時間放置して吸湿させた後の重量を測定している。保湿性粒子は、吸湿量が1.15g/g未満であると疎水性が強くなり、水に馴染み難くなる。これに対し、保湿性粒子は、吸湿量が2.5g/gより大きくなると、軟らかすぎて保湿性粒子の形がつぶれ易くなり、保湿性粒子を皮膚に使用する製品に配合した際に肌に対する感触改良効果が低下する不都合がある。
【0029】
前記保湿性粒子は、水分散状態での円形度が0.95〜1.0の範囲にあるのが望ましい。ここで、円形度は、保湿性粒子を撮像した画像の周囲長と同じ投影面積の真円の直径から算出した周囲長を、保湿性粒子を撮像した画像の周囲長で除した値である。なお、円形度は、真円が「1」で、形状が複雑になるほど小さい値になる。保湿性粒子は、円形度が0.95未満になると、例えば化粧料として用いた場合に肌の表面での転がりが悪くなるので、所望の化粧料の伸びや肌触りが得られ難くなる不都合がある。
円形度=「保湿性粒子を撮像した画像の周囲長と同じ投影面積の真円の直径から算出した周囲長」/「保湿性粒子を撮像した画像の周囲長」
【0030】
本願発明に係る保湿性粒子は、架橋(メタ)アクリル酸エステル粒子におけるカルボン酸エステルの一部が加水分解された構造を有しているので、加水分解により生成されたカルボシキル基が示す親水性によって、吸湿性および吸水性を有している。また、保湿性粒子は、カルボキシル基と疎水性の官能基(疎水基)を有するエステルとを有し、カルボシキル基が示す親水性により吸湿および吸水するものの、疎水基を有するエステルが示す疎水性により水となじまず膨潤しない疎水部分があるために一部だけが膨潤するので、水を過剰に吸収しない。すなわち、保湿性粒子は、例えば化粧料等の皮膚に使用する製品に配合した際に、べたつき感を抑えてしっとり感を向上することができる。更に、保湿性粒子は、一部が湿潤するものの、球状の(メタ)アクリル酸エステル粒子に由来する強度および特性を維持しているので、皮膚に使用する製品に配合した際に、肌の上でのコロガリ、肌触りが良好となる。このように、本願の請求項1に係る保湿性粒子は、皮膚に使用する製品に用いた場合に、しっとり感とさらさら感とを両立させることができる。このように、本願発明に係る保湿性粒子は、皮膚に使用する製品に用いた場合に、しっとり感とさらさら感とを両立させることができる。また、保湿性粒子は、球形状であるので、化粧料等の皮膚に使用する製品に用いた場合に、製品の伸びを向上させることができる。更に、保湿性粒子は、カルボアニオンの生成により電荷的反発が生じるので、製品を構成する組成物の分散安定性を向上することができる。
【0031】
しかも、保湿性粒子は、表面にカルボキシル基を有し、内部に疎水基を有するエステルを有するため、表面から水を吸湿および吸水するものの、内部に水となじまず膨潤しない疎水部分があるために、表面は膨潤するものの、内部は球状の(メタ)アクリル酸エステル粒子の強度および特性を維持している。従って、保湿性粒子は、例えば化粧料等の皮膚に使用する製品に配合した際に、表面の親水性によるしっとり感が好適に発現されると共に、球状の(メタ)アクリル酸エステル粒子の特性によって、肌の上でのコロガリ、肌触りが良好となる。
【0032】
前記保湿性粒子は、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子が部分的に加水分解されて生成したカルボン酸の一部または全てが、アルカリ金属によって金属塩化された構造を有し、しかも水に不溶である。このように、保湿性粒子は、金属塩化された構造を有することで、pHの調整を行い易く、化粧料等の皮膚に使用する製品として製品化が容易である。
【0033】
次に、保湿性粒子の製造方法について説明する。前述した平均粒径の範囲にある架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子を用意する。また、アルカリ溶液と有機溶媒とを混合した反応溶媒を別途調製する。ここで用いられるアルカリ溶液は、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物等を水に分散したものである。また、有機溶媒としては、エタノール、メタノール等のアルコールやこれらに混ざるプロトン性溶媒、あるいはアセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性溶媒等の一種または二種以上が用いられる。
【0034】
前記有機溶媒は、アルカリ溶液に対して、8〜800wt%の範囲、好ましくは10〜350wt%の範囲で混合される。有機溶媒の濃度が8wt%未満になると、アルカリ水溶液が架橋アクリル酸エステル微粒子に親和せず、架橋ポリアクリル酸エステルにおいてカルボン酸エステルの加水分解反応が進まない。これに対し、有機溶媒の濃度が800wt%より大きくなると、アルカリが有機溶媒に溶解せずに析出するので、効率的にカルボン酸エステルを加水分解することができない。
【0035】
前記アルカリ溶液の濃度は、0.5〜5.0Mの範囲、好ましくは1.0〜3.5Mの範囲に設定される。アルカリ溶液の濃度が0.5M未満であると、カルボン酸エステルの加水分解反応が進行せず、工業的に採用することができない。これに対して、アルカリ溶液の濃度が5.0Mより大きいと、カルボン酸エステルの加水分解反応が制御し難い不都合がある。
【0036】
出発原料である架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子は、反応溶媒に対して5〜30wt%の範囲、好ましくは10〜20wt%の範囲で配合する。架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子の配合量が5wt%未満では、得られる保湿性粒子の収率が悪く、工業的に採用することができない。これに対して、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子の配合量が30wt%より大きいと粘性が大きくなり、反応し難くなる。
【0037】
そして、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子を、アルカリ溶液と有機溶媒とからなる反応溶媒に浸漬し、15℃〜90℃の範囲、好ましくは35〜80℃の範囲となる反応溶媒の温度条件(以下、反応温度という)で、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子におけるカルボン酸エステルを加水分解する。反応温度を15℃未満とすると、加水分解反応が進まないので、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子が疎水性のままであり、反応温度を90℃より大きくすると、使用する反応溶媒が限定されるので好ましくない。また、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子を反応溶媒に浸漬する時間(以下、反応時間という。)は、1分〜48時間の範囲、好ましくは1分〜24時間の範囲で設定される。反応時間が1分未満であると、加水分解反応が進まないので、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子が疎水性のままであり、反応時間が48時間を超えると、加水分解反応が進みすぎて得られた保湿性粒子の吸水性や吸湿性が高くなり過ぎる不都合がある。
【0038】
反応溶媒への浸漬処理を行った後に、反応溶媒から得られた保湿性粒子を取り出し、この保湿性粒子を水で洗浄する。なお、水洗浄だけで回収した場合、乾燥するならば凍結乾燥がよい。また、保湿性粒子を溶媒置換して回収する際は、水で洗浄後、メタノールやジエチルエーテル等によって置換し、乾燥する。そして、ろ取等の回収方法によって、所望の平均粒径、例えば湿潤状態での平均粒径が1〜1000μmの範囲にある保湿性粒子を単離する。なお、保湿性粒子の回収方法は、ろ取に限定するものではなく、遠心分離等その他の方法も採用可能である。
【0039】
このように、本願発明に係る保湿性粒子の製造方法によれば、簡単な処理でポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子におけるカルボン酸エステルの一部を適切に加水分解することができ、カルボキシル基を有する保湿性粒子を簡単・確実に製造することができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明に係る保湿性粒子およびその製造方法につき、好適な実施例を挙げて以下に説明する。実施例1〜13は、以下の表1に示すように条件を変えて、カチオン交換容量、拘束水の融点、飽和吸水量、吸湿量および円形度について測定した。なお、参考例は、球形状の架橋ポリアクリル酸メチル粒子(積水化成品工業(株)製:商品名ARX−30,平均粒径30μm)である。
【0041】
【表1】

【0042】
(実施例1)
実施例1では、球形状の架橋ポリアクリル酸メチル粒子(積水化成品工業(株)製:商品名ARX−30,平均粒径30μm)を、3Mの水酸化カリウム(KOH)水溶液とアセトンとからなる反応溶媒(アセトン濃度:20.8wt%)に分散し、反応温度を60℃に設定して、16時間に亘ってかき混ぜつつ加水分解処理を行った。16時間経過後に、反応溶媒から生成物をろ取し、水、メタノールおよびジエチルエーテルで洗浄して乾燥することで、前記架橋ポリアクリル酸メチル粒子のカルボン酸アルキルエステルが一部加水分解された構造を有する実施例1に係る保湿性粒子を得た。
【0043】
実施例1の保湿性粒子の赤外吸収スペクトルをフーリエ変換型赤外分光装置で測定したところ、図2に示すように、未加水分解処理の架橋ポリアクリル酸メチル粒子と比べて、1570cm−1付近にカルボアニオンに由来するシャープな吸収が現れ、架橋ポリアクリル酸メチル粒子で加水分解が起こったことが明らかである。なお、赤外分光装置としては、日本分光株式会社社製の製品名FT/IR−700を用いた。
【0044】
(実施例2)
実施例2では、球形状の架橋ポリアクリル酸メチル粒子(積水化成品工業(株)製:商品名ARX−30,平均粒径30μm)を、3Mの水酸化カリウム(KOH)水溶液とアセトンとからなる反応溶媒(アセトン濃度:20.8wt%)に分散し、反応温度を60℃に設定して、24時間に亘ってかき混ぜつつ加水分解処理を行った。24時間経過後に、反応溶媒から生成物をろ取し、水、メタノールおよびジエチルエーテルで洗浄して乾燥することで、前記架橋ポリアクリル酸メチル粒子のカルボン酸アルキルエステルが一部加水分解された構造を有する実施例2に係る保湿性粒子を得た。なお、実施例2の保湿性粒子の赤外吸収スペクトルを実施例1と同様に測定したところ、1570cm−1付近にカルボアニオンに由来するシャープな吸収が現れることが分かった。
【0045】
(実施例3〜14)
実施例3〜13では、球形状の架橋ポリアクリル酸メチル粒子(積水化成品工業(株)製:商品名ARX−30)を、3Mの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を少なくとも含む反応溶媒に分散し、所定の反応温度でかき混ぜつつ加水分解処理を行った。実施例14では、球形状の架橋ポリアクリル酸メチル粒子(積水化成品工業(株)製:商品名ARX−30)を、3Mの水酸化カリウム(KOH)水溶液を少なくとも含む反応溶媒に分散し、所定の反応温度でかき混ぜつつ加水分解処理を行った。所定の反応時間経過後に、反応溶媒から生成物をろ取し、水、メタノールおよびジエチルエーテルで洗浄して乾燥することで、前記架橋ポリアクリル酸メチル粒子のカルボン酸アルキルエステルが一部加水分解された構造を有する実施例3〜14に係る保湿性粒子を得た。なお、実施例3〜14は、以下の条件の違いがある。
【0046】
・反応温度は、実施例3〜11および13,14が60℃に設定され、実施例12が35℃に設定される。
・架橋ポリアクリル酸メチル粒子の平均粒径は、実施例3〜6,8〜14が30μmであり、実施例7が15μmである。
・反応時間は、実施例3,5〜7,12および13が16時間であり、実施例4が12時間であり、実施例8および14が6時間であり、実施例9が7.5時間であり、実施例10が2時間であり、実施例11が4時間に設定される。
・反応溶媒は、実施例3〜5,7〜12が3Mの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液とアセトンとを混合したものであり、実施例6が3Mの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液とエタノール(エタノール濃度:20.8wt%)を混合したものである。実施例13の反応溶媒は、有機溶媒を加えずに3Mの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液のみで構成されている。実施例14は、3Mの水酸化カリウム(KOH)水溶液とアセトンとを混合したものが反応溶媒として用いられる。
・アセトン濃度は、実施例3,4,7〜12および14が20.8wt%に設定され、実施例5が10.4wt%に設定に設定される。
【0047】
実施例9の保湿性粒子について、表面部分および内部の夫々の赤外吸収スペクトルを、フーリエ変換型赤外分光装置(FT-IR)で測定したところ、図3に示すように、表面部分では、アルキルエステル結合に由来する吸収が小さく、カルボアニオンに由来するシャープな吸収が現れている。また、実施例9の保湿性粒子の内部では、エステル結合に由来する吸収が大きく現れる一方、カルボアニオンに由来する吸収が見られない。すなわち、実施例9の保湿性粒子では、架橋ポリアクリル酸メチル粒子の表面部分で加水分解が起こり、内部において加水分解が起きていないことが確認された。
【0048】
実施例3〜14の保湿性粒子の赤外吸収スペクトルを実施例1と同様に測定したところ、実施例3〜10および14では、実施例1と同じように1570cm−1付近にカルボアニオンに由来するシャープな吸収が現れることが分かった。しかし、実施例11〜13では、1570cm−1付近でのカルボアニオンに由来する吸収が小さかった。また、図4に示すように、反応時間が長くなるにつれて、エステル結合に由来する吸収が小さくなる一方、カルボアニオンに由来する吸収が大きく現れることから、反応時間が長くになるとエステル結合の加水分解反応が進み、より多くのカルボキシル基が生成されることが分かった。
【0049】
実施例1〜14の保湿性粒子について、カチオン交換容量を調べた。実施例1〜14の保湿性粒子を0.1MのHClで酸処理後、水で洗浄し、凍結乾燥した。乾燥後の実施例1〜14の保湿性粒子100mgとイオン交換水50mlを1時間攪拌した混合液を、0.05MのNaOHで滴定し、滴定曲線を作成し、pH7.0のときの滴定量からイオン交換容量を算出した。なお、測定装置は、東亜ディーケーケー(株)のTOAIONMETER IM−40Sであり、同社製GS−50HSの微小ガラス電極を用いて測定した。図5に示すように、反応時間が長くなるにつれて、カチオン交換容量(図5のカルボシキル基量)が大きくなることから、反応時間が長くなるとエステル結合の加水分解反応が進み、より多くのカルボキシル基が生成されることが分かった。
【0050】
実施例1〜14の保湿性粒子について、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株):DSC6200,接続ステーションEXTAR6000)を用い、各粒子10mgに水を5μL添加し、水の熱的挙動により各粒子の保湿性に直接関係する水を拘束する能力を調べた。冷却装置(HAAKE製EK−90 SII)を用いて、実施例1〜14の保湿性粒子を20℃から50℃に昇温した後に−50℃まで冷却した。そして、−50℃から50℃への昇温および50℃から−50℃への降温を4回繰り返して、4回目の昇温時における水の融点を拘束される水の融点として示差走査熱量計で測定した。その結果を表1に示す。
【0051】
実施例1〜14の保湿性粒子の飽和吸水量を、ティーバック法で調べた。実施例1〜14の保湿性粒子の夫々を、シルク製のティーバック(東レ株式会社製:寸法200mm×100mm)に0.2g(乾燥時の重量)入れ、300mLの純水中に3時間浸漬する。次に、ティーバックを引き上げて10分間水切りを行った後、膨潤した実施例1〜14の保湿性粒子を含むティーバックの重量を測定し、空のティーバックの重量を減じて、浸漬処理後の実施例1〜14の保湿性粒子の重量を算出する。そして、浸漬処理後の実施例1〜14に係る保湿性粒子の重量から乾燥時の実施例1〜14に係る保湿性粒子の重量を減じた値を乾燥時の実施例1〜14に係る保湿性粒子の重量で除して、夫々の実施例について飽和吸水量を算出する。その結果を反応時間と飽和吸水量との関係でまとめ、以下の表2に示す。なお、比較例1として、吸水樹脂として用いられるビーズ状のポリアクリル酸ソーダ(住友精化株式会社製、商品名:アクアキープNF)について、前述したティーパック法で飽和吸水量を算出した。なお、保湿性粒子の乾燥条件は、該保湿性粒子に含まれる水をメタノールで置換し、更にメタノールをエーテルで置換した後に、24時間減圧乾燥している。
【0052】
【表2】

【0053】
表1に示すように、加水分解処理を行っていない参考例と比べて、実施例1〜14に係る保湿性粒子の飽和吸水量が向上することが確認できる。また、表2に示すように、比較例1の吸水樹脂の飽和吸水量に及ばないものの、化粧料等の皮膚に用いる用途として十分な飽和吸水量を示すことが分かった。また、有機溶媒としてエタノールを用いることで(実施例6参照)、アセトンを用いた場合と比較して飽和吸水量が向上することが判明した。更に、反応時間が長くなるにつれて、飽和吸水量も多くなり、反応時間を適宜に設定することで、吸水能力を簡単に調整できることが明らかである。
【0054】
次に、実施例1〜14に係る保湿性粒子の吸湿量について調べた。実施例1〜14の保湿性粒子の夫々について、0.5g(乾燥時の重量)精秤し、温度40℃、湿度90%の条件に設定した空のプラスチック製サンプル瓶の中に放置する。サンプル瓶の中に放置してから所定時間経過した後に、吸湿処理後の実施例1〜14の保湿性粒子を取り出し、重量を測定する。吸湿量は、吸湿処理後の保湿性粒子の重量を乾燥時の保湿性粒子の重量で除して算出される。なお、表1および2に示す吸湿量は、吸湿処理を60時間に設定した値である。また、保湿性粒子の乾燥条件は、該保湿性粒子に含まれる水をメタノールで置換し、更にメタノールをエーテルで置換した後に、24時間減圧乾燥している。
【0055】
表1に示すように、加水分解処理を行っていない参考例と比べて、実施例1〜14に係る保湿性粒子の飽和吸水量が向上することが確認できる。図6は、参考例、実施例3,4,10,14および前記比較例1について、吸湿処理の時間を変化させた場合の吸湿量をプロットしたグラフ図である。図6に示すように、反応溶媒での反応時間が長くなるにつれて、吸湿量も多くなり、反応時間を適宜に設定することで、吸湿能力を簡単に調整できることが明らかである。また、反応時間が比較的長く設定された実施例3および4は、比較例1の吸水樹脂よりも高い吸湿能力を示すことが確認された。
【0056】
図7は、参考例、実施例3、比較例2および3について、吸湿処理の時間を変化させた場合の吸湿量をプロットしたグラフ図である。比較例2および3は何れも吸水性を有する高分子素材であって、比較例2は、コハク酸セルロール粒子(リバテープ製薬(株)製,商品名:モイスセルSUC−K)であり、比較例3は、ヒアルロン酸(MP−PE:株式会社資生堂製)である。比較例2および3についても、実施例と同様の吸湿処理が行われる。図7に示すように、実施例3の保湿性粒子は、比較例2および3の高分子素材よりも高い吸湿能力を示すことが確認された。
【0057】
図6または図7に示すように、実施例の保湿性粒子は、比較例1〜3の高分子素材との比較において、吸水量は比較例1〜3の高分子素材の方が多いが、吸湿量は実施例の保湿性粒子のほうが高い。実施例の保湿性粒子では、加水分解が外側から起こっているため、カルボキシル基が表面に存在し、吸湿速度および吸湿量が高いことが示唆される。これに対して、逆相懸濁重合によって調製された比較例1〜3の吸水樹脂は、疎水基が表面に存在するため、水分子を吸着しにくいが分子鎖の中に多くの水を抱え込める構造になっている。
【0058】
表1および2に示す円形度は、シスメックス(株)製のフロー式粒子像分析装置FPIA−3000Sを用いて参考例および実施例1〜14の保湿性粒子を撮像して算出したものである。なお、円形度は、粒子を撮像した画像の周囲長と同じ投影面積の真円の直径から算出した周囲長を、粒子を撮像した画像の周囲長で除した値である。表1および2に示すように、円形度は、反応時間が長くなるにつれて向上することが確認された。
【0059】
図8は、実施例1の保湿性粒子を走査型電子顕微鏡(商品名:S−4000;日立ハイテクノロジーズ(株)製)により倍率2500倍で撮像した写真を示し、図9は、実施例1の保湿性粒子を走査型電子顕微鏡により倍率10000倍で撮像した写真を示す。図10は、実施例3の保湿性粒子を前記走査型電子顕微鏡により倍率2500倍で撮像した写真を示し、図11は、実施例3の保湿性粒子を走査型電子顕微鏡により倍率10000倍で撮像した写真を示す。図8〜図11に示すように、実施例1および3に係る保湿性粒子には、表面にひび割れの様なものが見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式で表される架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子におけるカルボン酸エステルの一部が加水分解された構造を有する球形状である
ことを特徴とする保湿性粒子。
【化1】

【化2】

前記化学式1および化学式2のRは、脂肪族または芳香族の炭化水素基から選択される疎水性の官能基を表す。
【請求項2】
前記架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル微粒子は球形状であり、該球形状の表面にあるカルボン酸エステルが加水分解され、表面にポリ(メタ)アクリル酸が存在すると共に、内部にカルボン酸エステルが存在するよう構成される請求項1記載の保湿性粒子。
【請求項3】
前記架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子を加水分解して生成したカルボン酸の一部または全てが、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属によって金属塩化された構造を有する請求項1または2記載の保湿性粒子。
【請求項4】
湿潤状態での平均粒径が1〜1000μmである請求項1〜3の何れか一項に記載の保湿性粒子。
【請求項5】
カチオン交換容量が、0.15〜10meq/gの範囲に設定される請求項1〜4の何れか一項に記載の保湿性粒子。
【請求項6】
飽和吸水量が、10〜80g/gの範囲にある請求項1〜5の何れか一項に記載の保湿性粒子。
【請求項7】
吸湿量が、1.15〜2.5g/gの範囲にある請求項1〜6の何れか一項に記載の保湿性粒子。
【請求項8】
円形度が、水分散状態で0.95〜1.0の範囲にある請求項1〜7の何れか一項に記載の保湿性粒子。
【請求項9】
下記化学式で表される球形状に形成された架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子を、アルカリ中で有機溶媒を加えて反応することで、該ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子におけるカルボン酸エステルの一部を加水分解するようにした
ことを特徴とする保湿性粒子の製造方法。
【化1】

【化2】

前記化学式1および化学式2のRは、脂肪族または芳香族の炭化水素基から選択される疎水性の官能基を表す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−126979(P2011−126979A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285718(P2009−285718)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(591202155)熊本県 (17)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【出願人】(506350252)西日本長瀬株式会社 (8)
【Fターム(参考)】