説明

保護シート、保護シート製造方法、複合遮水シート、及び、遮水構造

【課題】保護シートへの鳥獣等による被害を簡易な構成で抑制する。
【解決手段】外側保護シート22は、不織布で構成されており、接着層22A及び非接着層22Bを備えている。接着層22Aは外面側に配置され、非接着層22Bは第1遮水シート20側に配置されている。接着層22Aは、所定の厚み分Dだけ、不織布の繊維同士が接着されて構成されている。不織布の繊維の接着は、接着剤の含浸、加熱溶着などにより行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護シート、保護シート製造方法、複合遮水シート、及び、遮水構造に関し、特に、地盤に施工される遮水シートを保護するための保護シート、この保護シートを製造するための保護シート製造方法、及び、この保護シートを用いて構成される複合遮水シート、及び、遮水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処分場など、地盤との隔離が必要とされる施設においては、隔壁が遮水構造であることが要請される。そのため、地盤を遮水シートで覆う必要がある。この遮水シートが破損すると、地盤へ廃棄物が浸透してしまうため、通常、遮水シートの外側に遮水シートを保護するための保護層が施工されている。この保護層は、外部に露出されているため、損傷されやすい状態におかれている。特に、不織布など、比較的軟質の素材で保護層が構成されている場合には、鳥獣により突かれたり、引っかかれたりすることで損傷されやすく、鳥獣被害防止対策が必要となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、遮水シートの上面に、プラスチック系不織布を積層接着し、この不織布に外傷防止用のモルタルを含浸塗布した、鳥獣害防止用防水シートが開示されている。しかしながら、モルタルは、現場での施工となるため、工期が長くなってしまう。
【特許文献1】特開平6−125689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、遮水シートを保護する保護シートへの鳥獣等による被害を簡易な構成で抑制することの可能な保護シート、この保護シートを製造するための保護シート製造方法、この保護シートを用いた複合遮水シート、及び、遮水構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の保護シートは、不織布の少なくとも片面に、前記不織布の繊維同士を接着させた接着層が形成されたものである。
【0006】
本発明の保護シートは、不織布に接着層が形成されている。接着層は、不織布の繊維同士を接着させて形成されている。この接着層は、不織布の片面のみに形成されていてもよいし、不織布全体が接着層で構成されていてもよい。
【0007】
本発明の保護シートは、このように接着層が形成されているので、不織布の表面そのままの場合よりも表面にピリングが発生しにくく、鳥獣による損傷を抑制することができる。
【0008】
本発明の請求項2に記載の保護シートは、前記繊維同士の接着が、接着剤により行われていること、を特徴とする。
【0009】
このように、接着剤により、繊維同士を接着させて不織布のピリング発生を抑制することができる。
【0010】
本発明の請求項3に記載の保護シートは、前記繊維同士の接着が、溶着により行われていること、を特徴とする。
【0011】
このように、繊維を溶融させて溶着させることにより、より強固に繊維同士を接着することができると共に、硬度を高くすることができる。
【0012】
本発明の請求項4に記載の保護シートは、前記不織布が、融点の異なる2種以上の繊維を含んでいること、を特徴とする。
【0013】
このように、融点の異なる繊維を用いることにより、2つの融点の間の温度で加熱して、少なくとも1種の繊維を溶融せず、他の繊維を溶融させて、溶着を行うことができる。
【0014】
本発明の保護シートは、請求項5に記載のように、前記不織布の前記接着層側表面が、織物のピリング試験方法であるJIS L 1076のC法において、N等級以上のレベルであることが好ましい。
【0015】
本発明の請求項6に記載の複合遮水シートは、不織布を含んで構成される第1内側保護シートと、前記第1内側保護シートの片面に積層された遮水性を有する遮水シートと、前記遮水シートの前記内側第1保護シートと逆側の面に、前記接着層を外側にして積層された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の保護シートと、を備えている。
【0016】
本発明の複合遮水シートは、第1内側保護シート、遮水シート、及び、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の保護シートが積層されて構成されている。遮水シートは一方の面に第1内側保護シートが配置されているので、複合遮水シートへ加えられた衝撃が吸収され、損傷が抑制される。また、他方の面に接着層が外側に配置された保護シートが設けられているので、鳥獣の攻撃による複合遮水シートの損傷を抑制することができる。
【0017】
本発明の請求項7に記載の遮水構造は、被遮水対象を覆い、不織布を含んで構成される第2内側保護シートと、前記第1内側保護シートを覆うように前記第1内側保護シートの外側に積層された遮水性を有する第2遮水シートと、前記第2遮水シートを覆うように前記第2遮水シートの外側に、前記接着層を外側にして積層された請求項5に記載の複合遮水シートと、を備えたものである。
【0018】
本発明の遮水構造によれば、外面が不織布層の繊維同士を接着させて形成された接着層で構成されているので、不織布の表面そのままの場合と比較して、表面のピリングが発生しにくく、鳥獣などによる繊維の損傷を抑制することができる。また、2重に遮水シートが配置されているので、より確実に地盤との間の遮水を行うことができる。
【0019】
本発明の請求項8に記載の保護シート製造方法は、不織布を製造する不織布製造工程と、前記不織布の少なくとも片面の繊維同士を接着させる繊維接着工程と、を備えたものである。
【0020】
上記保護シート製造方法によれば、不織布の少なくとも片面の繊維同士が接着されるので、不織布の表面そのままよりも繊維が解れにくく、鳥獣などによる繊維の損傷を抑制することができる。なお、不織布の片面のみでなく全体に接着層が構成されていてもよい。
【0021】
本発明の請求項9に記載の保護シート製造方法は、前記繊維同士の接着を接着剤により行うこと、を特徴とする。
【0022】
接着剤により、繊維同士を接着させて不織布表面のピリングを抑制することができる。
【0023】
本発明の請求項10に記載の保護シート製造方法は、前記繊維同士の接着を、加熱溶着により行うこと、を特徴とする。
【0024】
このように、繊維を加熱により溶融させて溶着させることにより、より強固に繊維同士を接着することができると共に、硬度を高くすることができる。
【0025】
本発明の請求項11に記載の保護シート製造方法は、前記不織布が、融点の異なる2種以上の繊維を含み、前記2種以上の繊維のいずれか2種の繊維の融点間の温度で加熱溶着を行うこと、を特徴とする。
【0026】
上記製造方法によれば、加熱された温度よりも高い融点の繊維は溶融されず、加熱された温度よりも低い融点の繊維は溶融される。したがって、溶融された繊維により、繊維同士を接着することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、上記構成としたので、保護シートへの鳥獣等による被害を簡易な構成で抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る遮水構造10は、廃棄物最終処理場など地盤との隔離が必要とされる構造物に適用される構造である。
【0029】
図1に示されるように、地盤12には凹状の窪地12Aが形成されている。窪地12Aには、下側から順に、第2保護シート14、第2遮水シート16、第1保護シート18、第1遮水シート20、外側保護シート22が敷設されている。第2保護シート14、第2遮水シート16、第1保護シート18、第1遮水シート20、及び、外側保護シート22により、遮水構造10が構成されている。
【0030】
第2保護シート14、及び、第1保護シート18は、不織布で構成されている。不織布としては、ポリエステル系、アクリル系、PP(ポリプロピレン)系、などの繊維を用いたものが好適に使用される。また、第2保護シート14、第1保護シート18の各々の厚みは、廃棄物の投入等の際の衝撃吸収機能、地下水の排水機能等を考慮して、5mm〜20mmの範囲とすることが好ましい。
【0031】
第2遮水シート16、及び、第1遮水シート20としては、ゴムアスファルトシート、ポリエチレンシート、TPOシート、ウレタンシート、PVCシートなどを用いることができる。
【0032】
外側保護シート22は、不織布で構成され、図2にも示すように。接着層22A及び非接着層22Bを備えている。接着層22Aは外面側に配置され、非接着層22Bは第1遮水シート20側に配置されている。接着層22Aは、所定の厚み分Dだけ、不織布の繊維同士が接着されて構成されている。不織布の繊維の接着は、接着剤の含浸、加熱溶着などにより行うことができる。
【0033】
加熱溶着により、不織布の繊維同士を接着する場合には、不織布として、融点の異なる2種以上の繊維からなるものを用い、いずれか2つの融点の間の温度で加熱して、少なくとも1種の繊維を溶融せず、他の繊維を溶融させて、溶着を行うことができる。
【0034】
外側保護シート22、第1遮水シート20、及び、第1保護シート18は、必要に応じて接着剤により接着されており、これらにより複合遮水シート30が構成されている。複合遮水シート30の厚みは、10mm〜50mmの範囲とすることが好ましい。
【0035】
次に、本実施形態の外側保護シート22の製造方法について説明する。
【0036】
まず、図3に示すように、原料40を用意し、ターボフィーダ41で原料40を第1ブレンダー42へ供給する。第1ブレンダー42で原料40をブレンドし、次に第2ブレンダー43へ搬送してさらにブレンドする。次に、第2ブレンダー43でフレンドされた原料をホッパーフィーダー44でカーディング45へ供給し、カーディング45でシート状に成型する。次に、このシート状のものをクロスレイヤー部46へ搬送し、クロスレイヤー部46で複数層に積層して、パンチング部47へ搬送する。そして、パンチング部47で各層を貫通するようにニードルが抜き差しされて各層間の繊維が絡められ、一般的な不織布21が形成される。ここまでの工程が、通常の不織布製造工程である。本実施形態では、前述のように不織布を製造する工程例を示したが、他の製造工程で不織布を製造してもよい。
【0037】
次に、接着層形成部50で、接着層22Aを形成する。接着層形成部50は、加熱ロール50A、及び、加圧ロール50Bを含んで構成されている。加熱ロール50Aは、不織布21を構成する繊維を溶融させて、繊維同士を溶着させる。
【0038】
ここで、加熱ロール50Aによる加熱温度は、不織布21を構成する繊維の少なくとも1つを溶融させる温度に設定されている。例えば、不織布21が、ポリエチレンなど低融点の繊維と、ポリエステルなどの高融点の繊維とが混合されて形成されているのであれば、低融点の繊維の融点よりも高い温度とすればよい。なお、低融点の繊維の融点と高融点の繊維の融点の間の温度で加熱すれば、低融点の繊維のみを溶解し、高融点の繊維を溶解せずに溶着することができる。
【0039】
溶着されたシート表面は、織物のピリング試験方法であるJIS L1076のC法(アピアランス・リテンション形試験機を用いる方法)において、N等級以上のレベルであることが好ましい。
【0040】
加圧ロール50Bは、加熱ロール50Aとの間で不織布21を挟持すると共に加圧する。接着層形成部50を通過した不織布21には、少なくとも加熱ロール50A側に繊維同士が溶着により接着された接着層22Aが構成される。これにより外側保護シート22が形成される。外側保護シート22は、巻き取り部54で巻き取られる。
【0041】
次に、複合遮水シート30の製造方法を説明する。複合遮水シート30は、図5に示すように、外側保護シート22、第1遮水シート20、及び、第1保護シート18をこの順で積層されるようにセットして巻き出し、接着部51で接着剤を塗布しつつ加圧して、3層を接着させる。これにより、複合遮水シート30が完成する。複合遮水シート30は、巻き取り部52で巻き取られる。
【0042】
本実施形態の遮水構造10によれば、最外側が外側保護シート22の接着層22Aで覆われているので、鳥獣による突きや引っ掻きによる外側保護シート22の損傷を抑制することができる。したがって、内側に配置された第1遮水シート20の損傷も抑制され、遮水性を確保することができる。
【0043】
また、現場以外の場所で外側保護シート22、第1遮水シート20、及び第1保護シート18を積層するので、遮水構造10の施工に要する日数を少なくすることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、接着層22Aを外面から所定の厚みDのみに形成した例について説明したが、不織布21の全部が接着層22Aで構成されていてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、溶着により不織布21に接着層22Aを形成する例を示したが、接着剤を不織布21の表面に塗布してこの接着剤により不織布21の繊維同士を接着させて接着層22Aを形成してもよい。接着剤としては、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、ポリアミド系などを用いることができる。
【0046】
また、本実施形態では、完成した外側保護シート22に対して第1遮水シート20及び第1保護シート18を積層して、複合遮水シート30を製造した例について説明したが、接着層形成部50で接着層22Aを形成する前に不織布21、第1遮水シート20及び第1保護シート18を積層してもよい。この場合には、図6に示すように、不織布21が接着層形成部50へ搬送される途中の積層部53で、不織布21、第1遮水シート20及び第1保護シート18を積層し、3層が積層された状態で接着層形成部50へ進入させて、加熱溶着により接着層22Aを形成する。この加熱溶着時に、不織布21を第1遮水シート20と溶着させてもよい。
【0047】
また、第1遮水シート20及び第1保護シート18についても、これらの製造工程の最終工程後に、織布21との積層を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態の遮水構造を示す断面図である。
【図2】本実施形態の外側保護シートの1部の拡大図である。
【図3】本実施形態の外側保護シートの製造工程を示す図である。
【図4】本実施形態の外側保護シートの製造工程の接着層形成部の拡大図である。
【図5】本実施形態の複合遮水シートの製造工程を示す図である。
【図6】本実施形態の複合遮水シートの他の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10 遮水構造
12 地盤
14 第2保護シート
16 第2遮水シート
18 第1保護シート
20 第1遮水シート
21 不織布
22 外側保護シート
22A 接着層
30 複合遮水シート
50A 加熱ロール
50B 加圧ロール
50 接着層形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布の少なくとも片面に、前記不織布の繊維同士を接着させた接着層が形成された保護シート。
【請求項2】
前記繊維同士の接着が、接着剤により行われていること、を特徴とする請求項1に記載の保護シート。
【請求項3】
前記繊維同士の接着が、溶着により行われていること、を特徴とする請求項1に記載の保護シート。
【請求項4】
前記不織布が、融点の異なる2種以上の繊維を含んでいること、を特徴とする請求項3に記載の保護シート。
【請求項5】
前記不織布の前記接着層側表面が、織物のピリング試験方法であるJIS L 1076のC法において、N等級以上のレベルであること、を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の保護シート。
【請求項6】
不織布を含んで構成される第1内側保護シートと、
前記第1内側保護シートの片面に積層された遮水性を有する遮水シートと、
前記遮水シートの前記第1内側保護シートと逆側の面に、前記接着層を外側にして積層された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の保護シートと、
を備えた複合遮水シート。
【請求項7】
被遮水対象を覆い、不織布を含んで構成される第2内側保護シートと、
前記第1内側保護シートを覆うように前記第1内側保護シートの外側に積層された遮水性を有する第2遮水シートと、
前記第2遮水シートを覆うように前記第2遮水シートの外側に、前記接着層を外側にして積層された請求項6に記載の複合遮水シートと、
を備えた遮水構造。
【請求項8】
不織布を製造する不織布製造工程と、
前記不織布の少なくとも片面の繊維同士を接着させる繊維接着工程と、
を備えた保護シート製造方法。
【請求項9】
前記繊維同士の接着を接着剤により行うこと、を特徴とする請求項8に記載の保護シート製造方法。
【請求項10】
前記繊維同士の接着を、加熱溶着により行うこと、を特徴とする請求項9に記載の保護シート製造方法。
【請求項11】
前記不織布は、融点の異なる2種以上の繊維を含み、前記2種以上の繊維のいずれか2種の繊維の融点間の温度で加熱溶着を行うこと、を特徴とする請求項10に記載の保護シート製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−332475(P2007−332475A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162975(P2006−162975)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】