説明

保護フィルム剥離装置および保護フィルム剥離方法

【課題】 液晶パネルから保護フィルムを剥離する際に、偏光板表面に処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境や剥離条件に影響されない安定した表面電位を保ち、さらに剥離される保護フィルムと干渉することなく偏光板の表面電位を検出することができる保護フィルム剥離装置およびその剥離方法を提供する。
【解決手段】 偏光板41の表面電位を検出する表面電位計11と、保護フィルムを偏光板から剥離する回転ローラー12と、表面電位計11と固定され表面電位計11を移動させるための第1のリニアガイドステージ21と、回転ローラー12と固定され回転ローラー12を移動させるための第2のリニアガイドステージ22と、第1および第2のリニアガイドステージの移動速度を表面電位計11が検出した表面電位に基づいて制御する移動命令部31とを具備し、表面電位計11を、保護フィルムFが剥離される側の面に対して反対側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの偏光板を保護するために貼り付けられている保護フィルムを剥離するための保護フィルム剥離装置およびその剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの断面図を図7に示す。液晶パネル100は、ガラス基板などの光透過基板101,102の一方の表面に所定の形状の電極103,104を形成し、この電極103,104が形成された面同士を向かい合わせた2枚の光透過基板101,102を、基板間距離が均一となるようにスペーサ105を介在させてシール113によって平行に貼り合わせる。そして、この基板間に液晶材料106を封入し、さらに光透過基板101,102の電極103,104が形成された面と反対側の面に偏光板107,108を貼り付けて構成されている。
【0003】
また上記の構成に、カラー表示を可能にするためのカラーフィルター110、たとえばRGB(Red Green Blue)のフィルターなどが設けられている液晶パネルもある。
【0004】
最近のテレビジョン受像機(以下、テレビと記す。)に代表される液晶パネル100には、何百万という薄膜トランジスタ(以下、TFT(Thin Film Transistor)と記す。)が利用されている。これらのTFTは、液晶パネル100のm×n行列形態の画素数にあわせてm本のゲート線とn本のソース線とが交差する場所毎に各線および各画素電極と接続されており、ゲート線からの走査信号とソース線からの画像制御信号とをTFTが受けることで各画素に形成されている表示動作のための画素電極に所定の電圧が印加される。これにより画素1つ1つのオン・オフを制御できるため、目的の画素を確実に点灯させたり消したりすることができ、高精細な画像の表示を可能としている。また、ゲート線およびソース線には、TFTを駆動するためのドライバーIC(Integrated circuit)が接続されている。
【0005】
これらの液晶パネル100に用いられている偏光板107,108の表面には、液晶パネル100の製造時の作業における偏光板107,108の表面の損傷を防ぐために保護フィルム111,112が貼り付けられているが、偏光板107,108は非常に帯電しやすい性質を有しているため、最終的に保護フィルム111,112を剥離する際に偏光板107,108の表面において非常に高い電位上昇を招いてしまう。
【0006】
このような保護フィルム111,112の剥離時に発生する偏光板107,108の表面における電位上昇によって、TFTや電極において瞬間的に大量の電荷が移動し、TFT破壊やTFT部分の絶縁膜破壊を引き起こしてしまう。
さらに、ゲート線やソース線を介してドライバーICの回路にも瞬間的に大量の電荷が流れるため、ドライバーICの破壊をも引き起こしてしまう。
上記のような問題を解決するために、たとえば、特許文献1では、偏光板107,108と保護フィルム111,112との間に抵抗値が10の9乗オームとなるような高抵抗の導電剤を塗布することにより、保護フィルム111,112の剥離時において偏光板107,108の表面に局所的に電位の高い部分が生じ、表示むらが発生することを防ぐことができることが開示されている。
【0007】
また、保護フィルム111,112の剥離時における従来の表面電位の検出方法としては、液晶パネル表面における保護フィルム111,112が貼られている側の面から直接保護フィルム111,112が剥離された部分の表面電位を検出する方法がある。
【0008】
【特許文献1】特開2000−35571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし特許文献1のような処理を行ったとしても、温度や湿度などの保護フィルム剥離時の剥離環境や剥離条件により表面電位が上昇する場合があることが懸念される。
【0010】
また、偏光板表面に直接処理を行わなければならず、この処理工程においては偏光板表面を保護できない点や、作業効率が悪くなる点で好ましくない。
【0011】
さらに、表面電位を検出する方法として、保護フィルム剥離時には、剥離される保護フィルムが干渉するために、液晶パネル表面における剥離される保護フィルムが貼られている面からの表面電位の検出は困難である。
【0012】
本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、液晶パネル表面にある偏光板から保護フィルムを剥離する際に、偏光板表面に対して処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境や剥離条件に影響されない安定した表面電位を保ち、TFT破壊、絶縁膜破壊およびドライバーIC破壊を防ぐことができ、さらに剥離される保護フィルムと干渉することなく偏光板の表面電位を検出することができる保護フィルム剥離装置およびその剥離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、パネルから、前記パネルを保護するために貼り付けられている保護フィルムを剥離する剥離装置であって、前記パネルの表面電位を検出する帯電検出部と、前記保護フィルムを前記パネルから剥離する剥離部と、前記帯電検出部と固定され、前記帯電検出部を移動させるための第1の移動部と、前記剥離部と固定され、前記剥離部を移動させるための第2の移動部と、前記第1の移動部および前記第2の移動部の移動速度を前記帯電検出部が検出した表面電位に基づいて制御する移動命令部とを具備し、前記帯電検出部が、前記パネルの保護フィルムが剥離される側の面に対して反対側に配置されていることを特徴とする保護フィルム剥離装置である。
【0014】
また本発明の保護フィルム剥離装置は、前記保護フィルムの剥離時において、前記帯電検出部が、前記パネルの表面における前記保護フィルムの剥離された部分と剥離されていない部分との境界部分である剥離境界部の表面電位を検出することを特徴とする。
【0015】
また本発明の保護フィルム剥離装置は、前記剥離境界部の表面電位が、あらかじめ求められた前記剥離境界部の表面電位と前記剥離境界部に対して反対側の部分の表面電位との相関関係に基づいて検出されることを特徴とする。
【0016】
また本発明の保護フィルム剥離装置は、前記帯電検出部が前記パネルの表面に対して略平行方向に移動するように第1の移動部が移動することを特徴とする。
【0017】
また本発明の保護フィルム剥離装置は、前記帯電検出部が表面電位計であることを特徴とする。
【0018】
また本発明の保護フィルム剥離装置は、前記剥離部が、前記パネルの表面と回転軸とが略平行である回転ローラーであって、前記パネルと前記保護フィルムとの粘着力よりも前記回転ローラーと前記保護フィルムとの粘着力のほうが強いことを特徴とする。
【0019】
また本発明の保護フィルム剥離装置は、前記回転ローラーを昇降させるための上下機構を有し、前記上下機構により前記回転ローラーを前記パネルの表面と接触する位置まで移動させることが可能であることを特徴とする。
【0020】
また本発明の保護フィルム剥離装置は、前記剥離部が、前記パネルの表面に対して略平行方向に移動するように前記第2の移動部が移動することを特徴とする。
【0021】
また本発明の保護フィルム剥離装置は、前記移動命令部が、前記表面電位が許容電圧を超えないように前記第2の移動部の移動速度を制御することを特徴とする。
【0022】
また本発明の保護フィルム剥離装置は、前記移動命令部が、前記表面電位があらかじめ定められたしきい値に近づくように前記第2の移動部の移動速度を制御することを特徴とする。
【0023】
また本発明の保護フィルム剥離装置は、前記移動命令部が、前記第1の移動部の移動速度と前記第2の移動部の移動速度とが略同じになるように制御することを特徴とする。
【0024】
また本発明の保護フィルム剥離装置は、前記パネルが液晶パネルであって、前記保護フィルムが液晶パネルの表面にある偏光板に貼り付けられていることを特徴とする。
【0025】
また本発明は、パネルから、前記パネルを保護するために貼り付けられている保護フィルムを剥離する剥離方法であって、剥離部が移動しながら前記パネルから前記保護フィルムを剥離し、前記パネルの前記保護フィルムが剥離される側の面に対して反対側に配置されている帯電検出部が移動しながら前期パネルの表面電位を検出し、帯電検出部が検出した表面電位に基づいて前記パネルと前記保護フィルムとの境界部分である剥離境界部の表面電位が許容電圧を超えないように剥離速度を制御することを特徴とする保護フィルム剥離方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、パネルから、パネルを保護するために貼り付けられている保護フィルムを剥離する剥離装置において、帯電検出部が第1の移動部によって移動させられながらパネルの表面電位を検出し、剥離部が第2の移動部によって移動させられながらパネルから保護フィルムを剥離し、移動命令部が第1の移動部および前記第2の移動部の移動速度を帯電検出部が検出した表面電位に基づいて制御することによって、得られた表面電位に基づいて帯電検出部および剥離部の移動速度を制御しながらパネルから保護フィルムを剥離できるため、パネル表面における表面電位の上昇を防ぐことができる。そのため、パネルから保護フィルムを剥離する際に、パネル表面に対して処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境や剥離条件に影響されない安定した表面電位を保つことができる。
【0027】
また、帯電検出部がパネルの保護フィルムが剥離される側の面に対して反対側に配置されていることによって、剥離される保護フィルムと干渉することなくパネルの表面電位を容易に検出することができる。
【0028】
また本発明によれば、保護フィルムの剥離時において、帯電検出部が、パネルの表面における前記保護フィルムの剥離された部分と剥離されていない部分との境界部分である剥離境界部の表面電位を検出することによって、より正確に帯電検出部および剥離部の移動速度を制御することができるようになり、パネル表面における電位上昇をより確実に防ぐことができる。
【0029】
また本発明によれば、剥離境界部の表面電位が、あらかじめ求められた剥離境界部の表面電位と剥離境界部に対して反対側の部分の表面電位との相関関係に基づいて検出されることによって、帯電検出部がパネルの保護フィルムが剥離される側の面に対して反対側に配置されていても、パネルの剥離境界部の表面電位を検出することができる。
【0030】
また本発明によれば、帯電検出部がパネル表面に対して略平行方向に移動するように第1の移動部が移動することによって、パネル表面と一定の距離を保った位置で表面電位を検出することができるためにパネルの表面電位を安定して検出することができる。
【0031】
また本発明によれば、帯電検出部が表面電位計であることにより、パネルの表面電位をより定量的に検出することができる。
【0032】
また本発明によれば、剥離部が、パネルの表面と回転軸とが略平行である回転ローラーであることにより、パネルから剥離する保護フィルムを安定して巻き取ることができる。
また、パネルと保護フィルムとの粘着力よりも回転ローラーと保護フィルムとの粘着力のほうが強いことにより、回転ローラーをパネルに接触させながら保護フィルムを剥離してもパネル表面にダメージや傷を与えることを防ぐことができる。
【0033】
また本発明の保護フィルム剥離装置は、回転ローラーを昇降させるための上下機構を有し、この上下機構により回転ローラーの下端をパネルの表面と接触する位置まで移動させることが可能であるようにすることにより、パネルを回転ローラーの位置まで移動させる場合と比較してパネルの損傷を防ぎ、作業効率を向上させることができ、さらに装置面積を小さくすることができる。
【0034】
また本発明によれば、剥離部が、パネルの表面に対して略平行方向に移動するように第2の移動部が移動することによって、パネルから保護フィルムを安定して剥離することができ、またパネルの表面電位も安定して検出することができる。
【0035】
また本発明によれば、移動命令部が、表面電位が許容電圧を超えないように第2の移動部の移動速度を制御することによって、パネル表面における電位上昇をより確実に防ぐことができる。
【0036】
また本発明によれば、移動命令部が、表面電位があらかじめ定められたしきい値に近づくように第2の移動部の移動速度を制御することによって、パネル表面における電位上昇をより確実に防ぐことができる。
【0037】
また本発明によれば、移動命令部が、第1の移動部の移動速度と第2の移動部の移動速度とが略同じになるように制御することによって、確実に剥離境界部の表面電位を検出することができる。したがって、より正確に帯電検出部および剥離部の移動速度を制御することができるようになり、パネル表面における電位上昇をより確実に防ぐことができる。
【0038】
また本発明によれば、前記パネルが液晶パネルであって、保護フィルムが液晶パネルの表面にある偏光板に貼り付けられていることによって、偏光板から保護フィルムを剥離する際に、偏光板表面に対して処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境や剥離条件に影響されない安定した表面電位を保ち、保護フィルム剥離時のTFT破壊、絶縁膜破壊およびドライバーIC破壊を防ぐことができる。
【0039】
また本発明は、パネルから、前記パネルを保護するために貼り付けられている保護フィルムを剥離する剥離方法であって、剥離部が移動しながら前記パネルから前記保護フィルムを剥離し、前記パネルの前記保護フィルムが剥離される側の面に対して反対側に配置されている帯電検出部が移動しながら前期パネルの表面電位を検出し、帯電検出部が検出した表面電位に基づいて前記パネルと前記保護フィルムとの境界部分である剥離境界部の表面電位が許容電圧を超えないように剥離速度を制御することを特徴とする保護フィルム剥離方法である。
【0040】
この剥離方法によって、パネルの表面電位を検出し、得られた表面電位に基づいて帯電検出部および剥離部の移動速度を制御しながらパネルから保護フィルムを剥離できるため、パネル表面における電位上昇を防ぐことができる。そのため、パネルから保護フィルムを剥離する際に、パネル表面に対して処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境や剥離条件に影響されない安定した表面電位を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に実施の形態を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り特に限定されるものではない。
【0042】
本発明の保護フィルム剥離装置は、製造時の作業における液晶パネルの表面にある偏光板の損傷を防ぐために偏光板表面を保護することを目的として貼り付けられている保護フィルムを剥離するための装置であって、偏光板の表面電位を検出する帯電検出部と、保護フィルムを偏光板から剥離する剥離部と、帯電検出部と固定され、帯電検出部を移動させるための第1の移動部と、剥離部と固定され、剥離部を移動させるための第2の移動部と、第1の移動部および前記第2の移動部の移動速度を帯電検出部が検出した表面電位に基づいて制御する移動命令部とから構成されている。
【0043】
図1のグラフに示したように、液晶パネルの表面にある偏光板から保護フィルムを剥離すると、剥離時の帯電現象により、偏光板表面における保護フィルムの剥離された部分と剥離されていない部分との境界部分である剥離境界部では、瞬間的に表面電位が大きく上昇し、その後徐々に降下する。この瞬間的な表面電位の上昇は、液晶パネルの電気回路において大量の電荷移動を導き、最悪な場合はTFT破壊、絶縁膜破壊およびドライバーIC破壊などの電気回路破壊が起こる。
【0044】
本発明の保護フィルム剥離装置は、上記のような保護フィルム剥離時に瞬間的に起こる表面電位の上昇を防ぐことを可能にした装置であり、剥離速度の変化に対する表面電位上昇量の変化を利用したものである。
【0045】
すなわち、剥離速度を遅くすることで瞬間的な表面電位上昇量を低く抑えることが可能となり電気回路破壊を防ぐことができる。しかし、剥離速度を遅くすることで剥離に要する時間は長くなってしまう。
【0046】
そのため、本発明では偏光板表面における剥離境界部の表面電位を検出し、その結果に基づいて電気回路の破壊が起こらない許容電圧を超えない程度に剥離速度を最速に制御することによって、偏光板から保護フィルムを剥離する際に、偏光板表面に対して処理を施すことなく、偏光板表面における電位上昇を防ぐことができ、温度や湿度などの剥離環境や剥離条件に影響されない安定した表面電位を保つことができる。したがって保護フィルム剥離時のTFT破壊、絶縁膜破壊およびドライバーIC破壊を防ぐことができる。
【0047】
また、偏光板表面における剥離境界部の表面電位を保護フィルムが貼られている側の面から検出しながら保護フィルムの剥離を行う場合、剥離された保護フィルムが干渉するために表面電位の検出は非常に困難になる。
【0048】
そこで本発明では、液晶パネルの保護フィルムを剥離される側の面に対して反対側に帯電検出部を配置することにより、剥離される保護フィルムと干渉することなく偏光板表面における剥離境界部の表面電位を検出することができる。これにより保護フィルムを剥離しながら剥離境界部の表面電位を容易に検出することが可能になる。
【0049】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(装置構成)
図2は、本発明の一実施形態における保護フィルム剥離装置1の概略図であり、図3は図2の保護フィルム剥離装置1の断面図である。
【0050】
図2に示すように、本発明の保護フィルム剥離装置1に適用される液晶パネルPの表面にある偏光板41には、偏光板41を保護するために保護フィルムFが貼り付けられている。
【0051】
液晶パネルPの大きさとしては、特に限定されるものではないが、たとえば、テレビサイズにするためのパネル分断工程後に得られる1辺が400mmを超えるサイズのものなどが挙げられる。
【0052】
保護フィルムFの材質としては、特に限定されるものではないが、傷に強い樹脂、たとえば、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂などで作られたラミネートフィルムが好ましい。また、保護フィルムFは液晶パネルの4辺の端から5mm〜10mm程度小さいサイズであることが好ましい。
【0053】
本発明の一実施形態における保護フィルム剥離装置1において、液晶パネルPは図3に示すように中抜きした矩形状の設置ステージ42に設置され、液晶パネルPの4辺の複数箇所を、真空差圧を利用して液晶パネルPを吸着する設置ステージ42に埋め込まれた複数の吸盤である保持部材43により保持されている。
【0054】
設置ステージ42は、上記の構成に限られるものではなく、液晶パネルPを固定できるものであればよい。また保持部材43も、上記の構成に限られるものではなく、液晶パネルPの4辺を保持できる形状のものであればよい。
【0055】
液晶パネルPの上方には、液晶パネルPの表面と回転軸とが平行になるように回転ローラー12が配置されている。
【0056】
回転ローラー12は、偏光板41から保護フィルムFを巻き取ることにより剥離することができ、上記のように回転ローラー12の回転軸と液晶パネルPの表面とが平行であることにより、偏光板41から剥離する保護フィルムFを安定して巻き取ることができる。
【0057】
回転ローラー12は、保護フィルムFを剥離するために表面に粘着力を有している。この粘着力としては、偏光板41と保護フィルムFとの粘着力よりも強いものであればよく、たとえば、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤を塗布することにより得ることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0058】
回転ローラー12の表面の粘着力が、偏光板41と保護フィルムFとの粘着力よりも弱い場合、保護フィルムFを回転ローラー12の表面に圧着させるために液晶パネルPの表面に荷重をかけなければならず、液晶パネルPの表面にダメージや傷を与えてしまう可能性がある。したがって、このように回転ローラー12と保護フィルムFとの粘着力のほうが偏光板41と保護フィルムFとの粘着力よりも強いことにより、回転ローラー12を液晶パネルPに接触させながら保護フィルムFを剥離しても液晶パネルPの表面にダメージや傷を与えることを防ぐことができる。
【0059】
回転ローラー12は図示しない昇降装置を有しており、この昇降装置は回転ローラー12の下端を液晶パネルPの表面と接触する位置まで下降させることを可能にしている。
【0060】
このような昇降装置を有することにより、液晶パネルPを回転ローラー12の位置まで移動させる場合と比較して液晶パネルPの損傷を防ぎ、作業効率を向上させることができ、さらに装置面積を小さくすることができる。昇降装置としては、たとえば、エアシリンダーや電動モーターシリンダーなどが挙げられるが、特にこれらに限定されることはない。
【0061】
また回転ローラー12は、回転ローラー12を移動させるための第2のリニアガイドステージ22および回転ローラー12を両支持にするための補助レール23により固定されている。
【0062】
この第2のリニアガイドステージ22は、回転ローラー12が液晶パネルPの表面と平行な一方方向に移動することを可能にしている。
【0063】
このように回転ローラー12が移動することによって、偏光板41から保護フィルムFを安定して剥離することができ、また偏光板41の表面電位を安定して検出することができる。
【0064】
第2のリニアガイドステージ22の構造としては、たとえば、リニアモーター駆動のリニアガイドステージが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0065】
補助レール23の構造としては、たとえば、直線ガイドレールが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0066】
液晶パネルPを挟んで回転ローラー12の反対側に、表面電位計11が配置されている。このように表面電位計11が配置されることにより、剥離される保護フィルムFと干渉することなく偏光板41の表面電位を検出することができる。また、表面電位の検出手段として表面電位計11を用いることにより、偏光板41の表面電位をより定量的に検出することができる。
【0067】
表面電位計11のプローブは、回転ローラー12の中心部の真下に位置しており、液晶パネルPとは非接触で所定の距離だけ離れている。液晶パネルPと表面電位計11のプローブとの距離は測定器に依存しており、各測定器に適した距離であればよい。
【0068】
表面電位計11は、液晶パネルPと所定の距離を隔てるようにして第1のリニアガイドステージ21に固定されている。この第1のリニアガイドステージ21は、表面電位計11が液晶パネルPの表面と平行な一方方向に移動することを可能にしている。
【0069】
このように表面電位計11が移動することによって、液晶パネルPと一定の距離を保った位置で表面電位を測定することができるために偏光板41の表面電位を安定して検出することができる。
【0070】
第1のリニアガイドステージ21の構造としては、たとえば、リニアモーター駆動のリニアガイドステージが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0071】
第1のリニアガイドステージ21、第2のリニアガイドステージ22および表面電位計11は、回転ローラー12と表面電位計11の移動速度を制御する移動命令部31と接続されている。
【0072】
本発明の保護フィルム剥離装置1の構成では、表面電位計11は、保護フィルムFの剥離時において、液晶パネルPの表面にある偏光板41の表面における保護フィルムFの剥離された部分と剥離されていない部分との境界部分である剥離境界部51に対して反対側の部分の表面電位を検出しているため、剥離境界部51における実際の表面電位を検出することはできない。
【0073】
そこで表面電位計を用いて、液晶パネルPの偏光板41の表面における保護フィルムFの剥離直後の剥離境界部51の表面電位と液晶パネルPの剥離境界部51に対して反対側の部分の表面電位とを検出し、それぞれの表面電位の相関関係をあらかじめ求めておく。このようにして得られた表面電位の相関関係に基づいて剥離境界部51の表面電位を検出することにより移動命令部31は、より正確に表面電位計11および回転ローラー12の移動速度を制御することができるようになり、偏光板表面における電位上昇をより確実に防ぐことができる。
【0074】
なお、図2に示した液晶パネルPは矩形であるが、本発明の保護フィルム剥離装置1が対象とする液晶パネルPの形状は特に矩形に限定されるものではない。
【0075】
また、図2に示した第1のリニアガイドステージ21および第2のリニアガイドステージ22は液晶パネルPの長手方向に移動しているが、特に長手方向に限定されるものではなく、たとえば、液晶パネルPの対角方向へ移動してもよい。
【0076】
(装置動作)
次に、図4〜図6を用いて、保護フィルム剥離装置1の動作について説明する。図4は本発明の保護フィルム剥離装置1における保護フィルム剥離前の状態を示す概略図、図5は保護フィルム剥離開始時の状態を示す概略図、図6は保護フィルム剥離途中の状態を示す概略図である。
図4に示すように、保護フィルム剥離装置1には液晶パネルPが図3に示す設置ステージ42に配置されている。
【0077】
液晶パネルPに貼り付けられている保護フィルムFの剥離を開始するにあたって、まず回転ローラー12は、昇降装置によって液晶パネルPに接触する位置まで下降される。
【0078】
次いで、図5に示すように表面に粘着力を有した回転ローラー12が液晶パネルPに接触すると、液晶パネルPが割れない程度に回転ローラー12の押し付け荷重がかかり、保護フィルムFの下端と回転ローラー12とが接着する。
【0079】
このような状態から第2のリニアガイドステージ22によって、液晶パネルPと接触する程度の高さを保ちながら回転ローラー12が矢符D2で示す方向、すなわち液晶パネルPの回転ローラー12の下端が接触している側の端とは反対側の端の方向に移動し始めると、矢符Rの方向、すなわち回転ローラー12の進行方向に回転ローラー12が回転し、回転ローラー12の表面の粘着力によって保護フィルムFの剥離が始まる。
【0080】
また、回転ローラー12の移動開始と同時に第1のリニアガイドステージ21によって表面電位計11が矢符D1の方向、すなわち回転ローラー12の進行方向に移動し始め、表面電位計11は偏光板41の表面における剥離境界部51の表面電位を検出し始める。
【0081】
第1のリニアガイドステージ21および第2のリニアガイドステージ22の移動速度は移動命令部31が表面電位計11が検出した表面電位に基づいて、所定の移動速度制御方法に従って制御している。
【0082】
そして、この移動命令部31は第1のリニアガイドステージ21の移動速度、すなわち表面電位計11の移動速度と、第2のリニアガイドステージ22の移動速度、すなわち回転ローラー12の移動速度とが同じになるように制御している。
【0083】
このように移動命令部31が、表面電位計11の移動速度と回転ローラー12の移動速度とが同じになるように制御することによって、確実に剥離境界部51の表面電位を検出することができる。したがって、より正確に表面電位計11および回転ローラー12の移動速度を制御することができるようになり、偏光板41の表面における電位上昇をより確実に防ぐことができる。
【0084】
図6は、図5から回転ローラー12が略半回転したときの状態を示しているが、このように保護フィルムFはローラー12の表面に接着しながら巻き取られていく。
【0085】
そして、移動命令部31により表面電位計11および回転ローラー12の移動速度が制御されつつ、液晶パネルPから全ての保護フィルムFが巻き取られるまで回転ローラー12および表面電位計11は移動する。
【0086】
以上に述べた動作によって、液晶パネルPの全面に貼り付けられている保護フィルムFを剥離することができるが、剥離された保護フィルムFは回転ローラー12から引張り外すことで、再度回転ローラー12を保護フィルムFの剥離に使用することが望ましい。
【0087】
(移動速度制御方法)
次に移動命令部31による表面電位計11および回転ローラー12の移動速度の制御方法について説明する。
【0088】
表面電位計11および回転ローラー12の移動速度は、以下に示す方法により制御されている。
【0089】
移動命令部31には、剥離境界部51の表面電位と剥離境界部51に対して反対側の部分の表面電位との相関関係があらかじめ記憶させてある。
【0090】
上記の表面電位の相関関係は、液晶パネルPや保護フィルムFの種類が異なる場合は、その都度求める必要がある。
【0091】
上記のように移動命令部31に記憶させてある表面電位の相関関係に基づいて、本発明の保護フィルム剥離装置1では、表面電位計11による検出値を剥離境界部51の表面電位の値に換算し、その換算値が許容電圧、たとえば2000Vを超えないように、すなわち許容電圧の値が換算値より大きくなるように表面電位計11および回転ローラー12の移動速度を制御している。
【0092】
なお、上述の移動速度の制御方法では、表面電位を検出する毎に検出値を剥離境界部51の表面電位の値に換算したが、あらかじめ換算値のデータを移動命令部31に入力しておいてもよい。
【0093】
また、上述の移動速度の制御方法では、上記換算値が許容電圧を超えないように移動速度を制御したが、たとえば、あらかじめ求めておいた所定の表面電位値に近づくように制御してもよい。
【0094】
すなわち、上記換算値が移動命令部31に設定した所定の表面電位値(しきい値)に近づくと、移動命令部31は表面電位計11および回転ローラー12の移動速度を遅くする命令を出し、一方、上記換算値が所定の表面電位値(しきい値)よりも小さくなった場合は、移動命令部31は表面電位計11および回転ローラー12の移動速度を速める命令を出すように移動速度を制御してもよい。
【0095】
上記の所定の電位値(しきい値)は、液晶パネルPのサイズや構造によって異なるため特に限定されるものではないが、1000V以下であることが好ましく、さらには500V以下であることが好ましい。
【0096】
このように表面電位計11および回転ローラー12の移動速度を制御することにより、偏光板表面における電位上昇をより確実に防ぐことができる。そのため、偏光板から保護フィルムを剥離する際に、偏光板表面に対して処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境や剥離条件に影響されない、さらに安定した表面電位を保つことができる。
【0097】
なお、表面電位計11による表面電位の検出のサンプリング時間は、100msec以下であることが好ましく、さらには10msec以下であることが好ましい。
【0098】
移動速度制御の判断は、表面電位値が許容電圧を超えない程度の間隔で行えばよいが、たとえば、10回〜30回検出する毎に行うことが好ましい。また、5回〜10回分の検出値の平均値に基づいて判断してもよい。
【0099】
以上に説明したように、本発明の保護フィルム剥離装置1は、偏光板41の表面電位を検出する表面電位計11と、保護フィルムを偏光板から剥離する回転ローラー12と、表面電位計11と固定され、表面電位計11を移動させるための第1のリニアガイドステージ21と、回転ローラー12と固定され、回転ローラー12を移動させるための第2のリニアガイドステージ22と、第1および第2のリニアガイドステージの移動速度を表面電位計11が検出した表面電位に基づいて制御する移動命令部31とを具備することによって、偏光板41の表面電位を検出し、得られた表面電位に基づいて表面電位計11および回転ローラー12の移動速度を制御しながら偏光板41から保護フィルムFを剥離できるため、偏光板41の表面における電位上昇を防ぐことができる。そのため、偏光板から保護フィルムを剥離する際に、偏光板41の表面に対して処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境や剥離条件に影響されない安定した表面電位を保つことができる。
【0100】
また、表面電位計11がパネルの保護フィルムFが剥離される側の面に対して反対側に配置されていることによって、剥離される保護フィルムFと干渉することなく偏光板41の表面電位を検出することができる。
【0101】
なお、上記の実施形態の説明において本発明の保護フィルム剥離装置1は液晶パネルPのみを対象としたが、これに限られることなく、保護フィルムを剥離する際に生じる表面電位の上昇が問題となる他のパネルにおいても本発明の剥離装置を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】保護フィルム剥離からの時間に対する剥離境界部における表面電位の変化を概略したグラフである。
【図2】本発明の一実施形態における保護フィルム剥離装置の概略図である。
【図3】図2の保護フィルム剥離装置における設置ステージの構造を示す断面図である。
【図4】本発明の保護フィルム剥離装置における保護フィルム剥離前の状態を示す概略図である。
【図5】本発明の保護フィルム剥離装置において保護フィルム剥離開始時の状態を示す概略図である。
【図6】本発明の保護フィルム剥離装置において保護フィルム剥離途中の状態を示す概略図である。
【図7】液晶パネルの断面図である。
【符号の説明】
【0103】

1 保護フィルム剥離装置
11 表面電位計
12 回転ローラー
21 第1のリニアガイドステージ
22 第2のリニアガイドステージ
23 補助レール
31 移動命令部
41,107,108 偏光板
42 設置ステージ
43 保持部材
51 剥離境界部
P,100 液晶パネル
F,111,112 保護フィルム
D1 表面電位計の移動方向
D2 回転ローラーの移動方向
R 回転ローラーの回転方向
101,102 光透過基板
103,104 電極
105 スペーサ
106 液晶材料
110 カラーフィルター
113 シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルから、前記パネルを保護するために貼り付けられている保護フィルムを剥離する剥離装置であって、
前記パネルの表面電位を検出する帯電検出部と、
前記保護フィルムを前記パネルから剥離する剥離部と、
前記帯電検出部と固定され、前記帯電検出部を移動させるための第1の移動部と、
前記剥離部と固定され、前記剥離部を移動させるための第2の移動部と、
前記第1の移動部および前記第2の移動部の移動速度を前記帯電検出部が検出した表面電位に基づいて制御する移動命令部とを具備し、
前記帯電検出部が、前記パネルの保護フィルムが剥離される側の面に対して反対側に配置されていることを特徴とする保護フィルム剥離装置。
【請求項2】
前記保護フィルムの剥離時において、前記帯電検出部が、前記パネルの表面における前記保護フィルムの剥離された部分と剥離されていない部分との境界部分である剥離境界部の表面電位を検出することを特徴とする請求項1に記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項3】
前記剥離境界部の表面電位が、あらかじめ求められた前記剥離境界部の表面電位と前記剥離境界部に対して反対側の部分の表面電位との相関関係に基づいて検出されることを特徴とする請求項2に記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項4】
前記帯電検出部が前記パネルの表面に対して略平行方向に移動するように第1の移動部が移動することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項5】
前記帯電検出部が表面電位計であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項6】
前記剥離部が、前記パネルの表面と回転軸とが略平行である回転ローラーであって、前記パネルと前記保護フィルムとの粘着力よりも前記回転ローラーと前記保護フィルムとの粘着力のほうが強いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項7】
前記回転ローラーを昇降させるための上下機構を有し、前記上下機構により前記回転ローラーを前記パネルの表面と接触する位置まで移動させることが可能であることを特徴とする請求項6に記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項8】
前記剥離部が、前記パネルの表面に対して略平行方向に移動するように前記第2の移動部が移動することを特徴とする請求項6または7に記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項9】
前記移動命令部が、前記表面電位が許容電圧を超えないように前記第2の移動部の移動速度を制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項10】
前記移動命令部が、前記表面電位があらかじめ定められたしきい値に近づくように前記第2の移動部の移動速度を制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項11】
前記移動命令部が、前記第1の移動部の移動速度と前記第2の移動部の移動速度とが略同じになるように制御することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項12】
前記パネルが液晶パネルであって、前記保護フィルムが液晶パネルの表面にある偏光板に貼り付けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項13】
パネルから、前記パネルを保護するために貼り付けられている保護フィルムを剥離する剥離方法であって、剥離部が移動しながら前記パネルから前記保護フィルムを剥離し、前記パネルの前記保護フィルムが剥離される側の面に対して反対側に配置されている帯電検出部が移動しながら前期パネルの表面電位を検出し、帯電検出部が検出した表面電位に基づいて前記パネルと前記保護フィルムとの境界部分である剥離境界部の表面電位が許容電圧を超えないように剥離速度を制御することを特徴とする保護フィルム剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−51906(P2008−51906A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225850(P2006−225850)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】