説明

保護フルオロポリマー層を有する非エラストマー歯科物品

歯科物品、特に歯科矯正装置のための保護フルオロポリマー層であって、着色を生じ得る、食品、細菌、およびタンパク性物質などの物質のこれらの表面への付着を低減する保護フルオロポリマー層が提供される。かかる表面へのこれらの物質の付着を低減する方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
歯科矯正装置などの口腔環境で使用される材料は、変色しやすい。かかる変色、つまり着色は、食品の色素および/またはプラークの形成から生じ得る。
【0002】
歯科物品を含む口腔環境の硬組織または表面のかかる着色を低減するためにコーティングが使用されている;しかしながら、耐着色性コーティングにおける課題は、その材料が基材に密着しなければならず、亀裂が入ったり、剥がれたりしてはならないことである。その他の課題は、そのコーティングは、歯磨きに耐えるのに十分に耐久性がなければならないことである。
【0003】
公知のコーティング組成物および方法は、フッ素含有コポリマーでのコーティングを含む。例えば、米国特許第5,662,887号明細書(ロッツィ(Rozzi)ら)には、A、B、およびCの反復単位を有するコポリマーであって、モノマーAが、極性または分極基(例えば、アクリル酸)1〜80重量%であり、Bが、変調基(modulating group)(例えば、イソブチルメタクリレートおよびメチルメタクリレート)0〜98重量%であり、Cが、疎水性フッ素含有基1〜40重量%であるコポリマーでの歯科矯正装置のコーティングが開示されている。米国特許第5,876,208号明細書(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている、ポリシロキサン含有コポリマーを含有するコーティングも公知である。
【0004】
非エラストマー基材を含有する歯科物品のための耐着色性コーティングが依然として必要とされている。
【0005】
従来の出版物および他の従来の知識の記述は、かかる材料が公開されており、知られており、または一般的な知識の一部であることを認めるものではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、非エラストマー基材と、その上の保護フルオロポリマー含有層と、を含む歯科物品、特に歯科矯正装置(例えば、ブラケット、バッカルチューブ、アーチワイヤー、シース、リテイナー、アーチ拡大装置、クラスIIおよびクラスIII矯正装置、フェイスボー、およびボタン)を提供する。かかる保護層は、例えば、着色を生じ得る、これらの表面への食品の色素、細菌、およびタンパク性物質などの物質の付着を低減する。かかる表面へのこれらの物質の付着を低減する方法も提供される。
【0007】
一実施形態において、本発明は、フルオロポリマーを含有する少なくとも1つの層がその上に配置された非エラストマー基材を含む歯科物品であって、そのフルオロポリマーが、部分フッ素化コポリマーであり、さらに、そのフルオロポリマーがフッ素を少なくとも40重量%含有し、フルオロポリマー中に存在するすべてのフッ素原子のうちの少なくとも50%が、フルオロポリマーの主鎖内にある、歯科物品を提供する。
【0008】
適切なフルオロポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマー(つまり、ターポリマー、テトラポリマー等を含む、2種類以上の異なるモノマーから製造されたポリマー)であることができる。好ましくは、フルオロポリマーはコポリマーである。
【0009】
フルオロポリマーは、フッ素プラスチックまたはフルオロエラストマーであることができる。本明細書において、フッ素プラスチックは、ある程度の構造剛性を有するフッ素化ポリマーである。それに対して、フルオロエラストマーは、明確な融点を持たない非晶質フッ素化ポリマーである。通常、フルオロエラストマーは、加硫天然ゴムと同様な特性、すなわち、その元の長さの少なくとも2倍に伸びることができ、放すと、そのおよその元の長さに素早く縮まる能力を有するポリマーである。
【0010】
適切なフルオロポリマーの例としては、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデンターポリマー(THV)、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、およびそれら混合物が挙げられる。
【0011】
一実施形態において、本発明は、パーフルオロエラストマーを含有する少なくとも1つの層がその上に配置された非エラストマー基材を含む歯科物品を提供する。適切なパーフルオロエラストマー(つまり、過フッ素化エラストマーポリマー)の例としては、ポリマー主鎖上にすべてのフルオロ、パーフルオロアルキル、またはパーフルオロアルコキシ置換基を有するポリメチレン型の過フッ素化ゴムが挙げられ、これらの基のわずかな部分が、加硫を促進する官能性を含有し得る。好ましい例としては、テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとのコポリマーが挙げられる。
【0012】
フルオロポリマー含有層は、フルオロポリマーの混合物(例えば、ブレンド)または1種もしくは複数種のフルオロポリマーと1種もしくは複数種の非フッ素化ポリマーとの混合物を含み得る。非フッ素化ポリマーは多種多様なポリマーであることができ、好ましくは、アクリルポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ウレタンポリマー、酢酸ビニルコポリマー、およびそれら組み合わせからなる群から選択される。
【0013】
特定の実施形態において、本発明は、歯科物品への食品の着色汚れ、細菌およびタンパク性物質などの物質の付着を低減する方法も提供する。
【0014】
一実施形態において、この方法は:非エラストマー基材を含む歯科物品を提供すること;非エラストマー基材の少なくとも一部に、フルオロポリマーを含有する少なくとも1つの層を被覆すること;を含む。この実施形態では、フルオロポリマーは、フッ素を少なくとも40重量%を含有する部分フッ素化コポリマーであり、フルオロポリマー中に存在するすべてのフッ素原子のうちの少なくとも50%が、フルオロポリマーの主鎖内にある。
【0015】
一実施形態において、この方法は:非エラストマー基材を含む歯科物品を提供すること;非エラストマー基材の少なくとも一部に、パーフルオロエラストマーを含有する少なくとも1つの層を被覆すること;を含む。
【0016】
さらに他の実施形態において、本発明は、フルオロポリマーを含有する少なくとも1つの層がその上に配置された有機ポリマー材料(例えば、PET)を含む非エラストマー基材(歯科物品の形をとる、またはとらない、あるいは歯科物品の一部を形成する)であって、そのフルオロポリマーが、ハロゲン含有フルオロポリマーおよび過酸化物硬化系(例えば、有機過酸化物開始剤および多官能性脂肪族不飽和化合物を含む)から製造される、非エラストマー基材を提供する。
【0017】
「含む(含有する)」という用語およびその変形形態は、これらの用語が明細書および特許請求の範囲に示される場合に制限的な意味を有するものではない。
【0018】
「1つ(a)」、「1種類(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つ(1種類)」および「1つまたは複数(1種または複数種)」は区別なく使用される。
【0019】
本明細書において、終点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含されるすべての数(例えば、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む、1〜5)を含む。
【0020】
本発明の上記の概要は、開示される本発明の各実施形態またはすべての実施を説明することを意図するものではない。以下の説明ではさらに詳しく、実例となる実施形態が例示される。明細書全体にわたるいくつかの箇所で、種々の組み合わせで使用することができる、実施例のリストによって、指導が提供されている。それぞれの場合において、記載のリストは代表的なグループとしての役割を果たすだけであり、排他的なリストとして解釈すべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
非エラストマー基材を含む歯科物品、特に歯科矯正装置は、保護材料でコーティングするのが非常に難しい。本発明は、歯科材料、特に歯科矯正装置の一部を形成する非エラストマー材料によく密着するフッ素含有ポリマー材料を提供する。すなわち、本発明に従って提供されるポリマー材料は、非エラストマー表面に対して非常に持続性(substantive)である。保護材料は、保護フルオロポリマー材料をその上に含有しない歯科材料と比較して、食品の着色、プラーク、細菌等に対して高い耐性を有する。
【0022】
フルオロポリマーは、細菌の付着、プラーク形成、食品または色素からの着色に対する下の面の耐性を付与するのに十分な量で提供される。フルオロポリマーは、連続または半連続層として提供される。好ましくは、フルオロポリマーは、本明細書に記載のポリマーの実質的に連続的な単層を提供するのに少なくとも十分な量で下の面上に適用される。保護コーティングは、同一または異なるフルオロポリマーであることができる、1つまたは複数の層の形をとる。
【0023】
他の利点も、本発明のフルオロポリマー材料を使用することによって認識することができる。特に、ブラケットおよびワイヤーなどの歯科矯正装置で使用される耐着色性フルオロポリマーによって、摩擦が低減され、歯の移動が容易になる。他の特典は、着色汚れをはねつける、低表面エネルギーを有するフルオロポリマー層が細菌の付着を抑制すると思われることから、歯科矯正装置上のバイオフィルム形成が低減され、したがって、エナメルの脱灰が少なくなる。さらに他の特典は、不活性な低エネルギー表面が生分解から非エラストマー材料を保護することである。
【0024】
非エラストマー材料を含有する歯科物品は、本明細書に記述されるようにフルオロポリマーで保護することができる。かかる物品としては、歯科矯正装置(例えば、ブラケット、バッカルチューブ、アーチワイヤー、シース、リテイナー、アーチ拡大装置、クラスIIおよびクラスIII矯正装置、フェイスボー、およびボタン)、ブリッジ、クラウン、義歯、リテイナー、トゥースポジショナー、歯科用印象トレイ、比較的不撓性の歯列トレイ(tooth alignment tray)およびマウスガードが挙げられる。本発明の好ましい歯科物品としては、歯科矯正装置、特にブラケットおよびワイヤーが挙げられる。
【0025】
歯科矯正装置の外面にフルオロポリマーを塗布することに加えて、または塗布することの代わりとして、アーチワイヤーを受け入れるための通路を定義する装置の内壁表面にフルオロポリマーを塗布することができる。例えば、フルオロポリマーは、歯科矯正ブラケットのアーチワイヤースロットの舌側、咬合側、および/または歯肉側表面に、あるいはバッカルチューブまたはシースのアーチワイヤー通路の内部管状面に塗布することができる。
【0026】
非エラストマー歯科物品は一般に、金属、セラミック、および比較的不撓性の有機ポリマー材料を含む。適切な金属の例としては、ステンレス鋼合金(シリーズ(Series)300、シリーズ(Series)400および17−PHなど)、チタン合金(米国特許第5,947,723号明細書(モタット(Mottate)ら)および米国特許第5,232,361号明細書(サッチデヴァ(Sachdeva)ら)に記載の合金など)、β−チタン合金(米国特許第4,197,643(ブーアストン(Burstone)ら)およびPCT公開出願の国際公開第99/45161号パンフレットに記載の合金など)、チタンの析出物を有する鉄ベースの合金(米国特許第6,280,185号明細書(パルマー(Palmer)ら)に記載の合金など)、エルジロイ(Elgiloy)商標合金などのコバルト−クロム合金、ニッケル−チタンおよび三元置換ニッケル−チタン合金などの形状記憶合金、およびβチタンなどのチタン合金が挙げられる。適切なセラミック材料の例としては、単結晶アルミナ(米国特許第4,639,218号明細書(ジョーンズ(Jones)ら)に記載されているような)および多結晶アルミナ(米国特許第4,954,080号明細書(ケリー(Kelly)ら)および米国特許第6,648,638号明細書(カストロ(Castro)ら)に記載のような)が挙げられる。
【0027】
適切な有機ポリマー材料の例としては、熱硬化性および熱可塑性材料が挙げられる。歯科物品が歯科矯正装置である場合には、ポリマー材料は好ましくは、過度なクリープ、歪み、または破壊に耐えるのに十分な強度を有する。適切な熱硬化性樹脂としては、エポキシ、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、およびそれら混合物が挙げられる。適切な熱可塑性樹脂としては、アクリル、ポリスルホン、ポリカーボネート(GE社のレキサン(LEXAN)商標ポリカーボネートなど)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、およびポリウレタンが挙げられる。任意に、ポリマー材料は、繊維(米国特許第4,717,341号明細書(ゴールドバーグ(Goldberg)ら)および米国特許第5,318,440号明細書(アダム(Adam)ら)に記載のような)で、またはフレーム構造(米国特許第3,930,311号明細書(アンドリュース(Andrews))および米国特許第5,597,302号明細書(ポスピシル(Pospisil)ら)に記載のような)で補強することができる。
【0028】
一般に、現在の非エラストマー歯科物品、特に歯科矯正ブラケットおよびワイヤーは、本明細書で記述するようにフルオロポリマーでコーティングした場合に特別な利点が見出される。多くのフルオロポリマーは、特に有機基材で作製された歯科物品上のフルオロポリマーコーティングとして一般に研究されていない。これは、一部、(a)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)および関連するフルオロポリマーが一般的な有機溶媒における溶解性を持たない;(b)それらは、他の基材に対して非密着性である評価を有する(したがって、コーティングの耐久性および機械的性質が劣る);(c)大部分のフルオロエラストマーは、溶液状態のコーティング組成物の貯蔵寿命を短くし、かつ毒物学的問題のために医療用途で使用するのに適していない硬化化学反応を用いて、塗布後に硬化させる必要がある;という事実のためである。
【0029】
特定の実施形態では、適切なフルオロポリマーは、部分フッ素化ポリマーである(つまり、かかるポリマーは過フッ素化されていない)。好ましくは、かかる部分フッ素化フルオロポリマーは、フッ素を少なくとも40重量%、さらに好ましくはフッ素原子を少なくとも50重量%、またさらに好ましくは少なくとも60重量%含有する。かかる部分フッ素化ポリマーは、フルオロエラストマーまたはフッ素プラスチックであることができる。
【0030】
特定の実施形態において、フルオロポリマーは過フッ素化ポリマーである。かかる実施形態において、過フッ素化ポリマーは、パーフルオロエラストマーポリマーである。
【0031】
特定の実施形態において、ポリマー中に存在するフッ素原子のうちの少なくとも50%が、ポリマーの主鎖にある。さらに好ましくは、ポリマー中に存在するフッ素原子のうちの少なくとも75%、またさらに好ましくは実質的にすべてのフッ素原子が、ポリマーの主鎖にある。本明細書で使用される、分子における最も長い連続する鎖は主鎖を意味する。主鎖に結合している基は、置換基または側鎖と呼ばれる。
【0032】
適切なフルオロポリマーは、少なくとも10,000の分子量を有するフルオロポリマーである。
【0033】
適切なフルオロポリマーの例は、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、およびそれら組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類のモノマーから誘導されるポリマーである。これらは、ホモポリマー(例えば、ポリ(フッ化ビニリデン))またはコポリマー(例えば、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマーおよびフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー)であることができる。ポリマーが、記載のモノマーのうちの少なくとも1つから誘導される限り、フッ素化モノマーである、またはフッ素化モノマーではない、他のモノマー、特にエチレン性不飽和モノマー(エチレンまたはクロロトリフルオロエチレンモノマーなど)をこれらのモノマーと組み合わせて使用することができる。好ましくは、フルオロポリマーは、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、およびそれら組み合わせから誘導される共重合単位を含む。
【0034】
適切なフルオロポリマーの例としては、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデンターポリマー(THV)、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、およびそれら混合物が挙げられる。
【0035】
フルオロポリマーは、溶融加工性(例えば、熱可塑性)である、または溶融加工性ではない。溶融加工性ポリマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン(THV)のターポリマーが挙げられる。非溶融加工性ポリマーとしては、例えば、特定のフルオロエラストマーが挙げられる。
【0036】
本発明において有用な好ましいフルオロポリマー材料としては、フッ化ビニリデン(時に、「VF2」または「VDF」と呼ばれる)から誘導される共重合単位を有するコポリマー(ターポリマー等を含む)が挙げられる。好ましくは、この好ましい種類のフルオロポリマー材料は、VF2から誘導される共重合単位を少なくとも3重量%含有する。かかるポリマーは、VF2のホモポリマーまたはVF2と他のエチレン性不飽和モノマーとのコポリマー(ターポリマーを含む)であることができる。特に好ましいかかるポリマーは、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンから誘導される共重合単位を含む。
【0037】
VF2含有ホモポリマーおよびコポリマーは、よく知られている従来の手段によって、例えば、VF2を他のエチレン性不飽和モノマーと共に、またはなしで、ラジカル重合することによって製造することができる。かかるポリマーおよびコポリマーのコロイド状水性分散液の調製は、例えば米国特許第4,335,238号明細書(ムーア(Moore)ら)に記載されている。乳化重合技術を用いてVF2含有フルオロポリマーを製造する他の方法は、米国特許第4,338,237号明細書(ズルツバハ(Sulzbach)ら)または米国特許第5,285,002号明細書(グルートアールト(Grootaert))に記載されている。
【0038】
本発明の実施において有用な他のフッ素化ポリマーとしては、パーフルオロメチルビニルエーテル(「PMVE」)から誘導される共重合単位を含む、ホモポリマーおよびコポリマー(ターポリマー等を含む)が挙げられる。
【0039】
VF2含有ポリマーを製造するのに有用なフッ素含有モノマーとしては、米国特許第4,558,141号明細書(スクワイヤー(Squire))に記載されているモノマーなど、ヘキサフルオロプロピレン(「HFP」)、テトラフルオロエチレン(「TFE」)、クロロトリフルオロエチレン(「CTFE」)、2−クロロペンタフルオロ−プロペン、パーフルオロアルキルビニルエーテル(例えば、CF3OCF=CF2またはCF3CF2OCF=CF2)、1−ヒドロペンタフルオロプロペン、2−ヒドロ−ペンタフルオロプロペン、ジクロロジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、1,1−ジクロロジフルオロエチレン、フッ化ビニル、およびパーフルオロ−1,3−ジオキソールが挙げられる。パーフルオロジアリルエーテルおよびパーフルオロ−1,3−ブタジエンなどの特定のフッ素含有ジオレフィンもまた有用である。
【0040】
フッ素含有モノマーは、フッ素非含有(好ましくは末端不飽和)オレフィンコモノマー、例えば、エチレンまたはプロピレンと共重合することもできる。好ましくは、重合性混合物中のすべてのモノマーのうちの少なくとも50重量%がフッ素を含有する。有用なオレフィン性不飽和としては、エチレンおよびプロピレンなどのアルキレンモノマーが挙げられる。かかるモノマーは、機械的性質または低温性能をもたらす。
【0041】
過酸化物硬化性ポリマーを製造するために、フッ素含有モノマーは、ヨウ素、塩素、シアノ、または臭素含有硬化部位モノマー(特に、ハロゲン含有硬化部位モノマー)と共重合することもできる。適切な硬化部位モノマーとしては、ブロモジフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ヨードトリフルオロエチレン、および4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1,4−シアノパーフルオロブチルビニルエーテル(CF2=CFOCF2CF2CF2CF2CN)などの炭素原子2〜4個の末端不飽和モノオレフィンが挙げられる。ハロゲン含有フルオロポリマーE−15742の一例は、臭素化硬化部位モノマーを有するTFE/HFP/VDFのターポリマーである。かかるハロゲン含有フルオロポリマーは、過酸化物硬化系で硬化することができる。
【0042】
適切な材料は、市販もされている。これらとしては、例えば、商品名THVで市販されている材料(ミネソタ州セントポールのダイニオン社(Dyneon LLC of Saint Paul,MN)から市販のCF2=CF2/CH2=CF2/CF3CF=CF2(TFE/VDF/HFP)フルオロエラストマーのターポリマー)、カイナー(KYNAR)(アトフィナ社から市販されているVDFホモポリマーおよびVDFコポリマー)、フルオレル(FLUOREL)(例えば、ダイニオン社(Dyneon LLC)から市販のCF2=CH2/CF3CF=CF2(VDF/HFP)フルオロエラストマーのコポリマー)、商品名バイトン(VITON)でデュポン社(DuPont)によって販売されているフルオロエラストマー(VF2/HFP、VF2/HFP/TFE、TFE/プロピレンおよびエチレン/TFE/PMVEのコポリマー)が挙げられる。
【0043】
他の有用なフルオロポリマーとしては、それらが望ましい結果を提供するのに十分な量のフッ素(例えば、少なくとも40重量%)を有する限り、フルオロシリコーンおよびフルオロアルコキシホスファゼンが挙げられる。特定の実施形態は、ケイ素含有フルオロポリマーを含むことができるが、他の実施形態は、好ましくはケイ素原子5重量%未満、さらに好ましくはケイ素原子3重量%未満を含有し、またさらに好ましくは、ケイ素原子を実質的に含まない。
【0044】
上述のように、特定の実施形態において、フルオロポリマーは、過フッ素化フルオロポリマーである。かかる実施形態において、過フッ素化ポリマーは、パーフルオロエラストマーポリマーである。かかるパーフルオロエラストマーポリマーの例としては、4−シアノパーフルオロブチルビニルエーテル(CF2=CFOCF2CF2CF2CF2CN)などの硬化部位モノマーが、硬化の目的のために一般に組み込まれている、TFE/PMVEのコポリマーが挙げられる。
【0045】
上述のフルオロポリマーを互いに、または他のフッ素化もしくは非フッ素化ポリマーと混合(例えば、ブレンド)して、フッ素化層を構成するのに有用な複合材料を形成することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデンをポリメチルメタクリレート(PMMA)とブレンドすることができる。
【0046】
任意に、フルオロポリマーは、セラミック、有機ポリマー材料、および金属などの非エラストマー基材の材料と同じ材料と混合(例えば、ブレンド)することができる。非フッ素化ポリマーの例は、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、酢酸ビニルポリマー、およびそれら組み合わせからなる群から選択されるポリマーである。
【0047】
フルオロポリマーを基材に塗布する場合、ポリマーの形で塗布されるか、またはポリマーの前駆物質として塗布され、次に熱重合、光開始重合、または酸化還元重合によって重合される。
【0048】
硬化速度および/または基材への密着性を高めるために、フッ素化ポリマー(1種または複数種)および任意の非フッ素化ポリマー(1種または複数種)またはその前駆物質を1種または複数種の硬化剤と合わせることができる。特に、ハロゲン含有フルオロポリマー(例えば、臭素化硬化部位モノマーを有するTFE/HFP/VDFのターポリマー)は、過酸化物硬化系を使用して硬化することができる。通常、過酸化物硬化系は、有機過酸化物開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルヒドロペルオキシド、テキサス州クロスビーのエルフ・アトケム社(Elf Ato Chem,Crosby,TX)から市販のLUPERSOL 130または110過酸化物および多官能性脂肪族不飽和化合物(例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、ジビニルベンゼン、オクタジエン)を含む。好ましくは、過酸化物硬化系は、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)またはトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)と過酸化ベンゾイル(BP)との混合物、およびアルドリッチ社(Aldrich)などの供給元から市販のものを含む。
【0049】
フルオロポリマーは、浸漬、はけ塗り、または吹付け塗りによって、オーバーモルディング、押出し成形、または他の適切な方法によって基材上に塗布される。フルオロポリマーは好ましくは、液体担体(例えば、有機溶媒または水)からコーティングされる。
【0050】
浸漬被覆プロセスでは、基材をコーティング液に浸漬し、取り出し、乾燥させる。コーティング液は溶液である。コーティング組成物に使用される適切な有機溶媒としては、限定されないが、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、n−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、酢酸エチル、フッ素化溶媒、およびそれら混合物が挙げられる。
【0051】
コーティング組成物の濃度は、耐着色性を得るのに十分に厚いコーティングを形成するのに十分な濃度である。保護フルオロポリマー層の厚さは好ましくは、単層であり、非エラストマー基材の内部特性を変化させないようにするために十分に薄い。好ましくは、保護フルオロポリマー層の厚さは、少なくとも0.01ミクロン、さらに好ましくは少なくとも0.5ミクロンである。好ましくは、保護層の厚さは、20ミクロン以下、さらに好ましくは2.5ミクロン以下である。
【0052】
所望の厚さは、例えば、コーティング組成物(溶液/分散液)の濃度およびコーティングプロセスにおけるパス(pass)の数を変化させることによって達成することができる。通常のコーティング濃度は少なくとも1重量%であり、それより低い濃度を使用することができるが、より多くのコーティングパスが必要になる。好ましくは、コーティング組成物の濃度は、組成物の全重量に対してフルオロポリマーが少なくとも3重量%である。通常の濃度は20重量%以下であるが、それより高い濃度を使用することができる。好ましくは、コーティング組成物の濃度は、組成物の全重量に対してフルオロポリマー10重量%以下である。
【0053】
厚さと濃度の関係は、コーティング組成物の粘度によって影響を受ける。高い分子量を有するポリマーは粘度が高くなり、したがって厚さが大きくなる。
【0054】
通常のコーティング温度および回数は、コーティング組成物が基材表面に浸透するのに十分であるが、非エラストマー基材の内部特性に悪影響を及ぼすほど高くない。フルオロポリマーの溶解性が所望のコーティング組成物濃度を得るのに十分な場合、コーティング温度は室温であることができる。必要であれば、フルオロポリマーの溶解性を高めるために、コーティング組成物を加熱することができる。好ましいコーティング時間は、0.25秒〜10分である。
【0055】
コーティング段階後、通常、プロセスは熱硬化プロセスを含む。硬化温度および時間は、非エラストマー基材の内部特性を損なうことなく優れた結合を形成するように選択される。通常、かかる温度は、フルオロポリマーの融解温度以上であるが、非エラストマー基材の軟化温度未満である。
【0056】
しかるべき場合には、フルオロポリマーは、洗浄段階および/または下塗り段階後に非エラストマー基材に塗布される。本明細書において下塗りとは、フルオロポリマーの塗布前に、プライマーで基材をコーティングすることを意味する。
【0057】
洗浄プロセスは通常、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、トルエン、およびフッ素化溶媒などの溶媒で材料を洗浄することを含む。
【0058】
プライマーとしては、例えば、ポリ−l−リジン、ダイナマー(DYNAMAR)FC5155エラストマー添加剤(3Mダイニオン社(3M Dyneon))、およびポリアリルアミンが挙げられる。好ましくは、プライマーとしては、特にTHV含有ポリマーに対して、ポリ−l−リジンおよびポリアリルアミンが挙げられる。下塗プロセスは、例えば、0.1重量/体積%(w/v%)のポリ−L−リジン/水で下塗りすること、任意に焼付けすること(例えば、温度90℃および例えば15分間の時間)を含む。
【0059】
基材へのフルオロポリマーの密着性を高める代替の方法は、フルオロポリマー含有組成物に接着性向上剤を組み込むことである。かかる接着性向上剤の例としては、多官能性アミン(米国特許第5,656,121(フクシ(Fukushi))に開示されているものなど)、およびアミノシラン(米国特許第6,753,087号明細書(ジン(Jing)ら)に開示されているものなど)が挙げられる。
【0060】
本発明の保護フルオロポリマー層の持続性(substantivity)(つまり、密着性)は、多くの技術によって測定される。例えば、フルオロポリマー層が、歯磨きまたは沸騰水への浸漬などの様々な攻撃後にそのままの状態であるかどうかを評価することができる。
【0061】
歯磨き試験では、人間の1ヶ月の歯磨きをシミュレートするように、力およびサイクル数を設定する。かかる歯磨きのシミュレーション後、フルオロポリマー層の完全性を実証するために、フルオロポリマーの密着性が良い状態のままであれば、フルオロポリマー層が着色から試料を保護するかどうか試料を着色試験にかける。
【0062】
試料を沸騰水に浸漬する沸騰水試験を用いて、密着性を試験することができる。層間剥離が起こらない場合には、界面密着性は良好である。本発明の好ましいコーティングの密着性は、フルオロポリマー被覆試料を沸騰水に3時間浸した後でさえ、耐える、または変化しない。
【0063】
剥離強さを用いて、界面密着性を定量化することができる。さらなる説明については実施例1を参照されたい。望ましい剥離強さは、好ましくは0.2ポンド/インチ(0.4N/cm)を超え、さらに好ましくは1ポンド/インチ(1.8N/cm)を超え、最も好ましくは4ポンド/インチ(7.0N/cm)を超える。
【0064】
本発明のコーティングの耐着色性(特に、食品、飲料、および細菌)および低摩擦は特に望ましい。
【0065】
着色試験は、様々な方法で行うことができる。例えば、これは、からし100%および他の着色剤への24時間の浸漬、または50:50のからし/水のみへの2時間の浸漬を含み得る。
【0066】
試料は、着色試験において対照よりも着色を示さない(好ましくは、全く着色を示さない、またはわずかに着色を示す)ことが好ましい。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は、説明のために示されており、本発明の範囲を限定するものではない。別段の指定がない限り、すべての部およびパーセンテージは重量により、すべての分子量は重量平均分子量である。
【0068】
材料
THV220は、TFE/HFP/VDFのターポリマーである。
カイナー(KYNAR)7201は、VDF/TFEのコポリマーである。
E−15742は、臭素化硬化部位モノマーを有するTFE/HFP/VDFのターポリマーである。
TFEは、テトラフルオロエチレンである。
HFPは、ヘキサフルオロプロピレンである。
VDFは、フッ化ビニリデンである。
【0069】
実施例1
界面密着性試験
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを4種類のコーティング材料でコーティングした。これらのコーティング材料は、商品名THV220(3Mダイニオン社(3M Dyneon))、カイナー(KYNAR)7201(アトフィナ社(Atofina))で市販されているフルオロポリマー材料、ならびに8:2および9:1のカイナー(KYNAR)7201フルオロポリマー:ポリメチルメタクリレート(アルドリッチ社(Aldrich)から市販のPMMA、Mw120,000)のブレンドを含む。コーティング材料をメチルエチルケトン(MEK)に溶解した。フィルムを8.5重量%溶液中で浸漬被覆した。さらに、MEK中のフルオロエラストマーE−15742(3Mダイニオン社(3M Dyneon)から市販されている)の10重量%溶液をコーティングに直接使用するか、またはコーティングについて表1および2に記載の様々な濃度の硬化剤(TAIC:トリアリルイソシアヌレート、TMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート、BP:過酸化ベンゾイル,すべてアルドリッチ社(Aldrich)から市販されている)と合わせた。硬化剤(つまり、硬化系)の濃度は、フルオロポリマーにおけるパーセンテージに基づき、最終コーティング組成物濃度に基づくものではない。コーティングした後、試料を140℃で10分間硬化させた。
【0070】
フルオロポリマーと基材との界面密着性を決定するために、2つの試験を行った。最初の試験は、沸騰水への浸漬であった。被覆試料を沸騰水に3時間浸漬した。沸騰水から試料を取り出し、界面を調べて、被覆フルオロポリマー層が層間剥離しているかどうかを決定した。その結果を表1に示す。
【0071】
剥離強さが、界面密着性を決定するための第2の試験であった。T型剥離試験による層間の密着性の試験を補助するため、THV220またはPVDFの厚いフィルム(20ミル(0.51mm))を、剥離測定に十分な厚さを得るために、フルオロポリマーコーティングを有するフィルムの面にラミネートした。場合によっては、わずかな力をラミネートシートにかけ、良好な表面接触を維持した。2インチ×3インチ(5.08cm×7.62cm)ラミネートシートの短いエッジに沿って、テフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))被覆繊維シートのストリップを基材表面とフルオロポリマーフィルムの間に約0.25インチ(0.64mm)挿入し、剥離試験のタブの役割を果たす非結合領域を提供した。次いで、ラミネートシートをウォバシュ液圧プレス(Wabash Hydraulic Press)(インディアナ州ウォバシュのウォバシュ・メタル・プロダクツ社Hydraulic事業部(Wabash Metal Products Company,Inc.,Hydraulic Division,Wabash,IN))の熱板の間で200℃にて2分間プレスし、直ぐに冷圧プレスに移動した。冷圧プレスによって室温に冷却した後、得られた試料をT型剥離測定にかけた。
【0072】
「T型剥離」試験としても一般に知られる、「接着剤の耐剥離性標準試験法()Standard Test Method for Peel Resistance of Adhesives)」というタイトルのASTM D−1876に記載の試験手順に従って、ラミネート試料の剥離強さを決定した。シンテックテスター(Sintech Tester)20(ミネソタ州イーデンプレーリーのMTSシステムズ社(MTS Systems Corporation,Eden Prairie,MN)から市販されている)を備えたインストロン(INS(登録商標)TRON)モデル1125試験機(マサチューセッツ州カントンのインストロン社(Instron Corp.,Canton,MA)から市販されている)を使用して、剥離データを測定した。インストロン(INS(登録商標)TRON)試験機をクロスヘッド速度4インチ/分(10.2cm/分)で操作した。剥離試験中に測定された平均荷重として剥離強さを計算し、少なくとも2つの試料の平均としてポンド/インチ(lb/inch)幅(およびN/cm)で記録した。その結果を表2に示す。
【0073】
表1および2の結果から、驚くべきことに、過酸化物硬化剤と組み合わせた臭素含有フルオロポリマーは、特にPETに対してよく密着することが実証されている。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明に種々の修正および変更を加えることができることは、当業者には明らかであるだろう。本発明は、本発明に記載の例証となる実施形態および実施例によって過度に制限されるものではなく、かかる実施例および実施形態は、以下に記載の特許請求の範囲によってのみ制限されることが意図される本発明の範囲で、単なる一例として示されていることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーを含有する少なくとも1つの層がその上に配置された非エラストマー基材を含む歯科物品であって、前記フルオロポリマーが部分フッ素化ポリマーであり、さらに:
前記フルオロポリマーが、フッ素を少なくとも40重量%含有し;
フルオロポリマー中に存在するすべてのフッ素原子のうちの少なくとも50%が、フルオロポリマーの主鎖中にある、前記歯科物品。
【請求項2】
前記フルオロポリマーが、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、およびそれら組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類のモノマーから誘導される、請求項1に記載の歯科物品。
【請求項3】
前記フルオロポリマーが、フッ化ビニリデンから誘導される共重合単位を含む、請求項2に記載の歯科物品。
【請求項4】
前記フルオロポリマーが、フッ化ビニリデンから誘導される共重合単位を少なくとも3重量%含む、請求項3に記載の歯科物品。
【請求項5】
前記フルオロポリマーが、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンから誘導される共重合単位を含む、請求項3に記載の歯科物品。
【請求項6】
前記フルオロポリマーが、コポリマーである、請求項1に記載の歯科物品。
【請求項7】
前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデンターポリマー、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、およびそれら混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の歯科物品。
【請求項8】
前記フルオロポリマーが、少なくとも10,000グラム/モルの分子量を有する、請求項1に記載の歯科物品。
【請求項9】
歯科矯正装置である、請求項1に記載の歯科物品。
【請求項10】
前記歯科矯正装置が、ブラケット、バッカルチューブ、アーチワイヤー、シース、リテイナー、アーチ拡大装置、クラスII矯正装置、クラスIII矯正装置、フェイスボー、またはボタンである、請求項9に記載の歯科物品。
【請求項11】
アーチワイヤーまたはブラケットである、請求項10に記載の歯科物品。
【請求項12】
前記フルオロポリマー含有層がさらに、非フッ素化ポリマーを含む、請求項1に記載の歯科物品。
【請求項13】
前記非フッ素化ポリマーが、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、酢酸ビニルポリマー、およびそれら組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の歯科物品。
【請求項14】
前記フルオロポリマーが、フッ化ビニリデンから誘導される共重合単位を含む、請求項12に記載の歯科物品。
【請求項15】
前記非エラストマー基材が、金属、セラミック、または比較的不撓性の有機ポリマー材料を含む、請求項1に記載の歯科物品。
【請求項16】
フルオロポリマー中に存在するフッ素原子のうちの少なくとも75%が、フルオロポリマーの主鎖中にある、請求項1に記載の歯科物品。
【請求項17】
存在する実質的にすべてのフッ素原子が、フルオロポリマーの主鎖中にある、請求項16に記載の歯科物品。
【請求項18】
前記フルオロポリマーが、ケイ素原子を5重量%未満含有する、請求項1に記載の歯科物品。
【請求項19】
前記フルオロポリマーが、ケイ素原子を3重量%未満含有する、請求項18に記載の歯科物品。
【請求項20】
前記フルオロポリマーが、実質的にケイ素原子を含有しない、請求項19に記載の歯科物品。
【請求項21】
前記フルオロポリマー含有層が、0.4N/cmを超える剥離強さを有する、請求項1に記載の歯科物品。
【請求項22】
パーフルオロエラストマーを含有する少なくとも1つの層がその上に配置された非エラストマー基材を含む歯科物品。
【請求項23】
前記パーフルオロエラストマーが、テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとのコポリマーを含む、請求項22に記載の歯科物品。
【請求項24】
テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとの前記コポリマーが、硬化部位モノマーを使用して製造される、請求項23に記載の歯科物品。
【請求項25】
前記硬化部位モノマーが、4−シアノパーフルオロブチルビニルエーテルである、請求項24に記載の歯科物品。
【請求項26】
前記パーフルオロエラストマーが、少なくとも10,000グラム/モルの分子量を有する、請求項22に記載の歯科物品。
【請求項27】
歯科矯正装置である、請求項22に記載の歯科物品。
【請求項28】
前記歯科矯正装置が、ブラケット、バッカルチューブ、アーチワイヤー、シース、リテイナー、アーチ拡大装置、クラスII矯正装置、クラスIII矯正装置、フェイスボー、またはボタンである、請求項27に記載の歯科物品。
【請求項29】
アーチワイヤーまたはブラケットである、請求項28に記載の歯科物品。
【請求項30】
前記フルオロポリマー含有層がさらに、非フッ素化ポリマーを含む、請求項22に記載の歯科物品。
【請求項31】
前記非フッ素化ポリマーが、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、酢酸ビニルポリマー、およびそれら組み合わせからなる群から選択される、請求項30に記載の歯科物品。
【請求項32】
前記非エラストマー基材が、金属、セラミック、または比較的不撓性の有機ポリマー材料を含む、請求項22に記載の歯科物品。
【請求項33】
前記パーフルオロエラストマーが、ケイ素原子を5重量%未満含有する、請求項22に記載の歯科物品。
【請求項34】
前記パーフルオロエラストマーが、ケイ素原子を3重量%未満含有する、請求項33に記載の歯科物品。
【請求項35】
前記パーフルオロエラストマーが、実質的にケイ素原子を含有しない、請求項34に記載の歯科物品。
【請求項36】
歯科物品への物質の付着を低減する方法であって:
非エラストマー基材を含む歯科物品を提供する段階;および
前記非エラストマー基材の少なくとも一部に、フルオロポリマーを含有する少なくとも1つの層を被覆する段階;
を含み、前記フルオロポリマーが部分フッ素化ポリマーであり、フッ素を少なくとも40重量%含有し、フルオロポリマー中に存在するすべてのフッ素原子のうちの少なくとも50%がフルオロポリマーの主鎖中にある、前記方法。
【請求項37】
前記フルオロポリマーが、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、およびそれら組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類のモノマーから誘導される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1つの層を被覆することが、液体担体および前記フルオロポリマーを含有するコーティング組成物を前記非エラストマー基材に塗布することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記液体担体が、有機溶媒である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記液体担体が、水である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記コーティング組成物が、溶液である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記コーティング組成物が、フルオロポリマー1〜20重量%を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1つの層を被覆することが、フルオロポリマーを含有するコーティング組成物中に前記非エラストマー基材を浸漬することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
塗布されたコーティング組成物を熱硬化させることをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
フルオロポリマー中に存在するフッ素原子のうちの少なくとも75%が、フルオロポリマーの主鎖中にある、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
フルオロポリマー中に存在する実質的にすべてのフッ素原子が、フルオロポリマーの主鎖中に存在する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記フルオロポリマーが、ケイ素原子を5重量%未満含有する、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
前記フルオロポリマーが、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、およびそれら組み合わせから誘導される共重合単位を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項49】
前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデンターポリマー、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、およびそれら混合物からなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記歯科装置が、歯科矯正装置である、請求項36に記載の方法。
【請求項51】
前記歯科矯正装置が、ブラケット、バッカルチューブ、アーチワイヤー、シース、リテイナー、アーチ拡大装置、クラスII矯正装置、クラスIII矯正装置、フェイスボー、またはボタンである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
歯科物品への物質の付着を低減する方法であって:
非エラストマー基材を含む歯科物品を提供する段階;
パーフルオロエラストマーを含有する少なくとも1つの層を被覆する段階;
を含む方法。
【請求項53】
前記パーフルオロエラストマーが、テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとのコポリマーを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記パーフルオロエラストマーが、硬化部位モノマーを使用して製造される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記硬化部位モノマーが、4−シアノパーフルオロブチルビニルエーテルである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
少なくとも1つの層を被覆することが、液体担体および前記パーフルオロエラストマーを含有するコーティング組成物を前記非エラストマー基材に塗布することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記液体が、有機溶媒である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記液体が、水である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記コーティング組成物が、溶液である、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記コーティング組成物が、パーフルオロエラストマー1〜20重量%を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
少なくとも1つの層を被覆することが、パーフルオロエラストマーを含有するコーティング組成物中に前記非エラストマー基材を浸漬することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項62】
塗布されたコーティング組成物を熱硬化させることをさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項63】
前記パーフルオロエラストマーが、ケイ素原子を5重量%未満含有する、請求項52に記載の方法。
【請求項64】
前記歯科装置が、歯科矯正装置である、請求項52に記載の方法。
【請求項65】
前記歯科矯正装置が、ブラケット、バッカルチューブ、アーチワイヤー、シース、リテイナー、アーチ拡大装置、クラスII矯正装置、クラスIII矯正装置、フェイスボー、またはボタンである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
フルオロポリマーを含有する少なくとも1つの層がその上に配置された有機ポリマー材料を含む非エラストマー基材であって、前記フルオロポリマーが、ハロゲン含有フルオロポリマーと、有機過酸化物開始剤および多官能性脂肪族不飽和化合物を含む過酸化物硬化系とから製造される、前記非エラストマー基材。

【公表番号】特表2008−520667(P2008−520667A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543100(P2007−543100)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/039953
【国際公開番号】WO2006/055274
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】