保護剤塗布装置、プロセスカートリッジ、画像形成装置、保護剤塗布装置の評価方法
【課題】像担持体上に塗布されている保護剤の量を評価することにより、保護剤の塗布を良好に行うことができる保護剤塗布装置を実現する。
【解決手段】赤外吸収スペクトル法のATR法により測定される保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルAと保護剤単独のIRスペクトルBを比較したとき、IRスペクトルAにはIRスペクトルBに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有し、IRスペクトルBにはIRスペクトルAに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有し、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の像担持体のIRスペクトルC中の、IRスペクトルBに存在せず、IRスペクトルAに存在する任意の一つのピークaのピーク面積Saと、IRスペクトルAに存在せずIRスペクトルBに存在する任意の一つのピークbのピーク面積Sbの比(Sb/Sa)より、像担持体上の保護剤の塗布量を評価する。
【解決手段】赤外吸収スペクトル法のATR法により測定される保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルAと保護剤単独のIRスペクトルBを比較したとき、IRスペクトルAにはIRスペクトルBに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有し、IRスペクトルBにはIRスペクトルAに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有し、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の像担持体のIRスペクトルC中の、IRスペクトルBに存在せず、IRスペクトルAに存在する任意の一つのピークaのピーク面積Saと、IRスペクトルAに存在せずIRスペクトルBに存在する任意の一つのピークbのピーク面積Sbの比(Sb/Sa)より、像担持体上の保護剤の塗布量を評価する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを用いた画像形成装置、またはこの画像形成装置に装備されるプロセスカートリッジに用いられ、像担持体の表面をクリーニングブレードとの摩擦力等の力学的ストレスや、帯電による電気的ストレス等から保護するための保護剤を前記像担持体に塗布する保護剤塗布装置に関する。
また、本発明は、その保護剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ、あるいは、前記保護剤塗布装置またはプロセスカートリッジを備えた複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等の画像形成装置に関する。
さらに本発明は、像担持体に保護剤を塗布する保護剤塗布装置について、保護剤塗布量の良否を判定するための保護剤塗布装置の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置においては、像担持体(例えば光導電性の感光体)に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を施すことにより画像形成が行われる。帯電工程で生成し感光体表面に残る放電生成物および転写工程後に感光体表面に残る残トナーまたはトナー成分はクリーニングプロセスを経て除去される。
【0003】
一般に用いられるクリーニング方式としては、安価で機構が簡単でクリーニング性に優れたゴムやウレタンからなるクリーニングブレードが用いられている。しかし、クリーニングブレードは感光体に押し当てて感光体表面の残留物を除去するため、感光体表面とクリーニングブレード間の摩擦によるストレスが大きく、クリーニングブレードの磨耗や、特に有機感光体(OPC)においては感光体表面層の磨耗が生じ、クリーニングブレードおよび有機感光体の寿命を短くするという問題がある。
【0004】
また、画像形成装置の高画質化の要求に対して、画像形成に用いられるトナーは小粒径のものになってきている。小粒径のトナーを用いた画像形成装置では、残トナーがクリーニングブレードをすり抜けていく割合が多くなり、特にクリーニングブレードの寸法精度、組み付け精度が十分でなかったり、クリーニングブレードが部分的に振動した場合には、トナーのすり抜けが激しくなってしまい、高画質の画像形成を妨げていた。
そのため、有機感光体の寿命を延ばし長期に渡って高画質を保持するには、摩擦による部材の劣化を低減し、クリーニング性を向上させる必要がある。
【0005】
この要求に対して、実際には潤滑剤を感光体に供給し、クリーニングブレードで潤滑剤の皮膜を形成する方法などが採用されている。感光体への潤滑剤の塗布により、感光体表面が潤滑剤によって保護されるため、クリーニングブレードと感光体の摩擦によって生じる感光体磨耗や感光体を帯電するときに生じる放電のエネルギーによる感光体の劣化が低減される。また、潤滑剤の塗布により、感光体表面の潤滑性が上がるためクリーニングブレードが部分的に振動する現象が低減され、すり抜けトナーの量が減少する。しかし、このような潤滑性や保護性は潤滑剤の塗布量が少なすぎると、感光体磨耗、AC帯電による感光体劣化、トナーすり抜けに充分な効果を発揮できないため、潤滑剤の塗布量を規定しておく必要があった。
【0006】
潤滑剤塗布量の評価について、一般的に潤滑剤として用いられるステアリン酸亜鉛を用いた場合には、感光体表面に塗布されたステアリン酸亜鉛の量を、感光体表面のXPS(X−ray photoelectron spectroscopy)分析により検出される全元素に対する亜鉛元素の割合で評価する方法が用いられてきた(特許文献1(特開2005−17469公報)、特許文献2(特開2005−249901公報)、特許文献3(特開2005−004051公報)、特許文献4(特開2004−198662公報)等参照)。
XPSではサンプル極表面の水素以外の元素全てを検出するから、XPSを用いてステアリン酸亜鉛が塗布された有機感光体表面を分析すると、ステアリン酸亜鉛の被覆率が増えるにつれて、有機感光体の持つ元素比率からステアリン酸亜鉛の持つ元素比率に近づき、ステアリン酸亜鉛の被覆率が100%になると元素比率はステアリン酸亜鉛の元素比率と理論的に一致し、検出される亜鉛量は飽和してしまう。すなわち、ステアリン酸亜鉛(C36H70O4Zn)が感光体表面全体を全て覆っている場合、ステアリン酸亜鉛(C36H70O4Zn)の分子中の水素以外の元素比より、XPSにより検出される全元素に対する、亜鉛元素の割合は理論上では2.44%となる。
【0007】
しかし、用いられる潤滑剤によっては、このような評価方法を用いる事ができないものもある。すなわち、ステアリン酸亜鉛のような金属を含有する保護剤では、XPS分析やXRF(X−ray Flourescence)分析により金属量から被覆率や塗布量を求めることができるが、パラフィンのような金属を含有しない単純な構造の保護剤を用いた場合には、XPS分析やXRF分析において金属が検出されないため、感光体上に塗布されている保護剤の量を評価することは難しかった。また、ステアリン酸亜鉛のような金属を含有する保護剤では、塗布量を求める方法としてICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析により、金属元素から塗布量を追うことができるが、パラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合には、ICP発光分光分析による塗布量の評価をすることはできなかった。
【0008】
また、有機物を分析する方法としてATR(Attenuated Total Reflection)法が知られている(特許文献5(実用新案登録第2597515号公報)参照)。ATR法は、赤外吸収スペクトルを測定する方法の一つで、全反射を利用するもので、高い屈折率を持つATRプリズムを試料に密着させ、ATRプリズムを通して赤外光を試料に照射し、ATRプリズムからの出射光を分光分析する。
ATRプリズムと試料との屈折率の関係からある角度以上の条件で赤外光をプリズムに入射させると、赤外光はATRプリズムから出ず、ATRプリズムと試料との接触面で全反射を起こすが、その際、赤外光が僅かの距離だけ試料側に滲みだすので、試料で赤外光の吸収があれば反射光が減衰し、試料の吸収スペクトルを得ることができる。
【0009】
ATR法は、ATRプリズムと接触したごく薄い試料部分の吸収スペクトルを測定することができるため、厚い試料や透過性の低い試料であっても、ATRプリズムと密着させることができれば測定できるという利点を備えている。
このATR法を用いると、赤外光の吸収が起こる波数より官能基がわかるため、ATR法は定性分析によく用いられるが、試料を押さえる圧力によって、吸収スペクトルのピーク強度が変化するため、基本的に定量分析には用いられていなかった。
【0010】
次に、近年の帯電工程においては、直流電圧に交流電圧を重畳して帯電する帯電ローラ等によるいわゆるAC帯電が用いられるようになってきた。このAC帯電は、感光体の帯電電位の均一性が高い、オゾンや窒素酸化物(NOx)等の酸化性ガスの発生が少ない、装置を小型化できる等の優れた性能を有しているが、その反面、印加する交流電圧の周波数に応じ、1秒間に数百〜数千回もの正負放電が帯電部材と感光体の間で繰り返されるため、感光体はこの多数の放電を受けて表面層の劣化が加速される。この劣化に対して、感光体に金属石鹸等の潤滑剤を塗布しておくとAC帯電のエネルギーは、先ず潤滑剤に吸収され、感光体には到達し難くなるため、感光体は保護される。
【0011】
このように、感光体に金属石鹸等の潤滑剤を塗布した場合、AC帯電のエネルギーにより金属石鹸は分解していくが、金属石鹸は完全に分解し、消失してしまうのではなく、分子量の低い脂肪酸が生成し、感光体とクリーニングブレードとの摩擦力が高くなり、また脂肪酸とともに、トナー成分が感光上に膜状に付着されやすくなってしまい、画像の解像度が低下しやすくなると供に、感光体の磨耗が生じ、濃度ムラにつながりやすいという問題があった。そのため、脂肪酸が生成しても、直ぐに金属石鹸で感光体表面を覆ってしまえるよう、大量の金属石鹸を感光体上に供給するようにしている。
しかし、感光体上に大量の金属石鹸を供給しても、実際に感光体表面に付着するのは、ごく一部であり、感光体上に供給された金属石鹸のほとんどは、トナーと供に転写されたり、廃トナーと供に除去されたりしてしまうため、金属石鹸が早期に枯渇してしまい、感光体の寿命より前に、金属石鹸を新しいものに変えないといけなくなっていた。
【0012】
そこで、金属石鹸に変わる保護剤として、例えば、特許文献6(特開2005−274737公報)では、炭素数20以上70以下の高級アルコールを主成分とする潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を用いることにより、ブレードニップ部先端に高級アルコールが不定形粒子として滞留し、また、適度な像担持体表面への濡れ性を有することから、潤滑性能の持続性が発現するとしている。
【0013】
しかしながら、高級アルコールによる潤滑剤では、感光体表面に濡れやすく潤滑剤としての効果は期待できるが、感光体上に吸着した高級アルコール分子、一分子当りの占める吸着占有面積が広くなりがちであり、感光体の単位面積当たりに吸着する分子の密度(単位面積当りの吸着分子重量)が小さいため、上述のAC帯電による電気的ストレスから感光体を保護することが難しい。
【0014】
また、特許文献7(特開2002−97483公報)では、特定のアルキレンビスアルキル酸アミド化合物の粉体を潤滑性分として使用することにより、クリーニングブレードと像担持体が当圧接される界面に粉体微粒子が存在するため、円滑な潤滑作用が長期間にわたって保持できるとしている。
しかしながら、分子中に窒素原子を含む構成の潤滑剤では、潤滑剤自体が上述のAC帯電による電気的ストレスを受けた場合に、分解生成物として窒素酸化物やアンモニウム含有化合物に類するイオン解離性の化合物を生成し、潤滑層内に取り込まれてしまい、高湿度下で潤滑層が低抵抗化し、画像ボケを発生させることがある。
【0015】
一方、パラフィンを主成分とする保護剤は、AC帯電による電気的ストレスから感光体を保護し、感光体とクリーニングブレードとの摩擦力を低減することができ、また、廃トナーのクリーニング性が極めて良好になることが分かってきた。特に、パラフィンを主成分とする保護剤は、AC帯電によるストレスで酸化されたとしても脂肪酸の生成は少なく、感光体とクリーニングブレードとの間の摩擦力の変化が非常に少なく、大変好ましい。
【0016】
しかしながら、パラフィンを主成分とする保護剤を用いて画像形成を繰り返した場合、感光体とクリーニングブレードの磨耗によると思われる異常画像が発生する場合があった。特に、保護剤塗布装置を製造するロットによって、異常画像の発生確率が大きく異なることがあった。
そこで、その異常画像が発生している場所と発生していない場所とを詳細に調査したところ、スジ状の異常画像が発生した場所と異常画像が発生していない場所では、感光体の膜厚が少なくなっていたり、トナー成分が多く付着していることが分かったが、いかなる原因で、このような現象が起こるのかは分からなかった。
【0017】
また、金属石鹸に変わる保護剤として、パラフィンが有効であることは先に述べたが、パラフィンのような金属を含有しない単純な構造の保護剤を用いた場合、前述したように、XPS分析やXRF分析において金属が検出されないため、感光体上に塗布されている保護剤の量を評価することは難しかった。また、金属石鹸のような金属を含有する保護剤では、塗布量を求める方法としてICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析により、金属元素から塗布量を追うことができるが、パラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合には、前述したように、ICP発光分光分析による塗布量の評価をすることはできなかった。
【0018】
【特許文献1】特開2005−017469公報
【特許文献2】特開2005−249901公報
【特許文献3】特開2005−004051公報
【特許文献4】特開2004−198662公報
【特許文献5】実用新案登録第2597515号公報
【特許文献6】特開2005−274737公報
【特許文献7】特開2002−97483公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、感光体等の像担持体の保護剤に、パラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合でも、像担持体上に塗布されている保護剤の量を評価できるような分析方法を用い、該分析方法により保護剤の塗布量の良否を判定することにより、像担持体への保護剤の塗布を良好に行うことができ、異常画像の発生を防止することができる保護剤塗布装置と、その保護剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、感光体等の像担持体の保護剤に、パラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合でも、像担持体上に塗布されている保護剤の量を評価できるような分析方法を提供し、保護剤塗布装置の良否を判定することを可能とする保護剤塗布装置の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するため、本発明では以下のような手段を採っている。
本発明の第1の手段は、像担持体の表面に保護剤を塗布する保護剤塗布装置において、赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法において、ATRプリズムとしてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定を行い得られる吸光度スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)について、保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルをIRスペクトルA、保護剤単独のIRスペクトルをIRスペクトルBとすると、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の像担持体のIRスペクトル(IRスペクトルCとする)中で、前記IRスペクトルBに存在せず、前記IRスペクトルAに存在する1770cm-1に見られるピーク(ピークa1とする)のピーク面積(Sa1)と、前記IRスペクトルAに存在せず、前記IRスペクトルBに存在する2850cm-1に見られるピーク(ピークb1とする)のピーク面積(Sb1)の比(Sb1/Sa1)より、前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価したとき、前記保護剤を5分塗布した後の前記像担持体におけるSb1/Sa1の値が0.02以上、150分塗布した後の前記像担持体におけるSb1/Sa1の値が0.85以下となることを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の手段は、像担持体の表面に保護剤を塗布する保護剤塗布装置において、赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法において、ATRプリズムとしてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定を行い得られる吸光度スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)について、保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルをIRスペクトルA、保護剤単独のIRスペクトルをIRスペクトルBとすると、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の像担持体のIRスペクトル(IRスペクトルCとする)中で、前記IRスペクトルBに存在せず、前記IRスペクトルAに存在する3040cm-1に見られるピーク(ピークa2とする)のピーク面積(Sa2)と、前記IRスペクトルAに存在せず、前記IRスペクトルBに存在する2920cm-1に見られるピーク(ピークb2とする)のピーク面積(Sb2)の比(Sb2/Sa2)より、前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価したとき、前記保護剤を15分塗布した後の前記像担持体におけるSb2/Sa2の値が6.5以上、120分塗布した後の前記像担持体におけるSb2/Sa2の値が38以下となることを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の手段は、第1または第2の手段の保護剤塗布装置において、前記保護剤は、パラフィンを主体とする保護剤であることを特徴とする。
また、本発明の第4の手段は、第3の手段の保護剤塗布装置において、前記保護剤は、パラフィンを50〜95重量%含有していることを特徴とする。
【0023】
本発明の第5の手段は、第1〜第4のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置において、前記保護剤としてパラフィンを主体とする保護剤バーを用い、該保護剤バーの保護剤を掻き取るブラシを有し、該ブラシには、金属製の芯金上に直径が28〜42μmの単繊維を1平方インチ当たり5万〜60万本、静電植毛することにより製造したブラシを用いており、前記保護剤バーの保護剤を前記ブラシにより掻き取り、そのブラシを像担持体に押し当てることにより、前記パラフィンを主体とする保護剤を像担持体に供給し、前記像担持体にブレードを押し当てることにより、前記像担持体上に保護剤を固定することを特徴とする。
【0024】
本発明の第6の手段は、プロセスカートリッジであって、像担持体と、第1〜第5のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置を備えたことを特徴とする。
また、本発明の第7の手段は、第6の手段のプロセスカートリッジにおいて、前記像担持体と前記保護剤塗布装置に加えて、前記像担持体を帯電する帯電手段を備えたことを特徴とする。
さらに本発明の第8の手段は、第7の手段のプロセスカートリッジにおいて、前記像担持体は感光体であり、前記帯電手段は交流(AC)帯電を行うことを特徴とする。
【0025】
本発明の第9の手段は、画像形成装置であって、画像形成部に、像担持体と、第1〜第5のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置を備えたことを特徴とする。
また、本発明の第10の手段は、第9の手段の画像形成装置において、前記像担持体は感光体であり、該感光体を帯電する帯電手段を備え、該帯電手段は交流(AC)帯電を行うことを特徴とする。
【0026】
本発明の第11の手段は、画像形成装置であって、画像形成部に、第6〜第8のいずれか1つの手段のプロセスカートリッジを備えたことを特徴とする。
【0027】
本発明の第12の手段は、像担持体の表面に保護剤塗布装置を用いて保護剤を塗布した後の前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価する保護剤塗布装置の評価方法において、赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法により測定される吸光度スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)について、保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルAと保護剤単独のIRスペクトルBを比較したとき、前記IRスペクトルAには、前記IRスペクトルBに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有し、前記IRスペクトルBには、前記IRスペクトルAに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有しており、前記保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の前記像担持体のIRスペクトルC中の、前記IRスペクトルBに存在せず、前記IRスペクトルAに存在する任意の一つのピーク(ピークaとする)のピーク面積(Sa)と、前記IRスペクトルAに存在せず、前記IRスペクトルBに存在する任意の一つのピーク(ピークbとする)のピーク面積(Sb)の比(Sb/Sa)より、前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価することを特徴とする。
【0028】
本発明の第13の手段は、第12の手段の保護剤塗布装置の評価方法において、赤外吸収スペクトル法のATR法で、赤外光をサンプルに照射した際の赤外光の強度がサンプル表面における強度の1/eになる距離を示すもぐり込み深さとした場合、保護剤の膜厚が潜り込み深さに対して0.4〜85%であることを特徴とする。
また、本発明の第14の手段は、第12または第13の手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記ピークaが検出される赤外光の波長でのもぐり込み深さが、前記ピークbが検出される赤外光の波長でのもぐり込み深さの50〜170%であることを特徴とする。
【0029】
本発明の第15の手段は、第12〜第14のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記保護剤はパラフィンを50重量%以上含有しており、前記ピークbはメチレン基に由来するピークであることを特徴とする。
また、本発明の第16の手段は、第12〜第15のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記保護剤はメチレン基を有する有機化合物を含有しており、前記ピークbはメチレン基に由来するピークであることを特徴とする。
【0030】
本発明の第17の手段は、第12〜第16のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記像担持体表面にフェニル基を有する有機化合物を含有していて、前記ピークaはフェニル基に由来するピークであることを特徴とする。
また、本発明の第18の手段は、第12〜第17のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記像担持体表面にカーボネート結合を有する有機化合物を含有しており、前記ピークaはカーボネート結合に由来するピークであることを特徴とする。
【0031】
本発明の第19の手段は、第12〜第18のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記保護剤を前記像担持体に塗布していって一定の塗布時間以内で、前記保護剤の塗布量の指標である面積比(Sb/Sa)が、閾値以下となるときに、前記保護剤塗布装置を合格とすることを特徴とする。
【0032】
本発明の第20の手段は、第12〜第19のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記保護剤を塗布する像担持体は、プロセスカートリッジあるいは画像形成装置に用いられる感光体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、感光体等の像担持体の保護剤に、パラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合でも、像担持体上に塗布されている保護剤の量を評価できるような分析方法を用い、該分析方法により保護剤の塗布量の良否を判定することにより、像担持体への保護剤の塗布を良好に行うことができ、異常画像の発生を防止することができる保護剤塗布装置を提供することができる。
また、本発明によれば、その保護剤塗布装置を備えることにより、異常画像の発生を防止することができるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することができる。
さらに本発明の保護剤塗布装置の評価方法によれば、保護剤にパラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合でも、感光体等の像担持体上に塗布されている保護剤の量を評価できるような分析方法を用い、保護剤塗布装置の良否を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
[実施形態1]
まず、本発明に係る保護剤塗布装置の評価方法の実施形態を説明する。
本発明者らは、保護剤にパラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合でも、感光体上に塗布されている保護剤の量を把握できないか調べるため、ATR(Attenuated Total Reflection)法を用いて感光体上に塗布された保護剤の分析を行なった。ATR法においては、用いるプリズムや入射角の条件によって赤外光の侵入深さが変化するため、同じサンプルを計測しても得られるスペクトルは異なり、用いるプリズムや入射角条件によって、感光体に由来するピークのみしか検出されなかったり、保護剤のみのピークしか検出されなかったり、感光体由来のピークと保護剤由来のピークが両方検出されたりと様々であった。様々な条件のうち、用いるプリズムや入射角を細かく変化させて、感光体由来のピークと保護剤由来のピークが両方検出される条件において、得られたスペクトルから、感光体上の保護剤の塗布量を評価できないか鋭意検討を行なった。
【0035】
ここで、ATR法では、試料を押さえる圧力によって試料の測定部が変形し、スペクトルの強度比が変化してしまうため、スペクトルの強度を直接追うことができない。そのため、測定においてサンプルのセット時に、サンプルを固定する治具とプリズムの間のギャップを一定に保つ事ができるようにする、または、押さえつける圧力を一定にした場合、一定の条件でのIRスペクトルが得られると考え、サンプルのセット時に、サンプルを押さえつける治具とプリズムの間のギャップを一定に保つ事ができるようにして、保護剤塗布装置で塗布時間を変化させたサンプルを測定した。これにより、得られたそれぞれのスペクトルについて、スペクトル中のピークの帰属を行ない、感光体由来のピークの面積に対する保護剤由来のピークの面積の比をとってみたところ、塗布時間の増加に伴ない面積の比が次第に増加していくことがわかった。
【0036】
そこで本発明に係る評価方法は、感光体の表面に保護剤塗布装置を用いて保護剤を塗布した後の感光体上の保護剤の塗布量を評価する方法において、赤外吸収スペクトル法のATR法により測定される、保護剤塗布前の感光体表面のIRスペクトルAと保護剤単独のIRスペクトルBを比較したとき、IRスペクトルAには、IRスペクトルBに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有し、IRスペクトルBには、IRスペクトルAに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有しており、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の感光体のIRスペクトルC中のIRスペクトルBに存在せず、IRスペクトルAに存在する任意の一つのピーク(ピークa)のピーク面積(Sa)と、IRスペクトルAに存在せず、IRスペクトルBに存在する任意の一つのピーク(ピークb)のピーク面積(Sb)の比(Sb/Sa)より、感光体上の保護剤の塗布量を評価する方法である。
【0037】
IRスペクトルC中のピークについて、IRスペクトルBに存在せず、IRスペクトルAに存在する任意の一つのピーク(ピークa)とは、図7に示す[模式図1−1]のような状態で、ピークaが検出される波数に、IRスペクトルBでピークが検出されない状態を示す。例えば、図8に示す[模式図1−2]で、ピークMはIRスペクトルBで存在するピークであり、面積比算出に用いるピークには適さない。
ピークaは、より好ましくは、IRスペクトルBに存在するピークと重ならないピークである。すなわち、ピークaが図9に示す[模式図1−3]のような状態で、IRスペクトルBに存在するピークの裾が、ピークaのピークの裾と重ならない状態が好ましい。
【0038】
図7に示す[模式図1−1]のように、ピークaが、IRスペクトルBに存在するピークと重なる場合は、IRスペクトルCとIRスペクトルBの差スペクトルをとる必要がある。差スペクトルを用いることによって、IRスペクトルBに存在するピークの影響を受けない指標(面積比(Sb/Sa))を求めることができる。
【0039】
ただし、ピークaが、IRスペクトルBに存在するピークと重なっている場合でも、図7に示す[模式図1−1]のように、ピークaの面積がピークaと重なっているピークの面積よりも充分大きい場合には、IRスペクトルCからIRスペクトルBを差し引く工程を省いてもよい。この差し引く工程を除くことで、工程が一つ減るため、指標(面積比(Sb/Sa))の算出がより簡単になり、精度も向上する。
【0040】
また、IRスペクトルAに存在せず、IRスペクトルBに存在する任意の一つのピーク(ピークb)とは、図10に示す[模式図2−1]のような状態で、ピークbが検出される波数に、IRスペクトルAでピークが検出されない状態を示す。例えば、図11に示す[模式図2−2]で、IRスペクトルB中のピークNは、IRスペクトルAに存在するピークであり、面積比算出に用いるピークには適さない。
【0041】
ピークbは、より好ましくは、IRスペクトルAに存在するピークと重ならないピークである。すなわち、ピークaが図12に示す[模式図2−3]のような状態で、IRスペクトルBに存在するピークの裾が、ピークaのピークの裾と重ならない状態が好ましい。
また、図10に示す[模式図2−1]のように、ピークaが、IRスペクトルBに存在するピークと重なる場合は、IRスペクトルCとIRスペクトルAの差スペクトルをとる必要がある。差スペクトルを用いることによって、IRスペクトルAに存在するピークの影響を受けない指標(面積比(Sb/Sa))を求めることができる。
【0042】
ただし、ピークbが、IRスペクトルAに存在するピークと重なっている場合でも、図10に示す[模式図2−1]のように、ピークbの面積がピークbと重なっているピークの面積よりも充分大きい場合は、IRスペクトルCからIRスペクトルAを差し引く工程を省いてもよい。この差し引く工程を除くことで、工程が一つ減るため、指標(面積比(Sb/Sa))の算出がより簡単になり、精度も向上する。
【0043】
IRスペクトルは、赤外光源のもつ光の波数(波長)に対する強度分布が、検体試料によってどう変化するかを見たものであり、通常は波長の逆数である波数(単位cm−1)を横軸とし、縦軸には、透過率(T)や吸光度(A)をとり、曲線として描かれる。透過率は、試料を透過したエネルギーと試料に入射したエネルギーとの比であり、吸光度は透過率の逆数の常用対数である。吸光度と試料濃度が比例関係にあること(Lambert-Beerの法則)はよく知られており、定量計算を行う場合は、吸光度スペクトルのピーク強度を利用するのが一般的である。なお、IRスペクトルのピーク強度は、透過率ではなく、定量性の良い吸光度を使用するのが好ましい。
【0044】
IRスペクトルを測定するための装置としては、分散型赤外分光光度計、フーリエ変換赤外分光光度計に大別され、時間効率・光量利用率・波数分解能・波数精度が高いことからフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)が現在の主流である。測定方法としては、通常の透過法の他に、種々の測定アクセサリが有り、試料の形態や知りたい情報に応じて選択することができる。種々の測定アクセサリの中でも、ATR法は、試料処理をほとんど行うことなくIRスペクトルを測定できることから、近年FT−IRの測定アクセサリとしてかなり普及している。
【0045】
このATR法においては、試料をATRプリズムに接触させて測定を行なうため、ATRプリズムと試料の接触状態によって、同じ試料を測定しても、ピーク強度はバラツクため定量は困難である。そこで近年では、接触状態を制御するために種々のアクセサリが普及してきており、アクセサリには、サンプルを固定する(押し付ける)ための治具とATRプリズムとの間のギャップを一定に保てるようにしたアクセサリや、サンプルにかける圧力が一定に保てるようにしたアクセサリ、サンプルにかける圧力用の圧力ゲージを持ち圧力が可変なアクセサリ等がある。
【0046】
これらのアクセサリを使うとピーク強度のバラツキは低減されるが、サンプルを固定する治具とプリズムの間のギャップを一定に保って、同じ試料について何度か測定を行なったところ、20%ほどのバラツキを持っていた。そのため、感光体上の保護剤の塗布量を見積もるためには、ピーク強度を直接追うのではなく、保護剤由来のピークの面積と感光体由来のピークの面積の比を指標として追うことで塗布量の見積もりを安定的に行なう事を可能とした。
【0047】
本発明において、保護剤の膜厚は、赤外吸収スペクトル法のATR法での赤外光のもぐり込み深さに対して0.4〜85%である。ここで、光は試料界面で反射するのではなく、ある深さだけ試料側に入り込んでから全反射している。赤外光のもぐりこみ深さは、赤外光をサンプルに照射した際、赤外光の強度がサンプル表面における強度の1/eになる距離と定義され、下記の式1で表される。式1より、赤外光が試料に入り込む深さは、入射角やATRプリズムの屈折率や波長によって異なり、入射角θが大きくなるほど、またATR結晶の屈折率が高くなるほど、測定波長が短くなるほど入り込む深さが小さく、より表面に近い情報がスペクトルに反映されることになる。
【0048】
dp=λ/2πn1[sin2θ−(n2/n1)2]1/2 ・・・(式1)
dp:もぐり込み深さ
n2およびn1:ATRプリズムおよび試料の屈折率
θ:入射角
λ:波長
【0049】
保護剤の膜厚に応じて、ATRプリズム、赤外光の入射角および指標として選ぶピークの波長は適宜選択されるが、その際、保護剤の膜厚が赤外光のもぐり込み深さの0.4〜85%、好ましくは1〜70%、更に好ましくは2〜60%になるようにATRプリズム、赤外光の入射角および指標として選ぶピークの波長は適宜選択される。
【0050】
保護剤の膜厚が、赤外光のもぐり込み深さに対して、85%以上では、ピークbのピーク面積(Sb)はほぼ一定の値で飽和し、ビークaのピーク強度は小さくなるためピークaの面積(Sa)の誤差が大きくなり、評価の指標となるSb/SaがSaの誤差の影響を大きく受けてしまうため好ましくない。
また、0.5%以下では、ビークaのピーク面積(Sa)はほぼ一定の値で飽和し、ピークbのピーク強度は非常に小さくなるため、ピークbの面積(Sb)の誤差が大きくなり、評価の指標となるSb/SaがSbの誤差の影響を大きく受けてしまうため好ましくない。
【0051】
ある特定のATRプリズムおよび赤外光の入射角の条件で保護剤を塗布した後の感光体のATR測定を行い、得られたスペクトルのある特定のピークの波長でのもぐり込み深さを保護剤の膜厚と比較した場合、保護剤の膜厚がそのもぐり込み深さに対して0.4〜85%の範囲から外れている場合、もぐり込み深さは、ATRプリズムの屈折率、赤外光の入射角およびピークの検出される波長によって上記の(式1)のように変化するため、もぐり込み深さを変化させて、保護剤の膜厚ともぐり込み深さとの比率を最適な値に調整する事が可能である。
すなわち、保護剤の厚みに対してもぐり込み深さが深すぎたり浅すぎたりする場合は、ATRプリズムの屈折率、赤外光の入射角および塗布量算出の指標として選ぶピークの波長を適宜選択する必要がある。
【0052】
指標として選ぶピークの波長は、用いる保護剤や感光体に依存するため、指標として選ぶピークの波長では、もぐり込み深さを調整できない場合もある。
すなわち、特定のATRプリズムおよび赤外光の入射角でATR法を用いて分析を行なった場合、保護剤および感光体中にいくつもの官能基が含まれていて、それぞれの官能基のピークが大きく異なる波長で検出される場合は、例えば、もぐり込み深さをより深くしたい時は波長が長いピークを選ぶ、といったように、選ぶピークによってもぐり込み深さの調整をすることはできるが、パラフィンのように、官能基が少なく、ピークが1本または数本しか検出されず、それぞれの官能基のピークの波長が大きく異ならない場合は、選ぶピークによってもぐり込み深さの調整をすることはできない。この場合は、ATRプリズムの屈折率、赤外光の入射角の組み合わせを変化させて、最適なもぐり込み深さを調整する必要がある。
【0053】
一般的に使用されているATRプリズムとしては、KRS−5(屈折率2.4)、ゲルマニウム(屈折率4.0)、AMTIR(屈折率2.5)、ケイ素(屈折率3.4)、セレン化亜鉛(屈折率2.4)、ダイヤモンド(屈折率2.4)等が挙げられる。
また、一般的にATR測定に用いられる赤外光の入射角は30〜85°である。
【0054】
本発明において、ピークaのもぐり込み深さは、ピークbのもぐり込み深さの50〜170%、好ましくは70〜140%、更に好ましくは80〜120%である。ピークaのもぐり込み深さが、ピークbのもぐり込み深さの50%以下である場合、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)の感度が小さくなるため好ましくない。ピークaのもぐり込み深さが、ピークbのもぐり込み深さの170%以上である場合も、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)の感度が小さくなるため好ましくない。
【0055】
本発明において、保護剤はパラフィンを50重量%以上含有していることが好ましく、さらに、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)の算出に用いるピークbとしては、メチレン基に由来するピークを用いることが好ましい。
パラフィンは感光体の保護効果に優れ、パラフィンとしてはノルマルパラフィン、イソパラフィンおよびシクロパラフィンが、不可反応が生じ難く化学的に安定であり、実使用の大気中で酸化反応を生じにくいため、経時安定性の面で好ましく用いられる。
【0056】
本発明において、該保護剤はパラフィンを50重量%以上、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上含有する。該保護剤中のパラフィンの割合が50重量%以下である場合、充分な感光体保護効果が見込めないため好ましくない。パラフィン以外の成分が感光体保護効果を持っている場合は、該保護剤中のパラフィンの割合は50重量%以下であってもよい。
【0057】
また、該保護剤中にパラフィンが50重量%以上含有される場合、メチレン基の検出される、2850±15cm-1および2925±15cm-1において、充分なピーク強度を持ったメチレンピークが検出されるため、ピークbをメチレン基のピークとして保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)をより安定した指標として用いる事ができるため好ましい。特に、パラフィンを主成分とした保護剤の場合、パラフィンは特徴的なIRピークが少なく、また、金属元素を含まない事から、FT−IR以外の分析によって塗布量を見積もることは困難なため、本発明における評価方法を用いて、塗布量を見積もることは非常に有益である。
【0058】
保護剤には、パラフィンの他に環状オレフィン・コポリマー(COC)及び/または両親媒性の有機化合物を含有させてもよい。
両親媒性の有機化合物は、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤やこれらの複合物等に類別される。
【0059】
また、該非イオン系界面活性剤は、下記の化学式(1)のアルキルカルボン酸と多価アルコール類とのエステル化物であることが好ましい。
CnH2n+1COOH 化学式(1)
(ただし、式中のnは15〜35の整数を示す)
【0060】
化学式(1)のアルキルカルボン酸として直鎖アルキルカルボン酸を用いることにより、両親媒性の有機化合物が吸着した像担持体表面で両親媒性の有機化合物の疎水性部分が配列しやすくなり、担持体表面への吸着密度が特に高くなるため、好ましい様態である。
【0061】
1分子中のアルキルカルボン酸エステルは疎水性を示し、その数が多い方が気中放電により発生した解離性物質が像担持体表面に吸着するのを防ぎ、かつ帯電領域での像担持体表面への電気的ストレスを小さくするためには有効である。しかしながら、アルキルカルボン酸エステルの占める割合が多くなりすぎると、親水性を示す多価アルコール類の部分が覆い隠されてしまい、像担持体の表面状態によっては十分な吸着性能が発現しないことがある。
よって、両親媒性の有機化合物の1分子当りの平均エステル結合数は、1から3個であることが好ましい。
【0062】
これら両親媒性の有機化合物の1分子当りの平均エステル結合数は、異なるエステル結合数を持つ複数の両親媒性の有機化合物から1種以上を選択し、混合して調整することもできる。
両親媒性の有機化合物としては、前述のように陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0063】
陰イオン系界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸アルキル塩、長鎖脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等の、疎水性部位の末端に陰イオン(アニオン)を有し、これと、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属イオン、アルミニウム、亜鉛等の金属イオン、アンモニウムイオン等が結合した化合物が挙げられる。
【0064】
陽イオン系界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等の、疎水性部位の末端に陽イオン(カチオン)を有し、これと、塩素、フッ素、臭素等や、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン、水酸イオン等が結合した化合物が挙げられる。
また、両イオン系界面活性剤の例としては、ジメチルアルキルアミンオキシド、N−アルキルベタイン、イミダゾリン誘導体、アルキルアミノ酸等が挙げられる。
【0065】
非イオン系界面活性剤の例としては、長鎖アルキルアルコール、アルキルポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルポリグルコキシド、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の、アルコール化合物、エーテル化合物、アミド化合物等が挙げられる。また、ラウリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の長鎖アルキルカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ヘキシトール等の多価アルコールやこれらの部分無水物とのエステル化合物も好ましい形態として挙げられる。
【0066】
エステル化合物のより具体的な例としては、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルチミン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、ジパルチミン酸グリセリル、トリパルチミン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、トリミスチン酸グリセリル、パルチミン酸ステアリン酸グリセリル、モノアラキジン酸グリセリル、ジアラキジン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、ステアリン酸ベヘン酸グリセリル、セロチン酸ステアリン酸グリセリル、モノモンタン酸グリセリル、モノメリシン酸グリセリル等のアルキルカルボン酸グリセリルやこの置換物、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノパルチミン酸ソルビタン、ジパルチミン酸ソルビタン、トリパルチミン酸ソルビタン、ジミリスチン酸ソルビタン、トリミスチン酸ソルビタン、パルチミン酸ステアリン酸ソルビタン、モノアラキジン酸ソルビタン、ジアラキジン酸ソルビタン、モノベヘン酸ソルビタン、ステアリン酸ベヘン酸ソルビタン、セロチン酸ステアリン酸ソルビタン、モノモンタン酸ソルビタン、モノメリシン酸ソルビタン等のアルキルカルボン酸ソルビタンやこの置換物等が挙げられるが、これに限るものではない。
また、これらの両親媒性有機化合物は単一の種類を用いても良いし、複数種類を併用しても良い。
【0067】
本発明において、該保護剤はメチレン基を有する有機化合物を含有していることが好ましく、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)の算出に用いるピークbとしては、メチレン基に由来するピークを用いることが好ましい。前述のように、該保護剤がパラフィンを主成分としている場合、パラフィンは特徴的なIRピークが少なく、また、金属元素を含まない事から、FT−IR以外の分析によって塗布量を見積もることは困難なため、本発明における評価方法を用いて、塗布量を見積もることは非常に有益であるが、パラフィンを主成分とした保護剤の他にも、メチレン基を有する有機化合物の塗布量の見積もりにも応用できる。
メチレン基を有する有機化合物としては、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、等の金属石鹸がある。
【0068】
本発明において、感光体表面にはフェニル基を有する有機化合物を含有されていることが好ましく、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)の算出に用いるピークaとしては、フェニル基に由来するピークであることが好ましい。
感光体表面にフェニル基を有する有機化合物を含有されている場合、フェニル基は、3055±25cm-1で検出されるため、メチレン基の検出される波数(cm-1)と波数が近いため、もぐり込み深さも、近い値になるため、より感度のよい安定した指標(Sb/Sa)を得ることができる。ここで、感光体表面に含有される物質としては、フェニル基に由来するピークと重なるピークを持つ物質が含まれないことが好ましい。
【0069】
本発明において、感光体表面にはカーボネート結合を有する有機化合物を含有されていることが好ましく、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)の算出に用いるピークaとしては、カーボネート結合に由来するピークであることが好ましい。
感光体表面にカーボネート結合を有する有機化合物が含有されていると、感光体強度が高くなるため好ましく、また、感光体表面にカーボネート結合を有する有機化合物を含有されている場合、カーボネート結合は、1760±20cm-1で検出されるため、メチレン基の検出される波数(cm-1)と波数が近いため、もぐり込み深さも、近い値になるため、より感度のよい安定した指標(Sb/Sa)を得ることができる。ここで、感光体表面に含有される物質としては、カーボネート結合に由来するピークと重なるピークを持つ物質が含まれないことが好ましい。
【0070】
本発明における保護剤塗布装置の評価方法は、該保護剤を感光体に塗布していって一定の塗布時間以内で、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)が、閾値以下となるときに、保護剤塗布装置を合格とする。
【0071】
なお、本発明の評価方法の対象となる保護剤塗布装置としては、図4に示すように、ブレード、ブラシおよび保護剤バーを備えた構成であり、感光体とブラシは図示しないギヤ等の駆動機構で所定の速さで回転しており、ブラシは保護剤バーと接触して保護剤を掻き取り、続いてブラシの回転によって掻き取られた保護剤が感光体表面に供給され、保護剤が供給された感光体は、感光体の回転によりブレードを通過し、供給された保護剤がブレードによって引き伸ばされて保護剤が塗布される機構を持つ装置である。
この保護剤塗布装置の構成や評価方法の具体例、保護剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ、画像形成装置等については、以下の実施形態で説明する。
【0072】
[実施形態2]
本発明に係る保護剤塗布装置の実施形態を説明する。
本発明者らは、保護剤塗布装置を備えた画像形成形成装置において、異常画像が発生する原因を調べるため、異常画像が発生する場所と発生していない場所で、保護剤の存在量が異なるのではないかと考え、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて表面観察を行なった。表面観察の結果、保護剤が感光体上に付着している様子を観察することはできたが、SEM観察からは保護剤の存在量を見積もることはできず、異常画像が発生する原因は、はっきり分からなかった。
【0073】
次に本発明者らは、画像形成する画像により、異常画像の発生メカニズムが異なるのではないかと考え、さらに詳細に異常画像の発生する場所をSEM観察したところ、画像形成する画像の画像面積が少ないときには、トナー成分が感光体に付着して画像の解像度が低下することが多く、画像形成する画像の画像面積が大きいときには、感光体が部分的に磨耗し、異常画像が発生しやすいことが分かった。このように、異常画像の発生の仕方が、画像形成する画像によって異なるため、画像形成を行わず、感光体上に保護剤を塗布しただけの状態、すなわち保護剤塗布装置の保護剤塗布能力によって、異常画像が出たり出なかったりするのではないかと考え、感光体上の保護剤の塗布量を見積もることを試みた。
【0074】
ここで、前述の背景技術で述べたように、保護剤にパラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合は、感光体上に塗布されている保護剤の量を従来の方法により見積もることが困難である。そこで、金属を含有しない保護剤を分析する方法として、有機物の分析に用いられるフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)のATR法を用いることを試みた。
【0075】
ここで、FT−IRによって得られるIRスペクトルは、赤外光源のもつ光の波数(波長)に対する強度分布が、検体試料によってどう変化するかを見たものであり、通常は波長の逆数である波数(単位cm−1)を横軸とし、縦軸には、透過率(T)や吸光度(A)をとり、曲線として描かれる。透過率は、試料を透過したエネルギーと試料に入射したエネルギーとの比であり、吸光度は透過率の逆数の常用対数である。吸光度と試料濃度が比例関係にあること(Lambert-Beerの法則)はよく知られており、定量計算を行う場合は、吸光度スペクトルのピーク強度を利用するのが一般的である。なお、IRスペクトルのピーク強度は、透過率ではなく、定量性の良い吸光度を使用するのが好ましい。
【0076】
IRスペクトルを測定するための装置としては、分散型赤外分光光度計、フーリエ変換赤外分光光度計に大別され、時間効率・光量利用率・波数分解能・波数精度が高いことからフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)が現在の主流である。測定方法としては、通常の透過法の他に、種々の測定アクセサリが有り、試料の形態や知りたい情報に応じて選択することができる。種々の測定アクセサリの中でも、ATR法は、試料処理をほとんど行うことなくIRスペクトルを測定できることから、近年FT−IRの測定アクセサリとしてかなり普及している。
【0077】
ATR法は、赤外吸収スペクトルを測定する方法の一つで、全反射を利用するもので、高い屈折率を持つATRプリズムを試料に密着させ、ATRプリズムを通して赤外光を試料に照射し、ATRプリズムからの出射光を分光分析する。ATRプリズムと試料との屈折率の関係からある角度以上の条件で赤外光をプリズムに入射させると、赤外光はATRプリズムから出ず、ATRプリズムと試料との接触面で全反射を起こすが、その際、赤外光が僅かの距離だけ試料側に滲みだすので、試料で赤外光の吸収があれば反射光が減衰し、試料の吸収スペクトルを得ることができる。
【0078】
ATR法は、ATRプリズムと接触したごく薄い試料部分の吸収スペクトルを測定することができるため、厚い試料や透過性の低い試料であっても、ATRプリズムと密着させることができれば測定できるという利点を備えている。
また、ATR法を用いると、赤外光の吸収が起こる波数より、官能基がわかるため、ATR法は定性分析によく用いられるが、試料を押さえる圧力によって、吸収スペクトルのピーク強度が変化するため定量分析には、基本的には用いられていなかった。
【0079】
本発明者らは、ATR法を用いて定量分析を行なうのは困難と思われるが、おおまかな量でもよいので、感光体上の保護剤の塗布量を見積もれないものかと考え、保護剤が塗布された感光体についてATR測定を様々な条件で行い、そのスペクトルの比較および解析を行なった。
その結果、ATR法では、用いるプリズムや入射角の条件によって赤外光の侵入深さが変化するため、同じサンプルを計測しても得られるスペクトルは異なり、用いるプリズムや入射角条件によって、感光体に由来するピークのみしか検出されなかったり、ほぼ保護剤のみのピークしか検出されなかったり、感光体由来のピークと保護剤由来のピークが両方検出されたりと様々であった。様々な条件のうち、用いるプリズムや入射角を細かく変化させて、感光体由来のピークと保護剤由来のピークが両方検出される条件において、得られたスペクトルから、感光体上の保護剤の塗布量を評価できないか鋭意検討を行なった。
【0080】
ここで、ATR法では、試料を押さえる圧力によって強度比が変化してしまうため、スペクトルの強度を直接追うことができない。そのため、測定においてサンプルセット時に、サンプルを固定する治具とプリズムの間のギャップを一定に保つ事ができるようにする、または、押さえつける圧力を一定にした場合、一定の条件でのIRスペクトルが得られると考え、サンプルセット時に、サンプルを押さえつける治具とプリズムの間のギャップを一定に保つ事ができるようにして、保護剤塗布装置で塗布時間を変化させたサンプルを測定した。これにより、得られたそれぞれのスペクトルについて、スペクトル中のピークの帰属を行い、感光体由来のピークの面積に対する保護剤由来のピークの面積の比をとってみたところ、塗布時間の増加に伴ない面積の比が次第に増加していくことがわかった。
【0081】
次に、この感光体由来のピークの面積に対する保護剤由来のピークの面積の比である塗布量の指標を用いて、保護剤塗布装置で保護剤塗布した後の感光体上の保護剤の塗布量の良好な状態を規定できないか調べたところ、感光体由来のピークの面積に対する保護剤由来のピークの面積の比を好ましい範囲にすることで、高画質な画像形成を実現できることがわかり、本発明に到った。
【0082】
すなわち、本発明では、感光体の表面に保護剤としてパラフィンを塗布する保護剤塗布装置において、赤外吸収スペクトル法のATR法において、ATRプリズムとしてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定を行い得られるIRスペクトルについて、図6に示すように、保護剤塗布前の感光体表面のIRスペクトルをIRスペクトルA(吸光度スペクトル)、保護剤単独のIRスペクトルをIRスペクトルB(吸光度スペクトル)とすると、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の感光体のIRスペクトル(IRスペクトルC(吸光度スペクトル))中で、IRスペクトルBに存在せず、IRスペクトルAに存在する1770cm-1に見られるピーク(ピークa1)のピーク面積(Sa1)と、IRスペクトルAに存在せず、IRスペクトルBに存在する2850cm-1に見られるピーク(ピークb1)のピーク面積(Sb1)の比(Sb1/Sa1)より、感光体上の保護剤の塗布量を評価したとき、保護剤を5分塗布した後の感光体におけるSb1/Sa1の値が0.02以上、150分塗布した後の感光体におけるSb1/Sa1の値が0.85以下となることを特徴とする。ここで、ピークb1は保護剤由来のピークであるが、有機感光体のIRスペクトルにおいては、ほとんどの場合ピークb1付近にピークが検出されるため、Sb1の面積算出には差スペクトル(スペクトルCからスペクトルAを差し引いたスペクトル)中のb1の面積を用いた。
【0083】
また、本発明では、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の感光体のIRスペクトル(IRスペクトルC(吸光度スペクトル))中で、IRスペクトルBに存在せず、IRスペクトルAに存在する3040cm-1に見られるピーク(ピークa2)のピーク面積(Sa2)と、IRスペクトルAに存在せず、IRスペクトルBに存在する2920cm-1に見られるピーク(ピークb2)のピーク面積(Sb2)の比(Sb2/Sa2)より、感光体上の保護剤の塗布量を評価したとき、保護剤を15分塗布した後の感光体におけるSb2/Sa2の値が6.5以上、120分塗布した後の感光体におけるSb2/Sa2の値が38以下となることを特徴とする。
【0084】
ここで、赤外光は試料界面で反射するのではなく、ある深さだけ試料側に入り込んでから全反射しているが、赤外光のもぐりこみ深さが、赤外光をサンプルに照射した際、赤外光の強度がサンプル表面における強度の1/eになる距離と定義され、赤外光のもぐりこみ深さは、入射角やATRプリズムの屈折率や波長によって異なり、入射角θが大きくなるほど、またATR結晶の屈折率が高くなるほど、測定波長が短くなるほど入り込む深さが小さく、より表面に近い情報がスペクトルに反映される。
【0085】
本発明において、感光体上の保護剤の分析には、ATR法を用い、ATRプリズムとして、屈折率が大きく、より表面に近い情報を得ることができるGeを用いる。また、サンプルへの赤外光入射角は45°を用いる。本発明の保護剤塗布装置の評価においては赤外光入射角が45°に設定することにより、より精度が高い指標を得ることができる。これらのATRプリズムと赤外光入射角の組み合わせにより、感光体上の保護剤の塗布量として好ましい状態を表現することができる。
【0086】
ピークb1,b2はメチレン基に由来するピークであり、充分な強度のピークとして検出されるため感光体上の保護剤を見積もる指標として好ましい。ピークa1,a2は感光体に含まれるポリカーボネート由来のピークであり、ポリカーボネートを含有する保護剤塗付前の感光体において、充分な強度のピークとして検出されるため感光体上の保護剤を見積もる指標として好ましい。また、ピークa2とピークb2は検出される波長が近いので、塗布量算出の指標Sa2/Sb2の感度がよくなるため好ましい。本発明における、ピーク面積は、定量性のよい吸光度スペクトルを用いて算出する。
【0087】
FT−IRでの解析において、感光体上の保護剤の塗布量を見積もる方法としては、単純に保護剤由来のピークの面積を追う事も考えられるが、ATR法においては、試料を押さえる圧力によってピークの面積(強度)が変化してしまうため、スペクトルの面積(強度)を直接追うことは好ましくない。塗布量の指標としては、感光体に由来するピークと保護剤に由来するピークの比を用い、安定した指標を得ることが好ましい。
【0088】
IRスペクトルC中のピークa(a1,a2)について、ピークa(a1,a2)はIRスペクトルBに存在せず、IRスペクトルAに存在するピークである。
図7に示す[模式図1−1]のような状態では、ピークaが検出される波数に、IRスペクトルBでピークが検出されない状態を示す。例えば、図8に示す[模式図1−2]では、ピークMはIRスペクトルBで存在するピークであり、塗布量の指標を算出するピークには適さない。
【0089】
ピークaは、より好ましくは、IRスペクトルBに存在するピークと重ならないピークである。すなわち、ピークaが図9に示す[模式図1−3]のような状態で、IRスペクトルBに存在するピークの裾が、ピークaのピークの裾と重ならない状態が好ましい。
また、図7に示す[模式図1−1]のように、ピークaが、IRスペクトルBに存在するピークと重なる場合は、IRスペクトルCとIRスペクトルBの差スペクトルをとる必要がある。差スペクトルを用いることによって、IRスペクトルBに存在するピークの影響を受けない指標(面積比(Sb/Sa))を求めることができる。
【0090】
ただし、ピークaが、IRスペクトルBに存在するピークと重なっている場合でも、図7に示す[模式図1−1]のように、ピークaの面積がピークaと重なっているピークの面積よりも充分大きい場合は、IRスペクトルCからIRスペクトルBを差し引く工程を省いてもよい。この差し引く工程を除くことで、工程が一つ減るため、指標(面積比(Sb/Sa))の算出がより簡単になり、精度も向上する。
【0091】
また、IRスペクトルC中のピークb(b1,b2)について、ピークb(b1,b2)はIRスペクトルAに存在せず、IRスペクトルBに存在するピークである。
図10に示す[模式図2−1]のような状態では、ピークbが検出される波数に、IRスペクトルAでピークが検出されない状態を示す。例えば、図11に示す[模式図2−2]では、IRスペクトルB中のピークNは、IRスペクトルAに存在するピークであり、塗布量の指標を算出するピークには適さない。
【0092】
ピークbは、より好ましくは、IRスペクトルAに存在するピークと重ならないピークである。すなわち、ピークaが図12に示す[模式図2−3]のような状態で、IRスペクトルBに存在するピークの裾が、ピークaのピークの裾と重ならない状態が好ましい。
図10に示す[模式図2−1]のように、ピークaが、IRスペクトルBに存在するピークと重なる場合は、前述のように、IRスペクトルCとIRスペクトルAの差スペクトルをとる必要がある。差スペクトルを用いることによって、IRスペクトルAに存在するピークの影響を受けない指標(面積比(Sb/Sa))を求めることができる。
【0093】
ただし、ピークbが、IRスペクトルAに存在するピークと重なっている場合でも、図10に示す[模式図2−1]のように、ピークbの面積がピークbと重なっているピークの面積よりも充分大きい場合は、IRスペクトルCからIRスペクトルAを差し引く工程を省いてもよい。この差し引く工程を除くことで、工程が一つ減るため、指標(面積比(Sb/Sa))の算出がより簡単になり、精度も向上する。
【0094】
前述したように、保護剤を5分塗布した後の感光体におけるSb1/Sa1の値は、0.020以上、好ましくは0.040〜0.3、更に好ましくは0.045〜0.2である。Sb1/Sa1の値が、保護剤の塗布時間5分以内に0.02以上にならない場合、画像形成装置の使用初期において、保護剤が感光体を充分に保護しないため好ましくない。
また、保護剤を150分塗布した後の感光体におけるSb1/Sa1の値は、0.85以下、好ましくは0.1〜0.6、更に好ましくは0.15〜0.4である。Sb1/Sa1の値が、保護剤の塗布時間120以内で38以上になる場合、画像形成装置を使いこんでいくと保護剤の塗布量が過剰になりすぎて、感光体に帯電が充分にのらなかったり、ボケが生じるため好ましくない。
【0095】
また、前述したように、保護剤を15分塗布した後の感光体におけるSb2/Sa2の値は、6.5以上、好ましくは7〜23、更に好ましくは8〜15である。Sb2/Sa2の値が、保護剤の塗布時間15分以内に6.5以上にならない場合、画像形成装置の使用初期において、保護剤が感光体を充分に保護しないため好ましくない。
また、保護剤を120分塗布した後の感光体におけるSb2/Sa2の値は、38以下、好ましくは8〜25、更に好ましくは9〜16である。Sb2/Sa2の値が、保護剤の塗布時間120以内で38以上になる場合、画像形成装置を使いこんでいくと保護剤の塗布量が過剰になりすぎて、感光体に帯電が充分にのらなかったり、ボケが生じるため好ましくない。
【0096】
本発明の保護剤塗布装置においては、保護剤はパラフィンを50〜95重量%含有していることを特徴とする。
本発明の保護剤塗布装置における保護剤中のパラフィンの割合とは、保護剤に含有される全ての有機成分に対する割合を示しており、保護剤中に無機成分を含んでいる場合においては、無機成分は除外した全有機成分に対するパラフィンの割合を表している。
【0097】
また、保護剤中のパラフィンの割合によって、指標(Sb1/Sa1)の閾値は多少変化するが、パラフィンの割合によらず、感光体上の保護剤の塗布量の良好な状態は、保護剤を5分塗布した後の感光体におけるSb1/Sa1の値が0.02以上、150分塗布した後の感光体におけるSb1/Sa1の値が0.85以下の閾値内に充分収まることがわかっている。
【0098】
さらにまた、保護剤中のパラフィンの割合によって、指標(Sb2/Sa2)の閾値は多少変化するが、パラフィンの割合によらず、感光体上の保護剤の塗布量の良好な状態は、保護剤を15分塗布した後の感光体におけるSb2/Sa2の値が6.5以上、120分塗布した後の感光体におけるSb2/Sa2の値が38以下の閾値内に充分収まることがわかっている。
【0099】
本発明の保護剤塗布装置に用いる保護剤は、パラフィンを主体としている。本発明の保護剤に用いるパラフィンは、ノルマルパラフィン、イソパラフィンが例示できる。パラフィンは、一種だけでなく、異なる種類のパラフィンを混合して用いてもかまわない。
本発明の保護剤バーに用いる保護剤中のパラフィンの割合は50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは、70重量%以上である。パラフィンの割合が50重量%以下では、保護剤としての機能が低く、画像形成に伴う感光体の磨耗が生じやすく、好ましくない。パラフィンの割合が95重量%以上では、パラフィンが感光体表面を覆うことが難しく好ましくない。パラフィン単独では、ブラシやブレードの圧力だけでは、感光体上に薄く、膜状に広がりにくいため、他の物質を混合して用いることが不可欠となる。
【0100】
本発明の保護剤バーに用いる、パラフィン以外の物質としては、両親媒性の有機化合物、脂肪族不飽和炭化水素、脂環式飽和炭化水素、脂環式不飽和炭化水素や芳香族炭化水素に分類される炭化水素類の他に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリパーフルオロアルキルエーテル(PFA)、パーフルオロエチレン−パーフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂やフッ素系ワックス類、ポリメチルシリコーン、ポリメチルフェニルシリコーン等のシリコーン樹脂やシリコーン系ワックス類、雲母等の潤滑性を有する無機化合物等が挙げられ、これに限るものではないが、中でも両親媒性の有機化合物、脂環式飽和炭化水素が保護剤に含有することにより、保護剤の塗布性が向上し、特に環状ポリオレフィン等の脂環式飽和炭化水素が感光体上に保護剤が膜状に被覆することができ、特に好ましい。これらの、パラフィン以外の化合物は、一種類だけでなく、多種類を混合して用いても良い。
【0101】
脂環式飽和炭化水素としては、シクロパラフィン、環状ポリオレフィン等が例示できる。
両親媒性の有機化合物は、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤やこれらの複合物等に類別されるが、本発明の保護剤は、上述のように像担持体上に保護剤層を形成し、像形成工程を経るため、像担持体の電気的な特性に対して悪影響を与えないようにする必要がある。
両親媒性の有機化合物として非イオン系界面活性剤を用いることにより、界面活性剤自身がイオン解離することがなくなるため、使用環境、特に湿度が、大幅に変動した場合にも、気中放電などによる電荷のリークを抑制することができ、画像品質を高度に維持することができる。
【0102】
また、該非イオン系界面活性剤は、下記の化学式(1)のアルキルカルボン酸と多価アルコール類とのエステル化物であることが好ましい。
CnH2n+1COOH 化学式(1)
(ただし、式中のnは15〜35の整数を示す)
【0103】
化学式(1)のアルキルカルボン酸として直鎖アルキルカルボン酸を用いることにより、両親媒性の有機化合物が吸着した像担持体表面で、両親媒性の有機化合物の疎水性部分が配列しやすくなり、担持体表面への吸着密度が特に高くなるため、好ましい様態である。
【0104】
1分子中のアルキルカルボン酸エステルは疎水性を示し、その数が多い方が気中放電により発生した解離性物質が像担持体表面に吸着するのを防ぎ、かつ帯電領域での像担持体表面への電気的ストレスを小さくするためには有効である。しかしながら、アルキルカルボン酸エステルの占める割合が多くなりすぎると、親水性を示す多価アルコール類の部分が覆い隠されてしまい、像担持体の表面状態によっては十分な吸着性能が発現しないことがある。よって、両親媒性の有機化合物の1分子当りの平均エステル結合数は、1から3個であることが好ましい。
【0105】
これら両親媒性の有機化合物の1分子当りの平均エステル結合数は、異なるエステル結合数を持つ複数の両親媒性の有機化合物から1種以上を選択し、混合して調整することもできる。
両親媒性の有機化合物としては、前述のように陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0106】
陰イオン系界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸アルキル塩、長鎖脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等の、疎水性部位の末端に陰イオン(アニオン)を有し、これと、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属イオン、アルミニウム、亜鉛等の金属イオン、アンモニウムイオン等が結合した化合物が挙げられる。
【0107】
陽イオン系界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等の、疎水性部位の末端に陽イオン(カチオン)を有し、これと、塩素、フッ素、臭素等や、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン、水酸イオン等が結合した化合物が挙げられる。
【0108】
両イオン系界面活性剤の例としては、ジメチルアルキルアミンオキシド、N−アルキルベタイン、イミダゾリン誘導体、アルキルアミノ酸等が挙げられる。
非イオン系界面活性剤の例としては、長鎖アルキルアルコール、アルキルポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルポリグルコキシド、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の、アルコール化合物、エーテル化合物、アミド化合物等が挙げられる。また、ラウリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の長鎖アルキルカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ヘキシトール等の多価アルコールやこれらの部分無水物とのエステル化合物も好ましい形態として挙げられる。
【0109】
エステル化合物のより具体的な例としては、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルチミン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、ジパルチミン酸グリセリル、トリパルチミン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、トリミスチン酸グリセリル、パルチミン酸ステアリン酸グリセリル、モノアラキジン酸グリセリル、ジアラキジン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、ステアリン酸ベヘン酸グリセリル、セロチン酸ステアリン酸グリセリル、モノモンタン酸グリセリル、モノメリシン酸グリセリル等のアルキルカルボン酸グリセリルやこの置換物、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノパルチミン酸ソルビタン、ジパルチミン酸ソルビタン、トリパルチミン酸ソルビタン、ジミリスチン酸ソルビタン、トリミスチン酸ソルビタン、パルチミン酸ステアリン酸ソルビタン、モノアラキジン酸ソルビタン、ジアラキジン酸ソルビタン、モノベヘン酸ソルビタン、ステアリン酸ベヘン酸ソルビタン、セロチン酸ステアリン酸ソルビタン、モノモンタン酸ソルビタン、モノメリシン酸ソルビタン等のアルキルカルボン酸ソルビタンやこの置換物等が挙げられるが、これに限るものではない。
【0110】
また、これらの両親媒性有機化合物は単一の種類を用いても良いし、複数種類を併用しても良い。
さらに、場合により、金属酸化物、珪酸化合物、雲母、窒化ホウ素等のフィラーを保護剤中に含有させても良い。
【0111】
次に保護剤塗布装置の具体的な構成例を説明する。
図1は本発明の保護剤塗布装置を備えた画像形成部の要部構成例を示す概略要部構成図である。
像担持体であるドラム状の感光体1に対向して配設された保護剤塗布装置2は、感光体を保護する保護剤を棒状(円柱状、四角柱状、六角柱状等)にした保護剤バー21と、この保護剤バー21と接触するブラシ22aを有し保護剤バー21からブラシ22aに移行した保護剤を感光体1へ供給する保護剤供給部材22と、保護剤バー21を保護剤供給部材22のブラシ22aに押し当てて保護剤を保護剤供給部材22のブラシ22aに移行させる押圧力付与機構23と、保護剤供給部材22により感光体上に供給された保護剤を薄層化する保護層形成機構24と、保護剤バー21が左右前後に振れないように支持する保護剤バー支持ガイド25等から主に構成されている。本発明に用いる保護剤バー21は、保護剤を溶融後、成型型に投入、冷却して作成する溶融成型法、あるいは、保護剤粉末を圧縮して作成する圧縮成型法により作製される。
【0112】
本発明による保護剤バー21は、バネやスプリング等の押圧部材からなる押圧力付与機構23からの押圧力により、保護剤供給部材22のブラシ22aに押し当てられ、保護剤バー21からブラシ22aに保護剤が移行する。保護剤供給部材22は感光体1と線速差をもって回転してブラシ22aの先端で感光体表面を摺擦し、この際に保護剤供給部材22のブラシ22aの表面に保持された不定形の保護剤を、感光体1の表面に供給する。
また、感光体1の表面に供給された保護剤は、物質種の選択によっては供給時に十分な保護層にならない場合がある。このため、より均一な保護層を形成するために、感光体表面の保護剤は、例えばブレード状の部材24aと、そのブレード状の部材24aを感光体ドラム1の表面に押し当てるバネやスプリング等の押圧部材24bとを持つ保護層形成機構24により薄層化され、感光体表面の保護層となる。このように、感光体1に不定形の保護剤を適量供給するとともに、保護層形成機構24により薄層化することにより、保護剤が感光体上で不定形な保護膜となって保持されやすくなる。これにより、帯電手段(例えば帯電ローラ等)3の汚れ等による異常画像が起こらず、消耗品の交換頻度が少なく、長期に渡って高画質画像を出力可能な画像形成装置を実現することができる。
また、保護剤バーの代わりに保護剤粉末を直接感光体表面に供給することもできる。この場合、保護剤粉末を保有する容器、保護剤粉末を搬送する保護剤搬送装置が必要となり、保護剤バー、押圧力付与機構、保護剤供給部材が不要となる。保護剤搬送装置としては、ポンプ、オーガー等、既存の粉体搬送手段を用いることができる。
【0113】
保護層形成機構24に用いるブレード状部材24aの材料は、特に制限されるものではなく、例えばクリーニングブレード用材料として一般に公知の、ウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体を、単独またはブレンドして使用することができる。また、これらのゴムブレードは、感光体1との接点部部分を低摩擦係数材料でコーティングや含浸処理しても良い。また、弾性体の硬度を調整するために、他の有機フィラーや無機フィラーに代表される充填材を分散しても良い。
【0114】
これらのブレード状部材24aは、ブレード支持体24cに、先端部が感光体表面へ押圧当接できるように、接着や融着等の任意の方法によって固定される。ブレード状部材24aの厚みについては、押圧で加える力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね0.5〜5mm程度であれば好ましく使用でき、1〜3mm程度であれば更に好ましく使用できる。
また、支持体24cから突き出し、たわみを持たせることができるブレード状部材24aの長さ、いわゆる自由長についても同様に押圧で加える、力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね1〜15mm程度であれば好ましく使用でき、2〜10mm程度であれば更に好ましく使用できる。
【0115】
保護層形成用のブレード状部材24aの他の構成としては、バネ板等の弾性金属ブレード表面に、必要によりカップリング剤やプライマー成分等を介して、樹脂、ゴム、エラストマー等の層をコーティング、ディッピング等の方法で形成し、必要により熱硬化等を行い、更に必要であれば表面研摩等を施して用いても良い。
弾性金属ブレードの厚みは、0.05〜3mm程度であれば好ましく使用でき、0.1〜1mm程度であればより好ましく使用できる。
また、弾性金属ブレードでは、ブレードのねじれを抑止するために、取り付け後に支軸と略平行となる方向に、曲げ加工等の処理を施しても良い。
表面層を形成する材料としては、PFA、PTFE、FEP、PVdF等のフッ素樹脂や、フッ素系ゴム、メチルフェニルシリコーンエラストマー等のシリコーン系エラストマー等を、必要により充填剤と共に、用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0116】
また、保護層形成機構24の押圧部材24bでブレード状部材24aを感光体に押圧する力は、感光体表面の保護剤が延展し、保護層や保護膜の状態になる力で十分であり、線圧として5gf/cm以上80gf/cm以下であることが好ましく、10gf/cm以上60gf/cm以下であることがより好ましい。
【0117】
また、ブラシ状の部材22aは保護剤供給部材22として好ましく用いられるが、この場合、感光体表面への機械的ストレスを抑制するためには、ブラシ繊維は可撓性を持つことが好ましい。
可撓性のブラシ繊維の具体的な材料としては、一般的に公知の材料から1種乃至2種以上を選択して使用することができる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン);ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂(例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−ブタジエン樹脂;フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン);ポリエステル;ナイロン;アクリル;レーヨン;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂(例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂);などの内、可撓性を持つ樹脂を使用することができる。
また、撓みの程度を調整するために、ジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等を複合して用いても良い。
【0118】
保護剤供給部材22の支持体22bには、固定型と回動可能なロール状のものがある。ロール状の供給部材としては、例えばブラシ繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金にスパイラル状に巻き付けてロールブラシとしたものがある。ブラシ繊維は繊維径10〜500μm、より好ましくは、20〜300μmである。10μm以下では、保護剤の供給スピードが非常に遅くなるため好ましくなく、500μm以上では、ブラシ繊維が単位面積当たりに存在できる本数がより少なくなるため、ブラシが感光体に当たる場所と当たらない場所での塗布ムラが顕著になったり、ブラシが感光体に当たったときに感光体を傷つけやすくなったり、保護剤を掻き取る力が強くなるため、保護剤の寿命が短くなったり、感光体に供給される保護剤が大きな粒状になり、感光体に供給された粒が帯電ローラに移動して帯電ローラを汚染してしまったり、ブラシや感光体を回転させるためのトルクがより大きくなるため好ましくない。
ブラシの繊維の長さは1〜15mm、好ましくは3〜10mmである。ブラシの繊維の長さが1mm以下では、ブラシの芯金と感光体が非常に近い配置となるため芯金が像担持体と接触して、感光体に傷がつきやすくなるため好ましくなく、15mm以上では、ブラシ繊維先端で保護剤を掻きとる力やブラシ繊維先端が感光体に当たる力が弱くなり、保護剤を充分な量供給するのが困難になったり、ブラシの繊維が抜けやすくなるため好ましくない。
ブラシ密度は1平方インチ当たり1万〜30万本(1平方メートル当たり1.5×107〜4.5×108)である。ブラシ密度が1平方インチ当たり1万本以下においては、ブラシが感光体に当たる場所と当たらない場所での塗布ムラが顕著になったり、保護剤を充分な量供給することが困難になるため好ましくなく、また、ブラシ密度を1平方インチ当たり30万本以上にするためにはブラシ繊維の径を非常に小さくする必要があるため好ましくない。
【0119】
保護剤供給部材22は、供給の均一性やその安定性の面から、極カブラシ密度の高い物を使用することが好ましく、1本の繊維を数本〜数百本の微細な繊維から作ることも好ましい。例えば、333デシテックス=6.7デシテックス×50フィラメント(300デニール=6デニール×50フィラメント)のように6.7デシテックス(6デニール)の微細な繊維を50本束ねて1本の繊維として植毛することも可能である。
これらの保護剤供給部材の中でも、28〜43μm、好ましくは30〜40μmの単繊維から作られたブラシが保護剤の供給の効率が高く、最も好ましい。繊維は、撚って作製されることが多いことから、繊維の径は均一でないため、デニール、デシテックスの単位が用いられてきた。しかし、単繊維の場合は、繊維径は一定であるため、繊維径で規定することの方が、保護剤供給部材を規定する上で好ましい。
単繊維の直径が28μmより小さいと、保護剤を供給する効率が低くなり、単繊維の直径が43μmを越えると、単繊維の剛性が高くなりすぎて、感光体を傷つけやすくなり好ましくない。また、28〜43μmの単繊維は、芯金に対してできるだけ垂直に植毛されていることが好ましく、ブラシを製造する際には、静電気を利用した、所謂、静電植毛により製造していることが好ましい。静電植毛は、ブラシの芯金上に接着剤を塗布し、芯金を帯電させることにより、静電電気力で28〜43μmの単繊維を飛翔させて、芯金上の接着剤に植毛し、接着剤を硬化させる方法である。このように静電植毛により、1平方インチ当たり5万〜60万本植毛したブラシが、好適に用いることができる。
【0120】
また、ブラシ22aの表面には必要に応じてブラシ22aの表面形状や環境安定性などを安定化することなどを目的として、被覆層を設けても良い。被覆層を構成する成分としては、ブラシ繊維の撓みに応じて変形することが可能な被覆層成分を用いることが好ましく、これらは、可撓性を保持し得る材料であれば、何ら限定される事無く使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂またはその変成品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成品);パーフルオロアルキルエーテル,ポリフルオロビニル、ポリフルオロビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂や、これらの複合樹脂等が挙げられる。
【0121】
[実施形態3]
次に本発明に係るプロセスカートリッジと画像形成装置の実施形態を説明する。
図2は本発明に係る画像形成装置の画像形成部に具備される、保護剤塗布装置を用いたプロセスカートリッジの構成例の概略を説明するための断面図である。
図2に示す画像形成部10は、像担持体であるドラム状の感光体1と、感光体1を帯電する帯電手段である帯電装置(図示の例では帯電ローラ)3と、帯電された感光体1にレーザー光L等を照射して静電潜像を形成する潜像形成手段(図示せず)と、感光体1上の静電潜像をトナーで現像して可視像化する現像手段である現像装置5と、感光体1上のトナー像を転写媒体(または中間転写媒体)7に転写する転写手段6と、転写後の感光体1の表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段であるクリーニング装置4と、クリーニング装置4から帯電装置3に至る部分に配置された保護剤塗布装置2等を有している。そして、この画像形成部10では、感光体1とともに、保護剤塗布装置2、帯電装置3、現像装置5、クリーニング装置4をカートリッジ内に設けたプロセスカーリッジ11を用いている。なお、本発明においては、クリーニング装置4は、保護剤塗布前に感光体表面をクリーニングし、保護剤の塗布が良好に行なわれるようにするものであるので、保護剤塗布装置2の構成部材と見做すことができる。
【0122】
図2において、帯電装置3は、例えば図示しない高電圧電源により直流(DC)電圧に交流(AC)電圧を重畳させた電圧を印加したAC帯電方式の帯電ローラである。また、現像装置5は、トナー粒子、またはトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤を担持搬送する現像剤担持体である現像ローラ51と、現像剤を攪拌しながら搬送する現像剤攪拌搬送部材52,53等で構成される。
感光体1に対向して配設された保護剤塗布装置2は、図1と同様に、保護剤バー21、保護剤供給部材22、押圧力付与機構23、保護層形成機構24、保護剤バー21が左右前後に振れないように支持する保護剤バー支持ガイド25等から主に構成される。
また、感光体1は、転写工程後に部分的に劣化した保護剤やトナー成分等が残存した表面となっているが、クリーニング装置4のクリーニング部材41により表面残存物が清掃され、クリーニングされる。図2では、ブレード状のクリーニング部材41はクリーニング押圧機構42で支持され、いわゆるカウンタータイプ(リーディングタイプ)に類する角度で当接されている。なお、保護層形成機構24のブレード状部材24aは、図示の例ではカウンタータイプではないが、このブレード状部材24aもカウンタータイプに類する角度で当接させてもよい。
【0123】
クリーニング装置4により、表面の残留トナーや劣化した保護剤が取り除かれた感光体表面へは、保護剤バー21の保護剤がブラシ状の保護剤供給部材22により供給され、感光体表面に供給された保護剤は、保護層形成機構24のブレード24aにより薄層化され、不定形な皮膜状の保護層が形成される。この際、感光体表面のうち電気的ストレスにより親水性が高くなっている部分に対して、本発明で使用する保護剤は、より良好な吸着性を持つため、一時的に大きな電気的ストレスが掛かり、感光体表面が部分的に劣化をし始めても、保護剤の吸着により感光体自身の劣化の進行を防ぐことができる。
【0124】
保護層が形成された感光体1は、帯電ローラ3による帯電後、レーザー光Lなどの露光によって静電潜像が形成され、現像手段である現像装置5のトナーにより現像されて可視像化され、プロセスカートリッジ外の転写手段である転写装置(転写ローラ等)6により、転写紙等の転写媒体(または中間転写媒体)7へ転写される。
【0125】
本発明のプロセスカートリッジ11に用いる帯電手段(帯電装置)3としては、装置が小型で、オゾン等の酸化性ガスの発生の少ない、帯電ローラが用いられる。
帯電ローラ3は、感光体1と接触あるいは、20〜100μm近接した非接触状態で設置され、帯電ローラ3と感光体1の間に電圧を印加することにより、感光体1を帯電する。帯電ローラ3と感光体1の間に印加する電圧は、直流電圧に交流電圧を重畳したAC帯電を用いる。なお、AC帯電を行なう場合は、感光体1と帯電ローラの間で1秒間に数百回以上もの放電が起こることから、感光体は、放電による劣化を受けやすい。また、感光体1へ保護剤の塗布をした場合でも、保護剤は放電により劣化し、消失してしまいやすいことから、常時一定の量の保護剤を感光体1上に塗布しておくことは非常に重要である。
【0126】
帯電ローラの構成としては、導電性支持体上に、高分子層と、表面層から構成されることが好ましい。
導電性支持体は、帯電ローラ13の電極及び支持部材として機能するもので、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金、クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄、導電剤を添加した樹脂、などの導電性の材質で構成される。
【0127】
高分子層としては、106〜109Ωcmの抵抗を有する導電性層であることが好ましく、高分子材料に導電剤を混合して抵抗を調整したものが用いられる。本発明の画像形成装置に用いる帯電ローラの高分子層の高分子としては、ポリエステル系、オレフィン系の熱可塑性エラストマー、ポリスチレン、スチレンーブタジエン共重合体、スチレンーアクリロニトリル共重合体、スチレンーブタジエンーアクリロニトリル共重合体等のスチレン系熱可塑性樹脂、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム等、及びこれらのブレンドしたゴム材料が挙げられる。ゴム材料は中でも、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム及びこれらのブレンドゴムが好ましく用いられる。これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0128】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末を挙げることができる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;を挙げることができる。これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、高分子100質量部に対して、1〜30質量部の範囲であることが好ましく、15〜25質量部の範囲であることがより好ましい。一方、上記イオン導電剤の場合は、高分子100質量部に対して、0.1〜5.0質量部の範囲であることが好ましく、0.5〜3.0質量部の範囲であることがより好ましい。
【0129】
前記表面層を構成する高分子材料としては、既述の如く、帯電ローラ13表面のダイナミック超微小硬度が0.04以上0.5以下であれば特に制限されないが、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。
これらの中では、トナーとの離型性等の観点から、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミドが好ましく用いられる。上記高分子材料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、当該高分子材料の数平均分子量は、1,000〜100,000の範囲であることが好ましく、10,000〜50,000の範囲であることがより好ましい。
【0130】
表面層は、上記高分子材料に前記導電性弾性層に用いた導電剤や各種微粒子を混合して組成物として形成される。上記微粒子としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物及び複合金属酸化物、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等の高分子微粉体を単独または混合して用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0131】
本発明のプロセスカートリッジに用いる現像手段は、現像剤を感光体に接触させ、感光体上に形成した潜像をトナー像に現像する。現像剤としては、トナーとキャリアから構成される二成分現像剤や、キャリアを含まない一成分現像剤を使用することができる。
例えば、図2で示すように、現像装置5は、そのケーシングの開口から現像剤担持体としての現像ローラ51が部分的に露出している。
図示しないトナーボトルから現像装置5内に補給されたトナーは、攪拌搬送スクリュー52および53によってキャリアと撹拌されながら搬送され、現像ローラ51上に担持されることになる。この現像ローラ51は、磁界発生手段としてのマグネットローラと、その周りを同軸回転する現像スリーブとから構成されている。現像剤中のキャリアは、マグネットローラが発生させる磁力により現像ローラ51上に穂立ちした状態となって感光体ドラム1と対向する現像領域に搬送される。ここで、現像ローラ51は、現像領域において感光体ドラム1の表面よりも速い線速で同方向に表面移動する。そして、現像ローラ51上に穂立ちしたキャリアは、感光体ドラム1の表面を摺擦しながら、キャリア表面に付着したトナーを感光体ドラム1の表面に供給する。このとき、現像ローラ51には、図示しない電源から現像バイアスが印加され、これにより現像領域には現像電界が形成される。そして、感光体ドラム1上の静電潜像と現像ローラ51との間では、現像ローラ51上のトナーに静電潜像側に向かう静電力が働くことになる。これにより、現像ローラ51上のトナーは、感光体ドラム1上の静電潜像に付着することになる。この付着によって感光体ドラム1上の静電潜像は、それぞれ対応する色のトナー像に現像される。
【0132】
[実施形態4]
次に本発明に係る画像形成装置の別の実施形態を説明する。
図3は、本発明の保護剤塗布装置を具備する画像形成装置100の構成例を示す概略構成図である。
この画像形成装置100は、画像形成を行う画像形成装置本体(プリンタ部)110と、この本体110の上部に設置された原稿読取部(スキャナ部)120と、その上に設置された原稿自動給紙装置(ADF)130と、画像形成装置本体110の下部に設置された給紙部200とを備えており、複写機の機能を有している。また、この画像形成装置100は、外部装置との通信機能を有しており、装置外部のパーソナルコンピュータ等と接続することにより、プリンタやスキャナとして用いることができる。また、電話回線や光回線と接続することにより、ファクシミリとして用いることができる。
【0133】
画像形成装置本体110内には、同じ構成で現像装置5のトナー色が異なる画像形成部(画像形成ステーション)10が4つ並設されており、該4つの画像形成部10でトナー色の異なる画像(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像)を形成し、各色のトナー像を転写媒体または中間転写媒体に重ね合わせて転写して多色またはフルカラー画像を形成することができる。なお、図3の例では、4つの画像形成部10は、複数のローラに張架されたベルト状の中間転写媒体7に沿って並設されており、各画像形成部で形成された各色のトナー像は、一旦中間転写媒体7に順次重ね合わせて転写された後、二次転写装置12で紙等のシート状の転写媒体に一括して転写される。
【0134】
各色の画像形成部10は図2と同様の構成であり、ドラム状の感光体1(1Y,1M,1C,1K)の周囲に、保護剤塗布装置2、帯電装置3、潜像形成装置8からのレーザー光等の露光部、現像装置5、一次転写装置6、およびクリーニング装置4が配置されている。また、図2と同様に、各色の画像形成部10には、感光体1とともに、保護剤塗布装置2(クリーニング装置4を含む)、帯電装置3、現像装置5をカートリッジ内に設けたプロセスカーリッジ11を用いている。そして、このプロセスカートリッジは、画像形成装置本体110に対して着脱自在に設けられている。
【0135】
次に図3に示す画像形成装置の動作を説明する。ここでは、画像形成のための一連のプロセスについて、ネガ−ポジプロセスで説明を行う。なお、各画像形成部の動作は同じであるので、ここでは一つの画像形成部の動作を説明する。
有機光導電層を有する有機感光体(OPC)等に代表される像担持体であるドラム状の感光体1は、除電ランプ(図示せず)等で除電され、帯電部材(例えば帯電ローラ)を有する帯電装置3で均一にマイナスに帯電される。
帯電装置3による感光体1の帯電が行なわれる際には、電圧印加機構(図示せず)から帯電部材に、感光体1を所望の電位に帯電させるに適した、適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した帯電電圧が印加される。
【0136】
帯電された感光体1は、例えば複数のレーザー光源と、カップリング光学系と、光偏向器と、走査結像光学系等からなる、レーザー走査方式の潜像形成装置8によって照射されるレーザー光で潜像形成(露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行なわれる。
すなわち、レーザー光源(例えば半導体レーザー)から発せられたレーザー光は、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等からなる光偏向器により偏向走査され、走査レンズやミラー等からなる走査結像光学系を介して感光体1の表面を、感光体1の回転軸方向(主走査方向)に走査する。
【0137】
このようにして形成された潜像が、現像装置5の現像剤担持体である現像ローラ51の現像スリーブ上に供給されたトナー粒子、またはトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤により現像され、トナー可視像が形成される。
潜像の現像時には、電圧印加機構(図示せず)から現像ローラ51の現像スリーブに、感光体1の露光部と非露光部の間にある、適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
【0138】
上記のような動作で各色に対応した画像形成部10の感光体1上に形成されたトナー像は、転写ローラ等からなる一次転写装置6にて中間転写媒体7上に順次重ね合わせて一次転写される。一方、画像形成動作及び一次転写動作にタイミングを合わせて、給紙部200の多段の給紙カセット201a,201b,201c,201dの中の選択された給紙カセットから、給紙ローラ202及び分離ローラ203からなる給紙機構で紙等のシート状の転写媒体が給紙され、搬送ローラ204,205,206及びレジストローラ207を経て二次転写部に搬送される。そして、二次転写部において、中間転写媒体7上のトナー画像が二次転写装置(例えば二次転写ローラ)12にて、搬送されてきた転写媒体に二次転写される。なお、上記の転写工程において、一次転写装置6や二次転写装置12には、転写バイアスとして、トナーの帯電極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。
上記の二次転写後、転写媒体は、中間転写媒体7から分離され、転写像が得られる。また、一次転写後に感光体1上に残存するトナー粒子は、クリーニング装置4のクリーニング部材41によって、クリーニング装置4内のトナー回収室へ、回収される。また、二次転写後に中間転写媒体7上に残存するトナー粒子は、ベルトクリーニング装置9のクリーニング部材によって、クリーニング装置9内のトナー回収室へ、回収される。
【0139】
図3に示した画像形成装置100は、上述の画像形成部10が中間転写媒体7に沿って複数配置された、いわゆるタンデム型で中間転写方式の画像形成装置であり、複数の画像形成部10によって各感光体1(1Y,1M,1C,1K)上に順次作成された色が異なる複数のトナー像を一旦中間転写媒体7上に順次転写した後、これを一括して紙のような転写媒体に転写する。そしてトナー像が転写された転写媒体を、搬送装置13により定着装置14へ送り、熱等によってトナーを定着する構成である。定着後の転写媒体は、搬送装置15及び排紙ローラ16により排紙トレイ17に排紙される。また、この画像形成装置100は両面プリント機能も備えており、両面プリント時には、定着装置9の下流の搬送路を切換え、片面の画像が定着された転写媒体を両面用搬送装置210を介して表裏反転し、搬送ローラ206及びレジストローラ207で二次転写部に再給紙して、裏面側に画像の転写を行う。転写後の転写媒体は、上記と同様に定着装置9に搬送されて画像が定着され、定着後の転写媒体は排紙トレイ17に排紙される。
【0140】
なお、上記の構成で、中間転写媒体を用いずに、タンデム型の直接転写方式の画像形成装置とすることもでき、この直接転写方式の場合は、中間転写媒体に換えて、転写媒体を担持搬送する転写ベルト等を用い、各画像形成部10によって各感光体1(1Y,1M,1C,1K)上に順次作成された色が異なる複数のトナー像を直接、転写ベルトで搬送される紙のような転写媒体に順次転写した後、定着装置へ送り、熱等によってトナーを定着する構成としても良い。
【0141】
以上に説明したような画像形成装置では、帯電装置3は、帯電部材を感光体表面に接触または近接して配設された帯電装置であることが好ましく、これにより、放電ワイヤを用いた、いわゆるコロトロンやスコロトロンと言われるコロナ放電器と比較して、帯電時に発生するオゾン量を大幅に抑制することが可能となる。
しかしながら、帯電部材を感光体表面に接触または近接して帯電を行う帯電装置3では、前述のように放電が感光体表面近傍の領域で行われるため、感光体1への電気的ストレスが大きくなりがちである。
そこで、本発明の保護剤塗布装置2を用いることにより、長期間に渡り感光体1を劣化させることなく維持できるため、経時的な画像の変動や使用環境による画像の変動を大幅に抑制でき、安定した画像品質の確保が可能となる。
【0142】
[実施形態5]
次に本発明に係るプロセスカートリッジや画像形成装置において好適に用いられる感光体について説明する。
本発明の画像形成装置に用いる像担持体である感光体は、導電性支持体の上に感光層が設けられている。感光層の構成は電荷発生材と電荷輸送材を混在させた単層型、あるいは電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、あるいは電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、感光層の上に保護層を設けることもできる。感光層と導電性支持体の間には下引き層が設けられていてもよい。また各層には必要により可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
【0143】
感光体の導電性支持体としては、体積抵抗10^10Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。ドラム状の支持体としては、直径が20〜150mm、好ましくは、24〜100mm、さらに好ましくは28〜70mmのものを用いることができる。ドラム状の支持体の直径が20mm以下では、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に難しく、ドラム状の支持体の直径が150mm以上では画像形成装置が大きくなってしまい好ましくない。特に、画像形成装置が図3に示すようなタンデム型の場合には、複数の感光体を搭載する必要があるため、直径は70mm以下、好ましくは60mm以下であることが好ましい。また、特許文献3に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0144】
本発明の画像形成装置に用いる感光体の下引層としては樹脂、あるいは白色顔料と樹脂を主成分としたもの、及び導電性基体表面を化学的あるいは電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が例示できるが、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、中でも導電性基体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンを含有させることが最も好ましい。下引層に用いる樹脂としてはポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂、アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂、これらの中の一種あるいは多種の混合物を例示することができる。
【0145】
本発明の画像形成装置に用いる感光体の電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料及び染料や、セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料を使用することができ、電荷発生物質は一種あるいは多種混合して使用することができる。下引層は、一層であっても、複数の層で構成しても良い。
【0146】
本発明の画像形成装置に用いる感光体の電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等の一種あるいは多種を混合して使用することができる。
【0147】
上記電荷発生層、電荷輸送層の感光層を形成するのに使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができ、適当な結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の光導電性樹脂など一種の結着樹脂あるいは多種と結着樹脂の混合物を挙げることができるが、特にこれらのものに限定されるものではない。ただし、電荷輸送層が最表面になる場合には、ポリカーボネートを含有した結着樹脂を用いる。
【0148】
酸化防止剤としては、例えば以下のものが使用される。
・モノフェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−t−ブチル−4−ヒドロキシニソールなど。
【0149】
・ビスフェノール系化合物
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
【0150】
・高分子フェノール系化合物
1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェノール類など。
【0151】
・パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−tーブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0152】
・ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0153】
・有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
【0154】
・有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0155】
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
【0156】
電荷輸送層中にレベリング剤を添加してもかまわない。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
【0157】
表面層は前述のように、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため設けられる。表面層としては、感光層よりも機械的強度の高い高分子、高分子に無機フィラーを分散させたものが例示できる。表面層は薄い膜厚であれば、電荷輸送能力を有していなくても支障はないが、電荷輸送能力を有しない表面層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、表面層中に前述の電荷輸送物質を含有させたり、保護層に用いる高分子を電荷輸送能力を有するものを用いることが好ましい。感光層と表面層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニングブレードとの摩擦により保護層が磨耗し、消失すると、すぐに感光層は磨耗していってしまうため、表面層を設ける場合には、表面層は十分な膜厚とすることが重要であり、0.01〜12μm、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜8μmとすることが好ましい。表面層の膜厚が0.1μm以下では、薄すぎてクリーニングブレードとの摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分から感光層の磨耗が進んでしまうため好ましくない。表面層の膜厚が12μm以上では、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する高分子を用いる場合には、電荷輸送能力を有する高分子のコストが高くなってしまうため好ましくない。
【0158】
表面層に用いる高分子としては、画像形成時の書き込み光に対して透明で、絶縁性、機械的強度、接着性に優れた物が望ましく、感光体の最表面層には、ポリカーボネートを含有している。
【0159】
表面層中には表面層の機械的強度を高めるために金属、又は金属酸化物の微粒子を分散させることができる。金属酸化物としては酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。その他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。
【0160】
以上の実施形態では像担持体を感光体として説明したが、本発明に係る像担持体は、感光体上に形成されたトナー像を一次転写して色重ねを行い、更に転写媒体へ転写を行う、いわゆる中間転写方式による画像形成を行う際に使用する中間転写媒体であってもよい。
【0161】
中間転写媒体としては、体積抵抗10^5〜10^11Ω・cm の導電性を示すものが好ましい。表面抵抗が10^5Ω/□を下回る場合には、感光体から中間転写媒体上へトナー像の転写が行われる際に、放電を伴いトナー像が乱れるいわゆる転写チリが生じることがあり、10^11Ω/□を上回る場合には、中間転写媒体から紙などの転写媒体へトナー像を転写した後に、中間転写媒体上へトナー像の対抗電荷が残留し、次の画像上に残像として現れることがある。
【0162】
中間転写媒体としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物やカーボンブラック等の導電性粒子や導電性高分子を、単独または併用して熱可塑性樹脂と共に混練後、押し出し成型したベルト状もしくは円筒状のプラスチックなどを使用することができる。この他に、熱架橋反応性のモノマーやオリゴマーを含む樹脂液に、必要により上述の導電性粒子や導電性高分子を加え、加熱しつつ遠心成型を行い、無端ベルト上の中間転写媒体を得ることもできる。
【0163】
中間転写媒体に表面層を設ける際には、上述の感光体表面層に使用した表面層材料の内、電荷輸送材料を除く組成物に、適宜、導電性物質を併用して抵抗調整を行い、使用することができる。
【0164】
[実施形態6]
次に、本発明に係るプロセスカートリッジや画像形成装置において好適に用いられるトナーについて説明する。
まず、本発明の画像形成装置に用いるトナーは、平均円形度が0.93〜1.00であることが好ましい。本発明では、下記の式2より得られた値を円形度と定義する。この円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長 :(式2)
【0165】
平均円形度が0.93〜1.00の範囲では、トナー粒子の表面は滑らかであり、トナー粒子同士、トナー粒子と感光体との接触面積が小さいために転写性に優れる。
トナー粒子に角がないため、現像装置内での現像剤の攪拌トルクが小さく、攪拌の駆動が安定するために異常画像が発生しない。
ドットを形成するトナーの中に、角張ったトナー粒子がいないため、転写で転写媒体に圧接する際に、その圧がドットを形成するトナー全体に均一にかかり、転写中抜けが生じにくい。
トナー粒子が角張っていないことから、トナー粒子そのものの研磨力が小さく、像担持体の表面を傷つけたり、磨耗させたりしない。
【0166】
次に円形度の測定方法について説明する。
円形度は、東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定することができる。
具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、分散液濃度を3000〜10000個/μlとして前記装置によりトナーの形状、粒度を測定する。
【0167】
本発明の画像形成装置に用いるトナーは、上記の円形度に加えて、トナーの重量平均径D4が3〜10μmであることが好ましい。この範囲では、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有していることから、ドット再現性に優れる。
重量平均径D4が3μm未満では、転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下といった現象が発生しやすい。また、重量平均径D4が10μmを超えると、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しい。
【0168】
さらに本発明に係るトナーは、重量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が1.00〜1.40であることが好ましい。(D4/D1)の値が1に近づくほど、そのトナーの粒度分布がシャープであることを意味する。よって、(D4/D1)が1.00〜1.40の範囲では、トナー粒径による選択現像が起きないため、画質の安定性に優れる。
トナーの粒度分布がシャープであることから、摩擦帯電量分布もシャープとなり、カブリの発生が抑えられる。また、トナー粒径が揃っていると、潜像ドットに対して、緻密に、かつ整然と並ぶように現像されるので、ドット再現性に優れる。
【0169】
次にトナー粒子の粒度分布の測定方法について説明する。
コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)が挙げられる。以下に測定方法について述べる。
【0170】
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均径D4、個数平均径D1を求めることができる。
【0171】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0172】
また、このような略球形の形状のトナーとしては、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/又は伸長反応させるトナーが好ましい。この反応で製造されたトナーは、トナー表面を硬化させることで、ホットオフセットの少なくすることができ、定着装置の汚れとなって、それが画像上に表れるのを抑えることができる。
【0173】
トナー作成に使用できる変性ポリエステル系樹脂から成るプレポリマーとしては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)が挙げられ、また、該プレポリマーと伸長または架橋する化合物としては、アミン類(B)が挙げられる。
【0174】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させた物などが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0175】
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0176】
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、ジカルボン酸(2−1)単独、およびジカルボン酸(2−1)と少量の3価以上のポリカルボン酸(2−2)の混合物が好ましい。
ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
【0177】
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0178】
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0179】
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0180】
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0181】
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0182】
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0183】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0184】
これらの反応により、本発明のトナーに用いられる変性ポリエステル、中でもウレア変性ポリエステル(i)が作成できる。これらウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0185】
また、本発明においては、前記ウレア結合で変性されたポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に、変性されていないポリエステル(ii)を結着樹脂成分として含有させることもできる。(ii)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、単独使用より好ましい。(ii)としては、前記(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また、(ii)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。(i)と(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の重量比は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。(i)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0186】
(ii)のピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、10000を超えると低温定着性が悪化する。(ii)の水酸基価は5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10〜120、特に好ましくは20〜80である。5未満では耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。(ii)の酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
【0187】
本発明において、結着樹脂のガラス転移点(Tg)は通常50〜70℃、好ましくは55〜65℃である。50℃未満ではトナーの高温保管時のブロッキングが悪化し、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステル樹脂の共存により、本発明の乾式トナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。結着樹脂の貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて10000dyne/cm2となる温度(TG’)が、通常100℃以上、好ましくは110〜200℃である。100℃未満では耐ホットオフセット性が悪化する。結着樹脂の粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1000ポイズとなる温度(Tη)が、通常180℃以下、好ましくは90〜160℃である。180℃を超えると低温定着性が悪化する。すなわち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG’はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG’とTηの差(TG’−Tη)は0℃以上が好ましい。さらに好ましくは10℃以上であり、特に好ましくは20℃以上である。差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgの差は0〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜90℃であり、特に好ましくは20〜80℃である。
【0188】
結着樹脂は以下の方法などで製造することができる。ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。さらに(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。(3)を反応させる際および(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。ウレア結合で変性されていないポリエステル(ii)を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様な方法で(ii)を製造し、これを前記(i)の反応完了後の溶液に溶解し、混合する。
【0189】
また、本発明に用いるトナーは概ね以下の方法で製造することができるが勿論これらに限定されることはない。
本発明に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
【0190】
トナー粒子は、水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマー(A)からなる分散体を、(B)と反応させて形成しても良いし、あらかじめ製造したウレア変性ポリエステル(i)を用いても良い。水系媒体中でウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。プレポリマー(A)と他のトナー組成物である(以下トナー原料と呼ぶ)着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、荷電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本発明においては、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
【0191】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。高温な方が、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
【0192】
ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)を含むトナー組成物100部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
【0193】
プレポリマー(A)からウレア変性ポリエステル(i)を合成する工程は水系媒体中でトナー組成物を分散する前にアミン類(B)を加えて反応させても良いし、水系媒体中に分散した後にアミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしても良い。この場合製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
【0194】
トナー組成物が分散された油性相を水が含まれる液体に乳化、分散するための分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性荊、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0195】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及ぴその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガーフルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガーフルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及ぴ金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及ぴその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0196】
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02、(タイキン工莱社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F−150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0197】
カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を右する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−l32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0198】
水に難溶の無機化合物分散剤として、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いることができる。
また、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ピニル、プロピオン酸ピニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0199】
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長および/または架橋反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
【0200】
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いたほうが粒度分布がシャープになる点で好ましい。該溶剤は揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましく、中でもトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒がより好ましい。プレポリマー(A)100部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300部、好ましくは0〜100部、さらに好ましくは25〜70部である。溶剤を使用した場合は、伸長および/または架橋反応後、常圧または減圧下にて加温し除去する。
【0201】
伸長および/または架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0202】
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
【0203】
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、または粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、または粗粒子はウェットの状態でも構わない。また、用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
【0204】
得られた乾燥後のトナーの粉体は、離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって、表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的な手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0205】
また、トナーに使用される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料が使用でき、具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドンレッド、ベンジジンイエロー、ローズベンガル等を単独あるいは混合して用いることができる。
【0206】
さらに、必要により、トナー粒子自身に磁気特性を持たせるには、フェライト、マグネタイト、マグヘマイト等の酸化鉄類、鉄、コバルト、ニッケル等の金属あるいは、これらと他の金属との合金等の磁性成分を単独または混合して、トナー粒子へ含有させればよい。また、これらの成分は、着色剤成分として使用/併用することもできる。
【0207】
本発明で用いられるトナー中の着色剤の個数平均径は0.5μm以下であることが望ましく、好ましくは0.4μm以下、より好ましくは0.3μm以下が望ましい。
トナー中の着色剤の個数平均径が0.5μmより大きいときには、顔料の分散性が充分なレベルには到らず、好ましい透明性が得られないことがある。
0.1μmより小さい微小粒径の着色剤は、可視光の半波長より十分小さいため、光の反射、吸収特性に悪影響を及ぼさないと考えられる。よって、0.1μm未満の着色剤の粒子は良好な色再現性と、定着画像を有するOHPシートの透明性に貢献する。一方、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、入射光の透過が阻害されたり、散乱されたりして、OHPシートの投影画像の明るさ及び彩かさが低下する傾向がある。
さらに、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、トナー粒子表面から着色剤が脱離し、カブリ、ドラム汚染、クリーニング不良といった種々の問題を引き起こしやすいため、好ましくない。特に、0.7μmより大きな粒径の着色剤は、全着色剤の10個数%以下であることが好ましく、5個数%以下であることが、より好ましい。
【0208】
また、着色剤を結着樹脂の一部もしくは全部と共に、予め湿潤液を加えた上で混練しておくことにより、初期的に結着樹脂と着色剤が十分に付着した状態となって、その後のトナー製造工程でのトナー粒子中における着色剤分散がより効果的に行なわれ、着色剤の分散粒径が小さくなり、一層良好な透明性を得ることができる。
予めの混錬に用いる結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として例示した樹脂類をそのまま使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0209】
前記の結着樹脂と着色剤の混合物を予め湿潤液と共に混練する具体的な方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤及び湿潤液を、ヘンシェルミキサー等のブレンダーにて混合した後、得られた混合物を二本ロール、三本ロール等の混練機により、結着樹脂の溶融温度よりも低い温度で混練して、サンプルを得る。
また、湿潤液としては、結着樹脂の溶解性や、着色剤との塗れ性を考慮しながら、一般的なものを使用できるが、特に、アセトン、トルエン、ブタノン等の有機溶剤や水が、着色剤の分散性の面から好ましい。中でも、水の使用は、環境への配慮及び、後のトナー製造工程における着色剤の分散安定性維持の点から、一層好ましい。
この製法によると、得られるトナーに含有される着色剤粒子の粒径が小さくなるばかりでなく、該粒子の分散状態の均一性が高くなるため、OHPによる投影像の色の再現性がより一層良くなる。
【0210】
この他、本発明の構成をとる限り、トナー中に結着樹脂や着色剤とともにワックスに代表される離型剤を含有させることもできる。
離型剤としては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。
【0211】
これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。
【0212】
これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。これら離型剤の融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は通常0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%である。
【0213】
また、トナー帯電量及びその立ち上がりを早くするために、トナー中に、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。ここで、電荷制御剤として有色材料を用いると色の変化が起こるため、無色、白色に近い材料が好ましい。
帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的には第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0214】
本発明において荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させる事もできるし、有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えても良いし、トナー表面にトナー粒子作成後固定化させてもよい。
また、トナー製造過程で水系媒体中にトナー組成物を分散させるに際して、主に分散安定化のための樹脂微粒子を添加してもよい。
【0215】
使用される樹脂微粒子は、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。
【0216】
ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合また共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0217】
さらに、トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。
この無機微粒子の一次粒子径は、5mμ〜2μmであることが好ましく、特に5mμ〜500mμであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい.無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0218】
この他、高分子系微粒子、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0219】
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0220】
また、感光体や中間転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0221】
これらのトナーを用いることにより、上述の如く、現像の安定性に優れる、高画質なトナー像を形成することができる。しかしながら、転写装置にて転写媒体もしくは中間転写媒体に転写されず、像担持体上に残存してしまったトナーは、その微細さや転動性の良さのために、クリーニング装置による除去が困難で通過してしまうことがある。トナーを像担持体から完全に除去するには、例えばクリーニングブレードのようなトナー除去部材を像担持体に対して強力に押しつける必要がある。この様な負荷は、像担持体やクリーニング装置の寿命を短くするだけでなく、余計なエネルギーを使用してしまうことになる。
像担持体に対する負荷を軽減した場合には、像担持体上のトナーや小径のキャリアの除去が不十分となり、これらはクリーニング装置を通過する際に、像担持体表面を傷つけ、画像形成装置の性能を変動させる要因となる。
【0222】
本発明の画像形成装置は、前述の如く、感光体表面状態の変動、特に低抵抗部位の存在に対しての許容範囲に優れ、感光体への帯電性能変動等を、高度に抑制した構成であるため、上記構成のトナーと併用することにより、極めて高画質な画像を、長期にわたって安定して得ることができるものである。
また、本発明の画像形成装置は、上述のような、高品質な画像を得るに適した構成のトナーとの併用ばかりでなく、粉砕法による不定形のトナーに対しても適用でき、装置寿命を大幅に延ばすことは言うまでもない。
【0223】
このような、粉砕法のトナーを構成する材料としては、通常、電子写真用トナーとして使用されるものが、特に制限なく、適用可能である。
該トナーに使用される一般的な結着剤樹脂の例としては、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン/p−クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ビニルメチルケトン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単重合体やその共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル誘導体;ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリオール系重合体、エポキシ系重合体、テルペン系重合体、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられ、単独あるいは混合して使用できるが特にこれらに限定するものではない。中でも、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂より選ばれる少なくとも1種以上であることが、電気特性、コスト面等から、より好ましいものである。更には、良好な定着特性を有するものとして、ポリエステル系樹脂および/またはポリオール系樹脂の使用が、一層好ましい。
【0224】
また、上述の事由により、帯電部材の被覆層に含まれる前記トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものは、線状ポリエステル樹脂組成物、線状ポリオール樹脂組成物、線状スチレンアクリル樹脂組成物、またはこれらの架橋物の内、少なくとも一種を好ましく用いることができる。
【0225】
粉砕法のトナーでは、これらの樹脂成分と共に、前述のような着色剤成分、ワックス成分、電荷制御成分等を、必要により前混合後、樹脂成分の溶融温度近傍以下で混練して、これを冷却後、粉砕分級工程を経て、トナーを作成すれば良く、また、必要により前述の外添成分を、適宜、添加混合すれば良い。
【実施例1】
【0226】
次に前述の実施形態1で説明した本発明に係る保護剤塗布装置の評価方法の具体的な実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0227】
図4は本実施例の評価に用いる保護剤塗布装置の構成の概略を示す図であり、図1の保護剤塗布装置2と同様の構成を簡略化して示したものである。この装置で使用する感光体の製造は、以下のように行った。
【0228】
(感光体)
直径30mmのアルミニウムドラム(導電性支持体)上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を、その順に塗布した後、乾燥し、3.6μmの下引き層、約0.14μmの電荷発生層、23μmの電荷輸送層、約3.5μmの保護層からなる感光体を30本作製した。このとき、保護層の塗工はスプレー法により行い、それ以外は浸漬塗工法により行った。保護層には、電荷輸送層に、平均粒径0.18μmのアルミナを23.8質量%添加した処方のものを用いた。
【0229】
使用する保護剤バーの製造は、以下のように行った。
(保護剤バー(11)の製造方法)
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を90重量部、TOPAS−TM(チコナ社製)を10重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、160〜250℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で88℃まで放冷後、アルミニウム製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バーを作成した。保護剤バーの底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0230】
保護剤バー(11)及び感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行った。分析によって得られたスペクトルを図6中A(感光体のスペクトル)およびB(保護剤バー(11)のスペクトル)に示す。感光体で得られたスペクトルでは、1770cm-1にポリカーボネート結合に由来するピーク(ピークa1(1770cm-1))、3040cm-1にフェニル基に由来するピーク(ピークa2(3040cm-1))、が見られた。保護剤バー(11)で得られたスペクトルでは、2850cm-1および2920cm-1にメチレン基に由来するピーク(ピークb1(2850cm-1)、ピークb2(2920cm-1)が見られた。
ここで、感光体をATR測定する際は、感光体の感光層をカッターを用いて1cm×1cmの大きさでアルミニウム基盤から剥がし測定サンプルとした。
【0231】
(保護剤塗布装置(11)の評価)
[実施例1−1](メチレン指標)
保護剤バー(11)の保護剤を感光体に塗布するため、ブラシ(2) (太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように保護剤塗布装置に装着し、ブラシ(2) は4.8Nのバネ圧で感光体(OPC)に押し付け、感光体(1-1)〜感光体(1-5)へ保護剤塗布を行なった(保護剤塗布装置(11))。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった。
【0232】
上記の保護剤塗布装置(11)を用いて120分間保護剤を塗布した感光体(1-4) をウルトラミクロトームを用いて薄くスライスし、TEM観察を行なったところ、TEM写真より、感光体上の保護剤の膜厚は20〜50nmであった。
【0233】
塗布時間の違う(3、10、40、120、360分)保護剤塗布後の感光体(1-1)〜感光体(1-5)について、各塗布時間の感光体についてそれぞれサンプリングを行い、サンプルをそれぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、図6中のスペクトルCを得た。
【0234】
この図6のCのスペクトルより、ピークb1(2850cm-1)の面積(Sb)と、ピークa1(1770cm-1)の面積(Sa)の比(Sb/Sa)をとることを試みた。ここで2850cm-1のピークは保護剤バー(11)に由来するピークであるが、このピークの近くに感光体に由来するピークが存在し、お互いのピークが重なってしまっているため、保護剤塗布後の感光体で得られたスペクトルと図6のAの感光体のみのスペクトルとの差スペクトルをとり、2850cm-1のピークの面積が感光体由来のピークの面積の影響を受けないように加工してから、Sb/Saを求めた。ここで、差スペクトルをとる際、1770cm-1に見られるピークがゼロになるようにそれぞれのスペクトルの吸光度に係数をかけ、適宜拡大縮小して、ピーク強度の調整を行なった。差をとった後のスペクトルを図6中のDに示す。塗布量の指標(Sb/Sa)は塗布時間が増加するに伴ない増加する傾向が見られ、10minで0.19、360minで0.38であった。また、保護剤を360分塗布した感光体(1-5) について、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて、同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が8%であった。
ここで、それぞれのピークの面積を求める際のバックグラウンドの始点および終点の波数および面積の積分範囲を下記の表1に示す。
【0235】
【表1】
【0236】
[実施例1−2](フェニル指標)
実施例1−1で得られたIRスペクトルにおいて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比(Sb/Sa)をとることを試みた。ここで2920cm-1のピークは保護剤バー(11)に由来するピークであるが、このピークの近くに感光体に由来するピークが存在し、お互いのピークが重なってしまっているが、ピークb2(2920cm-1)は感光体由来のピークより充分大きいため、実施例1−1で行なった、保護剤塗布後の感光体で得られたスペクトルと図6のAの感光体のみのスペクトルの差スペクトルをとる工程は削除した。塗布量の指標(Sb/Sa)は塗布時間が増加するに伴ない増加する傾向が見られ、10minで10.3、360minで23.2であった。また、保護剤を360分塗布した感光体(1-5) について、実施例1−1とは別にサンプリングした周方向に近接した5枚のサンプルを用いて、同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が12%であった。
【0237】
(保護剤塗布装置(12)の評価)
[実施例1−3]
保護剤バー(11)の保護剤を感光体に塗布するため、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように保護剤塗布装置に装着し、ブラシは4.8Nのバネ圧で感光体に押し付け、感光体(3-1)〜感光体(3-5)へ保護剤塗布を行なった(保護剤塗布装置(12))。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行った。塗布時間を変化させた(3、10、40、120、360分)保護剤塗布後の感光体(3-1)〜感光体(3-5)について、それぞれサンプリングを行い、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行なった。得られたスペクトルについて、実施例1−1と同様の手法で、ピークb1(2850cm-1)の面積(Sb)とピークa1(1770cm-1)の面積(Sa)の比をとり(Sb/Sa)、塗布時間とSb/Saの関係を見てみると、塗布量の指標(Sb/Sa)は塗布時間が増加するに伴ない増加する傾向が見られ、10minで0.06、360minで0.71であった。また、保護剤を360分塗布した感光体(3-5)について、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて、同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が11%であった。
【0238】
[実施例1−4]
実施例1−3で得られたIRスペクトルにおいて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比(Sb/Sa)を実施例1−2と同様の手法で算出することを試みた。塗布量の指標(Sb/Sa)は塗布時間が増加するに伴ない増加する傾向が見られ、10minで7.8、360minで39.8であった。また、保護剤を360分塗布した感光体(3-5) について、実施例1−3とは別に、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて、同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が7%であった。
【0239】
(ATRプリズムの種類、入射角、等に関する比較)
[実施例1−5]
実施例1−1で塗布した感光体(1-1)〜感光体(1-5)について、サンプリングを別途行い、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Smart Orbit(1回反射ATR、ダイヤモンド、入射角45°))を用いて、該サンプルの分析を行ない、同様の解析を行おうと試みた。その結果、ピークa1(1770cm-1)の面積は充分な大きさであったが塗布時間によらずほとんど変化がなく、保護剤由来のピークb1(2850cm-1)は非常に小さかった。かろうじてピークb1(2850cm-1)の面積を求めて塗布時間とSb/Saの相関を見てみたところ、Sb/Saは増加傾向があるものの、その増加量は非常に小さかった。また、保護剤を360分塗布した感光体(1-5) について、別途サンプリングを行い、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が35%であった。
【0240】
[実施例1−6]
実施例1−3で塗布した感光体(3-1)〜感光体(3-5)について、サンプリングを別途行い、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Seagull(1回反射ATR、Ge、入射角85°))を用いて、分析を行ない、同様の解析を行なった。ピークb1およびピークa1の面積について見ていくと、保護剤由来のピークb1(2850cm-1)の面積は塗布時間の増加と共に多少増加していたが、増加量はかなり小さく、また、ピークa1(1770cm-1)の面積は非常に小さかった。塗布時間に伴ないSb/Saは多少増加していたが増加量は小さかった。また、保護剤を360分塗布した感光体(3-5) について、別途サンプリングを行い、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が32%であった。
【0241】
[実施例1−7]
実施例1−1で塗布した感光体(1-1)〜感光体(1-5)について、サンプリングを別途行い、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、GATR(1回反射ATR、Ge、入射角30°))で分析を行ない、同様の解析を行おうと試みた。GATRのアクセサリの試料固定用のネジを回していきピークが検出し始めたところからネジを1/2回転したところでネジを固定し、試料が充分にATRプリズムに押し付けられたところで測定を行なった。
実施例1−1の場合と同様に、ピークa1(1770cm-1)もピークb1(2850cm-1)もはっきりと検出された。Sb/Saを算出したところ、塗布時間に伴ないSb/Saは多少増加していたが増加量は小さかった。また、保護剤を360分塗布した感光体(1-5) について、別途サンプリングを行い、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて、同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が25%であった。
【0242】
(保護剤バー(12)の製造方法)
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を60重量部、トリステアリン酸ソルビタン(HLB:1.5)を25重量部、ノルマルパラフィン(平均分子量640)を15重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、180℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で90℃まで放冷後、アルミニウム製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バーを作成した。保護剤バーの底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0243】
[実施例1−8〜実施例1−12]
(実施例1−1の評価方法を用いて合否判定)
実施例1−1のように、ピークb1(2850cm-1)の面積(Sb)とピークa1(1770cm-1)の面積(Sa)のピークの面積(Sa)の比(Sb/Sa)をとる保護剤塗布装置の評価方法において、保護剤を10分間塗布した時のSb/Saが閾値0.03以上で、360分塗布したときの閾値が0.90以下となったときに、保護剤塗布装置を合格とし、以下のような評価を行なった。
【0244】
[実施例1−8]
感光体(8-1) および感光体(8-2) 、ブラシ(2) (太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(11)を4.8Nのバネ圧でブラシに押し付け、10分および360分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行った(保護剤塗布装置(11))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例1−1のようにSb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=0.17、360分塗布後でSb/Sa=0.36であり、保護剤塗布装置(11)は合格と評価した。
【0245】
[実施例1−9]
感光体(9-1) および感光体(9-2) 、ブラシ(3) (太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(11)を4.8Nのバネ圧でブラシに押し付け、10分および360分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行った(保護剤塗布装置(12))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例1−1のようにSb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=0.06、360分塗布後でSb/Sa=0.82であり、保護剤塗布装置(12)は合格と評価した。
【0246】
[実施例1−10]
感光体(10-1) および感光体(10-2) 、ブラシ(1) (太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり3万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(12)を2Nのバネ圧でブラシに押し付け、10分および360分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行った(保護剤塗布装置(13))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例1−1のようにSb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=0.02、360分塗布後でSb/Sa=0.23であり、保護剤塗布装置(13)は不合格と評価した。
【0247】
[実施例1−11]
感光体(11-1)および感光体(11-2)、ブラシ(3) (太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)とウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(11)を2Nのバネ圧でブラシに押し付け、10分および360分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(14))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例1−1のようにSb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=0.02、360分塗布後でSb/Sa=0.43であり、保護剤塗布装置(14)は不合格と評価した。
【0248】
[実施例1−12]
感光体(12-1)および感光体(12-2)、ブラシ(3) (太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)とウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(12)を4.8Nのバネ圧でブラシに押し付け、10分および360分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(15))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例1−1のようにSb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=0.12、360分塗布後でSb/Sa=1.1であり、保護剤塗布装置(15)は不合格と評価した。
【0249】
[実施例1−13〜実施例1−17]
(実施例1−2の評価方法を用いて合否判定)
実施例1−2のようにピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比(Sb/Sa)をとる保護剤塗布装置の評価方法において、保護剤を10分間塗布した時のSb/Saが閾値6.5以上で、360分塗布したときの閾値が44.0以下となったときに、保護剤塗布装置を合格として、以下のような評価を行なった。
【0250】
[実施例1−13]
実施例1−8で得られたIRスペクトルについて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比Sb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=12.1、360分塗布後でSb/Sa=22.8であり、保護剤塗布装置(11)は合格と評価した。
【0251】
[実施例1−14]
実施例1−9で得られたIRスペクトルについて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比Sb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=8.0、360分塗布後でSb/Sa=43.3であり、保護剤塗布装置(12)は合格と評価した。
【0252】
[実施例1−15]
実施例1−10で得られたIRスペクトルについて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比Sb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=6.0、360分塗布後でSb/Sa=18.7であり、保護剤塗布装置(13)は不合格と評価した。
【0253】
[実施例1−16]
実施例1−11で得られたIRスペクトルについて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比Sb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=5.8、360分塗布後でSb/Sa=27.6であり、保護剤塗布装置(14)は不合格と評価した。
【0254】
[実施例1−17]
実施例1−12で得られたIRスペクトルについて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比Sb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=10.3、360分塗布後でSb/Sa=73.2であり、保護剤塗布装置(15)は不合格と評価した。
【0255】
[実施例1−18]
画像形成装置として、IPSIO CX400(タンデム型カラー画像形成装置、(株)リコー製)を用い、この画像形成装置のブラックおよびシアンの感光体ユニット(画像形成部)において、それぞれ実施例1−8および実施例1−9で用いた感光体(8-2)および感光体(9-2)を組み込み、感光体の真上に帯電ローラを配置し、保護剤塗布装置(11)および保護剤塗布装置(12)と同じスプリングでそれぞれ帯電ローラを感光体に押し付け、感光体の線速を125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1450Hz、振幅1100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。ブラック感光体ユニットは保護剤塗布装置(11)と同じ条件になるようブラシ(2) およびウレタンブレードをセットし、シアン感光体ユニットは保護剤塗布装置(15)と同じ条件になるようブラシ(3) およびウレタンブレードをセットした。
【0256】
ブラックおよびシアンユニットについて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ出力して評価したところ、ブラックおよびシアンユニットから出力された画像は高画質画像であった。
続いて、ブラックおよびシアンユニットを用いて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ計70000枚出力したところ、ブラックユニットから出力された画像は高画質画像であったが、シアンユニットから出力された画像には白スジが見られた。
これにより、実施例1−8、実施例1−12および実施例1−13、実施例1−17のように閾値を設定する事で、保護剤塗布装置の合否の判別が可能となった。
【0257】
なお、以上の実施例1における保護剤塗布装置と、ATR分析と解析の条件および解析結果と、画像評価結果と、保護剤バーとを、下記の表2〜5にまとめて示す。
【0258】
【表2】
【0259】
【表3】
【0260】
【表4】
【0261】
【表5】
【実施例2】
【0262】
次に前述の実施形態2で説明した本発明に係る保護剤塗布装置の具体的な実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0263】
図4は本実施例の評価に用いる保護剤塗布装置の構成の概略を示す図であり、図1の保護剤塗布装置2と同様の構成を簡略化して示したものである。なお、図4の例では、保護剤塗布装置のブレードは、感光体表面にカウンター方式で接触している。
【0264】
(感光体)
保護剤を塗布する感光体の製造は、以下のように行った。
直径30mmのアルミニウムドラム(導電性支持体)上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を、その順に塗布した後、乾燥し、3.6μmの下引き層、約0.14μmの電荷発生層、23μmの電荷輸送層、約3.5μmの保護層からなる感光体を作製した。このとき、保護層の塗工はスプレー法により行ない、それ以外は浸漬塗工法により行った。保護層の詳細については以下の通りとした。
【0265】
(保護層)
Z型ポリカーボネート:10部
トリフェニルアミン化合物(下記の構造式1):7部
アルミナ微粒子(粒径0.3μm):5部
テトラヒドロフラン:400部
シクロヘキサノン:150部
【0266】
【化1】
【0267】
使用する保護剤バーの製造は、以下のように行った。
(保護剤バー(21)の製造方法)
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を85重量部、TOPAS−TM(チコナ社製)を10重量部、トリステアリン酸ソルビタン(HLB:1.5)を5重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、160〜250℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
【0268】
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で88℃まで放冷後、アルミニウム製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バーを作成した。保護剤バーの底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0269】
感光体および保護剤バー(21)について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行った。図6のAおよびBと非常によく似たスペクトル(吸光度スペクトル)を得た。感光体で得られたスペクトルでは、1770cm-1にカーボネートに由来するピーク(ピークa1(1770cm-1))、が見られた。保護剤バー(21)で得られたスペクトルでは、2850cm-1および2920cm-1にメチレン基に由来するピーク(ピークb1(2850cm-1)、ピークb2(2920cm-1)が見られた。
ここで、感光体をATR測定する際は、感光体の感光層をカッターを用いて1cm×1cmの大きさでアルミニウム基盤から剥がし測定サンプルとした。
【0270】
[実施例2−1]
保護剤バー(21)の保護剤を感光体に塗布するため、ブラシ2(太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように保護剤塗布装置に装着し、ブラシは4Nのバネ圧で感光体に押し付け、感光体(1-1)および感光体(1-2)へ保護剤塗布を行なった(保護剤塗布装置(21))。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった。
保護剤塗布装置(21)を用いて150分間保護剤を塗布した感光体(1-2)をウルトラミクロトームを用いて薄くスライスし、TEM観察を行なったところ、TEM写真より、感光体上の保護剤の膜厚は50〜85nmであった。
【0271】
塗布時間の違う(5、150分)保護剤塗布後の感光体(1-1)および感光体(1-2)について、各塗布時間の感光体についてそれぞれサンプリングを行い、サンプルをそれぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、図6のCと大方類似のスペクトル(塗布時間150分)(吸光度スペクトル)を得た。
【0272】
図6のCのスペクトルより、ピークb1(2850cm-1)の面積(Sb1)とピークa1(1770cm-1)のピークの面積(Sa1)の比(Sb1/Sa1)をとることを試みた。ここで2850cm-1のピークは保護剤バー(21)に由来するピークであるが、このピークの近くに感光体に由来するピークが存在し、お互いのピークが重なってしまっているため、実施例1と同様に保護剤塗布後の感光体で得られたスペクトルと図6のAの感光体のみのスペクトルとの差スペクトルをとり、2850cm-1のピークの面積が感光体由来のピークの面積の影響を受けないように加工してから、Sb1/Sa1を求めた。ここで、差スペクトルをとる際、1770cm-1に見られるピークがゼロになるようにそれぞれのスペクトルの吸光度に係数をかけ、適宜拡大縮小して、ピーク強度の調整を行なった。塗布量の指標(Sb1/Sa1)は塗布時間が増加するに伴ない増加する傾向が見られ、5minで0.082、150minで0.23であった。
ここで、それぞれのピークの面積を求める際のバックグラウンドの始点および終点の波数および面積の積分範囲を下記の表6に示す。
【0273】
【表6】
【0274】
[実施例2−2]
感光体(2-1)および感光体(2-2)、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(21)を4Nのバネ圧でブラシに押し付け、5分および150分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(22))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例2−1のようにSb1/Sa1を算出したところ、5分塗布後でSb1/Sa1=0.044、150分塗布後でSb1/Sa1=0.45であった。
【0275】
(保護剤バー(22)の製造方法)
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を55重量部、トリステアリン酸ソルビタン(HLB:1.5)を20重量部、ノルマルパラフィン(平均分子量640)を25重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、180℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
【0276】
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で90℃まで放冷後、アルミニウム製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バーを作成した。保護剤バーの底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0277】
[比較例2−1]
感光体(3-1)および感光体(3-2)、ブラシ(1)(太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり3万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(21)を1.8Nのバネ圧でブラシに、5分および150分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(23))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例2−1のようにSb1/Sa1を算出したところ、5分塗布後でSb1/Sa1=0.022、150分塗布後でSb1/Sa1=0.13であった。
【0278】
[比較例2−2]
感光体(4-1)および感光体(4-2)、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(22)を6Nのバネ圧でブラシに、5分および150分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(24))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例2−1のようにSb1/Sa1を算出したところ、5分塗布後でSb1/Sa1=0.14、150分塗布後でSb1/Sa1=0.88であった。
【0279】
[実施例2−3]
感光体(5-1)および感光体(5-2)、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(22)を3Nのバネ圧でブラシに、5分および150分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(25))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例2−1のようにSb1/Sa1を算出したところ、5分塗布後でSb1/Sa1=0.032、150分塗布後でSb1/Sa1=0.32であった。
【0280】
[画像評価結果]
画像形成装置として、IPSIO CX400(タンデム型カラー画像形成装置、(株)リコー製)を用い、この画像形成装置のブラックのプロセスカートリッジ(1) には実施例2−1で用いた保護剤塗布装置(21)と同じ構成となるように、各部材(保護剤バー、ブラシ、押圧力付与バネ)を組み込み、シアンのプロセスカートリッジ(1) には比較例2−1で用いた保護剤塗布装置(23)と同じ構成となるように、各部材を組み込み、マゼンタのプロセスカートリッジ(1) には比較例2−2で用いた保護剤塗布装置(24)と同じ構成となるように、各部材を組み込み、感光体の線速を125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1450Hz、振幅1100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。尚、各プロセスカートリッジには、図1の保護材塗布装置においては組み込んでいなかった帯電ローラ3を組み込んだ。また、いずれのプロセスカートリッジにおいても、実施例2−1〜2−3および比較例2−1〜2−2で用いたものと同じ感光体で新品の感光体を組み込んだ。
【0281】
ブラック、シアンおよびマゼンタのプロセスカートリッジついて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ出力して評価したところ、ブラック、シアンおよびマゼンタのプロセスカートリッジから出力された画像は高画質画像であった。
続いて、ブラック、シアンおよびマゼンタのプロセスカートリッジを用いて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ計60000枚出力したところ、ブラックのプロセスカートリッジから出力された画像は高画質画像であったが、シアンのプロセスカートリッジから出力された画像には白スジが見られ、マゼンタのプロセスカートリッジから出力された画像には黒スジが見られた。
【0282】
続いて、同様の評価を、実施例2−2および比較例2−1の保護剤塗布装置と同じ構成のプロセスカートリッジを用いて行なった。
画像形成装置として、IPSIO CX400(タンデム型カラー画像形成装置、(株)リコー製)を用い、この画像形成装置のブラックのプロセスカートリッジ(2) には実施例2−2で用いた保護剤塗布装置(22)と同じ構成となるように、各部材(保護剤バー、ブラシ、押圧力付与バネ)を組み込み、シアンのプロセスカートリッジ(2) には比較例2−3で用いた保護剤塗布装置(25)と同じ構成となるように、各部材を組み込み、感光体の線速を125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1450Hz、振幅1100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。尚、各プロセスカートリッジには、図1の保護材塗布装置においては組み込んでいなかった帯電ローラを組み込んだ。また、いずれのプロセスカートリッジにおいても、実施例2−1〜2−3および比較例2−1〜2−2で用いたものと同じ感光体で新品の感光体を組み込んだ。
【0283】
ブラックおよびシアンのプロセスカートリッジついて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ出力して評価したところ、ブラックおよびシアンから出力された画像は高画質画像であった。
続いて、ブラックおよびシアンのプロセスカートリッジを用いて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ計60000枚出力したところ、ブラックのプロセスカートリッジから出力された画像は高画質画像であったが、シアンのプロセスカートリッジから出力された画像には白スジが見られた。
【0284】
なお、以上の実施例1における保護剤塗布装置と、ATR分析と解析の条件および解析結果と、画像評価結果と、保護剤バーとを、下記の表7〜10にまとめて示す。
【0285】
【表7】
【0286】
【表8】
【0287】
【表9】
【0288】
【表10】
【実施例3】
【0289】
次に本発明の前述の実施形態2で説明した本発明に係る保護剤塗布装置の具体的な別の実施例を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0290】
図4は本実施例の評価に用いる保護剤塗布装置の構成の概略を示す図であり、図1の保護剤塗布装置2と同様の構成を簡略化して示したものである。この装置で使用する感光体の製造は、以下のように行った。
【0291】
(感光体)
直径30mmのアルミニウムドラム(導電性支持体)上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を、その順に塗布した後、乾燥し、3.6μmの下引き層、約0.14μmの電荷発生層、22μmの電荷輸送層、約3.5μmの保護層からなる感光体を作製した。このとき、保護層の塗工はスプレー法により行ない、それ以外は浸漬塗工法により行なった。保護層の詳細については以下の通りとした。
【0292】
(保護層)
Z型ポリカーボネート:10部
トリフェニルアミン化合物(前記構造式1):7部
アルミナ微粒子(粒径0.3μm):5部
テトラヒドロフラン:400部
シクロヘキサノン:150部
【0293】
使用する保護剤バーの製造は、以下のように行った。
(保護剤バー(31)の製造方法)
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を90重量部、TOPAS−TM(チコナ社製)を5重量部、トリステアリン酸ソルビタン(HLB:1.5)を5重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、160〜250℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
【0294】
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で88℃まで放冷後、アルミニウム製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バーを作成した。保護剤バーの底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0295】
感光体および保護剤バー(31)について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、図6のAおよびBと非常によく似たスペクトル(吸光度スペクトル)を得た。感光体で得られたスペクトルでは、3040cm-1にフェニル基に由来するピーク(ピークa2(3040cm-1))、が見られた。保護剤バー(31)で得られたスペクトルでは、2850cm-1および2920cm-1にメチレン基に由来するピーク(ピークb1(2850cm-1)、ピークb2(2920cm-1)が見られた。
ここで、感光体をATR測定する際は、感光体の感光層をカッターを用いて1cm×1cmの大きさでアルミニウム基盤から剥がし測定サンプルとした。
【0296】
[実施例3−1]
保護剤バー(31)の保護剤を感光体に塗布するため、ブラシ(2)(太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように保護剤塗布装置に装着し、ブラシ(2) は4.8Nのバネ圧で感光体に押し付け、感光体(1-1)および感光体(1-2)へ保護剤塗布を行なった(保護剤塗布装置(31))。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった。
保護剤塗布装置(31)を用いて120分間保護剤を塗布した感光体(1-2)をウルトラミクロトームを用いて薄くスライスし、TEM観察を行なったところ、TEM写真より、感光体上の保護剤の膜厚は25〜70nmであった。
【0297】
塗布時間の違う(15、120分)保護剤塗布後の感光体(1-1)および感光体(1-2)について、各塗布時間の感光体についてそれぞれサンプリングを行い、サンプルをそれぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、図6のCと大方類似のスペクトル(塗布時間120分)(吸光度スペクトル)を得た。
図6のCのスペクトルより、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb2)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa2)の比(Sb2/Sa2)をとることを試みた。ここで2920cm-1のピークは保護剤バー(31)に由来するピークであるが、このピークの近くに感光体に由来するピークが存在し、お互いのピークが重なってしまっているが、ピークb2(2920cm-1)は感光体由来のピークより充分大きいため、保護剤塗布後の感光体で得られたスペクトルと図6のAの感光体のみのスペクトルの差スペクトルをとる工程は削除した。塗布量の指標(Sb2/Sa2)は13.5であった。また、同様にして塗布時間15分における塗布量の指標(Sb2/Sa2)を求めると9.8であった。
ここで、それぞれのピークの面積を求める際のバックグラウンドの始点および終点の波数および面積の積分範囲を下記の表11に示す。
【0298】
【表11】
【0299】
[実施例3−2]
感光体(2-1)および感光体(2-2)、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(31)を4.8Nのバネ圧でブラシに押し付けて、15分および120分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(32))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例3−1のようにSb2/Sa2を算出したところ、15分塗布後でSb2/Sa2=8.0、120分塗布後でSb2/Sa2=18.6であった。
【0300】
(保護剤バー(32)の製造方法)
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を55重量部、トリステアリン酸ソルビタン(HLB:1.5)を25重量部、ノルマルパラフィン(平均分子量640)を20重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、180℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
【0301】
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で90℃まで放冷後、アルミニウム製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バーを作成した。保護剤バーの底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0302】
[比較例3−1]
感光体(3-1)および感光体(3-2)、ブラシ(1)(太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり3万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(31)を2Nのバネ圧でブラシに押し付け、15分および120分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(33))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例3−1のようにSb2/Sa2を算出したところ、15分塗布後でSb2/Sa2=6.3、120分塗布後でSb2/Sa2=8.1であった。
【0303】
[比較例3−2]
感光体(4-1)および感光体(4-2)、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(32)を6Nのバネ圧でブラシに押し付け、15分および120分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(34))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例3−1のようにSb2/Sa2を算出したところ、15分塗布後でSb2/Sa2=13.2、120分塗布後でSb2/Sa2=38.9であった。
【0304】
[実施例3−3]
感光体(5-1)および感光体(5-2)、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(32)を3Nのバネ圧でブラシに押し付け、15分および120分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(35))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例3−1のようにSb2/Sa2を算出したところ、15分塗布後でSb2/Sa2=9.4、120分塗布後でSb2/Sa2=25.5であった。
【0305】
[画像評価結果]
画像形成装置として、IPSIO CX400(タンデム型カラー画像形成装置、(株)リコー製)を用い、この画像形成装置のブラックのプロセスカートリッジ(1) には実施例3−1で用いた保護剤塗布装置(31)と同じ構成となるように、各部材(保護剤バー、ブラシ、押圧力付与バネ)を組み込み、シアンのプロセスカートリッジ(1) には比較例3−1で用いた保護剤塗布装置(33)と同じ構成となるように、各部材を組み込み、マゼンタのプロセスカートリッジ(1) には比較例3−2で用いた保護剤塗布装置(34)と同じ構成となるように、各部材を組み込み、感光体の線速を125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1450Hz、振幅1100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。尚、各プロセスカートリッジには、図1の保護材塗布装置においては組み込んでいなかった帯電ローラを組み込んだ。また、いずれのプロセスカートリッジにおいても、実施例3−1〜3−3および比較例3−1〜3−2で用いたものと同じ感光体で新品の感光体を組み込んだ。
【0306】
ブラック、シアンおよびマゼンタのプロセスカートリッジついて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ出力して評価したところ、ブラック、シアンおよびマゼンタから出力された画像は高画質画像であった。
続いて、ブラック、シアンおよびマゼンタのプロセスカートリッジを用いて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ計50000枚出力したところ、ブラックのプロセスカートリッジから出力された画像は高画質画像であったが、シアンのプロセスカートリッジから出力された画像には白スジが見られ、マゼンタのプロセスカートリッジから出力された画像には黒スジが見られた。
【0307】
続いて、同様の評価を、実施例2−2および比較例2−1の保護剤塗布装置と同じ構成のプロセスカートリッジを用いて行なった。
画像形成装置として、IPSIO CX400(タンデム型カラー画像形成装置、(株)リコー製)を用い、この画像形成装置のブラックのプロセスカートリッジ(2) には実施例3−2で用いた保護剤塗布装置(32)と同じ構成となるように、各部材(保護剤バー、ブラシ、押圧力付与バネ)を組み込み、シアンのプロセスカートリッジ(2) には比較例3−3で用いた保護剤塗布装置(35)と同じ構成となるように、各部材を組み込み、感光体の線速を125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1450Hz、振幅1100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。尚、各プロセスカートリッジには、図1の保護材塗布装置においては組み込んでいなかった帯電ローラを組み込んだ。また、いずれのプロセスカートリッジにおいても、実施例3−1〜3−3および比較例3−1〜3−2で用いたものと同じ感光体で新品の感光体を組み込んだ。
【0308】
ブラックおよびシアンのプロセスカートリッジついて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ出力して評価したところ、ブラックおよびシアンから出力された画像は高画質画像であった。
続いて、ブラックおよびシアンのプロセスカートリッジを用いて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ計50000枚出力したところ、ブラックのプロセスカートリッジから出力された画像は高画質画像であったが、シアンのプロセスカートリッジから出力された画像には白スジが見られた。
【0309】
なお、以上の実施例3における保護剤塗布装置と、ATR分析と解析の条件および解析結果と、画像評価結果と、保護剤バーとを、下記の表12〜15にまとめて示す。
【0310】
【表12】
【0311】
【表13】
【0312】
【表14】
【0313】
【表15】
【図面の簡単な説明】
【0314】
【図1】本発明の保護層形成装置を備えた画像形成部の要部構成例を示す概略要部構成図である。
【図2】本発明の画像形成装置に具備されるプロセスカートリッジを用いた画像形成部(画像形成ステーション)の構成例を説明するための概略断面図である。
【図3】本発明の保護層形成装置を具備する画像形成装置100の構成例を示す概略構成図である。
【図4】評価時に用いる保護層形成装置の構成例を示す概略構成図である。
【図5】評価用の出力画像の例を示す図である。
【図6】保護剤塗布前の感光体表面のIRスペクトルA(吸光度スペクトル)と、保護剤単独のIRスペクトルB(吸光度スペクトル)と、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の感光体のIRスペクトルC(吸光度スペクトル)と、差スペクトルDを示す図である。
【図7】IRスペクトルA〜Cに存在するピークの例を示す模式図である。
【図8】IRスペクトルA〜Cに存在するピークの別の例を示す模式図である。
【図9】IRスペクトルA〜Cに存在するピークの別の例を示す模式図である。
【図10】IRスペクトルA〜Cに存在するピークの別の例を示す模式図である。
【図11】IRスペクトルA〜Cに存在するピークの別の例を示す模式図である。
【図12】IRスペクトルA〜Cに存在するピークの別の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0315】
1(1Y,1M,1C,1K):感光体(像担持体)
2:保護剤塗布装置
3:帯電装置(帯電手段)
4:クリーニング装置(クリーニング手段)
5:現像装置(現像手段)
6:一次転写装置(転写手段)
7:中間転写媒体(または転写媒体)
8:潜像形成装置
9:ベルトクリーニング装置
10:画像形成部(画像形成ステーション)
11:プロセスカートリッジ
12:二次転写装置
13:搬送装置
14:定着装置
15:搬送装置
16:排紙ローラ
17:排紙トレイ
21:保護剤バー
22:保護剤供給部材
22a:ブラシ状部材(ブラシ)
22b:支持体
23:押圧力付与機構
24:保護層形成機構
24a:ブレード状部材
24b:押圧部材
25:保護剤バー支持ガイド
41:クリーニング部材(ブレード)
42:クリーニング押圧機構
51:現像ローラ
52,53:攪拌搬送スクリュー
100:画像形成装置
110:画像形成装置本体(プリンタ部)
120:原稿読取部(スキャナ部)
130:原稿自動給紙装置(ADF)
200:給紙部
201a〜201d:給紙カセット
202:給紙ローラ
203:分離ローラ
204,205,206:搬送ローラ
207:レジストローラ
210:両面用搬送装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを用いた画像形成装置、またはこの画像形成装置に装備されるプロセスカートリッジに用いられ、像担持体の表面をクリーニングブレードとの摩擦力等の力学的ストレスや、帯電による電気的ストレス等から保護するための保護剤を前記像担持体に塗布する保護剤塗布装置に関する。
また、本発明は、その保護剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ、あるいは、前記保護剤塗布装置またはプロセスカートリッジを備えた複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等の画像形成装置に関する。
さらに本発明は、像担持体に保護剤を塗布する保護剤塗布装置について、保護剤塗布量の良否を判定するための保護剤塗布装置の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置においては、像担持体(例えば光導電性の感光体)に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を施すことにより画像形成が行われる。帯電工程で生成し感光体表面に残る放電生成物および転写工程後に感光体表面に残る残トナーまたはトナー成分はクリーニングプロセスを経て除去される。
【0003】
一般に用いられるクリーニング方式としては、安価で機構が簡単でクリーニング性に優れたゴムやウレタンからなるクリーニングブレードが用いられている。しかし、クリーニングブレードは感光体に押し当てて感光体表面の残留物を除去するため、感光体表面とクリーニングブレード間の摩擦によるストレスが大きく、クリーニングブレードの磨耗や、特に有機感光体(OPC)においては感光体表面層の磨耗が生じ、クリーニングブレードおよび有機感光体の寿命を短くするという問題がある。
【0004】
また、画像形成装置の高画質化の要求に対して、画像形成に用いられるトナーは小粒径のものになってきている。小粒径のトナーを用いた画像形成装置では、残トナーがクリーニングブレードをすり抜けていく割合が多くなり、特にクリーニングブレードの寸法精度、組み付け精度が十分でなかったり、クリーニングブレードが部分的に振動した場合には、トナーのすり抜けが激しくなってしまい、高画質の画像形成を妨げていた。
そのため、有機感光体の寿命を延ばし長期に渡って高画質を保持するには、摩擦による部材の劣化を低減し、クリーニング性を向上させる必要がある。
【0005】
この要求に対して、実際には潤滑剤を感光体に供給し、クリーニングブレードで潤滑剤の皮膜を形成する方法などが採用されている。感光体への潤滑剤の塗布により、感光体表面が潤滑剤によって保護されるため、クリーニングブレードと感光体の摩擦によって生じる感光体磨耗や感光体を帯電するときに生じる放電のエネルギーによる感光体の劣化が低減される。また、潤滑剤の塗布により、感光体表面の潤滑性が上がるためクリーニングブレードが部分的に振動する現象が低減され、すり抜けトナーの量が減少する。しかし、このような潤滑性や保護性は潤滑剤の塗布量が少なすぎると、感光体磨耗、AC帯電による感光体劣化、トナーすり抜けに充分な効果を発揮できないため、潤滑剤の塗布量を規定しておく必要があった。
【0006】
潤滑剤塗布量の評価について、一般的に潤滑剤として用いられるステアリン酸亜鉛を用いた場合には、感光体表面に塗布されたステアリン酸亜鉛の量を、感光体表面のXPS(X−ray photoelectron spectroscopy)分析により検出される全元素に対する亜鉛元素の割合で評価する方法が用いられてきた(特許文献1(特開2005−17469公報)、特許文献2(特開2005−249901公報)、特許文献3(特開2005−004051公報)、特許文献4(特開2004−198662公報)等参照)。
XPSではサンプル極表面の水素以外の元素全てを検出するから、XPSを用いてステアリン酸亜鉛が塗布された有機感光体表面を分析すると、ステアリン酸亜鉛の被覆率が増えるにつれて、有機感光体の持つ元素比率からステアリン酸亜鉛の持つ元素比率に近づき、ステアリン酸亜鉛の被覆率が100%になると元素比率はステアリン酸亜鉛の元素比率と理論的に一致し、検出される亜鉛量は飽和してしまう。すなわち、ステアリン酸亜鉛(C36H70O4Zn)が感光体表面全体を全て覆っている場合、ステアリン酸亜鉛(C36H70O4Zn)の分子中の水素以外の元素比より、XPSにより検出される全元素に対する、亜鉛元素の割合は理論上では2.44%となる。
【0007】
しかし、用いられる潤滑剤によっては、このような評価方法を用いる事ができないものもある。すなわち、ステアリン酸亜鉛のような金属を含有する保護剤では、XPS分析やXRF(X−ray Flourescence)分析により金属量から被覆率や塗布量を求めることができるが、パラフィンのような金属を含有しない単純な構造の保護剤を用いた場合には、XPS分析やXRF分析において金属が検出されないため、感光体上に塗布されている保護剤の量を評価することは難しかった。また、ステアリン酸亜鉛のような金属を含有する保護剤では、塗布量を求める方法としてICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析により、金属元素から塗布量を追うことができるが、パラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合には、ICP発光分光分析による塗布量の評価をすることはできなかった。
【0008】
また、有機物を分析する方法としてATR(Attenuated Total Reflection)法が知られている(特許文献5(実用新案登録第2597515号公報)参照)。ATR法は、赤外吸収スペクトルを測定する方法の一つで、全反射を利用するもので、高い屈折率を持つATRプリズムを試料に密着させ、ATRプリズムを通して赤外光を試料に照射し、ATRプリズムからの出射光を分光分析する。
ATRプリズムと試料との屈折率の関係からある角度以上の条件で赤外光をプリズムに入射させると、赤外光はATRプリズムから出ず、ATRプリズムと試料との接触面で全反射を起こすが、その際、赤外光が僅かの距離だけ試料側に滲みだすので、試料で赤外光の吸収があれば反射光が減衰し、試料の吸収スペクトルを得ることができる。
【0009】
ATR法は、ATRプリズムと接触したごく薄い試料部分の吸収スペクトルを測定することができるため、厚い試料や透過性の低い試料であっても、ATRプリズムと密着させることができれば測定できるという利点を備えている。
このATR法を用いると、赤外光の吸収が起こる波数より官能基がわかるため、ATR法は定性分析によく用いられるが、試料を押さえる圧力によって、吸収スペクトルのピーク強度が変化するため、基本的に定量分析には用いられていなかった。
【0010】
次に、近年の帯電工程においては、直流電圧に交流電圧を重畳して帯電する帯電ローラ等によるいわゆるAC帯電が用いられるようになってきた。このAC帯電は、感光体の帯電電位の均一性が高い、オゾンや窒素酸化物(NOx)等の酸化性ガスの発生が少ない、装置を小型化できる等の優れた性能を有しているが、その反面、印加する交流電圧の周波数に応じ、1秒間に数百〜数千回もの正負放電が帯電部材と感光体の間で繰り返されるため、感光体はこの多数の放電を受けて表面層の劣化が加速される。この劣化に対して、感光体に金属石鹸等の潤滑剤を塗布しておくとAC帯電のエネルギーは、先ず潤滑剤に吸収され、感光体には到達し難くなるため、感光体は保護される。
【0011】
このように、感光体に金属石鹸等の潤滑剤を塗布した場合、AC帯電のエネルギーにより金属石鹸は分解していくが、金属石鹸は完全に分解し、消失してしまうのではなく、分子量の低い脂肪酸が生成し、感光体とクリーニングブレードとの摩擦力が高くなり、また脂肪酸とともに、トナー成分が感光上に膜状に付着されやすくなってしまい、画像の解像度が低下しやすくなると供に、感光体の磨耗が生じ、濃度ムラにつながりやすいという問題があった。そのため、脂肪酸が生成しても、直ぐに金属石鹸で感光体表面を覆ってしまえるよう、大量の金属石鹸を感光体上に供給するようにしている。
しかし、感光体上に大量の金属石鹸を供給しても、実際に感光体表面に付着するのは、ごく一部であり、感光体上に供給された金属石鹸のほとんどは、トナーと供に転写されたり、廃トナーと供に除去されたりしてしまうため、金属石鹸が早期に枯渇してしまい、感光体の寿命より前に、金属石鹸を新しいものに変えないといけなくなっていた。
【0012】
そこで、金属石鹸に変わる保護剤として、例えば、特許文献6(特開2005−274737公報)では、炭素数20以上70以下の高級アルコールを主成分とする潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を用いることにより、ブレードニップ部先端に高級アルコールが不定形粒子として滞留し、また、適度な像担持体表面への濡れ性を有することから、潤滑性能の持続性が発現するとしている。
【0013】
しかしながら、高級アルコールによる潤滑剤では、感光体表面に濡れやすく潤滑剤としての効果は期待できるが、感光体上に吸着した高級アルコール分子、一分子当りの占める吸着占有面積が広くなりがちであり、感光体の単位面積当たりに吸着する分子の密度(単位面積当りの吸着分子重量)が小さいため、上述のAC帯電による電気的ストレスから感光体を保護することが難しい。
【0014】
また、特許文献7(特開2002−97483公報)では、特定のアルキレンビスアルキル酸アミド化合物の粉体を潤滑性分として使用することにより、クリーニングブレードと像担持体が当圧接される界面に粉体微粒子が存在するため、円滑な潤滑作用が長期間にわたって保持できるとしている。
しかしながら、分子中に窒素原子を含む構成の潤滑剤では、潤滑剤自体が上述のAC帯電による電気的ストレスを受けた場合に、分解生成物として窒素酸化物やアンモニウム含有化合物に類するイオン解離性の化合物を生成し、潤滑層内に取り込まれてしまい、高湿度下で潤滑層が低抵抗化し、画像ボケを発生させることがある。
【0015】
一方、パラフィンを主成分とする保護剤は、AC帯電による電気的ストレスから感光体を保護し、感光体とクリーニングブレードとの摩擦力を低減することができ、また、廃トナーのクリーニング性が極めて良好になることが分かってきた。特に、パラフィンを主成分とする保護剤は、AC帯電によるストレスで酸化されたとしても脂肪酸の生成は少なく、感光体とクリーニングブレードとの間の摩擦力の変化が非常に少なく、大変好ましい。
【0016】
しかしながら、パラフィンを主成分とする保護剤を用いて画像形成を繰り返した場合、感光体とクリーニングブレードの磨耗によると思われる異常画像が発生する場合があった。特に、保護剤塗布装置を製造するロットによって、異常画像の発生確率が大きく異なることがあった。
そこで、その異常画像が発生している場所と発生していない場所とを詳細に調査したところ、スジ状の異常画像が発生した場所と異常画像が発生していない場所では、感光体の膜厚が少なくなっていたり、トナー成分が多く付着していることが分かったが、いかなる原因で、このような現象が起こるのかは分からなかった。
【0017】
また、金属石鹸に変わる保護剤として、パラフィンが有効であることは先に述べたが、パラフィンのような金属を含有しない単純な構造の保護剤を用いた場合、前述したように、XPS分析やXRF分析において金属が検出されないため、感光体上に塗布されている保護剤の量を評価することは難しかった。また、金属石鹸のような金属を含有する保護剤では、塗布量を求める方法としてICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析により、金属元素から塗布量を追うことができるが、パラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合には、前述したように、ICP発光分光分析による塗布量の評価をすることはできなかった。
【0018】
【特許文献1】特開2005−017469公報
【特許文献2】特開2005−249901公報
【特許文献3】特開2005−004051公報
【特許文献4】特開2004−198662公報
【特許文献5】実用新案登録第2597515号公報
【特許文献6】特開2005−274737公報
【特許文献7】特開2002−97483公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、感光体等の像担持体の保護剤に、パラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合でも、像担持体上に塗布されている保護剤の量を評価できるような分析方法を用い、該分析方法により保護剤の塗布量の良否を判定することにより、像担持体への保護剤の塗布を良好に行うことができ、異常画像の発生を防止することができる保護剤塗布装置と、その保護剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、感光体等の像担持体の保護剤に、パラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合でも、像担持体上に塗布されている保護剤の量を評価できるような分析方法を提供し、保護剤塗布装置の良否を判定することを可能とする保護剤塗布装置の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するため、本発明では以下のような手段を採っている。
本発明の第1の手段は、像担持体の表面に保護剤を塗布する保護剤塗布装置において、赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法において、ATRプリズムとしてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定を行い得られる吸光度スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)について、保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルをIRスペクトルA、保護剤単独のIRスペクトルをIRスペクトルBとすると、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の像担持体のIRスペクトル(IRスペクトルCとする)中で、前記IRスペクトルBに存在せず、前記IRスペクトルAに存在する1770cm-1に見られるピーク(ピークa1とする)のピーク面積(Sa1)と、前記IRスペクトルAに存在せず、前記IRスペクトルBに存在する2850cm-1に見られるピーク(ピークb1とする)のピーク面積(Sb1)の比(Sb1/Sa1)より、前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価したとき、前記保護剤を5分塗布した後の前記像担持体におけるSb1/Sa1の値が0.02以上、150分塗布した後の前記像担持体におけるSb1/Sa1の値が0.85以下となることを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の手段は、像担持体の表面に保護剤を塗布する保護剤塗布装置において、赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法において、ATRプリズムとしてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定を行い得られる吸光度スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)について、保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルをIRスペクトルA、保護剤単独のIRスペクトルをIRスペクトルBとすると、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の像担持体のIRスペクトル(IRスペクトルCとする)中で、前記IRスペクトルBに存在せず、前記IRスペクトルAに存在する3040cm-1に見られるピーク(ピークa2とする)のピーク面積(Sa2)と、前記IRスペクトルAに存在せず、前記IRスペクトルBに存在する2920cm-1に見られるピーク(ピークb2とする)のピーク面積(Sb2)の比(Sb2/Sa2)より、前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価したとき、前記保護剤を15分塗布した後の前記像担持体におけるSb2/Sa2の値が6.5以上、120分塗布した後の前記像担持体におけるSb2/Sa2の値が38以下となることを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の手段は、第1または第2の手段の保護剤塗布装置において、前記保護剤は、パラフィンを主体とする保護剤であることを特徴とする。
また、本発明の第4の手段は、第3の手段の保護剤塗布装置において、前記保護剤は、パラフィンを50〜95重量%含有していることを特徴とする。
【0023】
本発明の第5の手段は、第1〜第4のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置において、前記保護剤としてパラフィンを主体とする保護剤バーを用い、該保護剤バーの保護剤を掻き取るブラシを有し、該ブラシには、金属製の芯金上に直径が28〜42μmの単繊維を1平方インチ当たり5万〜60万本、静電植毛することにより製造したブラシを用いており、前記保護剤バーの保護剤を前記ブラシにより掻き取り、そのブラシを像担持体に押し当てることにより、前記パラフィンを主体とする保護剤を像担持体に供給し、前記像担持体にブレードを押し当てることにより、前記像担持体上に保護剤を固定することを特徴とする。
【0024】
本発明の第6の手段は、プロセスカートリッジであって、像担持体と、第1〜第5のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置を備えたことを特徴とする。
また、本発明の第7の手段は、第6の手段のプロセスカートリッジにおいて、前記像担持体と前記保護剤塗布装置に加えて、前記像担持体を帯電する帯電手段を備えたことを特徴とする。
さらに本発明の第8の手段は、第7の手段のプロセスカートリッジにおいて、前記像担持体は感光体であり、前記帯電手段は交流(AC)帯電を行うことを特徴とする。
【0025】
本発明の第9の手段は、画像形成装置であって、画像形成部に、像担持体と、第1〜第5のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置を備えたことを特徴とする。
また、本発明の第10の手段は、第9の手段の画像形成装置において、前記像担持体は感光体であり、該感光体を帯電する帯電手段を備え、該帯電手段は交流(AC)帯電を行うことを特徴とする。
【0026】
本発明の第11の手段は、画像形成装置であって、画像形成部に、第6〜第8のいずれか1つの手段のプロセスカートリッジを備えたことを特徴とする。
【0027】
本発明の第12の手段は、像担持体の表面に保護剤塗布装置を用いて保護剤を塗布した後の前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価する保護剤塗布装置の評価方法において、赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法により測定される吸光度スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)について、保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルAと保護剤単独のIRスペクトルBを比較したとき、前記IRスペクトルAには、前記IRスペクトルBに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有し、前記IRスペクトルBには、前記IRスペクトルAに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有しており、前記保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の前記像担持体のIRスペクトルC中の、前記IRスペクトルBに存在せず、前記IRスペクトルAに存在する任意の一つのピーク(ピークaとする)のピーク面積(Sa)と、前記IRスペクトルAに存在せず、前記IRスペクトルBに存在する任意の一つのピーク(ピークbとする)のピーク面積(Sb)の比(Sb/Sa)より、前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価することを特徴とする。
【0028】
本発明の第13の手段は、第12の手段の保護剤塗布装置の評価方法において、赤外吸収スペクトル法のATR法で、赤外光をサンプルに照射した際の赤外光の強度がサンプル表面における強度の1/eになる距離を示すもぐり込み深さとした場合、保護剤の膜厚が潜り込み深さに対して0.4〜85%であることを特徴とする。
また、本発明の第14の手段は、第12または第13の手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記ピークaが検出される赤外光の波長でのもぐり込み深さが、前記ピークbが検出される赤外光の波長でのもぐり込み深さの50〜170%であることを特徴とする。
【0029】
本発明の第15の手段は、第12〜第14のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記保護剤はパラフィンを50重量%以上含有しており、前記ピークbはメチレン基に由来するピークであることを特徴とする。
また、本発明の第16の手段は、第12〜第15のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記保護剤はメチレン基を有する有機化合物を含有しており、前記ピークbはメチレン基に由来するピークであることを特徴とする。
【0030】
本発明の第17の手段は、第12〜第16のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記像担持体表面にフェニル基を有する有機化合物を含有していて、前記ピークaはフェニル基に由来するピークであることを特徴とする。
また、本発明の第18の手段は、第12〜第17のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記像担持体表面にカーボネート結合を有する有機化合物を含有しており、前記ピークaはカーボネート結合に由来するピークであることを特徴とする。
【0031】
本発明の第19の手段は、第12〜第18のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記保護剤を前記像担持体に塗布していって一定の塗布時間以内で、前記保護剤の塗布量の指標である面積比(Sb/Sa)が、閾値以下となるときに、前記保護剤塗布装置を合格とすることを特徴とする。
【0032】
本発明の第20の手段は、第12〜第19のいずれか1つの手段の保護剤塗布装置の評価方法において、前記保護剤を塗布する像担持体は、プロセスカートリッジあるいは画像形成装置に用いられる感光体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、感光体等の像担持体の保護剤に、パラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合でも、像担持体上に塗布されている保護剤の量を評価できるような分析方法を用い、該分析方法により保護剤の塗布量の良否を判定することにより、像担持体への保護剤の塗布を良好に行うことができ、異常画像の発生を防止することができる保護剤塗布装置を提供することができる。
また、本発明によれば、その保護剤塗布装置を備えることにより、異常画像の発生を防止することができるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することができる。
さらに本発明の保護剤塗布装置の評価方法によれば、保護剤にパラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合でも、感光体等の像担持体上に塗布されている保護剤の量を評価できるような分析方法を用い、保護剤塗布装置の良否を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
[実施形態1]
まず、本発明に係る保護剤塗布装置の評価方法の実施形態を説明する。
本発明者らは、保護剤にパラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合でも、感光体上に塗布されている保護剤の量を把握できないか調べるため、ATR(Attenuated Total Reflection)法を用いて感光体上に塗布された保護剤の分析を行なった。ATR法においては、用いるプリズムや入射角の条件によって赤外光の侵入深さが変化するため、同じサンプルを計測しても得られるスペクトルは異なり、用いるプリズムや入射角条件によって、感光体に由来するピークのみしか検出されなかったり、保護剤のみのピークしか検出されなかったり、感光体由来のピークと保護剤由来のピークが両方検出されたりと様々であった。様々な条件のうち、用いるプリズムや入射角を細かく変化させて、感光体由来のピークと保護剤由来のピークが両方検出される条件において、得られたスペクトルから、感光体上の保護剤の塗布量を評価できないか鋭意検討を行なった。
【0035】
ここで、ATR法では、試料を押さえる圧力によって試料の測定部が変形し、スペクトルの強度比が変化してしまうため、スペクトルの強度を直接追うことができない。そのため、測定においてサンプルのセット時に、サンプルを固定する治具とプリズムの間のギャップを一定に保つ事ができるようにする、または、押さえつける圧力を一定にした場合、一定の条件でのIRスペクトルが得られると考え、サンプルのセット時に、サンプルを押さえつける治具とプリズムの間のギャップを一定に保つ事ができるようにして、保護剤塗布装置で塗布時間を変化させたサンプルを測定した。これにより、得られたそれぞれのスペクトルについて、スペクトル中のピークの帰属を行ない、感光体由来のピークの面積に対する保護剤由来のピークの面積の比をとってみたところ、塗布時間の増加に伴ない面積の比が次第に増加していくことがわかった。
【0036】
そこで本発明に係る評価方法は、感光体の表面に保護剤塗布装置を用いて保護剤を塗布した後の感光体上の保護剤の塗布量を評価する方法において、赤外吸収スペクトル法のATR法により測定される、保護剤塗布前の感光体表面のIRスペクトルAと保護剤単独のIRスペクトルBを比較したとき、IRスペクトルAには、IRスペクトルBに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有し、IRスペクトルBには、IRスペクトルAに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有しており、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の感光体のIRスペクトルC中のIRスペクトルBに存在せず、IRスペクトルAに存在する任意の一つのピーク(ピークa)のピーク面積(Sa)と、IRスペクトルAに存在せず、IRスペクトルBに存在する任意の一つのピーク(ピークb)のピーク面積(Sb)の比(Sb/Sa)より、感光体上の保護剤の塗布量を評価する方法である。
【0037】
IRスペクトルC中のピークについて、IRスペクトルBに存在せず、IRスペクトルAに存在する任意の一つのピーク(ピークa)とは、図7に示す[模式図1−1]のような状態で、ピークaが検出される波数に、IRスペクトルBでピークが検出されない状態を示す。例えば、図8に示す[模式図1−2]で、ピークMはIRスペクトルBで存在するピークであり、面積比算出に用いるピークには適さない。
ピークaは、より好ましくは、IRスペクトルBに存在するピークと重ならないピークである。すなわち、ピークaが図9に示す[模式図1−3]のような状態で、IRスペクトルBに存在するピークの裾が、ピークaのピークの裾と重ならない状態が好ましい。
【0038】
図7に示す[模式図1−1]のように、ピークaが、IRスペクトルBに存在するピークと重なる場合は、IRスペクトルCとIRスペクトルBの差スペクトルをとる必要がある。差スペクトルを用いることによって、IRスペクトルBに存在するピークの影響を受けない指標(面積比(Sb/Sa))を求めることができる。
【0039】
ただし、ピークaが、IRスペクトルBに存在するピークと重なっている場合でも、図7に示す[模式図1−1]のように、ピークaの面積がピークaと重なっているピークの面積よりも充分大きい場合には、IRスペクトルCからIRスペクトルBを差し引く工程を省いてもよい。この差し引く工程を除くことで、工程が一つ減るため、指標(面積比(Sb/Sa))の算出がより簡単になり、精度も向上する。
【0040】
また、IRスペクトルAに存在せず、IRスペクトルBに存在する任意の一つのピーク(ピークb)とは、図10に示す[模式図2−1]のような状態で、ピークbが検出される波数に、IRスペクトルAでピークが検出されない状態を示す。例えば、図11に示す[模式図2−2]で、IRスペクトルB中のピークNは、IRスペクトルAに存在するピークであり、面積比算出に用いるピークには適さない。
【0041】
ピークbは、より好ましくは、IRスペクトルAに存在するピークと重ならないピークである。すなわち、ピークaが図12に示す[模式図2−3]のような状態で、IRスペクトルBに存在するピークの裾が、ピークaのピークの裾と重ならない状態が好ましい。
また、図10に示す[模式図2−1]のように、ピークaが、IRスペクトルBに存在するピークと重なる場合は、IRスペクトルCとIRスペクトルAの差スペクトルをとる必要がある。差スペクトルを用いることによって、IRスペクトルAに存在するピークの影響を受けない指標(面積比(Sb/Sa))を求めることができる。
【0042】
ただし、ピークbが、IRスペクトルAに存在するピークと重なっている場合でも、図10に示す[模式図2−1]のように、ピークbの面積がピークbと重なっているピークの面積よりも充分大きい場合は、IRスペクトルCからIRスペクトルAを差し引く工程を省いてもよい。この差し引く工程を除くことで、工程が一つ減るため、指標(面積比(Sb/Sa))の算出がより簡単になり、精度も向上する。
【0043】
IRスペクトルは、赤外光源のもつ光の波数(波長)に対する強度分布が、検体試料によってどう変化するかを見たものであり、通常は波長の逆数である波数(単位cm−1)を横軸とし、縦軸には、透過率(T)や吸光度(A)をとり、曲線として描かれる。透過率は、試料を透過したエネルギーと試料に入射したエネルギーとの比であり、吸光度は透過率の逆数の常用対数である。吸光度と試料濃度が比例関係にあること(Lambert-Beerの法則)はよく知られており、定量計算を行う場合は、吸光度スペクトルのピーク強度を利用するのが一般的である。なお、IRスペクトルのピーク強度は、透過率ではなく、定量性の良い吸光度を使用するのが好ましい。
【0044】
IRスペクトルを測定するための装置としては、分散型赤外分光光度計、フーリエ変換赤外分光光度計に大別され、時間効率・光量利用率・波数分解能・波数精度が高いことからフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)が現在の主流である。測定方法としては、通常の透過法の他に、種々の測定アクセサリが有り、試料の形態や知りたい情報に応じて選択することができる。種々の測定アクセサリの中でも、ATR法は、試料処理をほとんど行うことなくIRスペクトルを測定できることから、近年FT−IRの測定アクセサリとしてかなり普及している。
【0045】
このATR法においては、試料をATRプリズムに接触させて測定を行なうため、ATRプリズムと試料の接触状態によって、同じ試料を測定しても、ピーク強度はバラツクため定量は困難である。そこで近年では、接触状態を制御するために種々のアクセサリが普及してきており、アクセサリには、サンプルを固定する(押し付ける)ための治具とATRプリズムとの間のギャップを一定に保てるようにしたアクセサリや、サンプルにかける圧力が一定に保てるようにしたアクセサリ、サンプルにかける圧力用の圧力ゲージを持ち圧力が可変なアクセサリ等がある。
【0046】
これらのアクセサリを使うとピーク強度のバラツキは低減されるが、サンプルを固定する治具とプリズムの間のギャップを一定に保って、同じ試料について何度か測定を行なったところ、20%ほどのバラツキを持っていた。そのため、感光体上の保護剤の塗布量を見積もるためには、ピーク強度を直接追うのではなく、保護剤由来のピークの面積と感光体由来のピークの面積の比を指標として追うことで塗布量の見積もりを安定的に行なう事を可能とした。
【0047】
本発明において、保護剤の膜厚は、赤外吸収スペクトル法のATR法での赤外光のもぐり込み深さに対して0.4〜85%である。ここで、光は試料界面で反射するのではなく、ある深さだけ試料側に入り込んでから全反射している。赤外光のもぐりこみ深さは、赤外光をサンプルに照射した際、赤外光の強度がサンプル表面における強度の1/eになる距離と定義され、下記の式1で表される。式1より、赤外光が試料に入り込む深さは、入射角やATRプリズムの屈折率や波長によって異なり、入射角θが大きくなるほど、またATR結晶の屈折率が高くなるほど、測定波長が短くなるほど入り込む深さが小さく、より表面に近い情報がスペクトルに反映されることになる。
【0048】
dp=λ/2πn1[sin2θ−(n2/n1)2]1/2 ・・・(式1)
dp:もぐり込み深さ
n2およびn1:ATRプリズムおよび試料の屈折率
θ:入射角
λ:波長
【0049】
保護剤の膜厚に応じて、ATRプリズム、赤外光の入射角および指標として選ぶピークの波長は適宜選択されるが、その際、保護剤の膜厚が赤外光のもぐり込み深さの0.4〜85%、好ましくは1〜70%、更に好ましくは2〜60%になるようにATRプリズム、赤外光の入射角および指標として選ぶピークの波長は適宜選択される。
【0050】
保護剤の膜厚が、赤外光のもぐり込み深さに対して、85%以上では、ピークbのピーク面積(Sb)はほぼ一定の値で飽和し、ビークaのピーク強度は小さくなるためピークaの面積(Sa)の誤差が大きくなり、評価の指標となるSb/SaがSaの誤差の影響を大きく受けてしまうため好ましくない。
また、0.5%以下では、ビークaのピーク面積(Sa)はほぼ一定の値で飽和し、ピークbのピーク強度は非常に小さくなるため、ピークbの面積(Sb)の誤差が大きくなり、評価の指標となるSb/SaがSbの誤差の影響を大きく受けてしまうため好ましくない。
【0051】
ある特定のATRプリズムおよび赤外光の入射角の条件で保護剤を塗布した後の感光体のATR測定を行い、得られたスペクトルのある特定のピークの波長でのもぐり込み深さを保護剤の膜厚と比較した場合、保護剤の膜厚がそのもぐり込み深さに対して0.4〜85%の範囲から外れている場合、もぐり込み深さは、ATRプリズムの屈折率、赤外光の入射角およびピークの検出される波長によって上記の(式1)のように変化するため、もぐり込み深さを変化させて、保護剤の膜厚ともぐり込み深さとの比率を最適な値に調整する事が可能である。
すなわち、保護剤の厚みに対してもぐり込み深さが深すぎたり浅すぎたりする場合は、ATRプリズムの屈折率、赤外光の入射角および塗布量算出の指標として選ぶピークの波長を適宜選択する必要がある。
【0052】
指標として選ぶピークの波長は、用いる保護剤や感光体に依存するため、指標として選ぶピークの波長では、もぐり込み深さを調整できない場合もある。
すなわち、特定のATRプリズムおよび赤外光の入射角でATR法を用いて分析を行なった場合、保護剤および感光体中にいくつもの官能基が含まれていて、それぞれの官能基のピークが大きく異なる波長で検出される場合は、例えば、もぐり込み深さをより深くしたい時は波長が長いピークを選ぶ、といったように、選ぶピークによってもぐり込み深さの調整をすることはできるが、パラフィンのように、官能基が少なく、ピークが1本または数本しか検出されず、それぞれの官能基のピークの波長が大きく異ならない場合は、選ぶピークによってもぐり込み深さの調整をすることはできない。この場合は、ATRプリズムの屈折率、赤外光の入射角の組み合わせを変化させて、最適なもぐり込み深さを調整する必要がある。
【0053】
一般的に使用されているATRプリズムとしては、KRS−5(屈折率2.4)、ゲルマニウム(屈折率4.0)、AMTIR(屈折率2.5)、ケイ素(屈折率3.4)、セレン化亜鉛(屈折率2.4)、ダイヤモンド(屈折率2.4)等が挙げられる。
また、一般的にATR測定に用いられる赤外光の入射角は30〜85°である。
【0054】
本発明において、ピークaのもぐり込み深さは、ピークbのもぐり込み深さの50〜170%、好ましくは70〜140%、更に好ましくは80〜120%である。ピークaのもぐり込み深さが、ピークbのもぐり込み深さの50%以下である場合、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)の感度が小さくなるため好ましくない。ピークaのもぐり込み深さが、ピークbのもぐり込み深さの170%以上である場合も、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)の感度が小さくなるため好ましくない。
【0055】
本発明において、保護剤はパラフィンを50重量%以上含有していることが好ましく、さらに、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)の算出に用いるピークbとしては、メチレン基に由来するピークを用いることが好ましい。
パラフィンは感光体の保護効果に優れ、パラフィンとしてはノルマルパラフィン、イソパラフィンおよびシクロパラフィンが、不可反応が生じ難く化学的に安定であり、実使用の大気中で酸化反応を生じにくいため、経時安定性の面で好ましく用いられる。
【0056】
本発明において、該保護剤はパラフィンを50重量%以上、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上含有する。該保護剤中のパラフィンの割合が50重量%以下である場合、充分な感光体保護効果が見込めないため好ましくない。パラフィン以外の成分が感光体保護効果を持っている場合は、該保護剤中のパラフィンの割合は50重量%以下であってもよい。
【0057】
また、該保護剤中にパラフィンが50重量%以上含有される場合、メチレン基の検出される、2850±15cm-1および2925±15cm-1において、充分なピーク強度を持ったメチレンピークが検出されるため、ピークbをメチレン基のピークとして保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)をより安定した指標として用いる事ができるため好ましい。特に、パラフィンを主成分とした保護剤の場合、パラフィンは特徴的なIRピークが少なく、また、金属元素を含まない事から、FT−IR以外の分析によって塗布量を見積もることは困難なため、本発明における評価方法を用いて、塗布量を見積もることは非常に有益である。
【0058】
保護剤には、パラフィンの他に環状オレフィン・コポリマー(COC)及び/または両親媒性の有機化合物を含有させてもよい。
両親媒性の有機化合物は、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤やこれらの複合物等に類別される。
【0059】
また、該非イオン系界面活性剤は、下記の化学式(1)のアルキルカルボン酸と多価アルコール類とのエステル化物であることが好ましい。
CnH2n+1COOH 化学式(1)
(ただし、式中のnは15〜35の整数を示す)
【0060】
化学式(1)のアルキルカルボン酸として直鎖アルキルカルボン酸を用いることにより、両親媒性の有機化合物が吸着した像担持体表面で両親媒性の有機化合物の疎水性部分が配列しやすくなり、担持体表面への吸着密度が特に高くなるため、好ましい様態である。
【0061】
1分子中のアルキルカルボン酸エステルは疎水性を示し、その数が多い方が気中放電により発生した解離性物質が像担持体表面に吸着するのを防ぎ、かつ帯電領域での像担持体表面への電気的ストレスを小さくするためには有効である。しかしながら、アルキルカルボン酸エステルの占める割合が多くなりすぎると、親水性を示す多価アルコール類の部分が覆い隠されてしまい、像担持体の表面状態によっては十分な吸着性能が発現しないことがある。
よって、両親媒性の有機化合物の1分子当りの平均エステル結合数は、1から3個であることが好ましい。
【0062】
これら両親媒性の有機化合物の1分子当りの平均エステル結合数は、異なるエステル結合数を持つ複数の両親媒性の有機化合物から1種以上を選択し、混合して調整することもできる。
両親媒性の有機化合物としては、前述のように陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0063】
陰イオン系界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸アルキル塩、長鎖脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等の、疎水性部位の末端に陰イオン(アニオン)を有し、これと、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属イオン、アルミニウム、亜鉛等の金属イオン、アンモニウムイオン等が結合した化合物が挙げられる。
【0064】
陽イオン系界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等の、疎水性部位の末端に陽イオン(カチオン)を有し、これと、塩素、フッ素、臭素等や、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン、水酸イオン等が結合した化合物が挙げられる。
また、両イオン系界面活性剤の例としては、ジメチルアルキルアミンオキシド、N−アルキルベタイン、イミダゾリン誘導体、アルキルアミノ酸等が挙げられる。
【0065】
非イオン系界面活性剤の例としては、長鎖アルキルアルコール、アルキルポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルポリグルコキシド、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の、アルコール化合物、エーテル化合物、アミド化合物等が挙げられる。また、ラウリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の長鎖アルキルカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ヘキシトール等の多価アルコールやこれらの部分無水物とのエステル化合物も好ましい形態として挙げられる。
【0066】
エステル化合物のより具体的な例としては、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルチミン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、ジパルチミン酸グリセリル、トリパルチミン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、トリミスチン酸グリセリル、パルチミン酸ステアリン酸グリセリル、モノアラキジン酸グリセリル、ジアラキジン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、ステアリン酸ベヘン酸グリセリル、セロチン酸ステアリン酸グリセリル、モノモンタン酸グリセリル、モノメリシン酸グリセリル等のアルキルカルボン酸グリセリルやこの置換物、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノパルチミン酸ソルビタン、ジパルチミン酸ソルビタン、トリパルチミン酸ソルビタン、ジミリスチン酸ソルビタン、トリミスチン酸ソルビタン、パルチミン酸ステアリン酸ソルビタン、モノアラキジン酸ソルビタン、ジアラキジン酸ソルビタン、モノベヘン酸ソルビタン、ステアリン酸ベヘン酸ソルビタン、セロチン酸ステアリン酸ソルビタン、モノモンタン酸ソルビタン、モノメリシン酸ソルビタン等のアルキルカルボン酸ソルビタンやこの置換物等が挙げられるが、これに限るものではない。
また、これらの両親媒性有機化合物は単一の種類を用いても良いし、複数種類を併用しても良い。
【0067】
本発明において、該保護剤はメチレン基を有する有機化合物を含有していることが好ましく、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)の算出に用いるピークbとしては、メチレン基に由来するピークを用いることが好ましい。前述のように、該保護剤がパラフィンを主成分としている場合、パラフィンは特徴的なIRピークが少なく、また、金属元素を含まない事から、FT−IR以外の分析によって塗布量を見積もることは困難なため、本発明における評価方法を用いて、塗布量を見積もることは非常に有益であるが、パラフィンを主成分とした保護剤の他にも、メチレン基を有する有機化合物の塗布量の見積もりにも応用できる。
メチレン基を有する有機化合物としては、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、等の金属石鹸がある。
【0068】
本発明において、感光体表面にはフェニル基を有する有機化合物を含有されていることが好ましく、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)の算出に用いるピークaとしては、フェニル基に由来するピークであることが好ましい。
感光体表面にフェニル基を有する有機化合物を含有されている場合、フェニル基は、3055±25cm-1で検出されるため、メチレン基の検出される波数(cm-1)と波数が近いため、もぐり込み深さも、近い値になるため、より感度のよい安定した指標(Sb/Sa)を得ることができる。ここで、感光体表面に含有される物質としては、フェニル基に由来するピークと重なるピークを持つ物質が含まれないことが好ましい。
【0069】
本発明において、感光体表面にはカーボネート結合を有する有機化合物を含有されていることが好ましく、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)の算出に用いるピークaとしては、カーボネート結合に由来するピークであることが好ましい。
感光体表面にカーボネート結合を有する有機化合物が含有されていると、感光体強度が高くなるため好ましく、また、感光体表面にカーボネート結合を有する有機化合物を含有されている場合、カーボネート結合は、1760±20cm-1で検出されるため、メチレン基の検出される波数(cm-1)と波数が近いため、もぐり込み深さも、近い値になるため、より感度のよい安定した指標(Sb/Sa)を得ることができる。ここで、感光体表面に含有される物質としては、カーボネート結合に由来するピークと重なるピークを持つ物質が含まれないことが好ましい。
【0070】
本発明における保護剤塗布装置の評価方法は、該保護剤を感光体に塗布していって一定の塗布時間以内で、保護剤の塗布量の指標(Sb/Sa)が、閾値以下となるときに、保護剤塗布装置を合格とする。
【0071】
なお、本発明の評価方法の対象となる保護剤塗布装置としては、図4に示すように、ブレード、ブラシおよび保護剤バーを備えた構成であり、感光体とブラシは図示しないギヤ等の駆動機構で所定の速さで回転しており、ブラシは保護剤バーと接触して保護剤を掻き取り、続いてブラシの回転によって掻き取られた保護剤が感光体表面に供給され、保護剤が供給された感光体は、感光体の回転によりブレードを通過し、供給された保護剤がブレードによって引き伸ばされて保護剤が塗布される機構を持つ装置である。
この保護剤塗布装置の構成や評価方法の具体例、保護剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ、画像形成装置等については、以下の実施形態で説明する。
【0072】
[実施形態2]
本発明に係る保護剤塗布装置の実施形態を説明する。
本発明者らは、保護剤塗布装置を備えた画像形成形成装置において、異常画像が発生する原因を調べるため、異常画像が発生する場所と発生していない場所で、保護剤の存在量が異なるのではないかと考え、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて表面観察を行なった。表面観察の結果、保護剤が感光体上に付着している様子を観察することはできたが、SEM観察からは保護剤の存在量を見積もることはできず、異常画像が発生する原因は、はっきり分からなかった。
【0073】
次に本発明者らは、画像形成する画像により、異常画像の発生メカニズムが異なるのではないかと考え、さらに詳細に異常画像の発生する場所をSEM観察したところ、画像形成する画像の画像面積が少ないときには、トナー成分が感光体に付着して画像の解像度が低下することが多く、画像形成する画像の画像面積が大きいときには、感光体が部分的に磨耗し、異常画像が発生しやすいことが分かった。このように、異常画像の発生の仕方が、画像形成する画像によって異なるため、画像形成を行わず、感光体上に保護剤を塗布しただけの状態、すなわち保護剤塗布装置の保護剤塗布能力によって、異常画像が出たり出なかったりするのではないかと考え、感光体上の保護剤の塗布量を見積もることを試みた。
【0074】
ここで、前述の背景技術で述べたように、保護剤にパラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合は、感光体上に塗布されている保護剤の量を従来の方法により見積もることが困難である。そこで、金属を含有しない保護剤を分析する方法として、有機物の分析に用いられるフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)のATR法を用いることを試みた。
【0075】
ここで、FT−IRによって得られるIRスペクトルは、赤外光源のもつ光の波数(波長)に対する強度分布が、検体試料によってどう変化するかを見たものであり、通常は波長の逆数である波数(単位cm−1)を横軸とし、縦軸には、透過率(T)や吸光度(A)をとり、曲線として描かれる。透過率は、試料を透過したエネルギーと試料に入射したエネルギーとの比であり、吸光度は透過率の逆数の常用対数である。吸光度と試料濃度が比例関係にあること(Lambert-Beerの法則)はよく知られており、定量計算を行う場合は、吸光度スペクトルのピーク強度を利用するのが一般的である。なお、IRスペクトルのピーク強度は、透過率ではなく、定量性の良い吸光度を使用するのが好ましい。
【0076】
IRスペクトルを測定するための装置としては、分散型赤外分光光度計、フーリエ変換赤外分光光度計に大別され、時間効率・光量利用率・波数分解能・波数精度が高いことからフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)が現在の主流である。測定方法としては、通常の透過法の他に、種々の測定アクセサリが有り、試料の形態や知りたい情報に応じて選択することができる。種々の測定アクセサリの中でも、ATR法は、試料処理をほとんど行うことなくIRスペクトルを測定できることから、近年FT−IRの測定アクセサリとしてかなり普及している。
【0077】
ATR法は、赤外吸収スペクトルを測定する方法の一つで、全反射を利用するもので、高い屈折率を持つATRプリズムを試料に密着させ、ATRプリズムを通して赤外光を試料に照射し、ATRプリズムからの出射光を分光分析する。ATRプリズムと試料との屈折率の関係からある角度以上の条件で赤外光をプリズムに入射させると、赤外光はATRプリズムから出ず、ATRプリズムと試料との接触面で全反射を起こすが、その際、赤外光が僅かの距離だけ試料側に滲みだすので、試料で赤外光の吸収があれば反射光が減衰し、試料の吸収スペクトルを得ることができる。
【0078】
ATR法は、ATRプリズムと接触したごく薄い試料部分の吸収スペクトルを測定することができるため、厚い試料や透過性の低い試料であっても、ATRプリズムと密着させることができれば測定できるという利点を備えている。
また、ATR法を用いると、赤外光の吸収が起こる波数より、官能基がわかるため、ATR法は定性分析によく用いられるが、試料を押さえる圧力によって、吸収スペクトルのピーク強度が変化するため定量分析には、基本的には用いられていなかった。
【0079】
本発明者らは、ATR法を用いて定量分析を行なうのは困難と思われるが、おおまかな量でもよいので、感光体上の保護剤の塗布量を見積もれないものかと考え、保護剤が塗布された感光体についてATR測定を様々な条件で行い、そのスペクトルの比較および解析を行なった。
その結果、ATR法では、用いるプリズムや入射角の条件によって赤外光の侵入深さが変化するため、同じサンプルを計測しても得られるスペクトルは異なり、用いるプリズムや入射角条件によって、感光体に由来するピークのみしか検出されなかったり、ほぼ保護剤のみのピークしか検出されなかったり、感光体由来のピークと保護剤由来のピークが両方検出されたりと様々であった。様々な条件のうち、用いるプリズムや入射角を細かく変化させて、感光体由来のピークと保護剤由来のピークが両方検出される条件において、得られたスペクトルから、感光体上の保護剤の塗布量を評価できないか鋭意検討を行なった。
【0080】
ここで、ATR法では、試料を押さえる圧力によって強度比が変化してしまうため、スペクトルの強度を直接追うことができない。そのため、測定においてサンプルセット時に、サンプルを固定する治具とプリズムの間のギャップを一定に保つ事ができるようにする、または、押さえつける圧力を一定にした場合、一定の条件でのIRスペクトルが得られると考え、サンプルセット時に、サンプルを押さえつける治具とプリズムの間のギャップを一定に保つ事ができるようにして、保護剤塗布装置で塗布時間を変化させたサンプルを測定した。これにより、得られたそれぞれのスペクトルについて、スペクトル中のピークの帰属を行い、感光体由来のピークの面積に対する保護剤由来のピークの面積の比をとってみたところ、塗布時間の増加に伴ない面積の比が次第に増加していくことがわかった。
【0081】
次に、この感光体由来のピークの面積に対する保護剤由来のピークの面積の比である塗布量の指標を用いて、保護剤塗布装置で保護剤塗布した後の感光体上の保護剤の塗布量の良好な状態を規定できないか調べたところ、感光体由来のピークの面積に対する保護剤由来のピークの面積の比を好ましい範囲にすることで、高画質な画像形成を実現できることがわかり、本発明に到った。
【0082】
すなわち、本発明では、感光体の表面に保護剤としてパラフィンを塗布する保護剤塗布装置において、赤外吸収スペクトル法のATR法において、ATRプリズムとしてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定を行い得られるIRスペクトルについて、図6に示すように、保護剤塗布前の感光体表面のIRスペクトルをIRスペクトルA(吸光度スペクトル)、保護剤単独のIRスペクトルをIRスペクトルB(吸光度スペクトル)とすると、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の感光体のIRスペクトル(IRスペクトルC(吸光度スペクトル))中で、IRスペクトルBに存在せず、IRスペクトルAに存在する1770cm-1に見られるピーク(ピークa1)のピーク面積(Sa1)と、IRスペクトルAに存在せず、IRスペクトルBに存在する2850cm-1に見られるピーク(ピークb1)のピーク面積(Sb1)の比(Sb1/Sa1)より、感光体上の保護剤の塗布量を評価したとき、保護剤を5分塗布した後の感光体におけるSb1/Sa1の値が0.02以上、150分塗布した後の感光体におけるSb1/Sa1の値が0.85以下となることを特徴とする。ここで、ピークb1は保護剤由来のピークであるが、有機感光体のIRスペクトルにおいては、ほとんどの場合ピークb1付近にピークが検出されるため、Sb1の面積算出には差スペクトル(スペクトルCからスペクトルAを差し引いたスペクトル)中のb1の面積を用いた。
【0083】
また、本発明では、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の感光体のIRスペクトル(IRスペクトルC(吸光度スペクトル))中で、IRスペクトルBに存在せず、IRスペクトルAに存在する3040cm-1に見られるピーク(ピークa2)のピーク面積(Sa2)と、IRスペクトルAに存在せず、IRスペクトルBに存在する2920cm-1に見られるピーク(ピークb2)のピーク面積(Sb2)の比(Sb2/Sa2)より、感光体上の保護剤の塗布量を評価したとき、保護剤を15分塗布した後の感光体におけるSb2/Sa2の値が6.5以上、120分塗布した後の感光体におけるSb2/Sa2の値が38以下となることを特徴とする。
【0084】
ここで、赤外光は試料界面で反射するのではなく、ある深さだけ試料側に入り込んでから全反射しているが、赤外光のもぐりこみ深さが、赤外光をサンプルに照射した際、赤外光の強度がサンプル表面における強度の1/eになる距離と定義され、赤外光のもぐりこみ深さは、入射角やATRプリズムの屈折率や波長によって異なり、入射角θが大きくなるほど、またATR結晶の屈折率が高くなるほど、測定波長が短くなるほど入り込む深さが小さく、より表面に近い情報がスペクトルに反映される。
【0085】
本発明において、感光体上の保護剤の分析には、ATR法を用い、ATRプリズムとして、屈折率が大きく、より表面に近い情報を得ることができるGeを用いる。また、サンプルへの赤外光入射角は45°を用いる。本発明の保護剤塗布装置の評価においては赤外光入射角が45°に設定することにより、より精度が高い指標を得ることができる。これらのATRプリズムと赤外光入射角の組み合わせにより、感光体上の保護剤の塗布量として好ましい状態を表現することができる。
【0086】
ピークb1,b2はメチレン基に由来するピークであり、充分な強度のピークとして検出されるため感光体上の保護剤を見積もる指標として好ましい。ピークa1,a2は感光体に含まれるポリカーボネート由来のピークであり、ポリカーボネートを含有する保護剤塗付前の感光体において、充分な強度のピークとして検出されるため感光体上の保護剤を見積もる指標として好ましい。また、ピークa2とピークb2は検出される波長が近いので、塗布量算出の指標Sa2/Sb2の感度がよくなるため好ましい。本発明における、ピーク面積は、定量性のよい吸光度スペクトルを用いて算出する。
【0087】
FT−IRでの解析において、感光体上の保護剤の塗布量を見積もる方法としては、単純に保護剤由来のピークの面積を追う事も考えられるが、ATR法においては、試料を押さえる圧力によってピークの面積(強度)が変化してしまうため、スペクトルの面積(強度)を直接追うことは好ましくない。塗布量の指標としては、感光体に由来するピークと保護剤に由来するピークの比を用い、安定した指標を得ることが好ましい。
【0088】
IRスペクトルC中のピークa(a1,a2)について、ピークa(a1,a2)はIRスペクトルBに存在せず、IRスペクトルAに存在するピークである。
図7に示す[模式図1−1]のような状態では、ピークaが検出される波数に、IRスペクトルBでピークが検出されない状態を示す。例えば、図8に示す[模式図1−2]では、ピークMはIRスペクトルBで存在するピークであり、塗布量の指標を算出するピークには適さない。
【0089】
ピークaは、より好ましくは、IRスペクトルBに存在するピークと重ならないピークである。すなわち、ピークaが図9に示す[模式図1−3]のような状態で、IRスペクトルBに存在するピークの裾が、ピークaのピークの裾と重ならない状態が好ましい。
また、図7に示す[模式図1−1]のように、ピークaが、IRスペクトルBに存在するピークと重なる場合は、IRスペクトルCとIRスペクトルBの差スペクトルをとる必要がある。差スペクトルを用いることによって、IRスペクトルBに存在するピークの影響を受けない指標(面積比(Sb/Sa))を求めることができる。
【0090】
ただし、ピークaが、IRスペクトルBに存在するピークと重なっている場合でも、図7に示す[模式図1−1]のように、ピークaの面積がピークaと重なっているピークの面積よりも充分大きい場合は、IRスペクトルCからIRスペクトルBを差し引く工程を省いてもよい。この差し引く工程を除くことで、工程が一つ減るため、指標(面積比(Sb/Sa))の算出がより簡単になり、精度も向上する。
【0091】
また、IRスペクトルC中のピークb(b1,b2)について、ピークb(b1,b2)はIRスペクトルAに存在せず、IRスペクトルBに存在するピークである。
図10に示す[模式図2−1]のような状態では、ピークbが検出される波数に、IRスペクトルAでピークが検出されない状態を示す。例えば、図11に示す[模式図2−2]では、IRスペクトルB中のピークNは、IRスペクトルAに存在するピークであり、塗布量の指標を算出するピークには適さない。
【0092】
ピークbは、より好ましくは、IRスペクトルAに存在するピークと重ならないピークである。すなわち、ピークaが図12に示す[模式図2−3]のような状態で、IRスペクトルBに存在するピークの裾が、ピークaのピークの裾と重ならない状態が好ましい。
図10に示す[模式図2−1]のように、ピークaが、IRスペクトルBに存在するピークと重なる場合は、前述のように、IRスペクトルCとIRスペクトルAの差スペクトルをとる必要がある。差スペクトルを用いることによって、IRスペクトルAに存在するピークの影響を受けない指標(面積比(Sb/Sa))を求めることができる。
【0093】
ただし、ピークbが、IRスペクトルAに存在するピークと重なっている場合でも、図10に示す[模式図2−1]のように、ピークbの面積がピークbと重なっているピークの面積よりも充分大きい場合は、IRスペクトルCからIRスペクトルAを差し引く工程を省いてもよい。この差し引く工程を除くことで、工程が一つ減るため、指標(面積比(Sb/Sa))の算出がより簡単になり、精度も向上する。
【0094】
前述したように、保護剤を5分塗布した後の感光体におけるSb1/Sa1の値は、0.020以上、好ましくは0.040〜0.3、更に好ましくは0.045〜0.2である。Sb1/Sa1の値が、保護剤の塗布時間5分以内に0.02以上にならない場合、画像形成装置の使用初期において、保護剤が感光体を充分に保護しないため好ましくない。
また、保護剤を150分塗布した後の感光体におけるSb1/Sa1の値は、0.85以下、好ましくは0.1〜0.6、更に好ましくは0.15〜0.4である。Sb1/Sa1の値が、保護剤の塗布時間120以内で38以上になる場合、画像形成装置を使いこんでいくと保護剤の塗布量が過剰になりすぎて、感光体に帯電が充分にのらなかったり、ボケが生じるため好ましくない。
【0095】
また、前述したように、保護剤を15分塗布した後の感光体におけるSb2/Sa2の値は、6.5以上、好ましくは7〜23、更に好ましくは8〜15である。Sb2/Sa2の値が、保護剤の塗布時間15分以内に6.5以上にならない場合、画像形成装置の使用初期において、保護剤が感光体を充分に保護しないため好ましくない。
また、保護剤を120分塗布した後の感光体におけるSb2/Sa2の値は、38以下、好ましくは8〜25、更に好ましくは9〜16である。Sb2/Sa2の値が、保護剤の塗布時間120以内で38以上になる場合、画像形成装置を使いこんでいくと保護剤の塗布量が過剰になりすぎて、感光体に帯電が充分にのらなかったり、ボケが生じるため好ましくない。
【0096】
本発明の保護剤塗布装置においては、保護剤はパラフィンを50〜95重量%含有していることを特徴とする。
本発明の保護剤塗布装置における保護剤中のパラフィンの割合とは、保護剤に含有される全ての有機成分に対する割合を示しており、保護剤中に無機成分を含んでいる場合においては、無機成分は除外した全有機成分に対するパラフィンの割合を表している。
【0097】
また、保護剤中のパラフィンの割合によって、指標(Sb1/Sa1)の閾値は多少変化するが、パラフィンの割合によらず、感光体上の保護剤の塗布量の良好な状態は、保護剤を5分塗布した後の感光体におけるSb1/Sa1の値が0.02以上、150分塗布した後の感光体におけるSb1/Sa1の値が0.85以下の閾値内に充分収まることがわかっている。
【0098】
さらにまた、保護剤中のパラフィンの割合によって、指標(Sb2/Sa2)の閾値は多少変化するが、パラフィンの割合によらず、感光体上の保護剤の塗布量の良好な状態は、保護剤を15分塗布した後の感光体におけるSb2/Sa2の値が6.5以上、120分塗布した後の感光体におけるSb2/Sa2の値が38以下の閾値内に充分収まることがわかっている。
【0099】
本発明の保護剤塗布装置に用いる保護剤は、パラフィンを主体としている。本発明の保護剤に用いるパラフィンは、ノルマルパラフィン、イソパラフィンが例示できる。パラフィンは、一種だけでなく、異なる種類のパラフィンを混合して用いてもかまわない。
本発明の保護剤バーに用いる保護剤中のパラフィンの割合は50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは、70重量%以上である。パラフィンの割合が50重量%以下では、保護剤としての機能が低く、画像形成に伴う感光体の磨耗が生じやすく、好ましくない。パラフィンの割合が95重量%以上では、パラフィンが感光体表面を覆うことが難しく好ましくない。パラフィン単独では、ブラシやブレードの圧力だけでは、感光体上に薄く、膜状に広がりにくいため、他の物質を混合して用いることが不可欠となる。
【0100】
本発明の保護剤バーに用いる、パラフィン以外の物質としては、両親媒性の有機化合物、脂肪族不飽和炭化水素、脂環式飽和炭化水素、脂環式不飽和炭化水素や芳香族炭化水素に分類される炭化水素類の他に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリパーフルオロアルキルエーテル(PFA)、パーフルオロエチレン−パーフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂やフッ素系ワックス類、ポリメチルシリコーン、ポリメチルフェニルシリコーン等のシリコーン樹脂やシリコーン系ワックス類、雲母等の潤滑性を有する無機化合物等が挙げられ、これに限るものではないが、中でも両親媒性の有機化合物、脂環式飽和炭化水素が保護剤に含有することにより、保護剤の塗布性が向上し、特に環状ポリオレフィン等の脂環式飽和炭化水素が感光体上に保護剤が膜状に被覆することができ、特に好ましい。これらの、パラフィン以外の化合物は、一種類だけでなく、多種類を混合して用いても良い。
【0101】
脂環式飽和炭化水素としては、シクロパラフィン、環状ポリオレフィン等が例示できる。
両親媒性の有機化合物は、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤やこれらの複合物等に類別されるが、本発明の保護剤は、上述のように像担持体上に保護剤層を形成し、像形成工程を経るため、像担持体の電気的な特性に対して悪影響を与えないようにする必要がある。
両親媒性の有機化合物として非イオン系界面活性剤を用いることにより、界面活性剤自身がイオン解離することがなくなるため、使用環境、特に湿度が、大幅に変動した場合にも、気中放電などによる電荷のリークを抑制することができ、画像品質を高度に維持することができる。
【0102】
また、該非イオン系界面活性剤は、下記の化学式(1)のアルキルカルボン酸と多価アルコール類とのエステル化物であることが好ましい。
CnH2n+1COOH 化学式(1)
(ただし、式中のnは15〜35の整数を示す)
【0103】
化学式(1)のアルキルカルボン酸として直鎖アルキルカルボン酸を用いることにより、両親媒性の有機化合物が吸着した像担持体表面で、両親媒性の有機化合物の疎水性部分が配列しやすくなり、担持体表面への吸着密度が特に高くなるため、好ましい様態である。
【0104】
1分子中のアルキルカルボン酸エステルは疎水性を示し、その数が多い方が気中放電により発生した解離性物質が像担持体表面に吸着するのを防ぎ、かつ帯電領域での像担持体表面への電気的ストレスを小さくするためには有効である。しかしながら、アルキルカルボン酸エステルの占める割合が多くなりすぎると、親水性を示す多価アルコール類の部分が覆い隠されてしまい、像担持体の表面状態によっては十分な吸着性能が発現しないことがある。よって、両親媒性の有機化合物の1分子当りの平均エステル結合数は、1から3個であることが好ましい。
【0105】
これら両親媒性の有機化合物の1分子当りの平均エステル結合数は、異なるエステル結合数を持つ複数の両親媒性の有機化合物から1種以上を選択し、混合して調整することもできる。
両親媒性の有機化合物としては、前述のように陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0106】
陰イオン系界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸アルキル塩、長鎖脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等の、疎水性部位の末端に陰イオン(アニオン)を有し、これと、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属イオン、アルミニウム、亜鉛等の金属イオン、アンモニウムイオン等が結合した化合物が挙げられる。
【0107】
陽イオン系界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等の、疎水性部位の末端に陽イオン(カチオン)を有し、これと、塩素、フッ素、臭素等や、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン、水酸イオン等が結合した化合物が挙げられる。
【0108】
両イオン系界面活性剤の例としては、ジメチルアルキルアミンオキシド、N−アルキルベタイン、イミダゾリン誘導体、アルキルアミノ酸等が挙げられる。
非イオン系界面活性剤の例としては、長鎖アルキルアルコール、アルキルポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルポリグルコキシド、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の、アルコール化合物、エーテル化合物、アミド化合物等が挙げられる。また、ラウリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の長鎖アルキルカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ヘキシトール等の多価アルコールやこれらの部分無水物とのエステル化合物も好ましい形態として挙げられる。
【0109】
エステル化合物のより具体的な例としては、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルチミン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、ジパルチミン酸グリセリル、トリパルチミン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、トリミスチン酸グリセリル、パルチミン酸ステアリン酸グリセリル、モノアラキジン酸グリセリル、ジアラキジン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、ステアリン酸ベヘン酸グリセリル、セロチン酸ステアリン酸グリセリル、モノモンタン酸グリセリル、モノメリシン酸グリセリル等のアルキルカルボン酸グリセリルやこの置換物、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノパルチミン酸ソルビタン、ジパルチミン酸ソルビタン、トリパルチミン酸ソルビタン、ジミリスチン酸ソルビタン、トリミスチン酸ソルビタン、パルチミン酸ステアリン酸ソルビタン、モノアラキジン酸ソルビタン、ジアラキジン酸ソルビタン、モノベヘン酸ソルビタン、ステアリン酸ベヘン酸ソルビタン、セロチン酸ステアリン酸ソルビタン、モノモンタン酸ソルビタン、モノメリシン酸ソルビタン等のアルキルカルボン酸ソルビタンやこの置換物等が挙げられるが、これに限るものではない。
【0110】
また、これらの両親媒性有機化合物は単一の種類を用いても良いし、複数種類を併用しても良い。
さらに、場合により、金属酸化物、珪酸化合物、雲母、窒化ホウ素等のフィラーを保護剤中に含有させても良い。
【0111】
次に保護剤塗布装置の具体的な構成例を説明する。
図1は本発明の保護剤塗布装置を備えた画像形成部の要部構成例を示す概略要部構成図である。
像担持体であるドラム状の感光体1に対向して配設された保護剤塗布装置2は、感光体を保護する保護剤を棒状(円柱状、四角柱状、六角柱状等)にした保護剤バー21と、この保護剤バー21と接触するブラシ22aを有し保護剤バー21からブラシ22aに移行した保護剤を感光体1へ供給する保護剤供給部材22と、保護剤バー21を保護剤供給部材22のブラシ22aに押し当てて保護剤を保護剤供給部材22のブラシ22aに移行させる押圧力付与機構23と、保護剤供給部材22により感光体上に供給された保護剤を薄層化する保護層形成機構24と、保護剤バー21が左右前後に振れないように支持する保護剤バー支持ガイド25等から主に構成されている。本発明に用いる保護剤バー21は、保護剤を溶融後、成型型に投入、冷却して作成する溶融成型法、あるいは、保護剤粉末を圧縮して作成する圧縮成型法により作製される。
【0112】
本発明による保護剤バー21は、バネやスプリング等の押圧部材からなる押圧力付与機構23からの押圧力により、保護剤供給部材22のブラシ22aに押し当てられ、保護剤バー21からブラシ22aに保護剤が移行する。保護剤供給部材22は感光体1と線速差をもって回転してブラシ22aの先端で感光体表面を摺擦し、この際に保護剤供給部材22のブラシ22aの表面に保持された不定形の保護剤を、感光体1の表面に供給する。
また、感光体1の表面に供給された保護剤は、物質種の選択によっては供給時に十分な保護層にならない場合がある。このため、より均一な保護層を形成するために、感光体表面の保護剤は、例えばブレード状の部材24aと、そのブレード状の部材24aを感光体ドラム1の表面に押し当てるバネやスプリング等の押圧部材24bとを持つ保護層形成機構24により薄層化され、感光体表面の保護層となる。このように、感光体1に不定形の保護剤を適量供給するとともに、保護層形成機構24により薄層化することにより、保護剤が感光体上で不定形な保護膜となって保持されやすくなる。これにより、帯電手段(例えば帯電ローラ等)3の汚れ等による異常画像が起こらず、消耗品の交換頻度が少なく、長期に渡って高画質画像を出力可能な画像形成装置を実現することができる。
また、保護剤バーの代わりに保護剤粉末を直接感光体表面に供給することもできる。この場合、保護剤粉末を保有する容器、保護剤粉末を搬送する保護剤搬送装置が必要となり、保護剤バー、押圧力付与機構、保護剤供給部材が不要となる。保護剤搬送装置としては、ポンプ、オーガー等、既存の粉体搬送手段を用いることができる。
【0113】
保護層形成機構24に用いるブレード状部材24aの材料は、特に制限されるものではなく、例えばクリーニングブレード用材料として一般に公知の、ウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体を、単独またはブレンドして使用することができる。また、これらのゴムブレードは、感光体1との接点部部分を低摩擦係数材料でコーティングや含浸処理しても良い。また、弾性体の硬度を調整するために、他の有機フィラーや無機フィラーに代表される充填材を分散しても良い。
【0114】
これらのブレード状部材24aは、ブレード支持体24cに、先端部が感光体表面へ押圧当接できるように、接着や融着等の任意の方法によって固定される。ブレード状部材24aの厚みについては、押圧で加える力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね0.5〜5mm程度であれば好ましく使用でき、1〜3mm程度であれば更に好ましく使用できる。
また、支持体24cから突き出し、たわみを持たせることができるブレード状部材24aの長さ、いわゆる自由長についても同様に押圧で加える、力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね1〜15mm程度であれば好ましく使用でき、2〜10mm程度であれば更に好ましく使用できる。
【0115】
保護層形成用のブレード状部材24aの他の構成としては、バネ板等の弾性金属ブレード表面に、必要によりカップリング剤やプライマー成分等を介して、樹脂、ゴム、エラストマー等の層をコーティング、ディッピング等の方法で形成し、必要により熱硬化等を行い、更に必要であれば表面研摩等を施して用いても良い。
弾性金属ブレードの厚みは、0.05〜3mm程度であれば好ましく使用でき、0.1〜1mm程度であればより好ましく使用できる。
また、弾性金属ブレードでは、ブレードのねじれを抑止するために、取り付け後に支軸と略平行となる方向に、曲げ加工等の処理を施しても良い。
表面層を形成する材料としては、PFA、PTFE、FEP、PVdF等のフッ素樹脂や、フッ素系ゴム、メチルフェニルシリコーンエラストマー等のシリコーン系エラストマー等を、必要により充填剤と共に、用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0116】
また、保護層形成機構24の押圧部材24bでブレード状部材24aを感光体に押圧する力は、感光体表面の保護剤が延展し、保護層や保護膜の状態になる力で十分であり、線圧として5gf/cm以上80gf/cm以下であることが好ましく、10gf/cm以上60gf/cm以下であることがより好ましい。
【0117】
また、ブラシ状の部材22aは保護剤供給部材22として好ましく用いられるが、この場合、感光体表面への機械的ストレスを抑制するためには、ブラシ繊維は可撓性を持つことが好ましい。
可撓性のブラシ繊維の具体的な材料としては、一般的に公知の材料から1種乃至2種以上を選択して使用することができる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン);ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂(例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−ブタジエン樹脂;フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン);ポリエステル;ナイロン;アクリル;レーヨン;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂(例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂);などの内、可撓性を持つ樹脂を使用することができる。
また、撓みの程度を調整するために、ジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等を複合して用いても良い。
【0118】
保護剤供給部材22の支持体22bには、固定型と回動可能なロール状のものがある。ロール状の供給部材としては、例えばブラシ繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金にスパイラル状に巻き付けてロールブラシとしたものがある。ブラシ繊維は繊維径10〜500μm、より好ましくは、20〜300μmである。10μm以下では、保護剤の供給スピードが非常に遅くなるため好ましくなく、500μm以上では、ブラシ繊維が単位面積当たりに存在できる本数がより少なくなるため、ブラシが感光体に当たる場所と当たらない場所での塗布ムラが顕著になったり、ブラシが感光体に当たったときに感光体を傷つけやすくなったり、保護剤を掻き取る力が強くなるため、保護剤の寿命が短くなったり、感光体に供給される保護剤が大きな粒状になり、感光体に供給された粒が帯電ローラに移動して帯電ローラを汚染してしまったり、ブラシや感光体を回転させるためのトルクがより大きくなるため好ましくない。
ブラシの繊維の長さは1〜15mm、好ましくは3〜10mmである。ブラシの繊維の長さが1mm以下では、ブラシの芯金と感光体が非常に近い配置となるため芯金が像担持体と接触して、感光体に傷がつきやすくなるため好ましくなく、15mm以上では、ブラシ繊維先端で保護剤を掻きとる力やブラシ繊維先端が感光体に当たる力が弱くなり、保護剤を充分な量供給するのが困難になったり、ブラシの繊維が抜けやすくなるため好ましくない。
ブラシ密度は1平方インチ当たり1万〜30万本(1平方メートル当たり1.5×107〜4.5×108)である。ブラシ密度が1平方インチ当たり1万本以下においては、ブラシが感光体に当たる場所と当たらない場所での塗布ムラが顕著になったり、保護剤を充分な量供給することが困難になるため好ましくなく、また、ブラシ密度を1平方インチ当たり30万本以上にするためにはブラシ繊維の径を非常に小さくする必要があるため好ましくない。
【0119】
保護剤供給部材22は、供給の均一性やその安定性の面から、極カブラシ密度の高い物を使用することが好ましく、1本の繊維を数本〜数百本の微細な繊維から作ることも好ましい。例えば、333デシテックス=6.7デシテックス×50フィラメント(300デニール=6デニール×50フィラメント)のように6.7デシテックス(6デニール)の微細な繊維を50本束ねて1本の繊維として植毛することも可能である。
これらの保護剤供給部材の中でも、28〜43μm、好ましくは30〜40μmの単繊維から作られたブラシが保護剤の供給の効率が高く、最も好ましい。繊維は、撚って作製されることが多いことから、繊維の径は均一でないため、デニール、デシテックスの単位が用いられてきた。しかし、単繊維の場合は、繊維径は一定であるため、繊維径で規定することの方が、保護剤供給部材を規定する上で好ましい。
単繊維の直径が28μmより小さいと、保護剤を供給する効率が低くなり、単繊維の直径が43μmを越えると、単繊維の剛性が高くなりすぎて、感光体を傷つけやすくなり好ましくない。また、28〜43μmの単繊維は、芯金に対してできるだけ垂直に植毛されていることが好ましく、ブラシを製造する際には、静電気を利用した、所謂、静電植毛により製造していることが好ましい。静電植毛は、ブラシの芯金上に接着剤を塗布し、芯金を帯電させることにより、静電電気力で28〜43μmの単繊維を飛翔させて、芯金上の接着剤に植毛し、接着剤を硬化させる方法である。このように静電植毛により、1平方インチ当たり5万〜60万本植毛したブラシが、好適に用いることができる。
【0120】
また、ブラシ22aの表面には必要に応じてブラシ22aの表面形状や環境安定性などを安定化することなどを目的として、被覆層を設けても良い。被覆層を構成する成分としては、ブラシ繊維の撓みに応じて変形することが可能な被覆層成分を用いることが好ましく、これらは、可撓性を保持し得る材料であれば、何ら限定される事無く使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂またはその変成品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成品);パーフルオロアルキルエーテル,ポリフルオロビニル、ポリフルオロビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂や、これらの複合樹脂等が挙げられる。
【0121】
[実施形態3]
次に本発明に係るプロセスカートリッジと画像形成装置の実施形態を説明する。
図2は本発明に係る画像形成装置の画像形成部に具備される、保護剤塗布装置を用いたプロセスカートリッジの構成例の概略を説明するための断面図である。
図2に示す画像形成部10は、像担持体であるドラム状の感光体1と、感光体1を帯電する帯電手段である帯電装置(図示の例では帯電ローラ)3と、帯電された感光体1にレーザー光L等を照射して静電潜像を形成する潜像形成手段(図示せず)と、感光体1上の静電潜像をトナーで現像して可視像化する現像手段である現像装置5と、感光体1上のトナー像を転写媒体(または中間転写媒体)7に転写する転写手段6と、転写後の感光体1の表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段であるクリーニング装置4と、クリーニング装置4から帯電装置3に至る部分に配置された保護剤塗布装置2等を有している。そして、この画像形成部10では、感光体1とともに、保護剤塗布装置2、帯電装置3、現像装置5、クリーニング装置4をカートリッジ内に設けたプロセスカーリッジ11を用いている。なお、本発明においては、クリーニング装置4は、保護剤塗布前に感光体表面をクリーニングし、保護剤の塗布が良好に行なわれるようにするものであるので、保護剤塗布装置2の構成部材と見做すことができる。
【0122】
図2において、帯電装置3は、例えば図示しない高電圧電源により直流(DC)電圧に交流(AC)電圧を重畳させた電圧を印加したAC帯電方式の帯電ローラである。また、現像装置5は、トナー粒子、またはトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤を担持搬送する現像剤担持体である現像ローラ51と、現像剤を攪拌しながら搬送する現像剤攪拌搬送部材52,53等で構成される。
感光体1に対向して配設された保護剤塗布装置2は、図1と同様に、保護剤バー21、保護剤供給部材22、押圧力付与機構23、保護層形成機構24、保護剤バー21が左右前後に振れないように支持する保護剤バー支持ガイド25等から主に構成される。
また、感光体1は、転写工程後に部分的に劣化した保護剤やトナー成分等が残存した表面となっているが、クリーニング装置4のクリーニング部材41により表面残存物が清掃され、クリーニングされる。図2では、ブレード状のクリーニング部材41はクリーニング押圧機構42で支持され、いわゆるカウンタータイプ(リーディングタイプ)に類する角度で当接されている。なお、保護層形成機構24のブレード状部材24aは、図示の例ではカウンタータイプではないが、このブレード状部材24aもカウンタータイプに類する角度で当接させてもよい。
【0123】
クリーニング装置4により、表面の残留トナーや劣化した保護剤が取り除かれた感光体表面へは、保護剤バー21の保護剤がブラシ状の保護剤供給部材22により供給され、感光体表面に供給された保護剤は、保護層形成機構24のブレード24aにより薄層化され、不定形な皮膜状の保護層が形成される。この際、感光体表面のうち電気的ストレスにより親水性が高くなっている部分に対して、本発明で使用する保護剤は、より良好な吸着性を持つため、一時的に大きな電気的ストレスが掛かり、感光体表面が部分的に劣化をし始めても、保護剤の吸着により感光体自身の劣化の進行を防ぐことができる。
【0124】
保護層が形成された感光体1は、帯電ローラ3による帯電後、レーザー光Lなどの露光によって静電潜像が形成され、現像手段である現像装置5のトナーにより現像されて可視像化され、プロセスカートリッジ外の転写手段である転写装置(転写ローラ等)6により、転写紙等の転写媒体(または中間転写媒体)7へ転写される。
【0125】
本発明のプロセスカートリッジ11に用いる帯電手段(帯電装置)3としては、装置が小型で、オゾン等の酸化性ガスの発生の少ない、帯電ローラが用いられる。
帯電ローラ3は、感光体1と接触あるいは、20〜100μm近接した非接触状態で設置され、帯電ローラ3と感光体1の間に電圧を印加することにより、感光体1を帯電する。帯電ローラ3と感光体1の間に印加する電圧は、直流電圧に交流電圧を重畳したAC帯電を用いる。なお、AC帯電を行なう場合は、感光体1と帯電ローラの間で1秒間に数百回以上もの放電が起こることから、感光体は、放電による劣化を受けやすい。また、感光体1へ保護剤の塗布をした場合でも、保護剤は放電により劣化し、消失してしまいやすいことから、常時一定の量の保護剤を感光体1上に塗布しておくことは非常に重要である。
【0126】
帯電ローラの構成としては、導電性支持体上に、高分子層と、表面層から構成されることが好ましい。
導電性支持体は、帯電ローラ13の電極及び支持部材として機能するもので、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金、クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄、導電剤を添加した樹脂、などの導電性の材質で構成される。
【0127】
高分子層としては、106〜109Ωcmの抵抗を有する導電性層であることが好ましく、高分子材料に導電剤を混合して抵抗を調整したものが用いられる。本発明の画像形成装置に用いる帯電ローラの高分子層の高分子としては、ポリエステル系、オレフィン系の熱可塑性エラストマー、ポリスチレン、スチレンーブタジエン共重合体、スチレンーアクリロニトリル共重合体、スチレンーブタジエンーアクリロニトリル共重合体等のスチレン系熱可塑性樹脂、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム等、及びこれらのブレンドしたゴム材料が挙げられる。ゴム材料は中でも、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム及びこれらのブレンドゴムが好ましく用いられる。これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0128】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末を挙げることができる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;を挙げることができる。これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、高分子100質量部に対して、1〜30質量部の範囲であることが好ましく、15〜25質量部の範囲であることがより好ましい。一方、上記イオン導電剤の場合は、高分子100質量部に対して、0.1〜5.0質量部の範囲であることが好ましく、0.5〜3.0質量部の範囲であることがより好ましい。
【0129】
前記表面層を構成する高分子材料としては、既述の如く、帯電ローラ13表面のダイナミック超微小硬度が0.04以上0.5以下であれば特に制限されないが、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。
これらの中では、トナーとの離型性等の観点から、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミドが好ましく用いられる。上記高分子材料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、当該高分子材料の数平均分子量は、1,000〜100,000の範囲であることが好ましく、10,000〜50,000の範囲であることがより好ましい。
【0130】
表面層は、上記高分子材料に前記導電性弾性層に用いた導電剤や各種微粒子を混合して組成物として形成される。上記微粒子としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物及び複合金属酸化物、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等の高分子微粉体を単独または混合して用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0131】
本発明のプロセスカートリッジに用いる現像手段は、現像剤を感光体に接触させ、感光体上に形成した潜像をトナー像に現像する。現像剤としては、トナーとキャリアから構成される二成分現像剤や、キャリアを含まない一成分現像剤を使用することができる。
例えば、図2で示すように、現像装置5は、そのケーシングの開口から現像剤担持体としての現像ローラ51が部分的に露出している。
図示しないトナーボトルから現像装置5内に補給されたトナーは、攪拌搬送スクリュー52および53によってキャリアと撹拌されながら搬送され、現像ローラ51上に担持されることになる。この現像ローラ51は、磁界発生手段としてのマグネットローラと、その周りを同軸回転する現像スリーブとから構成されている。現像剤中のキャリアは、マグネットローラが発生させる磁力により現像ローラ51上に穂立ちした状態となって感光体ドラム1と対向する現像領域に搬送される。ここで、現像ローラ51は、現像領域において感光体ドラム1の表面よりも速い線速で同方向に表面移動する。そして、現像ローラ51上に穂立ちしたキャリアは、感光体ドラム1の表面を摺擦しながら、キャリア表面に付着したトナーを感光体ドラム1の表面に供給する。このとき、現像ローラ51には、図示しない電源から現像バイアスが印加され、これにより現像領域には現像電界が形成される。そして、感光体ドラム1上の静電潜像と現像ローラ51との間では、現像ローラ51上のトナーに静電潜像側に向かう静電力が働くことになる。これにより、現像ローラ51上のトナーは、感光体ドラム1上の静電潜像に付着することになる。この付着によって感光体ドラム1上の静電潜像は、それぞれ対応する色のトナー像に現像される。
【0132】
[実施形態4]
次に本発明に係る画像形成装置の別の実施形態を説明する。
図3は、本発明の保護剤塗布装置を具備する画像形成装置100の構成例を示す概略構成図である。
この画像形成装置100は、画像形成を行う画像形成装置本体(プリンタ部)110と、この本体110の上部に設置された原稿読取部(スキャナ部)120と、その上に設置された原稿自動給紙装置(ADF)130と、画像形成装置本体110の下部に設置された給紙部200とを備えており、複写機の機能を有している。また、この画像形成装置100は、外部装置との通信機能を有しており、装置外部のパーソナルコンピュータ等と接続することにより、プリンタやスキャナとして用いることができる。また、電話回線や光回線と接続することにより、ファクシミリとして用いることができる。
【0133】
画像形成装置本体110内には、同じ構成で現像装置5のトナー色が異なる画像形成部(画像形成ステーション)10が4つ並設されており、該4つの画像形成部10でトナー色の異なる画像(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像)を形成し、各色のトナー像を転写媒体または中間転写媒体に重ね合わせて転写して多色またはフルカラー画像を形成することができる。なお、図3の例では、4つの画像形成部10は、複数のローラに張架されたベルト状の中間転写媒体7に沿って並設されており、各画像形成部で形成された各色のトナー像は、一旦中間転写媒体7に順次重ね合わせて転写された後、二次転写装置12で紙等のシート状の転写媒体に一括して転写される。
【0134】
各色の画像形成部10は図2と同様の構成であり、ドラム状の感光体1(1Y,1M,1C,1K)の周囲に、保護剤塗布装置2、帯電装置3、潜像形成装置8からのレーザー光等の露光部、現像装置5、一次転写装置6、およびクリーニング装置4が配置されている。また、図2と同様に、各色の画像形成部10には、感光体1とともに、保護剤塗布装置2(クリーニング装置4を含む)、帯電装置3、現像装置5をカートリッジ内に設けたプロセスカーリッジ11を用いている。そして、このプロセスカートリッジは、画像形成装置本体110に対して着脱自在に設けられている。
【0135】
次に図3に示す画像形成装置の動作を説明する。ここでは、画像形成のための一連のプロセスについて、ネガ−ポジプロセスで説明を行う。なお、各画像形成部の動作は同じであるので、ここでは一つの画像形成部の動作を説明する。
有機光導電層を有する有機感光体(OPC)等に代表される像担持体であるドラム状の感光体1は、除電ランプ(図示せず)等で除電され、帯電部材(例えば帯電ローラ)を有する帯電装置3で均一にマイナスに帯電される。
帯電装置3による感光体1の帯電が行なわれる際には、電圧印加機構(図示せず)から帯電部材に、感光体1を所望の電位に帯電させるに適した、適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した帯電電圧が印加される。
【0136】
帯電された感光体1は、例えば複数のレーザー光源と、カップリング光学系と、光偏向器と、走査結像光学系等からなる、レーザー走査方式の潜像形成装置8によって照射されるレーザー光で潜像形成(露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行なわれる。
すなわち、レーザー光源(例えば半導体レーザー)から発せられたレーザー光は、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等からなる光偏向器により偏向走査され、走査レンズやミラー等からなる走査結像光学系を介して感光体1の表面を、感光体1の回転軸方向(主走査方向)に走査する。
【0137】
このようにして形成された潜像が、現像装置5の現像剤担持体である現像ローラ51の現像スリーブ上に供給されたトナー粒子、またはトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤により現像され、トナー可視像が形成される。
潜像の現像時には、電圧印加機構(図示せず)から現像ローラ51の現像スリーブに、感光体1の露光部と非露光部の間にある、適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
【0138】
上記のような動作で各色に対応した画像形成部10の感光体1上に形成されたトナー像は、転写ローラ等からなる一次転写装置6にて中間転写媒体7上に順次重ね合わせて一次転写される。一方、画像形成動作及び一次転写動作にタイミングを合わせて、給紙部200の多段の給紙カセット201a,201b,201c,201dの中の選択された給紙カセットから、給紙ローラ202及び分離ローラ203からなる給紙機構で紙等のシート状の転写媒体が給紙され、搬送ローラ204,205,206及びレジストローラ207を経て二次転写部に搬送される。そして、二次転写部において、中間転写媒体7上のトナー画像が二次転写装置(例えば二次転写ローラ)12にて、搬送されてきた転写媒体に二次転写される。なお、上記の転写工程において、一次転写装置6や二次転写装置12には、転写バイアスとして、トナーの帯電極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。
上記の二次転写後、転写媒体は、中間転写媒体7から分離され、転写像が得られる。また、一次転写後に感光体1上に残存するトナー粒子は、クリーニング装置4のクリーニング部材41によって、クリーニング装置4内のトナー回収室へ、回収される。また、二次転写後に中間転写媒体7上に残存するトナー粒子は、ベルトクリーニング装置9のクリーニング部材によって、クリーニング装置9内のトナー回収室へ、回収される。
【0139】
図3に示した画像形成装置100は、上述の画像形成部10が中間転写媒体7に沿って複数配置された、いわゆるタンデム型で中間転写方式の画像形成装置であり、複数の画像形成部10によって各感光体1(1Y,1M,1C,1K)上に順次作成された色が異なる複数のトナー像を一旦中間転写媒体7上に順次転写した後、これを一括して紙のような転写媒体に転写する。そしてトナー像が転写された転写媒体を、搬送装置13により定着装置14へ送り、熱等によってトナーを定着する構成である。定着後の転写媒体は、搬送装置15及び排紙ローラ16により排紙トレイ17に排紙される。また、この画像形成装置100は両面プリント機能も備えており、両面プリント時には、定着装置9の下流の搬送路を切換え、片面の画像が定着された転写媒体を両面用搬送装置210を介して表裏反転し、搬送ローラ206及びレジストローラ207で二次転写部に再給紙して、裏面側に画像の転写を行う。転写後の転写媒体は、上記と同様に定着装置9に搬送されて画像が定着され、定着後の転写媒体は排紙トレイ17に排紙される。
【0140】
なお、上記の構成で、中間転写媒体を用いずに、タンデム型の直接転写方式の画像形成装置とすることもでき、この直接転写方式の場合は、中間転写媒体に換えて、転写媒体を担持搬送する転写ベルト等を用い、各画像形成部10によって各感光体1(1Y,1M,1C,1K)上に順次作成された色が異なる複数のトナー像を直接、転写ベルトで搬送される紙のような転写媒体に順次転写した後、定着装置へ送り、熱等によってトナーを定着する構成としても良い。
【0141】
以上に説明したような画像形成装置では、帯電装置3は、帯電部材を感光体表面に接触または近接して配設された帯電装置であることが好ましく、これにより、放電ワイヤを用いた、いわゆるコロトロンやスコロトロンと言われるコロナ放電器と比較して、帯電時に発生するオゾン量を大幅に抑制することが可能となる。
しかしながら、帯電部材を感光体表面に接触または近接して帯電を行う帯電装置3では、前述のように放電が感光体表面近傍の領域で行われるため、感光体1への電気的ストレスが大きくなりがちである。
そこで、本発明の保護剤塗布装置2を用いることにより、長期間に渡り感光体1を劣化させることなく維持できるため、経時的な画像の変動や使用環境による画像の変動を大幅に抑制でき、安定した画像品質の確保が可能となる。
【0142】
[実施形態5]
次に本発明に係るプロセスカートリッジや画像形成装置において好適に用いられる感光体について説明する。
本発明の画像形成装置に用いる像担持体である感光体は、導電性支持体の上に感光層が設けられている。感光層の構成は電荷発生材と電荷輸送材を混在させた単層型、あるいは電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、あるいは電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、感光層の上に保護層を設けることもできる。感光層と導電性支持体の間には下引き層が設けられていてもよい。また各層には必要により可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
【0143】
感光体の導電性支持体としては、体積抵抗10^10Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。ドラム状の支持体としては、直径が20〜150mm、好ましくは、24〜100mm、さらに好ましくは28〜70mmのものを用いることができる。ドラム状の支持体の直径が20mm以下では、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に難しく、ドラム状の支持体の直径が150mm以上では画像形成装置が大きくなってしまい好ましくない。特に、画像形成装置が図3に示すようなタンデム型の場合には、複数の感光体を搭載する必要があるため、直径は70mm以下、好ましくは60mm以下であることが好ましい。また、特許文献3に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0144】
本発明の画像形成装置に用いる感光体の下引層としては樹脂、あるいは白色顔料と樹脂を主成分としたもの、及び導電性基体表面を化学的あるいは電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が例示できるが、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、中でも導電性基体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンを含有させることが最も好ましい。下引層に用いる樹脂としてはポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂、アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂、これらの中の一種あるいは多種の混合物を例示することができる。
【0145】
本発明の画像形成装置に用いる感光体の電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料及び染料や、セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料を使用することができ、電荷発生物質は一種あるいは多種混合して使用することができる。下引層は、一層であっても、複数の層で構成しても良い。
【0146】
本発明の画像形成装置に用いる感光体の電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等の一種あるいは多種を混合して使用することができる。
【0147】
上記電荷発生層、電荷輸送層の感光層を形成するのに使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができ、適当な結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の光導電性樹脂など一種の結着樹脂あるいは多種と結着樹脂の混合物を挙げることができるが、特にこれらのものに限定されるものではない。ただし、電荷輸送層が最表面になる場合には、ポリカーボネートを含有した結着樹脂を用いる。
【0148】
酸化防止剤としては、例えば以下のものが使用される。
・モノフェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−t−ブチル−4−ヒドロキシニソールなど。
【0149】
・ビスフェノール系化合物
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
【0150】
・高分子フェノール系化合物
1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェノール類など。
【0151】
・パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−tーブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0152】
・ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0153】
・有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
【0154】
・有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0155】
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
【0156】
電荷輸送層中にレベリング剤を添加してもかまわない。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
【0157】
表面層は前述のように、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため設けられる。表面層としては、感光層よりも機械的強度の高い高分子、高分子に無機フィラーを分散させたものが例示できる。表面層は薄い膜厚であれば、電荷輸送能力を有していなくても支障はないが、電荷輸送能力を有しない表面層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、表面層中に前述の電荷輸送物質を含有させたり、保護層に用いる高分子を電荷輸送能力を有するものを用いることが好ましい。感光層と表面層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニングブレードとの摩擦により保護層が磨耗し、消失すると、すぐに感光層は磨耗していってしまうため、表面層を設ける場合には、表面層は十分な膜厚とすることが重要であり、0.01〜12μm、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜8μmとすることが好ましい。表面層の膜厚が0.1μm以下では、薄すぎてクリーニングブレードとの摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分から感光層の磨耗が進んでしまうため好ましくない。表面層の膜厚が12μm以上では、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する高分子を用いる場合には、電荷輸送能力を有する高分子のコストが高くなってしまうため好ましくない。
【0158】
表面層に用いる高分子としては、画像形成時の書き込み光に対して透明で、絶縁性、機械的強度、接着性に優れた物が望ましく、感光体の最表面層には、ポリカーボネートを含有している。
【0159】
表面層中には表面層の機械的強度を高めるために金属、又は金属酸化物の微粒子を分散させることができる。金属酸化物としては酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。その他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。
【0160】
以上の実施形態では像担持体を感光体として説明したが、本発明に係る像担持体は、感光体上に形成されたトナー像を一次転写して色重ねを行い、更に転写媒体へ転写を行う、いわゆる中間転写方式による画像形成を行う際に使用する中間転写媒体であってもよい。
【0161】
中間転写媒体としては、体積抵抗10^5〜10^11Ω・cm の導電性を示すものが好ましい。表面抵抗が10^5Ω/□を下回る場合には、感光体から中間転写媒体上へトナー像の転写が行われる際に、放電を伴いトナー像が乱れるいわゆる転写チリが生じることがあり、10^11Ω/□を上回る場合には、中間転写媒体から紙などの転写媒体へトナー像を転写した後に、中間転写媒体上へトナー像の対抗電荷が残留し、次の画像上に残像として現れることがある。
【0162】
中間転写媒体としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物やカーボンブラック等の導電性粒子や導電性高分子を、単独または併用して熱可塑性樹脂と共に混練後、押し出し成型したベルト状もしくは円筒状のプラスチックなどを使用することができる。この他に、熱架橋反応性のモノマーやオリゴマーを含む樹脂液に、必要により上述の導電性粒子や導電性高分子を加え、加熱しつつ遠心成型を行い、無端ベルト上の中間転写媒体を得ることもできる。
【0163】
中間転写媒体に表面層を設ける際には、上述の感光体表面層に使用した表面層材料の内、電荷輸送材料を除く組成物に、適宜、導電性物質を併用して抵抗調整を行い、使用することができる。
【0164】
[実施形態6]
次に、本発明に係るプロセスカートリッジや画像形成装置において好適に用いられるトナーについて説明する。
まず、本発明の画像形成装置に用いるトナーは、平均円形度が0.93〜1.00であることが好ましい。本発明では、下記の式2より得られた値を円形度と定義する。この円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長 :(式2)
【0165】
平均円形度が0.93〜1.00の範囲では、トナー粒子の表面は滑らかであり、トナー粒子同士、トナー粒子と感光体との接触面積が小さいために転写性に優れる。
トナー粒子に角がないため、現像装置内での現像剤の攪拌トルクが小さく、攪拌の駆動が安定するために異常画像が発生しない。
ドットを形成するトナーの中に、角張ったトナー粒子がいないため、転写で転写媒体に圧接する際に、その圧がドットを形成するトナー全体に均一にかかり、転写中抜けが生じにくい。
トナー粒子が角張っていないことから、トナー粒子そのものの研磨力が小さく、像担持体の表面を傷つけたり、磨耗させたりしない。
【0166】
次に円形度の測定方法について説明する。
円形度は、東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定することができる。
具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、分散液濃度を3000〜10000個/μlとして前記装置によりトナーの形状、粒度を測定する。
【0167】
本発明の画像形成装置に用いるトナーは、上記の円形度に加えて、トナーの重量平均径D4が3〜10μmであることが好ましい。この範囲では、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有していることから、ドット再現性に優れる。
重量平均径D4が3μm未満では、転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下といった現象が発生しやすい。また、重量平均径D4が10μmを超えると、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しい。
【0168】
さらに本発明に係るトナーは、重量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が1.00〜1.40であることが好ましい。(D4/D1)の値が1に近づくほど、そのトナーの粒度分布がシャープであることを意味する。よって、(D4/D1)が1.00〜1.40の範囲では、トナー粒径による選択現像が起きないため、画質の安定性に優れる。
トナーの粒度分布がシャープであることから、摩擦帯電量分布もシャープとなり、カブリの発生が抑えられる。また、トナー粒径が揃っていると、潜像ドットに対して、緻密に、かつ整然と並ぶように現像されるので、ドット再現性に優れる。
【0169】
次にトナー粒子の粒度分布の測定方法について説明する。
コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)が挙げられる。以下に測定方法について述べる。
【0170】
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均径D4、個数平均径D1を求めることができる。
【0171】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0172】
また、このような略球形の形状のトナーとしては、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/又は伸長反応させるトナーが好ましい。この反応で製造されたトナーは、トナー表面を硬化させることで、ホットオフセットの少なくすることができ、定着装置の汚れとなって、それが画像上に表れるのを抑えることができる。
【0173】
トナー作成に使用できる変性ポリエステル系樹脂から成るプレポリマーとしては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)が挙げられ、また、該プレポリマーと伸長または架橋する化合物としては、アミン類(B)が挙げられる。
【0174】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させた物などが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0175】
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0176】
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、ジカルボン酸(2−1)単独、およびジカルボン酸(2−1)と少量の3価以上のポリカルボン酸(2−2)の混合物が好ましい。
ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
【0177】
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0178】
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0179】
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0180】
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0181】
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0182】
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0183】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0184】
これらの反応により、本発明のトナーに用いられる変性ポリエステル、中でもウレア変性ポリエステル(i)が作成できる。これらウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0185】
また、本発明においては、前記ウレア結合で変性されたポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に、変性されていないポリエステル(ii)を結着樹脂成分として含有させることもできる。(ii)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、単独使用より好ましい。(ii)としては、前記(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また、(ii)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。(i)と(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の重量比は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。(i)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0186】
(ii)のピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、10000を超えると低温定着性が悪化する。(ii)の水酸基価は5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10〜120、特に好ましくは20〜80である。5未満では耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。(ii)の酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
【0187】
本発明において、結着樹脂のガラス転移点(Tg)は通常50〜70℃、好ましくは55〜65℃である。50℃未満ではトナーの高温保管時のブロッキングが悪化し、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステル樹脂の共存により、本発明の乾式トナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。結着樹脂の貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて10000dyne/cm2となる温度(TG’)が、通常100℃以上、好ましくは110〜200℃である。100℃未満では耐ホットオフセット性が悪化する。結着樹脂の粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1000ポイズとなる温度(Tη)が、通常180℃以下、好ましくは90〜160℃である。180℃を超えると低温定着性が悪化する。すなわち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG’はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG’とTηの差(TG’−Tη)は0℃以上が好ましい。さらに好ましくは10℃以上であり、特に好ましくは20℃以上である。差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgの差は0〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜90℃であり、特に好ましくは20〜80℃である。
【0188】
結着樹脂は以下の方法などで製造することができる。ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。さらに(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。(3)を反応させる際および(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。ウレア結合で変性されていないポリエステル(ii)を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様な方法で(ii)を製造し、これを前記(i)の反応完了後の溶液に溶解し、混合する。
【0189】
また、本発明に用いるトナーは概ね以下の方法で製造することができるが勿論これらに限定されることはない。
本発明に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
【0190】
トナー粒子は、水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマー(A)からなる分散体を、(B)と反応させて形成しても良いし、あらかじめ製造したウレア変性ポリエステル(i)を用いても良い。水系媒体中でウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。プレポリマー(A)と他のトナー組成物である(以下トナー原料と呼ぶ)着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、荷電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本発明においては、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
【0191】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。高温な方が、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
【0192】
ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)を含むトナー組成物100部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
【0193】
プレポリマー(A)からウレア変性ポリエステル(i)を合成する工程は水系媒体中でトナー組成物を分散する前にアミン類(B)を加えて反応させても良いし、水系媒体中に分散した後にアミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしても良い。この場合製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
【0194】
トナー組成物が分散された油性相を水が含まれる液体に乳化、分散するための分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性荊、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0195】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及ぴその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガーフルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガーフルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及ぴ金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及ぴその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0196】
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02、(タイキン工莱社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F−150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0197】
カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を右する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−l32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0198】
水に難溶の無機化合物分散剤として、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いることができる。
また、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ピニル、プロピオン酸ピニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0199】
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長および/または架橋反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
【0200】
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いたほうが粒度分布がシャープになる点で好ましい。該溶剤は揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましく、中でもトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒がより好ましい。プレポリマー(A)100部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300部、好ましくは0〜100部、さらに好ましくは25〜70部である。溶剤を使用した場合は、伸長および/または架橋反応後、常圧または減圧下にて加温し除去する。
【0201】
伸長および/または架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0202】
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
【0203】
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、または粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、または粗粒子はウェットの状態でも構わない。また、用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
【0204】
得られた乾燥後のトナーの粉体は、離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって、表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的な手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0205】
また、トナーに使用される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料が使用でき、具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドンレッド、ベンジジンイエロー、ローズベンガル等を単独あるいは混合して用いることができる。
【0206】
さらに、必要により、トナー粒子自身に磁気特性を持たせるには、フェライト、マグネタイト、マグヘマイト等の酸化鉄類、鉄、コバルト、ニッケル等の金属あるいは、これらと他の金属との合金等の磁性成分を単独または混合して、トナー粒子へ含有させればよい。また、これらの成分は、着色剤成分として使用/併用することもできる。
【0207】
本発明で用いられるトナー中の着色剤の個数平均径は0.5μm以下であることが望ましく、好ましくは0.4μm以下、より好ましくは0.3μm以下が望ましい。
トナー中の着色剤の個数平均径が0.5μmより大きいときには、顔料の分散性が充分なレベルには到らず、好ましい透明性が得られないことがある。
0.1μmより小さい微小粒径の着色剤は、可視光の半波長より十分小さいため、光の反射、吸収特性に悪影響を及ぼさないと考えられる。よって、0.1μm未満の着色剤の粒子は良好な色再現性と、定着画像を有するOHPシートの透明性に貢献する。一方、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、入射光の透過が阻害されたり、散乱されたりして、OHPシートの投影画像の明るさ及び彩かさが低下する傾向がある。
さらに、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、トナー粒子表面から着色剤が脱離し、カブリ、ドラム汚染、クリーニング不良といった種々の問題を引き起こしやすいため、好ましくない。特に、0.7μmより大きな粒径の着色剤は、全着色剤の10個数%以下であることが好ましく、5個数%以下であることが、より好ましい。
【0208】
また、着色剤を結着樹脂の一部もしくは全部と共に、予め湿潤液を加えた上で混練しておくことにより、初期的に結着樹脂と着色剤が十分に付着した状態となって、その後のトナー製造工程でのトナー粒子中における着色剤分散がより効果的に行なわれ、着色剤の分散粒径が小さくなり、一層良好な透明性を得ることができる。
予めの混錬に用いる結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として例示した樹脂類をそのまま使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0209】
前記の結着樹脂と着色剤の混合物を予め湿潤液と共に混練する具体的な方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤及び湿潤液を、ヘンシェルミキサー等のブレンダーにて混合した後、得られた混合物を二本ロール、三本ロール等の混練機により、結着樹脂の溶融温度よりも低い温度で混練して、サンプルを得る。
また、湿潤液としては、結着樹脂の溶解性や、着色剤との塗れ性を考慮しながら、一般的なものを使用できるが、特に、アセトン、トルエン、ブタノン等の有機溶剤や水が、着色剤の分散性の面から好ましい。中でも、水の使用は、環境への配慮及び、後のトナー製造工程における着色剤の分散安定性維持の点から、一層好ましい。
この製法によると、得られるトナーに含有される着色剤粒子の粒径が小さくなるばかりでなく、該粒子の分散状態の均一性が高くなるため、OHPによる投影像の色の再現性がより一層良くなる。
【0210】
この他、本発明の構成をとる限り、トナー中に結着樹脂や着色剤とともにワックスに代表される離型剤を含有させることもできる。
離型剤としては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。
【0211】
これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。
【0212】
これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。これら離型剤の融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は通常0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%である。
【0213】
また、トナー帯電量及びその立ち上がりを早くするために、トナー中に、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。ここで、電荷制御剤として有色材料を用いると色の変化が起こるため、無色、白色に近い材料が好ましい。
帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的には第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0214】
本発明において荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させる事もできるし、有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えても良いし、トナー表面にトナー粒子作成後固定化させてもよい。
また、トナー製造過程で水系媒体中にトナー組成物を分散させるに際して、主に分散安定化のための樹脂微粒子を添加してもよい。
【0215】
使用される樹脂微粒子は、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。
【0216】
ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合また共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0217】
さらに、トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。
この無機微粒子の一次粒子径は、5mμ〜2μmであることが好ましく、特に5mμ〜500mμであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい.無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0218】
この他、高分子系微粒子、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0219】
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0220】
また、感光体や中間転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0221】
これらのトナーを用いることにより、上述の如く、現像の安定性に優れる、高画質なトナー像を形成することができる。しかしながら、転写装置にて転写媒体もしくは中間転写媒体に転写されず、像担持体上に残存してしまったトナーは、その微細さや転動性の良さのために、クリーニング装置による除去が困難で通過してしまうことがある。トナーを像担持体から完全に除去するには、例えばクリーニングブレードのようなトナー除去部材を像担持体に対して強力に押しつける必要がある。この様な負荷は、像担持体やクリーニング装置の寿命を短くするだけでなく、余計なエネルギーを使用してしまうことになる。
像担持体に対する負荷を軽減した場合には、像担持体上のトナーや小径のキャリアの除去が不十分となり、これらはクリーニング装置を通過する際に、像担持体表面を傷つけ、画像形成装置の性能を変動させる要因となる。
【0222】
本発明の画像形成装置は、前述の如く、感光体表面状態の変動、特に低抵抗部位の存在に対しての許容範囲に優れ、感光体への帯電性能変動等を、高度に抑制した構成であるため、上記構成のトナーと併用することにより、極めて高画質な画像を、長期にわたって安定して得ることができるものである。
また、本発明の画像形成装置は、上述のような、高品質な画像を得るに適した構成のトナーとの併用ばかりでなく、粉砕法による不定形のトナーに対しても適用でき、装置寿命を大幅に延ばすことは言うまでもない。
【0223】
このような、粉砕法のトナーを構成する材料としては、通常、電子写真用トナーとして使用されるものが、特に制限なく、適用可能である。
該トナーに使用される一般的な結着剤樹脂の例としては、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン/p−クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ビニルメチルケトン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単重合体やその共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル誘導体;ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリオール系重合体、エポキシ系重合体、テルペン系重合体、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられ、単独あるいは混合して使用できるが特にこれらに限定するものではない。中でも、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂より選ばれる少なくとも1種以上であることが、電気特性、コスト面等から、より好ましいものである。更には、良好な定着特性を有するものとして、ポリエステル系樹脂および/またはポリオール系樹脂の使用が、一層好ましい。
【0224】
また、上述の事由により、帯電部材の被覆層に含まれる前記トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものは、線状ポリエステル樹脂組成物、線状ポリオール樹脂組成物、線状スチレンアクリル樹脂組成物、またはこれらの架橋物の内、少なくとも一種を好ましく用いることができる。
【0225】
粉砕法のトナーでは、これらの樹脂成分と共に、前述のような着色剤成分、ワックス成分、電荷制御成分等を、必要により前混合後、樹脂成分の溶融温度近傍以下で混練して、これを冷却後、粉砕分級工程を経て、トナーを作成すれば良く、また、必要により前述の外添成分を、適宜、添加混合すれば良い。
【実施例1】
【0226】
次に前述の実施形態1で説明した本発明に係る保護剤塗布装置の評価方法の具体的な実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0227】
図4は本実施例の評価に用いる保護剤塗布装置の構成の概略を示す図であり、図1の保護剤塗布装置2と同様の構成を簡略化して示したものである。この装置で使用する感光体の製造は、以下のように行った。
【0228】
(感光体)
直径30mmのアルミニウムドラム(導電性支持体)上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を、その順に塗布した後、乾燥し、3.6μmの下引き層、約0.14μmの電荷発生層、23μmの電荷輸送層、約3.5μmの保護層からなる感光体を30本作製した。このとき、保護層の塗工はスプレー法により行い、それ以外は浸漬塗工法により行った。保護層には、電荷輸送層に、平均粒径0.18μmのアルミナを23.8質量%添加した処方のものを用いた。
【0229】
使用する保護剤バーの製造は、以下のように行った。
(保護剤バー(11)の製造方法)
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を90重量部、TOPAS−TM(チコナ社製)を10重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、160〜250℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で88℃まで放冷後、アルミニウム製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バーを作成した。保護剤バーの底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0230】
保護剤バー(11)及び感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行った。分析によって得られたスペクトルを図6中A(感光体のスペクトル)およびB(保護剤バー(11)のスペクトル)に示す。感光体で得られたスペクトルでは、1770cm-1にポリカーボネート結合に由来するピーク(ピークa1(1770cm-1))、3040cm-1にフェニル基に由来するピーク(ピークa2(3040cm-1))、が見られた。保護剤バー(11)で得られたスペクトルでは、2850cm-1および2920cm-1にメチレン基に由来するピーク(ピークb1(2850cm-1)、ピークb2(2920cm-1)が見られた。
ここで、感光体をATR測定する際は、感光体の感光層をカッターを用いて1cm×1cmの大きさでアルミニウム基盤から剥がし測定サンプルとした。
【0231】
(保護剤塗布装置(11)の評価)
[実施例1−1](メチレン指標)
保護剤バー(11)の保護剤を感光体に塗布するため、ブラシ(2) (太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように保護剤塗布装置に装着し、ブラシ(2) は4.8Nのバネ圧で感光体(OPC)に押し付け、感光体(1-1)〜感光体(1-5)へ保護剤塗布を行なった(保護剤塗布装置(11))。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった。
【0232】
上記の保護剤塗布装置(11)を用いて120分間保護剤を塗布した感光体(1-4) をウルトラミクロトームを用いて薄くスライスし、TEM観察を行なったところ、TEM写真より、感光体上の保護剤の膜厚は20〜50nmであった。
【0233】
塗布時間の違う(3、10、40、120、360分)保護剤塗布後の感光体(1-1)〜感光体(1-5)について、各塗布時間の感光体についてそれぞれサンプリングを行い、サンプルをそれぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、図6中のスペクトルCを得た。
【0234】
この図6のCのスペクトルより、ピークb1(2850cm-1)の面積(Sb)と、ピークa1(1770cm-1)の面積(Sa)の比(Sb/Sa)をとることを試みた。ここで2850cm-1のピークは保護剤バー(11)に由来するピークであるが、このピークの近くに感光体に由来するピークが存在し、お互いのピークが重なってしまっているため、保護剤塗布後の感光体で得られたスペクトルと図6のAの感光体のみのスペクトルとの差スペクトルをとり、2850cm-1のピークの面積が感光体由来のピークの面積の影響を受けないように加工してから、Sb/Saを求めた。ここで、差スペクトルをとる際、1770cm-1に見られるピークがゼロになるようにそれぞれのスペクトルの吸光度に係数をかけ、適宜拡大縮小して、ピーク強度の調整を行なった。差をとった後のスペクトルを図6中のDに示す。塗布量の指標(Sb/Sa)は塗布時間が増加するに伴ない増加する傾向が見られ、10minで0.19、360minで0.38であった。また、保護剤を360分塗布した感光体(1-5) について、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて、同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が8%であった。
ここで、それぞれのピークの面積を求める際のバックグラウンドの始点および終点の波数および面積の積分範囲を下記の表1に示す。
【0235】
【表1】
【0236】
[実施例1−2](フェニル指標)
実施例1−1で得られたIRスペクトルにおいて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比(Sb/Sa)をとることを試みた。ここで2920cm-1のピークは保護剤バー(11)に由来するピークであるが、このピークの近くに感光体に由来するピークが存在し、お互いのピークが重なってしまっているが、ピークb2(2920cm-1)は感光体由来のピークより充分大きいため、実施例1−1で行なった、保護剤塗布後の感光体で得られたスペクトルと図6のAの感光体のみのスペクトルの差スペクトルをとる工程は削除した。塗布量の指標(Sb/Sa)は塗布時間が増加するに伴ない増加する傾向が見られ、10minで10.3、360minで23.2であった。また、保護剤を360分塗布した感光体(1-5) について、実施例1−1とは別にサンプリングした周方向に近接した5枚のサンプルを用いて、同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が12%であった。
【0237】
(保護剤塗布装置(12)の評価)
[実施例1−3]
保護剤バー(11)の保護剤を感光体に塗布するため、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように保護剤塗布装置に装着し、ブラシは4.8Nのバネ圧で感光体に押し付け、感光体(3-1)〜感光体(3-5)へ保護剤塗布を行なった(保護剤塗布装置(12))。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行った。塗布時間を変化させた(3、10、40、120、360分)保護剤塗布後の感光体(3-1)〜感光体(3-5)について、それぞれサンプリングを行い、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行なった。得られたスペクトルについて、実施例1−1と同様の手法で、ピークb1(2850cm-1)の面積(Sb)とピークa1(1770cm-1)の面積(Sa)の比をとり(Sb/Sa)、塗布時間とSb/Saの関係を見てみると、塗布量の指標(Sb/Sa)は塗布時間が増加するに伴ない増加する傾向が見られ、10minで0.06、360minで0.71であった。また、保護剤を360分塗布した感光体(3-5)について、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて、同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が11%であった。
【0238】
[実施例1−4]
実施例1−3で得られたIRスペクトルにおいて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比(Sb/Sa)を実施例1−2と同様の手法で算出することを試みた。塗布量の指標(Sb/Sa)は塗布時間が増加するに伴ない増加する傾向が見られ、10minで7.8、360minで39.8であった。また、保護剤を360分塗布した感光体(3-5) について、実施例1−3とは別に、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて、同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が7%であった。
【0239】
(ATRプリズムの種類、入射角、等に関する比較)
[実施例1−5]
実施例1−1で塗布した感光体(1-1)〜感光体(1-5)について、サンプリングを別途行い、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Smart Orbit(1回反射ATR、ダイヤモンド、入射角45°))を用いて、該サンプルの分析を行ない、同様の解析を行おうと試みた。その結果、ピークa1(1770cm-1)の面積は充分な大きさであったが塗布時間によらずほとんど変化がなく、保護剤由来のピークb1(2850cm-1)は非常に小さかった。かろうじてピークb1(2850cm-1)の面積を求めて塗布時間とSb/Saの相関を見てみたところ、Sb/Saは増加傾向があるものの、その増加量は非常に小さかった。また、保護剤を360分塗布した感光体(1-5) について、別途サンプリングを行い、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が35%であった。
【0240】
[実施例1−6]
実施例1−3で塗布した感光体(3-1)〜感光体(3-5)について、サンプリングを別途行い、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Seagull(1回反射ATR、Ge、入射角85°))を用いて、分析を行ない、同様の解析を行なった。ピークb1およびピークa1の面積について見ていくと、保護剤由来のピークb1(2850cm-1)の面積は塗布時間の増加と共に多少増加していたが、増加量はかなり小さく、また、ピークa1(1770cm-1)の面積は非常に小さかった。塗布時間に伴ないSb/Saは多少増加していたが増加量は小さかった。また、保護剤を360分塗布した感光体(3-5) について、別途サンプリングを行い、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が32%であった。
【0241】
[実施例1−7]
実施例1−1で塗布した感光体(1-1)〜感光体(1-5)について、サンプリングを別途行い、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、GATR(1回反射ATR、Ge、入射角30°))で分析を行ない、同様の解析を行おうと試みた。GATRのアクセサリの試料固定用のネジを回していきピークが検出し始めたところからネジを1/2回転したところでネジを固定し、試料が充分にATRプリズムに押し付けられたところで測定を行なった。
実施例1−1の場合と同様に、ピークa1(1770cm-1)もピークb1(2850cm-1)もはっきりと検出された。Sb/Saを算出したところ、塗布時間に伴ないSb/Saは多少増加していたが増加量は小さかった。また、保護剤を360分塗布した感光体(1-5) について、別途サンプリングを行い、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて、同様の解析行いSb/Saを算出したところ、Sb/Saの誤差が25%であった。
【0242】
(保護剤バー(12)の製造方法)
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を60重量部、トリステアリン酸ソルビタン(HLB:1.5)を25重量部、ノルマルパラフィン(平均分子量640)を15重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、180℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で90℃まで放冷後、アルミニウム製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バーを作成した。保護剤バーの底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0243】
[実施例1−8〜実施例1−12]
(実施例1−1の評価方法を用いて合否判定)
実施例1−1のように、ピークb1(2850cm-1)の面積(Sb)とピークa1(1770cm-1)の面積(Sa)のピークの面積(Sa)の比(Sb/Sa)をとる保護剤塗布装置の評価方法において、保護剤を10分間塗布した時のSb/Saが閾値0.03以上で、360分塗布したときの閾値が0.90以下となったときに、保護剤塗布装置を合格とし、以下のような評価を行なった。
【0244】
[実施例1−8]
感光体(8-1) および感光体(8-2) 、ブラシ(2) (太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(11)を4.8Nのバネ圧でブラシに押し付け、10分および360分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行った(保護剤塗布装置(11))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例1−1のようにSb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=0.17、360分塗布後でSb/Sa=0.36であり、保護剤塗布装置(11)は合格と評価した。
【0245】
[実施例1−9]
感光体(9-1) および感光体(9-2) 、ブラシ(3) (太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(11)を4.8Nのバネ圧でブラシに押し付け、10分および360分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行った(保護剤塗布装置(12))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例1−1のようにSb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=0.06、360分塗布後でSb/Sa=0.82であり、保護剤塗布装置(12)は合格と評価した。
【0246】
[実施例1−10]
感光体(10-1) および感光体(10-2) 、ブラシ(1) (太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり3万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(12)を2Nのバネ圧でブラシに押し付け、10分および360分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行った(保護剤塗布装置(13))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例1−1のようにSb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=0.02、360分塗布後でSb/Sa=0.23であり、保護剤塗布装置(13)は不合格と評価した。
【0247】
[実施例1−11]
感光体(11-1)および感光体(11-2)、ブラシ(3) (太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)とウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(11)を2Nのバネ圧でブラシに押し付け、10分および360分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(14))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例1−1のようにSb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=0.02、360分塗布後でSb/Sa=0.43であり、保護剤塗布装置(14)は不合格と評価した。
【0248】
[実施例1−12]
感光体(12-1)および感光体(12-2)、ブラシ(3) (太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)とウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(12)を4.8Nのバネ圧でブラシに押し付け、10分および360分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(15))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例1−1のようにSb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=0.12、360分塗布後でSb/Sa=1.1であり、保護剤塗布装置(15)は不合格と評価した。
【0249】
[実施例1−13〜実施例1−17]
(実施例1−2の評価方法を用いて合否判定)
実施例1−2のようにピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比(Sb/Sa)をとる保護剤塗布装置の評価方法において、保護剤を10分間塗布した時のSb/Saが閾値6.5以上で、360分塗布したときの閾値が44.0以下となったときに、保護剤塗布装置を合格として、以下のような評価を行なった。
【0250】
[実施例1−13]
実施例1−8で得られたIRスペクトルについて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比Sb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=12.1、360分塗布後でSb/Sa=22.8であり、保護剤塗布装置(11)は合格と評価した。
【0251】
[実施例1−14]
実施例1−9で得られたIRスペクトルについて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比Sb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=8.0、360分塗布後でSb/Sa=43.3であり、保護剤塗布装置(12)は合格と評価した。
【0252】
[実施例1−15]
実施例1−10で得られたIRスペクトルについて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比Sb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=6.0、360分塗布後でSb/Sa=18.7であり、保護剤塗布装置(13)は不合格と評価した。
【0253】
[実施例1−16]
実施例1−11で得られたIRスペクトルについて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比Sb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=5.8、360分塗布後でSb/Sa=27.6であり、保護剤塗布装置(14)は不合格と評価した。
【0254】
[実施例1−17]
実施例1−12で得られたIRスペクトルについて、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa)の比Sb/Saを算出したところ、10分塗布後でSb/Sa=10.3、360分塗布後でSb/Sa=73.2であり、保護剤塗布装置(15)は不合格と評価した。
【0255】
[実施例1−18]
画像形成装置として、IPSIO CX400(タンデム型カラー画像形成装置、(株)リコー製)を用い、この画像形成装置のブラックおよびシアンの感光体ユニット(画像形成部)において、それぞれ実施例1−8および実施例1−9で用いた感光体(8-2)および感光体(9-2)を組み込み、感光体の真上に帯電ローラを配置し、保護剤塗布装置(11)および保護剤塗布装置(12)と同じスプリングでそれぞれ帯電ローラを感光体に押し付け、感光体の線速を125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1450Hz、振幅1100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。ブラック感光体ユニットは保護剤塗布装置(11)と同じ条件になるようブラシ(2) およびウレタンブレードをセットし、シアン感光体ユニットは保護剤塗布装置(15)と同じ条件になるようブラシ(3) およびウレタンブレードをセットした。
【0256】
ブラックおよびシアンユニットについて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ出力して評価したところ、ブラックおよびシアンユニットから出力された画像は高画質画像であった。
続いて、ブラックおよびシアンユニットを用いて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ計70000枚出力したところ、ブラックユニットから出力された画像は高画質画像であったが、シアンユニットから出力された画像には白スジが見られた。
これにより、実施例1−8、実施例1−12および実施例1−13、実施例1−17のように閾値を設定する事で、保護剤塗布装置の合否の判別が可能となった。
【0257】
なお、以上の実施例1における保護剤塗布装置と、ATR分析と解析の条件および解析結果と、画像評価結果と、保護剤バーとを、下記の表2〜5にまとめて示す。
【0258】
【表2】
【0259】
【表3】
【0260】
【表4】
【0261】
【表5】
【実施例2】
【0262】
次に前述の実施形態2で説明した本発明に係る保護剤塗布装置の具体的な実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0263】
図4は本実施例の評価に用いる保護剤塗布装置の構成の概略を示す図であり、図1の保護剤塗布装置2と同様の構成を簡略化して示したものである。なお、図4の例では、保護剤塗布装置のブレードは、感光体表面にカウンター方式で接触している。
【0264】
(感光体)
保護剤を塗布する感光体の製造は、以下のように行った。
直径30mmのアルミニウムドラム(導電性支持体)上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を、その順に塗布した後、乾燥し、3.6μmの下引き層、約0.14μmの電荷発生層、23μmの電荷輸送層、約3.5μmの保護層からなる感光体を作製した。このとき、保護層の塗工はスプレー法により行ない、それ以外は浸漬塗工法により行った。保護層の詳細については以下の通りとした。
【0265】
(保護層)
Z型ポリカーボネート:10部
トリフェニルアミン化合物(下記の構造式1):7部
アルミナ微粒子(粒径0.3μm):5部
テトラヒドロフラン:400部
シクロヘキサノン:150部
【0266】
【化1】
【0267】
使用する保護剤バーの製造は、以下のように行った。
(保護剤バー(21)の製造方法)
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を85重量部、TOPAS−TM(チコナ社製)を10重量部、トリステアリン酸ソルビタン(HLB:1.5)を5重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、160〜250℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
【0268】
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で88℃まで放冷後、アルミニウム製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バーを作成した。保護剤バーの底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0269】
感光体および保護剤バー(21)について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行った。図6のAおよびBと非常によく似たスペクトル(吸光度スペクトル)を得た。感光体で得られたスペクトルでは、1770cm-1にカーボネートに由来するピーク(ピークa1(1770cm-1))、が見られた。保護剤バー(21)で得られたスペクトルでは、2850cm-1および2920cm-1にメチレン基に由来するピーク(ピークb1(2850cm-1)、ピークb2(2920cm-1)が見られた。
ここで、感光体をATR測定する際は、感光体の感光層をカッターを用いて1cm×1cmの大きさでアルミニウム基盤から剥がし測定サンプルとした。
【0270】
[実施例2−1]
保護剤バー(21)の保護剤を感光体に塗布するため、ブラシ2(太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように保護剤塗布装置に装着し、ブラシは4Nのバネ圧で感光体に押し付け、感光体(1-1)および感光体(1-2)へ保護剤塗布を行なった(保護剤塗布装置(21))。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった。
保護剤塗布装置(21)を用いて150分間保護剤を塗布した感光体(1-2)をウルトラミクロトームを用いて薄くスライスし、TEM観察を行なったところ、TEM写真より、感光体上の保護剤の膜厚は50〜85nmであった。
【0271】
塗布時間の違う(5、150分)保護剤塗布後の感光体(1-1)および感光体(1-2)について、各塗布時間の感光体についてそれぞれサンプリングを行い、サンプルをそれぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、図6のCと大方類似のスペクトル(塗布時間150分)(吸光度スペクトル)を得た。
【0272】
図6のCのスペクトルより、ピークb1(2850cm-1)の面積(Sb1)とピークa1(1770cm-1)のピークの面積(Sa1)の比(Sb1/Sa1)をとることを試みた。ここで2850cm-1のピークは保護剤バー(21)に由来するピークであるが、このピークの近くに感光体に由来するピークが存在し、お互いのピークが重なってしまっているため、実施例1と同様に保護剤塗布後の感光体で得られたスペクトルと図6のAの感光体のみのスペクトルとの差スペクトルをとり、2850cm-1のピークの面積が感光体由来のピークの面積の影響を受けないように加工してから、Sb1/Sa1を求めた。ここで、差スペクトルをとる際、1770cm-1に見られるピークがゼロになるようにそれぞれのスペクトルの吸光度に係数をかけ、適宜拡大縮小して、ピーク強度の調整を行なった。塗布量の指標(Sb1/Sa1)は塗布時間が増加するに伴ない増加する傾向が見られ、5minで0.082、150minで0.23であった。
ここで、それぞれのピークの面積を求める際のバックグラウンドの始点および終点の波数および面積の積分範囲を下記の表6に示す。
【0273】
【表6】
【0274】
[実施例2−2]
感光体(2-1)および感光体(2-2)、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(21)を4Nのバネ圧でブラシに押し付け、5分および150分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(22))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例2−1のようにSb1/Sa1を算出したところ、5分塗布後でSb1/Sa1=0.044、150分塗布後でSb1/Sa1=0.45であった。
【0275】
(保護剤バー(22)の製造方法)
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を55重量部、トリステアリン酸ソルビタン(HLB:1.5)を20重量部、ノルマルパラフィン(平均分子量640)を25重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、180℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
【0276】
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で90℃まで放冷後、アルミニウム製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バーを作成した。保護剤バーの底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0277】
[比較例2−1]
感光体(3-1)および感光体(3-2)、ブラシ(1)(太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり3万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(21)を1.8Nのバネ圧でブラシに、5分および150分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(23))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例2−1のようにSb1/Sa1を算出したところ、5分塗布後でSb1/Sa1=0.022、150分塗布後でSb1/Sa1=0.13であった。
【0278】
[比較例2−2]
感光体(4-1)および感光体(4-2)、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(22)を6Nのバネ圧でブラシに、5分および150分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(24))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例2−1のようにSb1/Sa1を算出したところ、5分塗布後でSb1/Sa1=0.14、150分塗布後でSb1/Sa1=0.88であった。
【0279】
[実施例2−3]
感光体(5-1)および感光体(5-2)、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(22)を3Nのバネ圧でブラシに、5分および150分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(25))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例2−1のようにSb1/Sa1を算出したところ、5分塗布後でSb1/Sa1=0.032、150分塗布後でSb1/Sa1=0.32であった。
【0280】
[画像評価結果]
画像形成装置として、IPSIO CX400(タンデム型カラー画像形成装置、(株)リコー製)を用い、この画像形成装置のブラックのプロセスカートリッジ(1) には実施例2−1で用いた保護剤塗布装置(21)と同じ構成となるように、各部材(保護剤バー、ブラシ、押圧力付与バネ)を組み込み、シアンのプロセスカートリッジ(1) には比較例2−1で用いた保護剤塗布装置(23)と同じ構成となるように、各部材を組み込み、マゼンタのプロセスカートリッジ(1) には比較例2−2で用いた保護剤塗布装置(24)と同じ構成となるように、各部材を組み込み、感光体の線速を125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1450Hz、振幅1100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。尚、各プロセスカートリッジには、図1の保護材塗布装置においては組み込んでいなかった帯電ローラ3を組み込んだ。また、いずれのプロセスカートリッジにおいても、実施例2−1〜2−3および比較例2−1〜2−2で用いたものと同じ感光体で新品の感光体を組み込んだ。
【0281】
ブラック、シアンおよびマゼンタのプロセスカートリッジついて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ出力して評価したところ、ブラック、シアンおよびマゼンタのプロセスカートリッジから出力された画像は高画質画像であった。
続いて、ブラック、シアンおよびマゼンタのプロセスカートリッジを用いて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ計60000枚出力したところ、ブラックのプロセスカートリッジから出力された画像は高画質画像であったが、シアンのプロセスカートリッジから出力された画像には白スジが見られ、マゼンタのプロセスカートリッジから出力された画像には黒スジが見られた。
【0282】
続いて、同様の評価を、実施例2−2および比較例2−1の保護剤塗布装置と同じ構成のプロセスカートリッジを用いて行なった。
画像形成装置として、IPSIO CX400(タンデム型カラー画像形成装置、(株)リコー製)を用い、この画像形成装置のブラックのプロセスカートリッジ(2) には実施例2−2で用いた保護剤塗布装置(22)と同じ構成となるように、各部材(保護剤バー、ブラシ、押圧力付与バネ)を組み込み、シアンのプロセスカートリッジ(2) には比較例2−3で用いた保護剤塗布装置(25)と同じ構成となるように、各部材を組み込み、感光体の線速を125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1450Hz、振幅1100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。尚、各プロセスカートリッジには、図1の保護材塗布装置においては組み込んでいなかった帯電ローラを組み込んだ。また、いずれのプロセスカートリッジにおいても、実施例2−1〜2−3および比較例2−1〜2−2で用いたものと同じ感光体で新品の感光体を組み込んだ。
【0283】
ブラックおよびシアンのプロセスカートリッジついて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ出力して評価したところ、ブラックおよびシアンから出力された画像は高画質画像であった。
続いて、ブラックおよびシアンのプロセスカートリッジを用いて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ計60000枚出力したところ、ブラックのプロセスカートリッジから出力された画像は高画質画像であったが、シアンのプロセスカートリッジから出力された画像には白スジが見られた。
【0284】
なお、以上の実施例1における保護剤塗布装置と、ATR分析と解析の条件および解析結果と、画像評価結果と、保護剤バーとを、下記の表7〜10にまとめて示す。
【0285】
【表7】
【0286】
【表8】
【0287】
【表9】
【0288】
【表10】
【実施例3】
【0289】
次に本発明の前述の実施形態2で説明した本発明に係る保護剤塗布装置の具体的な別の実施例を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0290】
図4は本実施例の評価に用いる保護剤塗布装置の構成の概略を示す図であり、図1の保護剤塗布装置2と同様の構成を簡略化して示したものである。この装置で使用する感光体の製造は、以下のように行った。
【0291】
(感光体)
直径30mmのアルミニウムドラム(導電性支持体)上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を、その順に塗布した後、乾燥し、3.6μmの下引き層、約0.14μmの電荷発生層、22μmの電荷輸送層、約3.5μmの保護層からなる感光体を作製した。このとき、保護層の塗工はスプレー法により行ない、それ以外は浸漬塗工法により行なった。保護層の詳細については以下の通りとした。
【0292】
(保護層)
Z型ポリカーボネート:10部
トリフェニルアミン化合物(前記構造式1):7部
アルミナ微粒子(粒径0.3μm):5部
テトラヒドロフラン:400部
シクロヘキサノン:150部
【0293】
使用する保護剤バーの製造は、以下のように行った。
(保護剤バー(31)の製造方法)
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を90重量部、TOPAS−TM(チコナ社製)を5重量部、トリステアリン酸ソルビタン(HLB:1.5)を5重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、160〜250℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
【0294】
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で88℃まで放冷後、アルミニウム製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バーを作成した。保護剤バーの底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0295】
感光体および保護剤バー(31)について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、図6のAおよびBと非常によく似たスペクトル(吸光度スペクトル)を得た。感光体で得られたスペクトルでは、3040cm-1にフェニル基に由来するピーク(ピークa2(3040cm-1))、が見られた。保護剤バー(31)で得られたスペクトルでは、2850cm-1および2920cm-1にメチレン基に由来するピーク(ピークb1(2850cm-1)、ピークb2(2920cm-1)が見られた。
ここで、感光体をATR測定する際は、感光体の感光層をカッターを用いて1cm×1cmの大きさでアルミニウム基盤から剥がし測定サンプルとした。
【0296】
[実施例3−1]
保護剤バー(31)の保護剤を感光体に塗布するため、ブラシ(2)(太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように保護剤塗布装置に装着し、ブラシ(2) は4.8Nのバネ圧で感光体に押し付け、感光体(1-1)および感光体(1-2)へ保護剤塗布を行なった(保護剤塗布装置(31))。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった。
保護剤塗布装置(31)を用いて120分間保護剤を塗布した感光体(1-2)をウルトラミクロトームを用いて薄くスライスし、TEM観察を行なったところ、TEM写真より、感光体上の保護剤の膜厚は25〜70nmであった。
【0297】
塗布時間の違う(15、120分)保護剤塗布後の感光体(1-1)および感光体(1-2)について、各塗布時間の感光体についてそれぞれサンプリングを行い、サンプルをそれぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、図6のCと大方類似のスペクトル(塗布時間120分)(吸光度スペクトル)を得た。
図6のCのスペクトルより、ピークb2(2920cm-1)の面積(Sb2)とピークa2(3040cm-1)のピークの面積(Sa2)の比(Sb2/Sa2)をとることを試みた。ここで2920cm-1のピークは保護剤バー(31)に由来するピークであるが、このピークの近くに感光体に由来するピークが存在し、お互いのピークが重なってしまっているが、ピークb2(2920cm-1)は感光体由来のピークより充分大きいため、保護剤塗布後の感光体で得られたスペクトルと図6のAの感光体のみのスペクトルの差スペクトルをとる工程は削除した。塗布量の指標(Sb2/Sa2)は13.5であった。また、同様にして塗布時間15分における塗布量の指標(Sb2/Sa2)を求めると9.8であった。
ここで、それぞれのピークの面積を求める際のバックグラウンドの始点および終点の波数および面積の積分範囲を下記の表11に示す。
【0298】
【表11】
【0299】
[実施例3−2]
感光体(2-1)および感光体(2-2)、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(31)を4.8Nのバネ圧でブラシに押し付けて、15分および120分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(32))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例3−1のようにSb2/Sa2を算出したところ、15分塗布後でSb2/Sa2=8.0、120分塗布後でSb2/Sa2=18.6であった。
【0300】
(保護剤バー(32)の製造方法)
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を55重量部、トリステアリン酸ソルビタン(HLB:1.5)を25重量部、ノルマルパラフィン(平均分子量640)を20重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、180℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
【0301】
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で90℃まで放冷後、アルミニウム製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バーを作成した。保護剤バーの底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0302】
[比較例3−1]
感光体(3-1)および感光体(3-2)、ブラシ(1)(太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり3万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(31)を2Nのバネ圧でブラシに押し付け、15分および120分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(33))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例3−1のようにSb2/Sa2を算出したところ、15分塗布後でSb2/Sa2=6.3、120分塗布後でSb2/Sa2=8.1であった。
【0303】
[比較例3−2]
感光体(4-1)および感光体(4-2)、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(32)を6Nのバネ圧でブラシに押し付け、15分および120分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(34))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例3−1のようにSb2/Sa2を算出したところ、15分塗布後でSb2/Sa2=13.2、120分塗布後でSb2/Sa2=38.9であった。
【0304】
[実施例3−3]
感光体(5-1)および感光体(5-2)、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(32)を3Nのバネ圧でブラシに押し付け、15分および120分間感光体への保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(35))。
保護剤塗布後の感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例3−1のようにSb2/Sa2を算出したところ、15分塗布後でSb2/Sa2=9.4、120分塗布後でSb2/Sa2=25.5であった。
【0305】
[画像評価結果]
画像形成装置として、IPSIO CX400(タンデム型カラー画像形成装置、(株)リコー製)を用い、この画像形成装置のブラックのプロセスカートリッジ(1) には実施例3−1で用いた保護剤塗布装置(31)と同じ構成となるように、各部材(保護剤バー、ブラシ、押圧力付与バネ)を組み込み、シアンのプロセスカートリッジ(1) には比較例3−1で用いた保護剤塗布装置(33)と同じ構成となるように、各部材を組み込み、マゼンタのプロセスカートリッジ(1) には比較例3−2で用いた保護剤塗布装置(34)と同じ構成となるように、各部材を組み込み、感光体の線速を125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1450Hz、振幅1100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。尚、各プロセスカートリッジには、図1の保護材塗布装置においては組み込んでいなかった帯電ローラを組み込んだ。また、いずれのプロセスカートリッジにおいても、実施例3−1〜3−3および比較例3−1〜3−2で用いたものと同じ感光体で新品の感光体を組み込んだ。
【0306】
ブラック、シアンおよびマゼンタのプロセスカートリッジついて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ出力して評価したところ、ブラック、シアンおよびマゼンタから出力された画像は高画質画像であった。
続いて、ブラック、シアンおよびマゼンタのプロセスカートリッジを用いて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ計50000枚出力したところ、ブラックのプロセスカートリッジから出力された画像は高画質画像であったが、シアンのプロセスカートリッジから出力された画像には白スジが見られ、マゼンタのプロセスカートリッジから出力された画像には黒スジが見られた。
【0307】
続いて、同様の評価を、実施例2−2および比較例2−1の保護剤塗布装置と同じ構成のプロセスカートリッジを用いて行なった。
画像形成装置として、IPSIO CX400(タンデム型カラー画像形成装置、(株)リコー製)を用い、この画像形成装置のブラックのプロセスカートリッジ(2) には実施例3−2で用いた保護剤塗布装置(32)と同じ構成となるように、各部材(保護剤バー、ブラシ、押圧力付与バネ)を組み込み、シアンのプロセスカートリッジ(2) には比較例3−3で用いた保護剤塗布装置(35)と同じ構成となるように、各部材を組み込み、感光体の線速を125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1450Hz、振幅1100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。尚、各プロセスカートリッジには、図1の保護材塗布装置においては組み込んでいなかった帯電ローラを組み込んだ。また、いずれのプロセスカートリッジにおいても、実施例3−1〜3−3および比較例3−1〜3−2で用いたものと同じ感光体で新品の感光体を組み込んだ。
【0308】
ブラックおよびシアンのプロセスカートリッジついて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ出力して評価したところ、ブラックおよびシアンから出力された画像は高画質画像であった。
続いて、ブラックおよびシアンのプロセスカートリッジを用いて、図5のようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ計50000枚出力したところ、ブラックのプロセスカートリッジから出力された画像は高画質画像であったが、シアンのプロセスカートリッジから出力された画像には白スジが見られた。
【0309】
なお、以上の実施例3における保護剤塗布装置と、ATR分析と解析の条件および解析結果と、画像評価結果と、保護剤バーとを、下記の表12〜15にまとめて示す。
【0310】
【表12】
【0311】
【表13】
【0312】
【表14】
【0313】
【表15】
【図面の簡単な説明】
【0314】
【図1】本発明の保護層形成装置を備えた画像形成部の要部構成例を示す概略要部構成図である。
【図2】本発明の画像形成装置に具備されるプロセスカートリッジを用いた画像形成部(画像形成ステーション)の構成例を説明するための概略断面図である。
【図3】本発明の保護層形成装置を具備する画像形成装置100の構成例を示す概略構成図である。
【図4】評価時に用いる保護層形成装置の構成例を示す概略構成図である。
【図5】評価用の出力画像の例を示す図である。
【図6】保護剤塗布前の感光体表面のIRスペクトルA(吸光度スペクトル)と、保護剤単独のIRスペクトルB(吸光度スペクトル)と、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の感光体のIRスペクトルC(吸光度スペクトル)と、差スペクトルDを示す図である。
【図7】IRスペクトルA〜Cに存在するピークの例を示す模式図である。
【図8】IRスペクトルA〜Cに存在するピークの別の例を示す模式図である。
【図9】IRスペクトルA〜Cに存在するピークの別の例を示す模式図である。
【図10】IRスペクトルA〜Cに存在するピークの別の例を示す模式図である。
【図11】IRスペクトルA〜Cに存在するピークの別の例を示す模式図である。
【図12】IRスペクトルA〜Cに存在するピークの別の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0315】
1(1Y,1M,1C,1K):感光体(像担持体)
2:保護剤塗布装置
3:帯電装置(帯電手段)
4:クリーニング装置(クリーニング手段)
5:現像装置(現像手段)
6:一次転写装置(転写手段)
7:中間転写媒体(または転写媒体)
8:潜像形成装置
9:ベルトクリーニング装置
10:画像形成部(画像形成ステーション)
11:プロセスカートリッジ
12:二次転写装置
13:搬送装置
14:定着装置
15:搬送装置
16:排紙ローラ
17:排紙トレイ
21:保護剤バー
22:保護剤供給部材
22a:ブラシ状部材(ブラシ)
22b:支持体
23:押圧力付与機構
24:保護層形成機構
24a:ブレード状部材
24b:押圧部材
25:保護剤バー支持ガイド
41:クリーニング部材(ブレード)
42:クリーニング押圧機構
51:現像ローラ
52,53:攪拌搬送スクリュー
100:画像形成装置
110:画像形成装置本体(プリンタ部)
120:原稿読取部(スキャナ部)
130:原稿自動給紙装置(ADF)
200:給紙部
201a〜201d:給紙カセット
202:給紙ローラ
203:分離ローラ
204,205,206:搬送ローラ
207:レジストローラ
210:両面用搬送装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体の表面に保護剤を塗布する保護剤塗布装置において、
赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法において、ATRプリズムとしてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定を行い得られる吸光度スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)について、保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルをIRスペクトルA、保護剤単独のIRスペクトルをIRスペクトルBとすると、
保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の像担持体のIRスペクトル(IRスペクトルCとする)中で、前記IRスペクトルBに存在せず、前記IRスペクトルAに存在する1770cm-1に見られるピーク(ピークa1とする)のピーク面積(Sa1)と、前記IRスペクトルAに存在せず、前記IRスペクトルBに存在する2850cm-1に見られるピーク(ピークb1とする)のピーク面積(Sb1)の比(Sb1/Sa1)より、前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価したとき、
前記保護剤を5分塗布した後の前記像担持体におけるSb1/Sa1の値が0.02以上、150分塗布した後の前記像担持体におけるSb1/Sa1の値が0.85以下となることを特徴とする保護剤塗布装置。
【請求項2】
像担持体の表面に保護剤を塗布する保護剤塗布装置において、
赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法において、ATRプリズムとしてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定を行い得られる吸光度スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)について、保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルをIRスペクトルA、保護剤単独のIRスペクトルをIRスペクトルBとすると、
保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の像担持体のIRスペクトル(IRスペクトルCとする)中で、前記IRスペクトルBに存在せず、前記IRスペクトルAに存在する3040cm-1に見られるピーク(ピークa2とする)のピーク面積(Sa2)と、前記IRスペクトルAに存在せず、前記IRスペクトルBに存在する2920cm-1に見られるピーク(ピークb2とする)のピーク面積(Sb2)の比(Sb2/Sa2)より、前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価したとき、
前記保護剤を15分塗布した後の前記像担持体におけるSb2/Sa2の値が6.5以上、120分塗布した後の前記像担持体におけるSb2/Sa2の値が38以下となることを特徴とする保護剤塗布装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の保護剤塗布装置において、
前記保護剤は、パラフィンを主体とする保護剤であることを特徴とする保護剤塗布装置。
【請求項4】
請求項3に記載の保護剤塗布装置において、
前記保護剤は、パラフィンを50〜95重量%含有していることを特徴とする保護剤塗布装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置において、
前記保護剤としてパラフィンを主体とする保護剤バーを用い、該保護剤バーの保護剤を掻き取るブラシを有し、該ブラシには、金属製の芯金上に直径が28〜42μmの単繊維を1平方インチ当たり5万〜60万本、静電植毛することにより製造したブラシを用いており、前記保護剤バーの保護剤を前記ブラシにより掻き取り、そのブラシを像担持体に押し当てることにより、前記パラフィンを主体とする保護剤を像担持体に供給し、前記像担持体にブレードを押し当てることにより、前記像担持体上に保護剤を固定することを特徴とする保護剤塗布装置。
【請求項6】
像担持体と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置を備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスカートリッジにおいて、
前記像担持体と前記保護剤塗布装置に加えて、前記像担持体を帯電する帯電手段を備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセスカートリッジにおいて、
前記像担持体は感光体であり、前記帯電手段は交流(AC)帯電を行うことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
画像形成部に、像担持体と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9記載の画像形成装置において、
前記像担持体は感光体であり、該感光体を帯電する帯電手段を備え、該帯電手段は交流(AC)帯電を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
画像形成部に、請求項6〜8のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
像担持体の表面に保護剤塗布装置を用いて保護剤を塗布した後の前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価する保護剤塗布装置の評価方法において、
赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法により測定される吸光度スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)について、保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルAと保護剤単独のIRスペクトルBを比較したとき、
前記IRスペクトルAには、前記IRスペクトルBに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有し、
前記IRスペクトルBには、前記IRスペクトルAに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有しており、
前記保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の前記像担持体のIRスペクトルC中の、前記IRスペクトルBに存在せず、前記IRスペクトルAに存在する任意の一つのピーク(ピークaとする)のピーク面積(Sa)と、
前記IRスペクトルAに存在せず、前記IRスペクトルBに存在する任意の一つのピーク(ピークbとする)のピーク面積(Sb)の比(Sb/Sa)より、前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価することを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項13】
請求項12に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
赤外吸収スペクトル法のATR法で、赤外光をサンプルに照射した際の赤外光の強度がサンプル表面における強度の1/eになる距離を示すもぐり込み深さとした場合、保護剤の膜厚が潜り込み深さに対して0.4〜85%であることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記ピークaが検出される赤外光の波長でのもぐり込み深さが、前記ピークbが検出される赤外光の波長でのもぐり込み深さの50〜170%であることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記保護剤はパラフィンを50重量%以上含有しており、前記ピークbはメチレン基に由来するピークであることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記保護剤はメチレン基を有する有機化合物を含有しており、前記ピークbはメチレン基に由来するピークであることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記像担持体表面にフェニル基を有する有機化合物を含有していて、前記ピークaはフェニル基に由来するピークであることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項18】
請求項12〜17のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記像担持体表面にカーボネート結合を有する有機化合物を含有しており、前記ピークaはカーボネート結合に由来するピークであることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項19】
請求項12〜18のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記保護剤を前記像担持体に塗布していって一定の塗布時間以内で、前記保護剤の塗布量の指標である面積比(Sb/Sa)が、閾値以下となるときに、前記保護剤塗布装置を合格とすることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項20】
請求項12〜19のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記保護剤を塗布する像担持体は、プロセスカートリッジあるいは画像形成装置に用いられる感光体であることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項1】
像担持体の表面に保護剤を塗布する保護剤塗布装置において、
赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法において、ATRプリズムとしてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定を行い得られる吸光度スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)について、保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルをIRスペクトルA、保護剤単独のIRスペクトルをIRスペクトルBとすると、
保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の像担持体のIRスペクトル(IRスペクトルCとする)中で、前記IRスペクトルBに存在せず、前記IRスペクトルAに存在する1770cm-1に見られるピーク(ピークa1とする)のピーク面積(Sa1)と、前記IRスペクトルAに存在せず、前記IRスペクトルBに存在する2850cm-1に見られるピーク(ピークb1とする)のピーク面積(Sb1)の比(Sb1/Sa1)より、前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価したとき、
前記保護剤を5分塗布した後の前記像担持体におけるSb1/Sa1の値が0.02以上、150分塗布した後の前記像担持体におけるSb1/Sa1の値が0.85以下となることを特徴とする保護剤塗布装置。
【請求項2】
像担持体の表面に保護剤を塗布する保護剤塗布装置において、
赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法において、ATRプリズムとしてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定を行い得られる吸光度スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)について、保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルをIRスペクトルA、保護剤単独のIRスペクトルをIRスペクトルBとすると、
保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の像担持体のIRスペクトル(IRスペクトルCとする)中で、前記IRスペクトルBに存在せず、前記IRスペクトルAに存在する3040cm-1に見られるピーク(ピークa2とする)のピーク面積(Sa2)と、前記IRスペクトルAに存在せず、前記IRスペクトルBに存在する2920cm-1に見られるピーク(ピークb2とする)のピーク面積(Sb2)の比(Sb2/Sa2)より、前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価したとき、
前記保護剤を15分塗布した後の前記像担持体におけるSb2/Sa2の値が6.5以上、120分塗布した後の前記像担持体におけるSb2/Sa2の値が38以下となることを特徴とする保護剤塗布装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の保護剤塗布装置において、
前記保護剤は、パラフィンを主体とする保護剤であることを特徴とする保護剤塗布装置。
【請求項4】
請求項3に記載の保護剤塗布装置において、
前記保護剤は、パラフィンを50〜95重量%含有していることを特徴とする保護剤塗布装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置において、
前記保護剤としてパラフィンを主体とする保護剤バーを用い、該保護剤バーの保護剤を掻き取るブラシを有し、該ブラシには、金属製の芯金上に直径が28〜42μmの単繊維を1平方インチ当たり5万〜60万本、静電植毛することにより製造したブラシを用いており、前記保護剤バーの保護剤を前記ブラシにより掻き取り、そのブラシを像担持体に押し当てることにより、前記パラフィンを主体とする保護剤を像担持体に供給し、前記像担持体にブレードを押し当てることにより、前記像担持体上に保護剤を固定することを特徴とする保護剤塗布装置。
【請求項6】
像担持体と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置を備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスカートリッジにおいて、
前記像担持体と前記保護剤塗布装置に加えて、前記像担持体を帯電する帯電手段を備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセスカートリッジにおいて、
前記像担持体は感光体であり、前記帯電手段は交流(AC)帯電を行うことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
画像形成部に、像担持体と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9記載の画像形成装置において、
前記像担持体は感光体であり、該感光体を帯電する帯電手段を備え、該帯電手段は交流(AC)帯電を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
画像形成部に、請求項6〜8のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
像担持体の表面に保護剤塗布装置を用いて保護剤を塗布した後の前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価する保護剤塗布装置の評価方法において、
赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法により測定される吸光度スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)について、保護剤塗布前の像担持体表面のIRスペクトルAと保護剤単独のIRスペクトルBを比較したとき、
前記IRスペクトルAには、前記IRスペクトルBに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有し、
前記IRスペクトルBには、前記IRスペクトルAに存在しない少なくとも一つ以上の吸収ピークを有しており、
前記保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の前記像担持体のIRスペクトルC中の、前記IRスペクトルBに存在せず、前記IRスペクトルAに存在する任意の一つのピーク(ピークaとする)のピーク面積(Sa)と、
前記IRスペクトルAに存在せず、前記IRスペクトルBに存在する任意の一つのピーク(ピークbとする)のピーク面積(Sb)の比(Sb/Sa)より、前記像担持体上の保護剤の塗布量を評価することを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項13】
請求項12に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
赤外吸収スペクトル法のATR法で、赤外光をサンプルに照射した際の赤外光の強度がサンプル表面における強度の1/eになる距離を示すもぐり込み深さとした場合、保護剤の膜厚が潜り込み深さに対して0.4〜85%であることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記ピークaが検出される赤外光の波長でのもぐり込み深さが、前記ピークbが検出される赤外光の波長でのもぐり込み深さの50〜170%であることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記保護剤はパラフィンを50重量%以上含有しており、前記ピークbはメチレン基に由来するピークであることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記保護剤はメチレン基を有する有機化合物を含有しており、前記ピークbはメチレン基に由来するピークであることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記像担持体表面にフェニル基を有する有機化合物を含有していて、前記ピークaはフェニル基に由来するピークであることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項18】
請求項12〜17のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記像担持体表面にカーボネート結合を有する有機化合物を含有しており、前記ピークaはカーボネート結合に由来するピークであることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項19】
請求項12〜18のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記保護剤を前記像担持体に塗布していって一定の塗布時間以内で、前記保護剤の塗布量の指標である面積比(Sb/Sa)が、閾値以下となるときに、前記保護剤塗布装置を合格とすることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【請求項20】
請求項12〜19のいずれか1項に記載の保護剤塗布装置の評価方法において、
前記保護剤を塗布する像担持体は、プロセスカートリッジあるいは画像形成装置に用いられる感光体であることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−31738(P2009−31738A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64785(P2008−64785)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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