説明

保護回路を有する電池パック

【課題】電池セル電圧が過放電保護電圧Vp未満であるときに保護ICの消費電流を抑制する機能を、簡素な構成で設ける。
【解決手段】二次電池セル1と、セル電圧を検出し所定の放電下限電圧VLと比較して制御信号を出力する保護IC2と、充放電経路に挿入され保護ICにより制御される放電電流遮断素子6とを備える。保護ICは、セル電圧が放電下限電圧VL未満であるときに、放電電流遮断素子が充放電経路を遮断するように制御する。二次電池セルの一方の端子と回路との経路に挿入された経路遮断FET3を備え、二次電池セルの他方の端子がFETのゲートに接続され、経路遮断FETは、セル電圧が放電下限電圧VL以下の値に設定された過放電保護電圧Vp未満であるときに、ゲートに印加される電圧によりオフに制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池から電力を供給するとともに、その二次電池の過放電等に対する保護回路を有する電池パックに関し、特に、過放電時において、保護回路を構成する保護ICの消費電流を抑制する機能に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は一般的に、過充電、過放電などにより劣化するため、二次電池を使用した電池パックには、過充電や過放電から二次電池を保護する保護回路が用いられている。特に、リチウムイオン二次電池は、過充電や過放電に弱いため、保護回路を備えることが必須である。
【0003】
保護回路は、電池セルの電圧や充放電電流を監視する保護IC、及び電池パックの充放電(入出力)経路に直列に挿入された電流遮断用FET等により構成される。保護ICは、異常の発生を検出したときに、電流遮断用FETを制御して電池パックの入出力を遮断する機能を提供する。すなわち、放電が進んで電池電圧が放電下限電圧VL未満になると保護ICが作動し、電流遮断用FETをオフ状態に制御して負荷に流れ込む放電電流を遮断することで、二次電池の過放電を防止する。
【0004】
さらに、リチウムイオン電池は過放電状態で長期放置されると劣化するので、保護回路には過放電保護の機能が搭載されている。すなわち、電池電圧が所定の過放電保護電圧Vp未満になった場合、電流遮断用FETにより放電電流が遮断された過放電防止動作に加えて、保護ICの消費電流もnAオーダーに抑制することにより、長期保存性を高める機能が設けられる。
【0005】
しかし、基本保護回路に下記のような追加機能がある場合、過放電保護電圧Vp未満になっても、保護ICの消費電流はμAオーダー(回路によってはmAオーダに近くなる。)のままである状態が発生する。
【0006】
(1)1直用保護ICをセルバランス回路に使用した場合
(2)過充電セカンド保護を搭載した場合
(3)過放電保護以下で消費電流を遮断しない回路を追加した場合
過放電状態(リチウムイオン電池セルの電圧が2V以下)で消費電流が大きいと、セルが短期間で0Vになり劣化してしまう。また、セル電圧が0Vになるとセル中の銅が溶け出し、再び充電する際析出し発火に至る危険性が生じる。
【0007】
これに対して、例えば特許文献1には、二次電池の過放電防止装置において、過放電検出後の消費電流を最小限に抑制し、電池の寿命向上を図るための回路が開示されている。図7はその構成を示す回路図である。二次電池101は、その正極(+)側と負極(−)側が、MOS−FETからなる第1スイッチ回路102を介して出力端子T1、T2に引き出され、この出力端子間に負荷が接続される。
【0008】
第1スイッチ回路102は、バイポーラトランジスタからなる第1駆動回路103によって駆動される。電圧監視部(保護IC)104は二次電池101の電圧を監視して、出力Doutを第1駆動回路103の入力に供給する。第1駆動回路103の入力には更に、第1スイッチ回路102の出力が、ツェナーダイオードからなる定電圧素子105を介してOR接続されている。電圧監視部104の電源ラインには、MOS−FETからなる第2スイッチ回路106が接続されており、その入力にはバイポーラトランジスタ107aを含む第2駆動回路107が接続されている。定電圧素子105のツェナー電圧Vzは、第2駆動回路107のスレッシュホールドレベルよりも高く設定されている。電圧監視部104に供給される駆動用電源Vccと、監視電源Vddは同一である。
【0009】
この回路において、負荷に対する二次電池101の放電を開始する時、第1駆動回路103はオンであるため、第1スイッチ回路102がオン状態とされて、二次電池101からの放電電流が第1スイッチ回路102を通して負荷に流れ込む。この状態では第2駆動回路107はオン状態を維持しているため、第2スイッチ回路106もオンとされ、電源監視部4には電源Vcc、Vddが供給されている。この時、電源Vddは放電下限電圧VL以上であるため、その出力DoutはH状態を維持している。
【0010】
放電が進むに連れて電池電圧が徐々に降下し、Vddが放電下限電圧VLを下回ると電圧監視部104がこれを検出し、その出力DoutがHからLに変化して第1駆動回路103をオフにすると共に、その出力のHによって、第1スイッチ回路102がオフ状態とされ、負荷への電流供給が遮断される。
【0011】
放電電流が遮断されると、出力端子T1、T2間の出力電圧Vは0Vに向かって低下していく。この時、出力電圧Vが定電圧素子105のツェナー電圧Vzを下回ると定電圧素子105はオフして第1駆動回路103の駆動電流が遮断されるため、第1駆動回路103がオフに固定されて次段の第1スイッチ回路102のオフ状態が確立される。
【0012】
更に出力電圧Vが低下して、第2駆動回路107の入力電位(トランジスタQsのベース電位)がスレッシュホールドレベルを下回ると、第2駆動回路107がオフとなって次段の第2スイッチ回路106がオフにされるため、電圧監視部104に対する電力供給の経路が遮断され、過放電検出後の電池の過放電は完全に防止される。
【0013】
なお、第2スイッチ回路106のオフによって電圧監視部104への電力供給が停止され、その出力Doutのレベルが不安定になっても、既に定電圧素子105がオフして第1駆動回路103がオフに固定されているため、第2駆動回路107が再度オンして一時的に電池出力が発振するといったトラブルが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−205726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に開示された上記構成の過放電防止装置では、電圧監視部(保護IC)104への電力供給を停止する過放電保護の機能を持たせるために、過放電防止のための回路構成に加えて、第2スイッチ回路106および第2駆動回路107が設けられる。しかし、第2駆動回路107には、通常動作時に電流が流れるため、通常動作時の消費電流が増大することになる。
【0016】
また、第2スイッチ回路106および第2駆動回路107からなる過放電保護の回路を構成するための回路部品数が多くなり、安価な保護回路の製造に対する障害となる。
【0017】
さらに、この回路は、第1スイッチ回路102のMOS−FETがオフすることにより第2駆動回路107が動作し、第2スイッチ回路106をオフさせて電圧監視部104への電力供給が停止される構成である。従って、過放電防止のための動作だけでなく、例えば過電流保護のために第1スイッチ回路102により充放電経路が遮断された場合にも、電圧監視部104への電流供給が遮断されることになる。そのため、通常動作に復帰するためには充電動作が行なわれることが必要である。
【0018】
以上の状況を考慮して、本発明は、電池セルの端子電圧が過放電保護電圧Vp未満であるときに保護ICの消費電流を最小限レベルに抑制する機能が、通常動作時の消費電流を増大させることなく、簡素な構成で安価に設けられた電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の電池パックは、二次電池セルと、前記二次電池セルのセル電圧を検出し所定の放電下限電圧VLと比較して、その比較結果に応じた制御信号を出力する保護ICと、電池パック外部に対する充放電経路に挿入され前記保護ICが出力する前記制御信号により制御される放電電流遮断素子とを備え、前記保護ICは、前記セル電圧が前記放電下限電圧VL以下または未満であるときに、前記放電電流遮断素子が前記充放電経路を遮断するように前記制御信号を出力する。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の電池パックは、前記二次電池セルの一方の端子とその端子から回路に繋がる経路に挿入された経路遮断FETを備え、前記二次電池セルの両端には前記FET若しくは別のFETのゲートとソースが接続され、前記経路遮断FETは、前記セル電圧が前記放電下限電圧VL以下の値に設定された過放電保護電圧Vp未満であるときに、前記ゲートに印加される電圧によりオフに制御されるように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記構成によれば、2直列までの構成では、FETのゲート・ソース遮断特性を効果的に利用して機能させられるので、二次電池セルの各端子から回路に繋がる経路にFETを挿入する構成により、放電下限電圧以下になった後の消費電流の抑制機能を得ることができる。これにより、通常動作時の消費電流を増大させることなく、かつ安価な回路を実現できる。また、過電流保護動作時からの復帰に影響を及ぼすことも無い。また、3直列以上の構成でも、通常動作時の消費電流は若干増大するものの、過電流保護動作時からの復帰に影響を及ぼすことは無い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における保護回路を有する電池パックの回路図
【図2】本発明の実施の形態2における保護回路を有する電池パックの回路図
【図3】本発明の実施の形態3における保護回路を有する電池パックの回路図
【図4】本発明の実施の形態4における保護回路を有する電池パックの回路図
【図5】本発明の実施の形態5における保護回路を有する電池パックの回路図
【図6】本発明の実施の形態6における保護回路を有する電池パックの回路図
【図7】従来例の過放電防止装置を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の電池パックは上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0024】
すなわち、複数の前記二次電池セルが直列に接続されてその両端が前記充放電経路に接続され、前記経路遮断FETは、前記複数の二次電池セルの各々に対して設けられ、前記保護ICは、いずれかの前記二次電池セルの前記セル電圧が前記電圧VL以下または未満であるときに、前記放電電流遮断素子が前記充放電経路を遮断するように前記制御信号を出力し、前記複数の二次電池セルに対するFETは、いずれかの前記二次電池セルのセル電圧が低下したときに、前記ゲートに印加される電圧によりオフに制御されることにより、前記二次電池セルと回路に繋がる電流経路を遮断する構成とすることができる。
【0025】
また、前記FETがオフとなる過放電保護電圧Vpは、前記電圧VLよりも低い値に設定することができる。
【0026】
また、前記経路遮断FETはPチャンネルFETであり、前記二次電池セルの正極端子とその端子から回路に繋がる経路の間に挿入された構成とすることができる。
【0027】
また、前記経路遮断FETはNチャンネルFETであり、前記二次電池セルの負極端子とその端子から回路に繋がる経路の間に挿入された構成とすることができる。
【0028】
また、前記二次電池セルは3個以上直列に接続されており、前記FETはそれぞれの前記二次電池に対応して設けられ、前記二次電池セルのうち1つの電圧が低下することにより、前記FETがオフになる場合は、前記保護ICと、前記3個以上の二次電池セルとの間の電流経路が全て遮断される構成とすることができる。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電池パックの構成を示す回路図である。この電池パックは、例えばリチウムイオン電池等の二次電池セル1の両電極端子に接続された充放電端子T1、T2を介して負荷に対して電力を供給し、また充放電端子T1、T2を介して二次電池セル1を充電するように構成されている。
【0031】
保護IC2は、二次電池セル1の両電極端子間のセル電圧を検出し、検出した電圧を所定の設定電圧と比較して、その比較結果に応じた制御信号を出力する。すなわち、二次電池セル1の正極端子は、経路遮断FET3及び抵抗4を介して、保護IC2のVDD端子に接続され、一方、二次電池セル1の負極端子はVSS端子に接続されており、それによりセル電圧が検出される。検出されたセル電圧は、所定の充電上限電圧VUおよび放電下限電圧VLと比較され(不図示)、保護IC2はその比較結果に応じた制御信号を、COUT端子およびDOUT端子から出力する。
【0032】
二次電池セル1の負極端子から充放電端子T2に至る充放電経路には、過充電防止用FET5、及び過放電防止用FET6が直列に挿入されている。過充電防止用FET5はCOUT端子からの制御信号により制御され、充電電流遮断素子として機能する。過放電防止用FET6はDOUT端子からの制御信号により制御され、放電電流遮断素子として機能する。
【0033】
保護IC2は、二次電池セル1に印加される充電電圧が所定の充電上限電圧VUを超えたときに、COUT端子から、過充電防止用FET5をオフに制御して充放電経路を遮断させる制御信号を出力する。保護IC2はまた、セル電圧が所定の放電下限電圧VL未満になったときに、DOUT端子から、過放電防止用FET6をオフに制御して充放電経路を遮断させる制御信号を出力する。これにより、過充電あるいは過放電等の異常発生時に充放電経路を遮断して、電池パックの保護、あるいは事故発生の防止等が行なわれる。
【0034】
一方、経路遮断FET3は、セル電圧検出のために二次電池セル1から保護IC2に流れる電流を遮断するように設けられ、PチャンネルFETが用いられる。すなわち、経路遮断FET3は、保護IC2におけるセル電圧を検出するための検出端子の一方と二次電池セル1の正極端子とを接続する経路に挿入されている。経路遮断FET3のゲートには、二次電池セル1の負極端子が接続されている。従って、セル電圧が所定の過放電保護電圧Vp未満であるときに、経路遮断FET3は二次電池セル1の負極端子からのゲート電圧によりオフに制御される。それにより、保護IC2への電流が遮断され、消費電流は最小限に抑制される。
【0035】
過放電保護電圧Vpは、放電下限電圧VL以下の値に設定される。従って、セル電圧が放電下限電圧VLを下回り、過放電防止用FET6により充放電経路が遮断された状態において、経路遮断FET3によりセル電圧の検出が停止され、消費電流が最小限に抑制されることになる。このような目的のためには、過放電保護電圧Vpは、放電下限電圧VLと同一でも良いが、状況に応じて放電下限電圧VL未満の値に設定されてもよい。
【0036】
過放電保護電圧Vpは、経路遮断FET3の特性を適宜選択することにより適切に設定することができる。例えば、経路遮断FET3として小信号用のFETを用いれば、ゲート電圧が1〜2V未満の場合はオンとならないので、回路電流が遮断される。経路遮断FET3以外のセル電圧低下要因はセルの自己放電のみとなる。ゲート電圧が1〜2V以上であればFETがオンするので、通常通り回路電流が流される。
【0037】
このように、経路遮断FET3を検出電流の遮断に用いれば、FETの特性を効果的に使った回路であるため、電池パックが過放電状態で放置された場合に、回路の消費電流がnAオーダになり、保管可能期間を長くすることが可能になる。
【0038】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における電池パックの構成を示す回路図である。この電池パックは、二次電池セルを2個直列に接続したものであるが、基本的な構成は図1に示した実施の形態1と同様である。従って、図1に示した実施の形態1の場合と同一の要素については、同一の参照符号を付して、説明の繰り返しを省略する。
【0039】
この電池パックでは、2個の二次電池セル1a、1bが直列に接続され、その両端が充放電端子T1、T2を有する充放電経路に接続されている。2個の二次電池セル1a、1bに対して、PチャンネルFETからなる経路遮断FET7a、7b、8aが配設されている。経路遮断FET7a、7bは2次電池セル1bの正極端子と保護IC9の所定のセル電圧検出端子であるVDD端子との間に接続されている。経路遮断FET8aは、二次電池セル1aの正極端子と、保護IC9の所定のセル電圧検出端子DTaとの間に接続されている。経路遮断FET8a、7aのゲートには各々、二次電池セル1a、1bの負極端子が接続されている。
【0040】
さらに、経路遮断FET7bのゲートにはNチャンネルFETである電圧検知用FET10aのドレインが接続されており、電圧検知用FET10aのゲートは二次電池セル1aの正極端子と接続されている。また、セルバランス回路や2次過充電保護回路などの追加回路11が、経路遮断FET8aの先に接続されている。
【0041】
この構成により保護IC9は、二次電池セル1a、1bの各々のセル電圧を検出し所定の放電下限電圧VLと比較して、その比較結果に応じた制御信号を出力する。すなわち、保護IC9は、いずれかの二次電池セル1a、1bのセル電圧が放電下限電圧VL以下または未満になったときに、DOUT端子から、過放電防止用FET6をオフに制御して充放電経路を遮断させる制御信号を出力する。
【0042】
また、経路遮断FET7aは、対応する二次電池セル1bのセル電圧が過放電保護電圧Vp未満であるときに、ゲートに印加される電圧によりオフに制御される。それにより、該当する二次電池セル1bから保護IC9に流れる検出電流が抑制され、消費電流が最小限の値となる。
【0043】
また、二次電池セル1aの電圧が過放電保護電圧Vp未満であるときには、電圧検知用FET10aのゲート電圧が1〜2V以下となり、電圧検知用FET10aがオフとなる。これにより、電圧検知用FET10aが接続されているFET7bもオフとなる。また経路遮断FET8aのゲート電圧も1〜2V以下となり、FET8aもオフとなる。このようにFET7bと8aがオフとなることにより、過放電の状態となった二次電池セルから保護IC9のVDDへの電流も遮断され、消費電流が抑制される。
【0044】
以上のように、PチャンネルFET及びNチャンネルFETをオフとなるゲート電圧(1〜2V)が二次電池セル(リチウムイオン電池)の過放電状態の電圧と酷似していることから、この点を利用して、リチウムイオン電池の電圧が低下することをきっかけとして保護ICへの消費電流を遮断している。
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における電池パックの構成を示す回路図である。この電池パックは4個の二次電池セル1b〜1dを直列に接続したものである。実施の形態2を表す図2と同一の要素については同一の参照符号を付して、説明を省略する。本実施の形態の特徴は、バイポーラトランジスタ12、13が設けられたことである。バイポーラトランジスタ12、13はそれぞれ、二次電池セル1dの正極側の1d+信号出力ライン及び二次電池セル1aの負極側の1a−電流及び信号出力ラインに接続されている。
【0045】
保護IC14は、1d+、1c+、1b+、及び1a+信号出力ラインを通じて、各二次電池セル1a〜1dの電圧を検出し、それらのいずれかの電圧が放電下限電圧VL以下または未満になったときには、DOUT端子から、過放電防止用FET6をオフに制御し、充放電経路を遮断する。
【0046】
二次電池セル1dが過放電保護電圧Vp未満となったときには、経路遮断FET7aのゲート電圧が低下し、FET7aがオフとなる。これにより、二次電池セル1dから保護IC14への電流経路が遮断される。二次電池セル1dからの1d+信号出力ラインが遮断されることにより、1d+信号出力ラインと1c+信号出力ラインが抵抗15a、15bを介して短絡状態となる。その結果、バイポーラトランジスタ12のベースへは電流が流れなくなり、バイポーラトランジスタ12はオフとなる。さらに、バイポーラトランジスタ12のコレクタと抵抗16a、16bを介して接続されるバイポーラトランジスタ13のベースにも電流は流れなくなり、バイポーラトランジスタ13はオフとなる。
【0047】
経路遮断FET8a〜8cのゲートはダイオード17a〜17cを介して、バイポーラトランジスタ13のコレクタに接続されている。バイポーラトランジスタ13がオフとなることで、経路遮断FET8a〜8cはゲートの電圧が0Vとなり、それぞれオフとなる。以上の動作により、1a+〜1d+信号出力ラインは全て遮断されることになり、各二次電池セル1a〜1dの消費電流は抑制されることになる。
【0048】
次に、2次電池セル1dは正常な電圧を保ったまま、2次電池セル1cが過放電保護状態となり、過放電保護電圧Vp未満となった場合の動作について説明する。
【0049】
先ず、保護IC14は各二次電池セル1a〜1dの電圧を検出し、放電下限電圧VL未満になったときには、DOUT端子から、過放電防止用FET6をオフに制御し、充放電経路を遮断する。
【0050】
2次電池セル1cの正極には電圧検知用FET10cのゲートが負極には電圧検知用FET10cのソースが接続されている。2次電池セル1cのセル電圧が低下し、過放電保護電圧Vp未満となった場合、電圧検知用FET10cのゲート電圧も低下し、1〜2V以下となることにより、電圧検知用FET10cがオフとなる。電圧検知用FET10cには、経路遮断FET7bのゲートが接続されており、電圧検知用FET10cがオフとなることで経路遮断FET7bもオフとなる。これにより、2次電池セルに接続された1d+信号出力ラインが遮断される。
【0051】
1d+信号出力ラインが遮断されることにより、1d+信号出力ラインと1c+信号出力ラインは抵抗15a、15bを介した短絡状態となる。以降は、上述の説明と同様に、バイポーラトランジスタ12、13及び経路遮断FET8a〜8cが順次オフとなることにより、2次電池セル1a〜1cと保護回路との間の電流消費は遮断される。
【0052】
2次電池セル1b、あるいは1aのセル電圧が低下し、過放電保護電圧Vp未満となった場合も上述と同様の動作により、1d+〜1a+信号出力ラインが遮断されることになる。
【0053】
本実施の形態では、実施の形態2とは異なり、バイポーラトランジスタ12,13により、経路遮断FET8a〜8cを制御している。これは、二次電池セルを3個以上直列に接続する場合に、過放電状態となった二次電池セルから保護ICへ接続されるラインを全て遮断するために設けた構成であり、これにより、過放電となった二次電池セルからの電流を確実に遮断することができる。
(実施の形態4)
図4は、本発明の実施の形態4における電池パックの構成を示す回路図である。この電池パックは、図1に示した実施の形態1における構成において、PチャンネルFETからなる検出電流制御FET3を、NチャンネルFETからなる経路遮断FET18により置き換えた構成を有する。従って、図1に示した実施の形態1の場合と同一の要素については、同一の参照符号を付して、説明の繰り返しを省略する。
【0054】
経路遮断FET18は、保護IC2におけるセル電圧を検出するための検出端子の一方と二次電池セル1の負極端子とを接続する経路に挿入されている。経路遮断FET18のゲートには、二次電池セル1の正極端子が接続されている。従って、セル電圧が所定の過放電保護電圧Vp未満であるときに、検出電流制御FET18は二次電池セル1の正極端子からのゲート電圧によりオフに制御される。それにより、保護IC2への検出電流が遮断され、消費電流は最小限に抑制される。
【0055】
(実施の形態5)
図5は、本発明の実施の形態5における電池パックの構成を示す回路図である。この電池パックは、基本的な構成は図4に示した実施の形態4と同様であり、図2に示した実施の形態2の場合と同様、二次電池セルを2個直列に接続したものである。
【0056】
この電池パックでは、2個の二次電池セル1a、1bの各々に対して、NチャンネルFETからなる経路遮断FET19a、19b、20aが設けられている。経路遮断FET19a、19bは、二次電池セル1aの負極端子と、保護IC9の所定のセル電圧検出端子との間に接続されている。また、経路遮断FET20aは、二次電池セル1bの負極端子と保護IC9の所定のセル電圧検出端子DTbとの間に接続されている。経路遮断FET19a、20aのゲートには各々、二次電池セル1a、1bの正極端子が接続されている。
【0057】
更に、二次電池セル1aの正極端子は、PチャンネルFETである電圧検知用FET21aのゲートに接続され、電圧検知用FET21aのドレインは経路遮断FET19bのゲートにに接続されている。
【0058】
この構成により保護IC9は、二次電池セル1a、1bの各々のセル電圧を検出し所定の放電下限電圧VLと比較して、その比較結果に応じた制御信号を出力する。すなわち、保護IC9は、いずれかの二次電池セル1a、1bのセル電圧が放電下限電圧VL以下または未満になったときに、DOUT端子から、過放電防止用FET6をオフに制御して充放電経路を遮断させる制御信号を出力する。
【0059】
また、経路遮断FET19aは、対応する二次電池セル1aのセル電圧が過放電保護電圧Vp未満であるときに、ゲートに印加される電圧によりオフに制御される。それにより、該当する二次電池セル1aから保護IC9に流れる検出電流が抑制され、消費電流が最小限の値となる。
【0060】
また、二次電池セル1bの電圧が過電保護電圧Vp未満であるときには、電圧検知用FET21aのゲート電圧が1〜2V以下となり、電圧検知用FET21aがオフとなる。これにより、電圧検知用FET21aがゲートに接続されているFET19bもオフとなる。また経路遮断FET20aのゲート電圧も1〜2V以下となり、FET20aもオフとなる。このようにFET19bと20aがオフとなることにより、過放電の状態となった二次電池セルから保護IC9のVDDへの電流も遮断され、消費電流が抑制される。
【0061】
(実施の形態6)
図6は、本発明の実施の形態6における電池パックの構成を示す回路図である。この電池パックは、図3に示した実施の形態3における構成において、PチャンネルFETを、NチャンネルFETに置き換え、NチャンネルFETをPチャンネルFETに置き換えた構成を有する。動作についても、実施の形態4、5にて説明したように、実施の形態3においてPチャンネルFETとNチャンネルFETを置き換えて動作させたものであるが、例として以下に、二次電池セル1cが過放電状態となった場合について説明する。
【0062】
保護IC14は二次電池セル1cの電圧を検出し、放電下限電圧VL未満になったときには、DOUT端子から、過放電防止用FET6をオフに制御し、充放電経路を遮断する。
【0063】
2次電池セル1cの負極には電圧検知用FET21bのゲートが、正極には電圧検知用FET21bのソースが接続されている。2次電池セル1cのセル電圧が低下し、過放電保護電圧Vp未満となった場合、電圧検知用FET21bのゲート電圧も低下し、1〜2V以下となることにより、電圧検知用FET21bがオフとなる。
【0064】
電圧検知用FET21bには、経路遮断FET19cのゲートが接続されており、電圧検知用FET21bがオフとなることで経路遮断FET19cもオフとなる。これにより、2次電池セルに接続された1a−信号出力ラインが遮断される。1a−信号出力ラインが遮断されることにより、1a−信号出力ラインと1b+信号出力ラインは抵抗15a、15bを介した短絡状態となる。これにより、バイポーラトランジスタ12、13及び経路遮断FET20a〜20cが順次オフとなり、その結果、全ての2次電池セル1a〜1dと保護回路との間の電流消費は遮断される。
【0065】
また、2次電池セル1a、1b、1dのセル電圧が低下し、過放電保護電圧Vp未満となった場合も上述と同様の動作により、1d+〜1a―信号出力ラインが遮断されることになり、全ての2次電池セルからの電流消費を遮断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の電池パックによれば、過放電防止機能の動作時における保護ICの消費電流を最小限レベルに抑制する過放電保護の機能が、簡素な構成で安価に得られるので、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の用途に好適である。
【符号の説明】
【0067】
1、1a〜1d 二次電池セル
2、9、14 保護IC
3、7a〜7d、8a〜8c、18、19a、20a 経路遮断FET
4、15a、15b、16a、16b 抵抗
5 過充電防止用FET
6 過放電防止用FET
10a〜10c、21a〜21c 電圧検知用FET
11 追加回路
12、13 バイポーラトランジスタ
17a〜17c ダイオード
101 二次電池
102 第1スイッチ回路
103 第1駆動回路
104 電圧監視部
105 定電圧素子
106 第2スイッチ回路
107 第2駆動回路
107a バイポーラトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池セルと、
前記二次電池セルのセル電圧を検出し所定の電圧VLと比較して、その比較結果に応じた制御信号を出力する保護ICと、
電池パック外部に対する充放電経路に挿入され前記保護ICが出力する前記制御信号により制御される放電電流遮断素子とを備え、
前記保護ICは、前記セル電圧が前記電圧VL以下または未満であるときに、前記放電電流遮断素子が前記充放電経路を遮断するように前記制御信号を出力する電池パックにおいて、
前記二次電池セルの一方の端子と回路を接続する経路に挿入されたFETを備え、
前記二次電池セルの他方の端子が前記FETのゲートに接続され、
前記FETは、前記セル電圧が所定値よりも低下したときに、前記二次電池セルから前記ゲートに印加される電圧によりオフに制御されるように構成されたことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
複数の前記二次電池セルが直列に接続されてその両端が前記充放電経路に接続され、
前記FETは、前記複数の二次電池セルの各々に対して設けられ、
前記保護ICは、いずれかの前記二次電池セルの前記セル電圧が前記電圧VL以下または未満であるときに、前記放電電流遮断素子が前記充放電経路を遮断するように前記制御信号を出力し、
前記複数の二次電池セルに対するFETは、いずれかの前記二次電池セルのセル電圧が前記所定値よりも低下したときに、前記ゲートに印加される電圧によりオフに制御されることにより、前記二次電池セルから前記回路に繋がる電流経路を遮断することを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記FETがオフとなる過放電保護電圧Vpが、前記電圧VLよりも低い値に設定された請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記二次電池セルに対応するFETはPチャンネルFETであり、前記二次電池セルの正極端子とその端子から前記回路に繋がる電流経路との間に挿入された請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項5】
前記二次電池セルに対応するFETはNチャンネルFETであり、前記二次電池セルの負極端子とその端子から前記回路に繋がる電流経路との間に挿入された請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項6】
前記二次電池セルは3個以上直列に接続されており、前記FETはそれぞれの前記二次電池に対応して設けられ、前記二次電池セルのうち1つの電圧が低下することにより、前記FETがオフになる場合は、前記保護ICと、前記3個以上の二次電池セルとの間の電流経路が全て遮断されることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−23919(P2012−23919A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161611(P2010−161611)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】