説明

信号伝送装置、フィルタ、ならびに基板間通信装置

【課題】基板間距離の変動による通過周波数および通過帯域の変動を抑え、安定した動作を行うことができるようにする。
【解決手段】第1の基板10に形成された複数の第1の両端開放型共振器11,12と、第2の基板20に形成された複数の第2の両端開放型共振器21,22とで第1の共振器1を構成する。また、第1の基板10に形成された複数の第3の両端開放型共振器31,32と、第2の基板20に形成された複数の第4の両端開放型共振器41,42とで第2の共振器2を構成する。第1の共振器1において、互いに最も近い位置にある第1の両端開放型共振器11と第2の両端開放型共振器21とを互いの開放端同士および互いの中央部同士が互いに対向するように配置し、第2の共振器において、互いに最も近い位置にある第3の両端開放型共振器31と第4の両端開放型共振器41とを互いの開放端同士および互いの中央部同士が互いに対向するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれに共振器が形成された複数の基板を用いて信号伝送を行う信号伝送装置、フィルタ、ならびに基板間通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、それぞれに共振器が形成された複数の基板を用いて信号伝送を行う信号伝送装置が知られている。例えば特許文献1には、異なる基板それぞれに共振器を構成し、それら共振器同士を電磁結合させて2段のフィルタを構成して信号伝送させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−67012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような異なる基板それぞれに形成された共振器同士を電磁結合させる構造の場合、各基板間には電界および磁界が発生する。このとき、従来の構造では、基板間に存在する空気層の厚みの変動で共振器間の結合係数や共振周波数が大きく変わるため、フィルタとしての中心周波数や帯域幅が大幅に変動する問題がある。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、基板間距離の変動による通過周波数および通過帯域の変動を抑え、安定した動作を行うことができるようにした信号伝送装置、フィルタ、ならびに基板間通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による信号伝送装置は、間隔を空けて第1の方向に互いに対向配置された第1および第2の基板と、第1の基板における第1の領域に形成され、第1の方向に互いに電磁結合する複数の第1の両端開放型共振器と、第2の基板における第1の領域に対応する領域において、1つまたは第1の方向に互いに電磁結合するように複数形成された第2の両端開放型共振器と、複数の第1の両端開放型共振器と1または複数の第2の両端開放型共振器とによって形成された第1の共振器と、第1の共振器に電磁結合されて第1の共振器との間で信号伝送を行う第2の共振器とを備えたものである。
また、複数の第1の両端開放型共振器が、一方の第1の両端開放型共振器と他方の第1の両端開放型共振器とを有し、一方の第1の両端開放型共振器の開放端に他方の第1の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、一方の第1の両端開放型共振器の中央部に他方の第1の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置されているものである。また、第2の両端開放型共振器を複数有する場合には、複数の第2の両端開放型共振器として、一方の第2の両端開放型共振器と他方の第2の両端開放型共振器とを有し、一方の第2の両端開放型共振器の開放端に他方の第2の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、一方の第2の両端開放型共振器の中央部に他方の第2の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置されているものである。
そして、第1の共振器において、互いに最も近い位置にある第1の両端開放型共振器と第2の両端開放型共振器とを、互いの開放端同士が対向すると共に互いの中央部同士が互いに対向するように配置したものである。
【0007】
本発明によるフィルタは、上記した本発明による信号伝送装置と同様の構成でフィルタとして動作させるようにしたものである。
【0008】
本発明による信号伝送装置およびフィルタにおいて、第1の基板における第2の領域に形成され、第1の方向に互いに電磁結合された複数の第3の両端開放型共振器と、第2の基板における第2の領域に対応する領域において、1つまたは第1の方向に互いに電磁結合するように複数形成された第4の両端開放型共振器とをさらに備えていても良い。
この場合、複数の第3の両端開放型共振器は、一方の第3の両端開放型共振器と他方の第3の両端開放型共振器とを有し、一方の第3の両端開放型共振器の開放端に他方の第
3の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、一方の第3の両端開放型共振器の中央部に他方の第3の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置されていても良い。
また、第4の両端開放型共振器を複数有する場合には、複数の第4の両端開放型共振器として、一方の第4の両端開放型共振器と他方の第4の両端開放型共振器とを有し、一方の第4の両端開放型共振器の開放端に他方の第4の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、一方の第4の両端開放型共振器の中央部に他方の第4の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置されていても良い。
そして、第2の共振器を、複数の第3の両端開放型共振器と1または複数の第4の両端開放型共振器とによって形成し、第2の共振器において、互いに最も近い位置にある第3の両端開放型共振器と第4の両端開放型共振器とが、互いの開放端同士が対向すると共に互いの中央部同士が互いに対向するように配置されていても良い。
【0009】
本発明による基板間通信装置は、上記した本発明による信号伝送装置の構成において、第1の基板に形成され第1の両端開放型共振器に物理的に直接接続、または電磁結合により間隔を空けて結合された第1の信号引き出し電極と、第2の基板に形成され第4の両端開放型共振器に物理的に直接接続、または電磁結合により間隔を空けて結合された第2の信号引き出し電極とさらに備え、第1の基板と第2の基板との間で信号伝送を行うようにしたものである。
【0010】
本発明の信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置では、第1の基板と第2の基板との間で、互いに最も近い位置にある第1の両端開放型共振器と第2の両端開放型共振器とが、互いの開放端同士が対向すると共に互いの中央部同士が互いに対向するように配置された状態になることで、それらの対向する2つの両端開放型共振器の双方に同方向に電流が流れ、2つの両端開放型共振器の間の電位差がほとんど無くなる。これにより、第1の共振器において、第1の基板と第2の基板との間の空気層等における電界分布がほとんど無くなり、第1の基板と第2の基板との間で空気層等の基板間距離に変動があったとしても、第1の共振器における共振周波数の変動が抑えられる。同様に、第1の基板と第2の基板との間で、互いに最も近い位置にある第3の両端開放型共振器と第4の両端開放型共振器とが、互いの開放端同士が対向すると共に互いの中央部同士が互いに対向するように配置された状態になることで、第2の共振器において、第1の基板と第2の基板との間の空気層等における電界分布がほとんど無くなる。これにより、第1の基板と第2の基板との間で空気層等の基板間距離に変動があったとしても、第2の共振器における共振周波数の変動が抑えられる。結果として、基板間距離の変動による通過周波数および通過帯域の変動が抑えられる。
【0011】
また、本発明による信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置において、第1の共振器は、複数の第1の両端開放型共振器と1または複数の第2の両端開放型共振器とが混成共振モードで電磁結合することにより全体として第1の共振周波数で共振する1つの結合共振器を構成し、かつ、第1および第2の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では複数の第1の両端開放型共振器による単独の共振周波数と1または複数の第2の両端開放型共振器による単独の共振周波数とがそれぞれ、第1の共振周波数とは異なる周波数とされていても良い。同様に、第2の共振器は、複数の第3の両端開放型共振器と1または複数の第4の両端開放型共振器とが混成共振モードで電磁結合することにより全体として第1の共振周波数で共振する1つの結合共振器を構成し、かつ、第1および第2の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では複数の第3の両端開放型共振器による単独の共振周波数と1または複数の第4の両端開放型共振器による単独の共振周波数とがそれぞれ、第1の共振周波数とは異なる周波数とされていても良い。
この構成の場合、第1の基板と第2の基板とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態での周波数特性と第1の基板と第2の基板とが互いに電磁結合している状態での周波数特性とが異なる状態となる。このため、例えば第1の基板と第2の基板とを互いに電磁結合している状態では第1の共振周波数で信号伝送するが、第1の基板と第2の基板とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では第1の共振周波数で信号伝送しない状態となる。これにより、第1の基板と第2の基板とを十分に離した状態では信号の漏洩を防ぐことができる。
【0012】
本発明による信号伝送装置またはフィルタにおいて、第1の基板に形成されると共に、第1の両端開放型共振器に物理的に直接接続、または第1の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第1の信号引き出し電極と、第2の基板に形成されると共に、第4の両端開放型共振器に物理的に直接接続、または第2の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第2の信号引き出し電極とをさらに備え、第1の基板と第2の基板との間で信号伝送を行うようにしても良い。
【0013】
また、本発明による信号伝送装置またはフィルタにおいて、第2の基板に形成されると共に、第2の両端開放型共振器に物理的に直接接続、または第1の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第1の信号引き出し電極と、第2の基板に形成されると共に、第4の両端開放型共振器に物理的に直接接続、または第2の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第2の信号引き出し電極とをさらに備え、第2の基板内で信号伝送を行うようにしても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置によれば、第1の基板と第2の基板との間で、互いに最も近い位置にある2つの両端開放型共振器を、互いの開放端同士を対向させると共に互いの中央部同士を互いに対向させるようにして配置したので、第1の共振器および第2の共振器において、第1の基板と第2の基板との間の空気層等における電界分布がほとんど無くなる。これにより、第1の基板と第2の基板との間で空気層等の基板間距離に変動があったとしても、第1の共振器および第2の共振器における共振周波数の変動が抑えられる。結果として、基板間距離の変動による通過周波数および通過帯域の変動が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る信号伝送装置(フィルタ、基板間通信装置)の一構成例を示す斜視図である。
【図2】(A)は図1に示した信号伝送装置における第1の基板の表面側に形成された第1の両端開放型共振器の構造を共振時の電流ベクトルと共に示す平面図であり、(B)は第1の基板の裏面側に形成された第1の両端開放型共振器の構造を共振時の電流ベクトルと共に示す平面図である。(C)は図1に示した信号伝送装置における第2の基板の表面側に形成された第2の両端開放型共振器の構造を共振時の電流ベクトルと共に示す平面図であり、(D)は第2の基板の裏面側に形成された第2の両端開放型共振器の構造を共振時の電流ベクトルと共に示す平面図である。
【図3】図1に示した信号伝送装置の第2の基板における第2の両端開放型共振器の配置を示す斜視図である。
【図4】(A)は図1に示した信号伝送装置における第1の共振器の構造を共振周波数と共に示す平面図であり、(B)は図1に示した信号伝送装置における第2の共振器の構造を共振周波数と共に示す平面図である。
【図5】比較例の共振器構造を有する基板を示す断面図である。
【図6】図5に示した基板を2つ対向配置した構造を示す断面図である。
【図7】(A)は1つの共振器による共振周波数を示す説明図であり、(B)は2つの共振器による共振周波数を示す説明図である。
【図8】図6に示した共振器構造を用いて形成した比較例のフィルタの構造を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図9】図1に示した信号伝送装置における第1の共振器の具体的な設計例を示す平面図である。
【図10】図9に示した第1の共振器における共振周波数特性を示す特性図である。
【図11】比較例の共振器構造の具体的な設計例を示す斜視図である。
【図12】図11に示した共振器構造における共振周波数特性を示す特性図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る信号伝送装置の要部の一構成例を示す平面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る信号伝送装置の要部の一構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
<第1の実施の形態>
[信号伝送装置の構成例]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る信号伝送装置(基板間通信装置またはフィルタ)の全体構成例を示している。本実施の形態に係る信号伝送装置は、第1の方向(図のZ方向)に互いに対向配置された第1の基板10および第2の基板20を備えている。第1の基板10および第2の基板20は誘電体基板であり、基板材料とは異なる材料による層(誘電率の異なる層、例えば空気層)を挟んで、間隔(基板間距離Da)を空けて互いに対向配置されている。第1の基板10および第2の基板20には、第1の共振器1と、第1の共振器1に対して第2の方向(図のX方向)に並列配置されると共に、第1の共振器1に電磁結合されて第1の共振器1との間で信号伝送を行う第2の共振器2とが形成されている。第1の共振器1は、第1の基板10に形成された複数の第1の両端開放型共振器11,12と、第2の基板20に形成された複数の第2の両端開放型共振器21,22とを有している。第2の共振器2は、第1の基板10に形成された複数の第3の両端開放型共振器31,32と、第2の基板20に形成された複数の第4の両端開放型共振器41,42とを有している。
【0018】
この信号伝送装置はまた、第1の基板10に形成された第1の信号引き出し電極51と、第2の基板20に形成された第2の信号引き出し電極52とを備えている。第1の基板10に形成された複数の第1の両端開放型共振器11,12、複数の第3の両端開放型共振器31,32、および第1の信号引き出し電極51は、導体による電極パターンよりなる。同様に、第2の基板20に形成された複数の第2の両端開放型共振器21,22、複数の第4の両端開放型共振器41,42、および第2の信号引き出し電極52は、導体による電極パターンよりなる。なお、図1において、第1の基板10および第2の基板20に形成された電極パターン(第1の両端開放型共振器11,12等)の厚みは省略している。第1の信号引き出し電極51は、第1の基板10の表面(上面)に形成されている。第1の基板10の裏面(底面)において、第1の信号引き出し電極51に対向する位置には、グランド電極81が形成されている。第2の信号引き出し電極52は、第2の基板20の裏面(底面)に形成されている。第2の基板20の表面(上面)において、第2の信号引き出し電極52に対向する位置には、グランド電極82が形成されている。
【0019】
図2(A)〜(D)は、第1の共振器1を構成する複数の第1の両端開放型共振器11,12および複数の第2の両端開放型共振器21,22の平面構造を、共振時の電流ベクトルと共に示している。図3は第2の基板20に形成された複数の第2の両端開放型共振器21,22の構造を示している。図4(A),(B)は第1の共振器1および第2の共振器2の構造を、基板各部の共振周波数と共に示している。
【0020】
複数の第1の両端開放型共振器11,12および複数の第2の両端開放型共振器21,22、ならびに複数の第3の両端開放型共振器31,32および複数の第4の両端開放型共振器41,42はそれぞれ、閉曲線状の線路型の1/2波長共振器、いわゆるオープンリングレゾネータとなっている。
【0021】
複数の第1の両端開放型共振器11,12は、第1の基板10の第1の領域において、第1の方向(図のZ方向)に互いに電磁結合されている。一方の第1の両端開放型共振器11は第1の基板10の裏面側に形成されている。他方の第1の両端開放型共振器12は第1の基板10の表面側に形成されている。複数の第2の両端開放型共振器21,22は、第2の基板20における第1の領域に対応する領域において、第1の方向に互いに電磁結合されている。これにより、第1の領域において、複数の第1の両端開放型共振器11,12と複数の第2の両端開放型共振器21,22とが第1の方向に積層配置された構造の第1の共振器1が形成されている。
【0022】
第1の共振器1において、互いに最も近い位置(基板間で対向する部分30)にある一方の第1の両端開放型共振器11と一方の第2の両端開放型共振器21は、互いの開放端部分11A,21A同士が対向すると共に互いの中央部11B,21B同士が互いに対向するように配置されている(図2(B),(C)参照)。また、複数の第1の両端開放型共振器11,12は、一方の第1の両端開放型共振器11の開放端部分11Aに他方の第1の両端開放型共振器12の中央部12Bが対向すると共に、一方の第1の両端開放型共振器11の中央部11Bに他方の第1の両端開放型共振器12の開放端部分12Aが対向するように配置されている(図2(A),(B)参照)。また、第2の両端開放型共振器21,22は、一方の第2の両端開放型共振器21の開放端部分21Aに他方の第2の両端開放型共振器22の中央部22Bが対向すると共に、一方の第2の両端開放型共振器21の中央部21Bに他方の第2の両端開放型共振器22の開放端部分22Aが対向するように配置されている(図2(C),(D)、図3参照)。ここで、両端開放型共振器の中央とは、中央から両端開放型共振器の一端までの電気長と、中央から両端開放型共振器の他端までの電気長とが等しくなる位置のことであり、例えば、一様な材料、形状で形成されている場合には、中央から両端開放型共振器の一端までの物理長と、中央から両端開放型共振器の他端までの物理長とが等しくなる位置のことである。また、両端開放型共振器の中央部とは、両端開放型共振器の中央を含む領域であり、例えば、両端開放型共振器の中央から両開放端部に向けて電気長でそれぞれλ/16の共振器部分を含む範囲のことである。
【0023】
複数の第3の両端開放型共振器31,32は、第1の基板10の第2の領域において、第1の方向(図のZ方向)に互いに電磁結合されている。一方の第3の両端開放型共振器31は第1の基板10の裏面側に形成されている。他方の第3の両端開放型共振器32は第1の基板10の表面側に形成されている。第4の両端開放型共振器41,42は、第2の基板20における第2の領域に対応する領域において、第1の方向に互いに電磁結合されている。これにより、第1の領域とは異なる第2の領域において、複数の第3の両端開放型共振器31,32と複数の第4の両端開放型共振器41,42とが第1の方向に積層配置された構造の第2の共振器2が形成されている。
【0024】
第2の共振器2において隣接する2つの両端開放型共振器同士の位置関係は、第1の共振器1と同様である。すなわち、第2の共振器2において、互いに最も近い位置(基板間で対向する部分)にある一方の第3の両端開放型共振器31と一方の第4の両端開放型共振器41は、互いの開放端部分同士が対向すると共に互いの中央部同士が互いに対向するように配置されている。また、複数の第3の両端開放型共振器31,32は、一方の第3の両端開放型共振器31の開放端部分に他方の第3の両端開放型共振器32の中央部が対向すると共に、一方の第3の両端開放型共振器31の中央部に他方の第3の両端開放型共振器32の開放端部分が対向するように配置されている。また、第4の両端開放型共振器41,42は、一方の第4の両端開放型共振器41の開放端部分に他方の第4の両端開放型共振器42の中央部が対向すると共に、一方の第4の両端開放型共振器41の中央部に他方の第4の両端開放型共振器42の開放端部分が対向するように配置されている。
【0025】
第1の信号引き出し電極51は、図1に示したように、第1の基板10の表面側に形成されると共に、第1の基板10の表面側の第1の両端開放型共振器12に物理的に直接接続(例えば1つの開放端に直接接続)され、第1の両端開放型共振器12に直接的に導通されている。これにより、第1の信号引き出し電極51と第1の共振器1との間で信号伝送が可能とされている。第2の信号引き出し電極52は、図1に示したように、第2の基板20の裏面側に形成されると共に、第2の基板20の裏面側に形成された第4の両端開放型共振器42に物理的に直接接続(例えば1つの開放端に直接接続)され、第4の両端開放型共振器42に直接的に導通されている。これにより、第2の信号引き出し電極52と第2の共振器2との間で信号伝送が可能とされている。第1の共振器1と第2の共振器2は電磁結合されているので、第1の信号引き出し電極51と第2の信号引き出し電極52との間での信号伝送が可能とされている。これにより、第1の基板10と第2の基板20との2つの基板間での信号伝送が可能とされている。
【0026】
なお、第1の信号引き出し電極51を第1の基板10の裏面側に形成し、第1の基板10の裏面側の第1の両端開放型共振器11に物理的に直接接続し、第1の両端開放型共振器11に直接的に導通するようにしても良い。同様に、第2の信号引き出し電極52を第2の基板20の表面側に形成し、第2の基板20の表面側の第4の両端開放型共振器41に物理的に直接接続し、第4の両端開放型共振器41に直接的に導通するようにしても良い。
【0027】
[動作および作用]
この信号伝送装置では、第1の共振器1において、第1の基板10と第2の基板20との間で、互いに最も近い位置にある一方の第1の両端開放型共振器11と一方の第2の両端開放型共振器21とが、互いの開放端部分11A,21A同士が対向すると共に互いの中央部11B,21B同士が互いに対向した状態となる。この状態では、図2(B),(C)に示したように、一方の第1の両端開放型共振器11と一方の第2の両端開放型共振器21との双方に同方向に電流iが流れ、2つの両端開放型共振器11,21の間の電位差がほとんど無くなる。このため、一方の第1の両端開放型共振器11と一方の第2の両端開放型共振器21とがほぼ同電位になるため、それらの共振器間には電界が発生しない。一方の第1の両端開放型共振器11と一方の第2の両端開放型共振器21は、ほぼ磁気結合のみによる結合がなされる。これにより、第1の共振器1において、第1の基板10と第2の基板20との間の空気層等における電界分布がほとんど無くなり、第1の基板10と第2の基板10との間で空気層等の基板間距離Daに変動があったとしても、第1の共振器1における共振周波数の変動が抑えられる。
【0028】
同様に、第2の共振器2において、第1の基板10と第2の基板20との間で、互いに最も近い位置にある一方の第3の両端開放型共振器31と一方の第4の両端開放型共振器41とが、互いの開放端部分同士が対向すると共に互いの中央部同士が互いに対向する状態となる。このため、第2の共振器2において、第1の基板10と第2の基板20との間の空気層等における電界分布がほとんど無くなり、一方の第3の両端開放型共振器31と一方の第4の両端開放型共振器41は、ほぼ磁気結合のみによる結合がなされる。これにより、第1の基板10と第2の基板20との間で空気層等の基板間距離Daに変動があったとしても、第2の共振器2における共振周波数の変動が抑えられる。結果として、基板間距離Daの変動による通過周波数および通過帯域の変動が抑えられる。
【0029】
また、この信号伝送装置では、図4(A)に示したように、第1の共振器1は、複数の第1の両端開放型共振器11,12と複数の第2の両端開放型共振器21,22とが後述する混成共振モードで電磁結合することにより全体として第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で共振する1つの結合共振器を構成する。かつ、第1の基板10および第2の基板20が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では複数の第1の両端開放型共振器11,12による単独での共振周波数faと複数の第2の両端開放型共振器21,22による単独での共振周波数faとがそれぞれ、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)とは異なる周波数となる。
【0030】
同様に、第2の共振器2は、図4(B)に示したように、複数の第3の両端開放型共振器31,32と複数の第4の両端開放型共振器41,42とが混成共振モードで電磁結合することにより全体として第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で共振する1つの結合共振器を構成する。かつ、第1の基板10および第2の基板20が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では複数の第3の両端開放型共振器31,32による単独での共振周波数faと複数の第4の両端開放型共振器41,42による単独での共振周波数faとがそれぞれ、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)とは異なる周波数となる。
【0031】
従って、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態での周波数特性と第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合している状態での周波数特性とが異なる状態となる。このため、例えば第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合している状態では第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で信号伝送する。一方、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では単独での共振周波数faで共振するために、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で信号伝送しない状態となる。これにより、第1の基板10と第2の基板20とを十分に離した状態では、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)と同帯域の信号が入力されたとしても反射されるので、共振器からの信号の漏洩を防ぐことができる。
【0032】
(混成共振モードによる信号伝送の原理)
ここで、上述の混成共振モードによる信号伝送の原理について説明する。説明を簡単にするために、比較例の共振器構造として、図5に示したように第1の基板110の内部に1つの共振器111が形成されているものを考える。この比較例の共振器構造では、図7(A)に示したように、1つの共振周波数f0で共振するような共振モードとなる。これに対して、図6に示したように、図5に示した比較例の共振器構造と同様の構造を有する第2の基板120を、基板間距離Daを空けて第1の基板110に対向配置して電磁結合した場合について考える。第2の基板120の内部には1つの共振器121が形成されている。第2の基板120における共振器121についても、第1の基板110における共振器111と構造的には同じなので、第1の基板110に電磁結合していない単独の状態では、図7(A)に示したように、1つの共振周波数f0で共振するような単独の共振モードとなる。しかしながら、図6に示した2つの共振器を電磁結合した状態では、電波の飛び移り効果により、単独での共振周波数f0で共振するのではなく、単独での共振周波数f0よりも低い第1の共振周波数f1となる第1の共振モードと、単独での共振周波数f0よりも高い第2の共振周波数f2となる第2の共振モードを形成して共振する。
【0033】
図6に示した混成共振モードで電磁結合する2つの共振器111,121を全体として1つの結合共振器101とみなすと、同様の共振器構造を並列配置することで、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)を通過帯域とするフィルタを構成することができる。そのような構成例を図8に示す。図8のフィルタ構成例では、第1の基板110に2つの共振器111,131を並列配置すると共に、第2の基板120に2つの共振器121,141を並列配置している。第1の基板110に形成された共振器111,131と第2の基板120に形成された共振器121,141はそれぞれ、第1の基板110および第2の基板120が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、混成共振モードではなく、単独での共振周波数f0による共振モードとなる。第1の基板110と第2の基板120とを基板間距離Daを空けて対向配置して電磁結合させた状態では、第1の基板110の一方の共振器111と第2の基板120の一方の共振器121とで全体として1つの結合共振器101を構成する。また、第1の基板110の他方の共振器131と第2の基板120の他方の共振器141とで全体としてもう1つの結合共振器102を構成する。2つの結合共振器101,102がそれぞれ全体として第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で共振することで、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)を通過帯域とするフィルタのように動作する。この第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)近傍の周波数の信号を入力することで信号伝送が可能となる。
【0034】
以上の原理を踏まえ、本実施の形態に係る信号伝送装置における共振モードについて、より詳細に説明する。図4のように、前述の複数の第1の両端開放型共振器11,12、複数の第2の両端開放型共振器21,22、複数の第3の両端開放型共振器31,32、複数の第4の両端開放型共振器41,42のように、一方の両端開放型共振器の開放端に他方の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、一方の両端開放型共振器の中央部に他方の両端開放型共振器の開放端が対向するようにして電磁結合(このような両端開放型共振器の配置による結合を以下、’A結合’と呼ぶ)した共振器が基板に形成されている場合には、それら電磁結合した両端開放型共振器同士も混成共振モードにより共振する。すなわち、例えば複数の第1の両端開放型共振器11,12同士が混成共振モードで電磁結合することにより、複数の第1の両端開放型共振器11,12同士が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態での各両端開放型共振器11,12単独での共振周波数f0よりも低い共振周波数faと、共振周波数f0よりも高い共振周波数fbとで共振する1つの結合共振器を構成する。第1の基板10に形成され互いにA結合した複数の第1の両端開放型共振器11,12と、第2の基板20に形成され互いにA結合した複数の第2の両端開放型共振器21,22とが、空気層等を介して互いに電磁結合した場合には、前述のように、これら複数の両端開放型共振器同士も混成共振モード同士が電磁結合することにより、複数の共振モードを有する1つの結合共振器(第1の共振器1)となる。この第1の共振器1は複数の共振モード(共振周波数f1,f2,・・・、但し、f1<f2<・・・)を有する。同様に、第2の基板20に形成され、互いにA結合した複数の第3の両端開放型共振器31,32と、第2の基板20に形成され、互いにA結合した複数の第4の両端開放型共振器41,42とが、空気層等を介して互いに電磁結合した場合には、前述のように、これら複数の両端開放型共振器同士も混成共振モード同士が電磁結合することにより、複数の共振モードを有する1つの結合共振器(第2の共振器2)となる。この第2の共振器2は複数の共振モード(共振周波数f1,f2,・・・、但し、f1<f2<・・・)を有する。
【0035】
ここで、複数の共振モードの内で、最も低い共振周波数を有する共振モード(共振周波数f1)における電荷分布と電流ベクトルiを示したものが図2であり、複数の両端開放型共振器のそれぞれに流れる電流の向きは全て同方向(図2では上面視で時計回り方向)となる。従って、A結合した両端開放型共振器間では電磁結合した状態となる一方で、第1の基板10と第2の基板20との間では、互いに最も近い位置にある両端開放型共振器間での電界分布(電界成分)がほとんど無くなる。このように、例えば、複数の共振モードの内で最も低い共振周波数を有する共振モードでは、第1の基板10と第2の基板20との間で、互いに最も近い位置にある両端開放型共振器11,21のそれぞれに流れる電流の向きは同方向(図2では上面視で時計回り方向)となり、両端開放型共振器間での電界分布がほとんど無くなることから、主として磁界結合による電磁結合した状態となる。
【0036】
さらに、A結合は強い結合であることから、第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2との周波数差を非常に大きくすることができ、従って、第1の共振器1と第2の共振器2とを並列配置した際に、複数の共振モード(共振周波数f1,f2,・・・)の第1の共振周波数f1を含む通過帯域と、それ以外の共振周波数を含む通過帯域とは周波数が重ならない(通過帯域の周波数が異なる)ようにすることができる。さらに、これら第1の共振周波数f1を含む通過帯域およびそれ以外の各共振周波数を含むそれぞれの通過帯域、すなわち、複数の共振モード(共振周波数f1,f2,・・・)のそれぞれの共振周波数を含む各々の通過帯域は、第1の基板10或いは第2の基板20単独での共振周波数faを含む通過帯域とも周波数が重ならない(通過帯域の周波数が異なる)。従って、第1の共振周波数f1を含む通過帯域では、他の共振モードの影響をほとんど受けることがないだけでなく、共振周波数fa近傍の周波数の影響もほとんど受けることがない。
【0037】
以上のことから、複数の共振モードの内で、最も低い周波数となる共振モードでの共振周波数f1を、信号の通過帯域に設定することが好ましい。ただし、共振周波数f1より高い周波数となる他の共振モードであっても、第1の基板10と第2の基板20との間で、互いに最も近い位置にある両端開放型共振器同士に流れる電流の向きが同方向となるのであれば、その共振モードによる共振周波数を信号の通過帯域に設定しても良い。
【0038】
[具体的な設計例およびその特性]
次に、本実施の形態に係る信号伝送装置の具体的な設計例およびその特性を、比較例の共振器構造の特性と比較して説明する。図9は、本実施の形態に係る信号伝送装置における第1の共振器1の具体的な設計例を示している。図10は、図9に示した設計例における共振周波数特性を示している。なお、図9には第1の基板10側の設計例のみ示しているが、第2の基板20側も同様の設計である。この設計例では、第1の基板10および第2の基板20の平面サイズはそれぞれ3mm角で、基板厚は0.1mm、比誘電率は3.85となっている。第1の基板10上の各電極(第1の両端開放型共振器11,12)の平面サイズは、内半径が0.6mm、電極幅(線路幅)が0.2mmとなっている。開放端部分(両端開放型共振器の一方の開放端と他方の開放端との間のギャップ部)11A,12Aの大きさは0.2mmとなっている。第2の基板20上の各電極(第2の両端開放型共振器21,22)の平面サイズも同様である。このような構成で、基板間の空気層の厚み(基板間距離Da)を10μm〜100μmまで変化させた場合の共振周波数を計算した結果が、図10である。本実施の形態の共振器構造では、図10から分かるように、共振周波数の変化は少なく、空気層の厚みの変化に対して共振周波数は最大でも約5%程度しか変動していない。
【0039】
図11は、比較例の共振器構造201の具体的な設計例を示している。図12は、図11に示した共振器構造201における共振周波数特性を示している。この比較例の共振器構造201は、表面(上面)がグランド電極(グランド面GND)とされ、裏面(底面)に第1の両端開放型共振器211が形成された第1の基板210と、裏面(底面)がグランド電極(グランド面GND)とされ、表面(上面)に第2の両端開放型共振器221が形成された第2の基板220とを、空気層を挟んで、間隔(基板間距離Da)を空けて互いに対向配置したものである。2つの基板間において、第1の両端開放型共振器211と第2の両端開放型共振器221は、互いの開放端部分に互いの中央部が対向するような配置とされている。この比較例の共振器構造201において、基板サイズや電極サイズ等は、図9に示した設計例と同様である。すなわち、第1の基板210および第2の基板220の平面サイズはそれぞれ3mm角で、基板厚は0.1mm、比誘電率は3.85となっている。2つの基板上の各電極(第1の両端開放型共振器211および第2の両端開放型共振器221)の平面サイズは、内半径が0.6mm、電極幅(線路幅)が0.2mmとなっている。開放端部分11A,12Aの大きさは0.2mmとなっている。このような構成で、基板間の空気層の厚み(基板間距離Da)を10μm〜100μmまで変化させた場合の共振周波数を計算した結果が、図12である。この比較例の共振器構造201では、図12から分かるように、空気層の厚みの変化に対して共振周波数が最大で約70%変動している。これは、空気層の厚みの変化によって。第1の基板210および第2の基板220の間で実効比誘電率が変化するためである。
【0040】
[効果]
本実施の形態に係る信号伝送装置によれば、第1の基板10と第2の基板20との間で、互いに最も近い位置にある2つの両端開放型共振器を、互いの開放端同士を対向させると共に互いの中央部同士を互いに対向させるようにしたので、第1の共振器1および第2の共振器2において、第1の基板10と第2の基板20との間の空気層等における電界分布(電界成分)がほとんど無くなる。これにより、第1の基板10と第2の基板20との間で空気層等の基板間距離Daに変動があったとしても、第1の共振器1および第2の共振器2における共振周波数の変動が抑えられる。結果として、基板間距離Daの変動による通過周波数および通過帯域の変動が抑えられる。
【0041】
ところで、共振器のQ値を上げる手法として、共振器の体積を増加させる方法があるが、これは部品の小型化に反している。例えば第1の基板10を共振器構造の部品、第2の基板20を共振器構造の部品を実装する実装基板とすると、従来の共振器構造では共振器のQ値を上げるためには部品側の体積を増加させなければならない。これに対して、本実施の形態における共振器構造では、実装基板側の電極パターン(第2の両端開放型共振器21等)を共振器の一部として用いていることができる。これにより、部品側の体積を増加させることなく、実装基板の体積を共振器の一部として利用することにより、共振器のQ値を上げることができる。また、本実施の形態における共振器構造では、例えば部品側(第1の基板10)に側面端子を設けることなく、実装基板(第2の基板20)に電磁結合により結合させることができるので、構成の簡素化とコストダウンが可能になる。
【0042】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0043】
上記第1の実施の形態では、第1の共振器1および第2の共振器2を構成する両端開放型共振器として、いわゆるオープンリングレゾネータを用いたが、他の構造の両端開放型共振器を用いるようにしても良い。基本的には、ミラー対称的な形状となる一対の共振器が1つの基板の表面および裏面に形成され、かつ、対向する2つの基板間で、互いに最も近い位置(基板間で対向する部分)では、互いの開放端部分同士が対向すると共に互いの中央部同士が互いに対向するような配置とされていれば良い。
【0044】
図13(A),(B)は、他の構造の両端開放型共振器の一例を示している。図13(A),(B)では、コの字状の線路型の1/2波長共振器からなる一対の両端開放型共振器61,62の構造を示している。この一対の両端開放型共振器61,62を、例えば第1の共振器1を構成する複数の第1の両端開放型共振器11,12および複数の第2の両端開放型共振器21,22に代えて用いるようにしても良い。この場合、隣接する2つの両端開放型共振器同士の位置関係は、第1の両端開放型共振器11,12および複数の第2の両端開放型共振器21,22を用いた場合と同様となるようにする。すなわち、第1の基板10または第2の基板20において、一方の両端開放型共振器61の開放端部分61Aに他方の両端開放型共振器62の中央部62Bが対向すると共に、一方の両端開放型共振器61の中央部61Bに他方の両端開放型共振器62の開放端部分62Aが対向するように配置する。また、第1の基板10と第2の基板20との間で、互いに最も近い位置(基板間で対向する部分)では、互いの開放端部分同士が対向すると共に互いの中央部同士が互いに対向するように両端開放型共振器61または62を配置する。この場合も、例えば複数の共振モードの内で最も低い共振周波数f1を有する共振モードでは、第1の基板10と第2の基板20との間で、互いに最も近い位置にある両端開放型共振器61または62のそれぞれの電流の向きは同方向(共に時計回り、または共に反時計回り)となり、両端開放型共振器間での電界分布がほとんど無くなる。
【0045】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上第1または第2の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0046】
図1に示した信号伝送装置では第1の信号引き出し電極51を、第1の基板10に形成された第1の両端開放型共振器12に物理的に直接接続して導通するようにしていたが、第1の共振器1に対して間隔を空けて電磁結合された信号引き出し電極を用いるようにしても良い。例えば、第1の基板10の表面側において、図14(A)に示したように、第1の両端開放型共振器12に対して間隔を空けて配置された第1の信号引き出し電極53を設けるようにしても良い。この場合、第1の信号引き出し電極53を、第1の共振器1の共振周波数f1(またはf2)と同様の共振周波数f1(またはf2)で共振する共振器で構成する。これにより、第1の信号引き出し電極53と第1の共振器1とが、共振周波数f1(またはf2)で電磁結合される。
【0047】
同様に、図1に示した信号伝送装置では第2の信号引き出し電極52を、第2の基板20に形成された第4の両端開放型共振器42に物理的に直接接続して導通するようにしていたが、第1の共振器1に対して間隔を空けて電磁結合された信号引き出し電極を用いるようにしても良い。例えば、第2の基板20の裏面側において、図14(B)に示したように、第4の両端開放型共振器42に対して間隔を空けて配置された第2の信号引き出し電極54を設けるようにしても良い。この場合、第2の信号引き出し電極54を、第2の共振器2の共振周波数f1(またはf2)と同様の共振周波数f1(またはf2)で共振する共振器で構成する。これにより、第2の信号引き出し電極54と第2の共振器2とが、共振周波数f1(またはf2)で電磁結合される。
【0048】
<その他の実施の形態>
本発明は、上記各実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。
例えば、上記第1の実施の形態では、第1の共振器1と第2の共振器2との双方を、図4(A),(B)に示したように実質的に同一の共振機器構造で構成したが、例えば第2の共振器2の方を別の共振機器構造で構成しても良い。
【0049】
また、上記第1の実施の形態では、第1の基板10および第2の基板20にそれぞれ2つずつ両端開放型共振器を形成した例を示したが、いずれか一方の基板には、第1の共振器1または第2の共振器2を構成する両端開放型共振器を1つのみ設けるようにしても良い。例えば第2の基板20側には、第1の共振器1の構成要素として一方の第2の両端開放型共振器21のみを設けるようにしても良い。第2の共振器2についても同様に、第2の基板20側には、第2の共振器2の構成要素として一方の第4の両端開放型共振器41のみを設けるようにしても良い。
【0050】
また、上記第1の実施の形態では、第1の基板10および第2の基板20の2つの基板によって第1の共振器1および第2の共振器2を形成した例を示したが、3つ以上の基板を対向配置させて、3つ以上の基板によって第1の共振器1および第2の共振器2を構成してもよい。例えば、第1の基板10とは反対側(第2の基板20の裏面側)において、第2の基板20に間隔(基板間距離Da)を空けて対向するような第3の基板を設けるようにしても良い。そして、第1の基板10および第2の基板20と同様に、第3の基板にも複数の両端開放型共振器を形成し、第1の基板10、および第2の基板20ならびに第3の基板において第1の領域に形成された複数の両端開放型共振器によって第1の共振器1を構成し、第2の領域に形成された他の複数の両端開放型共振器によって第2の共振器2を構成するようにしても良い。
【0051】
さらに、上記第1の実施の形態では、第1の信号引き出し電極51を第1の基板10側に形成し、第2の信号引き出し電極52を第2の基板20側に形成して別々の基板間での信号伝送を行う例を挙げたが、各引き出し電極を同一の基板上に形成して基板内での信号伝送を行うようにしても良い。例えば、第1の信号引き出し電極51を第2の基板20側の底面側に形成すると共に第2の両端開放型共振器22の一端に接続することで第2の基板20内での信号伝送を行うようにしても良い。この場合、信号の伝送方向は第2の基板20内であるが、第1の基板10側の共振器も利用して(上下方向の体積を利用して)信号を伝送するので、例えばフィルタとして特定の周波数を選択して信号を伝送する場合において、第2の基板20上の電極パターンのみを用いて伝送する場合に比べて、平面方向の面積を抑えることができる。すなわち、平面方向の面積を抑えつつ、フィルタとして基板内での信号伝送を行うことができる。
【0052】
また、上記第1の実施の形態では、第1の共振器1と第2の共振器2との2つの共振器が並列配置されていたが、3つ以上の共振器が並列配置されていても良く、異なる基板間で互いに最も近い位置にある両端開放型共振器のそれぞれに流れる電流の向きが同方向となるように構成されていれば良い。また、上記第1の実施の形態では、第1の基板10と第2の基板20の比誘電率を等しくしていたが、第1の基板10と第2の基板20のそれぞれの比誘電率が異なっていても良く、第1の基板10と第2の基板20の少なくとも一方の比誘電率とは異なる比誘電率を有する層を挟んでいれば良い。他の実施の形態についても同様である。また、本発明の信号伝送装置としては、アナログ信号やデジタル信号等の送信/受信のための信号伝送装置のみならず、電力の送電/受電のための信号伝送装置をも含む。
【符号の説明】
【0053】
1…第1の共振器、2…第2の共振器、10…第1の基板、11,12…第1の両端開放型共振器、11A,12A,21A,22A…開放端部分、11B,12B,21B,22B…中央部、20…第2の基板、21,22…第2の両端開放型共振器、30…基板間で対向する部分、51,53…第1の信号引き出し電極、52,54…第2の信号引き出し電極、61…第1の両端開放型共振器、61A,62A…開放端部分、61B,62B…中央部、62…第2の両端開放型共振器、81,82…グランド電極、101,102…結合共振器、110…第1の基板、120…第2の基板、111,121,131,141…共振器、120…第2の基板、201…比較例の共振器構造、210…第1の基板、211…第1の両端開放型共振器、220…第2の基板、221…第2の両端開放型共振器、Da…基板間距離、i…電流。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて第1の方向に互いに対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板における第1の領域に形成され、前記第1の方向に互いに電磁結合する複数の第1の両端開放型共振器と、
前記第2の基板における前記第1の領域に対応する領域において、1つまたは前記第1の方向に互いに電磁結合するように複数形成された第2の両端開放型共振器と、
複数の前記第1の両端開放型共振器と1または複数の前記第2の両端開放型共振器とによって形成された第1の共振器と、
前記第1の共振器に電磁結合されて前記第1の共振器との間で信号伝送を行う第2の共振器と
を備え、
前記複数の第1の両端開放型共振器は、一方の第1の両端開放型共振器と他方の第1の両端開放型共振器とを有し、前記一方の第1の両端開放型共振器の開放端に前記他方の第1の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、前記一方の第1の両端開放型共振器の中央部に前記他方の第1の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置され、
前記第2の両端開放型共振器を複数有する場合には、複数の前記第2の両端開放型共振器として、一方の第2の両端開放型共振器と他方の第2の両端開放型共振器とを有し、前記一方の第2の両端開放型共振器の開放端に前記他方の第2の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、前記一方の第2の両端開放型共振器の中央部に前記他方の第2の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置され、
前記第1の共振器において、互いに最も近い位置にある前記第1の両端開放型共振器と前記第2の両端開放型共振器とが、互いの開放端同士が対向すると共に互いの中央部同士が互いに対向するように配置されている
信号伝送装置。
【請求項2】
前記第1の基板における第2の領域に形成され、前記第1の方向に互いに電磁結合された複数の第3の両端開放型共振器と、
前記第2の基板における前記第2の領域に対応する領域において、1つまたは前記第1の方向に互いに電磁結合するように複数形成された第4の両端開放型共振器とをさらに備え、
前記第2の共振器は、複数の前記第3の両端開放型共振器と1または複数の前記第4の両端開放型共振器とによって形成され、
前記複数の第3の両端開放型共振器は、一方の第3の両端開放型共振器と他方の第3の両端開放型共振器とを有し、前記一方の第3の両端開放型共振器の開放端に前記他方の第3の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、前記一方の第3の両端開放型共振器の中央部に前記他方の第3の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置され、
前記第4の両端開放型共振器を複数有する場合には、複数の前記第4の両端開放型共振器として、一方の第4の両端開放型共振器と他方の第4の両端開放型共振器とを有し、前記一方の第4の両端開放型共振器の開放端に前記他方の第4の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、前記一方の第4の両端開放型共振器の中央部に前記他方の第4の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置され、
前記第2の共振器において、互いに最も近い位置にある前記第3の両端開放型共振器と前記第4の両端開放型共振器とが、互いの開放端同士が対向すると共に互いの中央部同士が互いに対向するように配置されている
請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
前記第1の基板に形成されると共に、前記第1の両端開放型共振器に物理的に直接接続、または前記第1の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第1の信号引き出し電極と、
前記第2の基板に形成されると共に、前記第4の両端開放型共振器に物理的に直接接続、または前記第2の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第2の信号引き出し電極と
をさらに備え、
前記第1の基板と前記第2の基板との間で信号伝送を行う
請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
前記第2の基板に形成されると共に、前記第2の両端開放型共振器に物理的に直接接続、または前記第1の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第1の信号引き出し電極と、
前記第2の基板に形成されると共に、前記第4の両端開放型共振器に物理的に直接接続、または前記第2の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第2の信号引き出し電極と
をさらに備え、
前記第2の基板内で信号伝送を行う
請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
前記第1の共振器は、複数の前記第1の両端開放型共振器と1または複数の前記第2の両端開放型共振器とが混成共振モードで電磁結合することにより全体として第1の共振周波数で共振する1つの結合共振器を構成し、かつ、前記第1および第2の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では複数の前記第1の両端開放型共振器による単独の共振周波数と1または複数の前記第2の両端開放型共振器による単独の共振周波数とがそれぞれ、前記第1の共振周波数とは異なる周波数とされ、
前記第2の共振器は、複数の前記第3の両端開放型共振器と1または複数の前記第4の両端開放型共振器とが混成共振モードで電磁結合することにより全体として前記第1の共振周波数で共振する1つの結合共振器を構成し、かつ、前記第1および第2の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では複数の前記第3の両端開放型共振器による単独の共振周波数と1または複数の前記第4の両端開放型共振器による単独の共振周波数とがそれぞれ、前記第1の共振周波数とは異なる周波数とされている
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項6】
間隔を空けて第1の方向に互いに対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板における第1の領域に形成され、前記第1の方向に互いに電磁結合する複数の第1の両端開放型共振器と、
前記第2の基板における前記第1の領域に対応する領域において、1つまたは前記第1の方向に互いに電磁結合するように複数形成された第2の両端開放型共振器と、
複数の前記第1の両端開放型共振器と1または複数の前記第2の両端開放型共振器とによって形成された第1の共振器と、
前記第1の共振器に電磁結合されて前記第1の共振器との間で信号伝送を行う第2の共振器と
を備え、
前記複数の第1の両端開放型共振器は、一方の第1の両端開放型共振器と他方の第1の両端開放型共振器とを有し、前記一方の第1の両端開放型共振器の開放端に前記他方の第1の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、前記一方の第1の両端開放型共振器の中央部に前記他方の第1の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置され、
前記第2の両端開放型共振器を複数有する場合には、複数の前記第2の両端開放型共振器として、一方の第2の両端開放型共振器と他方の第2の両端開放型共振器とを有し、前記一方の第2の両端開放型共振器の開放端に前記他方の第2の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、前記一方の第2の両端開放型共振器の中央部に前記他方の第2の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置され、
前記第1の共振器において、互いに最も近い位置にある前記第1の両端開放型共振器と前記第2の両端開放型共振器とが、互いの開放端同士が対向すると共に互いの中央部同士が互いに対向するように配置されている
フィルタ。
【請求項7】
間隔を空けて第1の方向に互いに対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板における第1の領域に形成され、前記第1の方向に互いに電磁結合する複数の第1の両端開放型共振器と、
前記第2の基板における前記第1の領域に対応する領域において、1つまたは前記第1の方向に互いに電磁結合するように複数形成された第2の両端開放型共振器と、
前記第1の基板における第2の領域に形成され、前記第1の方向に互いに電磁結合する複数の第3の両端開放型共振器と、
前記第2の基板における前記第2の領域に対応する領域において、1つまたは前記第1の方向に互いに電磁結合するように複数形成された第4の両端開放型共振器と、
複数の前記第1の両端開放型共振器と1または複数の前記第2の両端開放型共振器とによって形成された第1の共振器と、
複数の前記第3の両端開放型共振器と1または複数の前記第4の両端開放型共振器とによって形成されると共に、前記第1の共振器に電磁結合されて前記第1の共振器との間で信号伝送を行う第2の共振器と、
前記第1の基板に形成され前記第1の両端開放型共振器に物理的に直接接続、または電磁結合により間隔を空けて結合された第1の信号引き出し電極と、
前記第2の基板に形成され前記第4の両端開放型共振器に物理的に直接接続、または電磁結合により間隔を空けて結合された第2の信号引き出し電極と
備え、
前記複数の第1の両端開放型共振器は、一方の第1の両端開放型共振器と他方の第1の両端開放型共振器とを有し、前記一方の第1の両端開放型共振器の開放端に前記他方の第1の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、前記一方の第1の両端開放型共振器の中央部に前記他方の第1の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置され、
前記第2の両端開放型共振器を複数有する場合には、複数の前記第2の両端開放型共振器として、一方の第2の両端開放型共振器と他方の第2の両端開放型共振器とを有し、前記一方の第2の両端開放型共振器の開放端に前記他方の第2の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、前記一方の第2の両端開放型共振器の中央部に前記他方の第2の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置され、
前記複数の第3の両端開放型共振器は、一方の第3の両端開放型共振器と他方の第3の両端開放型共振器とを有し、前記一方の第3の両端開放型共振器の開放端に前記他方の第3の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、前記一方の第3の両端開放型共振器の中央部に前記他方の第3の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置され、
前記第4の両端開放型共振器を複数有する場合には、複数の前記第4の両端開放型共振器として、一方の第4の両端開放型共振器と他方の第4の両端開放型共振器とを有し、前記一方の第4の両端開放型共振器の開放端に前記他方の第4の両端開放型共振器の中央部が対向すると共に、前記一方の第4の両端開放型共振器の中央部に前記他方の第4の両端開放型共振器の開放端が対向するように配置され、
前記第1の共振器において、互いに最も近い位置にある前記第1の両端開放型共振器と前記第2の両端開放型共振器とが、互いの開放端同士が対向すると共に互いの中央部同士が互いに対向するように配置され、
前記第2の共振器において、互いに最も近い位置にある前記第3の両端開放型共振器と前記第4の両端開放型共振器とが、互いの開放端同士が対向すると共に互いの中央部同士が互いに対向するように配置され、
前記第1の基板と前記第2の基板との間で信号伝送を行う
基板間通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−54697(P2012−54697A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194557(P2010−194557)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】