説明

信号処理回路

【課題】液晶パネル全面から放射される水平同期信号の周波数の逓倍の不要電磁波を低減しつつ、視認性も確保することのできる映像信号処理方法を提供する。
【解決手段】 映像信号を2、液晶表示装置に出力する信号処理回路6において、入力された映像信号の振幅を調整する手段7と、映像信号にオフセットを加えて出力する手段9と、液晶表示装置に入力するVCOM信号の振幅を調整する手段8を備え、映像信号レベルとVCOM信号振幅を調整することにより視認性を確保しつつ、液晶パネル全面から放射される不要電磁波の低減を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置における映像信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1が開示するのは、液晶表示装置である。この装置を構成するのは、液晶、電極、ガラス基盤、偏光フィルタ、カラーフィルタ、バックライトである。これらの構成要素は、積み重なって、層状になっている。すなわち、液晶が配置されるのは、2枚の電極間である。2枚の電極が配置されるのは、2枚のガラス基盤の間である。2枚のガラス基盤が配置されるのは、2枚の偏向フィルタの間である。一方の偏向フィルタを照らすのは、バックライトである。
【0003】
以下の説明では、液晶を基準としてバックライト側の電極を定義して、背面電極とし、液晶を基準として表示側の電極を定義して、前面電極とする。また、当該バックライト側のガラス基盤を定義して、背面ガラス基盤とし、当該表示側のガラス基盤を定義して、前面ガラス基盤とする。前面ガラス基盤及び液晶の間に、カラーフィルタが配置される。この装置は、映像信号に応じたデータ電圧を画素に印加することで、液晶物質の光透過率を制御して画像を表示する。
【0004】
特許文献2が開示するのは、不要輻射を低減するための一般な技術である。デジタル表示デバイス用いた映像機器(例えば、液晶テレビやPDPテレビ等)では、パネル表示デバイスおよびそのインターフェースからの不要輻射を抑える方法として、スペクトラム拡散技術が用いられる。すなわち、パネル表示デバイスへのクロックを変調させ、そのクロックに同期したデジタル回路全体の信号変化点を拡散させることで、不要輻射のピークを低減することが可能になる。
【0005】
TN液晶においては、液晶は直流電圧が印加され続けると、液晶に含まれるイオン性不純物が電極に集まる現象(いわゆる焼付き現象)が起る。液晶に正しい電圧が印加できなくなることを防ぐため、パネルに印加する信号を反転させている。その反転周期は、水平同期期間(1H期間)、垂直同期期間(1V期間)である。
【0006】
前面電極には全面に1水平周期、1垂直周期ごとに反転する電圧を印加し、背面電極には、1水平周期、1垂直周期ごとに映像信号を反転させた電圧を印加することで表示が行われている。
【特許文献1】特開平8−36190号公報
【特許文献2】特開2008−203628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の映像信号処理では、クロック信号に対してスペクトラム拡散するだけでは、周波数の低い水平同期の周波数に対する効果を得ることが出来ないため、パネル全面から放射される水平同期の周波数の逓倍および、垂直同期の周波数の低倍の不要電磁波を十分に防ぐことが出来なかった。
【0008】
しかも、近年、タッチパネルを有しないディスプレイが採用されることがあり、その場合、タッチパネルが遮蔽材として機能することは無いので、不要電磁波の問題はより大きくなる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、これらの問題を解決しつつ視認性も確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る信号処理回路は、映像信号を液晶表示装置に入力する信号処理回路において、入力された映像信号の振幅を調整する調整回路と、調整された映像信号にオフセットを加えて出力するオフセット回路と、を備える構成を有している。
【0011】
この構成により入力された映像信号の振幅を調整し、調整された映像信号にオフセットを加えて出力することができ、映像信号の振幅が調整されることで、液晶パネルの背面電極に印加される電圧が調整され、1H、1V反転時に発生する電圧の変動幅を調整することができる。
【0012】
また、本発明の信号処理回路は、入力された映像信号の振幅を少なくとも1/2に縮小する調整能力を有している。
【0013】
この構成により、液晶パネルに印加する映像信号の振幅を信号処理回路で映像信号の振幅を調整しない場合の少なくとも1/2に縮小し、背面電極に印加する電圧を少なくとも1/2に縮小することができる。映像信号を1H、1Vごとに反転させることにより、液晶間電位が変動し、不要電磁波を発生する。電磁波の強さは電圧に依存し、電圧が大きくなると電磁波の強さも強くなる。本発明の信号処理回路で映像信号の振幅を1/2に縮小することにより不要電磁波のレベルを低減することが出来る。
【0014】
さらに、本発明の信号処理回路は、映像信号の振幅は変化させずに、入力階調を液晶パネルの入力階調と輝度との関係を表すガンマ特性上でシフトさせる調整能力を有している。
【0015】
この構成により、液晶パネルのガンマ特性上の入力階調をシフトさせることにより、液晶表示装置の表示にコントラスト感を持たせることが出来る。上記映像信号レベルの調整により入力階調対輝度の変化が小さな低階調だけを使用することになるが、液晶パネルのガンマ特性上の入力階調をシフトさせることにより、輝度変化の大きな入力階調約25%から約75%までを使用することが出来る。これにより、映像信号の出力レベルを1/2に小さくしても、視認性を確保することが出来る。
【0016】
さらに、本発明の信号処理回路は、液晶表示装置に入力するコモン電圧信号の振幅を調整する第2の調整回路をさらに備えて構成されている。
【0017】
この構成により、液晶パネルに印加するコモン電圧信号(VCOM信号)の
振幅を調整することにより、VCOM信号、映像信号の電位差を
調整することが出来る。これにより、液晶のシャッターの開口率を調整すること
が出来、輝度を調整することが出来る。
【0018】
また、本発明の信号処理回路の第2の調整回路は、少なくとも前記コモン電圧信号の信号振幅を縮小する構成を有している。
この構成により、コモン電圧信号(VCOM信号)振幅を小さくすることにより、図2のようにVCOM信号、映像信号の電位差を小さく調整することが出来る。これにより、液晶のシャッターをより開くことが出来、映像信号の出力レベルを1/2に小さくすることによる輝度の低下を低減することが出来る。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、液晶ディスプレイの全面から輻射される不要電磁波を低減しつつ、視認性を確保できる優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1が示すのは、本発明の実施の形態の映像システムである。映像システム1を構成するのは、液晶表示装置2、信号処理回路3及びバックライト電源回路4である。液晶表示装置2に接続されているのは、信号処理回路3及びバックライト電源回路4である。
【0021】
信号処理回路3が処理するのは、入力された映像信号であり、処理された信号が出力される先は、液晶表示装置2である。信号処理回路3を構成するのは、第1の調整回路5、オフセット回路6及び第2の調整回路7である。
【0022】
第1の調整回路は、信号処理回路に入力された映像信号の振幅を例えば2倍、もしくは1/2倍に調整して出力することができる。
【0023】
オフセット回路6は、前段の調整回路5にて振幅を調整した映像信号にオフセット加えて出力することができる。
【0024】
ここで第1の調整回路5及びオフセット回路6が具現化されたものとして、松下電器産業株式会社製のCSVIP−6Mがある。このチップにおいて、レジスタへの設定値を変更することで、第1の調整回路5、オフセット回路6と同等の調整機能が実現できる。レジスタへの設定値を決める主な要素は、入力信号輝度特性であり、その説明は後述する。
【0025】
本実施の形態では、第1の調整回路5及びオフセット回路6を実現するのは、1つのチップであるが、第1の調整回路5及びオフセット回路6を実現するのは、複数のチップであってもよい。
【0026】
第2の調整回路7が調整するのは、VCOM信号の振幅である。この信号の説明は、後述する。
【0027】
ここで第2の調整回路7は、松下電器産業株式会社製のCSVIP−6Mと増幅回路(信号振幅または電流量などを大きくできる回路、オペアンプ、差動増幅回路、ソースフォロワ回路、バッファ回路など)の組み合わせで具現化できる。このチップにおいて、レジスタへの設定値を買えることで、第2の調整回路7と同等の調整機能が実現できる。レジスタへの設定値を決める要素は入力信号輝度特性であり、その説明は後述する。
【0028】
図2が示すのは、映像信号及びVCOM信号の関係である。映像信号8を印加する先は、液晶表示装置2である。より詳しくは、この印加先は、液晶パネルの背面電極である。VCOM信号9を印加する先は、液晶パネルの前面電極である。映像信号8とVCOM信号9との電位差(以下、液晶間電位10という)がかかるのは、液晶の両端である。
【0029】
液晶表示装置2は、液晶間電位10の大きさにより液晶の傾きを調整しバックライトからの光の透過率を調整し、所望の映像を表示する。映像信号8とVCOM信号9はともに、1Hの周期で反転し、さらに1Vの周期でも反転する。
【0030】
図3が示すのは、本実施の形態における信号処理の手順である。第2の映像信号11を得る手順は、次のとおりである。まず、入力された映像信号8が調整されて、その振幅は小さくなる(約1/2倍)。この調整を行うのは、第1の調整回路5である。液晶間電位12の1H内の変化量を、図2の液晶間電位10に比べ、約1/2に小さくすることにより不要電磁波のレベルを低減させている。次に、調整された映像信号は、オフセットされ
る。このオフセットを行うのは、オフセット回路6である。オフセット態様の説明は、後述する。当該調整及び当該オフセットが行われると、第2の映像信号11が得られる。
【0031】
図4が示すのは、入力信号輝度特性(以下、ガンマ特性)である。ガンマ特性14が示すのは、液晶表示装置へ入力する映像信号の電圧と輝度との関係である。映像信号が調整され、その振幅が1/2になるだけでは、輝度変化の大きい高階調部分を使用することができない(例えば、第1のガンマ特性15を参照)。そこで、必要なのは、調整された映像信号のオフセットである。すなわち、オフセットのタイミングは、映像信号の振幅を調整した約1/2にした後である。オフセットの態様として、第2のガンマ特性16が好ましい。
【0032】
また、全体のガンマ特性14のうち最も輝度変化がわかり易い低階調部と高階調部のそれぞれの輝度変化の小さい入力階調を使用せず、全体の輝度の約1%から約90%間を使用する。これによって、画質の劣化を抑えることができる。
【0033】
図5が示すのは、本実施の形態におけるVCOM信号の調整方法である。この方法が可能にするのは、映像信号を1/2に小さくしたことによる輝度の低下を、VCOM信号の調整により抑えることである。出力映像信号レベルを約1/2に小さくしたことにより液晶間電位12が大きくなり輝度が下がる。第2の調整回 路でVCOM振幅を小さくすることにより第3の液晶間電位17を小さくし、輝度を確保することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明が利用されるは、特定の空間(例えば、輻射が問題となりやすい場所)で利用される電子機器であり、例えば、ナビゲーション装置やテレビ受信装置等の車載電子機器に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施の形態における映像システムを示すブロック図
【図2】本実施の形態における液晶間にかかる電圧を示す波形図
【図3】本実施の形態における信号処理の手順を示す模式図
【図4】本実施の形態における液晶パネルの入力階調と輝度との関係を示す模式図
【図5】本実施の形態におけるVCOM信号の調整方法を示す模式図
【符号の説明】
【0036】
1 映像システム
2 液晶表示装置
3 信号処理回路
4 バックライト回路
5 調整回路
6 オフセット回路
7 第2の調整回路
8 映像信号
9 VCOM信号
10 液晶間電位
11 第2の映像信号
12 VCOM信号
13 第2の液晶間電位
14 ガンマ特性
15 第1のガンマ特性
16 第2のガンマ特性
17 第3の液晶間電位


【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号を液晶表示装置に入力する信号処理回路において、
入力された映像信号の振幅を調整する調整回路と、
調整された映像信号にオフセットを加えて出力するオフセット回路と、
を備えることを特徴とする信号処理回路。
【請求項2】
前記調整回路は、入力された映像信号の振幅を少なくとも1/2に縮小することを特徴とする請求項1記載の信号処理回路。
【請求項3】
前記オフセット回路は、映像信号の振幅は変化させずに、入力階調を液晶パネルの入力階調と輝度との関係を表すガンマ特性上でシフトさせることを特徴とする請求項1または2に記載の信号処理回路。
【請求項4】
前記液晶表示装置に入力するコモン電圧信号の振幅を調整する第2の調整回路をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の信号処理回路。
【請求項5】
前記第2の調整回路は、少なくとも前記コモン電圧信号の信号振幅を縮小することを特徴とする請求項4に記載の信号処理回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−91919(P2010−91919A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263794(P2008−263794)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】