説明

信号処理装置、信号処理方法、信号処理プログラム及び表示装置

【課題】高品質な動画像を提供できるようにする。
【解決手段】本発明は、表示画像データD3のうち任意の座標Q(x,y)における信号レベルS(n)と、相関データD4のうち当該座標Q(x,y)対応する差分値E(n)とを基に、(4)〜(6)式に従って3回のパルス信号におけるそれぞれのパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)を算出し、これらを駆動データD6として表示デバイス2に供給することにより、表示期間nにおける各表示画素の駆動レベルの変化を有機ELパネルでなる表示デバイス2の応答特性及び人間の視覚特性に合わせて調整することができるので、表示デバイス2に表示された動画像を鑑賞するユーザに残像を認識させる可能性を極めて低減し当該ユーザに対して高画質な動画像を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信号処理装置、信号処理方法、信号処理プログラム及び表示装置に関し、例えばテレビジョン装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビジョン装置においては、大画面化・薄型化といった要望に応じるべく、従来のCRT(Cathode Ray Tube)に代わって液晶パネルやプラズマディスプレイパネル等が表示デバイスとして用いられることにより、全体として薄型に構成されたものが普及しつつある。
【0003】
例えば液晶パネルが用いられたテレビジョン装置では、液晶パネルの原理上、表示素子の応答速度が比較的遅いため、いわゆる残像現象を生じやすく、動画像を表示する際に鑑賞者に対して映像がぼやけているような印象を与えてしまう可能性があった。
【0004】
そこで、液晶パネルが用いられたテレビジョン装置のなかには、1フレーム前の画像を元に補正信号を生成して液晶パネルに供給する表示信号を補正することにより、残像現象を抑えるようになされたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−82657公報(第18頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年では、新たな表示デバイスとして有機EL(electroluminescence)パネルが注目され、実用化に向けて開発が進められている。
【0006】
この有機ELパネルは、原理的に応答速度が充分に高速であるため、表示信号に応じたタイミングで各表示素子を表示し得るといった観点から、当該表示信号に対する補正は不要であると考えられている。
【0007】
ここで、一般的な人間の視覚特性として、テレビジョン装置の表示デバイスに限らず、光を見た直後に残像が残ることがあり、光の明るさが明るくなるほど残像が長引くといった性質がある。
【0008】
また、有機ELパネルのような比較的応答速度が高速な表示デバイスであっても、表示素子が完全に遅延なく応答することはないため、僅かながら残像現象を生じてしまう。
【0009】
このため、有機ELパネルが用いられたテレビジョン装置では、動画像を鑑賞するユーザの視覚特性と有機ELパネルの応答特性とから、当該ユーザに残像があるかのように認識させてしまう可能性がある。
【0010】
例えばテレビジョン装置は、図7(A)に示すように、任意の座標Q(x、y)に着目した場合、当該座標Q(x,y)に相当する表示素子に対して図7(B)に示すような駆動信号が供給され、当該表示素子により当該駆動信号に応じた表示を行ったとしても、ユーザに対して図7(C)に波形を示すような出力レベルを認識させることになってしまう。
【0011】
すなわちテレビジョン装置は、比較的応答速度が高速な表示デバイスを用いていたとしても、ユーザの視覚特性と表示デバイスの応答特性とから、当該ユーザに残像を認識させて結果的に低品質な動画像を鑑賞しているかのような印象を与えてしまう可能性があるという問題があった。
【0012】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、高品質な動画像を提供し得る信号処理装置、信号処理方法、信号処理プログラム及び表示装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため本発明の信号処理装置、信号処理方法及び信号処理プログラムにおいては、動画像を構成する所定表示期間毎の静止画像を当該表示期間毎に所定の表示デバイスに表示させるための駆動データを生成する際、静止画像の所定座標における画素値と当該静止画像の次の表示期間に表示すべき静止画像の所定座標における画素値との相関情報を取得し、静止画像の所定座標における画素値と相関情報とに応じて表示期間内における当該静止画像の当該所定座標に対応する表示画素の駆動レベルの変化を調整するようにした。
【0014】
これにより、ある表示期間に表示すべき静止画像を構成する各座標の表示画素における駆動レベルの変化を、その次の表示期間に表示すべき静止画像における同一座標の画素値に応じて、静止画像を鑑賞するユーザに当該表示期間における表示内容を次の表示期間までの残像として認識させないよう調整することができる。
【0015】
また本発明の表示装置においては、動画像を構成する所定表示期間毎の静止画像を当該表示期間毎に所定の表示デバイスに表示する表示装置であって、静止画像の所定座標における画素値と当該静止画像の次の表示期間に表示すべき静止画像の所定座標における画素値との相関情報を取得する取得手段と、静止画像の所定座標における画素値と相関情報とに応じて表示期間内における当該静止画像の当該所定座標に対応する表示画素の駆動レベルの変化を調整する制御部とを設けるようにした。
【0016】
これにより、ある表示期間に表示デバイスに表示すべき静止画像を構成する各座標の表示画素における駆動レベルの変化を、その次の表示期間に表示すべき静止画像における同一座標の画素値に応じて、静止画像を鑑賞するユーザに当該表示期間における表示内容を次の表示期間までの残像として認識させないよう調整することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ある表示期間に表示すべき静止画像を構成する各座標の表示画素における駆動レベルの変化を、その次の表示期間に表示すべき静止画像における同一座標の画素値に応じて、静止画像を鑑賞するユーザに当該表示期間における表示内容を次の表示期間までの残像として認識させないよう調整することができ、かくして高品質な動画像を提供し得る信号処理装置、信号処理方法及び信号処理プログラムを実現できる。
【0018】
また本発明によれば、ある表示期間に表示デバイスに表示すべき静止画像を構成する各座標の表示画素における駆動レベルの変化を、その次の表示期間に表示すべき静止画像における同一座標の画素値に応じて、静止画像を鑑賞するユーザに当該表示期間における表示内容を次の表示期間までの残像として認識させないよう調整することができ、かくして高品質な動画像を提供し得る表示装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0020】
(1)テレビジョン装置の構成
図1において、テレビジョン装置1は、地上ディジタル放送やBS(Broadcast Satellite)ディジタル放送により放送されるテレビジョン放送番組を受信し、有機ELパネルでなる表示デバイス2にその映像を表示すると共に、図示しないスピーカからその音声を出力することにより、当該テレビジョン放送番組をユーザに視聴させ得るようになされている。
【0021】
テレビジョン装置1は、アンテナ3を介して受信したディジタルテレビジョン放送信号B1に対して受信処理部4により所定の復調処理等を施すことにより、MPEG−2(Motion Pictures Expert Group-2)方式で符号化されている符号化データD1を抽出し、これを画像デコード処理部5へ供給する。
【0022】
画像デコード処理部5は、符号化データD1に対してMPEG−2方式による復号化処理等を施すことにより再生画像データD2を順次生成し、これを再生画像保持部6へ供給する。再生画像保持部6は、供給される再生画像データD2を保持すると共に、1枚の静止画像を表す再生画像データD2を所定の表示期間毎(例えば1/60秒=1フィールド毎)に画質改善処理部7へ送出する。
【0023】
画質改善処理部7は、供給される再生画像データD2に対してI/P(Interlace/Progressive)変換処理等の画質を改善する処理を施すことにより表示画像データD3を生成し、これを表示デバイス駆動部8の調整データ生成部8A及び駆動データ生成部8Bへ供給する。
【0024】
ここで表示画像データD3は、表示デバイス2により所定の表示期間毎(例えば1/60秒毎)に表示されるべき静止画像である。また当該静止画像(例えば横1920画素×縦1080画素)を構成する各画素は、表示デバイス2を構成する表示画素(例えば横1920画素×縦1080画素)と1対1で対応するようになされている。
【0025】
ところで画像デコード処理部5は、符号化データD1に対してMPEG−2方式による復号化処理等を施す際、当該符号化データD1が予測符号化されている、すなわち未来の再生画像データを用いて符号化されている場合がある。このとき画像デコード処理部5は、ある時点の再生画像データD2を復号化する際、当該再生画像データD2の時点よりも未来の時点に相当する再生画像データを構成する各画素の画素値や相関値(例えば画素値同士の差分値)等も内部に有することになる。
【0026】
画像デコード処理部5は、再生画像データD2を構成する各画素に関して、当該再生画像データD2の次に生成すべき再生画像データにおける同一座標の画素の画素値との差分値を相関データD4として相関データ保持部9へ供給する。
【0027】
相関データ保持部9は、相関データD4を保持した後、表示デバイス2における表示期間に応じた所定のタイミング毎に当該相関データD4を表示デバイス駆動部8へ送出するようになされている。
【0028】
因みに相関データ保持部9は、次画像データにおける画素値そのものではなく、当該画素値よりも数値が比較的小さい差分値を保持することにより、当該数値(すなわち画素値又は差分値)の保持に必要な記憶域を削減し得るようになされている。
【0029】
表示デバイス駆動部8は、調整データ生成部8Aにおいて、表示画像データD3及び相関データD4を基に、当該表示画像データD3を調整するための調整データD5を生成し、これを駆動データ生成部8Bへ供給する。
【0030】
続いて表示デバイス駆動部8は、駆動データ生成部8Bにおいて、表示画像データD3と調整データD5とを基に、当該表示画像データD3を構成する画素単位で駆動データ生成処理(詳しくは後述する)を行うことにより、表示デバイス2の各表示画素を駆動するための駆動データD6を生成する。
【0031】
このとき表示デバイス2は、駆動データ生成処理を行うことにより、表示画像データD3に対して、当該表示画像データD3の次の表示期間に表示すべき表示画像データに応じた調整処理を施して駆動データD6を生成することになる。
【0032】
さらに表示デバイス駆動部8は、この駆動データD6を表示デバイス2へ供給することにより、当該駆動データD6に応じた画像、すなわち次の表示期間における画像に応じて調整された画像を当該表示デバイス2に表示させる。
【0033】
このようにテレビジョン装置1は、表示画像データD3に対して、当該表示画像データD3とその次に表示すべき表示画像データとの差分値に相当する相関データD4を用いた駆動データ生成処理を行うことにより、次の表示期間における画像に応じて調整された駆動データD6を生成し、その画像を表示デバイス2に表示するようになされている。
【0034】
(2)駆動データの生成
ところでテレビジョン装置1の表示デバイス2は、上述したように有機ELパネルでなるため、その特性上、応答速度が比較的高速であるものの、高レベルの駆動データが供給されると当該表示デバイス2を構成する表示素子にダメージを与えることになってしまい、その寿命(すなわち正常に動作する期間の長さ)を縮めてしまう危険性がある。
【0035】
そこでテレビジョン装置1では、表示デバイス駆動部8において、1回の表示期間内に、比較的低レベルの3回のパルスでなる駆動データD6を生成して表示デバイス2へ供給することにより、当該表示デバイス2の各表示素子を保護するようになされている。
【0036】
このとき表示デバイス駆動部8は、画質改善処理部7から供給される表示画像データD3における信号レベルを単純に3等分するのではなく、相関データ保持部9から供給される相関データD4を基に、次の表示期間における表示画像データに応じた3回のパルスでなる駆動データD6を生成するようになされている。
【0037】
さらに表示デバイス駆動部8は、表示画像データD3のうち任意の座標Q(x,y)における信号レベルSに対して、相関データD4のうち当該座標Q(x,y)に対応する差分値を用いるようになされている。
【0038】
具体的に表示デバイス駆動部8の調整データ生成部8Aは、表示期間nにおける座標Q(x,y)に関して、まず表示画像データD3に含まれる信号レベルS(n)及び相関データD4に含まれる差分値E(n)を基に、次に示す(1)式に従って表示期間n+1の信号レベルS(n+1)を算出する。
【0039】
【数1】

【0040】
続いて調整データ生成部8Aは、座標Q(x,y)に関して、次に示す(2)式及び(3)式に従って中間値MA及びMBを算出する。
【0041】
【数2】

【0042】
【数3】

【0043】
実際上、調整データ生成部8Aは、表示画像データD3を構成する全座標について中間値MA及びMBを算出し、これらを調整データD5として駆動データ生成部8Bへ供給する。
【0044】
これに応じて表示デバイス駆動部8の駆動データ生成部8Bは、信号レベルS(n)、中間値MA及びMBを用いて、次に示す(4)式、(5)式及び(6)式に従って表示期間nにおけるパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)を算出する。
【0045】
【数4】

【0046】
【数5】

【0047】
【数6】

【0048】
ここで(4)〜(6)式は、有機ELパネルでなる表示デバイス2の応答特性及び人間の視覚特性が考慮されており、当該表示デバイス2を鑑賞するユーザが残像を知覚しないよう、表示期間n+1における信号レベルS(n+1)に応じて、表示期間nにおける3つのパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)のレベル配分を調整し得るようになされている。
【0049】
これにより駆動データ生成部8Bは、表示デバイス2においてユーザが残像を知覚しないような、1個の表示画素についてパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)でなる3回のパルスを有する駆動データD6を生成することができる。
【0050】
因みに駆動データ生成部8Bは、表示画像データD3を構成する全座標について、上述した(4)〜(6)式に従って3つのパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)を算出するようになされている。
【0051】
さらに駆動データ生成部8Bは、表示デバイス2の表示特性等に応じて予め設定されたガンマ補正値等に従い、駆動データD6に対してガンマ補正等の調整を行うようになされている。
【0052】
このように表示デバイス駆動部8は、任意の座標Q(x,y)に関して、表示画像データD3に含まれる信号レベルS(n)と、相関データD4に含まれる差分値E(n)とを基に、駆動データD6を構成する3回のパルス信号におけるパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)をそれぞれ算出するようになされている。
【0053】
これにより表示デバイス駆動部8は、例えば図2(A)に示すような表示画像データD3に対して、図2(B)に示すような駆動データD6を生成し、これを表示デバイス2に供給することができる。
【0054】
因みに実際の表示画像データD3及び駆動データD6においては、それぞれ1枚の静止画像を構成する全表示画素用のパルスが連続しているため、同一座標に相当するパルス同士が隣接しないものの、説明の都合上、図2(A)及び(B)においては、座標Q(x,y)に位置する1画素に着目した場合の表示画像データD3及び駆動データD6を表示間隔毎に並べて示している。
【0055】
この結果、テレビジョン装置1は、図2(C)に実線で示すように、表示デバイス2に表示される動画像を鑑賞するユーザに対して、あたかも各表示画素が表示期間ごとに表示画像データD3の信号レベルに高精度に対応した出力レベルで表示しているかのように認識させることができ、表示画像データD3を単純に表示デバイス2に供給した場合(図中破線で示す)と比較して、格段に高品質な動画像を提供することができる。
【0056】
これを換言すれば、テレビジョン装置1は、表示期間nにおける表示画像データD3の駆動レベルを表示期間n+1における表示画像データとの相関値を基に調整することにより、ユーザに与える残像感を大幅に低減して高品質な動画像を当該ユーザに提供することができる。
【0057】
(3)駆動データ生成処理手順
次に、テレビジョン装置1の表示デバイス駆動部8が駆動データD6を生成する際の駆動データ生成処理手順RT1について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
すなわち表示デバイス駆動部8は、画質改善処理部7(図1)から表示期間nにおける表示画像データD3を構成する各座標Q(x,y)の信号レベルS(n)が供給される度に駆動データ生成処理手順RT1を開始し、ステップSP1へ移る。ステップSP1において表示デバイス駆動部8は、調整データ生成部8Aにより、相関データ保持部9から供給される相関データD4のうち座標Q(x,y)における差分値E(n)を取り出し、次のステップSP2へ移る。
【0059】
ステップSP2において表示デバイス駆動部8は、調整データ生成部8Aにより、信号レベルS(n)と差分値E(n)とを基に(1)式に従って信号レベルS(n+1)を算出し、次のステップSP3へ移る。
【0060】
ステップSP3において表示デバイス駆動部8は、調整データ生成部8Aにより、(2)式及び(3)式に従って中間値MA及びMBをそれぞれ算出し、次のステップSP4へ移る。
【0061】
ステップSP4において表示デバイス駆動部8は、駆動データ生成部8Bにより、(4)〜(6)式に従ってパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)をそれぞれ算出し、次のステップSP5へ移って駆動データ生成処理手順RT1を終了する。
【0062】
その後表示デバイス駆動部8は、全座標分のパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)を算出し、各パルスレベルに応じた多数のパルスでなる駆動データD6を生成し、これを表示デバイス2へ供給することにより、当該表示デバイス2に画像を表示させるようになされている。
【0063】
(4)動作及び効果
以上の構成において、テレビジョン装置1は、表示デバイス駆動部8により、表示画像データD3のうち任意の座標Q(x,y)における信号レベルS(n)と、相関データD4のうち当該座標Q(x,y)対応する差分値E(n)とを基に、有機ELパネルでなる表示デバイス2の応答特性及び人間の視覚特性が考慮された(4)〜(6)式に従って3回のパルス信号におけるそれぞれのパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)を算出し、これらを駆動データD6として表示デバイス2に供給する。
【0064】
従ってテレビジョン装置1は、表示デバイス2の各表示画素に対応する本来1回のパルスでなる表示画像データD3の信号レベルS(n)をパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)でなる3回のパルスに分配することにより、表示期間nにおける各表示画素の駆動レベルの変化を有機ELパネルでなる表示デバイス2の応答特性及び人間の視覚特性に合わせて調整することができるので、当該表示デバイス2に表示される動画像を鑑賞するユーザに残像を認識させる可能性を極めて低減することができ、当該ユーザに対して高画質な動画像を提供することができる。
【0065】
このときテレビジョン装置1は、任意の座標Q(x,y)に関する表示期間nの再生画像データD2とその次の表示期間n+1の再生画像データとの差分値である相関データD4(すなわち差分値E(n))を用いるため、次の表示期間n+1における信号レベルが考慮された、残像現象を効果的に防止し得るような駆動データD6(すなわちパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n))を算出することができる。
【0066】
またテレビジョン装置1は、任意の座標Q(x,y)における信号レベルS(n)及び差分値E(n)のみを基に、当該座標Q(x,y)のパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)を算出することができるので、他の座標の信号レベル等を用いる場合と比較して、当該パルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)の算出処理を簡略化することができ、表示デバイス駆動部8等の構成を簡素化することができる。
【0067】
特にテレビジョン装置1は、再生画像データD2を構成する各画素に関して、当該再生画像データD2の次に生成すべき次画像データにおける同一座標の画素の画素値との差分値でなる相関データD4を生成する際、符号化データD1がMPEG−2方式により予測符号化されているため、複雑な演算処理を必要とすることなく当該符号化データD1から当該相関データD4を容易に生成することができる。
【0068】
以上の構成によれば、テレビジョン装置1は、表示画像データD3のうち任意の座標Q(x,y)における信号レベルS(n)と、相関データD4のうち当該座標Q(x,y)対応する差分値E(n)とを基に、(4)〜(6)式に従って3回のパルス信号におけるそれぞれのパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)を算出し、これらを駆動データD6として表示デバイス2に供給することにより、表示期間nにおける各表示画素の駆動レベルの変化を有機ELパネルでなる表示デバイス2の応答特性及び人間の視覚特性に合わせて調整することができるので、表示デバイス2に表示された動画像を鑑賞するユーザに残像を認識させる可能性を極めて低減し当該ユーザに対して高画質な動画像を提供することができる。
【0069】
(5)他の実施の形態
なお上述した実施の形態においては、任意の座標Q(x,y)に関して、表示期間nにおける信号値S(n)と、当該表示期間nにおける信号値S(n)と次の表示期間n+1における信号値S(n+1)との差分値E(n)を用いてパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)を算出する、すなわちある表示期間の静止画像における各表示画素の駆動レベルをその次の表示期間における静止画像を用いて調整するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばある表示期間の静止画像における各表示画素の駆動レベルを、その次の表示期間における静止画像とその前の表示期間における静止画像の両方を用いて調整するようにしても良い。
【0070】
例えば表示デバイス駆動部8(図1)は、表示期間n+1における信号値S(n+1)とその次の表示期間n+2における信号値S(n+2)との差分値が差分値E(n+1)となることを踏まえ、調整データ生成部8AによりE(n)/3及びE(n+1)/3を算出し、これらを調整データD5として駆動データ生成部8Bへ供給する。
【0071】
続いて表示デバイス駆動部8は、駆動データ生成部8Bにより、表示期間n+1におけるパルスレベルP1(n+1)、P2(n+1)及びP3(n+1)を次に示す(7)式、(8)式及び(9)式に従って算出すれば良い。
【0072】
【数7】

【0073】
【数8】

【0074】
【数9】

【0075】
因みに(7)〜(9)式は、(4)〜(6)式と同様、有機ELパネルでなる表示デバイス2の応答特性及び人間の視覚特性が考慮されたものとなっている。
【0076】
これにより表示デバイス駆動部8は、例えば図2(A)と対応する図4(A)に示すような表示画像データD3に対して、図2(B)と対応する図4(B)に示すような駆動データD6を生成し、これを表示デバイス2に供給することができる。
【0077】
この結果、テレビジョン装置1は、図2(C)と対応する図4(C)に実線で示すように、表示デバイス2に表示される動画像を鑑賞するユーザに対して、あたかも各表示画素が表示期間ごとに表示画像データD3の信号レベルに対して一段と高精度に対応した出力レベルで表示しているかのように認識させることができる。
【0078】
因みに、この場合及び上述した実施の形態の場合のいずれにおいても、駆動データD6におけるパルスの回数は3回に限らず、2回や4回以上であっても良い。
【0079】
また上述した実施の形態においては、(4)〜(6)式により有機ELパネルでなる表示デバイス2の応答特性及び人間の視覚特性が考慮されたパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)を算出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、有機ELパネルでなる表示デバイス2の応答特性及び人間の視覚特性が考慮された他の種々の数式に従いパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)を算出するようにしても良い。
【0080】
さらに上述した実施の形態においては、1回の表示期間内に比較的低レベルの3回のパルスでなる駆動データD6を表示デバイス2へ供給する際の、各パルスレベルを調整するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば1回の表示期間内に1回のパルスでなる駆動データD6を表示デバイス2へ供給する際の、当該表示期間内におけるパルスのタイミング(すなわち位相)を調整するようにしても良い。
【0081】
例えば表示デバイス駆動部8は、図2(A)と対応する図5(A)に示すような表示画像データD3に対して、信号レベルS(n)及び差分値E(n+1)を基に、有機ELパネルでなる表示デバイス2の応答特性及び人間の視覚特性が考慮されたパルスタイミングT(n)を算出し、図2(B)と対応する図5(B)に示すように、表示期間nにおいて当該パルスタイミングT(n)に基づいた信号レベルS(n)でなる1回のパルスを駆動データD6として表示デバイス2へ供給すれば良い。
【0082】
これにより表示デバイス駆動部8は、図2(C)と対応する図5(C)に実線で示すように、上述した実施の形態と同様、表示デバイス2に表示される動画像を鑑賞するユーザに対して、あたかも各表示画素が表示期間ごとに表示画像データD3の信号レベルに対して高精度に対応した出力レベルで表示しているかのように認識させることができる。
【0083】
またこの場合、パルスの幅(すなわち時間長)を調整するようにしても良く、さらにはこれらを適宜組み合わせることにより、例えば駆動データD6を比較的低レベルの3回のパルスで構成し、各パルスレベルを調整すると共に、それぞれのパルスタイミングを調整するようにしても良い。
【0084】
さらに上述した実施の形態においては、MPEG−2方式で符号化されたテレビジョン放送番組を受信してその映像(動画像)を表示するテレビジョン装置に本発明を適用するようにした場合について述べたが、これに限らず、例えばMPEG−4方式やH.264方式等の種々の符号化方式により予測符号化された符号化データD1を外部機器からIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394方式の通信ケーブル経由等で取得し相関データD4を生成した上で駆動データD6を生成し、或いはDVD(Digital Versatile Disc)プレーヤ等の外部機器から復号化後の再生画像データD2を取得し、これを基に相関データD4を生成した上で駆動データD6を生成するようにしても良い。
【0085】
このように外部機器から再生画像データD2を取得する場合、表示期間n及び表示期間n+1における復号化後の各静止画像から差分値E(n)でなる相関データD4を生成すれば良い。
【0086】
例えば図1との対応部分に同一符号を付した図6に示すように、テレビジョン装置1と対応するテレビジョン装置20は、図示しない外部機器から供給された再生画像データD2を再生画像保持部6において保持し、表示期間n及び表示期間n+1の再生画像データD2を相関データ生成部21へ供給する。相関データ生成部21は、当該表示期間n及び表示期間n+1の再生画像データD2を基に、各座標における信号レベルS(n)と信号レベルS(n+1)との差分値である差分値E(n)を順次算出し、これを相関データD4として相関データ保持部9に供給する。
【0087】
これによりテレビジョン装置20は、テレビジョン装置1と同様、表示デバイス駆動部8において表示画像データD3のうち任意の座標Q(x,y)における信号レベルS(n)と、相関データD4のうち当該座標Q(x,y)における差分値E(n)とを基に、駆動データD6のうち当該座標Q(x,y)における3回のパルス信号のパルスレベルP1(n)、P2(n)及びP3(n)をそれぞれ算出することができる。
【0088】
さらに上述した実施の形態においては、任意の座標Q(x,y)における表示期間nの再生画像データD2の信号レベルS(n)と、表示期間n+1の再生画像データの信号レベルS(n+1)との差分値を相関データD4とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば信号レベルS(n)に対する信号レベルS(n+1)との比率を相関データD4とする等、信号レベルS(n)と信号レベルS(n+1)との相関を表す種々の値を相関データD4とするようにしても良い。
【0089】
さらに上述した実施の形態においては、表示画像データD3が表示期間毎(例えば1/60秒毎)に表示される静止画像でなるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該表示画像データD3が1/30秒毎や1/24秒毎等の他の種々の表示期間毎に表示される静止画像でなるようにしても良い。また各静止画像は、1フレームや1フィールド等の動画像における種々の画像表示単位であっても良い。
【0090】
さらに上述した実施の形態においては、有機ELパネルでなる表示デバイス2に動画像を表示するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばCRT等、1回の表示期間内に2回以上のパルスによる表示を行い得るか、或いは1回の表示期間内におけるパルスタイミングを調整し得るような、応答速度が高速な種々の表示デバイスに動画像を表示するようにしても良い。
【0091】
さらに上述した実施の形態においては、表示デバイス2を構成する表示画素(横1920画素ル×縦1080画素)と再生画像データD2(横1920画素×縦1080画素)を構成する各画素とが1対1で対応するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば表示デバイス2を構成する表示画素が横1280画素×縦画素ピクセル等のように静止画像と異なる画素数である場合に、画質改善処理部7等において画素変換処理を行うことにより表示画像データD3を生成するようにしても良い。この場合、駆動データ生成部8Bにおいて同様の画素変換処理を行うようにすれば良い。
【0092】
さらに上述した実施の形態においては、テレビジョン放送番組を受信してその映像(動画像)を表示するテレビジョン装置に本発明を適用するようにした場合について述べたが、これに限らず、例えば表示デバイスと別体に構成され、所定の映像再生装置等から取得した再生画像データD2を基に相関データD4を生成した上で駆動データD6を生成し、これを外部の表示デバイスへ送出する信号処理装置に本発明を適用するようにしても良い。
【0093】
さらに上述した実施の形態においては、ハードウェア構成でなるテレビジョン装置1に本発明を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば表示デバイス駆動部8をDSP(Digital Signal Processor)により構成し、当該DSPにおいて信号処理プログラム等を実行することにより、表示画像データD3及び相関データD4を基に駆動データD6を生成するようにしても良い。
【0094】
また、信号処理プログラム等の格納媒体としては、DSPと共に設けるROM等に予め記憶させておく他、メモリースティック(ソニー株式会社の登録商標)等の外部記憶媒体からフラッシュメモリ等にインストールするようにしても良い。また、信号処理プログラム等をUSB(Universal Serial Bus)やEthernet(登録商標)等の有線方式の通信ケーブル、或いはIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g等の無線LAN(Local Area Network)を介して外部から取得するようにし、さらには地上ディジタルテレビジョン放送やBSディジタルテレビジョン放送により配信されるようにしても良い。
【0095】
さらに上述した実施の形態においては、取得部としての相関データ保持部9と、制御部としての表示デバイス駆動部8とによって信号処理装置又は表示装置としてのテレビジョン装置1を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の回路構成でなる取得部と、制御部とによって信号処理装置又は表示装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、動画像を種々の表示デバイスに表示するための駆動データを生成する種々の信号処理装置や表示装置等でも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】テレビジョン装置の構成を示すブロック図である。
【図2】表示画像データ及び駆動データを示す略線図である。
【図3】駆動データ生成処理手順を示すフローチャートである。
【図4】他の実施の形態による表示画像データ及び駆動データ(1)を示す略線図である。
【図5】他の実施の形態による表示画像データ及び駆動データ(2)を示す略線図である。
【図6】他の実施の形態によるテレビジョン装置の構成を示すブロック図である。
【図7】従来の駆動データ及びユーザに認識される出力レベルを示す略線図である。
【符号の説明】
【0098】
1、20……テレビジョン装置、2……表示デバイス、5……受信でコード処理部、8……表示デバイス駆動部、8A……調整データ生成部、8B……駆動データ生成部、9……相関データ保持部、21……相関データ生成部、D1……符号化データ、D2……再生画像データ、D3……表示画像データ、D4……相関データ、D5……調整データ、D6……駆動データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像を構成する所定表示期間毎の静止画像を当該表示期間毎に所定の表示デバイスに表示させるための駆動データを生成する信号処理装置であって、
上記静止画像の所定座標における画素値と当該静止画像の次の表示期間に表示すべき静止画像の上記所定座標における画素値との相関情報を取得する取得部と、
上記静止画像の上記所定座標における画素値と上記相関情報とに応じて上記表示期間内における当該静止画像の当該所定座標に対応する表示画素の駆動レベルの変化を調整する制御部と
を具えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
上記駆動データは、
上記表示画素毎にそれぞれ複数のパルスが対応付けられ、
上記制御部は、
上記複数のパルスにおける出力レベルを個別に調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
上記駆動データは、
上記表示画素毎にそれぞれ1回のパルスが対応付けられ、
上記制御部は、
上記表示画素毎に上記表示期間内における上記1回のパルスを出力すべきタイミングをそれぞれ調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項4】
上記相関情報は、
上記静止画像の所定座標における画素値と当該静止画像の次の表示期間に表示すべき静止画像の上記所定座標における画素値との差分値でなる
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項5】
上記相関情報は、
上記静止画像の所定座標における画素値と当該静止画像の次の表示期間に表示すべき静止画像の上記所定座標における画素値との比率でなる
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項6】
上記動画像は、
当該動画像を構成する上記静止画像が少なくとも次の表示期間における上記静止画像を用いて予測符号化され上記相関情報が含まれる動画像データが順次復号化されてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項7】
上記取得部は、
上記動画像が上記予測符号化された際に生成された上記動画像データから上記相関情報を抽出する
ことを特徴とする請求項6に記載の信号処理装置。
【請求項8】
動画像を構成する所定表示期間毎の静止画像を当該表示期間毎に所定の表示デバイスに表示させるための駆動データを生成する信号処理方法であって、
上記静止画像の所定座標における画素値と当該静止画像の次の表示期間に表示すべき静止画像の上記所定座標における画素値との相関情報を取得する取得ステップと、
上記静止画像の上記所定座標における画素値と上記相関情報とに応じて上記表示期間内における当該静止画像の当該所定座標に対応する表示画素の駆動レベルの変化を調整する制御ステップと
を具えることを特徴とする信号処理方法。
【請求項9】
信号処理装置に対して、動画像を構成する所定表示期間毎の静止画像を当該表示期間毎に所定の表示デバイスに表示させるための駆動データを生成させる信号処理プログラムであって、
上記静止画像の所定座標における画素値と当該静止画像の次の表示期間に表示すべき静止画像の上記所定座標における画素値との相関情報を取得する取得ステップと、
上記静止画像の上記所定座標における画素値と上記相関情報とに応じて上記表示期間内における当該静止画像の当該所定座標に対応する表示画素の駆動レベルの変化を調整する制御ステップと
を実行させることを特徴とする信号処理プログラム。
【請求項10】
動画像を構成する所定表示期間毎の静止画像を当該表示期間毎に所定の表示デバイスに表示する表示装置であって、
上記静止画像の所定座標における画素値と当該静止画像の次の表示期間に表示すべき静止画像の上記所定座標における画素値との相関情報を取得する取得部と、
上記静止画像の上記所定座標における画素値と上記相関情報とに応じて上記表示期間内における当該静止画像の当該所定座標に対応する表示画素の駆動レベルの変化を調整する制御部と
を具えることを特徴とする表示装置。
【請求項11】
上記表示デバイスは、
有機EL(electroluminescence)パネルでなる
ことを特徴とする請求項10に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−199193(P2007−199193A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15424(P2006−15424)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】