説明

信号処理装置、信号処理方法およびプログラム

【課題】受け付けた信号の処理負荷に応じて最適な電力制御を行い、消費電力を抑える信号処理装置を提供する。
【解決手段】信号処理装置100は、信号を受け付ける受付部10と、受け付けられた信号を処理する集積回路31、41と、信号を受け付けたとき、当該信号を処理する集積回路に掛かると予想される負荷を示す負荷情報を取得する負荷情報取得部21と、取得された負荷情報に応じて、集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御する供給制御部22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、信号処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユビキタスネットワークを実現するため、様々な機器に無線通信機能が搭載されている。この種の機器は、多くの場合、乾電池や蓄電池等を動力源としており、長時間の使用を可能とするために消費電力を抑えることが要求される。従って、様々な消費電力を抑制する技術が開発されてきた。
【0003】
この種の技術として、特許文献1(特開2008−042491号公報)には、次のようなシステムが開示されている。このシステムは、送受信動作に直接必要ではない機能部に提供する電圧やクロック信号を停止することによって、消費電力を抑制することができる。
【0004】
また、この種の技術として、特許文献2(特開2009−064456号公報)には、次のようなシステムが開示されている。このシステムは、システム内のプロセッサが要求する最小限のクロック周波数要求を取得し、取得されたクロック周波数要求を支援する電圧要求を取得する。さらに、このシステムは、取得されたクロック周波数要求と電圧要求によって定義される電力状態に、当該プロセッサを遷移させる。上記処理によって、このシステム全体の消費電力を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−042491号公報
【特許文献2】特開2009−064456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記技術は、以下の点で改善の余地を有していた。特許文献1のシステムは、送受信動作に直接関与する機能部の各々に対して、一律に電圧やクロック信号を供給している。しかし、送受信動作の処理負荷によって、機能部への最適な供給電圧やクロック周波数は変化するものであり、このシステムは十分に消費電力を抑制しているとはいえない。
【0007】
また、特許文献2のシステムは、プロセッサからの要求に応じて当該プロセッサの電力状態を制御するため、プロセッサ自体を停止させると、上記のような動作が成立しない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、受け付けた信号の処理負荷に応じて最適な電力制御を行い、消費電力を抑える信号処理装置、信号処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、信号を受け付ける受付手段と、前記受付手段によって受け付けられた前記信号を処理する集積回路と、前記受付手段が前記信号を受け付けたとき、当該信号を処理する前記集積回路に掛かると予想される負荷を示す負荷情報を取得する負荷情報取得手段と、前記負荷情報取得手段によって取得された前記負荷情報に応じて、前記集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御する供給制御手段と、を備えることを特徴とする信号処理装置が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、信号を受け付ける受付ステップと、前記受付ステップで前記信号を受け付けたとき、当該信号を処理する集積回路に掛かると予想される負荷を示す負荷情報を取得する負荷情報取得ステップと、前記負荷情報取得ステップで取得された前記負荷情報に応じて、前記集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御する供給制御ステップと、を備えることを特徴とする信号処理方法が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、コンピュータが読み込み可能な記憶媒体に記憶させるプログラムであって、信号を受け付ける受付処理と、前記受付処理で前記信号を受け付けたとき、当該信号を処理する集積回路に掛かると予想される負荷を示す負荷情報を取得する負荷情報取得処理と、前記負荷情報取得処理で取得された前記負荷情報に応じて、前記集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御する供給制御処理と、を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受け付けた信号の処理負荷に応じて最適な電力制御を行い、消費電力を抑える信号処理装置、信号処理方法およびプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る信号処理装置の構成図である。
【図2】新規呼を受け付けた際の信号処理装置の動作フローを示すフローチャートである。
【図3】呼解放の際の信号処理装置の動作フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る信号処理装置100の構成図である。なお、本実施形態において、信号処理装置100は呼処理を行う装置として説明する。
【0016】
信号処理装置100は、中継装置(図示せず)から呼処理に関する信号を受け付ける受付部10と、呼処理、リソース管理及び省電力管理を行っている制御ブロック20と、制御ブロック20からの指示に従いベースバンド処理、または具体的な省電力動作を行う複数のサブ処理ブロック30、40等から構成される。
【0017】
サブ処理ブロック30は、集積回路31、電源電圧供給部32、クロック信号発振器33、D/A変換部34等の構成要素から構成される。集積回路31は、受付部10によって受け付けられた呼処理に関する信号に対してCoding/Decoding等のメインのベースバンド処理を実行する。電源電圧供給部32は、集積回路31から出力される電源電圧制御信号に従って、集積回路31に可変に電圧を供給する。D/A変換部34は、集積回路31から出力される周波数制御信号をアナログ信号に変換し、クロック信号発振器33に出力する。クロック信号発振器33は、D/A変換部34からのアナログ信号に従って、集積回路31に可変にクロック信号を出力する。
【0018】
サブ処理ブロック40は、集積回路41、電源電圧供給部42、クロック信号発振器43、D/A変換部44等の構成要素から構成される。集積回路41、電源電圧供給部42、クロック信号発振器43、D/A変換部44は夫々、上述の集積回路31、電源電圧供給部32、クロック信号発振器33、D/A変換部34と同等の機能を有する。
【0019】
なお、図1には図示しないが、サブ処理ブロック30またはサブ処理ブロック40と同等の機能を有するサブ処理ブロックが更に存在してもよい。
【0020】
また、夫々の集積回路において、集積回路に与える電源電圧が高いほど、集積回路の動作可能周波数は高くなり、消費電力も高くなるものとする。ただし、動作可能周波数は、その集積回路の絶対最大定格を最大とする。また、夫々の集積回路において、集積回路の温度が高いほど消費電力も高くなるものとする。なお、ここで説明した集積回路の特性は、必ずしも全ての集積回路に適用されるものではなく、例外もあり得る。
【0021】
さらに、夫々の集積回路は、電源とクロック信号とが供給される「処理実行モード(第1モード)」、電源は供給され、クロック信号の供給は停止される「スタンバイモード(第2モード)」、または電源の供給とクロック信号の供給とが停止される「休止モード(第3モード)」のいずれかを供給制御部22からの指令に応じて採ることが可能であってもよい。
【0022】
「休止モード」は装置全体としてリソースに余裕が有る際に、当面使用する予定の無いリソースの消費電力を削減する為に電源を完全に落とすモードである。より詳細には、制御ブロック20(供給制御部22)から電源電圧供給部への制御信号によって当該電源電圧供給部からの電源供給が落とされ、同時に制御ブロック20(供給制御部22)からクロック信号発振器への制御信号によってクロック信号発振器からのクロック信号の供給も落とされることによって、集積回路は「休止モード」となる。なお、上記三つのモードのうち、「休止モード」は最も消費電力の低い状態となる。
【0023】
「処理実行モード」は電源が入りまさに処理を実行しているモードである。「処理実行モード」の集積回路は、制御ブロック20(供給制御部22)から電源電圧供給部への制御信号によって当該電源電圧供給部からの電源供給がON状態となり、同時に制御ブロック20(供給制御部22)からクロック信号発振器への制御信号によってクロック信号発振器からのクロック信号の供給もON状態となり、集積回路は動作状態となる。この時、集積回路の動作すべき速度は処理負荷次第であるが、冒頭で述べた様に、動作最高周波数は電源電圧に依存する為、必要な負荷情報に応じクロック信号の周波数を下げ、これに合わせて電源電圧も絞り込む事が可能である。
【0024】
「スタンバイモード」は現在リソースが使われていないが、次に受付部10が信号を受け付けた際に当該信号の処理がアサインされるべく、準備が整った状態である。「スタンバイモード」から「処理実行モード」に遷移する方が、「休止モード」から「処理実行モード」に遷移するより早くなる。その理由は、電源を落とした状態から呼処理が出来る状態に移行する為には、通常起動と呼ばれる処理が必要であり、この処理には一定の時間が掛かる為である。「スタンバイモード」時は制御ブロック20(供給制御部22)から電源電圧供給部への制御信号によって当該電源電圧供給部からの電源供給はON状態となり、同時に制御ブロック20(供給制御部22)からクロック信号発振器への制御信号によってクロック信号発振器からのクロック信号の供給もON状態となり、起動が行われる。起動完了後、制御ブロック20(供給制御部22)からクロック信号発振器への制御信号によってクロック信号発振器からのクロック信号の供給を落とす。クロック信号発振器の電源を落とせるか否かは集積回路の作り次第であり、起動完了後にクロック信号が無くても起動状態を保つ事が可能であれば、クロック信号発振器から供給されるクロック信号を落とすことができる。この時、集積回路に与える電源電圧は、起動状態を保つ為の最低電圧で良いので、「処理実行モード」と比べて集積回路の消費電力は大幅に抑えられた状態となる。
【0025】
制御ブロック20は、負荷情報取得部21、供給制御部22、電力指標取得部23、信号処理制御部24等の構成要素から構成される。負荷情報取得部21は、受付部10が信号を受け付けたとき、当該信号を処理する集積回路に掛かると予想される負荷を示す負荷情報を取得する。供給制御部22は、負荷情報取得部21によって取得された負荷情報に応じて、集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御する。
【0026】
さらに、電力指標取得部23は、夫々の集積回路の消費電力の指標となる電力指標を間欠的に取得する。信号処理制御部24は、電力指標取得部23によって取得された電力指標に応じて集積回路のいずれかを選択し、選択された集積回路に信号を処理させる。供給制御部22は、負荷情報取得部21によって取得された負荷情報に応じて、信号処理制御部24によって選択された集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御する。なお、ここで、電力指標を間欠的に取得するとは、各々の集積回路に関する電力指標を複数回にわたって取得することであり、その時間間隔は一定であってもよいし、不定であってもよい。電力指標取得部23は、各々のサブ処理ブロックから電力指標を取得してもよく、制御ブロック20内の他の構成要素、例えば供給制御部22から電力指標を取得してもよい。電力指標取得部23が、各々のサブ処理ブロックから電力指標を取得する場合、複数の電力指標を取得するタイミングが同期することがあってもよい。
【0027】
なお、負荷情報取得部21の処理については多様な方式が考えられる。例えば、信号に負荷情報自体が含まれているのであれば、負荷情報取得部21は信号から負荷情報を抽出してもよい。また、負荷情報取得部21は、信号に含まれるデータ量を計測し、計測されたデータ量に基づいて負荷情報を算出してもよい。あるいは、負荷情報取得部21は、信号に含まれる当該信号の識別情報を抽出し、抽出された識別情報に対応する負荷情報を有するデータベース(図示せず)を参照し、負荷情報を取得してもよい。
【0028】
また、供給制御部22の処理についても多様な方式が考えられる。例えば、制御ブロック20は、集積回路に供給される電源の電圧値と負荷情報との関係性、または集積回路に供給されるクロック信号の周波数と負荷情報との関係性とを記憶しているデータベース(図示せず)を備えていてもよい。このとき、供給制御部22は、負荷情報取得部21によって取得された負荷情報に関係付けられた電源の電圧値またはクロック信号の周波数をデータベースから参照し、参照された電源の電圧値またはクロック信号の周波数に従って、集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御してもよい。ここで説明したデータベースに記憶されている関係性は、予め実際に測定して集積回路ごとに定められてもよい。
【0029】
また、電力指標取得部23が取得する電力指標についても多様な形態が考えられ、電力指標の形態に応じて信号処理制御部24の処理についても多様な方式が考えられる。例えば、電力指標取得部23は、集積回路の夫々が「処理実行モード」、「スタンバイモード」または「休止モード」のいずれを採っているかを示す情報を、電力指標として取得してもよい。このとき、信号処理制御部24は、電力指標取得部23によって取得された最新の電力指標において「スタンバイモード」の集積回路を選択し、選択された集積回路に信号を処理させてもよい。さらに、供給制御部22は、信号処理制御部24によって選択された集積回路を「スタンバイモード」から「処理実行モード」に遷移させる必要がある。
【0030】
また、電力指標は、夫々の集積回路に供給された電源の電圧値またはクロック信号の周波数であってもよい。このとき、信号処理制御部24は、電力指標取得部23によって取得された最新の電力指標において最小の電源の電圧値(またはクロック信号の周波数)を供給されている集積回路、すなわち最小の消費電力の集積回路から順に選択し、選択された集積回路に信号を処理させてもよい。あるいは、信号処理制御部24は、電力指標取得部23によって取得された電力指標の履歴において一定期間電源の電圧値(またはクロック信号の周波数)が下がり続けている集積回路、すなわち信号処理が終了間近である集積回路を選択し、選択された集積回路に信号を処理させてもよい。
【0031】
また、電力指標は、夫々の集積回路の温度であってもよい。この場合、夫々のサブ処理ブロックには集積回路の温度を計測する温度計が設けられてもよい。そして、信号処理制御部24は、電力指標取得部23によって取得された最新の電力指標において最小温度の集積回路、すなわち最小の消費電力の集積回路から順に選択し、選択された集積回路に信号を処理させてもよい。あるいは、信号処理制御部24は、電力指標取得部23によって取得された電力指標の履歴において一定期間温度が下がり続けている集積回路、すなわち信号処理が終了間近である集積回路を選択し、選択された集積回路に信号を処理させてもよい。
【0032】
なお、電力指標取得部23または信号処理制御部24の形態は、ここに列挙したいずれか一つであってもよく、複数の組合せであってもよい。その組合せは、サブ処理ブロック、特に集積回路の特性に応じて適宜変更されてもよい。
【0033】
上述の信号処理装置100の構成要素の全部または一部は、ハードウェアで実現されてもよいし、あるいは、プロセッサに処理を実行させるプログラム(またはプログラムコード)で実現されてもよい。プロセッサは、不揮発性メモリなどの記録媒体からそのプログラムを読み出し実行する。
【0034】
信号処理装置100の構成がプログラムによって実施される場合、当該プログラムはプロセッサ(コンピュータ)読み出し可能な記憶媒体に格納される。そして、当該プログラムは、以下の処理をプロセッサに実行させる。
(A)信号を受け付ける処理
(B)信号を受け付けたとき、当該信号を処理する集積回路に掛かると予想される負荷を示す負荷情報を取得する処理
(C)取得された負荷情報に応じて、集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御する処理
【0035】
ここで、信号処理装置100は、信号処理を実行させる集積回路だけを「処理実行モード」とし、「スタンバイモード」の集積回路の数を所定数Qに維持し、その他の集積回路を「休止モード」とすることが望ましい。このとき、信号処理装置は次のように動作してもよい。供給制御部22は、「スタンバイモード」の集積回路の数が所定数Q以上であるとき、かつ電力指標取得部23によって「処理実行モード」の集積回路から取得された電力指標(集積回路に供給される電源の電圧値、クロック信号の周波数、または集積回路の温度)が所定の閾値以下であるとき、当該集積回路を「休止モード」へと遷移させてもよい。また、供給制御部22は、「スタンバイモード」の集積回路の数が所定数Q未満であるとき、かつ電力指標取得部23によって取得された電力指標が上記閾値以下であるとき、集積回路を「スタンバイモード」へと遷移させてもよい。なお、上記所定の閾値は、電力指標の種別ごとに異なる閾値が定められていてもよい。
【0036】
上述のように動作する信号処理装置100において、単一の新規呼に関する信号処理の割り当てに必要な最大数よりも十分に大きい値を、所定数Qに設定することが望ましい。このように所定数Qを設定することによって、信号処理装置100は新規呼の処理を遅延なく実行することができる。なお、ここで新規呼の処理を遅延無く実行するとは、新規呼をいずれかの集積回路に割り当てた直後に、更に次の新規呼を受け付けても他の集積回路に割り当て可能であることを意味している。
【0037】
図2は、新規呼を受け付けた際の信号処理装置100の動作フローを示すフローチャートである。ただし、新規呼が受け付けられる事前の定常状態に於いて、信号処理装置100は、所定数Qの「スタンバイモード」の集積回路を起動した状態を維持していることを前提とする。
【0038】
信号処理装置100が新規呼に関する信号を受け付けると(ステップS1)、当該信号を処理する集積回路に掛かると予想される負荷を示す負荷情報を取得する(ステップS2)。次に、ステップS2で取得された負荷情報に基づいて、当該新規呼の割り当てに必要な集積回路の数が所定数Qを超えているか否かを判断する(ステップS3)。新規呼の割り当てに必要な集積回路の数が所定数Qを超えているとき(ステップS3のYES)、「休止モード」の集積回路を「スタンバイモード」に遷移させる(ステップS4)。ステップS3とステップS4の処理を繰り返すことによって、新規呼の割り当てに必要な数の「スタンバイモード」の集積回路を用意する。
【0039】
新規呼の割り当てに必要な集積回路の数が所定数Q以下であるとき(ステップS3のNO)、信号処理装置100は、新規呼の割り当てに必要な数の集積回路を選択し、選択された集積回路に新規呼の処理を割り当てる(ステップS5)。また、信号処理装置100は、ステップS2で取得された負荷情報に応じて、ステップS5で割り当てられた集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御する(ステップS6)。ステップS6の処理を、より詳細に説明すれば、信号処理装置100は、新規呼割当後の必要動作周波数で動作可能な電圧まで集積回路の電圧を上昇すべく、電源電圧供給部からの電源供給を必要な電圧値まで変化させ、続けてクロック信号発振器からのクロック信号を必要な周波数まで変化させる。このとき、対象の集積回路は、「スタンバイモード」から「処理実行モード」に遷移する。ステップS6の処理を終えた時点で新規呼に関する処理の割当は終了となる。
【0040】
なお、図2に示す動作フローにおいて、単一の新規呼に関する信号処理の割り当てに必要な最大数よりも十分に大きい値を、所定数Qに設定することが望ましい。このように所定数Qを設定することによって、ステップS3は常にNOとなるので、当該動作フローの実行時間が短縮される。
【0041】
図3は、呼解放の際の信号処理装置100の動作フローを示すフローチャートである。まず、信号処理装置100は呼解放処理を行う集積回路を特定する(ステップT1)。そして、信号処理装置100は、ステップT1で特定された集積回路に供給されるクロック信号を下げる指示をクロック信号発振器に対して発し、集積回路に供給される電源電圧を下げる指示を当該集積回路の電源電圧供給部に対して発する(ステップT2)。信号処理装置100は、ステップT1で特定された集積回路から取得された電力指標(集積回路に供給される電源の電圧値、クロック信号の周波数、あるいは集積回路の温度)が所定の閾値以下であるとき(ステップT3のYES)、かつ「スタンバイモード」の集積回路の数が所定数Q以上であるとき(ステップT4のYES)、ステップT1で特定された集積回路を「処理実行モード」から「休止モード」へと遷移させる(ステップT5)。また、信号処理装置100は、ステップT1で特定された集積回路から取得された電力指標が上記閾値以下であるとき(ステップT3のYES)、かつ「スタンバイモード」の集積回路の数が所定数Q未満であるとき(ステップT4のNO)、ステップT1で特定された集積回路を「処理実行モード」から「スタンバイモード」へと遷移させる(ステップT6)。なお、信号処理装置100は、電力指標が所定の閾値を超えるとき(ステップT3のNO)、ステップT2に移行する。
【0042】
ここで、本実施形態の効果について説明する。本実施形態によれば、各々の集積回路に「休止モード」、「スタンバイモード」、「処理実行モード」の3種類の動作モードを持たせ、受け付けた信号処理装置によって掛かる処理負荷に応じて上記動作モードを制御する事により、処理負荷が軽い場合は必要な集積回路以外の集積回路の動作を積極的に停止する事により低消費電力削減を図ることができる。
【0043】
更には、動作しているブロックに対しても、負荷情報に応じて集積回路に供給される電源電圧またはクロック信号を最適に制御することができる。従って、「処理実行モード」の集積回路についても消費電力を削減する事が可能である。
【0044】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0045】
本発明は集積回路を使用したシステムに広く適用可能である。特に太陽電池やバッテリーで動作する無線通信機器等、電源事情の劣悪な環境では、消費電力を極限まで絞って使用する方法での利用が考えられる。また、電源事情が悪くない環境であっても省エネの観点から消費電力を極力抑えようという考え方は浸透しつつある為、今後は益々広い分野での利用が考えられる。
【0046】
上記実施形態において、サブ処理ブロックは複数存在するものとして説明したが、単一であってもよい。このとき、電力指標取得部または信号処理制御部は存在しなくてもよい。
【0047】
また、上記実施形態の説明には、複数のフローチャートを用いており、それぞれに複数のステップを順番に記載してあるが、その記載の順番は、本発明の信号処理方法のステップを実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の信号処理方法を実行するときには、その複数のステップの順番は内容的に支障しない範囲で変更することができる。
【0048】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各構成要素の機能などを具体的に説明したが、その機能などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0049】
100 信号処理装置
10 受付部
20 制御ブロック
21 負荷情報取得部
22 供給制御部
23 電力指標取得部
24 信号処理制御部
30、40 サブ処理ブロック
31、41 集積回路
32、42 電源電圧供給部
33、43 クロック信号発振器
34、44 D/A変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を受け付ける受付手段と、
前記受付手段によって受け付けられた前記信号を処理する集積回路と、
前記受付手段が前記信号を受け付けたとき、当該信号を処理する前記集積回路に掛かると予想される負荷を示す負荷情報を取得する負荷情報取得手段と、
前記負荷情報取得手段によって取得された前記負荷情報に応じて、前記集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御する供給制御手段と、
を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の信号処理装置であって、
前記集積回路を少なくとも二つ備え、
さらに、夫々の前記集積回路の消費電力の指標となる電力指標を間欠的に取得する電力指標取得手段と、
前記電力指標取得手段によって取得された前記電力指標に応じて前記集積回路のいずれかを選択し、選択された前記集積回路に前記信号を処理させる信号処理制御手段と、を備え、
前記供給制御手段は、前記負荷情報取得手段によって取得された前記負荷情報に応じて、前記信号処理制御手段によって選択された前記集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御することを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の信号処理装置であって、
夫々の前記集積回路は、電源とクロック信号とが供給される第1モード、電源は供給され、クロック信号の供給は停止される第2モード、または電源の供給とクロック信号の供給とが停止される第3モードのいずれかを前記供給制御手段からの指令に応じて採り、
前記電力指標取得手段は、前記集積回路の夫々が前記第1モード、前記第2モードまたは前記第3モードのいずれを採っているかを示す情報を、前記電力指標として取得することを特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の信号処理装置であって、
前記信号処理制御手段は、前記第2モードの前記集積回路を選択し、選択された前記集積回路に前記信号を処理させ、
前記供給制御手段は、前記信号処理制御手段によって選択された前記集積回路を前記第2モードから前記第1モードに遷移させることを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の信号処理装置であって、
前記電力指標取得手段は、前記電力指標として、夫々の前記集積回路に供給された電源の電圧値またはクロック信号の周波数、あるいは夫々の前記集積回路の温度のうち少なくとも一つを取得することを特徴とする信号処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の信号処理装置であって、
前記供給制御手段は、
前記第2モードの前記集積回路の数が所定数以上であるとき、かつ前記電力指標取得手段によって前記第1モードの前記集積回路から取得された前記電源の電圧値、前記クロック信号の周波数または当該集積回路の温度が所定の閾値以下であるとき、当該集積回路を第3モードへと遷移させ、
前記第2モードの前記集積回路の数が所定数未満であるとき、かつ前記電力指標取得手段によって前記第1モードの前記集積回路から取得された前記電源の電圧値、前記クロック信号の周波数または当該集積回路の温度が所定の閾値以下であるとき、当該集積回路を前記第2モードへと遷移させることを特徴とする信号処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の信号処理装置であって、
前記集積回路に供給される電源の電圧値と前記負荷情報との関係性、または前記集積回路に供給されるクロック信号の周波数と前記負荷情報との関係性とを記憶しているデータベース手段を備え、
前記供給制御手段は、前記負荷情報取得手段によって取得された前記負荷情報に関係付けられた前記電源の電圧値または前記クロック信号の周波数を前記データベース手段から参照し、参照された前記電源の電圧値または前記クロック信号の周波数に従って、前記集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御することを特徴とする信号処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかに記載の信号処理装置であって、
前記受付手段は、呼処理に関する信号を受け付け、
前記集積回路は、前記受付手段によって受け付けられた前記信号に対してベースバンド処理を実行することを特徴とする信号処理装置。
【請求項9】
信号を受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップで前記信号を受け付けたとき、当該信号を処理する集積回路に掛かると予想される負荷を示す負荷情報を取得する負荷情報取得ステップと、
前記負荷情報取得ステップで取得された前記負荷情報に応じて、前記集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御する供給制御ステップと、
を備えることを特徴とする信号処理方法。
【請求項10】
コンピュータが読み込み可能な記憶媒体に記憶させるプログラムであって、
信号を受け付ける受付処理と、
前記受付処理で前記信号を受け付けたとき、当該信号を処理する集積回路に掛かると予想される負荷を示す負荷情報を取得する負荷情報取得処理と、
前記負荷情報取得処理で取得された前記負荷情報に応じて、前記集積回路に供給される電源の電圧値またはクロック信号の周波数の少なくとも一方を可変に制御する供給制御処理と、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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