説明

信号処理装置及び信号処理方法

【課題】画像信号に輪郭強調信号が付加されている場合に画像信号の拡大に伴う画像品位の低下を抑える。
【解決手段】画像信号に輪郭強調信号が付加された輪郭強調済信号に対して輪郭強調信号を低減する処理を行うことにより低減済信号を生成する輪郭強調信号低減部130と、輪郭強調信号低減部130により生成された低減済信号に対して補間拡大する処理を行うことにより拡大済信号を生成する補間拡大部140と、補間拡大部140により生成された拡大済信号に対して輪郭強調処理を行う輪郭強調部150と、を備えることを特徴とする、信号処理装置10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像に含まれている輪郭部分を強調するため、画像の輪郭部分に輪郭強調信号(以下、「シュート」とも言う。)を付加する技術がある(例えば、特許文献1参照。)。輪郭強調信号が付加されれば、画像の輪郭部分における画素データの変化が急峻になり、画像の鮮鋭度が向上する。例えば、特許文献1に記載された技術においては、画像処理装置は、画像の輪郭幅を補正した後に拡大処理を行い、拡大処理後の画像の輪郭幅を補正する。
【0003】
特許文献1に記載された技術を用いれば、画像が拡大された場合であっても画像の輪郭部分の鮮鋭度を向上させることができる。また、画像の拡大処理前に画像の輪郭幅を補正するため、画像の拡大処理後の輪郭幅の補正処理を簡素化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−235733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術においては、画像の拡大を行った後に輪郭強調信号を付加している。したがって、既に輪郭強調信号が付加されている画像が存在する場合、かかる画像に対して特許文献1に記載された技術を適用すれば、画像の拡大処理によって輪郭強調信号も拡大処理され、拡大後の画像において輪郭強調信号が非常に目立つようになってしまう。そして、画像の品位も低下してしまう。
【0006】
また、画像の拡大処理に伴う周波数特性の劣化を解消するために、画像の拡大処理後に画像に対してエンハンス処理を行う場合には、輪郭強調信号が過度に強調される結果となり、さらに画質が劣化してしまうという問題があった。さらに、画像の拡大処理に伴う周波数特性の劣化を解消するために、画像の拡大処理後に画像に対してシュートレスエンハンス処理を行う場合、元の画像信号に輪郭強調信号が含まれていると輪郭強調信号が残ってしまい、シュートレスエンハンス処理を適切に行うことができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、画像信号に輪郭強調信号が付加されている場合に画像信号の拡大に伴う画像品位の低下を抑えることが可能な、新規かつ改良された信号処理装置及び信号処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある実施形態によれば、画像信号に輪郭強調信号が付加された輪郭強調済信号に対して前記輪郭強調信号を低減する処理を行うことにより低減済信号を生成する輪郭強調信号低減部と、前記輪郭強調信号低減部により生成された前記低減済信号に対して補間拡大する処理を行うことにより拡大済信号を生成する補間拡大部と、前記補間拡大部により生成された前記拡大済信号に対して輪郭強調処理を行う輪郭強調部と、を備えることを特徴とする、信号処理装置が提供される。
【0009】
かかる構成によれば、画像信号に含まれている輪郭強調信号を低減してから補間拡大及び輪郭強調を行うため、輪郭強調の重複が起きず自然な強調結果が得られる。その結果、高品位な拡大画像を得ることができる。また、初めから輪郭強調信号を付加しないで拡大処理を行うことにすれば、拡大処理以外の各処理に際して輪郭補正を行う必要が生じ、回路規模が大きくなってしまう。本実施形態によれば、回路規模の拡大を抑えつつ、輪郭強調が施された画像信号を拡大することができる。
【0010】
また、前記信号処理装置は、前記画像信号に前記輪郭強調信号を付加する画像処理部を前記輪郭強調信号低減部の前段にさらに備えることもできる。かかる構成によれば、画像処理部は、画像信号に輪郭強調信号が付加された輪郭強調済信号を輪郭強調信号低減部に出力することができる。
【0011】
また、前記画像処理部は、前記画像信号から抽出した高周波成分に応じた信号を前記画像信号に加算することにより前記画像信号に前記輪郭強調信号を付加することもできる。かかる構成によれば、画像処理部は画像信号に輪郭強調信号を付加することができる。
【0012】
また、前記輪郭強調信号低減部は、前記高周波成分の抽出に使用された周波数特性の逆特性を使用して前記輪郭強調信号を低減する処理を行うこともできる。かかる構成によれば、輪郭強調信号低減部は、より高精度に輪郭強調信号を低減することができる。
【0013】
また、前記輪郭強調信号低減部は、前記輪郭強調済信号から高周波成分を取り除いた信号と前記輪郭強調済信号との差分信号の絶対値が閾値を上回った場合に前記差分信号を前記閾値に基づいてクリップし、クリップ後の信号と前記輪郭強調済信号から高周波成分を取り除いた信号とを加算することにより前記低減済信号を生成することもできる。かかる構成によれば、輪郭強調信号低減部は、低減済信号を生成することが可能となる。
【0014】
また、前記輪郭強調処理には、前記拡大済信号に対するシュートレスエンハンス処理が含まれることとしてもよい。本実施形態を取らない場合には、輪郭強調処理としてシュートレスエンハンス処理を行うと、検出される最大値及び最小値が輪郭強調信号の影響を受けてしまう。そして、シュートレスエンハンス処理におけるクリップ前の強調信号生成の段階において再度の輪郭強調を行うことになってしまう。そのため、幅の広い輪郭強調信号が残った信号が生成されてしまうため、本実施形態による効果がより顕著になる。
【0015】
また、本発明の別の実施形態によれば、画像信号に輪郭強調信号が付加された輪郭強調済信号に対して前記輪郭強調信号を低減する処理を行うことにより低減済信号を生成するステップと、前記低減済信号に対して補間拡大する処理を行うことにより拡大済信号を生成するステップと、前記拡大済信号に対して輪郭強調処理を行うステップと、を含むことを特徴とする、信号処理方法が提供される。
【0016】
かかる方法によれば、画像信号に含まれている輪郭強調信号を低減してから補間拡大及び輪郭強調を行うため、輪郭強調の重複が起きず自然な強調結果が得られる。その結果、高品位な拡大画像を得ることができる。また、初めから輪郭強調信号を付加しないで拡大処理を行うことにすれば、拡大処理以外の各処理に際して輪郭補正を行う必要が生じ、回路規模が大きくなってしまう。本実施形態によれば、回路規模の拡大を抑えつつ、適切な輪郭強調が施された画像信号を拡大することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る信号処理装置及び信号処理方法によれば、画像信号に輪郭強調信号が付加されている場合に画像信号の拡大に伴う画像品位の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る信号処理装置の構成例を示す図である。
【図2】輪郭強調信号低減部の構成例を示す図である。
【図3】輪郭強調部のHPF特性と輪郭強調信号低減部のLPF特性との関係を示す図である。
【図4】輪郭強調信号低減部の構成の他の例を示す図である。
【図5】輪郭強調信号低減部の各処理過程における信号波形例を示す図である。
【図6】輪郭強調信号の低減を行わずに拡大処理を行う場合の各処理過程における信号波形例を示す図である。
【図7】輪郭強調信号の低減を行った後に拡大処理を行う場合の各処理過程における信号波形例を示す図である。
【図8】拡大処理部の動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態が奏する効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る信号処理装置10の構成例を示す図である。図1に示すように、信号処理装置10は、映像処理部110及び拡大処理部120を含んでいる。前段の映像処理部110に含まれる輪郭強調部110aは、入力信号の輪郭を強調する。より詳細には、輪郭強調部110aは、入力信号に輪郭強調信号を付加することにより輪郭強調済信号を生成する。輪郭強調済信号の生成は、例えば、入力信号からHPF(High−Pass Filter)で抽出した高域成分(高周波成分)を入力信号に加算することにより行われる。輪郭強調済信号は、拡大処理部120に出力される。
【0021】
なお、入力信号の種類は特に限定されない。例えば、入力信号は、映像信号であってもよく、画像信号であってもよい。入力信号が画像信号である場合には、映像処理部110は、画像信号に対して輪郭強調信号を付加する輪郭強調部110aを有する画像処理部として機能する。また、図1に示したように、映像処理部110は、輪郭強調部110a以外の機能を有していてもよい。
【0022】
拡大処理部120は、輪郭強調信号低減部130、補間拡大部140及び輪郭強調部150を含んでいる。輪郭強調信号低減部130は、輪郭強調済信号に対して輪郭強調信号を低減する処理を行うことにより低減済信号を生成する。なお、輪郭強調信号を低減する処理には、輪郭強調信号を除去する処理も含まれる。
【0023】
図2は、輪郭強調信号低減部130の構成例を示す図である。図2を参照して、輪郭強調信号低減部130の構成の詳細について説明する。図2に示すように、輪郭強調済信号は信号G0としてLPF(Low−pass filter)131に入る。LPF131からは信号G0から高周波成分を取り除いた信号G1が出力される。LPF131は、例えば、5×5tap程度で構成される。
【0024】
信号G0と信号G1との差分を取ったものが信号G2である。図2に示した例では、信号G0と信号(−G1)とが加算されることにより得られた信号G2が加算部132からUnder CLIP133に出力される。加算部132においては、信号(−G0)と信号G1とが加算されてもよい。
【0025】
Under CLIP133は、信号G2の絶対値が所定の閾値を上回った場合に信号G2を所定の閾値でクリップする処理を下側について行う。また、Upper CLIP134は、信号G3の絶対値が所定の閾値を上回った場合に信号G3を所定の閾値でクリップする処理を上側について行う。Under CLIP133及びUpper CLIP134は、いずれが前段にあっても構わない。
【0026】
クリップされた信号G4は、Upper CLIP134から加算部135に出力される。加算部135は、信号G1と信号G4とを加算することにより信号G5を生成する。加算部135は、信号G5を低減済信号として補間拡大部140に出力する。
【0027】
図1に戻って説明を続ける。補間拡大部140は、輪郭強調信号低減部130により生成された低減済信号に対して補間拡大する処理を行うことにより拡大済信号を生成する。補間拡大処理としては、Bi−Cubic法やBi−liniear法など各種の手法を採用することができるが、後段で輪郭強調を行うことが前提であるため、拡大に伴う多少の高域劣化が生じる手法を採用することも許容される。拡大補間処理として簡便な処理を使用すれば回路規模が小さくて済む。輪郭強調部150は、補間拡大部140により生成された拡大済信号に対して輪郭強調処理を行う。輪郭強調部150により輪郭強調処理がなされた結果は、表示装置により表示されてもよく、記憶装置により記憶されてもよい。
【0028】
輪郭強調信号低減部130は、前段の輪郭強調部110aにおいて高周波成分の抽出に使用された周波数特性の逆特性を使用して輪郭強調信号を低減する処理を行うのがよい。すなわち、前段の輪郭強調部110aにおいて使用されるHPFと輪郭強調信号低減部130において使用されるLPF131とは、動作する周波数特性の対応関係が予め決められており、その対応関係に従って動作するのがよい。
【0029】
対応関係は、輪郭強調部110aにより把握されてもよいし、輪郭強調信号低減部130により把握されてもよい。すなわち、対応関係が輪郭強調部110aにより把握される場合には、輪郭強調部110aは、LPF131が動作する周波数特性を指定するための情報(フィルタ特性情報)を輪郭強調信号低減部130に出力すればよい。その場合には、LPF131は、フィルタ特性情報に従って動作する。
【0030】
一方、対応関係が輪郭強調信号低減部130により把握される場合には、輪郭強調部110aは、HPFが動作する周波数特性を指定するための情報(フィルタ特性情報)を輪郭強調信号低減部130に出力すればよい。その場合には、LPF131は、フィルタ特性情報に基づいて把握される周波数特性に従って動作する。
【0031】
図3は、輪郭強調部110aのHPF特性と輪郭強調信号低減部130のLPF特性との関係を示す図である。例えば、輪郭強調部110aのHPF特性がH1で示されるように変化する場合、輪郭強調信号低減部130のLPF特性はH1の逆特性L1で示されるように変化する。また、例えば、輪郭強調部110aのHPF特性がH2で示されるように変化する場合、輪郭強調信号低減部130のLPF特性はH2の逆特性L2で示されるように変化する。
【0032】
図4は、輪郭強調信号低減部130の構成の他の例を示す図である。図4に示した例では、輪郭強調部150の代わりにシュートレスエンハンス部160を設け、シュートレスエンハンス部160が、輪郭強調処理の一例として拡大済信号に対するシュートレスエンハンス処理を行う。前段の映像処理部110に含まれる輪郭強調部110aにおいて輪郭強調が行われた信号は、輪郭強調信号低減部130に入力されてから補間拡大部140により補間拡大処理が行われ、その後、シュートレスエンハンス部160によりシュートレスエンハンス処理が行われる。
【0033】
シュートレスエンハンス処理は、例えば、特開平11−346320号公報により開示されているが、シュートレスエンハンス処理の例としては、一旦通常の輪郭強調を行った後、入力信号から検出した近傍のMIN値又はMAX値で信号をクリップする手法等がある。
【0034】
図5は、輪郭強調信号低減部130の各処理過程における信号波形例を示す図である。輪郭強調信号低減部130への入力信号の波形がP1として示されている。この入力信号には輪郭強調が施され、輪郭強調信号が付加されている。この入力信号はLPF131に入力される。LPF131から出力された信号の波形はP2として示されている。LPF131から出力された信号と入力信号との差分信号の波形がP3である。この差分信号の絶対値が所定の閾値よりも上回った場合に、所定の閾値でクリップする処理を下側及び上側について行った信号の波形がP4である。この信号をLPF131から出力された信号に加算して得られる信号の波形がP5として示されている。
【0035】
図6は、輪郭強調信号の低減を行わずに拡大処理を行う場合の各処理過程における信号波形例を示す図である。図6に示した例は、特に、輪郭強調信号が付加された入力信号に対して2倍の補間拡大処理を行った場合の各処理過程における信号波形である。補間拡大部140に入力される輪郭強調済信号の波形は、Q1として示されている。この輪郭強調済信号が補間拡大された信号の波形がQ2である。このように輪郭強調信号の低減を行わずに補間拡大処理を行うと輪郭強調済信号まで拡大される。
【0036】
また、補間処理に伴う高域劣化を補正するために輪郭強調処理を行うと、高域成分が二重に強調されるため、Q3に示すような波形の信号が生成される。輪郭の傾斜は原信号(波形Q1)と同程度まで急峻になるが、輪郭強調信号の振幅がさらに大きくなり、輪郭強調信号の幅もさらに広くなる。
【0037】
さらに、補間処理に伴う高域劣化を補正するためにシュートレスエンハンス処理を行う場合には、検出される入力信号の最大値及び最小値が輪郭強調信号の影響を受けてしまう。そして、シュートレスエンハンス処理におけるクリップ前の強調信号生成の段階において再度の輪郭強調を行うことになってしまう。このようなことから、振幅は小さいものの幅の広い輪郭強調信号が残った信号が生成されてしまう(波形Q4)。
【0038】
図7は、輪郭強調信号の低減を行った後に拡大処理を行う場合の各処理過程における信号波形例を示す図である。輪郭強調済信号(波形R1)に対して輪郭強調信号低減処理が施された低減済信号の波形がR2である。この低減済信号に対して補間拡大処理が施された拡大済信号の波形がR3である。拡大済信号に対して輪郭強調処理が施された信号の波形がR4であり、拡大済信号に対してシュートレスエンハンス処理が施された信号の波形がR5である。
【0039】
波形R4、R5に示されているように、輪郭強調信号の低減後に輪郭強調処理又はシュートレスエンハンス処理がなされると、輪郭の傾斜が入力信号と同程度にまで戻り、補間拡大に伴う高域劣化が補正できており、かつ、自然な輪郭強調信号が付加され(波形R4)、理想的なシュートレスエンハンス処理を行うことが可能となっている(波形R5)。
【0040】
図8は、拡大処理部120の動作の流れを示すフローチャートである。拡大処理部120には、例えば、映像処理部110により生成された輪郭強調済信号が入力される。まず、輪郭強調信号低減部130は、輪郭強調済信号に対して輪郭強調信号を低減する処理を行う(ステップS1)。これにより、輪郭強調信号低減部130は、低減済信号を生成する。続いて、補間拡大部140は、輪郭強調信号低減部130により生成された低減済信号に対して補間拡大処理を行う(ステップS2)。これにより、補間拡大部140は、拡大済信号を生成する。続いて、輪郭強調部150は、拡大済信号に対して輪郭強調処理を行う(ステップS3)。これにより、輪郭強調部150は、輪郭が強調された信号を生成する。
【0041】
以上に説明したように、輪郭強調信号低減部130は、入力に含まれる微小テクスチャは維持したまま、輪郭に付加されている輪郭強調信号を低減することができる。本実施形態では、輪郭強調済信号と輪郭強調済信号を平滑化した信号との差分を取った信号(=高周波成分)の振幅が、輪郭強調信号において大きくなることを利用し、前記高周波成分のうち閾値を上回る信号をクリップすることとしている。前記高周波成分のうち閾値以下の信号は保存することとして、微妙な質感を落とさずに画質劣化を防いでいる。
【0042】
また、前段の輪郭強調部110aによる輪郭処理で使用したHPF特性の逆特性のLPFで輪郭強調信号の低減を行う。これらの手段により、輪郭強調信号以外の信号劣化を最小限に止めながら、輪郭強調信号だけを低減することができる。また、輪郭強調信号低減の処理を補間拡大処理と組み合わせると、入力信号に含まれる輪郭強調信号も拡大され画像品位が下がる問題を解決することができる。補間拡大後に輪郭強調処理を行う場合には、輪郭強調信号の低減の効果はさらに大きくなる。
【0043】
輪郭強調信号の低減を行わない場合、補間拡大によって広がった輪郭強調信号を含めて輪郭強調処理を行うことになり、その結果、輪郭強調信号の振幅・幅が拡大して画像品位が大幅に低下してしまう。これに対し、本実施形態では、輪郭強調信号を低減した後に補間拡大を行うため、拡大後の信号に輪郭強調信号が付加されず、輪郭強調信号が付加されていない信号に対して輪郭強調処理を行えるので適度な輪郭強調信号を付加することができる。すなわち、「補間拡大処理に伴う高域劣化の補正」という目的を理想的に達成することができる。
【0044】
補間拡大後にシュートレスエンハンス処理を行う場合も、輪郭強調信号の低減の効果は非常に大きくなる。仮に輪郭強調信号の低減を行わない場合は、輪郭強調信号の振幅・幅とも拡大した強調信号を作った後に、輪郭強調信号が付加された入力信号のMIN値及びMAX値を使ったクリップを行うため、クリップ後の信号にも幅の広い輪郭強調信号が残存してしまう。そのため、理想的なシュートレスエンハンス処理が行えず、画像品位も低下してしまう。
【0045】
本実施形態では、クリップ前の強調信号に過度に輪郭強調信号が付くことがなく、輪郭強調信号の付加されていない入力信号のMIN値及びMAX値を使ったクリップが行える。そのため、理想的なシュートレスエンハンス処理が行え、補間拡大処理に伴う高域劣化の補正という目的を理想的に達成することができる。
【0046】
なお、拡大処理時には前段の輪郭強調部110aを使用しないようにするという選択も考えられる。すなわち、初めから輪郭強調信号を付加しないで拡大処理を行うという選択である。しかし、これは難しい選択である。この理由について図9を参照して説明すると、映像機器(映像システム20)は一般に、映像処理の結果を出力する前段の系(映像処理回路21)の他、圧縮処理回路22、縮小処理回路23(異なる縮小率の回路を複数備える場合もある。)、拡大処理回路24等、複数の経路に分岐したシステムになっていることが多い。このようなシステムにおいて、本線の映像処理回路21内の輪郭強調回路をOFFにすると、拡大処理以外の処理にも影響が及んでしまい、分岐経路の数だけ処理後の輪郭補正回路を用意する必要が生じ、回路規模が大きくなってしまう。
【0047】
また、例えば、輪郭強調済信号が他の映像システム20から外部入力端子等を経由して入力される場合や、映像素材自身に対して輪郭強調処理が施されている場合には、その輪郭強調処理をOFFにすることは不可能である。この場合には、従来手法では高品位な拡大画像を得ることは困難である。本実施形態では、輪郭強調信号低減部130において使用するLPFの特性はユーザが画像を見ながら決定する必要があるが、入力信号に含まれる輪郭強調信号を低減した後に補間拡大し、輪郭強調又はシュートレスエンハンスを行うことで高品位な拡大画像を得ることができる。
【0048】
本実施形態に係る技術は、既に開示されている先行技術文献に記載された技術とは異なっている。特開2009−71714号公報(先行技術文献1)は、輪郭強調信号を付加する際に強い輪郭強調信号を付加しないようにする技術を開示している。また、特開2006−235733号公報(先行技術文献2)は、入力信号に対して高品位な拡大処理を行った後に輪郭強調信号を付加する技術を開示している。さらに、特開2005−173944号公報(先行技術文献3)は、輪郭強調信号が発生しない解像度変換方法に関する技術を開示している。
【0049】
特開平11−346320号公報(先行技術文献4)は、ノイズを含む入力信号に対しても理想的なシュートレスエンハンスを行う手法について開示している。また、特開2010−41497号公報(先行技術文献5)は、輪郭強調を行ってから補間拡大してクリップするシュートレスエンハンス回路について開示している。さらに、特開2009−201036号公報(先行技術文献6)は、入力信号の周波数ヒストグラムをとってエンハンスゲインを決定する技術について開示している。また、特開2005−175711号公報(先行技術文献7)は、クリップ処理を使わないシュートレスエンハンス方法について開示している。
【0050】
先行技術文献1〜4に開示されている技術では、いずれも輪郭強調信号が付加されていない入力信号を対象にしている点が本実施形態に係る技術と根本的に異なっている。仮に、先行技術文献1,2に開示されている技術においては、入力信号として輪郭強調済信号を入力した場合、輪郭強調が重複して過度に強調が行われてしまうという問題が生じる。
【0051】
また、仮に、先行技術文献3に開示されている技術においては、入力信号として輪郭強調済信号を入力した場合、輪郭強調信号を発生しないための手法であるにも関わらず、出力に輪郭強調信号が残ってしまうという問題が生じる。先行技術文献4に開示されている技術では、入力信号にランダムなノイズが重畳している場合にはノイズの影響を排除できるが、入力信号にまとまった輪郭強調信号が含まれている場合には輪郭強調信号の影響を排除しきれない。したがって、出力信号に輪郭強調信号が残ってしまうという問題が生じる。
【0052】
さらに、先行技術文献5〜7に開示されている技術のいずれも元の信号が輪郭強調済みで輪郭強調信号が付加されている場合について言及していない。すなわち、先行技術文献5〜7に開示されている技術においては、仮に輪郭強調済信号が入力された場合、シュート“レス”にならかったり、過度の強調が行われたりして画像品位を損ねてしまう。
【0053】
本実施形態に係る技術では、入力信号に含まれている輪郭強調信号を低減してから補間拡大及び輪郭強調を行うため、輪郭強調の重複が起きず自然な強調結果が得られる。その結果、高品位な拡大画像を得ることができる。また、本実施形態に係る技術では、入力信号に含まれている輪郭強調信号を低減してから補間拡大又はシュートレスエンハンスを行うため、シュートレスエンハンス後の信号に輪郭強調信号が残ることがなく、理想的なシュートレスエンハンスが行える。その結果、高品位な拡大画像を得ることができる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0055】
10 信号処理装置
110 映像処理部
110a 輪郭強調部
120 拡大処理部
130 輪郭強調信号低減部
131 LPF
132 加算部
133 Under CLIP
134 Upper CLIP
135 加算部
140 補間拡大部
150 輪郭強調部
160 シュートレスエンハンス部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に輪郭強調信号が付加された輪郭強調済信号に対して前記輪郭強調信号を低減する処理を行うことにより低減済信号を生成する輪郭強調信号低減部と、
前記輪郭強調信号低減部により生成された前記低減済信号に対して補間拡大する処理を行うことにより拡大済信号を生成する補間拡大部と、
前記補間拡大部により生成された前記拡大済信号に対して輪郭強調処理を行う輪郭強調部と、
を備えることを特徴とする、信号処理装置。
【請求項2】
前記信号処理装置は、
前記画像信号に前記輪郭強調信号を付加する画像処理部を前記輪郭強調信号低減部の前段にさらに備えることを特徴とする、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、
前記画像信号から抽出した高周波成分に応じた信号を前記画像信号に加算することにより前記画像信号に前記輪郭強調信号を付加することを特徴とする、
請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記輪郭強調信号低減部は、
前記高周波成分の抽出に使用された周波数特性の逆特性を使用して前記輪郭強調信号を低減する処理を行うことを特徴とする、
請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記輪郭強調信号低減部は、
前記輪郭強調済信号から高周波成分を取り除いた信号と前記輪郭強調済信号との差分信号の絶対値が閾値を上回った場合に前記差分信号を前記閾値に基づいてクリップし、クリップ後の信号と前記輪郭強調済信号から高周波成分を取り除いた信号とを加算することにより前記低減済信号を生成することを特徴とする、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記輪郭強調処理には、
前記拡大済信号に対するシュートレスエンハンス処理が含まれることを特徴とする、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項7】
画像信号に輪郭強調信号が付加された輪郭強調済信号に対して前記輪郭強調信号を低減する処理を行うことにより低減済信号を生成するステップと、
前記低減済信号に対して補間拡大する処理を行うことにより拡大済信号を生成するステップと、
前記拡大済信号に対して輪郭強調処理を行うステップと、
を含むことを特徴とする、信号処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−30977(P2013−30977A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165546(P2011−165546)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(500548884)三星テクウィン株式会社 (156)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Techwin Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】28 Sungju−dong,Changwon−city,Kyongsangnam−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】