説明

信号処理装置及びCATV用ヘッドエンド装置

【課題】 入力フィルタの交換が不要で交換に要する時間を不要にできる信号処理装置およびCATV用ヘッドエンド装置を提供する。

【解決手段】CATVシステムのヘッドエンドで使用する信号処理装置10において,ケースには第1の入力端子11と第1の出力端子12を備え,前記第1の入力端子11と第1の出力端子間12には直列上に介設される入力フィルタ20・22と,受信周波数より低い中間周波信号に変換するダウンコンバータ23・31・32と,中間周波信号より高い周波数の出力信号を出力するアップコンバータ27と,出力フィルタ30とをそれぞれ備え,前記入力フィルタ20・22はチューナブルバンドパスフィルタで構成され,前記ダウンコンバータ23・31・32の局部発振周波数に対応して前記入力フィルタ20・22を通過する周波数帯域を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,CATVシステムで使用する信号処理装置及びCATV用ヘッドエンド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CATVシステムのうち特にヘッドエンドで使用する信号処理装置や受信増幅器は,ケースに複数の入力端子と出力端子とを備え,さらに,上記複数の入力端子の夫々と出力端子間には夫々直列状に介設される入力回路と増幅回路と出力フィルタをそれぞれ備えている。
そして,信号処理装置や受信増幅器は,工場から出荷するにあたり,注文者の要求する複数のテレビチャンネルに夫々適合する各入力回路ユニット及び,出力フィルタが夫々対応する接続端子に接続されその状態で出荷される。なお,上記入力回路ユニットのうち一部あるいは全部は周波数変換器が用いられる場合があり,その場合,出力フィルタとしてその変換した後のチャンネルの信号を通すものが用いられる。
使用現場においては,上記ケースは電柱その他の固定物に取り付けられる。そして入力端子には各チャンネルに対応した専用のアンテナまたは複数のテレビ信号を一つのアンテナで受信して,受信機器側で夫々分離して信号処理されCATV伝送路へ出力されるようになっている。(例えば,特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭59−70010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年,地上波ディジタル放送が普及する兆しが見え始めている。地上波ディジタル放送は現在地上波アナログ放送に使用しているUHF帯の電波を使用して放送される。そして,移行時にはアナログとディジタルの両方が放送されることになり,時間経過と共に,ディジタル放送の受信世帯が所定値を超えた段階で,アナログ放送を中止し,すべてディジタル放送に切り換わることになっている。そして,切り換え完了後,周波数の有効利用の目的から,地上波ディジタル放送の伝送チャンネルの変更作業が予定されている。
ところが,上記提案の技術では信号処理装置や受信増幅器を設置後,伝送チャンネル(伝送周波数)が変更になると,入力フィルタを再調整するか調整済みの新しいフィルタに交換しなければならないという問題があった。
また,入力フィルタの交換に時間がかかることから停波が避けられず利用者に迷惑をかけてしまうという問題があった。
【0005】
そこで本願においては,こうした問題点を解決するためになされたものであり,その目的は,入力フィルタの交換が不要で交換に要する時間を不要にできる信号処理装置を提供することである。
他の目的は,周波数の有効利用が図れる信号処理装置を提供することである。
他の目的は,複数の受信チャンネルに対応できるCATV用ヘッドエンド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために,請求項1の発明は,CATVシステムのヘッドエンドで使用する信号処理装置において,ケースには第1の入力端子と第1の出力端子を備え,前記第1の入力端子と第1の出力端子間には直列上に介設される入力フィルタと,受信周波数より低い中間周波信号に変換するダウンコンバータと,中間周波信号より高い周波数の出力信号を出力するアップコンバータと,出力フィルタとをそれぞれ備え,前記入力フィルタはチューナブルバンドパスフィルタで構成され,前記ダウンコンバータの局部発振周波数に対応して前記入力フィルタを通過する周波数帯域を決定するように構成される。
【0007】
請求項2の発明は,請求項1に記載の信号処理装置において,前記受信周波数と出力周波数が略同一であるように構成される。
【0008】
請求項3の発明は,CATV用ヘッドエンド装置において,ケースには第2の入力端子と第2の出力端子を備え,前記第2の入力端子と第2の出力端子間には一対の分配器および混合器を備え,前記分配器の分配入力端子と前記第2の入力端子が接続され,前記混合器の混合出力端子と前記第2の出力端子が接続され,各分配出力端子と各混合入力端子間には前記請求項1または請求項2に記載の信号処理装置が介設するように構成される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば,CATVシステムのヘッドエンドで使用する信号処理装置において,ケースには第1の入力端子と第1の出力端子を備え,前記第1の入力端子と第1の出力端子間には直列上に介設される入力フィルタと,受信周波数より低い中間周波信号に変換するダウンコンバータと,中間周波信号より高い周波数の出力信号を出力するアップコンバータと,出力フィルタとをそれぞれ備え,前記入力フィルタはチューナブルバンドパスフィルタで構成され,前記ダウンコンバータの局部発振周波数に対応して前記入力フィルタを通過する周波数帯域を決定するように構成したので,
入力フィルタの交換が不要で交換に要する時間を不要にできる信号処理装置を提供することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば,請求項1に記載の信号処理装置において,前記受信周波数と出力周波数が略同一であるように構成したので,
周波数の有効利用が図れる信号処理装置を提供することができる。
【0011】
請求項3の発明によれば,CATV用ヘッドエンド装置において,ケースには第2の入力端子と第2の出力端子を備え,前記第2の入力端子と第2の出力端子間には一対の分配器および混合器を備え,前記分配器の分配入力端子と前記第2の入力端子が接続され,前記混合器の混合出力端子と前記第2の出力端子が接続され,各分配出力端子と各混合入力端子間には前記請求項1または請求項2に記載の信号処理装置が介設するように構成したので,
複数の受信チャンネルに対応できるCATV用ヘッドエンド装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に,本発明を具体化した実施形態の例を,図面を基に詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明を適用したCATV用ヘッドエンド装置のブロック図を示している。
100は本発明のヘッドエンド装置であり,ケースの壁面には第2の入力端子100aと第2の出力端子100bを備えている。
1は受信アンテナで本実施例では地上波ディジタル放送を受信するためのUHF(470〜770MHz)アンテナが使用されている。
2は広帯域増幅器であり,後述する分配器4の分配損失を補償するためのプリアンプである。
3は入力レベル調整用の高周波信号減衰器であり,入力信号レベルが所定値より高い場合その信号レベルを下げるためのものである。
4は分配器で入力信号を均等に複数に分配するものである。
5は混合器であり,後述する信号処理装置10から出力される出力信号を混合するためのものである。また,分配器4混合器5は一対を成すように構成されている。なお,分配数は任意であり,必要に応じて決定すればよい。
6は出力増幅器であり,前記混合器で混合された信号を所定量だけ増幅するためのものである。
7は高周波信号減衰器であり,出力レベルを調整するためのものである。
10は信号処理装置であり,ユニットの壁面には第1の入力端子11と,第1の出力端子12が備えられている。
【0014】
次に信号処理装置10について詳しく説明する。
信号処理装置10a・10b・・・10nの内部には,受信チャンネル(例えば,特定の1チャンネル)の放送信号が通過でき,受信チャンネルのイメージ周波数信号及び,不要な信号の通過を阻止できるチューナブルバンドパスフィルタで構成された第1の入力フィルタ20,受信チャンネルの放送信号レベルが所定値になるように増幅するAGC増幅器21,第1の入力フィルタ20と同一の特性の第2入力フィルタ22,周波数変換回路としてのミキサー23,周波数変換後の中間周波信号(例えば,50MHz帯)のみ通過可能なバンドパスフィルタ24(例えば,53〜59MHz),中間周波信号の一部を分岐するための分岐器25,中間周波信号を中間周波信号の周波数より高い伝送用信号に周波数変換するためのアップコンバータ27,入力信号レベルが所定値より低い場合出力信号を遮断するためのスケルチ回路28,出力信号を所定量増幅するための増幅器29,出力フィルタ30が直列状に接続されており,第1の入力フィルタ20の一端と第1の入力端子11および,出力フィルタ30の一端と第1の出力端子12が夫々接続されている。
なお,26は検波器であり,分岐器25で分岐した中間周波信号を検波して直流電圧に変換し,前記AGC増幅器21および,スケルチ回路28に入力されるようになっている。
【0015】
次に,31は電圧制御発振器(VCOとも言う)で印加するチューニング電圧により発振周波数が制御できるように構成された発振器である。32は周知のPLL回路である。33は制御装置であり,前記PLL回路32に対して,発振周波数の制御を行うためのものである。34は入力装置で,受信チャンネルを設定するためのものである。本実施例では,ディップスイッチを使用している。
なお,ダウンコンバータはミキサー23と局部発振信号を生成するPLL回路32および電圧制御発振器31から構成されている。
【0016】
次に動作について説明する。
まず,前記ヘッドエンド装置100に電源が投入されると,各制御装置33が動作を開始する。
制御装置33は前記入力装置34の状態をモニターして前回と比べて変化があったときは内部の記憶装置に記憶されている受信チャンネルデータを更新するようになっている。そして,記憶装置に記憶されている受信チャンネルデータに基づき,PLL回路32に出力するための分周数を算出して,前記PLL回路32に対して,制御信号を出力する。PLL回路32は前記電圧制御発振器31の出力信号と内部の基準信号の位相が同期するように制御しながら安定した局部発振信号を生成する。生成した局部発振信号はミキサー23に供給される。
【0017】
一方,電圧制御発振器31に入力されているチューニング電圧は第1の入力フィルタ20と第2入力フィルタ22にも供給されており,入力フィルタ20・22(チューナブルバンドパスフィルタ)は受信チャンネル(例えば,特定の1チャンネル)の放送信号のみが通過でき,受信チャンネルのイメージ周波数信号及び,不要な信号の通過を阻止している。
【0018】
受信アンテナ1で受信した470〜770MHz帯の地上波ディジタル放送信号は第2の入力端子100aを介してヘッドエンド装置100に取り込まれる。
ヘッドエンド装置100に取り込まれた受信信号は広帯域増幅器2で増幅されたのち,高周波信号減衰器3で入力レベルが調整され,さらに分配器4で均等に分配され,各信号処理装置10a・10b・・・10nの第2の入力端子11a・11b・・・11nを介して信号処理装置10に取り込まれる。
信号処理装置10に取り込まれた受信信号は,第1の入力フィルタ20,受信チャンネルの放送信号レベルが所定値になるように増幅するAGC増幅器21,第2入力フィルタ22を介して特定の1チャンネル(6MHz)分の放送信号がミキサー23に供給される。ミキサー23ではこの特定チャンネルの放送信号と電圧制御発振器31からの局部発振信号から受信信号周波数より低い一定の中間周波信号に周波数変換している。ミキサー23から出力された中間周波信号は,中間周波信号(例えば,53〜59MHz)のみ通過可能なバンドパスフィルタ24および分岐器25,アップコンバータ27,スケルチ回路28,増幅器29,出力フィルタ30を介して第1の出力端子12から出力される。
各信号処理装置10の第2の出力端子12a・12b・・・12nを介して出力された各特定の受信信号は混合器5で混合され,出力増幅器6で所定量だけ増幅されると共に,高周波信号減衰器7で出力レベルが調整され第2の出力端子100bから出力される。そして,伝送用信号は図示しないCATV伝送路に供給され下流に伝送される。
【0019】
アップコンバータ27は中間周波信号(例えば,53〜59MHz)をミッドバンド(108〜170MHz)または,スーパーハイバンド(222〜470MHz)または,UHF(470〜770MHz)帯の放送していない利用者指定の空きチャンネルに変換するようになっている。
受信チャンネルと伝送チャンネルを異なる値に設定した場合は,混信の影響を防止できる。また,受信チャンネルと伝送チャンネルを同一チャンネルに設定した場合は周波数の有効利用が図れる。
【0020】
ところで,地上波ディジタル放送の伝送チャンネルの変更作業が発生した場合は,前記入力装置34を操作するだけで自動的に受信周波数(受信チャンネル)を変更することができ,入力フィルタを交換する必要がないので受信チャンネル変更に伴う停波も発生しないという優れた効果を奏する。
また,本実施例ではAGCアンプ21を採用しているので受信信号レベルが変動しても安定した出力レベルが得られる。また,受信信号レベルが所定値より低い場合にはノイズが出力されないようにスケルチ回路28も搭載している。
【実施例2】
【0021】
次に本発明の第2の実施形態として図2を参照して説明する。尚,以下の説明では,上記第1の実施形態の信号処理装置と同様の構成要素については同一符号を付与し,詳細な説明は省略する。
図2において,110は信号処理装置であり,35はディジタル/アナログ変換器(D/Aコンバータ)である。制御装置33は受信チャンネルに対応するデジタルデータを出力するようになっている。そして,デジタルデータは前記ディジタル/アナログ変換器35でアナログ信号に変換され前記第1の入力フィルタ20および第2入力フィルタ22にフィルタ制御信号を供給するようになっている。このように構成したので,設計が容易でトータルコストを低減できる信号処理装置を提供することができる。
【0022】
尚,本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく,以下に例示するように,本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部を適宜に変更して実施することも可能である。
例えば,本実施例では入力フィルタを前段と後段の2つに分けたが,必要に応じて前段または後段だけでも良いし,3以上直列状に接続してもよい。
また,本実施例では信号処理装置を複数使用したが,1つでも良く,伝送チャンネルの数だけ準備すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用したヘッドエンド装置のブロック図である。
【図2】異なる実施例のヘッドエンド装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0024】
1…受信アンテナ,2…増幅器,3…減衰器,4…分配器,5…混合器,6…増幅器,7…減衰器,10…信号処理装置,11…第1の入力端子,12…第1の出力端子,20…入力フィルタ(チューナブルバンドパスフィルタ),21…AGC増幅器,22…入力フィルタ(チューナブルバンドパスフィルタ),23…ミキサー,24…バンドパスフィルタ,25…分岐器,26…検波器,27…アップコンバータ,28…スケルチ回路,29…増幅器,30…出力フィルタ,31…電圧制御発振器(VCO),32…PLL回路,33…制御装置,34…入力装置,35…ディジタル/アナログ変換器(D/A),100…ヘッドエンド装置,100a…第2の入力端子,100b…第2の出力端子,110…ヘッドエンド装置,110a…第2の入力端子,110b…第2の出力端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CATVシステムのヘッドエンドで使用する信号処理装置において,
ケースには第1の入力端子と第1の出力端子を備え,
前記第1の入力端子と第1の出力端子間には直列上に介設される入力フィルタと,受信周波数より低い中間周波信号に変換するダウンコンバータと,中間周波信号より高い周波数の出力信号を出力するアップコンバータと,出力フィルタとをそれぞれ備え,
前記入力フィルタはチューナブルバンドパスフィルタで構成され,
前記ダウンコンバータの局部発振周波数に対応して前記入力フィルタを通過する周波数帯域を決定するようにしたことを特徴とした信号処理装置。
【請求項2】
前記受信周波数と出力周波数が略同一であることを特徴とした請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
ケースには第2の入力端子と第2の出力端子を備え,
前記第2の入力端子と第2の出力端子間には一対の分配器および混合器を備え,
前記分配器の分配入力端子と前記第2の入力端子が接続され,
前記混合器の混合出力端子と前記第2の出力端子が接続され,
各分配出力端子と各混合入力端子間には前記請求項1または請求項2に記載の信号処理装置が介設されていることを特徴としたCATV用ヘッドエンド装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−13806(P2006−13806A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186874(P2004−186874)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】