説明

信号処理装置

【課題】ばらつきによる精度劣化や回路規模、消費電流を削減し、ループ遅延を小さくし、制御の安定性を向上させる。
【解決手段】A/D変換器102の前段のアナログ信号を基準電圧と比較する比較部104と、比較部104の出力をもとにアップダウンカウントをして調整信号を生成する計数部105と、計数部105の出力をアナログ制御信号に変換するD/A変換器105と、アナログ制御信号をもとに信号調整する調整部101からなる制御ループを構成する。比較部104の基準電圧にはA/D変換器102のリファレンス電圧を用いることで、電圧ばらつきを緩和させることができる。また、アナログ制御信号をクランプ制御の基準信号やA/D変換器の入力レンジに調整するゲイン制御信号として用いることも可能である。これにより、デジタル信号処理でのループ遅延を削減させるとともに、アナログ信号処理のばらつき耐性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラなど映像処理機器における調整装置に係るもので、詳しくは、映像・画像信号の黒レベル(クランプ)やゲインなどを自動調整し得るフィードバックループ制御を行う信号処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
映像処理機器において、クランプ調整、ゲイン調整は必須の技術であり、フィードバックによる自動制御が行われている。具体的にはクランプ調整はイメージセンサからの信号の黒レベル(オプティカルブラック:OB)のばらつきを抑制する。またゲイン調整は、最適に量子化できるように、A/D変換器の入力レンジに信号レベルを合わせる。
【0003】
一般的には、アナログ回路のみで構成されたフィードバックループによりそれぞれの調整を行うが、近年ではプロセス微細化の恩恵を受けやすいデジタル制御を用いた手法が考案されている。具体的には、A/D変換器出力のデジタルデータを用いてクランプ制御の基準値を生成する手法(特許文献1)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−78435号公報(第1頁、代表図面)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2は、ゲイン制御ループを有する一般的な信号処理装置の一例を示す図である。図2において、符号201はゲイン調整部を示す。符号202はA/D変換器を示す。符号203は全波整流部を示す。符号204は平滑化部を示す。符号205は基準電圧を示す。符号206は比較部を示す。符号207は容量を示す。符号AS2は調整対象のアナログ信号を示す。符号DS2はデジタル信号を示す。
【0006】
以下、簡単に動作を説明する。アナログ信号AS2はゲイン調整部201に入力され、後述する調整信号により振幅レベルが調整される。ゲイン調整部201の出力信号はA/D変換器202に入力されてデジタル信号DS2に変換されると同時に、全波整流部203にも入力される。全波整流部203では、ゲイン調整部201の出力が動作中心電圧のコモン電圧に対して折り返されて整流される。その後平滑化部204では、全波整流された信号を低次数ローパスフィルタで平滑化する。比較部206では平滑化された信号レベルと基準電圧205とを比較してゲイン調整部201に調整信号を出力する。容量207は調整信号を保持するために用いられる。
【0007】
ここで、容量207は一般的にチップ外部に装備されることが多く、コストが高くなるデメリットがある。また、基準電圧205においても調整の容易さから外部から与えられることが多い。
【0008】
ゲイン制御に用いられる基準電圧205とA/D変換器202で用いられる変換基準電圧にばらつきが生じると、所望の制御電圧レベルと実際のA/D変換器出力レベルが一致しなくなるためゲイン調整の精度が悪化する。また比較部206が出力する調整信号を保持する容量207は、保持電圧のばらつきを抑えるためにより大きな容量であることが望ましいが、時定数が大きくなるため応答速度が大幅に遅くなる。
【0009】
そのため、図2で示す構成で設計する場合、基準電圧のばらつきや容量値を考慮して回路設計する必要がある。
【0010】
また、特許文献1に代表されるようなA/D変換器の出力デジタル信号を用いたデジタルフィードバック制御においては、アナログ回路のようにばらつきをあまり気にすることなしに調整を実現でき、さらにプロセス微細化に伴う回路縮小(シュリンク)、消費電流低減などメリットは大きい。
【0011】
ただし、フィードバックループ全体のループ遅延は、A/D変換器の変換遅延やデジタル演算によるクロック遅延が生じるため大きくなる。ループ遅延の増大は制御の高速応答や制御システムの安定性に課題が出てくる。
【0012】
このように、アナログやデジタルを用いた信号処理では、フィードバック制御において、避けられない要因があり、これらを理解したうえでシステムに適した制御手法を用いる必要がある。
【0013】
したがって、本発明の目的は、外付け容量を省くことができてコストを下げることができ、しかも基準電圧のばらつきを吸収することができてばらつき耐性を向上させることできる信号処理装置を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、制御ループでのループ遅延を削減することができ、制御系の安定性を向上させることができる信号処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の信号処理装置は、フィードバックループを構成して信号レベルの調整を行う信号処理装置であって、アナログ調整対象信号とアナログ制御信号とを入力して、アナログ制御信号に応じてアナログ調整対象信号のレベルを調整してアナログ調整済信号を出力する調整部と、A/D変換用基準電圧を生成出力するとともにA/D変換用基準電圧をもとに比較用基準電圧を生成出力する基準電圧生成部と、アナログ調整済信号を入力として、A/D変換用基準電圧に基づきアナログ/デジタル変換してデジタル調整済信号を出力するA/D変換器と、アナログ調整済信号と比較用基準電圧とを入力として、アナログ調整済信号と比較用基準電圧との比較結果を出力する比較部と、比較結果を入力とし、比較結果に基づいて計数が行われ、計数値に対応したデジタル制御信号を出力する計数部と、デジタル制御信号を入力として、デジタル/アナログ変換してアナログ制御信号を調整部へ出力するD/A変換器とを備えている。
【0016】
この構成によれば、アナログ調整対象信号と比較用基準電圧とを比較し、その比較結果に応じて計数部の計数動作を制御することでデジタル制御信号を生成し、デジタル制御信号をアナログ制御信号に変換してアナログ制御信号として調整部に加えているため、従来例で必要であって外付けの容量が不要となり、コストを下げることができる。しかも、AD変換用基準電圧をもとに比較用基準電圧を生成しているため、A/D変換用基準電圧のばらつきに対して連動して比較用基準電圧が変化することになり、A/D変換用基準電圧のばらつきを吸収することができ、ばらつき耐性を向上させることができる。
【0017】
また、アナログ調整済信号をアナログの比較用基準電圧と比較し、その比較結果に応じて調整部を制御するので、制御ループにおいてA/D変換器の変換遅延やデジタル比較演算によるクロック遅延が生じなくなり、制御ループでのループ遅延を削減することができ、制御系の安定性を向上させることができる。
【0018】
上記構成の信号処理装置においては、調整部は、例えば相関二重サンプリング回路からなるクランプ調整部であり、アナログ制御信号は相関二重サンプリング回路の基準値レベルである。
【0019】
また、上記構成の信号処理装置においては、調整部は、自動ゲイン制御回路からなるゲイン調整部であり、アナログ制御信号はゲイン制御用の信号であってもよい。
【0020】
また、上記構成の信号処理装置においては、基準電圧生成部は、A/D変換用基準電圧として、上位側基準電圧と下位側基準電圧とを生成し、A/D変換用基準電圧を抵抗分圧することによって比較用基準電圧を生成することが好ましい。
【0021】
また、上記構成の信号処理装置においては、比較部は、例えば、比較結果に応じて計数部へカウントアップ信号およびカウントダウン信号を選択的に出力する。そして、計数部は、カウントアップ信号およびカウントダウン信号に応じてカウントアップ動作とカウントダウン動作の切り替えを行う。
【0022】
また、上記構成の信号処理装置においては、基準電圧生成部を制御する制御部を備え、制御部は、基準電圧生成部を制御することにより、比較用基準電圧の電圧レベルを変化させることが好ましい。
【0023】
また、上記構成の信号処理装置においては、計数部を制御する制御部を備え、制御部は、計数部を制御することにより、制御信号を生成するタイミングおよびゲインを可変することで感度調整をすることが好ましい。
【0024】
上記のように、制御部は、基準電圧生成部や計数部の制御期間や比較用基準電圧やデジタル制御出力のゲインなどを調整し、また、調整部は、D/A変換器の出力をもとにクランプ調整の基準値やゲイン調整を行ってアナログ信号を調整する。
【発明の効果】
【0025】
以上のような構成のフィードバック制御を構成した信号処理装置を用いれば、アナログ回路のみの制御ループで必要であった外付け容量が不要になり、かつアナログ制御信号は、アナログ調整済信号とA/D変換器のA/D変換用基準電圧から生成した比較用基準電圧とを比較してデジタル処理をして生成するため、A/D変換用基準電圧のばらつきに連動して比較用基準電圧が変化することになり、A/D変換用基準電圧のばらつきを吸収することができ、コスト削減とばらつき耐性向上が期待できる。
【0026】
また、A/D変換器出力を用いたデジタル回路の制御ループにおいて存在したループ遅延を削減することができ、系の安定性向上が期待できる。
【0027】
以上のように、フィードバックをアナログ信号入力にすることで、フィードバックループをコンパクトにして安定性を向上させ、デジタル信号処理によりばらつき耐性とコストメリットが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例1のアナログ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】一般的なゲイン制御ループを有するアナログ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1のアナログ信号処理装置における基準電圧生成部の構成例を示すブロック図である。
【図4】図1のアナログ信号処理装置における比較部の構成例とクロック位相(差動信号の場合)を示すブロック図である。
【図5】図1のアナログ信号処理装置における計数部の構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例1のアナログ信号処理装置における制御動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例1のアナログ信号処理装置における制御動作をタイミング図である。
【図8】本発明の実施例1のアナログ信号処理装置において、比較部の各部の電圧の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0030】
以下、本発明の実施例1の信号処理装置を、図面を参照しながら説明する。この信号処理装置は、フィードバックループを構成して映像信号などの信号レベルの調整(黒レベルクランプ、ゲイン調整など)を行うために設けられる。
【0031】
図1において、符号101は、アナログ調整対象信号AS1とアナログ制御信号(調整信号)CS1とを入力して、アナログ制御信号CS1をもとにして、撮像素子(図示せず)から出力される映像信号などのアナログ調整対象信号AS1に対してクランプ調整またはゲイン調整などの信号レベル調整を行い、アナログ調整済信号BS1を出力する調整部を示す。
【0032】
符号102は調整部101から出力されたアナログ調整済信号BS1をアナログ/デジタル変換してデジタル調整済信号DS1を出力するA/D変換器を示す。
【0033】
符号103はA/D変換器102のA/D変換用基準電圧の上位側基準電圧VRTと下位側基準電圧VRBを生成し、かつA/D変換用基準電圧をもとにして、つまりこれら上位側基準電圧VRTと下位側基準電圧VRBの間に現れる電圧を分圧して、別の基準電圧である比較用上位側基準電圧REFTおよび比較用下位側基準電圧REFBを生成する基準電圧生成部を示す。上記上位側基準電圧VRTと下位側基準電圧VRBにばらつきがあると、これに連動して比較用上位側基準電圧REFTおよび比較用下位側基準電圧REFBも変化することになる。
【0034】
符号104は調整部101から出力されるアナログ調整済信号BS1と基準電圧生成部103からの比較用上位側基準電圧REFTおよび比較用下位側基準電圧REFBとを比較する比較部を示す。この比較部104は、比較結果として、2つの信号(カウントアップ信号CUおよびカウントダウン信号CD)を出力する。
【0035】
符号105は比較部104の比較出力であるカウントアップ信号CUおよびカウントダウン信号CDをもとにアップカウント動作もしくはダウンカウント動作をし、計数値から制御極性を判断してデジタル制御出力信号Dを生成する計数部を示す。
【0036】
符号106はデジタル制御出力信号Dをアナログ変換してアナログ制御信号CS1を調整部101へ出力するD/A変換器を示す。
【0037】
符号107は制御信号ES1、タイミング信号TCTRLを生成して、後述する基準電圧生成部103や計数部105を制御する制御部を示す。後述しているように、ES1は図3においてスイッチ部群S31〜S3(n+1)をオン/オフする信号であり、TCTRLは図5において制御信号調整期間の間ハイレベルの状態が保持される信号であり、カウント部501のイネーブル信号として使用される。
【0038】
上記の比較部104、計数部105およびD/A変換器106は、調整部101から出力されたアナログ調整済信号BS1を入力してアナログ制御信号CS1を出力するアナログ信号処理部108を構成している。
【0039】
図3は図1における基準電圧生成部103の構成例を示すブロック図である。図3において、符号301sは制御部107からの制御信号ES1に応じてオン/オフするスイッチ部群を示す。符号S31〜S3(n+1)は各スイッチ部である。
【0040】
符号R31〜R3nは変換用上位側基準電圧VRTと変換用下位側基準電圧VRBの間に現れる電圧を分圧するための抵抗群であり、スイッチ部群301sを構成する複数のスイッチ部のなかで、オンしたスイッチ部に対応する分圧値が比較用上位側基準電圧REFTもしくは比較用下位側基準電圧REFBとなる。差動信号処理の場合、スイッチ部群301sは同時に異なる2つのスイッチをオンすることで比較用上位側基準電圧REFTと比較用下位側基準電圧REFBの両方を生成することもできる。ここで、比較用上位側基準電圧REFTと比較用下位側基準電圧REFBの両方を生成するのは、差動信号処理を前提にしているためである。また、比較部104へ与える比較用基準電圧を制御しているのは、A/D変換への入力レンジに対してどのくらいマージンを持たせた入力振幅にするかを任意に設定するためである。
【0041】
図4は本発明の比較部104の構成例と動作させるためのクロック位相の設定例とを示すブロック図である。図4は差動信号の場合を示している。
【0042】
図4において、記号VINPは正側入力信号を示す。記号VINNは負側入力信号を示す。記号SW41sは正側入力信号VINPと負側入力信号VINNと比較用上位側基準電圧REFTと比較用下位側基準電圧REFBとにそれぞれ接続されたスイッチ群を示す。符号CAP41とCAP42はスイッチ群SW41sと接続された容量を示す。符号401は差動プリアンプを示す。符号402はラッチトコンパレータを示す。符号SW42とSW43はプリアンプ401のフィードバックパスに接続されたスイッチを示す。符号403sはラッチトコンパレータ402の出力タイミングを調整するNANDゲート群を示す。符号CUは図1に示したものと同じカウントアップ信号を示す。符号CDは同じくカウントダウン信号を示す。符号CLK1およびCLK2は互いにハイレベル期間が重なることのないノンオーバーラッピング処理をされたクロックを示す。符号CLK1aとCLK2aはそれぞれクロックCKL1とCLK2の位相をずらしたクロックを示す。このように位相をずらせるのは、電荷移動を効率良く行うための公知の手法である。符号404はクロック生成回路を示す。このクロック生成回路404で公知の手法でノンオーバーラッピング処理も行われる。
【0043】
上部にバーの付いた記号CLK1aはクロックCLK1aの反転クロック(明細書では、/CLK1aと記す)を示す。各スイッチSW41s、SW42、SW43はCMOSスイッチの場合は、反対側にそれぞれの反転クロックが入力される。
【0044】
動作としては、クロックCLK1がハイレベルの時に正側入力信号VINPと負側入力信号VINNの信号電位によって容量CAP41および容量CAP42に電荷が蓄えられる。次にクロックCLK2がハイレベルになると、プリアンプ401を通して増幅された容量CAP41と容量CAP42に蓄えられた電荷が基準となって、それぞれ比較用下位側基準電圧REFBと比較用上位側基準電圧REFTが容量CAP41と容量CAP42に蓄えられるため、入力信号と基準電圧との差分がプリアンプ401から出力される。
【0045】
ラッチトコンパレータ402は、クロックCLK1aがハイレベルの時にプリアンプ401の差動出力の比較を行い、カウントアップ信号CUおよびカウントダウン信号CDをクロックCLK1aの反転クロック/CLK1aがハイレベルのタイミングで出力する。カウントアップ信号CUとカウントダウン信号CDは互いに反転の関係になる。
【0046】
比較部104において、差動信号処理を行う場合の、変換用上位側基準電圧VRTおよび変換用下位側基準電圧VRBと、比較用上位側基準電圧REFTおよび比較用下位側基準電圧REFBとの関係を図8に示す。図8には、正側入力信号VINPおよび負側入力信号VINNを合せて示しており、正側入力信号VINPおよび負側入力信号VINNと比較用上位側基準電圧REFTおよび比較用下位側基準電圧REFBとの比較結果に基づいて出力されるカウントアップ信号CUおよびカウントダウン信号CDを示している。
【0047】
図5は本発明の計数部105の構成例を示すブロック図である。図5において、符号501はカウントアップ信号CUとカウントダウン信号CDにより計数を実施して、アップカウントもしくはダウンカウントし、それによって計数値に対応したカウンタ出力信号Coを出力するカウント部を示す。
【0048】
符号502は制御の不感帯を設定する不感帯設定部を示す。不感帯設定部502からの出力信号である制御極性判定信号を符号Anで示す。この制御極性判定信号Anは不感帯設定部502で不感帯判定と制御極性判定された信号である。
【0049】
符号503は不感帯設定部502の出力信号Anを入力とし、粗調整、微調整、調整値確定の状態を設定する制御モード設定部を示す。
【0050】
符号504は不感帯設定部502の出力信号An(不感帯設定されたカウント部501の出力)に対して制御モード設定部503の制御モード信号STATEに応じたゲイン設定でデジタル制御出力信号Dnを出力するデジタル制御出力生成部を示す。このデジタル制御出力信号Dnは、D/A変換器101に入力される。
【0051】
符号TCTRLは制御信号調整期間の間ハイレベルの状態が保持される信号であり、カウント部501のイネーブル信号として使用される。
【0052】
本発明の実施例のアナログ信号処理装置における制御動作の一例を図6のフローチャートを用いて説明する。
【0053】
まず、図6において、記号Coはカウンタ出力信号、記号Aは制御極性判定信号、記号Dはデジタル制御出力信号をそれぞれ示す。簡単のために差動信号ではなく、シングル信号を用いて入力信号と基準電圧を比較させる。また、必要に応じて図1、図3、図4、図5のブロック番号を引用する。
【0054】
制御動作は、大きく5つの基本機能ブロックを組み合わせて行う。具体的には、符号601は入力信号と基準電圧を比較して、カウントアップ/ダウン信号を生成してカウントアップ/ダウン信号に応じて計数方向(アップカウント、ダウンカウント)を切り替えて計数動作を実施してカウント結果を出力する機能ブロックを示す。
【0055】
符号602は入力信号と基準電圧の誤差が小さい場合に制御信号が動かないように保持するための不感帯を設定する機能ブロックを示す。なお、入力信号と基準電圧の誤差の大小は、図6において、符号601のブロックの最初のひし形のボックスで検出している(VIN-REF>0?)。
【0056】
符号603は誤差が大きい場合に引き込みを早くさせるように制御感度を大きくさせ、誤差が小さくなると制御感度を小さくさせる判別をする機能ブロックを示す。
【0057】
符号604は誤差が1LSB以内となり制御信号を固定するか否かを判別する機能ブロックを示す。
【0058】
符号605は機能ブロック603と機能ブロック604で判別された制御モードに応じてデジタル制御信号のゲインを調整して出力する機能ブロックを示す。
【0059】
図6における基本的なフローは、601→602→603→605→601→602→604→605→601→602→605→終了、となる。動作フローのスタート時(初期状態)は、STATE=0であり、終了時にはSTATE=2となる。
【0060】
以下、順を追って説明する。制御動作が開始すると、調整部101からのアナログ入力信号(図6ではVIN)と基準電圧生成部103の基準電圧(図6ではREF)とを比較して、アナログ入力信号VINが基準電圧REFよりも大きい場合(Yes)はカウントダウン信号CDを出力し、小さい場合(No)は、カウントアップ信号CUを出力する。カウンタ出力信号Coはこれらカウントアップ/ダウン信号CU/CDに応じて計数(±1)して出力する。この機能ブロック601の機能は制御部107からの制御信号生成期間を示すTCTRLがハイレベルであれば繰り返し行われ、ハイレベルからローレベルへ変化した時にカウンタ出力信号Coを確定して次のフローへ移る。
【0061】
機能ブロック602では、不感帯を設けることによって、ある任意の誤差以内の場合はデジタル制御出力信号Dを変化させないようにさせる。図6の例では、±1以内の誤差の場合はD/A変換器出力のデジタル制御信号Dを変化させない設定になっている。±1以内の誤差は符号602のブロック内のAn=Co±1で実現している。つまりCoが±1である場合、符号602のブロックのフロー出力は全てゼロ(1ステップ前の制御信号を保持)となる。この±1が不感帯幅となります。例えば、An=Co±2とすれば、±2のカウンタ出力は全てゼロとなり、±2以内が不感帯幅となる。
【0062】
次に、制御モード信号STATEの値に応じてそれぞれ制御フローが異なる。図6の設定では、STATE=0の時は引き込みモード、STATE=1の時は微調整モード、STATE=2の時は制御信号確定と判断して固定モードとしている。各モードの切り替えは機能ブロック603および機能ブロック604の条件式にあるように、デジタル制御出力信号Dの制御極性が反転(D=Dn−2)した時に制御モード信号STATEが現在のSTATE値よりも1だけ大きくなり、反転しない場合はSTATE値をそのまま保持されることにより、次の制御モードに遷移するかしないかを判断する。
【0063】
最後は、機能ブロック605で、デジタル制御出力信号Dnを生成するフローとなる。初期値はD/A変換器106の中間値である。中間値から制御がスタートして期待値になるまでデジタル制御出力信号Dを変化させる。制御極性判定信号Aによってデジタル制御出力信号Dnを生成するが、A=0の時のみデジタル制御出力信号Dnは保持され、それ以外の条件ではデジタル制御出力信号Dnは前回のデジタル制御出力信号(Dn−1)に任意の値を加減算して出力する。図6の例では、引き込みモード(STATE=0)時はGとしており任意設定値である。これはレジスタを用いることにより可変させることも可能である。微調整モード(STATE=1)時は1としている。これはDACの構成ビットの1LSBに相当する。固定モード(STATE=2)時はデジタル制御出力信号Dnの値を固定して出力する。基本的にはSTATE=2になった時点で制御は完了したものとみなせる。
【0064】
図7に具体的に制御動作例を示すタイミング図を示す。横軸は時間であり、制御開始から終了までを表している。表示する信号は上からカウントアップ信号CU、カウントダウン信号CD、制御信号生成期間の状態信号TCTRL、デジタル制御出力信号Dである。デジタル制御出力信号Dの初期値はD/A変換器の中間値(2n−1)としている。一点鎖線はデジタル制御出力信号Dの期待値を示している。
【0065】
制御信号生成期間の状態信号TCTRLがハイレベルの間のみ、カウントアップ/ダウン信号CU/CDを取り込み、図6にあるフローに沿ってデジタル制御出力信号Dを変化させる。制御スタート時は、期待値よりも大きな制御信号であるため、カウントダウン信号DUのみが出力される。引き込みモード(STATE=0)であるため、デジタル制御出力信号Dの変化ステップ幅は大きく設定している。図7では2回下側に変化させた時点で期待値をクロスするため、3回目のTCTRL期間ではカウントアップ信号CUのみが出力される。こうしてD=Dn−2の条件が満たされるため、微調整モード(STATE=1)に移行する。同じようにカウントダウン信号CDが出力されるため、下側に1LSBだけ変化する。微調整モードでも2回下側に変化させた時点で期待値をクロスするため、固定モード(STATE=2)に移行して制御終了となる。外乱の影響を受けやすいアナログ信号の比較であるため、コンパレータの精度や外乱の程度によっては、期待値に近づいた場合に図7にあるようにカウントアップ/ダウン信号CU/CDがどちら側にも生じてしまうが、実際には信号TCTRL期間の多数決で制御極性を決定させるため、安定した制御信号を生成することができる。
【実施例2】
【0066】
図5における計数部105の構成例において、不感帯設定部502は必要に応じて動作を制限させることも可能であり、もしくは構成から外しても構わない。
【実施例3】
【0067】
図5における計数部105の構成例において、制御モード設定部503は必要に応じて動作を制限させることも可能であり、もしくは制御モードを複数段階用意しても構わない。
【実施例4】
【0068】
具体的な図示はしないが、引き込みモード(STATE=0)から微調整モード(STATE=1)に制御モードを切り替える際、図7においてデジタル制御出力信号Dが期待値に対して任意の誤差以内になった時に切り替えを実行するようにしても構わない。
【実施例5】
【0069】
具体的な図示はしないが、デジタル制御出力信号Dにおいて、制御極性はカウントアップ信号CUとカウントダウン信号CDとの多数決で決めて、変化ステップ幅は固定値で実行するようにしているが、計数値を加減算した値をもとにデジタル制御出力信号Dの変化ステップ幅を設定するようにしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明にかかる信号処理装置は、アナログ信号処理とデジタル信号処理のそれぞれのフィードバックループ制御の長所を組み合わせて構成されるため、プロセス微細化などによるばらつき耐性やループ遅延によるシステムのロバスト性の高いフィードバックループ制御を提供することができる。また、比較する基準値をA/D変換器の変換基準値から生成するため、基準値のばらつきにも強く安定したA/D変換器の出力を得ることができる。
【符号の説明】
【0071】
101 調整部
102 A/D変換器
103 基準電圧生成部
104 比較部
105 計数部
106 D/A変換器
107 制御部
301s スイッチ部群
401 プリアンプ
402 ラッチトコンパレータ
501 カウント部
502 不感帯設定部
503 制御モード設定部
504 デジタル制御出力生成部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードバックループを構成して信号レベルの調整を行う信号処理装置であって、
アナログ調整対象信号とアナログ制御信号とを入力して、前記アナログ制御信号に応じて前記アナログ調整対象信号のレベルを調整してアナログ調整済信号を出力する調整部と、
A/D変換用基準電圧を生成出力するとともに前記A/D変換用基準電圧をもとに比較用基準電圧を生成出力する基準電圧生成部と、
前記アナログ調整済信号を入力として、前記A/D変換用基準電圧に基づきアナログ/デジタル変換してデジタル調整済信号を出力するA/D変換器と、
前記アナログ調整済信号と前記比較用基準電圧とを入力として、前記アナログ調整済信号と前記比較用基準電圧との比較結果を出力する比較部と、
前記比較結果を入力とし、前記比較結果に基づいて計数が行われ、計数値に対応したデジタル制御信号を出力する計数部と、
前記デジタル制御信号を入力として、デジタル/アナログ変換して前記アナログ制御信号を前記調整部へ出力するD/A変換器とを備えた信号処理装置。
【請求項2】
前記調整部は、相関二重サンプリング回路からなるクランプ調整部であり、前記アナログ制御信号は前記相関二重サンプリング回路の基準値レベルである請求項1記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記調整部は、自動ゲイン制御回路からなるゲイン調整部であり、前記アナログ制御信号はゲイン制御用の信号である請求項1記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記基準電圧生成部は、前記A/D変換用基準電圧として、上位側基準電圧と下位側基準電圧とを生成し、前記A/D変換用基準電圧を抵抗分圧することによって前記比較用基準電圧を生成している請求項1記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記比較部は、前記比較結果に応じて前記計数部へカウントアップ信号およびカウントダウン信号を選択的に出力する請求項1記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記計数部は、前記カウントアップ信号および前記カウントダウン信号に応じてカウントアップ動作とカウントダウン動作の切り替えを行う請求項5記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記基準電圧生成部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記基準電圧生成部を制御することにより、前記比較用基準電圧の電圧レベルを変化させる請求項1記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記計数部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、制御信号を生成するタイミングおよびゲインを可変することで感度調整をする請求項1記載の信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−245852(P2010−245852A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92544(P2009−92544)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】