説明

信号処理装置

【課題】見かけ上のダイナミックレンジの広い、良好な映像信号を得ることができる信号処理装置を提供する。
【解決手段】標準輝度露光時間によって得られた標準輝度映像信号と、標準輝度露光時間より短い高輝度露光時間によって得られた高輝度映像信号とを、合成割合に従って合成する信号処理装置であって、高輝度映像信号の最大値が、高輝度映像信号の設定されたダイナミックレンジと一致するように高輝度露光時間を設定する露光時間設定部を備えた信号処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見かけ上のダイナミックレンジの広い、良好な映像信号を得ることができる信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、監視カメラ等に代表される映像信号の処理を行なう信号処理装置では、標準的な明るさの領域と極めて明るい領域とが混在した被写体を撮像する場合に、標準輝度領域が適正レベルで得られる標準露光時間で撮像を行なうと、明るい領域で白飛びが生じ、高輝度領域が適正レベルで得られる短時間の高輝度露光時間で撮像を行なうと、暗い領域で黒つぶれが生じて、良好な映像信号を得ることができなかった。
【0003】
そこで、輝度差の大きな被写体を撮像する場合に、標準露光時間によって標準的な明るさの領域が適正レベルで得られた標準輝度信号と、高輝度露光時間によって極めて明るい領域が適正レベルで得られた高輝度信号とを合成することで、白飛びや黒つぶれのない見かけ上のダイナミックレンジが広がった映像信号を得ることができる信号処理装置が開発されている。
【0004】
例えば、図15(a)に示すように、被写体からの標準的な光量領域の標準輝度領域から得られる信号を標準輝度信号とし、高い光量領域の高輝度領域から得られる信号を高輝度信号とした場合に、図15(b)に示すように、所定の合成割合に従って標準輝度信号、高輝度信号を圧縮して加算することで、図15(c)に示すように、出力信号の最大値である100%以内に収めた映像信号を得ることができる。ここで、標準輝度信号の合成割合をTH(%)とすると、高輝度信号の合成割合は100−TH(%)となる。また、標準輝度信号と高輝度信号とが重複する領域については、加算せずに、標準輝度信号の値を用いることも行なわれている。
【0005】
ところで、輝度差の大きな被写体を撮像する場合、高輝度信号の最大値は、被写体の最高輝度部に依存するため、不定である。どのような被写体に対しても白飛びが生じないような短露光時間を採用すると、ほとんどの映像信号について、合成後の出力レベルが最大値の100%に達せず、十分な階調が得られないという問題が生じる。
【0006】
この問題を解決するため、特許文献1には、高輝度信号の最高輝度値(ピーク値)を検出し、合成後の映像信号の出力レベルが100%になるように合成割合を調整することが記載されている。
【0007】
また、この他の手法として、図16(a)に示すような最大出力レベルが100%に満たない高輝度信号を、図16(b)に示すように出力レベル100%に増幅してから合成割合に応じて圧縮し、合成することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−94870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、高輝度信号を増幅して合成する手法では、高輝度信号に含まれるノイズ成分も増幅されてしまい、合成後の映像信号のS/N比が劣化するおそれがある。
【0010】
また、特許文献1に記載された手法は、どのような被写体に対しても白飛びが生じないような短露光時間を前提としているため、合成前の高輝度信号が、最大出力レベルが100%に満たない場合が多い。したがって、高輝度領域において本来撮像素子が有しているダイナミックレンジを生かし切れないまま合成を行なうこともあり、高輝度部分における階調表現が十分でない映像信号が生成されることがある。例えば、256階調を有する撮像素子において、高輝度信号の合成割合が50%であれば、本来であれば高輝度領域で最大128階調表現できるところ、高輝度信号の最大レベルが50%の場合には、64階調しか表現できないことになる。
【0011】
そこで、本発明は、見かけ上のダイナミックレンジの広い、良好な映像信号を得ることができる信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である信号処理装置は、第1露光時間によって得られた標準輝度映像信号と、第1露光時間より短い第2露光時間によって得られた高輝度映像信号とを、合成割合に従って合成する信号処理装置であって、前記高輝度映像信号の最大値が、前記高輝度映像信号の設定されたダイナミックレンジと一致するように前記第2露光時間を設定する露光時間設定部を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の態様では、標準輝度映像信号と高輝度映像信号とを合成することにより、見かけ上のダイナミックレンジの広い映像信号を得ることができる。このとき、高輝度映像信号の最大値が、高輝度映像信号の設定されたダイナミックレンジと一致するように第2露光時間を設定するため、高輝度部分の階調が十分表現でき、また、ノイズが増幅されることもないため、良好な映像信号を得ることができる。
【0014】
ここで、高輝度映像信号の最大値は、信号値の最大値を意味し、高輝度映像信号の設定されたダイナミックレンジは、高輝度映像信号が取り得るダイナミックレンジにおいて設定された値を意味し、例えば、高輝度映像信号が取り得るダイナミックレンジの最大値とすることができる。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である信号処理装置は、第1露光時間によって得られた標準輝度映像信号と、第1露光時間より短い第2露光時間によって得られた高輝度映像信号とを、合成割合に従って合成する信号処理装置であって、前記高輝度映像信号の最大値が、前記高輝度映像信号の設定されたダイナミックレンジに近づくように前記第2露光時間を調整して設定する露光時間設定部を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の態様では、標準輝度映像信号と高輝度映像信号とを合成することにより、見かけ上のダイナミックレンジの広い映像信号を得ることができる。このとき、高輝度映像信号の最大値が、高輝度映像信号の設定されたダイナミックレンジに近づくように第2露光時間を調整して設定するため、高輝度部分の階調が十分表現でき、また、ノイズが増幅されることもないため、良好な映像信号を得ることができる。本態様は、第2露光時間が離散的に設定される場合に効果的に適用することができる。
【0017】
いずれの態様においても、設定された前記第2露光時間が短いほど、前記高輝度映像信号の合成割合を大きく設定する合成割合設定部をさらに備えることができる。
【0018】
第2露光時間が短いほど、高輝度映像信号でカバーする範囲が広くなる。このため、高輝度映像信号の合成割合を高くすることで、より高輝度映像信号の階調を忠実に再現できるようになる。逆に、第2露光時間が長いほど、高輝度映像信号でカバーする範囲が狭くなるため、高輝度映像信号の合成割合を低くしても合成映像への影響は少ないことになり、標準輝度映像信号の階調表現を重視する方が望ましいと考えられるからである。
【0019】
また、前記標準輝度映像信号から標準輝度エンハンス信号を生成して、前記標準輝度映像信号に加算する標準輝度信号エンハンス処理部と前記高輝度映像信号から高輝度エンハンス信号を生成して、前記高輝度映像信号に加算する高輝度信号エンハンス処理部とをさらに備え、前記標準輝度信号エンハンス処理部は、前記標準輝度映像信号の合成割合が小さいほど前記標準輝度エンハンス信号を大きく生成し、前記高輝度信号エンハンス処理部は、前記高度映像信号の合成割合が小さいほど前記高輝度エンハンス信号を大きく生成するようにしてもよい。
【0020】
輪郭補正を行なうためのエンハンス信号が合成割合と逆相関で強調された標準輝度映像信号および高輝度映像信号を、合成割合に従って合成することで、エンハンス信号が保持され、解像感が保たれた良好な映像信号を得ることができるようになる。
【0021】
さらに、前記露光時間設定部は、設定する前記第2露光時間に下限を設けることができる。これにより、被写体輝度分布が非常に広い場合に、映像が不自然になってしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、見かけ上のダイナミックレンジの広い、良好な映像信号を得ることができる信号処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態である撮像装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】標準輝度信号と高輝度信号について説明する図である。
【図3】エンハンス処理について説明する図である。
【図4】高輝度露光時間設定部が行なう高輝度露光時間の設定方法について説明する図である。
【図5】第1実施形態における高輝度露光時間設定部が行なう高輝度露光時間の設定手順を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態による合成結果を示す図である。
【図7】合成割合設定部が行なう合成割合THの設定について説明する図である。
【図8】高輝度露光時間と合成割合の設定例を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態である撮像装置の機能構成を示すブロック図である。
【図10】第1実施形態におけるエンハンス処理の詳細について説明する図である。
【図11】第2実施形態におけるエンハンス処理の詳細について説明する図である。
【図12】第3実施形態が効果的に適用される被写体輝度分布例を示す図である。
【図13】モードと高輝度露光時間下限値の設定例を示す図である。
【図14】第3実施形態における高輝度露光時間設定部が行なう高輝度露光時間の設定手順を示すフローチャートである。
【図15】従来の標準輝度信号と高輝度信号を合成する手法を説明する図である。
【図16】従来の標準輝度信号と高輝度信号を合成する手法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、本発明の第1実施形態である撮像装置の機能構成について図1のブロック図を参照して説明する。本図に示すように撮像装置10は、レンズ・絞り等を含む光学系110、CCD等の撮像素子120、アナログ/ディジタル変換等を行なうアナログフロントエンド(AFE)130、信号スイッチ(SW)140、露出制御部150、標準輝度信号画像処理部160、高輝度信号画像処理部170、合成割合設定部180、画像合成処理部190、映像出力部200、ユーザから各種設定を受け付ける設定受付部210を備えている。
【0025】
露出制御部150、標準輝度信号画像処理部160、高輝度信号画像処理部170、合成割合設定部180、画像合成処理部190等は、信号処理装置として機能することができ、例えば、マイクロコンピュータ等の演算処理装置を用いて実現することができる。
【0026】
撮像装置10は、輝度差の大きな被写体を撮像する場合に、図2に示すように、1フィールドの期間を標準輝度露光時間と、露光時間の短い高輝度露光時間とに区分し、標準露光時間によって標準的な明るさの領域が適正レベルで得られた標準輝度信号と、高輝度露光時間によって極めて明るい領域が適正レベルで得られた高輝度信号とを合成することで、白飛びや黒つぶれのない見かけ上のダイナミックレンジが広がった映像信号を得るようにしている。このとき、高輝度信号の最高輝度値が、設定されたダイナミックレンジである100%の出力レベルとなるように高輝度露光時間を調整することにより、階調表現に優れた良好な映像信号を得るようにしている。
【0027】
本実施形態において、撮像素子120の露光時間(シャッタ速度)は、電子シャッタ方式により任意の値を設定できるようになっている。ただし、露光時間が離散的に設定される方式であってもよい。光学系110を通過した被写体からの光は、撮像素子120でアナログ電気信号に変換され、AFE130で標準輝度信号と高輝度信号とを含んだディジタル映像信号に変換される。
【0028】
標準輝度信号と高輝度信号とを含んだディジタル映像信号は、SW140において標準輝度信号と高輝度信号とに分離され、標準輝度信号は標準輝度信号画像処理部160に入力され、高輝度信号は高輝度信号画像処理部170に入力される。また、標準輝度信号および高輝度信号は、露出を設定するための露出設定用信号として露出制御部150に入力される。
【0029】
標準輝度信号画像処理部160は、標準輝度信号に対してフィルタ処理、ガンマ処理、ホワイトバランス調整、ゲイン調整等の画像処理を行ない、高輝度信号画像処理部170は、高輝度信号に対してフィルタ処理、ガンマ処理、ホワイトバランス調整、ゲイン調整等の画像処理を行なう。
【0030】
また、標準輝度信号画像処理部160および高輝度信号画像処理部170は、それぞれ、標準輝度信号に対してエンハンス処理を行なうLエンハンス処理部161、高輝度信号に対してエンハンス処理を行なうSエンハンス処理部171を備えている。ここで、エンハンス処理は、画像の輪郭を強調補正するための処理で、画像全体の解像感を向上させるための処理である。
【0031】
エンハンス処理は、例えば、図3に示す手順で行なうことができる。すなわち、図3(a)に示す元映像信号S0に対して、図3(b)に示すようなt遅延信号Stと、図3(c)に示すような2t遅延信号S2tを生成する。ここで、図3(a)に示す元映像信号S0の立ち上がり部分と、立ち下がり部分は、それぞれ画像のエッジ部分に相当する。そして、図3(d)に示すように、(S0+S2t)/2を算出し、t遅延信号Stから引くことにより、図3(e)に示すようなエンハンス信号が得られる。この信号を元映像信号S0に加えることで、図3(f)に示すようなエッジが強調された映像信号を得ることができる。ただし、エンハンス処理は、上述の手順に限られず、ハイパスフィルタその他の手法を用いて行なうようにしてもよい。
【0032】
図1の説明に戻って、画像処理を施された標準輝度信号と高輝度信号とは合成割合設定部180によって設定された合成割合に従って画像合成処理部190で圧縮・加算され、見かけ上のダイナミックレンジが広がった映像信号となる。ここで、標準輝度信号の合成割合をTHとし、高輝度信号の合成割合を100−THとすると、標準輝度信号は、信号レベルがTH%に圧縮され、高輝度信号は、信号レベルが(100−TH)%に圧縮された後、加算される。画像合成処理部190で合成された映像信号は、映像出力部200によりエンコードされ外部に出力される。
【0033】
露出制御部150は、露出設定信号に基づいて露出の設定を行なう。このため、露出制御部150は、露光時間を設定する露光時間設定部151と、光学系110の絞り値を設定する絞り設定部153とを備えている。
【0034】
露出制御部150は、例えば、露出設定信号によって得られる画像の輝度分布に基づいて露出を設定することができ、標準的な明るさの領域が適正レベルで得られる露出値を算出する。そして、算出された露出値に基づいて、絞り設定部153が、標準的な明るさの領域が適正レベルで得られるための絞り値を設定し、露光時間設定部151が、標準的な明るさの領域が適正レベルで得られるための標準輝度露光時間を設定する。
【0035】
本実施形態において、露出制御部150は、高輝度露光時間を設定する高輝度露光時間設定部152を備えている。すなわち、本実施形態では、良好な映像信号を得るために高輝度露光時間を被写体の最高輝度に応じて変化させるようにする。なお、制御を複雑化させないため高輝度露光時間において絞り値は変化させないものとする。
【0036】
図4は、高輝度露光時間設定部152が行なう高輝度露光時間の設定方法について説明する図である。図4(a)に示すように被写体の輝度がL0からHaに分布している場合、標準的な輝度部分については標準輝度信号領域がカバーする。そして、標準輝度信号領域がカバーしきれない高輝度部分については、高輝度信号領域がカバーする。このとき、高輝度露光時間設定部152は、被写体の最高輝度部分について、高輝度信号の出力レベルが100%となるように高輝度露光時間:Aを設定する。
【0037】
設定可能な高輝度露光時間が離散的で高輝度信号の出力レベルが100%となる高輝度露光時間が設定できない場合には、出力レベルが100%を超えない範囲で最も100%に近くなる高輝度露光時間を設定するものとする。詳細については後述する。
【0038】
なお、被写体の最高輝度部分の取得は、画像処理後の画像合成処理部190への入力信号から取得するようにしてもよい。また、1フィールド内の最高輝度値を使用すると、ノイズ等の影響を受ける場合があるため、1フィールドを複数のエリアに分割し、各エリアの平均輝度値に基づいて再高輝度部分を取得するようにしてもよい。
【0039】
図5は、高輝度露光時間設定部152が行なう高輝度露光時間の設定手順を示すフローチャートである。すなわち、露出設定信号により被写体の輝度データを取得し(S101)、最高輝度部分の高輝度信号の出力レベルが100%になるまで(S102:Yes)、高輝度露光時間の調整を繰り返す(S103)。高輝度露光時間の設定は、フレーム毎に行なうようにしてもよいし、数フレーム毎に行なうようにしてもよい。
【0040】
このような処理を行なうため、図4(b)に示すように、被写体輝度分布がL0からHbであって、図4(a)に示した輝度分布より広い場合に設定される高輝度露光時間:Bは、高輝度露光時間:Aよりも短い値となる。一方、図4(c)に示すように、被写体輝度分布がL0からHcであって、図4(a)に示した輝度分布より狭い場合に設定される高輝度露光時間:Cは、高輝度露光時間:Aよりも長い値となる。
【0041】
このように高輝度露光時間を設定することにより、高輝度信号において白飛びを防ぐとともに、十分な階調を得ることができるようになる。すなわち、図6(a)に示すように、高輝度信号の最大出力レベルが100%となるため、図6(b)に示すように、合成割合に従って圧縮を施した後、加算して得られる映像は、図6(c)に示すように、合成後の最大出力レベルも100%となり、見かけ上のダイナミックレンジの広い映像信号を得ることができる。このとき、高輝度信号の最大出力レベルが100%であるから、高輝度部分の階調も十分であり、また、ノイズが増幅されることもないため、良好な映像信号となっている。さらに、演算処理が簡単であるため、演算処理装置の負荷も軽減することができる。
【0042】
次に、合成割合設定部180が行なう合成割合THの設定について説明する。合成割合は、固定値としたり、設定受付部210を介して受け付けたユーザからの指示に基づいて定めるようにしてもよいが、本実施形態では、設定された高輝度露光時間と連動して定めるものとする。
【0043】
例えば、図7(a)〜図7(c)は、被写体輝度分布に応じた高輝度露光時間の設定例を示しており、被写体輝度分布の広い図7(a)が最も高輝度露光時間が短く、被写体輝度分布の狭い図7(c)が最も高輝度露光時間が長くなっている。
【0044】
本図から分かるように、高輝度露光時間が短いほど、高輝度信号領域がカバーする範囲が広くなっている。このため、高輝度信号の合成割合(100−TH)を大きくすることで、より高輝度信号の階調を忠実に再現できるようになる。逆に、高輝度露光時間が長い場合には、高輝度信号領域がカバーする範囲が狭くなるため、高輝度信号の合成割合を小さくしても合成映像への影響は少ないことになり、標準輝度領域の階調表現を重視する方が望ましいと考えられる。
【0045】
したがって、本実施形態では、合成割合設定部180は、高輝度露光時間が短いほど高輝度信号の合成割合が高くなるように合成割合THを設定するものとする。図8は、高輝度露光時間と合成割合THの設定例を示した図である。
【0046】
本図の例では、高輝度露光時間が1/120の比較的長い場合には、低輝度信号で被写体の輝度分布をカバーできると想定されるため、高輝度信号の合成割合(100−TH)を0%としている。一方、高輝度露光時間が1/120000と極めて短い場合には、高輝度部分の階調表現が重要であると想定されるため、高輝度信号の合成割合(100−TH)を50%としている。
【0047】
以上、本発明の第1実施形態について説明した。次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9は、本発明の第2実施形態である撮像装置の機能構成について説明するブロック図である。第1実施形態と同じ機能部については、同じ符号を付し、説明を簡略化する。
【0048】
本図に示すように、第2実施形態の撮像装置10aは、第1実施形態の撮像装置10が備える標準輝度信号画像処理部160、高輝度信号画像処理部170、合成割合設定部180に代えて、Lエンハンス処理部161aを含む標準輝度信号画像処理部160a、Sエンハンス処理部171aを含む高輝度信号画像処理部170a、合成割合設定部180aを備えている点において、第1実施形態と相違する。
【0049】
合成割合設定部180aは、設定した合成割合(TH)を、標準輝度ゲインGainLとしてLエンハンス処理部161aに出力し、設定した合成割合(100−TH)を高輝度ゲインGainSとしてSエンハンス処理部171aに出力する以外は、第1実施形態の合成割合設定部180と同様の処理を行なう。
【0050】
すなわち、第2実施形態の撮像装置10aの処理は、Lエンハンス処理部161aおよびSエンハンス処理部171aが、合成割合設定部180aが設定した合成割合に基づいてエンハンス処理を行なう以外は第1実施形態の処理と同様である。
【0051】
まず、第1実施形態における通常のエンハンス処理の詳細について図10を参照して説明する。本図に示すように、Lエンハンス処理部161は、図3に示したエンハンス処理手順、あるいは、フィルタ処理等によって、図10(a)に示す標準輝度信号からエッジを抽出し、標準輝度エンハンス信号を生成して、標準輝度信号に加算する。また、Sエンハンス処理部171は、図10(b)に示す高輝度信号からエッジを抽出し、高輝度エンハンス信号を生成して、高輝度信号に加算する。
【0052】
画像合成処理部190では、エンハンス信号が加算された標準輝度信号および高輝度信号を、合成割合THおよび(100−TH)に従って圧縮を行なうため、圧縮後の標準輝度信号および高輝度信号では、図10(c)(d)に示すように、エンハンス信号も圧縮されてしまうことになる。この結果、合成後の映像信号は、図10(e)に示すように、エンハンス信号の効果が弱まった映像信号となり、解像感が失われる場合が生じる。
【0053】
そこで、第2実施形態では、図11に示すようなエンハンス処理を行なうものとする。すなわち、Lエンハンス処理部161aでは、標準輝度信号からエッジを抽出して得られた標準輝度エンハンス信号に対して、A/GainLを乗じてエンハンス信号を強調してから標準輝度信号に加算する。この結果、図11(a)に示すようにエッジ部分がさらに強調された標準輝度信号が得られる。ここで、GainLは、合成割合TH%と等しい1以下の値である。このため、合成割合THが小さく、圧縮率が高いほど、エンハンス信号が強調される。また、Aは強調係数であり、通常1とするが、撮像目的や設定等に応じて変化させるようにしてもよい。
【0054】
Sエンハンス処理部171aにおいても、高輝度信号からエッジを抽出して得られた高輝度エンハンス信号に対して、B/GainSを乗じてエンハンス信号を強調してから高輝度信号に加算する。この結果、図11(b)に示すようにエッジ部分がさらに強調された高輝度信号が得られる。ここで、GainSは、合成割合(100−TH)%と等しい1以下の値である。このため、合成割合(100−TH)が小さく、圧縮率が高いほど、エンハンス信号が強調される。また、Bは強調係数であり、通常1とするが、撮像目的や設定等に応じて変化させるようにしてもよい。
【0055】
第2実施形態では、エンハンス信号が合成割合と逆相関で強調された標準輝度信号および高輝度信号を、合成割合THおよび(100−TH)に従って圧縮を行なって加算するため、第1実施形態の効果に加え、図11(c)に示すように、エンハンス信号が保持され、解像感が保たれた良好な映像信号を得ることができるようになる。
【0056】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の撮像装置は、第1実施形態あるいは第2実施形態と同様の構成とすることができる。第3実施形態は、図12に示すように、被写体輝度分布が非常に広い輝度差の極めて大きな被写体を撮像する場合に効果的に適用することができる。
【0057】
被写体輝度分布が非常に広い場合に、第1実施形態あるいは第2実施形態に従って、再高輝度部分の出力レベルが100%となるように高輝度露光時間を定めると、本図に示すように、高輝度露光時間が短くなりすぎて、標準輝度信号領域でも高輝度信号領域でもカバーできない領域αが生じる場合がある。このような場合、合成後の映像が不自然な映像となる。
【0058】
第3実施形態では、この現象を回避するために、必要に応じて高輝度露光時間に下限を設けるようにする。高輝度露光時間の下限、すなわち、シャッタ速度の上限は、例えば、あらかじめ用意したモードに応じて設定することができる。
【0059】
図13は、モードと高輝度露光時間下限値の設定例を示す図である。本図の例では、標準輝度領域を重視するモード−3から高輝度領域を重視するモード3までの7段階を用意し、高輝度領域を重視するにつれて、徐々に高輝度露光時間の下限値が小さくなっていくように設定している。これらのモードは、ユーザが任意に設定したり、撮像目的等に応じて適切に設定することができる。もちろん、高輝度露光時間に下限を設けない設定も選べるようにしておくことが望ましい。
【0060】
高輝度露光時間下限値を設けることで、高輝度領域において白飛びが生じる場合があるが、全体の階調は保たれるため、被写体輝度分布が非常に広い場合にも不自然さを回避した良好な映像を得ることができるようになる。また、高輝度露光時間下限値を設けた場合でも、高輝度信号の最大出力レベルは100%となるため、見かけ上の広いダイナミックレンジは本実施形態でも実現することになる。
【0061】
図14は、第3実施形態における高輝度露光時間設定部152が行なう高輝度露光時間の設定手順を示すフローチャートである。すなわち、露出設定信号により被写体の輝度データを取得し(S201)、上述の実施形態と同様に、最高輝度部分の高輝度信号の出力レベルが100%になるまで(S202:Yes)、高輝度露光時間の調整を繰り返すようにするが(S204)、途中で高輝度露光時間が下限に達した場合には(S203:Yes)、高輝度露光時間の調整を終了するようにする。
【0062】
このような制御を行なうことにより、第3実施形態においても、見かけ上のダイナミックレンジの広い、良好な映像信号を得ることができる。特に、第3実施形態では、被写体輝度分布が非常に広い場合に、映像が不自然になってしまうことを防ぐことができる。
【0063】
上記の第1〜3実施形態は、高輝度露光時間を連続的に設定できる場合を想定して説明したが、ここで、設定可能な高輝度露光時間が離散的な場合の処理について説明する。
【0064】
上述のように、設定可能な高輝度露光時間が離散的で高輝度信号の出力レベルが100%となる高輝度露光時間が設定できない場合には、最大出力レベルが100%を超えない範囲で最も100%に近くなる高輝度露光時間を設定するものとする。これは、白飛びが生じて情報が失われるのを防ぐためである。さらに、このときの高輝度信号の最大出力レベルをXとする。
【0065】
例えば、高輝度露光時間として、離散的に露光時間Aと露光時間Bとが設定可能な場合に、露光時間Aとした場合の最大出力レベルが70%であり、露光時間Bとした場合の最大出力レベルが60%のときは、100%を超えない範囲でより100%に近い露光時間Aを設定する。このとき、X=70%となる。
【0066】
また、露光時間Aとした場合の最大出力レベルが110%であり、露光時間Bとした場合の最大出力レベルが60%のときは、100%を超えない範囲でより100%に近い露光時間Bを設定する。このとき、X=60%となる。
【0067】
このようにして高輝度露光時間を設定して撮像すると、最大出力レベルがXの高輝度信号が得られる。このため、合成割合(100−TH)%で圧縮を施した後、標準輝度信号と加算して得られる合成後の映像は、最大出力レベルが100%に満たないことになる。
【0068】
そこで、画像合成処理部190は、最大出力レベルがXの高輝度信号をX%で割ることで、高輝度信号の最大出力レベルを100%にしてから、合成割合(100−TH)%で圧縮を施した後、標準輝度信号と加算する。これにより、得られる合成後の映像は、最大出力レベルが100%となるため、見かけ上のダイナミックレンジの広い映像信号を得ることができる。
【符号の説明】
【0069】
10…撮像装置、10a…撮像装置、110…光学系、120…撮像素子、150…露出制御部、151…露光時間設定部、152…高輝度露光時間設定部、153…絞り設定部、160…標準輝度信号画像処理部、160a…標準輝度信号画像処理部、161…エンハンス処理部、161a…エンハンス処理部、170…高輝度信号画像処理部、170a…高輝度信号画像処理部、171…エンハンス処理部、171a…エンハンス処理部、180…合成割合設定部、180a…合成割合設定部、190…画像合成処理部、200…映像出力部、210…設定受付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1露光時間によって得られた標準輝度映像信号と、第1露光時間より短い第2露光時間によって得られた高輝度映像信号とを、合成割合に従って合成する信号処理装置であって、
前記高輝度映像信号の最大値が、前記高輝度映像信号の設定されたダイナミックレンジと一致するように前記第2露光時間を設定する露光時間設定部を備えたことを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
第1露光時間によって得られた標準輝度映像信号と、第1露光時間より短い第2露光時間によって得られた高輝度映像信号とを、合成割合に従って合成する信号処理装置であって、
前記高輝度映像信号の最大値が、前記高輝度映像信号の設定されたダイナミックレンジに近づくように前記第2露光時間を調整して設定する露光時間設定部を備えたことを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の信号処理装置であって、
設定された前記第2露光時間が短いほど、前記高輝度映像信号の合成割合を大きく設定する合成割合設定部をさらに備えたことを特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の信号処理装置であって、
前記標準輝度映像信号から標準輝度エンハンス信号を生成して、前記標準輝度映像信号に加算する標準輝度信号エンハンス処理部と、
前記高輝度映像信号から高輝度エンハンス信号を生成して、前記高輝度映像信号に加算する高輝度信号エンハンス処理部とをさらに備え、
前記標準輝度信号エンハンス処理部は、前記標準輝度映像信号の合成割合が小さいほど前記標準輝度エンハンス信号を大きく生成し、
前記高輝度信号エンハンス処理部は、前記高度映像信号の合成割合が小さいほど前記高輝度エンハンス信号を大きく生成することを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の信号処理装置であって、
前記露光時間設定部は、設定する前記第2露光時間に下限を設けていることを特徴とする信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−97207(P2011−97207A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247249(P2009−247249)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】