説明

信号制御装置、および信号制御方法

【課題】感応式制御による信号灯器の表示制御が不適性な状態になるのを抑えた信号制御装置を提供する。
【解決手段】信号制御装置1は、その時点の現示を打ち切って、信号灯器2の表示を次の階梯に進めるかどうかの判定を、交差点内に存在する車両の台数に基づいて行なうので、交差点に進入できずに、交差点の手前で車両が停止している状況になると、その時点の現示を打ち切り、信号灯器2の表示を次の階梯に進める。このため、信号灯器2の表示制御が不適性な状態になるのを抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路網の交差点に設置された信号灯器の表示を制御する信号制御装置、および信号制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号制御装置は、設定されている信号制御パラメータに基づいて、道路網の交差点に設置されている信号灯器の表示を制御している。例えば、主道路と、従道路と、が交差する交差点に設置されている信号灯器の現示表示を一般的な2現示10階梯で制御する信号制御装置には、
(1)主道路側の歩行者用信号灯器、および車両用信号灯器が青で、従道路側の歩行者用信号灯器、および車両用信号灯器が赤の時間、
(2)主道路側の歩行者用信号灯器が青点滅で、主道路側の車両用信号灯器が青で、且つ従道路側の歩行者用信号灯器、および車両用信号灯器が赤の時間、
(3)主道路側の歩行者用信号灯器が赤で、主道路側の車両用信号灯器が青で、且つ従道路側の歩行者用信号灯器、および車両用信号灯器が赤の時間、
(4)主道路側の歩行者用信号灯器が赤で、主道路側の車両用信号灯器が黄で、且つ従道路側の歩行者用信号灯器、および車両用信号灯器が赤の時間、
(5)主道路側の歩行者用信号灯器と車両用信号灯器、および従道路側の歩行者用信号灯器と車両用信号灯器が全て赤の時間、
(6)主道路側の歩行者用信号灯器、および車両用信号灯器が赤で、従道路側の歩行者用信号灯器、および車両用信号灯器が青の時間、
(7)主道路側の歩行者用信号灯器、および車両用信号灯器が赤で、従道路側の歩行者用信号灯器が青点滅で、且つ従道路側の車両用信号灯器が青の時間、
(8)主道路側の歩行者用信号灯器、および車両用信号灯器が赤で、従道路側の歩行者用信号灯器が赤で、且つ従道路側の車両用信号灯器が青の時間、
(9)主道路側の歩行者用信号灯器、および車両用信号灯器が赤で、従道路側の歩行者用信号灯器が赤で、且つ従道路側の車両用信号灯器が黄の時間、
(10)主道路側の歩行者用信号灯器と車両用信号灯器、および従道路側の歩行者用信号灯器と車両用信号灯器が全て赤の時間、
を規定する信号制御パラメータが設定されている。信号制御装置は、上記(1)〜(10)の現示表示の階梯をこの順に繰り返す。一般に、上記(1)〜(10)の合計時間がサイクルと呼ばれている。
【0003】
交差点の交通量に関係なく、信号灯器の表示を設定されている信号制御パラメータで固定的に制御する方式では、渋滞が発生しやすい。そこで、交差点の手前に設置した車両感知器で交通量を検知し、検知した交通量に応じて、そのときの現示表示の時間(上記(3)、や(8)の時間)を短縮したり、延長することが行われている。具体的には、主道路の交通量が多ければ上記(3)の時間を延長し、反対に主道路の交通量が少なければ上記(3)の時間を短縮する。同様に、従道路の交通量が多ければ上記(8)の時間を延長し、反対に従道路の交通量が少なければ上記(8)の時間を短縮する。この信号灯器の表示制御は、一般に感応式制御と呼ばれている。この感応式制御では、上記(3)、および(8)にかかる現示表示の最小時間と最大時間とが、信号制御パラメータに含まれており、この最小時間と最大時間との間で上述した時間の短縮、延長を行なっている。
【0004】
さらに、最大時間を固定値とせず、交通量に応じて変化させる信号制御装置も提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3680815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等で提案されている従来の感応式制御では、交差点手前の交通量を、当該交差点の交通量とみなして、現示表示の時間の短縮、延長を行っている。このため、交差点周辺の交通状況によっては、信号灯器の表示制御が不適性な状態になることがあった。例えば、前方車両が交差点の出口付近で停止している等の理由で、交差点に進入できずに、交差点の手前で車両が停止することがある。この場合、そのときの現示表示を打ち切って、交差側の道路を走行している車両に通行権を与える現示表示に進めたほうがよい。しかし、従来の感応式制御では、車両感知器によって交差点の手前で停止している車両が感知され続けるので、そのときの現示表示を最大時間まで延長し、渋滞を悪化させたり、交差側の道路の渋滞を引き起こしていた。
【0006】
この発明の目的は、感応式制御による信号灯器の表示制御が不適性な状態になるのを抑えた信号制御装置、および信号制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0008】
車両検知手段が、交差点内を撮像した画像を処理し、当該交差点内に存在する車両を検知する。判定手段が、前記車両検知手段により検知された交差点内に存在する車両の台数に基づいて、その時点の現示を打ち切るかどうかを判定する。前記判定手段が、その時点の現示を打ち切ると判定した場合、信号灯器表示制御手段が当該交差点に設置されている信号灯器の表示を次の階梯に進め、この現示を打ち切る。また、判定手段は、現示を打ち切るかどうかの判定を、当該現示を打ち切ると判定するまで、予め定めた一定時間毎に繰り返す。
【0009】
このように、その時点の現示を打ち切って、信号灯器の表示を次の階梯に進めるかどうかの判定を、交差点内に存在する車両の台数に基づいて行なうので、交差点に進入できずに、交差点の手前で車両が停止している状況になると、その時点の現示を打ち切り、信号灯器の表示を次の階梯に進めることができる。すなわち、信号灯器の表示制御が不適性な状態になるのを抑えられる。
【0010】
また、判定手段が、その時点の現示を延長するかどうかを判定する交差点内の車両の台数については、交差点の大きさや、主道路および従道路の交通容量や、制御方策等を考慮して決めればよい。
【0011】
また、判定手段がその時点の現示を打ち切るかどうかを判定する一定時間間隔については、例えば、秒単位の時間とすればよい。
【0012】
また、前記車両検知手段を、交差点内に存在する車両毎に、その車両の移動方向も検知する構成とするとともに、前記判定手段を、前記交通流検知センサにより検知された交差点内に存在する車両であって、且つその時点の現示について設定されている方向に移動している車両の台数に基づいて、この現示を打ち切るかどうかを判定する構成としてもよい。このようにすれば、上り方向や、下り方向等、特定の方向に走行している車両の台数等に基づいて、現示の延長や打ち切りを判定することができ、交差点周辺の交通状況に応じた信号灯器の感応式制御が行える。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、感応式制御による信号灯器の表示制御が、渋滞を悪化させたり、交差側の道路の渋滞を引き起こす不適性な状態になるのを抑えられる。また、1つのカメラで感応制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態である信号制御装置について説明する。
【0015】
図1は、この発明の実施形態である信号制御装置を適用した信号制御システムを示す概略図である。この信号制御システムは、信号制御装置1と、信号灯器2と、中央装置3と、を備えている。信号制御装置1は、信号灯器2が設置されている各交差点に設けられている。周知のように、交差点に設置されている信号灯器2には、車両用と、歩行者用とがある。図1では、歩行者用信号灯器については、図示を省略している。
【0016】
ここでは、図2に示す主道路と、従道路と、が交差する交差点に設置されている信号灯器2(2a〜2h)を一般的な2現示10階梯で制御する信号制御装置1を例にして説明する。図2に示すように、主道路と従道路とが交差する交差点には、主道路側の車両用信号灯器2a、2b、主道路側の歩行者用信号灯器2e、2f、従道路側の車両用信号灯器2c、2d、および従道路側の歩行者用信号灯器2g、2hが設置されている。各信号制御装置1は、対応する交差点に設置されている信号灯器2毎に、その現示表示を制御する。また、信号制御装置1は、データ通信ラインで中央装置3に接続されている。信号制御装置1は、中央装置3に対して信号灯器2の制御状態を通知する。一方、中央装置3は、信号制御装置1毎に、その信号制御装置1に対応する交差点に設置されている信号灯器2の表示制御に用いる信号制御パラメータを通知する。信号制御装置1は、中央装置3から通知された信号制御パラメータに基づいて、信号灯器2の表示を制御する。
【0017】
信号制御パラメータには、サイクル、スプリット、オフセット、各階梯の時間等が含まれている。サイクルとは、信号灯器2の表示が一巡する時間、すなわち信号灯器2の青、黄、赤が一巡する時間、を規定するパラメータである。スプリットとは、1サイクルの時間の内、各現示に割り当てる時間配分である。オフセットとは、基準となる交差点の信号灯器との同一表示の開始時間のズレを規定し、交差点間における車両の流れを円滑にするためのパラメータである。さらに、一般的な2現示10階梯で制御する交差点であれば、以下に示す(1)〜(10)の階梯毎に、その時間が信号制御パラメータによって規定されている。
【0018】
(1)主道路側の歩行者用信号灯器2e、2f、および車両用信号灯器2a、2bが青で、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2h、および車両用信号灯器2c、2dが赤の階梯、
(2)主道路側の歩行者用信号灯器2e、2fが青点滅で、主道路側の車両用信号灯器2a、2bが青で、且つ従道路側の歩行者用信号灯器2g、2h、および車両用信号灯器2c、2dが赤の階梯、
(3)主道路側の歩行者用信号灯器2e、2fが赤で、主道路側の車両用信号灯器2a、2bが青で、且つ従道路側の歩行者用信号灯器2g、2h、および車両用信号灯器2c、2dが赤の階梯、
(4)主道路側の歩行者用信号灯器2e、2fが赤で、主道路側の車両用信号灯器2a、2bが黄で、且つ従道路側の歩行者用信号灯器2g、2h、および車両用信号灯器2c、2dが赤の階梯、
(5)主道路側の歩行者用信号灯器2e、2fと車両用信号灯器2a、2b、および従道路側の歩行者用信号灯器2g、2hと車両用信号灯器2c、2dが全て赤の階梯、
(6)主道路側の歩行者用信号灯器2e、2f、および車両用信号灯器2a、2bが赤で、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2h、および車両用信号灯器2c、2dが青の階梯、
(7)主道路側の歩行者用信号灯器2e、2f、および車両用信号灯器2a、2bが赤で、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2hが青点滅で、且つ従道路側の車両用信号灯器2c、2dが青の階梯、
(8)主道路側の歩行者用信号灯器2e、2f、および車両用信号灯器2a、2bが赤で、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2hが赤で、且つ従道路側の車両用信号灯器2c、2dが青の階梯、
(9)主道路側の歩行者用信号灯器2e、2f、および車両用信号灯器2a、2bが赤で、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2hが赤で、且つ従道路側の車両用信号灯器2c、2dが黄の階梯、
(10)主道路側の歩行者用信号灯器2e、2fと車両用信号灯器2a、2b、および従道路側の歩行者用信号灯器2g、2hと車両用信号灯器2c、2dが全て赤の階梯、
また、この実施形態では、上記(3)、および(8)について、それぞれ最小時間と、最大時間と、を規定するパラメータが信号制御パラメータに含まれている。また、その他の階梯については、信号制御パラメータにより、時間が規定されている。信号制御装置1は、上記(3)、および(8)の階梯の時間を、交差点の交通量に応じて延長または短縮する。
【0019】
図3は、信号制御装置の主要部の構成を示すブロック図である。信号制御装置1は、制御部11と、撮像部12と、画像処理部13と、通信部14と、表示制御部15と、記憶部16と、を備えている。制御部11は、本体各部の動作を制御する。撮像部12は、交差点内を撮像する高感度CCDカメラを有している。このCCDカメラは、交差点内全体を撮像領域とするために、撮像レンズとして焦点距離が2mm程度である広角レンズを利用している。また、CCDカメラは、信号灯器2の上や、支柱に設置すればよい。図4は、略6mの高さに設置したCCDカメラで撮像した交差点内の撮像画像である。
【0020】
画像処理部13は、撮像部12で撮像された画像を処理し、交差点内に存在する車両のを検出する。具体的には、交差点内に車両が存在していないときの画像(以下、背景画像と言う。)と、撮像画像と、の差分画像を生成し、この差分画像から交差点内に存在している車両を検出する。また、画像処理部13は、撮像部12で撮像した時間的に連続する複数のフレームを用いて、交差点内に存在する車両毎に移動方向も検出する。画像処理部13は、交差点内に存在する車両の台数を移動方向別に計数し、出力する。例えば、図2に示す交差点であれば、交差点への進入路毎に、直進車両の台数、右折車両の台数、左折車両の台数を計数し、出力する。画像処理部13は、一定時間間隔、例えば100ms〜1s程度の時間間隔、で、撮像部12のCCDカメラの撮像画像を取り込み、交差点内に存在している車両の台数を移動方向別に計数し、出力する。
【0021】
通信部14は、中央装置3とデータ通信を行う。通信部14では、中央装置3から送信されてきた信号制御パラメータの受信や、中央装置3への信号灯器2の制御状態の送信を行う。表示制御部15は、信号灯器2毎に、現示表示を指示する。記憶部16は、中央装置3から送信されてきた信号制御パラメータ等を記憶する。
【0022】
図5は、信号制御装置による信号灯器の現示表示のサイクルを示す図である。ここでは、主道路側の車両用信号灯器2a、2bの現示表示は同じであり、また、従道路側の車両用信号灯器2c、2dの現示表示も同じである。また、主道路側の歩行者用信号灯器2e、2fの現示表示は同じであり、また、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2hの現示表示も同じである。信号制御装置1は、図5に示す階梯A〜階梯Jを、この順に繰り返す。
【0023】
階梯Aが上述した(1)に相当し、階梯Bが上述した(2)に相当し、階梯Cが上述した(3)に相当し、階梯Dが上述した(4)に相当し、階梯Eが上述した(5)に相当し、階梯Fが上述した(6)に相当し、階梯Gが上述した(7)に相当し、階梯Hが上述した(8)に相当し、階梯Iが上述した(9)に相当し、階梯Jが上述した(10)に相当する。また、各階梯A〜Jの時間を、ここではTA〜TJで示す。階梯Aの時間TAおよび階梯Bの時間TBは、歩行者が主道路を横断するのに必要な時間を考慮して決めている。具体的に言うと、階梯Aの時間TAと階梯Bの時間TBとの加算時間が、歩行者が主道路を横断するのに必要な時間よりも長くなるように決めている。また、階梯Cの時間TCは、交差点内の交通量によって変動制御される時間であり、最小時間と最大時間が信号制御パラメータで規定されている。階梯Dの時間TDは、信号制御パラメータで規定されている固定時間である。この階梯Dの時間TDは、階梯Cが終了した時点で、交差点手前の停止線で安全に停止することができない車両が交差点内に入る時間を考慮して決めている。また、階梯Eの時間TEも、信号制御パラメータで規定されている固定時間である。この階梯Eの時間TEは、階梯Dが終了した時点で交差点内に存在している車両が交差点外に出るのに必要な時間を考慮して決めている。
【0024】
また、階梯Fの時間TFおよび階梯Gの時間TGは、歩行者が従道路を横断するのに必要な時間を考慮して決めている。具体的に言うと、階梯Fの時間TFと階梯Gの時間TGとの加算時間が、歩行者が主道路を横断するのに必要な時間よりも長くなるように決めている。また、階梯Hの時間THは、交差点内の交通量によって変動制御される時間であり、最小時間と最大時間が信号制御パラメータで規定されている。階梯Iの時間TIは、信号制御パラメータで規定されている固定時間である。この階梯Iの時間TIは、階梯Hが終了した時点で、交差点手前の停止線で安全に停止することができない車両が交差点内に入る時間を考慮して決めている。また、階梯Jの時間TJも、信号制御パラメータで規定されている固定時間である。この階梯Jの時間TJは、階梯Iが終了した時点で交差点内に存在している車両が交差点外に出るのに必要な時間を考慮して決めている。
【0025】
この実施形態の信号制御装置1は、階梯Cや階梯Hを打ち切って、次の階梯に進むタイミングを交差点内の交通量に基づいて制御する。すなわち、信号制御装置1は、主道路側の信号灯器2a、2bが青である時間や、従道路側の信号灯器2c、2dが青である時間を、交差点内の交通量に基づいて調整する、感応式制御を行なう。図6および図7は、信号制御装置における信号灯器の感応式制御を示すフローチャートである。ここでは、階梯Aの開始タイミングを基準にして説明する。信号制御装置1は、主道路側の歩行者用信号灯器2e、2f、および車両用信号灯器2a、2bが青で、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2h、および車両用信号灯器2c、2dが赤である階梯Aを開始すると(s1)、タイマをリセットし(s2)、このタイマで階梯Aの開始からの経過時間を計測する。s1では、信号制御装置1は、表示制御部15において、主道路側の歩行者用信号灯器2e、2f、および車両用信号灯器2a、2bに対して青表示を指示し、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2h、および車両用信号灯器2c、2dに対して赤表示を指示する。信号制御装置1は、タイマで計測している階梯Aの開始からの経過時間がTAに達すると、階梯Bに進む(s3、s4)。また、タイマをリセットし(s5)、このタイマで階梯Bの開始からの経過時間を計測する。s4では、信号制御装置1は、表示制御部15において、主道路側の歩行者用信号灯器2e、2fに対する青点滅表示を指示する。また、信号制御装置1は、主道路側の車両用信号灯器2a、2bに対する青表示の指示を継続し、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2h、および車両用信号灯器2c、2dに対する赤表示の指示を継続する。
【0026】
信号制御装置1は、タイマで計測している階梯Bの開始からの経過時間がTBに達すると、階梯Cに進む(s6、s7)。また、タイマをリセットし(s8)、このタイマで階梯Cの開始からの経過時間を計測する。s7では、信号制御装置1は、表示制御部15において、主道路側の歩行者用信号灯器2e、2fに対する赤表示を指示する。また、信号制御装置1は、主道路側の車両用信号灯器2a、2bに対する青表示の指示を継続し、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2h、および車両用信号灯器2c、2dに対する赤表示の指示を継続する。
【0027】
信号制御装置1は、タイマで計測している階梯Cの開始からの経過時間が、信号制御パラメータによって規定されている、この階梯Cの最小時間に達すると(s9)、交差点内に存在している車両の台数を検出し(s10)、ここで検出した車両の台数が一定台数(例えば、2台)以下であるかどうかを判定する(s11)。この一定台数は、主道路の交通量が少ないかどうかを判定するレベルとして用いるため、交差点の大きさ、主道路および従道路の交通容量や制御方策等を考慮して決めればよい。s10では、画像処理部13が、1台のCCDカメラで撮像部12が撮像した交差点内の撮像画像を取り込み、この取り込んだ撮像画像と、背景画像との差分画像を生成する。画像処理部13は、ここで生成した差分画像から車両を抽出し、その台数を検出する。信号制御装置1は、s11で交差点内に存在している車両の台数が一定台数以下でないと判定すると、タイマで計測している階梯Cの開始からの経過時間が、信号制御パラメータで規定されている階梯Cの最大時間に達したかどうかを判定する(s12)。信号制御装置1は、s12で最大時間に達していないと判定すると、s10に戻り、上述したs10〜s12の処理を繰り返す。信号制御装置1は、s11で交差点内に存在している車両台数が一定台数以下であると判定するか、またはs12で階梯Cの開始からの経過時間が、信号制御パラメータで規定されている階梯Cの最大時間に達したと判定するまで、このs10〜s12の処理を一定時間毎に繰り返す。この一定時間は、長くするにつれて無駄に階梯Cを延長する可能性が高くなり、短くしすぎると本体の処理負荷が増大することから、1s程度の時間間隔にするのが望ましい。
【0028】
信号制御装置1は、s11で交差点内に存在している車両台数が一定台数以下であると判定するか、またはs12で階梯Cの開始からの経過時間が信号制御パラメータで規定されている階梯Cの最大時間に達したと判定すると、階梯Cを打ち切り、階梯Dに進む(s13)。s13では、信号制御装置1は、表示制御部15において、主道路側の信号灯器2a、2bに対して黄表示を指示する。また、信号制御装置1は、主道路側の歩行者用信号灯器2e、2fに対する赤表示の指示を継続し、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2h、および車両用信号灯器2c、2dに対する赤表示の指示を継続する。また、信号制御装置1は、タイマをリセットし(s14)、タイマによる階梯Dの開始からの経過時間の計測を開始する。信号制御装置1は、階梯Dの開始からの経過時間が信号制御パラメータで規定されている時間TDに達すると、階梯Eに進む(s15、s16)。s16では、信号制御装置1は、表示制御部15において、主道路側の車両用信号灯器2a、2bに対して赤表示を指示する。また、信号制御装置1は、主道路側の歩行者用信号灯器2e、2fに対する赤表示の指示を継続し、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2h、および車両用信号灯器2c、2dに対する赤表示の指示を継続する。信号制御装置1は、タイマをリセットし(s17)、タイマによる階梯Eの開始からの経過時間の計測を開始する。信号制御装置1は、階梯Eの開始からの経過時間が信号制御パラメータで規定されている時間TEに達すると、階梯Fに進む(s18、s19)。s19では、信号制御装置1は、表示制御部15において、主道路側の車両用信号灯器2a、2b、および歩行者用信号灯器2e、2fに対する赤表示を継続し、従道路側の車両用信号灯器2c、2dおよび歩行者用信号灯器2g、2hに対して青表示を指示する。
【0029】
信号制御装置1は、階梯Fに進むと、タイマをリセットし(s20)、このタイマで階梯Fの開始からの経過時間を計測する。信号制御装置1は、タイマで計測している階梯Fの開始からの経過時間がTFに達すると、階梯Gに進む(s21、s22)。また、タイマをリセットし(s23)、このタイマで階梯Gの開始からの経過時間を計測する。s22では、信号制御装置1は、表示制御部15において、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2hに対する青点滅表示を指示する。また、信号制御装置1は、従道路側の車両用信号灯器2c、2dに対する青表示の指示を継続し、主道路側の歩行者用信号灯器2e、2f、および車両用信号灯器2a、2bに対する赤表示の指示を継続する。
【0030】
信号制御装置1は、タイマで計測している階梯Gの開始からの経過時間がTGに達すると、階梯Hに進む(s24、s25)。また、タイマをリセットし(s26)、このタイマで階梯Hの開始からの経過時間を計測する。s25では、信号制御装置1は、表示制御部15において、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2hに対する赤表示を指示する。また、信号制御装置1は、従道路側の車両用信号灯器2c、2dに対する青表示の指示を継続し、主道路側の歩行者用信号灯器2e、2f、および車両用信号灯器2a、2bに対する赤表示の指示を継続する。
【0031】
信号制御装置1は、タイマで計測している階梯Hの開始からの経過時間が、信号制御パラメータによって規定されている、この階梯Hの最小時間に達すると(s27)、交差点内に存在している車両の台数を検出し(s28)、ここで検出した車両の台数が一定台数(例えば、2台)以下であるかどうかを判定する(s29)。この一定台数は、従道路の交通量が少ないかどうかを判定するレベルとして用いるため、上述したs11の判定に用いる台数と同じっであってもよいし、異なっていてもよい。s28は、上述したs10と同じである。信号制御装置1は、s29で交差点内に存在している車両の台数が一定台数以下でないと判定すると、タイマで計測している階梯Hの開始からの経過時間が、信号制御パラメータで規定されている階梯Hの最大時間に達したかどうかを判定する(s30)。信号制御装置1は、s30で最大時間に達していないと判定すると、s28に戻り、上述したs28〜s30の処理を繰り返す。信号制御装置1は、s29で交差点内に存在している車両台数が一定台数以下であると判定するか、またはs30で階梯Hの開始からの経過時間が、信号制御パラメータで規定されている階梯Hの最大時間に達したと判定するまで、このs28〜s30の処理を一定時間毎に繰り返す。この一定時間は、長くするにつれて無駄に階梯Hを延長する可能性が高くなり、短くしすぎると本体の処理負荷が増大することから、1s程度の時間間隔にするのが望ましい。
【0032】
信号制御装置1は、s29で交差点内に存在している車両台数が一定台数以下であると判定するか、またはs30で階梯Hの開始からの経過時間が信号制御パラメータで規定されている階梯Hの最大時間に達したと判定すると、階梯Hを打ち切り、階梯Iに進む(s31)。s31では、信号制御装置1は、表示制御部15において、従道路側の車両用信号灯器2c、2dに対して黄表示を指示する。また、信号制御装置1は、従道路側の歩行者用信号灯器2g、2hに対する赤表示の指示を継続し、主道路側の歩行者用信号灯器2e、2f、および車両用信号灯器2a、2bに対する赤表示の指示を継続する。また、信号制御装置1は、タイマをリセットし(s32)、タイマによる階梯Iの開始からの経過時間の計測を開始する。信号制御装置1は、階梯Iの開始からの経過時間が信号制御パラメータで規定されている時間TIに達すると、階梯Jに進む(s33、s34)。s34では、信号制御装置1は、表示制御部15において、従道路側の車両用信号灯器2c、2dに対して赤表示を指示する。また、信号制御装置1は、従道路側の歩行者用信号灯器2e、2fに対する赤表示の指示を継続し、主道路側の歩行者用信号灯器2e、2f、および車両用信号灯器2a、2bに対する赤表示の指示を継続する。信号制御装置1は、タイマをリセットし(s35)、タイマによる階梯Jの開始からの経過時間の計測を開始する。信号制御装置1は、階梯Jの開始からの経過時間が信号制御パラメータで規定されている時間TJに達すると(s36)、s1に戻り、上述した階梯Aを開始する。
【0033】
このように、信号制御装置1は、s10〜s12の処理を繰り返すことで、交差点内に存在している車両の台数に基づいて、主道路を走行する車両に通行権を与える現示である階梯Cを打ち切るタイミングを決定する。このs10で検出される交差点内の車両の台数は、主道路から交差点に進入した車両の台数であるので、主道路の交通量に応じた信号灯器2の感応式制御が行なえる。また、信号制御装置1は、交差点内の車両台数に基づいて階梯Cを打ち切るかどうかを判定するので、交差点に進入できずに、交差点の手前で車両が停止している状況になると、その時点の階梯Cを打ち切り、信号灯器2の表示を次の階梯Dに進めることができる。すなわち、信号灯器2の表示制御が不適性な状態になるのを抑えられる。これにより、主道路を走行する車両に通行権を与える現示を無駄に延長することがなく、信号灯器2の表示制御が交差側である従道路の渋滞を引き起こす不適性な状態になるのを抑えられる。また、信号制御装置1は、s28〜s30の処理を実行するので、従道路についても交通量に応じた信号灯器2の感応式制御が不適性な状態になるのを抑えられる。
【0034】
また、上記の説明では、交通量に応じて通行権を与える現示表示を打ち切るタイミングを決定する処理を、主道路側、および従道路側の両方について行なうとしたが、どちらか一方の道路についてのみ行なう半感応式制御としてもよい。例えば、上述した例におけるs28〜s30の処理を、階梯Hの開始からの経過時間が、信号制御パラメータによって規定されている時間THに達したときに、階梯Iに進む処理に置き換えることで、主道路側の交通量に応じて信号灯器2の現示表示を制御する半感応式制御が行なえる。また、反対に、上述した例におけるs10〜s12の処理を、階梯Cの開始からの経過時間が、信号制御パラメータによって規定されている時間TCに達したときに、階梯Dに進む処理に置き換えることで、従道路側の交通量に応じて信号灯器2の現示表示を制御する半感応式制御が行なえる。
【0035】
また、階梯C、および階梯Hの標準時間TC、THを信号制御パラメータで規定しておき、図8および図9に示す半感応式制御としてもよい。図8および図9は、主道路側の交通量に応じた信号灯器の現示表示を制御する半感応式制御を示すフローチャートである。この図8および図9では、図6および図7と同じ処理については、同じステップ番号(s**)を付している。信号制御装置1は、上述したs1〜s14にかかる処理を実行し、s14でタイマによる階梯Dの開始からの経過時間の計測を開始すると、次の階梯Hの打切時間TH’を算出する(s41)。s41では、直前の階梯Cの実際の継続時間TC’、階梯Cの標準時間TC、および階梯Hの標準時間THを用いて、
TH’=TH−(TC’−TC)
により算出する。すなわち、次の階梯Hの打切時間TH’は、直前の階梯Cにおける実際の継続時間TC’と、標準時間TCと、の差分を減算した時間である。また、s41で算出した次の階梯Hの打切時間TH’が負であれば、TH’を0とする。
【0036】
信号制御装置1は、s41で次の階梯Hの打切時間TH’を算出すると、s15〜s26の処理を行なう。そして、上述したs27〜s30に変えて、階梯Hの開始からの経過時間が、s41で算出した打切時間TH’に達したかどうかを判定する(s42)。信号制御装置1は、s42で階梯Hの開始からの経過時間が、s41で算出した打切時間TH’に達したと判定すると、上述したs31以降の処理を実行する。
【0037】
したがって、階梯Cが実際に継続された時間TC’と、階梯Cの標準時間TCと、の差分が、階梯Hを継続する時間で吸収される。このため、信号灯器2のサイクルの変動が抑えられ、その結果、周辺交差点の信号灯器2とのオフセットのズレが抑えられる。
【0038】
なお、ここでは、詳細な説明を省略するが、従道路側の交通量に応じた信号灯器2の現示表示を制御する半感応式制御であれば、階梯Hが実際に継続された時間TH’と、階梯Hの標準時間THと、の差分が、階梯Cを継続する時間で吸収される処理とすればよい。
【0039】
また、s41にかかる処理は、階梯Fを開始するまでのタイミングであれば、どのタイミングで実行してもよい。
【0040】
さらに、図6、および図7に示した全感応式制御でも、周辺交差点の信号灯器2とのサイクルのズレを抑えることもできる。例えば、階梯Cが上述した処理で延長/短縮された結果である階梯Cの実際の継続時間TC’と、階梯Cの標準時間TCとの差分を、次の階梯Hや、次のサイクルの階梯Cで吸収すればよい。また、階梯Hが上述した処理で延長/短縮された結果である階梯Hの実際の継続時間TH’と、階梯Hの標準時間THとの差分を、次の階梯Cや、次のサイクルの階梯Hで吸収すればよい。
【0041】
また、上記実施形態では、交差点内に存在する車両の台数で、階梯Cや階梯Hを打ち切るかどうかを判定するとしたが、走行方向、例えば直進車両の台数、上り方向の直進車両の台数、右折車両の台数、左折車両の台数等で、この判定を行なうようにしてもよい。上述したように、画像処理部13では、車両の走行方向毎に、交差点内に存在している車両の台数を検出することができる。
【0042】
さらに、右折矢印にかかる現示表示がある交差点の信号灯器2や、時差式交差点の信号灯器2等の制御についても、本願発明を適用することができる。
【0043】
なお、信号制御パラメータは、上述した処理が実行できる形式であれば、上記以外の形式であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施形態である信号制御装置が適用される信号制御システムを示す概略図である。
【図2】交差点を示す概略図である。
【図3】この発明の実施形態である信号制御装置の主要部の構成を示す図である。
【図4】交差点の撮像画像を示す図である。
【図5】信号灯器のサイクルを説明する図である。
【図6】信号制御装置における信号制御処理を示すフローチャートである。
【図7】信号制御装置における信号制御処理を示すフローチャートである。
【図8】信号制御装置における信号制御処理を示すフローチャートである。
【図9】信号制御装置における信号制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1−信号制御装置
2(2a〜2d)−信号灯器
3−中央装置
11−制御部
12−撮像部
13−画像処理部
14−通信部
15−表示制御部
16−記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に設置されている信号灯器の現示表示を制御する信号制御装置において、
交差点内を撮像した画像を処理し、当該交差点内に存在する車両を検知する車両検知手段と、
前記車両検知手段により検知された交差点内に存在する車両の台数に基づいて、その時点の現示を打ち切るかどうかを判定する判定手段と、
前記判定手段が、その時点の現示を打ち切ると判定した場合に、当該交差点に設置されている信号灯器の現示表示を次の階梯に進める信号灯器表示制御手段と、を備え、
前記判定手段は、現示を打ち切るかどうかの判定を、当該現示を打ち切ると判定するまで、予め定められた一定時間毎に繰り返す手段である、信号制御装置。
【請求項2】
前記判定手段が打ち切るかどうかを判定する現示について、その最小時間を記憶する記憶手段を備え、
前記判定手段は、その現示の開始からの経過時間が、前記記憶手段が当該現示について記憶している最小時間に達した後に、この現示を打ち切るかどうかの判定を開始する手段である、請求項1に記載の信号制御装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記判定手段が打ち切るかどうかを判定する現示について、その最大時間も記憶する手段であり、
前記判定手段は、その現示の開始からの経過時間が、前記記憶手段が当該現示について記憶している最大時間に達すると、この現示を打ち切ると判定する手段である、請求項2に記載の信号制御装置。
【請求項4】
前記車両検知手段は、車両の移動方向別に、交差点内に存在する車両の台数を検知する手段であり、
前記判定手段は、前記交通流検知センサにより検知された交差点内に存在する車両であって、且つその時点の現示について設定されている方向に移動している車両の台数に基づいて、この現示を打ち切るかどうかを判定する手段である、請求項1〜3のいずれかに記載の信号制御装置。
【請求項5】
交差点に設置されている信号灯器の現示表示を制御する信号制御方法において、
車両検知手段が、撮像装置で撮像した交差点内の画像を処理し、当該交差点内に存在する車両を検知し、
判定手段が、前記車両検知手段により検知された交差点内に存在する車両の台数に基づいて、その時点の現示を打ち切るかどうかの判定を、当該現示を打ち切ると判定するまで、予め定めた一定時間毎に繰り返し、
前記判定手段が、その時点の現示を打ち切ると判定した場合に、信号灯器表示制御手段が、当該交差点に設置されている信号灯器の現示表示を次の階梯に進める、信号制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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