説明

信号増幅装置及び方法

【課題】 LINC装置における信号の過入力を簡単な構成で高精度に検出する。
【解決手段】 信号増幅装置1は、入力信号Sinを分割して、所定の振幅を有し且つ位相の相異なる複数の分割信号Sa、Sbを生成する信号生成器10と、FET(Field Effect Transistor)を用いて複数の分割信号を夫々増幅する複数の増幅器20a、20bと、前記複数の増幅器の夫々で増幅された信号が通過する、長さが相異なり且つ端子間のアイソレーションを有しない伝送線路30a、30bと、複数の増幅器の夫々に入力されるゲート電流を比較することで、複数の増幅器のいずれかにおいて飽和状態を超過する分割信号の過入力が生じているか否かを検出する検出器40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号増幅装置に係り、特に合成器アイソレーションのない信号合成器を用いた信号増幅装置及び方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば無線通信システムにおける基地局に設けられるこの種の信号増幅装置では、高周波電力を高出力で増幅するための高効率の線形増幅回路が用いられることが好ましい。高効率な線形増幅回路を実現する手段の一つとしてLINC方式(Linear Amplification with Nonlinear Component)による飽和増幅器をチャイレックス(Chirex)合成器などで結合した増幅回路が知られている。
【0003】
後述する先行技術文献では、この種の増幅回路を備える信号増幅装置について説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−213090号公報
【特許文献2】特開2007−174148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したLINC方式による飽和増幅器を利用する増幅回路では、入力電圧が常に飽和動作状態又はその近傍で使用されることが求められる。このため、使用状況によっては、増幅回路が処理可能な電圧を超過する振幅を有する信号の入力である、所謂過入力が生じ、過入力による回路の破壊や寿命の劣化が生じる可能性があるとの技術的な問題がある。一方で、過入力を防止するために入力電圧を低減した状態で設計すると、飽和増幅器の高効率状態を達成出来ない。
【0006】
このことから、増幅回路における電流の過入力を検出可能な構成について検討が為されている。しかしながら、LINC方式の増幅回路では、並列配置されたアンプの夫々に監視用の回路を用いることとなり、コスト面での実現性の困難が問題視されている。また、過入力の判定用の基準電圧に高い精度と安定度が求められることが、適切な過入力の検出をより困難としている。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑み為されたものであり、増幅装置に対する電流の過入力を好適に監視し、破壊や劣化を防止可能とする信号増幅装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、開示の信号増幅装置は、信号生成器と、複数の増幅器と、伝送線路と、検出器とを備える。信号生成器は、入力信号を分割し、所定の振幅を有し且つ位相が相異なる複数の分割信号を生成する。複数の増幅器は、夫々分割された分割信号の入力をゲート端子に受けるFET(Field Effect Transistor)を用いて、各分割信号を増幅する。伝送線路は、複数の増幅器の夫々で増幅された信号が通過するための伝送線路であって、各々の長さが相異なり且つ端子間のアイソレーションを有しない。検出器は、各増幅器の夫々に入力されるFETのゲート電流を比較することで、複数の増幅器のいずれかにおいて飽和状態を超過する分割信号の過入力が生じているか否かを検出する。
【発明の効果】
【0009】
開示の信号増幅装置によれば、各増幅器のFETに入力されるゲート電流を監視することで、比較的簡単な構成で高精度に増幅器における分割信号の過入力を検出出来る。このため、信号の過入力に起因する信号増幅装置の破壊や劣化を好適に防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】LINC装置の構成を示す図である。
【図2】飽和動作時のFETにおけるゲート電流と電圧との特性を示すグラフである。
【図3】飽和が生じている場合のFETにおけるゲート電流の態様を示すグラフである。
【図4】LINC装置の第1変形例の構成を示す図である。
【図5】LINC装置の第2変形例の構成を示す図である。
【図6】分割信号の信号制御の態様を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(1)構成例
開示の信号増幅装置の実施形態であるLINC装置1の構成について図1を参照しながら説明する。図1は、実施例のLINC装置1の構成を示す図である。
【0013】
図1に示されるように、LINC装置1は、LINC信号生成部10、増幅器20a及び20b、伝送線路30a及び30b、差動回路40及び合成点50を備える。
【0014】
LINC信号生成部10は、入力端子11からの入力信号Sinを、略同一の振幅であり、且つ各信号の合成ベクトルにおける振幅及び位相が入力信号Sinと相似となるような2つの信号Sa及びSbに分割し、増幅器20a及び20bに夫々出力する。
【0015】
尚、LINC信号生成部10は、分割後の各信号Sa、Sbについて、後述する伝送線路30a、30bの線路長、つまり各信号が通過する電気長の差異に応じて、相異なる位相となるよう設定する。また、LINC信号生成部10は、信号Sa及び信号Sbの夫々の振幅について、増幅器20a及び20bが備えるFET21a及び21bが飽和領域又はその近傍で動作するよう設定する。
【0016】
例えば、LINC信号生成部10は、アナログRF(Radio Frequency)信号を入力して入力信号Sinを信号Sa及びSbに分割する。しかしながら、この態様に限定されることなく、デジタル信号処理により信号Sa及びSbを生成する構成や、IF(Intermediate Frequency)信号への周波数変換を介して更に周波数変換をする構成であってもよい。
【0017】
増幅回路20aは、FET21aとゲート電流監視回路22aとを備える。FET21aは、ゲートに入力される信号Saを飽和動作により増幅し、ドレイン端を介して伝送線路30aを介して合成点50に出力する。ゲート電流監視回路22aは、FET21aに入力するゲート電流Gaを差動回路40の逆相入力端子に入力する。
【0018】
増幅回路20bは、FET21bとゲート電流監視回路22bとを備える。FET21bは、ゲートに入力される信号Sbを飽和動作により増幅し、ドレイン端を介して伝送線路30bを介して合成点50に出力する。ゲート電流監視回路22bは、FET21bのゲート電流Gbを差動回路40の正相入力端子に入力する。つまり、ゲート電流監視回路22bは、FET21bのゲート電流Gbを、FET21aのゲート電流Gaに対して逆位相で差動回路40に入力する。
【0019】
尚、増幅器20a及び20bは、他にインピーダンスを整合することで寄生素子成分を補償する不図示の整合回路を備えていてもよい。このとき、後述する伝送線路30a及び30bの夫々の長さは、かかる整合回路における電気長を考慮して決定されることが好ましい。 伝送線路30aは、増幅器20aと合成点50との間を接続する伝送線である。伝送線路30bは、増幅器20bと合成点50との間を接続する伝送線である。伝送線路30aと30bとは、夫々長さ、つまり信号Sa、Sbの夫々が通過する電気長が異なるよう設計される。このとき、伝送線路30a、30bの夫々の長さの差は、少なくとも信号Sa、Sbの波長の整数倍以外の値に設定されることが望ましい。つまり、伝送線路30a、30bの長さの差異に応じて、信号Sa、Sbに相対的に位相差が生じていることが望ましい。
【0020】
差動回路40は、FET21aにおけるゲート電流Ga及びFET21bにおけるゲート電流Gbの夫々の入力を受け、夫々の差分を検出し、LINC信号生成部10に検出結果を入力する。
【0021】
合成点50は、伝送線路30aと、伝送線路30bと、出力端子51への配線とを結合する合成点である。このとき、合成点50は、位相の相異なる信号SaとSbとを合成することで、入力信号Sinと同様の位相を有する出力信号Soutを生成可能となるよう配置される。尚、実施例における伝送線路30a、伝送線路30b、合成点50及び出力端子51とは、所謂チャイレックス(Chirex)合成器を構成する。かかるチャイレックス合成器は、FET21aにおいて増幅された信号Saと、FET21bにおいて増幅された信号Sbとを合成点50において合成し、出力信号Soutとして出力端子51から出力する。尚、かかるチャイレックス合成器は、所謂合成器アイソレーションが存在しない様設計されており、例えばアイソレーション吸収用に内部に抵抗素子を備える。
【0022】
尚、上述した各構成は、説明した機能を実現可能であればその他の回路又は装置であってもよく、また、各構成を複数の回路又は装置の組み合わせとしてもよい。
【0023】
(2)基本動作例
実施例のLINC装置1によれば、入力信号Sinより生成される信号Sa、Sbの夫々がFET21a、21bにより増幅された後、合成点50において出力信号Soutに合成される。このため、入力信号Sinに対して、所定の増幅効果が得られる。
【0024】
実施例のLINC装置1では、差動回路40は、FET21aのゲート電流Gaと、FET21bのゲート電流Gbとの入力を受け、ゲート電流Ga、Gbの比較を行うことで、FET21a、21bにおいて過入力が生じていることを検出する。FETは、定常状態でのゲート電流は微小電流しか流れず、他方、過入力が生じている状態では、急速に電流量が増大するゲート特性を有する。図2は、横軸にゲート電圧Vg、縦軸にゲート電流Igをとった、FETのゲート特性を示すグラフの一例である。従って、FET21a、21bのいずれかにおいて過入力が生じている場合、差動回路40に入力されるゲート電流Ga、Gbは増大する。
【0025】
実施形態のLINC装置1では、FET21aと合成点50とを接続する伝送線路30aと、FET21bと合成点50とを接続する伝送線路30bとの夫々の長さは、上述したように相異なる。これに伴って、LINC信号生成部10は、伝送線路30a、30bの長さの差異に応じたインピーダンスの差異に合わせて、信号Sa、Sbの位相を相異なるものに調整する。従って、LINC信号生成部10により生成される信号Sa、Sb、ひいてはゲート電流Ga、Gbの夫々の位相は互いに異なる。
【0026】
各FET21a、21bに入力される信号Sa、Sbは、伝送線路30a、30bの長さの違いによる相互インピーダンスの差により位相差が生じている。このため、信号Sa、Sbが同一の振幅を有する場合であっても、過入力が生じるタイミングにはずれが生じる。つまり、FET21a、21bでは、過入力に起因するゲート電流の急速な増加が同時に発生しない。ゲート電流Ga、Gbの位相差と過入力発生時のタイミングの関係を図3のグラフに示す。図3のグラフは、FET20a、20bの夫々について、ドレイン電流(FET21a:細実線、FET21b:細一点鎖線)と、ゲート電流(FET21a:太実線、FET21b:太点線)とを示すものである。
【0027】
図3は、FET21aにおいて過入力が生じている場合について示している。FET21aに対する過入力のため、FET21aではゲート電流Gaが多量に流れ、位相180度付近に高いピークが生じている。このとき、差動回路40に対してこのような多量のゲート電流Gaが入力される。他方で、FET21bにおいては過入力が生じておらず、ピークが存在しない。尚、FET21bにおいて過入力が生じている場合であっても、位相差により、ゲート電流Gaと同位相で、つまり同一タイミングではピークが生じない。
【0028】
上述した構成により、FET21a、21bのいずれにかにおいて過入力が生じている場合、差動回路40に入力するゲート電流Ga、Gbのうち、過入力が生じているFETからのゲート電流が増大する。例えば、市販のFETでは、飽和動作状態にない定常時のゲート電流値についての規格がある。従って、FET21a、21bのいずれかにおいて過入力が生じている場合、一方のゲート電流は、過入力により増大し、他方のゲート電流は該規格により規定される電流値となる。従って、差動回路40より出力される差分信号の電圧を検出することで、FET21a、21bにおいて過入力が生じていること、及び過入力が生じているFETを検出出来る。図1に示されるように、差動回路40は、入力されるゲート電流GaとGbとの差分を出力する。図1の例では、差動回路40では、逆相入力端子にFET21a、正相入力端子にFET21bが夫々接続されており、過入力に応じて増幅するゲート電流がいずれのFETより入力されるものであるかが、出力電圧の正負により判別出来る。
【0029】
このように実施例のLINC装置1では、複数の並列FETアンプについて、夫々過入力の検出用回路を設けることなく、複数のFETにおける過入力の発生を検出出来る。また、過入力発生時に大幅に増大するゲート電流を、例えば隣接するFET毎に比較する構成であるため、高精度の基準電圧の供給がない場合も、好適に過入力の検出が可能となる。尚、図1を参照して示した例においては、2つのFET21a、21bを備えるLINC装置1について説明しているが、2つ以上のFETを備えるLINC装置についても上述の実施例は適用可能である。
【0030】
(3)第1変形例
図4を参照して、開示の信号増幅装置の変形例について説明する。図4は、信号増幅装置の変形例であるLINC装置2の構成を示す図である。尚、図4において、図1と同様の構成については、同一の番号を付して説明を省略している。
【0031】
図4に示されるように、LINC装置2は、互いに逆の特性を有する可変増幅器60a及び可変減衰器60bを備える。このうち、可変増幅器60aは、信号Saの伝送経路におけるLINC信号生成部10と増幅器20aとの間に配置され、可変減衰器60bは、信号Sbの伝送経路におけるLINC信号生成部10と増幅器20bとの間に配置される。
【0032】
可変増幅器60aは、高周波の電気信号の振幅を可変である所定の振幅に応じて増幅させる可変アンプである。可変増幅器60aは、差動回路40に接続され、差動回路40における入力ゲート電流GaとGbとの差分信号Sdの入力を受ける。該差分信号Sdは、差動回路40に入力されるゲート電流Ga、Gbの電圧の差分に相当する振幅、言い換えれば電圧を有する。可変増幅器60aは、差動回路40から入力される差分信号Sdに応じて信号Saの増幅振幅を決定する。
【0033】
具体的には、可変増幅器60aは、差動回路40から入力される差分信号Sdが負の電圧を有する場合、つまりゲート電流Gaの電圧がゲート電流Gbの電圧を上回る場合、差分信号Sdに示される電圧の差分に応じて、信号Saの振幅を増幅させる。言い換えれば、可変増幅器60aは、信号Saに対して、差分信号Sdに示される負の振幅を適用することで、信号Saの振幅を負の方向に増幅、言い換えれば減衰させる。他方で、可変増幅器60aは、差動回路40から入力される差分信号Sdが正の電圧を有する場合、つまりゲート電流Gaの電圧がゲート電流Gbの電圧以下となる場合、信号Saの増幅を行わない。
【0034】
可変減衰器60bは、高周波の電気信号の振幅を可変である所定の振幅に応じて減衰させる可変アッテネイタである。可変減衰器60bは、差動回路40に接続され、差動回路40における入力ゲート電流GaとGbとの差分信号Sdの入力を受ける。可変減衰器60bは、差動回路40から入力される差分信号Sdに応じて信号Sbの減衰振幅を決定する。
【0035】
具体的には、可変減衰器60bは、差動回路40から入力される差分信号Sdが正の電圧を有する場合、つまりゲート電流Gbの電圧がゲート電流Gaの電圧を上回る場合、差分信号Sdに示される電圧の差分に応じて、信号Sbの振幅を減衰させる。他方で、可変減衰器60bは、差動回路40から入力される差分信号Sdが負の電圧を有する場合、つまりゲート電流Gbの電圧がゲート電流Gaの電圧以下となる場合、信号Sbの減衰を行わない。
【0036】
以上、説明した構成によれば、可変増幅器60aは、増幅器20aにおいて過入力が生じている場合に、ゲート電流Gaの増加により検出される該過入力に応じて、信号Saの振幅を減衰させることが出来る。他方、可変減衰器60bは、増幅器20bにおいて過入力が生じている場合に、ゲート電流Gbの増加により検出される該過入力に応じて、信号Sbの振幅を減衰させることが出来る。
【0037】
従って、その他の制御用の回路や素子を用いることなく、比較的簡単な構成により、過入力が生じているFETについて、入力信号Sinの振幅を低減させることが可能となる。入力信号Sinの振幅を低減することで、増幅器20a、20bに対する電流の加入力を抑制することが可能となり、LINC装置2の破壊や特定の劣化を防止することが可能となる。
【0038】
(4)第2変形例
図5を参照して、開示の信号増幅装置の第2変形例について説明する。図5は、信号増幅装置の変形例であるLINC装置3の構成を示す図である。尚、図5において、図1又は図4と同様の構成については、同一の番号を付して説明を省略している。
【0039】
図5に示されるように、LINC装置3のLINC信号生成部10は、入力信号Sinを分割する際の信号Sa、Sbの振幅及び位相を制御する振幅位相制御部70a、70bを備える。
【0040】
振幅位相制御部70a、70bは、差動回路40aに接続され、差動回路40から入力される信号に基づいて、信号Sa、Sbの振幅及び位相の制御を行うための、DSP(Digital Signal Processor)などの信号処理装置である。振幅位相制御部70a、70bが行う振幅制御の例について、図6に例を示す。
【0041】
図6は、LINC信号生成部10に入力される入力信号Sinの信号Sa、Sbへの分割を示す図である。尚、図6では、SaとSbとの位相差を90度として記載している。
【0042】
LINC装置3では、過入力が生じていない場合においてはFET21a、21bを所定の飽和状態で動作させるために、LINC信号生成部10は、図6(a)に示されるように、信号Sa、Sbの振幅が一定となるよう、入力信号Sinを分解する。
【0043】
この後、差動回路40の動作により、FET21aにおいて信号Saの過入力が検出される場合、振幅位相制御部70a、70bは、図6(b)に示されるように信号Sa、Sbの振幅を夫々変化させる。具体的には、振幅位相制御部70aは、差動回路40から供給される信号の入力レベルに応じて、FET21aに対する信号Saの過入力を解消するよう、信号Saの振幅を低減させる。振幅位相制御部70bは、信号Saの振幅低減分を補償するよう、言い換えれば変更後のSaとSbとの合成信号の振幅が入力信号Sinとなるよう、信号Sbの振幅を増加させる。
【0044】
以上の構成によれば、LINC装置3から出力される出力信号Soutの電力低下を極力生じないように、FETに対する過入力を解消することが可能となる。尚、上述の例において、信号Sbの振幅増加により、FET21bにおいて過入力が検出される場合、信号Sbの振幅増加値を過入力が生じないレベルに低減させる制御を行ってもよい。
【0045】
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
【0046】
(付記1)
入力信号を分割して、所定の振幅を有し且つ位相の相異なる複数の分割信号を生成する信号生成器と、FET(Field Effect Transistor)を用いて前記複数の分割信号を夫々増幅する複数の増幅器と、前記複数の増幅器の夫々で増幅された信号が通過する、長さが相異なり且つ端子間のアイソレーションを有しない伝送線路と、前記複数の増幅器の夫々に入力されるゲート電流を比較することで、前記複数の増幅器のいずれかにおいて飽和状態を超過する前記分割信号の過大入力が生じているか否かを検出する検出器とを備えることを特徴とする信号増幅装置。
【0047】
(付記2)
前記複数の増幅器のいずれかにおいて前記過大入力が生じている場合、前記複数の増幅器に入力されるゲート電圧の差分に基づいて、前記過大入力が生じている前記増幅器に入力される前記分割信号の振幅を低減する補正器を更に備えることを特徴とする付記1に記載の信号増幅装置。
【0048】
(付記3)
前記信号生成器は、前記複数の増幅器に入力されるゲート電圧の差分に基づいて、前記過大入力が生じている前記増幅器に入力される前記分割信号の振幅を低減することを特徴とする付記1に記載の信号増幅装置。
【0049】
(付記4)
前記信号生成器は、前記複数の増幅器に入力されるゲート電圧の差分及び前記過大入力が生じている前記増幅器に入力される前記分割信号の振幅の低減度合いの少なくとも一方に基づいて、前記過大入力が生じていない前記増幅器に入力される前記分割信号の振幅を増加することを特徴とする付記3に記載の信号増幅装置。
【0050】
(付記5)
入力信号を分割して、所定の振幅を有し且つ位相の相異なる複数の分割信号を生成する信号生成器と、FET(Field Effect Transistor)を用いて前記複数の分割信号を夫々増幅する複数の増幅器と、前記複数の増幅器の夫々で増幅された信号が通過する、、長さが相異なり且つ端子間のアイソレーションを有しない伝送線路とを備える信号増幅装置における信号増幅方法であって、前記複数の増幅器の夫々に入力されるゲート電流を比較する比較工程と、前記比較工程における比較結果に基づいて、前記複数の増幅器のいずれかにおいて飽和状態を超過する前記分割信号の過入力が生じているか否かを検出する検出工程とを備えることを特徴とする信号増幅方法。
【0051】
(付記6)
前記伝送線路は、前記複数の増幅器と所定の合成点とを接続し、該合成点において、各増幅機において増幅され、夫々長さの異なる伝送線路を通過した前記分割信号を合成することを特徴とする付記1に記載の信号増幅装置。
【0052】
(付記7)
前記合成器における、前記複数の増幅器から合成点までの前記伝送線路における相異なる長さとは、どの2つの前記増幅器から前記合成点までの電気長の差も、前記入力信号の波長の整数倍とならないことを特徴とする付記6に記載の信号増幅装置。
【0053】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う信号増幅装置及び方法などもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1、2、3 LINC装置、
10 LINC信号生成部、
20a、20b 増幅器、
21a、21b FET(Field Effect Transistor)、
22a、22a ゲート電流監視回路、
30a、30b 伝送線路、
40 差動回路、
50 合成点、
60a 可変増幅器、
60b 可変減衰器、
70a、70b 振幅位相制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を分割して、所定の振幅を有し且つ位相の相異なる複数の分割信号を生成する信号生成器と、
FET(Field Effect Transistor)を用いて前記複数の分割信号を夫々増幅する複数の増幅器と、
前記複数の増幅器の夫々で増幅された信号が通過する、長さが相異なり且つ端子間のアイソレーションを有しない伝送線路と、
前記複数の増幅器の夫々に入力されるゲート電流を比較することで、前記複数の増幅器のいずれかにおいて飽和状態を超過する前記分割信号の過入力が生じているか否かを検出する検出器と
を備えることを特徴とする信号増幅装置。
【請求項2】
前記複数の増幅器のいずれかにおいて前記過入力が生じている場合、前記複数の増幅器に入力されるゲート電圧の差分に基づいて、前記過入力が生じている前記増幅器に入力される前記分割信号の振幅を低減する補正回路を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の信号増幅装置。
【請求項3】
前記信号生成器は、前記複数の増幅器に入力されるゲート電圧の差分に基づいて、前記過入力が生じている前記増幅器に入力される前記分割信号の振幅を低減することを特徴とする請求項1に記載の信号増幅装置。
【請求項4】
前記信号生成器は、前記複数の増幅器に入力されるゲート電圧の差分及び前記過入力が生じている前記増幅器に入力される前記分割信号の振幅の低減度合いの少なくとも一方に基づいて、前記過入力が生じていない前記増幅器に入力される前記分割信号の振幅を増加することを特徴とする請求項3に記載の信号増幅装置。
【請求項5】
入力信号を分割して、所定の振幅を有し且つ位相の相異なる複数の分割信号を生成する信号生成器と、FET(Field Effect Transistor)を用いて前記複数の分割信号を夫々増幅する複数の増幅器と、前記複数の増幅器の夫々で増幅された信号が通過する、、長さが相異なり且つ端子間のアイソレーションを有しない伝送線路とを備える信号増幅装置における信号増幅方法であって、
前記複数の増幅器の夫々に入力されるゲート電流を比較する比較工程と、
前記比較工程における比較結果に基づいて、前記複数の増幅器のいずれかにおいて飽和状態を超過する前記分割信号の過入力が生じているか否かを検出する検出工程と
を備えることを特徴とする信号増幅方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−49953(P2012−49953A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192056(P2010−192056)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】