説明

信号波形の品質改善方式

【課題】電子計算機およびその周辺機器に接続された通信用ケーブルの長さに応じて、良好な波形品質が確保できるように通信信号の波形を調整する。
【解決手段】通信用ケーブルにケーブルの長さを識別可能なID情報を保存したメモリを内蔵し、電子計算機または周辺機器に搭載された制御用マイコンが通信用ケーブルのID情報を読み出し、読み出したID情報から通信用ケーブルの長さを判別し、通信用LSIを良好な波形品質を得られるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信用ケーブルで接続された電子計算機、もしくは電子計算機と周辺機器の間で伝送される信号波形の、波形品質改善方式に関する。
【背景技術】
【0002】
電子計算機の高速化に伴い、通信用ケーブルを介した電子計算機間、および電子計算機と周辺機器間の通信速度も高速化している。一般に、高速信号は低速信号と比較して信号の減衰が大きく、ノイズの影響も受けやすい。そのため、安定した高速通信を実現するためには、信号伝送路の特性に応じて、出力信号波形の調整や入力信号波形の補正を適切に行い、信号波形の品質を確保する必要がある。
【0003】
電子計算機間および電子計算機と周辺機器間において、通信用ケーブルを介した高速通信を行う場合に信号波形の品質を確保する方法としては、通信に使用するケーブルの種類や長さを指定する方法が考えられる。指定したケーブルを使用した場合において良好な通信波形が得られるように、あらかじめ電子計算機および周辺機器へ出力波形の調整値と入力波形の補正量を設定することで、信号波形の品質を確保する。
【0004】
また、ユーザが電子計算機に対して使用する通信用ケーブルの長さ情報を入力し、入力された情報に応じて電子計算機が信号波形の設定を切り替えて、波形品質を確保する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−341177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通信に使用するケーブルの種類や長さを指定する方法では、指定したケーブルの長さ以上に離れて設置された電子計算機および周辺機器を接続することは出来ない。また、ケーブルで接続する電子計算機もしくは周辺機器を隣接して設置しても、指定した長さのケーブルを使用して接続する必要があるため、必要最低限の長さのケーブルを使用した場合と比較してケーブルのコストが上昇するという問題がある。
【0007】
ユーザがケーブルの長さ情報を電子計算機へ入力する方法では、ユーザが誤った情報を入力した場合に適切に信号波形が調整されず、通信でエラーが発生する可能性がある。また、電子計算機に複数の電子計算機や周辺機器を接続する場合、ユーザがケーブルの長さ情報を入力する手間が増えるとともに、誤った長さ情報を入力してしまう危険性が増大する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、通信用ケーブルにケーブルのID情報を記録したメモリを備え、電子計算機または周辺機器の制御部がこのID情報を読み出し、読み出したID情報をもとにケーブルの長さを判別して、ケーブルの長さから通信用LSIの設定値を決定し、通信用LSIへ設定値を書き込み、通信信号波形の調整を行うことを特徴とした信号波形の品質改善方式である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、複数の長さのケーブルに対して、通信信号の波形を適切に調整できる。また、ユーザがケーブルの長さ情報を入力する必要が無いため、ユーザの操作ミスと情報入力の手間をなくし、確実に通信信号の波形を調整することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるケーブル伝送信号の波形品質改善方式を備えた電子計算機の一例を示す説明図。
【図2】制御用マイコンの処理の一例を示すフロー。
【図3】通信用ケーブルのID情報と通信用ケーブルの長さの対応を示すテーブル。
【図4】通信用ケーブルの長さと通信用LSIの設定レジスタへ書き込む設定値の対応を示すテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の方式を適用した電子計算機101の一例を示す説明図である。電子計算機101は、他の電子計算機もしくは周辺機器と通信を行うための通信用LSI102と、通信用LSI102の設定を行う制御用マイコン105と、通信用ケーブルを接続するためのコネクタ106とを備える。
【0013】
通信用LSI102は、信号波形調整部103と、設定レジスタ104とを内部に備える。信号波形調整部103は、設定レジスタ104に書き込まれた設定値に応じて、出力信号波形の調整と入力信号波形の補正を行う。
【0014】
ケーブル109とケーブルコネクタ107とは、他の電子計算機もしくは周辺機器と通信を行うために、電子計算機101のコネクタ106に取り付ける通信用ケーブルである。ケーブルコネクタ107の内部には、ケーブルの長さを識別するためのID情報を保存したメモリ108を内蔵している。ID情報を保存したメモリ108は、コネクタ106を介して制御用マイコン105と接続される。また、通信用LSI102は、コネクタ106とケーブルコネクタ107を介してケーブル109と接続され、他の電子計算機もしくは周辺機器との通信を行う。
【0015】
図2に、制御用マイコン105の処理フローを示す。以降、図2に示したフローに従って本発明の方式を説明する。コネクタ106にケーブルコネクタ107が接続されると、制御用マイコン105はSTEP1において、メモリ108からID情報を読み出す。
【0016】
STEP2において、制御用マイコン105は、図3に示すケーブルのID情報とケーブルの長さの対応関係を表すテーブル情報を参照し、STEP1で読み出したID情報から、コネクタ106に接続された通信用ケーブルの長さを判別する。例えば、STEP1において、メモリ108から読み出したID情報が0002であった場合は、コネクタ106に接続された通信用ケーブルの長さを2mと判別する。図3に示すテーブル情報は、あらかじめ各ID情報に対応する通信用ケーブルの長さをもとに作成し、制御用マイコン105の内部メモリに保持するか、もしくは制御用マイコン105からアクセス可能な外部メモリに保存する。
【0017】
STEP3において、制御用マイコン105は、図4に示す通信用ケーブルの長さと通信用LSI102の設定レジスタ104へ書き込む設定値の対応関係を表すテーブル情報を参照し、STEP2で判別した通信用ケーブルの長さから、設定レジスタ104へ書き込む設定値を決定する。例えば、STEP2において通信用ケーブルの長さを2mと判別した場合は、設定値2を設定レジスタ104へ書き込む設定値として決定する。
【0018】
図4に示すテーブル情報に含まれる設定レジスタ104へ書き込む設定値は、あらかじめ各長さのケーブルにおいて良好な波形品質が得られる値を実験的に求めて決定する。図4に示すテーブル情報は、制御用マイコン105の内部メモリに保持するか、もしくは制御用マイコン105からアクセス可能な外部メモリに保存してもよい。
【0019】
STEP4において、制御用マイコン105は、通信用LSI102の設定レジスタ104に対して、STEP3で決定した設定値を書き込む。
【0020】
このように、設定レジスタ104へSTEP3で決定した設定値を書き込むことで、通信用LSI102の信号波形調整部103が出力信号波形の調整と入力信号波形の補正を行い、通信信号の波形品質が確保されるという効果が得られる
【符号の説明】
【0021】
101 電子計算機、102 通信用LSI、103 信号波形調整部、104 設定レジスタ、105 制御用マイコン、106 コネクタ、107 ケーブルコネクタ、108 メモリ、109 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信用ケーブルを接続するコネクタと、通信用LSIとを備えた電子計算機において、
前記電子計算機は、前記通信用LSIを制御する制御部を備え、
前記通信用LSIは、信号波形を調整する信号波形調整部と、レジスタとを有し、
前記通信用ケーブルは、ケーブル長を識別するID情報を保存したメモリを備え、
前記制御部は、
前記ID情報を読み出し、
前記読み出したID情報から通信用ケーブル長を判別し、
前記判別したケーブル長から通信用LSIの設定値を決定し、
前記通信用LSIのレジスタへ設定値を書き込み、
前記信号波形調整部は、前記レジスタに書き込まれた設定値に基づいて、通信信号波形の調整を行うことを特徴とする電子計算機。
【請求項2】
前記電子計算機は、前記ID情報と前記通信用ケーブル長とを対応付けたテーブル情報を有することを特徴とする請求項1記載の電子計算機。
【請求項3】
通信用ケーブルを接続するコネクタと、通信用LSIとを備えた電子計算機における信号波形品質の改善方法であって、
前記電子計算機は、前記通信用LSIを制御する制御部を備え、
前記通信用LSIは、信号波形を調整する信号波形調整部と、レジスタとを有し、
前記通信用ケーブルは、ケーブル長を識別するID情報を保存したメモリを備え、
前記制御部は、
前記ID情報を読み出し、
前記読み出したID情報から通信用ケーブル長を判別し、
前記判別したケーブル長から通信用LSIの設定値を決定し、
前記通信用LSIのレジスタへ設定値を書き込み、
前記信号波形調整部は、前記レジスタに書き込まれた設定値に基づいて、通信信号波形の調整を行うことを特徴とする信号波形品質の改善方法。
【請求項4】
前記電子計算機は、前記ID情報と前記通信用ケーブル長とを対応付けたテーブル情報を有することを特徴とする請求項3記載の信号波形品質の改善方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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