説明

信号灯器の腕金用取付け金具

【課題】車両の衝突等によって作用する、いずれの方向からの信号灯器に対する外力に対処して、これを吸収してクッション材となって前記灯器の損傷を可及的に防ぐことのできる信号灯器の支持装置を提供する。
【解決手段】支柱に設けた腕金に着脱自在に吊設する、中空筒状の金具基枠1の下面に、該金具基枠1の内外を連通する開口部8を形成し、該開口部8を通じて前記金具基枠1内に配した、信号灯器に取付ける接続枠2の上端に、前記開口部の縁部に掛止する掛止部片10を設ける。そして、掛止部片10と、該掛止部片10に相対する、前記金具基枠1の構成材に、これらの間に介在させたコイルばね11を圧接させて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号灯器(概し、歩行者用)を支柱に設けた腕金に取付けるために用いる、信号灯器の腕金用取付金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
支柱に設けた腕金に固定する固定ブロックと信号灯器に固定する分離ブロックと、これら両者を連絡するコイルばねと、該コイルばねを取り囲むケースおよびケースの前記分離ブロックの嵌合部に設けたロック機構とで構成した構造のものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
この従来構造のものは、支柱に車両が衝突すると、その外力がロック機構に作用して分離ブロックが固定ブロックから分離し、信号灯器に作用する外力を逃がし、信号灯器の変位をコイルばねの弾性変形で吸収するようにして、全方位から作用する外力を確実に逃がすことが可能な、死角角度のない信号灯器の支持装置を得ることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−109186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来例は、常態時のロック機構が作用して信号灯器の正常な位置を保つが、信号灯器は車両衝突等による外力の負荷によりコイルばねによって吊るされた状態となって灯器としての機能を果たさなくなり、また、信号灯器を正常に働かすにはロック機構を原状に戻す必要があり、いずれにしても、ロック機構を原状に戻さない限り車両の往来に影響を与え、戻すにも作業が煩雑である。
【0006】
本発明は、車両の衝突等によって作用するいずれの方向からの信号灯器に対する外力に対処し、これを吸収してクッション材となって信号灯器の損傷を可及的に防ぐことのできる信号灯器の支持装置を提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
支柱に設けた腕金に着脱自在に吊設する、中空筒状の金具基枠の下面に、該金具基枠の内外を連通する開口部を形成し、開口部を通じて前記金具基枠内に配した、信号灯器に取付ける接続枠の上端に、前記開口部の縁部に掛止する掛止部片を設け、該掛止部片と、該掛止部片に相対する、前記金具基枠の構成材に、これらの間に介在させたコイルばねを圧接させた構成としたものである。また、この構成に金具基枠の下面の、開口部の両側に、掛止部片のL字形先端部が係合する長孔を設けた点を付加することにより常態時に信号灯器の安定した吊設状態を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の衝突による外力は、どの方向からの衝突によるものであっても、コイルばねを通じて接続枠を介して信号灯器に負荷され、従って、衝突の方向性を選ばない耐久的な信号灯器支持装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第一実施例の使用状態を示す正面図。
【図2】図1の側面図。
【図3】図1の一部拡大縦断面図。
【図4】外力を受けたときの図3の縦断面図。
【図5】図3の一部欠截平面図。
【図6】第一実施例の金具基枠の一部欠截平面図。
【図7】図6のx−x線断面図。
【図8】第一実施例の金具基枠の斜視図。
【図9】第一実施例の金具基枠の展開図。
【図10】第一実施例の接続枠の正面図。
【図11】図10の平面図。
【図12】第二実施例の一部拡大縦断面図。
【図13】外力を受けたときの図12の縦断面図。
【図14】図12の一部欠截平面図。
【図15】第二実施例の金具基枠の第一構成材の斜視図。
【図16】第二実施例の金具基枠の第二構成材の斜視図。
【図17】第二実施例の接続枠の正面図。
【図18】図17の平面図。
【実施例】
【0010】
本発明に係る、第一、第二実施例の、信号灯器の腕金用取付け金具A,A´は、ほぼ方形筒状の金具基枠1,1´と接続枠2,2´を組付けて成り、支柱pに突設した腕金aの先端部の上側に、締付け杆3を重ね合わせ、該締付け杆3に、腕金aの下側に配した、金具基枠1,1´の蓋板4より突出した(蓋板4を金具基枠1,1´のフランジ1a,1´aに締付けナット6Aとで締付けた)止着ボルト5を挿通させ、締付け杆3より突出したボルト5先端に止着ナット6を螺合、締付けることによって基枠1,1´を腕金a先端部に取付け、また、該金具基枠1,1´に組付けた前記接続枠2,2´を、信号灯器Sに立設した取付けボルト7を利用して信号灯器Sに取付けて信号灯器Sと腕金a間に介在させて用いるのである。
【0011】
そして、金具基枠1,1´は、その下面に、該基枠1,1´の内部と外部とを連通する開口部8を設け、この開口部8を通じて基枠1,1´内部に収めた接続枠2,2´の上端に、前記開口部8の縁部を構成する受止部片9に掛止する、L字状の掛止部片10を四方に設けてある。掛止部片10は、該掛止部片10と前記基枠1,1´の蓋板4との間に介在させて前記基枠1,1´内に収めたコイルばね11の付勢によって前記受止部片9方向に押圧され、該掛止部片10を備えた接続枠2,2´は安定した吊下状態を保つ。
【0012】
前記接続枠2,2´は、この掛止部片10を上端部四方に備えた、円筒状の組付け筒12の下端に、該下端部を拡開状に形成して設けた鍔部片13を備え、該鍔部片13に係止させるようにして止着リング14を前記組付け筒12の外側に係合して組付けたものである。そして、接続枠2,2´は、止着リング14に、前記取付けボルト7を貫通させて、その先端にナット15を螺合することにより信号灯器S上に取付け、立設される。
【0013】
信号灯器Sは、接続枠2,2´を組合わせた金具基枠1,1´の内部に、基枠1,1´の上面開口部側からコイルばね11を係合させ、金具基枠1,1´の上端のフランジ1aと該フランジ1aに重ね合わせた蓋板4を、止着ボルト5とこれに螺合した締付けナット6Aとで締付けて、蓋板4、コイルばね11、金具基枠1,1´および接続枠2,2´を互いに組付けて、支柱pの腕金aに取付けられる。すなわち、取付金具A,A´の前記基板4(金具基枠1,1´)に突設状に組付けた、一対の前記止着ボルト5,5間に係合するようにして腕金aと組合わせ、止着ボルト5,5間に(止着ボルト先端を挿通させるようにして)締付け杆3をわたし、締付け杆3より突出するボルト5先端に止着ナット6を螺合、締付けることにより金具基枠1,1´側を腕金aに取付ける(なお、第一実施例の止着ボルト5はT字ボルト、第二実施例は丸頭ボルトを用いているが、いずれを用いても良く、他の頭形式のものを用いても不都合はない。第二実施例は緩み止めナット6Bを用いているが、第一実施例にもこれを用いるべきはいうまでもない)。
【0014】
そして、接続枠2,2´側は、信号灯器Sに突設した取付けボルト7に止着リング14を係合し、リング14より突出するボルト7先端にナット15を螺合、締付けることにより信号灯器Sと組付けられ、信号灯器Sは腕金用取付金具A,A´を介して腕金aに吊設される。
【0015】
信号灯器Sの、この吊設状態時に、支柱pに例えば、車が衝接して支柱pに外力が負荷されたとすると、その外力は、腕金aに固定した金具基枠1,1´を通じて接続枠2,2´を介して信号灯器Sに伝わろうとするが、基枠1,1´と接続枠2,2´の間にコイルばね11が介在しているので、コイルばね11の変形によって信号灯器Sに伝わろうとする外力は緩和されることになるのである。
【0016】
なお、第一実施例と第二実施例の、各取付け金具A,A´(各部材を熔接手段を用いないでプレス成形してあるので、比較的安価な製品を提供できる)は、概ね、該取付け金具A,A´を構成する金具基枠1,1´の構造を異にする点が相違するだけで残余の点はほぼ同じで、以下この相違点について説明する。
【0017】
第一実施例の金具基枠
第一実施例の金具基枠1は、図9で示す展開図で表わせる金属板を折り曲げて上下面開口の方形中空体で構成したもので、ある。金属板は、金具基枠1の、前後の構成部片1b,1b´と、左右の構成部片1c,1c´の基端部で取り囲むようにして前記開口部8を備え、該開口部8の隅角部に、開口部8内方向に突出する前記受止部片9を設け、該受止部片9,9間を切欠状にして、前記受止部片9に掛止する、前記接続枠2の掛止部片10を挿通して基枠1内に収める係合孔17を、前記開口部8の両側に連通させて設け、また、左右の構成部片1c,1c´の自由端には前記フランジ1a,1aの構成片(フランジと同一符号で示す)を連設し、該構成片と左右の構成部片1c,1c´の境界部中央に前記止着ボルト5を設けてあり、更に、前後の構成部片1b,1b´の自由端には、金具基枠1上に載せる前記蓋板4の受部片1dを設けてある。
【0018】
そして、図9で示す展開状態にある金属板を所定の個所(図9では2点鎖線で示してある)で山方向に折り曲げることにより、前、後、左、右の各構成部片で構成した中空方形状の、第一実施例の金属基枠1を得られる。
【0019】
この金具基枠1に、係合孔17に接続枠2の4方に設けた掛止部片10を挿通させるように基枠1内に納め、そして、該掛止部片10を金属基枠1側の受止部片9に重ね合わせるようにして該受止部片9にコイルばね11を基枠1内に納め、基枠1と前記蓋板4を止着ボルト5と締付けナット6Aによってコイルばね11の付勢に抗して強制的に締付けることによって、金具基枠1と、その他の、金具Aの構成材2等は組付けられる。
【0020】
第二実施例の金具基枠
第二実施例の金具基枠1´は、受止部片9を構成する中央部片1´dの両側に前後の構成部片1´b,1´b´又は、左右の構成部片1´c,1´c´を、両側に相対設して構成した、第一、第二の溝状枠体1´A,1´B(図15と図16で示す)を順次接続枠2´に組付けて構成したものである。
【0021】
すなわち、受止部片9に設けた、前記開口部8を構成する半円状の切欠部8aの内側に、前、後の構成部片1´b,1´b´の基部に開口部8に対して独立して形成した前記係合孔19に、接続枠2´に設けた(接続枠2´の四方に設けた内の一組の一対の)掛止部片10を係合するようにして、第一構成枠体1´Aと接続枠2´に組合わせる。そして、該第一構成枠体1´Aの下側において、前記開口部8を構成する半円状の切欠部8bの内側に、左右の構成部片1´c,1´c´の基部に第一構成枠体1´Aと同様に開口部8に対して独立して形成した係合孔19に接続枠2´に設けた掛止部片10(接続枠2´の四方に設けたものの内の他の一組の一対を構成する)を係合するようにして、第二構成体1´Bを接続枠2´に組合わせ、第一構成体1´Aの中央部片1´dの4隅に設けた透孔21に、第二構成体1´Bの中央部片1´dの4隅に設けた突子22を係合するようにして両構成体1´A,1´Bを互いに組合わせ、各部片1´b,1´b´、1´c,1´c´で取り囲んだ中空部内にコイルばね11を係合し、次いで、第一実施例の場合と同様に、両構成体1´A,1´Bで成る金具基枠1´と蓋板4を、止着ボルト5と締付けナット6Aによってコイルばね11の付勢に抗して強制的に締付けることによって、金具基枠1´と接続枠2´等は組付けられ、取付け金具A´が構成される。
【符号の説明】
【0022】
1,1´ 金具基枠
2,2´ 接続枠
8 開口部
10 掛止部片
11 コイルばね
p 支柱
S 信号灯器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱に設けた腕金に着脱自在に吊設する、中空筒状の金具基枠の下面に、該金具基枠の内外を連通する開口部を形成し、該開口部を通じて前記金具基枠内に配した、信号灯器に取付ける接続枠の上端に、前記開口部の縁部に掛止する掛止部片を設け、該掛止部片と、該掛止部片に相対する、前記金具基枠の構成材に、これらの間に介在させたコイルばねを圧接させた、信号灯器の腕金用取付け金具。
【請求項2】
金具基枠の下面の、開口部の両側に、掛止部片のL字形先端部が係合する長孔を設けた請求項1記載の信号灯器の腕金用取付け金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−180879(P2011−180879A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45227(P2010−45227)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(592157076)イワブチ株式会社 (80)
【Fターム(参考)】