説明

修正部材及びその製造方法

【課題】修正部材を被転写紙に転写する際に、該修正部材の割れ発生を防止し、かつ、該修正部材の転写を完了する際に該修正部材が切断し易くし、しかも、該修正部材を被転写紙に転写した後において、凝集剥離させた後の該受容層の本体部分の表面の光沢感を抑制させると共に、水性インクによる印字、印画の滲みの発生や変色の発生を防止した修正部材を低コストで提供する。
【解決手段】修正部材10において、(イ)前記受容層4が、被膜形成樹脂と充填剤とを含む被膜で構成され、(ロ)前記被膜形成樹脂が、ポリビニルアルコール、又は、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンとからなる樹脂混合物で構成され、そして、(ハ)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜25μm、平均吸油量:100〜170ml/100gのリン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体で構成されているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修正部材に関するものであり、さらに、詳しくは、紙、フィルム、ラベル、人形等の有形部の表面に水性インクによる印字、印画された文字、図形、模様等の像を消去し、修正するのに適した修正部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、フィルム、ラベル、人形等の有形物の表面に印字、印画された文字、図形、模様等の像を消去し修正するのに適した修正部材は、既に、提案されている(特許文献1,2を参照。)。図3は、このような従来の修正部材の拡大断面図である。図3において110は、修正部材である。従来の修正部材110は、離型層101と、該離型層101の表面に設けられた支持体102と、該支持体102の表面に設けられた離型層103と、該離型層103の表面に設けられた白色隠蔽層105と、該白色隠蔽層105の表面に設けられた粘着剤層106と、を有している。
【0003】
図4は、従来の修正部材の使用態様を説明する説明図であって、(a)は、被転写紙の表面に印字、印画された文字、図形、模様等の像を覆い被せるように粘着剤層を下にして、修正部材を被転写紙の表面に接着させる段階(第1段階)を示し、(b)は、離型層を保持した状態で白色隠蔽層から支持体を剥離する段階(第2段階)を示し、そして、(c)は、露出した白色隠蔽層の表面に修正される文字、図形、模様等の像を印字、印画する段階(第3段階)を示す。
【0004】
従来の修正部材110は、図4(a)に示されているように、被転写紙107の表面に印字、印画された文字、図形、模様等の像を覆い被せるようにして粘着剤層106を下にして接着させる段階(第1段階)、図4(b)に示されているように、離型層103を保持した状態で白色隠蔽層105から支持体102を剥離する段階(第2段階)、及び、図4(c)に示されているように、露出した白色隠蔽層105の表面に修正される文字、図形、模様等の像を印字、印画する段階(第3段階)を順次経て使用される。
【特許文献1】特開平2005−220156号公報
【特許文献2】実用新案登録第2561532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の修正部材110においては、支持体102の両面に離型処理を施して(例えば、シリコーンによる離型処理を施して)離型層103を設けることにより、支持体102に離型層103を保持した状態で白色隠蔽層105の面から離型層103の面を剥離させている。このような一方の層の面と他方の層の面がそれらの接する面で剥離される「剥離」は、「界面剥離」といわれており、かかる「界面剥離」に係わる技術が一般的となっている。この「界面剥離」に係わる技術が一般的になっている理由は、従来の修正部材110においては、離型層103を保持した状態で支持体102を離型層103の界面から剥離しなければ、軽剥離を実現できないからである。
【0006】
しかしながら、従来の修正部材110においては、支持体102が離型層103を保持した状態で白色隠蔽層105から界面剥離するので、転写を終了する際に修正部材110が切断されたり、白色隠蔽層105の表面が剥がされたり、白色隠蔽層105の表面に割れが発生したりする、という問題があった。
【0007】
また、従来の修正部材110においては、支持体102に離型層103を保持した状態で白色隠蔽層105の面から離型層103の面が界面剥離されるので、界面剥離された白色隠蔽層105の表面が平滑面となって著しく光沢感を有するものとなり、そのために、白色隠蔽層105の表面がぎらついて目が疲れやすいものになる、という問題があった。それ故、シリコーン中に微粒子を導入したり、また、表面に凹凸のあるグラシン紙を支持体102としたりして、白色隠蔽層105の表面を凹凸にすることにより、白色隠蔽層105の表面の光沢感を抑制しているが、コストがかかる、という問題があった。
【0008】
さらに、従来の修正部材110においては、界面剥離された白色隠蔽層105の表面が平滑面となるので、この白色隠蔽層105の表面に水性インクによる文字、図形、模様等の像を印字、印画すると、該白色隠蔽層105のインク吸収性が悪くなり、そのために、印字、印画の滲みが発生したり、また、変色が発生する(色再現性が悪くなる)、という問題があった。
【0009】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0010】
即ち、本発明は、修正部材を被転写紙に転写する際に、該修正部材における受容層の本体部分から表面近傍部分を凝集剥離させ易くし、該修正部材に割れが発生することを防止し、かつ、該修正部材の転写を完了する際に該修正部材が切断し易くし、しかも、該修正部材を被転写紙に転写した後において、凝集剥離された後の該受容層の本体部分の表面の光沢感を抑制させると共に、水性インクによる印字、印画の滲みの発生や変色の発生を防止した修正部材を低コストで提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、離型層と、該離型層の表面に設けられた支持体と、該支持体の表面に設けられた受容層と、該受容層の表面に設けられた白色隠蔽層と、該白色隠蔽層の表面に設けられた粘着剤層と、を有する修正部材であって、
(イ)前記受容層が、被膜形成樹脂と充填剤とを含む被膜で構成され、
(ロ)前記被膜形成樹脂が、ポリビニルアルコール、又は、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンとからなる樹脂混合物で構成され、そして、
(ハ)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜25μm、平均吸油量:100〜170ml/100gのリン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体で構成されている
ことを特徴とする修正部材である。
【0012】
請求項2に記載された発明は、離型層と、該離型層の表面に設けられた支持体と、該支持体の表面に設けられた受容層と、該受容層の表面に設けられた白色隠蔽層と、該白色隠蔽層の表面に設けられた粘着剤層と、を有する修正部材であって、
(ニ)前記受容層が、被膜形成樹脂と充填剤とを含む被膜で構成され、
(ホ)前記被膜形成樹脂が、ポリビニルアルコール、又は、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンとからなる樹脂混合物で構成され、そして、
(ヘ)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜6μm、平均吸油量:35〜55ml/100gの第一の無機充填剤と、一次粒径:15〜25μm、平均吸油量:110〜150ml/100gの第二の無機充填剤と、で構成されている
ことを特徴とする修正部材である。
【0013】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記受容層を構成する被膜が、前記被膜形成樹脂20〜35重量%と前記充填剤65〜80とを含んでいることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載された発明において、前記樹脂混合物が、ポリビニルアルコール3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記充填剤が、炭酸カルシウムよりなる第一の無機充填剤と炭酸マグネシウムよりなる第二の無機充填剤とで構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に記載された発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載された発明において、前記第一の無機充填剤と前記第二の無機充填剤との割合が、1:2〜1:10とされていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7に記載された発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載された発明において、前記受容層の層厚が、3〜16μmであることを特徴とするものである。
【0018】
請求項8に記載された発明は、被転写紙の表面に、前記粘着剤層、前記白色隠蔽層、及び、前記受容層を順次有する請求項1〜7のいずれか1項に記載された修正部材であって、前記受容層が、その表面近傍部分から凝集剥離されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項9に記載された発明は、一方の面に離型層を設けた支持体を準備する工程、前記支持体の他方の面に受容層を形成する工程、前記受容層の表面に白色隠蔽層を形成する工程、及び、前記白色隠蔽層の表面に粘着剤層を形成する工程、を順次有する修正部材の製造方法であって、
(a)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜25μm、平均吸油量:100〜170ml/100gのリン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体で構成されている充填剤80〜90重量%、
(b)ポリビニルアルコール(固形分18%の水溶液)、又は、ポリビニルアルコール3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成されている樹脂混合物、からなる被膜形成樹脂10〜20重量%、並びに、
(c)水50〜70重量%、
を構成成分に含有する水分散体からなる塗布組成物を前記支持体の他方の面に被覆した後、加熱乾燥して前記受容層を形成することを特徴とする修正部材の製造方法である。
【0020】
請求項10に記載された発明は、一方の面に離型層を設けた支持体を準備する工程、前記支持体の他方の面に受容層を形成する工程、前記受容層の表面に白色隠蔽層を形成する工程、及び、前記白色隠蔽層の表面に粘着剤層を形成する工程、を順次有する修正部材の製造方法であって、
(a)一次粒径:0.04〜6μm、平均吸油量:35〜55ml/100gの第一の無機充填剤と、一次粒径:15〜25μm、平均吸油量:110〜150ml/100gの第二の無機充填剤と、で構成されている充填剤であって、前記第一の無機充填剤と前記第二の無機充填剤との割合が、1:2〜1:10とされている充填剤80〜90重量%、
(b)ポリビニルアルコール(固形分18%の水溶液)、又は、ポリビニルアルコール3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成されている樹脂混合物、からなる被膜形成樹脂10〜20重量%、並びに、
(c)水50〜70重量%、
を構成成分に含有する水分散体からなる塗布組成物を前記支持体の他方の面に被覆した後、加熱乾燥して前記受容層を形成することを特徴とする修正部材の製造方法である。
【0021】
請求項11に記載された発明は、請求項10に記載された発明において、前記充填剤が、炭酸カルシウムよりなる第一の無機充填剤と炭酸マグネシウムよりなる第二の無機充填剤とで構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項12に記載された発明は、請求項10又は11に記載された発明において、前記第一の無機充填剤と前記第二の無機充填剤との割合が、1:2〜1:10とされていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載された発明によれば、離型層と、該離型層の表面に設けられた支持体と、該支持体の表面に設けられた受容層と、該受容層の表面に設けられた白色隠蔽層と、該白色隠蔽層の表面に設けられた粘着剤層と、を有する修正部材であって、(イ)前記受容層が、被膜形成樹脂と充填剤とを含む被膜で構成され、(ロ)前記被膜形成樹脂が、ポリビニルアルコール、又は、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンとからなる樹脂混合物で構成され、そして、(ハ)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜25μm、平均吸油量:100〜170ml/100gのリン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体で構成されているので、修正部材を被転写紙に転写する際に、該修正部材における受容層の本体部分から表面近傍部分を凝集剥離させ易くし、該修正部材に割れが発生することを防止し、かつ、該修正部材の転写を完了する際に該修正部材が切断し易くし、しかも、該修正部材を被転写紙に転写した後において、凝集剥離させた後の該受容層の本体部分の表面の光沢感を抑制させると共に、水性インクによる印字、印画の滲みの発生や変色の発生を防止した修正部材を低コストで提供することができる。
【0024】
請求項2に記載された発明によれば、離型層と、該離型層の表面に設けられた支持体と、該支持体の表面に設けられた受容層と、該受容層の表面に設けられた白色隠蔽層と、該白色隠蔽層の表面に設けられた粘着剤層と、を有する修正部材であって、(ニ)前記受容層が、被膜形成樹脂と充填剤とを含む被膜で構成され、 (ホ)前記被膜形成樹脂が、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン、又は、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンとからなる樹脂混合物で構成され、そして、(ヘ)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜6μm、平均吸油量:35〜55ml/100gの第一の無機充填剤と、一次粒径:15〜25μm、平均吸油量:110〜150ml/100gの第二の無機充填剤と、で構成されているものであるので、修正部材を被転写紙に転写する際に、該修正部材における受容層の本体部分から表面近傍部分を凝集剥離させ易くし、該修正部材に割れが発生することを防止し、かつ、該修正部材の転写を完了する際に該修正部材が切断し易くし、しかも、該修正部材を被転写紙に転写した後において、凝集剥離させた後の該受容層の本体部分の表面の光沢感を抑制させると共に、水性インクによる印字、印画の滲みの発生や変色の発生を防止した修正部材を低コストで提供することができる。
【0025】
請求項3に記載された発明によれば、前記受容層を構成する被膜が、前記被膜形成樹脂20〜35重量%と前記充填剤65〜80とを含んでいるので、修正部材における受容層の本体部分から表面近傍部分が凝集剥離し易くなる。
【0026】
請求項4に記載された発明によれば、前記樹脂混合物が、ポリビニルアルコール3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成されているので、前記修正部材の表面、即ち、前記受容層の本体部の表面に水性インクで印字、印画する際に、該水性インクの浸透性が向上し、しかも、該水性インクによる滲みの発生もなくなる。
【0027】
請求項5,11に記載された発明によれば、前記充填剤が、炭酸カルシウムよりなる第一の無機充填剤と炭酸マグネシウムよりなる第二の無機充填剤とで構成されているので、前記修正部材の表面、即ち、前記受容層の本体部の表面、に水性インクで印字、印画する際に、該水性インクの浸透性が向上し、しかも、該水性インクによる滲みの発生もほとんどなくなる。
【0028】
請求項6,12に記載された発明によれば、前記第一の無機充填剤と前記第二の無機充填剤との割合が1:2〜1:10とされているので、前記修正部材における受容層の本体部分から表面近傍部分をいっそう凝集剥離し易くなる。
【0029】
請求項7に記載された発明によれば、前記受容層の層厚が、3〜16μmであるので、前記修正部材の表面、即ち、受容層の本体部分の表面、に水性インクで印字、印画する際に、該水性インクの浸透性がいっそう向上すると共に、該水性インクによる滲みの発生もなくなり、また、修正部材を卷回して転写具に入れる際に、市販の転写具に入れることができ、しかも、修正部材の転写を完了する際に該修正部材が容易に切断される。
【0030】
請求項8に記載された発明によれば、被転写紙の表面に、前記粘着剤層、前記白色隠蔽層、及び、前記受容層を順次有する請求項1〜7のいずれか1項に記載された修正部材であって、前記受容層が、その表面近傍部分から凝集剥離されているので、その凝集剥離された受容層の本体部分の表面が微細な凹凸を有したものとなり、そのために、凝集剥離された後の該受容層の本体部分の表面の光沢感を抑制させると共に、受容層の本体部の表面、に水性インクで印字、印画する際に、該水性インクの浸透性がいっそう向上し、しかも、該水性インクによる滲みの発生や変色の発生を防止することができる。
【0031】
請求項9に記載された発明は、一方の面に離型層を設けた支持体を準備する工程、前記支持体の他方の面に受容層を形成する工程、前記受容層の表面に白色隠蔽層を形成する工程、及び、前記白色隠蔽層の表面に粘着剤層を形成する工程、を順次有する修正部材の製造方法であって、(a)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜25μm、平均吸油量:100〜170ml/100gのリン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体で構成されている充填剤80〜90重量%、(b)ポリビニルアルコール(固形分18%の水溶液)、又は、ポリビニルアルコール3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成されている樹脂混合物、からなる被膜形成樹脂10〜20重量%、並びに、(c)水50〜70重量%、を構成成分に含有する水分散体からなる塗布組成物を前記支持体の他方の面に被覆した後、加熱乾燥して前記受容層を形成するものであるので、修正部材を被転写紙に転写する際に、該修正部材における受容層の本体部分から表面近傍部分を凝集剥離させ易くし、該修正部材に割れが発生することを防止し、かつ、該修正部材の転写を完了する際に該修正部材が切断し易くし、しかも、該修正部材を被転写紙に転写した後において、凝集剥離させた後の該受容層の本体部分の表面の光沢感を抑制させると共に、水性インクによる印字、印画の滲みの発生や変色の発生を防止した修正部材を低コストで提供することができる。
【0032】
請求項10に記載された発明によれば、一方の面に離型層を設けた支持体を準備する工程、前記支持体の他方の面に受容層を形成する工程、前記受容層の表面に白色隠蔽層を形成する工程、及び、前記白色隠蔽層の表面に粘着剤層を形成する工程、を順次有する修正部材の製造方法であって、(a)一次粒径:0.04〜6μm、平均吸油量:35〜55ml/100gの第一の無機充填剤と、一次粒径:15〜25μm、平均吸油量:110〜150ml/100gの第二の無機充填剤と、で構成されている充填剤であって、前記第一の無機充填剤と前記第二の無機充填剤との割合が、1:2〜1:10とされている充填剤80〜90重量%、(b)ポリビニルアルコール(固形分18%の水溶液)、又は、ポリビニルアルコール3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成されている樹脂混合物、からなる被膜形成樹脂10〜20重量%、並びに、(c)水50〜70重量%、を構成成分に含有する水分散体からなる塗布組成物を前記支持体の他方の面に被覆した後、加熱乾燥して前記受容層を形成するものであるので、修正部材を被転写紙に転写する際に、該修正部材における受容層の本体部分から表面近傍部分を凝集剥離させ易くし、該修正部材に割れが発生することを防止し、かつ、該修正部材の転写を完了する際に該修正部材が切断し易くし、しかも、該修正部材を被転写紙に転写した後において、凝集剥離させた後の該受容層の本体部分の表面の光沢感を抑制させると共に、水性インクによる印字、印画の滲みの発生や変色の発生を防止した修正部材を低コストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態を示す修正部材の拡大横断面図である。図2は、本発明の一実施の形態を示す修正部材の使用態様を説明する説明図であって、(a)は、被転写紙の表面に印字、印画された図形、模様等の像を覆い被せるように粘着剤層を下にして、修正部材を被転写紙の表面に接着させる段階(第1段階)を示し、(b)支持体の表面に受容層の表面近傍部分を保持した状態で受容層から支持体を剥離する段階(第2段階)を示し、そして、(c)露出した受容層の本体部分の表面に修正された文字、図形、模様等の像を印字、印画する段階(第3段階)を示す。
【0034】
従来、一方の層の面と他方の層の面とが接する面で剥離される「剥離」が「界面剥離」といわれていることは、前述のとおりであるが、このような「界面剥離」では、それらの層自体が破壊されて剥離されるのではなく、一方の層の面と他方の層の面とが接する面で剥離される。従来の「界面剥離」では、例えば、図4に示されているように、支持体102に離型剤処理を施して、離型層103を形成することにより、該支持体102とインク層(白色隠蔽層105)との結合力、即ち、被膜強度をより低く抑えることができるので、それらの層間の剥離が実現される。これに対して、本発明における「凝集剥離」は、例えば、図2に示されているように、受容層4自体が破壊されて起こる剥離である。このように、剥離時に受容層4自体が破壊されるためには、受容層4を構成する充填剤及び被膜形成剤の内で、被膜形成剤の配合割合を少なくすれば、各層間の接着力よりも受容層4の結合力(被膜強度)を低く抑えることができるので、凝集剥離を起こすことが可能になる。このような凝集剥離は、インク層を構成する前記受容層4、前記白色隠蔽層5及び前記粘着剤層6の各界面間の接着力並びに各層間の凝集力の中でも最も強度の低い該受容層4で起こる。本明細書においては、このように定義される凝集剥離を「凝集剥離」という。
【0035】
図1,2に示されているように、本発明の修正部材10は、離型層1と、該離型層1の表面に設けられた支持体2と、該支持体2の表面に設けられた受容層4と、該受容層4の表面に設けられた白色隠蔽層5と、該白色隠蔽層5の表面に設けられた粘着剤層6と、を有している。そして、本発明の修正部材10においては、(イ)前記受容層が、被膜形成樹脂と充填剤とを含む被膜で構成され、(ロ)前記被膜形成樹脂が、ポリビニルアルコール、又は、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンとからなる樹脂混合物で構成され、そして、(ハ)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜25μm、平均吸油量:100〜170ml/100gのリン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体で構成されている。前記リン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体(ポロネックス、丸尾カルシウム社製)は、花弁状多孔質構造を有する比表面積、吸油性の極めて大きな微粒子であって、既に、水性エマルジョン塗料の艶消し剤として市販されているものである。
【0036】
このように、離型層1と、該離型層1の表面に設けられた支持体2と、該支持体2の表面に設けられた受容層4と、該受容層4の表面に設けられた白色隠蔽層5と、該白色隠蔽層5の表面に設けられた粘着剤層6と、を有する修正部材10であって、(イ)前記受容層が、被膜形成樹脂と充填剤とを含む被膜で構成され、(ロ)前記被膜形成樹脂が、ポリビニルアルコール、又は、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンとからなる樹脂混合物で構成され、そして、(ハ)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜25μm、平均吸油量:100〜170ml/100gのリン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体で構成されているので、修正部材10を被転写紙7に転写する際に、該修正部材10における受容層4の本体部分4aから表面近傍部分4bを凝集剥離させ易くし、該修正部材10に割れが発生することを防止し、かつ、該修正部材10の転写を完了する際に該修正部材10が切断し易くし、しかも、該修正部材10を被転写紙7に転写した後において、凝集剥離させた後の該受容層4の本体部分4aの表面の光沢感を抑制させると共に、水性インクによる印字、印画の滲みの発生や変色の発生を防止した修正部材10を低コストで提供することができる。
【0037】
前記一次粒径が0.04μm未満であると、凝集剥離しない(界面剥離する)ので、受容層4の本体部分4aの水性インクの吸収性が低下する。また、前記平均吸油量が100ml/100g未満であると凝集剥離しない(界面剥離する)ので、受容層4の本体部分4aの水性インクの吸収性が低下する。そして、前記一次粒径が25μmを超えると、被膜強度が低下し、そのために、受容層4の本体部分4aにひび割れが発生する。また、前記平均吸油量が170ml/100gを超えると、被膜強度が低下し、そのために、受容層4の本体部分4aにひび割れが発生する。それ故、本発明においては、前記充填剤は、一次粒径:0.04〜25μm、平均吸油量:100〜170ml/100gのリン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体で構成される。
【0038】
本発明においては、前記(ハ)の構成は、「前記充填剤が、一次粒径:0.04〜6μm、平均吸油量:35〜55ml/100gの第一の無機充填剤と、一次粒径:15〜25μm、平均吸油量:110〜150ml/100gの第二の無機充填剤と、で構成されているもの」、以下に示す(ヘ)の構成であってもかまわない。即ち、本発明は、離型層1と、該離型層1の表面に設けられた支持体2と、該支持体2の表面に設けられた受容層4と、該受容層4の表面に設けられた白色隠蔽層5と、該白色隠蔽層5の表面に設けられた粘着剤層6と、を有する修正部材10であって、(ニ)前記受容層が、被膜形成樹脂と充填剤とを含む被膜で構成され、(ホ)前記被膜形成樹脂が、ポリビニルアルコール、又は、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンとからなる樹脂混合物で構成され、そして、(ヘ)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜6μm、平均吸油量:35〜55ml/100gの第一の無機充填剤と、一次粒径:15〜25μm、平均吸油量:110〜150ml/100gの第二の無機充填剤と、で構成されているものであってもかまわない。
【0039】
前記第一の無機充填剤の一次粒径が0.04μm未満、前記第二の無機充填剤の一次粒径が15μm未満、であると、凝集剥離しないで、界面剥離するので、受容層4の本体部分4aの水性インクの吸収性が低下する。また、前記第一の無機充填剤の一次粒径が6μmを超え、前記第二の無機充填剤の一次粒径が25μmを超えると、被膜強度が低下し、そのために、受容層4の本体部分4aにひび割れが発生する。そして、前記第一の無機充填剤の平均吸油量が35ml/100g未満、前記第二の無機充填剤の平均吸油量が110ml/100g未満、であると、凝集剥離しないで、界面剥離するので、受容層4の本体部分4aの水性インクの吸収性が低下する。前記第一の無機充填剤の平均吸油量が55ml/100gを超え、前記第二の無機充填剤の平均吸油量が150ml/100gを超えると、被膜強度が低下し、そのために、受容層4の本体部分4aにひび割れが発生する。
【0040】
このように、離型層1と、該離型層1の表面に設けられた支持体2と、該支持体2の表面に設けられた受容層4と、該受容層4の表面に設けられた白色隠蔽層5と、該白色隠蔽層5の表面に設けられた粘着剤層6と、を有する修正部材10であって、(ニ)前記受容層が、被膜形成樹脂と充填剤とを含む被膜で構成され、(ホ)前記被膜形成樹脂が、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン、又は、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンとからなる樹脂混合物で構成され、そして、(ヘ)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜6μm、平均吸油量:35〜55ml/100gの第一の無機充填剤と、一次粒径:15〜25μm、平均吸油量:110〜150ml/100gの第二の無機充填剤と、で構成されているものであると、修正部材10を被転写紙7に転写する際に、該修正部材10における受容層4の本体部分4aから表面近傍部分4bを凝集剥離させ易くし、該修正部材10に割れが発生することを防止し、かつ、該修正部材10の転写を完了する際に該修正部材10が切断し易くし、しかも、該修正部材10を被転写紙7に転写した後において、凝集剥離させた後の該受容層4の本体部分4aの表面の光沢感を抑制させると共に、水性インクによる印字、印画の滲みの発生や変色の発生を防止した修正部材10を低コストで提供することができる。
【0041】
前記(イ)、(ニ)の構成において、前記受容層4における被膜形成樹脂が20重量%未満であると、被膜形成できなくなると共に、剥離力が低下して支持層との密着不良となり、そして、前記受容層4における被膜形成樹脂が35重量%を越えると、凝集剥離できなくなると共に、剥離力が高くなって転写不良となる。また、前記受容層4における充填剤が65重量%未満であると、凝集剥離できなくなると共に、剥離力が高くなって転写不良となり、そして、前記受容層4における充填剤が80重量%を越えると、被膜形成ができなくなると共に、剥離力が低下して支持体との密着不良となる。したがって、本発明においては、前記受容層4は、好ましくは、被膜形成樹脂20〜35重量%と充填剤65〜80重量%とを含む被膜で構成されている。このように、前記受容層4が被膜形成樹脂20〜35重量%と充填剤65〜80重量%とを含む被膜で構成されていると、修正部材10における受容層4の本体部分4aから表面近傍部分4bが凝集剥離し易くなる。
【0042】
また、前記(イ)、(ニ)の構成において、受容層4の層厚が3μm未満であると、水性インクの吸収性が低下する。受容層4の層厚が16μmを超えると、修正部材10を卷回して容器に入れる際に、標準の容器に入りきれなくなり、また、修正部材10の転写を完了する際に該修正部材10が切断し難くなる。したがって、本発明においては、前記受容層4の層厚は、好ましくは、3〜16μmである。このように、前記受容層4の層厚が3〜16μmであると、前記修正部材10の表面、即ち、受容層4の本体部分4aの表面、に水性インクで印字、印画する際に、該水性インクの浸透性がいっそう向上すると共に、該水性インクによる滲みの発生もなくなり、また、修正部材10を卷回して容器に入れる際に、標準の容器に入れることができ、しかも、修正部材10の転写を完了する際に該修正部材10が容易に切断される。
【0043】
前記受容層4におけるポリビニルアルコールが3重量%未満であると、水性インクで修正部材10、即ち、修正部材10の本体部分4aの表面に印字、印画する際に、該水性インクによる滲みの発生、そして、前記受容層4におけるポリビニルアルコールが13重量%を越えると、水性インクの浸透性が低下する。また、前記受容層4における無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンが2重量%未満であると、水性インクの濃度が低下し、そして、前記受容層4における無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンが7重量%を越えると、水性インクの浸透性が低下する。したがって、本発明の前記(イ)、(ニ)の構成においては、前記樹脂混合物は、好ましくは、ポリビニルアルコール3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成されている。このように、前記樹脂混合物がポリビニルアルコール3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成されていると、修正部材10の表面、即ち、受容層4の本体部4aの表面に水性インクで印字、印画する際に、該水性インクの浸透性が向上し、しかも、該水性インクによる滲みの発生もなくなる。
【0044】
また、前記(ヘ)の構成においては、前記充填剤は、好ましくは、炭酸カルシウムよりなる第一の無機充填剤と炭酸マグネシウムよりなる第二の無機充填剤とで構成されている。このように、前記充填剤が、炭酸カルシウムよりなる第一の無機充填剤と炭酸マグネシウムよりなる第二の無機充填剤とで構成されていると、前記修正部材10の表面、即ち、前記受容層4の本体部4aの表面、に水性インクで印字、印画する際に、該水性インクの浸透性が向上し、しかも、該水性インクによる滲みの発生もほとんどなくなる。
【0045】
また、前記(ヘ)の構成においては、前記充填剤は、好ましくは、一次粒子径0.04〜6μmの炭酸カルシウムと一次粒子径15〜25μmの炭酸マグネシウムとで構成され、そして、前記炭酸カルシウムと前記炭酸マグネシウムとの割合は、好ましくは、1:2〜1:10とされている。このように、前記充填剤が、一次粒子径0.04〜6μmの炭酸カルシウムと一次粒子径15〜25μmの炭酸マグネシウムとで構成され、そして、前記炭酸カルシウムと前記炭酸マグネシウムとの割合が、1:2〜1:10とされていると、前記修正部材における受容層4の本体部分4aから表面近傍部分4bをいっそう凝集剥離し易くなる。
【0046】
また、前記(イ)、(ニ)の構成においては、前記受容層4は、例えば、固形分30%のポリビニルアルコール(ケン化度:86.5〜89.5モル%、固形分:18%、水溶液)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(分子量:5000〜60000、固形分:30%、水系エマルジョン)とを含む被膜で構成されるが、この受容層4は、前記樹脂混合物、粒子径0.1μm、吸油量45ml/100gの炭酸カルシウム充填剤と粒子径20μm、吸油量130ml/100gの炭酸マグネシウム充填剤とで構成された充填剤、及び、高級アルコールと高級脂肪酸エステルで構成される消泡剤を含有する水分散体からなる塗布組成物を支持体2の表面に塗布し加熱乾燥することによって形成される。
【0047】
前記支持体2は、修正部材10を保持するために用いられる基材のようなものであって、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アセテートフィルム等の高分子フィルムで構成されるが、本発明の目的に反しない限り、ここに例示されたもの以外の高分子フィルムで構成されていてもかまわない。
【0048】
図2に示されているように、この修正部材10は、被転写紙7の表面に印画された図形、模様等の像を覆い被せるように粘着剤層6を下にして、修正部材10を被転写紙7の表面に接着させる段階(第1段階)[a]、支持体2の表面に受容層4の表面近傍部分4bを保持した状態で受容層4の本体部分4aから支持体2を剥離する段階(第2段階)[b]、及び、露出した受容層4の本体部分4aの表面に修正された文字、図形、模様等の像を印字、印画する段階(第3段階)[c]を順次経て、被転写紙7の表面に印字、印画された文字、図形、模様等の像の修正がなされる。
【0049】
図2に示されているように、本発明の修正部材10を被転写紙7の表面に印画された図形、模様等の像を覆い被せるように粘着剤層6を下にして被転写紙7の表面に接着させた後、支持体2の表面に受容層4の表面近傍部分4bを保持した状態で受容層本体部4aから支持体2を剥離した段階では、本発明の修正部材10は、被転写紙7の表面に、前記粘着剤層6、前記白色隠蔽層5、及び、前記受容層4を順次有する請求項1〜6のいずれか1項に記載されたものとなっていて、その受容層4がその表面近傍部分4bから剥離されたものとなっている。前記凝集剥離された後における受容層本体部4aは、図2に示されているように、その表面に微細な凹凸を有している。本発明の修正部材10は、このように、前記凝集剥離された後における受容層4の本体部4aがその表面に微細な凹凸を有したものとなるが故に、該受容層4の本体部分4aの表面の光沢感を抑制させると共に、水性インクによる印字、印画の滲みの発生や変色の発生を防止するものとなる。
【0050】
前記離型層1は、修正部材10をローラ状に巻き取ったときに、粘着剤層6が支持体2に粘着して剥がれなくなるのを防止するために使用されるものであって、シリコーンで構成される離型剤であるが、本発明の目的に反しない限り、シリコーン以外の離型剤であってもかまわない。
【0051】
本発明の修正部材10の製造方法によれば、一方の面に離型層4を設けた支持体2を準備する工程、前記支持体2の他方の面に受容層4を形成する工程、前記受容層4の表面に白色隠蔽層5を形成する工程、及び、前記白色隠蔽層5の表面に粘着剤層6を形成する工程、を順次有する修正部材10の製造方法であって、(a)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜25μm、平均吸油量:100〜170ml/100gのリン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体で構成されている充填剤80〜90重量%、(b)ポリビニルアルコール(固形分18%の水溶液)、又は、ポリビニルアルコール3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成されている樹脂混合物、からなる被膜形成樹脂10〜20重量%、並びに、(c)水50〜70重量%、を構成成分に含有する水分散体からなる塗布組成物を前記支持体2の他方の面に被覆した後、加熱乾燥して前記受容層4を形成する。前記塗布組成物には、所望に応じて、消泡剤0.2重量%程度を含有させることができる。
【0052】
このように、本発明の修正部材10の製造方法が、一方の面に離型層1を設けた支持体2を準備する工程、前記支持体2の他方の面に受容層4を形成する工程、前記受容層4の表面に白色隠蔽層5を形成する工程、及び、前記白色隠蔽層5の表面に粘着剤層6を形成する工程、を順次有する修正部材10の製造方法であって、(a)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜25μm、平均吸油量:100〜170ml/100gのリン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体で構成されている充填剤80〜90重量%、(b)ポリビニルアルコール(固形分18%の水溶液)、又は、ポリビニルアルコール3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成されている樹脂混合物、からなる被膜形成樹脂10〜20重量%、並びに、(c)水50〜70重量%、を構成成分に含有する水分散体からなる塗布組成物を前記支持体2の他方の面に被覆した後、加熱乾燥して前記受容層4を形成するものであると、修正部材10を被転写紙7に転写する際に、該修正部材10における受容層4の本体部分4aから表面近傍部分4bを凝集剥離させ易くし、該修正部材10に割れが発生することを防止し、かつ、該修正部材10の転写を完了する際に該修正部材10が切断し易くし、しかも、該修正部材10を被転写紙7に転写した後において、凝集剥離させた後の該受容層4の本体部分4aの表面の光沢感を抑制させると共に、水性インクによる印字、印画の滲みの発生や変色の発生を防止した修正部材10を低コストで提供することができる。
【0053】
また、本発明の他の修正部材10の製造方法によれば、一方の面に離型層1を設けた支持体2を準備する工程、前記支持体2の他方の面に受容層4を形成する工程、前記受容層4の表面に白色隠蔽層5を形成する工程、及び、前記白色隠蔽層5の表面に粘着剤層6を形成する工程、を順次有する修正部材10の製造方法において、(a)一次粒径:0.04〜6μm、平均吸油量:35〜55ml/100gの第一の無機充填剤と、一次粒径:15〜25μm、平均吸油量:110〜150ml/100gの第二の無機充填剤と、で構成されている充填剤であって、前記第一の無機充填剤と前記第二の無機充填剤との割合が、1:2〜1:10とされている充填剤80〜90重量%、(b)ポリビニルアルコール(固形分18%の水溶液)、又は、ポリビニルアルコール(固形分18%の水溶液)3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(固形分30%の水系エマルジョン)2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成される樹脂混合物、からなる被膜形成樹脂10〜20重量%、並びに、(c)水50〜70重量%、を構成成分に含有する水分散体からなる塗布組成物を前記支持体2の他方の面に被覆した後、加熱乾燥して前記受容層4を形成することができる。前記塗布組成物には、所望に応じて、消泡剤0.2重量%程度を含有させることができる。
【0054】
このように、本発明の他の修正部材10の製造方法は、一方の面に離型層1を設けた支持体2を準備する工程、前記支持体2の他方の面に受容層4を形成する工程、前記受容層4の表面に白色隠蔽層5を形成する工程、及び、前記白色隠蔽層5の表面に粘着剤層6を形成する工程、を順次有する修正部材10の製造方法において、(a)一次粒径:0.04〜6μm、平均吸油量:35〜55ml/100gの第一の無機充填剤と、一次粒径:15〜25μm、平均吸油量:110〜150ml/100gの第二の無機充填剤と、で構成されている充填剤であって、前記第一の無機充填剤と前記第二の無機充填剤との割合が、1:2〜1:10とされている充填剤80〜90重量%、(b)ポリビニルアルコール(固形分18%の水溶液)、又は、ポリビニルアルコール(固形分18%の水溶液)3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(固形分30%の水系エマルジョン)2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成される樹脂混合物、からなる被膜形成樹脂10〜20重量%、並びに、(c)水50〜70重量%、を構成成分に含有する水分散体からなる塗布組成物を前記支持体2の他方の面に被覆した後、加熱乾燥して前記受容層4を形成すると、修正部材10を被転写紙7に転写する際に、該修正部材10における受容層4の本体部分4aから表面近傍部分4bを凝集剥離させ易くし、該修正部材10に割れが発生することを防止し、かつ、該修正部材10の転写を完了する際に該修正部材10が切断し易くし、しかも、該修正部材10を被転写紙7に転写した後において、凝集剥離させた後の該受容層4の本体部分4aの表面の光沢感を抑制させると共に、水性インクによる印字、印画の滲みの発生や変色の発生を防止した修正部材10を低コストで提供することができる。
【0055】
前記塗布組成物において、固形分が30%未満である(水が70%を越える)場合には、乾燥に多くの時間を要し多量の熱量を必要とする。それ故、塗膜形成が終了するまでの間に塗工面がダレてしまったり、塗膜厚みのバラツキ(組成の偏在)を招いてしまい、それが水溶性インクの受容性の不均一さに繋がってしまう。また、前記塗布組成物において、固形分が50%を越える(水が50%未満である)場合には、水性インクの流動性が著しく低下して、表面乾燥による凝集物の発生に繋がるので、塗工適正が不十分となり、均一な塗工面を得ることができなくなる。さらに、インク粘度が高くなると、連動してインクの表面張力も高くなるので、インクの製造工程で発生した気泡が残留してしまい、乾燥後の塗工面に欠陥として残る。したがって、本発明の修正部材10の製造方法に用いる塗布組成物においては、水50〜70重量%(固形分30〜50重量%)である。
【0056】
前記本発明の他の修正部材10の製造方法においては、前記本発明の修正部材10の説明で説明したように、前記充填剤は、炭酸カルシウムよりなる第一の無機充填剤と炭酸マグネシウムよりなる第二の無機充填剤とで構成され、そして、前記第一の無機充填剤と前記第二の無機充填剤との割合が1:2〜1:10とされている。
【0057】
前記受容層4を形成する塗布組成物は、例えば、炭酸マグネシウム22.5重量%、炭酸カルシウム22.5重量%及びイオン交換水41重量%をビーズミル(分散機)に投入して分散させて分散液とし、この分散液全量をタンクに投入した後、ポリビニルアルコール水溶液(固形分18%)16重量%、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンの水性エマルジョン(固形分30%)7重量%、並びに、高級アルコール/高級脂肪酸エステルよりなる消泡剤(固形分30%)0.2重量%を添加して、これらを攪拌機混合攪拌することにより、製造される。
【0058】
前記白色隠蔽層5を形成する塗布組成物は、好ましくは、1)炭酸マグネシウム(充填剤)4重量%、酸化チタン(着色剤)31重量%及びイオン交換水(粘度調整用)29重量%をビーズミル等の分散機に投入して分散することにより分散液とし、2)この分散液全量をタンクに投入した後、ポリビニルアルコール水溶液(固形分18%)18重量%、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンの水性エマルジョン(固形分30%)2重量%及び消泡剤0.3重量%を添加して、これらを攪拌機で混合攪拌することにより混合液とし、そして、3)この混合液中に天然ゴムラテックス(固形分60%)13重量%を添加して攪拌機で混合攪拌することにより、製造される。
【0059】
前記粘着剤層6を形成する塗布組成物は、例えば、アクリル酸エステル重合体水性エマルジョン(固形分45%)、アクリル粘着剤(水系エマルジョン)及び粘度調整用のイオン交換水をタンクに投入し、攪拌機で混合攪拌することにより、製造される。
【0060】
本発明の修正部材10は、
1)予め、片面のみに離型剤処理を施した20μm厚の2軸延伸ポリプロピレンフィルム(支持体)の離型剤未処理面に、前記「受容層4を形成する塗布組成物」を、その湿潤時の塗膜厚:30μm、乾燥時の塗膜厚:12μmとなるように、ダイレクトグラビア、オフセットグラビア、スロットダイ、コンマ等の塗布手段で塗布した後、直ちに80〜100℃の熱風で乾燥して受容層4を形成し、
2)前記受容層4の表面に、前記「白色隠蔽層5を形成する塗布組成物」を、その湿潤時の塗膜厚:45μm、乾燥時の塗膜厚:20μmとなるように、ダイレクトグラビア、オフセットグラビア、スロットダイ、コンマ等の塗布手段で塗布した後、直ちに80〜100℃の熱風で乾燥して白色隠蔽層5を形成し、そして、
3)前記白色隠蔽層5の表面に、前記「粘着剤層6を形成する塗布組成物」を、その湿潤時の塗膜厚:5μm、乾燥時の塗膜厚:2μmとなるように、ダイレクトグラビア、オフセットグラビア、スロットダイ、コンマ等の塗布手段で塗布した後、直ちに80〜100℃の熱風で乾燥して粘着剤層6を形成することによって、
製造される。
【0061】
(実施例1)
(1)予め、一方の面にシリコーンで構成される離型層を設けた20μm厚の2軸延伸ポリプロピレンで構成される支持体を準備する工程、
(2)前記支持体の他方の面に、リン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体(ポロネックス、丸尾カルシウム社製)(一次粒子径:5.5μm、吸油量:150ml/100g)21.8重量%、ポリビニルアルコール(ケン化度:86.5〜89.5モル%、固形分:18%、水溶液)56.4重量%、及び、高級アルコール/高級脂肪酸エステル混合物(固形分:30%、水系エマルジョン)0.3重量%、イオン交換水21.6を含有する水分散体からなる塗布組成物を塗布して8μm厚の受容層を形成する工程、
(3)前記受容層の表面に、酸化チタン(一次粒子径:0.3μm、吸油量:18ml/100g)28.5重量%、リン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体(ポロネックス、丸尾カルシウム社製)(一次粒子径:5.5μm、吸油量:150ml/100g)10.6重量%、ポリビニルアルコール(ケン化度:86.5〜89.5モル%、固形分:18%、水溶液)22.2重量%、天然ゴムラテックス(固形分:62%、コロイド状懸濁液)10.9重量%、及び、高級アルコール/高級脂肪酸エステル(固形分:30%、水系エマルジョン)0.5重量%、イオン交換水27.3重量%を含有する水分散体からなる塗布組成物を、塗布し加熱乾燥して24μm厚の白色隠蔽層を形成する工程、及び、
(4)前記白色隠蔽層の表面に、アクリル酸エステル重合体(Tg:−40℃、固形分:40%、水系エマルジョン)27.0重量%、アクリル酸エステル重合体(Tg:−20℃、固形分:40%、水系エマルジョン)9.0重量%及びアクリル系粘着剤(固形分:40%、水系エマルジョン)44.0及びイオン交換水20.0重量%を含有する粘着剤組成物を前記白色隠蔽層の表面に塗布し乾燥して2μm厚の粘着剤層を形成する工程、
を順次経て修正部材を得た。この修正部材のインク層の総厚みは、34μmであった。
【0062】
(実施例2)
前記(2)工程において、前記受容層の層厚を14μmとし、そして、インク層の総厚みを30μmとした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0063】
(実施例3)
前記(2)工程において、リン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体の配合量を24.6重量%とし、ポリビニルアルコールの配合量を40.4重量%とし、そして、イオン交換水の配合量を34.7重量%とした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0064】
(実施例4)
前記(2)工程において、リン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体の配合量を20.2重量%とし、ポリビニルアルコールの配合量を65.2重量%とし、そして、イオン交換水の配合量を14.3重量%とした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0065】
(実施例5)
前記(2)工程において、ポリビニルアルコールの配合量を47.5重量%とし、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(塩素化度:19%、分子量:50000〜60000、固形分:30%、水系エマルジョン)5.3重量部、そして、イオン交換水の配合量を25.1重量%とした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0066】
(比較例1)
前記(2)工程において、前記受容層の層厚を2μmとし、そして、インク層の総厚みを28μmとした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0067】
(比較例2)
前記(2)工程において、リン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体の配合量を27.2重量%とし、ポリビニルアルコールの配合量を26.1重量%とし、そして、イオン交換水の配合量を46.3重量%とした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0068】
(比較例3)
前記(2)工程において、リン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体の配合量を17.8重量%とし、ポリビニルアルコールの配合量を79.5重量%とし、そして、イオン交換水の配合量を2.6重量%とした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0069】
(実施例6)
(1)予め、一方の面にシリコーンで構成される離型層を設けた20μm厚の2軸延伸ポリプロピレンで構成される支持体を準備する工程、
(2)前記支持体の他方の面に、炭酸カルシウム(一次粒子径:0.1μm、吸油量:45ml/100g)9.0重量%、炭酸マグネシウム(一次粒子径:20μm、吸油量:130ml/100g)26.6重量%、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(塩素化度:19%、分子量:50000〜60000、固形分:30%、水系エマルジョン)8.8重量%、ポリビニルアルコール(ケン化度:86.5〜89.5モル%、固形分:18%、水溶液)20.6重量%、及び、高級アルコール/高級脂肪酸エステル混合物(固形分:30%、水系エマルジョン)0.3重量%、イオン交換水43.9重量%を含有する水分散体からなる塗布組成物を塗布して10μm厚の受容層を形成する工程、
(3)前記受容層の表面に、酸化チタン(一次粒子径:0.3μm、吸油量:18ml/100g)32.0重量%、炭酸マグネシウム(一次粒子径:20μm、吸油量:130ml/100g)、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(分子量:50000〜60000、固形分:30%、水系エマルジョン)1.5重量%、ポリビニルアルコール(ケン化度:86.5〜89.5モル%、固形分:10%、水溶液)32.0重量%、
天然ゴムラテックス(固形分:62%、コロイド状懸濁液)13.4重量%、及び、高級アルコール/高級脂肪酸エステル(固形分:30%、水系エマルジョン)0.3重量%、イオン交換水14.8重量%を含有する水分散体からなる塗布組成物を、塗布し加熱乾燥して22μm厚の白色隠蔽層を形成する工程、及び、
(4)前記白色隠蔽層の表面に、アクリル酸エステル重合体(Tg:−40℃、固形分:40%、水系エマルジョン)27.0重量%、アクリル酸エステル重合体(Tg:−20℃、固形分:40%、水系エマルジョン)9.0重量%及びアクリル系粘着剤(固形分:40%、水系エマルジョン)44.0及びイオン交換水20.0重量%を含有する粘着剤組成物を前記白色隠蔽層の表面に塗布し乾燥して2μm厚の粘着剤層を形成する工程、
を順次経て修正部材を得た。この修正部材のインク層の総厚みは、34μmであった。
【0070】
(実施例7)
前記(2)工程において、受容層の層厚を15μmとし、そして、インク層の総厚みを39μmとした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0071】
(実施例8)
前記(2)工程において、炭酸カルシウムの配合量を3.2重量%とし、炭酸マグネシウムの配合量を32.0重量%とし、そして、イオン交換水の配合量を44.3重量%とした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0072】
(実施例9)
前記(2)工程において、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンの配合量を0.0重量%とし、ポリビニルアルコールの配合量を26.6重量%とし、そして、イオン交換水の配合量を38.0重量%とした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0073】
(実施例10)
前記(2)工程において、炭酸カルシウムの配合量を9.9重量%とし、炭酸マグネシウムの配合量を27.9重量%とし、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンの配合量を4.9重量%とし、ポリビニルアルコールの配合量を6.6重量%とし、高級アルコール/高級脂肪酸エステルの配合量を0.5重量%とし、そして、イオン交換水の配合量を50.2重量%とした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0074】
(比較例4)
前記(2)工程において、受容層の層厚を2μmと、そして、インク層の総厚みを39μmとした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0075】
(比較例5)
前記(2)工程において、炭酸カルシウムの配合量を24.0重量%とし、炭酸マグネシウムの配合量を12.0重量%とし、そして、イオン交換水の配合量を43.5重量%とした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0076】
(比較例6)
前記(2)工程において、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンの配合量を15.7重量%とし、ポリビニルアルコールの配合量を0.0重量%とし、そして、イオン交換水の配合量を48.4重量%とした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0077】
(比較例7)
前記(2)工程において、炭酸カルシウムの配合量を7.5重量%とし、炭酸マグネシウムの配合量を22.5重量%とし、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンの配合量を18.5重量%とし、ポリビニルアルコールの配合量を43.2重量%とし、そして、イオン交換水の配合量を27.0重量%とした以外は、実施例1と同様にして修正部材を得た。
【0078】
(比較例8)
(1)予め、両方の面にシリコーンで構成される離型層を設けた20μm厚の2軸延伸ポリプロピレンで構成される支持体を準備する工程、
(2)前記離型層の一方の表面に、酸化チタン(一次粒子径:0.3μm、吸油量:18ml/100g)32.0重量%、炭酸マグネシウム(一次粒子径:20μm、吸油量:130ml/100g)、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(分子量:5000〜60000、固形分:30%、水系エマルジョン)1.5重量%、ポリビニルアルコール(ケン化度:86.5〜89.5モル%、固形分:10%、水溶液)32.0重量%、天然ゴムラテックス(固形分:62%、コロイド状懸濁液)0.3重量%、及び、高級アルコール/高級脂肪酸エステル(固形分:30%、水系エマルジョン)0.3重量%、イオン交換水20.0重量%を含有する水分散体からなる塗布組成物を、塗布し加熱乾燥して22μm厚の白色隠蔽層を形成する工程、及び、
(3)前記白色隠蔽層の表面に、アクリル酸エステル重合体(Tg:−40℃、固形分:40%、水系エマルジョン)27.0重量%、アクリル酸エステル重合体(Tg:−20℃、固形分:40%、水系エマルジョン)9.0重量%及びアクリル系粘着剤(固形分:40%、水系エマルジョン)44.0及びイオン交換水20.0重量%を含有する粘着剤組成物を前記白色隠蔽層の表面に塗布し乾燥して2μm厚の粘着剤層を形成する工程、
を順次経て修正部材を得た。
【0079】
以上、実施例1〜5及び比較例1〜3で得た修正部材の、並びに、実施例6〜10及び比較例4〜7で得た修正部材の「剥離力(N/10mm)」、「粘着力(N/10mm)」、「引張強さ(N/10mm)」、「転写性」、「表面光沢性」、「インク吸収性」及び「印刷再現性」について試験した。前記「剥離力(N/10mm)」は、JIS Z 0237.10.1に準拠し、被着体をインク層として測定し、前記「粘着力(N/10mm)」は、JIS Z 0237.10.1に準拠し、被着体を普通紙として測定し、そして、前記「引張強さ(N/10mm)」は、JIS Z 0237.10.1に準拠して測定した。また、前記「転写性」及び前記「表面光沢性」は、それぞれ、転写具(WHIPER mini(5mm)、プラスステーショナリ社製)を用いて、被転写紙を普通紙として、目視により測定した。また、前記「インク吸収性」並びに前記「印刷再現性」は、転写具(WHIPER mini(5mm)、プラスステーショナリ社製)、及び、プリンター(PMG−850、EPSON社製)を用いて、被転写紙を普通紙として、目視により測定した。
【0080】
測定結果は、次の表1、表2,表3及び表4に示される。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
表1〜4に記載された、「剥離力」の要求品質は、0.01〜0.04N/10mmとし、「粘着力」の要求品質は、0.02〜0.05N/10mmとし、そして、「引張強さ」の要求品質は、0.20〜0.40N/10mmとした。また、表1〜4に記載された、「転写性」の要求品質は、転写時のクラックの発生が無く、転写終了時における修正部材の切断性が良好であることとし、「表面光沢性」の要求品質は、転写後の修正インクが目視にて被転写紙と転写後のインク表面とを比較して、同等の光沢感があることとし、「インク吸収性」の要求品質は、転写後の修正部材の表面に水性インクにて印画し、直ちに、滲み無くインクを吸収することとし、そして、「印刷再現性」の要求品質は、転写後の修正部材の表面に水性インクにて印画し、該水性インクによる印画原稿を目視で比較して、滲みや変色が無いこととした。
【0086】
表1〜4から次のことがわかる。即ち、比較例1,4では、受容層の厚みが請求項において規定される範囲の下限未満であるので、重剥離化し、また、インクの吸収性も悪い。比較例2,7では、充填剤の配合比率が請求項において規定される範囲の上限を超えているので、転写時にインクのヒビの割れが発生しており、また、インク層の透明化が低下して印像の白化を招いている。比較例3では、充填剤の配合率が請求項において規定される範囲の下限未満であるので、テープの切断性が悪くなり、又、水性インクの吸収性の不足を招いている。比較例5では、充填剤に粒径の異なる大小の粒子を用いた場合において小径粒子の配合比率が請求項において規定される範囲の上限を超えているので、転写時の剥離抵抗の大きさがインク層の引張強さを上回ってテープがヒビ割れし、また、インク層の透明化が低下して印像の白化を招いている。そして、比較例6では、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンを請求項において規定される範囲の上限を超えているので、水性インクの吸収性が悪くなり、そのために、印画の色彩が暗くなり、色彩の再現性不足を招いている。しかしながら、実施例1〜10では、そのような問題は生じていない。比較例8は、従来の界面剥離する修正部材である。この比較例8では、転写性は、良好であるが、表面に著しい光沢感があり、水性インクの吸収性が低下して印画に滲みが生じ、印画原稿と比較して色が著しくくすみ再現性が乏しい。しかしながら、実施例1〜10では、そのような問題は生じていない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施の形態を示す修正部材の拡大横断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す修正部材の使用態様を説明する説明図であって、(a)は、被転写紙の表面に印字、印画された図形、模様等の像を覆い被せるように粘着剤層を下にして、修正部材を被転写紙の表面に接着させる段階(第1段階)を示し、(b)支持体の表面に受容層の表面近傍部分を保持した状態で受容層から支持体を剥離する段階(第2段階)を示し、そして、(c)露出した受容層の本体部分の表面に修正された文字、図形、模様等の像を印字、印画する段階(第3段階)を示す。
【図3】従来の修正部材の拡大断面図である。
【図4】従来の修正部材の使用態様を説明する説明図であって、(a)は、被転写紙の表面に印画された文字、図形、模様等の像を覆い被せるように粘着剤層を下にして、修正部材を被転写紙の表面に接着させる段階(第1段階)を示し、(b)は、離型層を保持した状態で白色隠蔽層から支持体を剥離する段階(第2段階)を示し、そして、(c)は、露出した白色隠蔽層の表面に修正された文字、図形、模様等の像を印字、印画する段階(第3段階)を示す。
【符号の説明】
【0088】
1 離型層
2 支持体
4 受容層
4a 本体部分
4b 表面近傍部分
5 白色隠蔽層
6 粘着剤層
10 修正部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型層と、該離型層の表面に設けられた支持体と、該支持体の表面に設けられた受容層と、該受容層の表面に設けられた白色隠蔽層と、該白色隠蔽層の表面に設けられた粘着剤層と、を有する修正部材であって、
(イ)前記受容層が、被膜形成樹脂と充填剤とを含む被膜で構成され、
(ロ)前記被膜形成樹脂が、ポリビニルアルコール、又は、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンとからなる樹脂混合物で構成され、そして、
(ハ)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜25μm、平均吸油量:100〜170ml/100gのリン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体で構成されている
ことを特徴とする修正部材。
【請求項2】
離型層と、該離型層の表面に設けられた支持体と、該支持体の表面に設けられた受容層と、該受容層の表面に設けられた白色隠蔽層と、該白色隠蔽層の表面に設けられた粘着剤層と、を有する修正部材であって、
(ニ)前記受容層が、被膜形成樹脂と充填剤とを含む被膜で構成され、
(ホ)前記被膜形成樹脂が、ポリビニルアルコール、又は、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンとからなる樹脂混合物で構成され、そして、
(ヘ)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜6μm、平均吸油量:35〜55ml/100gの第一の無機充填剤と、一次粒径:15〜25μm、平均吸油量:110〜150ml/100gの第二の無機充填剤と、で構成されている
ことを特徴とする修正部材。
【請求項3】
前記受容層を構成する被膜が、前記被膜形成樹脂20〜35重量%と前記充填剤65〜80とを含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の修正部材。
【請求項4】
前記樹脂混合物が、ポリビニルアルコール3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の修正部材。
【請求項5】
前記充填剤が、炭酸カルシウムよりなる第一の無機充填剤と炭酸マグネシウムよりなる第二の無機充填剤とで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の修正部材。
【請求項6】
前記第一の無機充填剤と前記第二の無機充填剤との割合が、1:2〜1:10とされていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の修正部材。
【請求項7】
前記受容層の層厚が、3〜16μmであることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の修正部材。
【請求項8】
被転写紙の表面に、前記粘着剤層、前記白色隠蔽層、及び、前記受容層を順次有する請求項1〜7のいずれか1項に記載された修正部材であって、前記受容層が、その表面近傍部分から凝集剥離されていることを特徴とする修正部材。
【請求項9】
一方の面に離型層を設けた支持体を準備する工程、前記支持体の他方の面に受容層を形成する工程、前記受容層の表面に白色隠蔽層を形成する工程、及び、前記白色隠蔽層の表面に粘着剤層を形成する工程、を順次有する修正部材の製造方法であって、
(a)前記充填剤が、一次粒径:0.04〜25μm、平均吸油量:100〜170ml/100gのリン酸カルシウム・炭酸カルシウム複合体で構成されている充填剤80〜90重量%、
(b)ポリビニルアルコール(固形分18%の水溶液)、又は、ポリビニルアルコール3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成されている樹脂混合物、からなる被膜形成樹脂10〜20重量%、並びに、
(c)水50〜70重量%、
を構成成分に含有する水分散体からなる塗布組成物を前記支持体の他方の面に被覆した後、加熱乾燥して前記受容層を形成することを特徴とする修正部材の製造方法。
【請求項10】
一方の面に離型層を設けた支持体を準備する工程、前記支持体の他方の面に受容層を形成する工程、前記受容層の表面に白色隠蔽層を形成する工程、及び、前記白色隠蔽層の表面に粘着剤層を形成する工程、を順次有する修正部材の製造方法であって、
(a)一次粒径:0.04〜6μm、平均吸油量:35〜55ml/100gの第一の無機充填剤と、一次粒径:15〜25μm、平均吸油量:110〜150ml/100gの第二の無機充填剤と、で構成されている充填剤であって、前記第一の無機充填剤と前記第二の無機充填剤との割合が、1:2〜1:10とされている充填剤80〜90重量%、
(b)ポリビニルアルコール(固形分18%の水溶液)、又は、ポリビニルアルコール3〜13重量%(受容層全体にしめる率)と無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン2〜7重量%(受容層全体にしめる率)とで構成されている樹脂混合物、からなる被膜形成樹脂10〜20重量%、並びに、
(c)水50〜70重量%、
を構成成分に含有する水分散体からなる塗布組成物を前記支持体の他方の面に被覆した後、加熱乾燥して前記受容層を形成することを特徴とする修正部材の製造方法。
【請求項11】
前記充填剤が、炭酸カルシウムよりなる第一の無機充填剤と炭酸マグネシウムよりなる第二の無機充填剤とで構成されていることを特徴とする請求項10に記載の修正部材の製造方法。
【請求項12】
前記第一の無機充填剤と前記第二の無機充填剤との割合が、1:2〜1:10とされていることを特徴とする請求項10又は11に記載の修正部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−62404(P2009−62404A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228736(P2007−228736)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(592205045)株式会社北村製作所 (10)
【Fターム(参考)】