説明

倉庫管理システム

【課題】不変的な距離を尺度にワークの3次元位置情報を検出できる倉庫管理システムを提供する。
【解決手段】第1のタグリーダ(子機)7が倉庫内を移動して第1のタグ(ワークタグ)5からIDを読み取り、それを第1のタグリーダ(子機)7に内蔵した第2のタグ(内蔵タグ)6を介して第2のタグリーダ(親機)8に転送する。同時に、第2のタグ(内蔵タグ)6を介して直下に設置した第2のタグ(フロアタグ)6に向けてプローブ信号を発射する。プローブ信号を受信した第2のタグ(フロアタグ)6は、プローブ信号の距離変数を測定して自身のIDとともにそれを第2のタグリーダ(親機)8に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを利用してフロア上に積み上げたパレタイズ(パレット積み)物品(ワーク)の3次元位置情報(XYZ座標)をコンピュータ管理する倉庫管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグを利用してワークの位置情報をコンピュータ管理する倉庫管理システムは従来から多数提案されており、例えば特許文献1では、図6に示すように、棚段104に棚用タグ103を設置するとともに、ワーク105にワーク用タグ106を付設し、ワーク105を棚段104へ格納する際、作業者は支柱111に取り付けたタグリーダ102を上下にスライドして棚用タグ103とワーク用タグ106から位置情報とワーク情報を読み出し、それを管理装置107へ転送してどの棚段104へどのワーク105を格納したかという情報を管理する。
【0003】
しかしながら倉庫内に棚を設置してワークを管理する場合、棚の設置によってワークの保管スペースが減少するという問題の他、棚を設置するための費用が余分に掛かるという問題がある。そのため最近ではパレットに載せたワークをそのままフロア上の各ブロックに積み上げて管理する倉庫が増えている。その場合、ワークの位置情報として、ブロックのフロア上の位置(XY座標)とともに、ワークのフロア上の高さ(Z座標)を検出する必要がある。
【0004】
そのため特許文献2では、図7に示すように、搬送体202が上面に備えた発信装置203より赤外線等を常時上方に向けて発信しながら移動し、この赤外線等を天井に配置したRFIDタグ205が受信したとき、予め記憶したブロックの位置IDを下方に送信する。この位置IDを搬送体202に備えた受信機204が受信し、ワークWOを積み上げた時刻とともに管理装置201に送信する。これにより位置IDからブロックの位置が、ワークWOの積み上げ時刻から高さ(何段目)が、それぞれ検出されて管理装置201に記憶される。
【0005】
上記の例では、倉庫内に保管するワークが時刻順に積み上げられることを前提にしているので、狭い倉庫内を何回も往復してワークを1つ1つブロックまで搬送し、順番に積み上げる必要がある。そのためワークを予め積み上げた状態で搬送し、それをブロックに下ろして作業を効率化することができなくなる。また、ワークの入れ替えや積み替えが発生した場合、その度に関係するブロックのワークを積み上げ直す必要があり、非常に面倒である。
【0006】
一方、本出願人は特許文献3に示す、ICタグ同士が到達距離の短いプローブ信号を用いて交信し、同一至近距離圏内にあるICタグを特定して位置検出を行うICタグを利用した位置検出システムを先に出願している。
このプローブ信号は、受信強度が距離に反比例するので、その受信強度を測定することにより、発信側と受信側とのICタグ間のおおよその距離を検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−36428号公報
【特許文献2】特開2004−250209号公報
【特許文献3】国際公開2005−069499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は以上のような点であり、本発明は、既出願のプローブ信号を交信して距離を検出するICタグを用いて従来技術のように時刻に基づいて位置を検出するのでなく、不変的な距離を尺度にワークの3次元位置情報を検出できる倉庫管理システムを提供することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため本発明は、ワークをフロア上の各ブロックに積み上げて保管する倉庫において、ワークに対応する第1のタグと、ブロックに対応する第2のタグと、第1のタグからIDを読み取る第1のタグリーダと、第2のタグからIDを読み取る第2のタグリーダと、第1のタグリーダと第2のタグリーダを介して収集した情報を一元管理する管理装置とを備え、第1のタグリーダを第1のタグに近付けてIDを読み取る際、第2のタグとの間でプローブ信号を送受信して距離変数を求め、これより第1のタグのIDからワークの識別情報を、第2のタグのIDからブロックのXY座標を、距離変数を元に算定した2点間の距離からワークのZ座標を、それぞれ取得して管理装置に記憶することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、第1のタグリーダを第1のタグに近付けてIDを読み取る際、第2のタグとの間でプローブ信号を送受信して距離変数を求め、第2のタグのIDからブロックのXY座標を、距離変数を元に算定した2点間の距離からワークのZ座標をそれぞれ取得する。
従って、従来技術のようにワークを時刻順に積み上げる必要がなくなるので、ワークを予め積み上げた状態で搬送し、それをブロックに下ろして作業を効率化することができる。また、ワークの入れ替えや積み替えが発生する度にワークを積み上げ直す必要もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を実施した倉庫管理システムの構成図である。
【図2】フロアの配置を示す平面図である。
【図3】本発明を実施した倉庫管理システムのデータ関連図である。
【図4】タグリーダとICタグのブロック図である。
【図5】倉庫管理システムのシーケンスフローである。
【図6】従来例1のシステム構成図である。
【図7】従来例2のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1に、本発明を実施した倉庫管理システムの構成図を示す。
倉庫管理システムは、倉庫内のフロア1を升目状のブロック2に区分し、各ブロック2にパレット3に載せたワーク4を積み上げて保管する。
ワーク4の側面には第1のタグ(ワークタグ)5を貼り付け、フロア1のブロック2に対応して第2のタグ(フロアタグ)6を設置する。
第1のタグ(ワークタグ)5の読み出しは第1のタグリーダ(子機)7を介して行い、第2のタグ(フロアタグ)6の読み出しは第2のタグリーダ(親機)8を介して行う。
読み出したIDは第2のタグリーダ(親機)8を経由して上位の管理装置9に転送する。
ワーク4は、通常大きく重い場合はフォークリフトによる運搬管理が容易なパレット3に載せるが、小さく軽い場合はかご台車やコンテナボックスに載せて運搬管理する。
【0014】
フロア1は、図2に示すように、例えば4つのブロック2を1区画Cとし、各区画Cの四方に通路Aを設け、そこに各ブロック2に接近させて第2のタグ(フロアタグ)6を設置する。
第2のタグ(フロアタグ)6は、タグ同士が通路A上で重ならないように、ブロック2に対する設置方向を区画C毎に切換えて配置する。
図では第2のタグ(フロアタグ)6をフロア1側に設置しているが、天井側に設置してもよい。
【0015】
図3に、本発明を実施した倉庫管理システムのデータ関連図を示す。
倉庫管理システムは、第1のタグリーダ(子機)7が倉庫内を移動して第1のタグ(ワークタグ)5からIDを読み取り、それを第1のタグリーダ(子機)7に内蔵した第2のタグ(内蔵タグ)6を介して第2のタグリーダ(親機)8に転送する。
同時に、第2のタグ(内蔵タグ)6を介して直下に設置した第2のタグ(フロアタグ)6に向けてプローブ信号を発射する。第2のタグ(内蔵タグ)6はメモリ等を介して第1のタグリーダ(子機)7に接続する。
プローブ信号を受信した第2のタグ(フロアタグ)6は、プローブ信号の距離変数を測定して自身のIDとともにそれを第2のタグリーダ(親機)8に送信する。
図では第2のタグ(内蔵タグ)6からプローブ信号を発射して第2のタグ(フロアタグ)6が受信しているが、逆に第2のタグ(フロアタグ)6からプローブ信号を発射して第2のタグ(内蔵タグ)6が受信してもよい。
【0016】
第1のタグ(ワークタグ)5にはICタグまたはバーコードタグを用いる。
ICタグの場合はタグリーダの電波を検波して励起電圧を発生し、それを整流して動作電源とするパッシブ型とし、第1のタグリーダ(子機)7との通信を周波数帯13.56MHz、通信距離5〜10cmの至近距離で行う。
【0017】
第2のタグ(フロアタグ)6にはタグ同士がプローブ信号を送受信する特許文献3記載のICタグを用いる。
ICタグは比較的長い距離を安定して通信できる電池を内蔵したアクティブ型とし、第2のタグリーダ(親機)8との通信を周波数帯429MHz、通信距離100〜150mの遠距離で行う。
【0018】
プローブ信号は準静電界を伝播媒体とし、プローブ信号の送受信は周波数帯21.4MHz、通信距離50cm〜5mで行う。
プローブ信号は超音波を伝播媒体としてもよく、その場合はプローブ信号の送受信を周波数帯40kHz、通信距離5〜7m、通信速度340m/sで行う。
【0019】
準静電界の場合、受信点での電界強度が距離の3乗に反比例するので、プローブ信号の距離変数を受信強度に設定し、これより受信強度を測定して2点間の距離を算定する。
超音波の場合、受信点での到達時間が距離に比例するので、プローブ信号の距離変数を到達時間に設定し、これより到達時間を測定して2点間の距離を算定する。
【0020】
準静電界はアンテナのごく近傍に存在し、受信点での電界強度が距離の3乗に反比例するので、極めて距離が受信強度に反映される。そのため受信強度を測定することで2点間の距離を高い精度で算定できる。
【0021】
図4に、タグリーダとICタグのブロック図を示す。
第1のタグ(ワークタグ)5は、アンテナ51とアンテナ制御部52、整流部53、クロック部54、復調部55、変調部56の通信回路と、CPU57、メモリ58の制御回路で構成し、第1のタグリーダ(子機)7がID要求信号を変調して電波を発射すると、アンテナ51に誘起電圧が発生し、この誘起電圧を整流部53が整流して動作電源とし、クロック部54がその周波数を用いてIC同期用のクロックを生成する。これよりIC回路に電力とクロックが供給されると、復調部55がクロックに同期させながらID要求信号を復調し、それをCPU57が解析してID応答信号を生成し、それを変調部56が変調して電力増幅することなく再発射する。
【0022】
第1のタグリーダ(子機)7は、アンテナ71とRF部72、送信部73、受信部74のアナログ回路とデータ処理部75のデジタル回路で構成し、送信部73が第1のタグ(ワークタグ)5へのID要求信号を変調して電波を発射し、受信部74が第1のタグ(ワークタグ)5より受信した電波を復調してID応答信号を取り出す。第1のタグリーダ(子機)7が発射する電波は、データ通信の他にも第1のタグ(ワークタグ)5が必要とする電力を伝送している。
【0023】
第2のタグ(内蔵タグ)6は、アンテナ61とアンテナ制御部62、クロック部63、復調部64、変調部65の通信回路と、CPU66、メモリ67の制御回路、アンテナP1とアンテナ制御部P2、発信部P3、受信部P4のプローブ信号回路で構成し、第1のタグリーダ(子機)7が読み出した第1のタグ(ワークタグ)5のIDを変調部65が変調して第2のタグリーダ(親機)8に送信する。
同時に、第1のタグリーダ(子機)7からの指令で発信部P3がクロック発振波を変調したゲート信号またはバースト信号からなるプローブ信号を第2のタグ(フロアタグ)6に向けて発射する。
【0024】
第2のタグ(フロアタグ)6は、第2のタグ(内蔵タグ)6から受信したプローブ信号を受信部P4が復調し、受信信号の電界レベルを直流電圧値に変換したRSSI電圧を出力する。RSSI電圧はA/D変換してCPU66に入力し、CPU66は受信したRSSI電圧を4〜8段階の受信レベルに区分する。
同時に、自身のIDとともにRSSI電圧を変調部65が変調して第2のタグリーダ(親機)8に送信する。
【0025】
第2のタグリーダ(親機)8は、アンテナ81とRF部82、送信部83、受信部84のアナログ回路とデータ処理部85のデジタル回路で構成し、受信部84が第2のタグ(内蔵タグ)6より受信した電波を復調して第1のタグ(ワークタグ)5のIDを取り出す。また、受信部84が第2のタグ(フロアタグ)6より受信した電波を復調して第2のタグ(フロアタグ)6のIDとRSSI電圧を取り出す。
【0026】
本発明は第1のタグリーダ(子機)7を第1のタグ(ワークタグ)5に近付けてIDを読み取る際、第2のタグ(内蔵タグ)6を介して発射したプローブ信号を第2のタグ(フロアタグ)6が受信してその受信強度からワーク4の高さを検出する。
従って、プローブ信号が周辺の第2のタグ(フロアタグ)6に傍受されるのを防ぐためアンテナP1の指向性を強くする。
アンテナP1はリフレクタの開口部を第2のタグ(フロアタグ)6の設置方向に向けて垂直指向性を高め、水平方向の利得を小さくする。
これにより第2のタグ(内蔵タグ)6と第2のタグ(フロアタグ)6の間の受信感度を上げ、周囲方向の受信感度を下げる。その結果、該当ブロック2以外に設置された近隣の第2のタグ(フロアタグ)6によるプローブ信号の過検出を防止できる。
【0027】
図5に、倉庫管理システムのシーケンスフローを示す。
まず、第1のタグリーダ(子機)7を第1のタグ(ワークタグ)5に近付けてボタンを押し、第1のタグリーダ(子機)7から第1のタグ(ワークタグ)5に対してIDの読取コマンドを送信する。
これに対し、第1のタグ(ワークタグ)5が自身のID(ID1)を第1のタグリーダ(子機)7に応答する。
応答を受信した第1のタグリーダ(子機)7は、第1のタグ(ワークタグ)5のID(ID1)を第2のタグ(内蔵タグ)6を介して第2のタグリーダ(親機)8に転送する。
同時に、第2のタグ(内蔵タグ)6を介して直下の第2のタグ(フロアタグ)6に向けてプローブ信号を発射する。
これに対し、第2のタグ(フロアタグ)6が自身のID(ID2)とともにプローブ信号のRSSI電圧を第2のタグリーダ(親機)8に応答する。
以上により、第1のタグ(ワークタグ)5のID(ID1)からワーク4の識別情報を、第2のタグ(フロアタグ)6のID(ID2)からワーク4のXY座標を、プローブ信号のRSSI電圧を元に算定した2点間の距離からワーク4のZ座標を、それぞれ取得して管理装置9に記憶する。
【符号の説明】
【0028】
1 フロア
2 ブロック
3 パレット
4 ワーク
5 第1のタグ
51 アンテナ
52 アンテナ制御部
53 整流部
54 クロック部
55 復調部
56 変調部
57 CPU
58 メモリ
6 第2のタグ
61 アンテナ
62 アンテナ制御部
63 クロック部
64 復調部
65 変調部
66 CPU
67 メモリ
7 第1のタグリーダ
71 アンテナ
72 RF部
73 送信部
74 受信部
75 データ処理部
8 第2のタグリーダ
81 アンテナ
82 RF部
83 送信部
84 受信部
85 データ処理部
9 管理装置
102 タグリーダ
103 棚用タグ
104 棚段
105 ワーク
106 ワーク用タグ
107 管理装置
111 支柱
201 管理装置
202 搬送体
203 発信装置
204 受信機
205 RFIDタグ
A 通路
C 区画
P1 アンテナ
P2 アンテナ制御部
P3 発信部
P4 受信部
WO ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークをフロア上の各ブロックに積み上げて保管する倉庫において、
ワークに対応する第1のタグと、
ブロックに対応する第2のタグと、
第1のタグからIDを読み取る第1のタグリーダと、
第2のタグからIDを読み取る第2のタグリーダと、
第1のタグリーダと第2のタグリーダを介して収集した情報を一元管理する管理装置と、
を備え、
第1のタグリーダを第1のタグに近付けてIDを読み取る際、
第2のタグとの間でプローブ信号を送受信して距離変数を求め、
これより第1のタグのIDからワークの識別情報を、
第2のタグのIDからブロックのXY座標を、
距離変数を元に算定した2点間の距離からワークのZ座標を、
それぞれ取得して管理装置に記憶することを特徴とする倉庫管理システム。
【請求項2】
前記第1のタグリーダは倉庫内を移動して第1のタグのIDを読み取り、
第2のタグリーダは倉庫内の定点に固定して第2のタグのIDを読み取ることを特徴とする請求項1記載の倉庫管理システム。
【請求項3】
前記第1のタグにはパッシブ型のICタグまたはバーコードタグを用い、
第2のタグにはアクティブ型のICタグを用いることを特徴とする請求項1記載の倉庫管理システム。
【請求項4】
前記第1のタグリーダは第2のタグを内蔵し、
この第2のタグを介してブロックに対応する第2のタグとの間でプローブ信号を送受信することを特徴とする請求項1記載の倉庫管理システム。
【請求項5】
前記第1のタグはワークの側面に付設し、
第2のタグは倉庫内のフロアまたは/および天井に敷設することを特徴とする請求項1記載の倉庫管理システム。
【請求項6】
前記プローブ信号は準静電界を伝播媒体とし、
前記距離変数はプローブ信号の受信強度とすることを特徴とする請求項1記載の倉庫管理システム。
【請求項7】
前記プローブ信号は超音波を伝播媒体とし、
前記距離変数はプローブ信号の到達時間とすることを特徴とする請求項1記載の倉庫管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−180008(P2010−180008A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24229(P2009−24229)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(391016093)エル・エス・アイ ジャパン株式会社 (21)
【Fターム(参考)】